JP2007229902A - 輪郭加工用砥石及び輪郭加工用砥石セット、これを用いた研削装置及び研削方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 1つの被加工物に対して複数の加工物に対応した輪郭加工を可能とし、例えば研削装置の構成を大きく変更することなく生産性を飛躍的に向上する。
【解決手段】 輪郭加工用砥石3,4においては、単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面(例えば円弧面3a,3b、あるいは円弧面4a,4b)が複数形成されており、被加工物1に対して複数加工物分の輪郭加工が一括して行われる。また、輪郭加工用砥石3,4には凸部3dまたは凸部4cが形成されており、これらによって加工物5、6間が切断され、切り離される。
【選択図】 図2
【解決手段】 輪郭加工用砥石3,4においては、単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面(例えば円弧面3a,3b、あるいは円弧面4a,4b)が複数形成されており、被加工物1に対して複数加工物分の輪郭加工が一括して行われる。また、輪郭加工用砥石3,4には凸部3dまたは凸部4cが形成されており、これらによって加工物5、6間が切断され、切り離される。
【選択図】 図2
Description
本発明は、例えば希土類焼結磁石の輪郭加工等に用いられる輪郭加工用砥石及び輪郭加工用砥石セットに関するものであり、さらには、これら輪郭加工用砥石や輪郭加工用砥石セットを用いた研削装置及び研削方法に関する。
モータをはじめとする各種電気部品の小型化の要求、及びこれに対応した磁石の特性向上の要求に伴い、高性能小型磁石の開発が求められている。このような中、例えばNd−Fe−B磁石等のR−T−B系(Rは、希土類元素の1種以上である。Tは、Feを必須とし、その他金属元素を含む。)焼結磁石は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であること等の利点を有することから、近年、その需要が益々拡大する傾向にある。
希土類焼結磁石の製造方法としては、粉末冶金法が知られており、低コストでの製造が可能なことから広く用いられている。粉末冶金法により希土類焼結磁石を製造するには、先ず、原料合金インゴットを粗粉砕及び微粉砕し、粒径が数μm程度の原料合金粉を得る。このようにして得られた原料合金粉を磁場中で配向させ、磁場中成形を行う。磁場中成形後、成形体を真空中、または不活性ガス雰囲気中で焼結及び時効を行う。さらに、機械加工や表面処理等の工程を行う。
前述の粉末冶金法による希土類焼結磁石の製造においては、磁場中成形により所望の形状(例えば、アーク形状やリング形状等)に成形し、熱処理(焼結及び時効)後に切断加工等を施して形状を整えるのが一般的である。しかしながら、前記小型化の要求に伴い、流動性のあまり良くないR−T−B系原料合金粉を小型なアーク形状やリング形状等に成形することが困難になってきている。
そこで、例えばアーク形状の希土類焼結磁石を作製する場合、前記磁場中成形において一回り大きな矩形形状に成形し、あるいは前記アーク形状を複数個取りすることが可能な大きさのブロック形状に成形し、熱処理によって焼結体を作製した後に、砥石を用いて輪郭加工することで所望のアーク形状に加工処理することも試みられている(例えば、特許文献1等を参照)。
特許文献1には、研削する磁石部材を一方向に案内する搬送路と、搬送路に複数の磁石部材を搬送方向に付勢して連続的に搬送路に送り出す搬送手段と、搬送路を挟んで配され、搬送される磁石部材の互いに反対側となる面をそれぞれ研削する一対の研削手段と、研削手段の下流において磁石部材をその搬送方向と逆方向に付勢する付勢手段を具備する磁石部材の加工装置が開示されている。
セグメント形状を加工するためには、最終製品形状と同等の研削面(輪郭加工面)を持つ総型砥石(輪郭加工用砥石)を用いて加工を行う必要があり、例えばC型形状の場合、外R面と内R面を各々の形状に合致した総型砥石にて研削加工を施す必要がある。このように外R面と内R面とをそれぞれ総型砥石にて研削するに際して、被研削物は途中で上下を入れ替えなければならず、連続して加工することが困難である。そこで、特許文献1記載の発明では、磁石部材の互いに反対側となる面をそれぞれ研削する手段と、研削手段の下流において磁石部材をその搬送方向と逆方向に付勢する手段を有するようにし、前記外R面と内R面とを同時に研削加工するようにしている。
このような構成を採用することで、連続性は向上するが、さらに生産性を大幅に増加しようとすると、大きな困難を伴う。例えば生産性を2倍に拡大しようとすると、前述の構成の加工装置を2台並列に設置する必要があり、多大な設備投資が必要となる。また、前記加工装置を2台並列に設置した場合、投入する被加工物を倍増しなければならず、この点においても効率化が図れないという問題がある。
設備を簡略化しながら生産性を大幅に向上するためには、例えば特許文献2に記載のされるように、1台で2系統処理できるようにすることが考えられるが、装置構成が煩雑化するという問題が生ずる。また、前記投入する被加工物を倍増しなければならないという問題は解消することができず、効率化の点でも問題が残る。
特開平11−347900号公報
特開平9−248744号公報
前述のように、従来技術では1つの被加工物に対して1つの総型砥石で1つの加工物に対応した輪郭加工を行うというのが基本的なスタンスであり、生産性を大幅に向上する上で大きな障害となっている。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、1つの被加工物に対して複数の加工物に対応した輪郭加工を可能とし、例えば研削装置の構成を大きく変更することなく生産性を飛躍的に向上することが可能な輪郭加工用砥石及び輪郭加工用砥石セットを提供することを目的とする。また、本発明は、前記輪郭加工用砥石や輪郭加工用砥石セットを用いることで、2つ以上の加工物(製品)の加工を同時に行うことができ、生産性に優れた研削装置及び研削方法を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の輪郭加工用砥石は、単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されており、被加工物に対して複数加工物分の輪郭加工が一括して行われることを特徴とする。
また、本発明の輪郭加工用砥石セットは、 被加工物の両面に対してそれぞれ輪郭加工を行う1組の輪郭加工用砥石を備えた輪郭加工用砥石セットであって、各輪郭加工用砥石は単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されており、被加工物に対して複数加工物分の輪郭加工が一括して行われることを特徴とする。
本発明の輪郭加工用砥石、輪郭加工用砥石セットにおいては、単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されているので、一度の輪郭加工で複数個分の輪郭加工が一括して行われる。例えば、輪郭加工用砥石セットにおいて、一対の輪郭加工用砥石にそれぞれ複数の円弧状の面を形成すれば、C型形状の加工物が複数一括して形成される。したがって、一度の加工による生産量が2倍、あるいは3倍というように飛躍的に増加し、生産性が大幅に向上する。また、このとき電着砥石の形状を変更するだけで良く、研削装置の構成を大幅に変更する必要はない。
さらに、本発明の輪郭加工用砥石、輪郭加工用砥石セットにおいては、例えば複数の輪郭加工面間に凸部を設けることにより、輪郭加工と同時に加工物の切断も可能である。前記凸部は切断用砥石として機能し、輪郭加工終了と同時に、前記凸部の研削加工代により各加工物間の境界部分が切断される。
一方、本発明の研削装置は、被加工物を搬送する搬送レールと、前記搬送レールによって搬送される被加工物を輪郭加工する輪郭加工用砥石とを備え、前記輪郭加工用砥石は、単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されていることを特徴とする。また、本発明の研削方法は、1組の輪郭加工用砥石により被加工物の両面に対してそれぞれ輪郭加工を行う研削方法であって、前記各輪郭加工用砥石は単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されたものとし、被加工物に対して複数加工物分の輪郭加工を一括して行うことを特徴とする。
前記構成を有する本発明の研削装置、研削方法においては、前記輪郭加工用砥石の機能により、2つ以上の加工物(製品)の加工を同時に行うことができ、生産性に優れた研削装置及び研削方法が実現される。
また、本発明の研削装置においては、被加工物を搬送する搬送レールを工夫することで、精度の高い輪郭加工を実現することも可能である。例えば、各輪郭加工面に対応して傾斜面を有する被加工物を、複数組の傾斜面を有する搬送レールによって搬送し、被加工物の両端部分の傾斜面を搬送レールの一対の傾斜面で支持した状態で研削加工を行うようにする。この場合、搬送レールに被加工物を載置すると、重力によって対向する傾斜面同士が突き合わされる形となり、必然的にその位置が決まる。この位置決め状態は高度に保たれ、例えば被加工物の上部から輪郭加工用砥石の力が加わっても変化することはない。したがって、精度の高い研削が安定に実現される。さらに、前記搬送レールと被加工物との間には、クリアランスも必要なく、前記重力による傾斜面同士の突き合わせにより、クリアランスが形成されることもない。したがって、前記クリアランスに起因する加工時における被加工物の位置ズレの発生が問題になることもない。
本発明の輪郭加工用砥石及び輪郭加工用砥石セットによれば、1つの被加工物に対して複数の加工物に対応した輪郭加工を一括して行うことが可能であり、例えば研削装置の構成を大きく変更することなく生産性を飛躍的に向上することが可能である。同様に、本発明の研削装置及び研削方法によれば、2つ以上の加工物(製品)の加工を同時に行うことができ、生産性に優れた研削装置及び研削方法を提供することが可能である。
以下、本発明を適用した輪郭加工用砥石及び輪郭加工用砥石セット、さらには研削装置及び研削方法について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態の輪郭加工用砥石セットは、被加工物の両面に対してそれぞれ輪郭加工を行う1組の輪郭加工用砥石から構成されるものであり、各輪郭加工用砥石が本発明の輪郭加工用砥石に該当する。
各輪郭加工用砥石は、例えば希土類焼結磁石を所定の形状に削り出す研削加工(いわゆる輪郭加工)を行うものであり、例えば円板状台金の外周面に研削部分となる電着面を形成してなるものである。前記輪郭加工用砥石は、例えば前記円板状台金の砥石取り付け孔に回転軸を挿入固定することにより研削装置に装着され、前記回転軸によって高速で回転され、前記外周面である電着面を被加工物に当接することで研削加工(輪郭加工)が行われる。このとき砥石直径と回転速度により周速度が決定されるが、、前記研削加工に際して、周速度は800〜3000m/分であることが好ましく、1000〜2500m/分であることがより好ましい。周速度が前記範囲以下であると研削抵抗が上昇し、逆に前記範囲を越えると振動や滑りによる加工不良が発生するおそれがある。
輪郭加工用砥石の電着面は、円板状台金の外周面に砥粒を電着固定することにより構成されるが、砥粒としては、例えばダイヤモンドや窒化ボロン立方晶(CBN)等の超砥粒が用いられる。これら砥粒は、Ni等の電着金属によって前記電着面に固定されている。また、輪郭加工用砥石の電着面の形状は、加工物の輪郭形状に対応した形状を有し、例えば加工物がC型形状である場合、内側円弧面(内R面と称する。)や外側円弧面(外R面と称する。)に対応して断面円弧状とされている。
図1に2つのC型形状の加工物を一括形成する場合の研削プロセスを示す。また、図2に、前記研削プロセスに用いられる輪郭加工用砥石セット(一対の輪郭加工用砥石)を示す。
例えば、図1(a)に示すような直方体形状の被加工物1から2つのC型形状の加工物に研削加工する場合、先ず、図2(a)に示すような、2つの内R面に対応する円弧面3a、3bと、その両側の傾斜面に対応する傾斜面3cを有する第1の輪郭加工用砥石3を用いて第1の研削加工を行う。ここで、前記円弧面3a、3bは、加工物の輪郭形状に対応する形状を有し、それぞれ中央部が突出した円弧面形状となっている。また、本実施形態の場合、2つのC型形状の加工物に対応して、2つの内R面に対応する円弧面3a、3bが隣接して形成されている。
さらに、前記傾斜面3cは、2つの内R面の両側にそれぞれ傾斜面を形成するための輪郭加工面であり、これにより形成される傾斜面がC型形状の加工物の両端面になる。形成される傾斜面は、前記円弧面3a、3bによって形成される内R面の両端における法線と略一致する角度で形成される。ここで、前記第1の輪郭加工用砥石3において、円弧面3a、3b間において互いに隣接する傾斜面3c間の領域は、凸部3dとして形成される形になり、その先端による研削加工代は、加工物の傾斜面の形成に必要な研削加工代よりも大きい。
前記第1の輪郭加工用砥石3を用いて第1の研削加工(輪郭加工)することにより、図1(b)に示すように、被加工物1に2つの内R面1a、1bと、各内R面1a、1bの両側の傾斜面1c、1d、1e、1fが形成される。内R面1aとその両側の傾斜面1c、1dが1つの加工物の輪郭形状に対応し、内R面1bとその両側の傾斜面1e、1fがもう一つの加工物の輪郭形状に対応する。
また、この第1の研削加工では、前記第1の輪郭加工用砥石3の凸部3dによって、内R面1a、1b間の中間位置においてC型形状の形成に必要な端部傾斜面の高さ以上の高さ(深さ)まで溝加工が施される。これによって形成された溝Sが外R面研削時に2つのC型形状加工物を分離する境界となる。なお、この第1の研削加工は、粗研削と精研削の2段階で行うことも可能である。2段階にすることで、一度に加工する研削量を低減することが可能になり、輪郭加工用砥石3や被加工物1に加わる負荷を低減することが可能である。
次に、被加工物1の裏面側を図2(b)に示すような外R面に対応する2つの円弧面4a、4bを有する第2の輪郭加工用砥石4を用いて第2の研削加工を行う。この第2の研削加工に用いる輪郭加工用砥石4は、前記2つの円弧面4a、4bを有しており、これら円弧面4a、4bがC型形状の加工物の輪郭形状の一部(外R面)に対応した輪郭加工面ということになる。また、第2の輪郭加工用砥石4は、前記2つの円弧面4a、4bの間に凸部4cを有しており、この凸部4cの先端部分の研削加工代が前記第1の輪郭加工用砥石3の凸部3dの研削加工代と重なるように設定されている。
この第2の研削加工は、図1(c)に示す粗研削と図1(d)に示す精研削の2段階とすることが好ましい。第2の研削工程では、第2の輪郭加工用砥石4の中央部に前記凸部4cを設けなければならず、被加工物1が希土類焼結磁石のような硬材であるような場合、重研削となって特に摩耗が激しくなる。前記2段階での研削加工とすれば、一度に加工する研削量を低減することが可能となり、前記重研削時の摩耗も抑えることが可能である。なお、外R面を粗研削する場合には、内R面と異なりR面境界領域が広く存在するために、図1(c)に示す粗研削では、頂部及び前記R面境界領域を広角度または平面状に研削することが好ましい。
図1(d)に示す精研削では、外R面1g、1hを円弧面に研削加工し、さらに、前記2つの内R面1a、1b及び外R面1g、1hを有する2つの加工物5、6に切断する。この2つの加工物5、6への切断は、前記第2の輪郭加工用砥石4の凸部4cによって行われる。前記の通り、第2の輪郭加工用砥石4の研削加工代は、前記外R面1g、1hが形成されるように設定されるが、この時点での前記凸部4cの研削加工代は、前記第1の輪郭加工用砥石3の凸部3dによって形成される溝Sに到達する深さとされている。したがって、第2の研削加工の最終段階において、前記外R面1g、1hの円弧面への研削加工が完了した時点では、前記第2の輪郭加工用砥石4の凸部4cの先端が前記溝Sにまで到達しており、前記2つの加工物5、6は切断されて完全に切り離された状態となる。
前述の輪郭加工用砥石セット(第1の輪郭加工用砥石3と第2の輪郭加工用砥石4の組み合わせ)を用いて被加工物1を研削加工(輪郭加工)することにより、2つの加工物5、6を一括して形成することが可能である。一括して形成し得る加工物の数はこれに限らず、例えば前記第1の輪郭加工用砥石3と第2の輪郭加工用砥石4に形成される内R面に対応した円弧面、外R面に対応した円弧面の数を増やすことにより、3つの加工物、4つの加工物、さらにはそれ以上の数の加工物を一括して輪郭加工することが可能である。したがって、前記輪郭加工用砥石セットを用いて輪郭加工を行うことにより、生産性を飛躍的に向上することが可能である。なお、前記のように円弧面の数を増やした場合、各円弧面の間に凸部3d、あるいは凸部4cを形成することにより、全ての加工物間を切断して分離することが可能である。
前記輪郭加工用砥石及び輪郭加工用砥石セットは、生産性の向上ばかりでなく、輪郭加工の精度を向上する上でも有効である。例えば、加工物を2個取り、3個取りというように複数個取りすることで、被加工物1が大型化し重量も増すことで設置状態が安定なものとなり、被加工物1の位置ズレが抑えられて加工精度が向上する。また、特に輪郭加工用砥石の各輪郭加工面の形状が左右非対称である場合に、前記複数個取り(特に偶数個取り)とすることで加工精度が大きく向上する。輪郭加工用砥石の輪郭加工面が左右非対称である場合、例えば輪郭加工用砥石の片側部分では削り込み量が大きく、これとは反対側部分では削り込み量が小さいというように、削り込み量のバランスが大きく崩れることがある。前記削り込み量のバランスの崩れは、輪郭加工用砥石の偏摩耗等に繋がり、加工精度を大きく損なうことになる。本発明の輪郭加工用砥石のように、複数個取りに対応して輪郭加工面を複数(特に偶数)形成する場合、個々の輪郭加工面は左右非対称であっても、これらを左右対称に配置することで輪郭加工用砥石全体の形状を左右対称とすることができる。したがって、バランスの良い削り込みが可能になって、前記輪郭加工用砥石の偏摩耗を解消することができ、加工精度を長期に亘り維持することが可能である。
前述の輪郭加工用砥石セットは、研削装置に装着することにより被加工物1の一連の研削加工を行うことが可能である。前記の通り、被加工物1は、第1の輪郭加工用砥石3を用いて内R面1a、1b及び傾斜面1c〜1fを研削加工した後、第2の輪郭加工用砥石4を用いて外R面1g、1hを研削加工する。したがって、前記内R面1a、1b及び傾斜面1c〜1fの研削加工を第1の研削加工、前記外R面1g、1hの研削加工を第2の研削加工とし、前記第1の輪郭加工用砥石3及び第2の輪郭加工用砥石4を順次配置することで、これら第1の研削加工と第2の研削加工を一連の工程として行うことが可能である。
図3は、第1の研削加工と第2の研削加工を連続して行う研削装置の概略構成を示すものである。この研削装置は、大別して第1エリアと第2エリアに分けることができ、第1エリアにおいて第1の研削加工(内R面1a、1b及び傾斜面1c〜1fの研削加工)を行い、第2エリアにおいて第2の研削加工(外R面1g、1hの研削加工及び加工物5、6の切断による分離)を行う。
ここで、第1エリアは、第1の搬送レール11とその中途位置に設けられた第1の研削砥石12、及び前記第1の研削砥石12と対向して配置される支持治具13とから構成されている。前記第1の搬送レール11は、直方体形状の被加工物1を搬送するものであり、図4(a)、(b)に示すように、矩形のガイド溝11aが形成されている。第1の研削砥石12は、研削対象物1の内R面1a、1b及び傾斜面1c〜1fの研削加工を行う総型砥石であり、例えば図2(a)に示すものと同様の輪郭加工用砥石を用いる。この第1の研削砥石12は、搬送レール11に設けた開口部(図示は省略する。)から被加工物1の下面に対して研削加工を行う。支持治具13は、前記第1の研削砥石12によって被加工物1の下面を研削加工する際に、被加工物1を上から押さえてこれを保持する役割を果たす。なお、前記第1エリアにおいては、進行方向に対して幅の広い被加工物1が搬送レール11上を搬送されることになる。すなわち、加工物を1個取りとする場合に比して被加工物1の幅が大きく設定され、その結果、搬送レール11との接触面積が増加して搬送抵抗が増加するおそれがある。そこで、本実施形態の研削装置においては、前記搬送レール11の形成された搬送溝11aの底面に搬送方向に延在する補助溝11bが複数形成し、搬送時の被加工物1と搬送レール11との接触抵抗を低減するようにしている。
第2エリアは、第2の搬送レール21と第2の研削砥石22とから構成されており、前記研削砥石22として、図2(b)に示すものと同様の輪郭加工用砥石を用いる。この第2の研削砥石22は、被加工物1の上面に対して外R面1g、1hの研削加工を行う。第2の搬送レール21は、前記第1の研削加工によって内R面1a、1b及び傾斜面1c〜1fが形成された被加工物1を支持し搬送するものであり、図5(a)、(b)に示すように、前記傾斜面1c〜1fに対応した傾斜面21a〜21dを有する。また、本例の場合、前記搬送レール21の中央部分(傾斜面21aと傾斜面21b間、及び傾斜面21cと傾斜面21dの間)には、被加工物1の裏面側を支持する補助レール部21e、21fが形成されている。この補助レール部21e、21fは、第2の研削砥石22による研削加工の際に、被加工物1の裏面側を支持する補助部材に相当するものである。
以上の構成の研削装置により被加工物1をC型形状に研削加工する場合、先ず、被加工物1を搬送するための第1の搬送レール11上に被加工物1を載置する。このとき、第1の搬送レール11のガイド溝11aの側壁によって被加工物1の両側面がガイドされた状態で搬送されるが、このガイド溝11aの側壁と被加工物1の両側面の間には若干のクリアランスを設けておく。これにより搬送が円滑に行われる。なお、前記クリアランスは最終的に加工された被加工物1のC型形状における内R面1a、1bと外R面1g、1hの中心位置ズレの原因になることはない。
第1の搬送レール11上に載置された被加工物1は、搬送手段(例えば弾性力のある材質で被覆されたローラを用いた搬送や、弾性力のあるベルト状部材を2個のローラによって稼動させることによる搬送等等)R1によって第1の搬送レール11のガイド溝11aに沿って搬送され、被加工物1が搬送される向きとは逆方向に回転している第1の研削砥石12と接触する。なお、前記被加工物1は次々に供給され、第1の被加工物1の後ろには第2、第3の被加工物1が連続して搬送される。
前記搬送手段においては、被加工物1が希土類焼結磁石である場合には、研削抵抗が非常に大きいため前記搬送手段R1を上下一対の構造とすることが好ましい。また、被加工物1の送り速度は、主に切り込み量と被加工物1の材質及び砥石寿命の要求値によって適宜設定され、通常は10〜3000mm/分程度に設定される。特に、被加工物1が希土類焼結磁石である場合には、前記送り速度を50〜1000mm/分とすることが好ましい。送り速度が50mm/分以下であると、連続加工による効率向上のメリットが無くなり、逆に送り速度が1000mm/分以上になると、被加工物1に熱クラックが生じるおそれがある。
被加工物1は、前記第1の研削砥石12と接触することで内R面1a、1b及び傾斜面1c〜1fの研削加工が行われる。前記傾斜面1c〜1fは、好ましくは例えば鉛直方向に対してそれぞれ20°〜80°傾斜する傾斜面とする。前記研削加工に際しては、被加工物1は支持治具13によって支持された状態で研削加工が行われる。支持治具13は、いわゆる被加工物1を搬送するためのガイドとしての役割を果たす。また、被加工物1を所望の厚みにするために位置調整可能な機構とされている。
前記第1エリアにおいて内R面1a、1b及び傾斜面1c〜1fが形成された被加工物1は、次に第2エリアへ搬送され、外R面1g、1hの研削加工が行われる。前記第1エリアから第2エリアへの被加工物1の移行は、被加工物1を前記第1の搬送レール11から第2の搬送レール21へと搬送することにより行う。このとき、第1の搬送レール11と第2の搬送レール21の継ぎ目においては、第1の搬送レール11の端部に対して第2の搬送レール21の端部を同等以下にする。好ましくは、前記第2の搬送レール21の端部が僅かに下がるように微小な段差を設けておくことで、被加工物1の第1の搬送レール11から第2の搬送レール21への搬送を円滑に行うことができる。
第2の搬送レール21では、前記被加工物1の傾斜面1c〜1fをこれに対応した傾斜角度を有する傾斜面21a〜21dで支持した状態で搬送し、第2の研削加工を行う。第2の搬送レール21の形状としては、被加工物1の前記傾斜面1c〜1fのみならず、被加工物1の内R面1a、1bにも合わせた形状とすることも可能であるが、被加工物1の両端の傾斜面1c〜1fをこれに合致した傾斜面21a〜21dで支持し、前記内R面1a、1bと搬送レール21との間に隙間を有する形状とした方が、傾斜面21a〜21dのみの精度で位置決め可能となり、外R面1g、1hの研削加工における加工精度も向上することができる。
なお、前記搬送レール21を用いて被加工物1を搬送する場合、搬送機構(例えば搬送ローラ)R2を使用して搬送を行えばよいが、前記搬送機構R2としては、被加工物1を搬送レール21の傾斜面21a〜21dに押し付けるように付勢する単ローラを用いることができる。ただし、被加工物1が研削抵抗の大きい物である場合、あるいは機械的強度が低い材質により形成されている場合には、上下一対のローラを用いることが好ましい。また、被加工物1を前記搬送レール21で保持する際には、少なくとも傾斜面1c〜1fの下端が傾斜面21a〜21dの下端から0.5mm以上上部に位置するように保持することが好ましい。搬送機構R2は、第1エリアの次に設置でき、あるいは省略することも可能である。
ここで、前記第2の搬送レール21について説明すると、前記の通り、第2の搬送レール21においては、第1エリアにおいて形成された被加工物1の傾斜面1c〜1fを支持する傾斜面21a、21b、21c、21dが形成されるとともに、傾斜面21aと傾斜面21bの間、及び傾斜面21cと傾斜面21dの間に、それぞれ被加工物1の裏面側を支持する補助レール部21e、21fが形成されている。そして、傾斜面21aと傾斜面21b、傾斜面21cと傾斜面21dがそれぞれ互いに対向した状態で搬送方向に延在するように形成されている。
前記被加工物1の各傾斜面1c〜1fは、図6(a)に示すように、内R面1a、1bに対応する円の中心を通り径方向に放射状に広がる法線h1,h2、あるいは法線h3,h4に対応する角度を有し、傾斜面1c、1d間の開き角θ1、及び傾斜面1e、1f間の開き角θ2は、法線h1,h2間の中心角、あるいは法線h3,h4間の中心角に対応した角度となる。例えば、被加工物1の加工形状(加工物5、6の形状)が円筒形状を等角度間隔に3分割したC型形状の場合、前記開き角(中心角)θ1、θ2は、それぞれ120°になる。被加工物1の加工形状が円筒形状を等角度間隔に4分割した形状の場合、前記開き角(中心角)θ1、θ2は、それぞれ90°になる。
前記被加工物1の傾斜面1c、1d間の開き角θ1、傾斜面1e、1f間の開き角θ2はこれに限らず、例えば前記開き角θ1、θ2=15°〜150°の範囲で任意に設定することが可能である。ただし、前記開き角θ1、θ2が15°未満であると、各傾斜面1c〜1fが垂直面に近くなり、円滑な搬送が難しくなるおそれがある。逆に、前記開き角θ1、θ2が150°を越えると、各傾斜面1c〜1fが水平面に近くなり、水平方向の位置決めが難しくなるおそれがある。
前記搬送レール21の傾斜面21a〜21dは、前記被加工物1の傾斜面1c〜1fに対応した角度で形成されている。すなわち、前記被加工物1の傾斜面1c〜1fが内R面1a、1bの法線に対応して形成されている場合には、前記傾斜面21a〜21dも同様の角度で傾斜する傾斜面とされ、傾斜面21a、21b間の開き角θ3や傾斜面21c、21d間の開き角θ4も、前記被加工物1の傾斜面1c、1d間の開き角θ1や傾斜面1e、1f間の開き角θ2と等しく設定される。
前記被加工物1を搬送レール21に載せて搬送する際には、図6(b)に示すように、重力により被加工物1の傾斜面1c、1dが搬送レール21の傾斜面21a、21bに支持されるとともに、被加工物1の傾斜面1e、1fが搬送レール21の傾斜面21c、21dに支持された状態となり、被加工物1の各傾斜面1c〜1fが搬送レール21の傾斜面21aから21d上を摺動することで、被加工物1の搬送が行われ、研削砥石22による研削が行われる。
ここで、前記支持状態は、重力の働きにより必然的に決まるものであり、極めて安定性に優れたものである。しかも、この状態では、前記被加工物1はクリアランスなく支持される形になり、精度良く位置決めされることになる。例えば、被加工物1の加工形状がC型形状である場合、その中心位置は前記搬送レール21への載置により一義的に決まる。したがって、前記搬送レール21により搬送しながら前記研削砥石22によって被加工物1を研削加工すれば、位置ズレによる加工精度の低下を惹起することなく、精度の高い研削加工を安定に行うことが可能である。
なお、前記の例では被加工物1の傾斜面1c〜1f及び搬送レール21の傾斜面21a〜21dはいずれも左右対称とされているが、これに限らず、前記傾斜面1c、1d及び傾斜面21a、21b、あるいは前記傾斜面1e、1f及び傾斜面21c、21dが左右非対称であってもよい。左右非対称であっても前記位置決めは同様に可能であり、精度の高い研削加工を安定に行うことが可能である。
また、前記搬送レール21には、図5(a)、(b)に示すように、補助レール部21e、21fが形成されているが、これら補助レール部21e、21fは、前記研削砥石22による研削加工位置において、前記被加工物1の裏面側を支持する補助部材として機能するものである。この補助レール部21e、21fは、前記被加工物1の裏面側を積極的に付勢する必要はなく、先端が被加工物1の裏面から僅かに離間するように設置すればよい。この場合、補助レール部21e、21fの先端面は、被加工物1の内R面1a、1bとほぼ一致する円弧面とすればよいが、摺動性の観点からは、前記補助レール部21e、21fの先端面の幅が前記被加工物1の幅の1/2以下であることが好ましく、さらに前記先端面の円弧の曲率半径が前記被加工物1の内R面1a、1bの曲率半径よりも小さいことが好ましい。図7に前記補助レール部21e、21fによる被加工物1の裏面支持状態を示す。
被加工物1を例えばC型形状に研削加工する場合、搬送レール21の傾斜面21a〜21dによって被加工物1の内R面1a、1bの両端部を支持する形態では、被加工物1の各内R面1a、1bの中心部に力が加わった時に過剰な力が加わると損傷または破損するおそれがある。前記補助レール部21e、21fを設置し、被加工物1を裏面側から支持しておけば、過剰な力が加わることによる被加工物1の損傷または破損を回避することができる。また、被加工物1が希土類焼結磁石等の場合、研削砥石22の押圧力により撓むことがあるが、前記補助レール部21e、21fは撓みを防止し、搬送される被加工物1の暴れを防止するという機能も発揮する。前記機能は、厚みが0.5〜3mm程度のC型希土類磁石の加工に有効である。
以上のように、図3に示す研削装置を用いることにより、内R面1a、1bから外R面1g、1hまでの一連の研削加工を連続的に行うことができ、しかも内R面1a、1bと外R面1g、1hの中心位置ズレのない精度の高い研削加工が可能である。
前述の輪郭加工用砥石及び輪郭加工用砥石セット、さらには研削装置及び研削方法は、例えば希土類焼結磁石の研削加工に適用して好適である。この場合、希土類焼結磁石を被加工物として前述の研削を行う。
希土類焼結磁石は、例えば希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素を主成分とするものであるが、磁石組成は特に限定されず、用途等に応じて任意に選択すればよい。例えば、希土類元素Rとは、具体的にはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuのことをいい、これらから1種又は2種以上を用いることができる。中でも、資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主成分をNdとすることが好ましい。また、遷移金属元素Tは、従来から用いられている遷移金属元素をいずれも用いることができ、例えばFe、Co、Ni等から1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、磁気特性の点からFeを主体とすることが好ましく、特に、キュリー温度の向上、粒界相の耐蝕性向上等に効果があるCoを添加することが好ましい。また、前記希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bのみならず、他の元素の含有を許容する。例えば、Al、Cu、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが望ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を7000ppm以下、さらには5000ppm以下とすることが望ましい。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。なお、切断対象となる希土類焼結磁石としては、前記R−T−B系の希土類焼結磁石に限られるものではない。例えば希土類焼結磁石は、SmCo系焼結磁石等であってもよく、これらについても本発明を適用することが効果的である。
希土類焼結磁石は粉末冶金法によって作製されるが、その製造プロセスは、基本的には、合金化工程、粗粉砕工程、微粉砕工程、成形工程、焼結工程、時効工程とにより構成される。なお、酸化防止のために、焼結後までの各工程は、ほとんどの工程を真空中、あるいは不活性ガス雰囲気中(窒素ガス雰囲気中、Arガス雰囲気中等)で行う。
合金化工程では、原料となる金属、あるいは合金を所望の希土類合金粉末の組成に応じて配合し、真空あるいは不活性ガス、例えばAr雰囲気中で溶解し、鋳造することにより合金化する。鋳造法としては、任意の方法を採用し得るが、溶融した高温の液体金属を回転ロール上に供給し、合金薄板を連続的に鋳造するストリップキャスト法(連続鋳造法)が生産性等の観点から好適であり、得られる合金の形態の点でも好適である。
前記合金化の際に用いる原料金属(合金)としては、純希土類元素、希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金等を使用することができる。合金は、ほぼ最終磁石組成である単一の合金を用いても良いし、最終磁石組成になるように、組成の異なる複数種類の合金を混合しても良い。
粗粉砕工程では、先に鋳造した原料合金の薄板、あるいはインゴット等を、粒径数百μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用いることができる。粗粉砕性を向上させるために、水素を吸蔵させて脆化させた後、粗粉砕を行うことが効果的である。
前述の粗粉砕工程が終了した後、必要に応じて粗粉砕した原料合金粉に潤滑剤を添加する。潤滑剤としては、例えば脂肪酸系化合物等を使用することができるが、特に、融点が60℃〜120℃の脂肪酸や脂肪酸アミドを潤滑剤として用いることで、良好な磁気特性、特に高配向で高い磁化を有する希土類焼結磁石を得ることができ、その種類や添加量によって、成形体強度を所定の値に調整することができる。
粗粉砕工程の後、微粉砕工程を行うが、この微粉砕工程は、例えば気流式粉砕機等を使用して行われる。微粉砕の際の条件は、用いる気流式粉砕機に応じて適宜設定すればよく、原料合金粉を平均粒径が1〜10μm程度、例えば3〜6μmとなるまで微粉砕する。気流式粉砕機としては、ジェットミル等が好適である。
微粉砕工程の後、磁場中成形工程において、原料合金粉を磁場中にて成形する。具体的には、微粉砕工程にて得られた原料合金粉を電磁石を配置した金型内に充填し、磁場印加によって結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。磁場中成形は、成形圧力と磁界方向が平行な平行磁界成形、成形圧力と磁界方向が直交する直行磁界成形のいずれであってもよい。さらに、磁界印加手段として、パルス電源と空芯コイルも採用することができる。この磁場中成形は、例えば700〜1600kA/mの磁場中で、30〜300MPa、好ましくは130〜160MPa前後の圧力で行えばよい。
前記成形工程により所定の形状に成形した後、焼結工程において、成形体に対して焼結処理を実施する。焼結処理では、前記成形体を真空または不活性ガス雰囲気中(Arガス雰囲気中等)で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、例えば1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよく、焼結後、急冷することが好ましい。なお、焼結工程においては、必要に応じて、焼結に先立って脱脂処理を行うことが好ましい。
前記焼結後には、得られた焼結体に時効処理を施すことが好ましい。この時効処理は、得られる希土類磁石の保磁力Hcjを制御する上で重要な工程であり、例えば不活性ガス雰囲気中あるいは真空中で時効処理を施す。時効処理としては、2段時効処理が好ましく、1段目の時効処理工程では、800℃前後の温度で1〜3時間保持する。次いで、室温〜200℃の範囲内にまで急冷する第1急冷工程を設ける。2段目の時効処理工程では、600℃前後の温度で1〜3時間保持する。次いで、室温まで急冷する第2急冷工程を設ける。600℃近傍の熱処理で保磁力Hcjが大きく増加するため、時効処理を一段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
以上により、例えばブロック形状(直方体形状)の希土類焼結磁石が作製されるが、このブロック形状の希土類焼結磁石を被加工物とし、最終加工物の形状(例えばC型形状)に合わせて輪郭加工を行う。このとき、前記輪郭加工用砥石や輪郭加工用砥石セット、さらには研削装置及び研削方法を用いることで、飛躍的に生産性を向上することが可能であり、精度の高い研削加工を実現することが可能である。例えば、希土類焼結磁石を粉末冶金法によって製造する場合、微粉末を磁場中成形するが、この時、原料となる希土類合金粉末は流動性が悪い。そのため、薄肉小型形状のものは成形することが困難である。本発明は、特に、厚みが1〜50mmの直方体形状の焼結体から厚みが0.5〜5mm程度の最終加工物(希土類焼結磁石)を作製する際に適用することが有効である。なお、製品形状に本発明の加工方法にて加工した後、さらに切断等により所望の寸法に整えることも可能である。
以上、本発明を適用した輪郭加工用砥石、輪郭加工用砥石セット、研削装置、及び研削方法の実施形態について説明してきたが、本発明がこれら実施形態に限定されるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
実施例
被加工物として50mm×20mm×3mmの四角いブロック状の希土類焼結磁石を用い、図3に示す研削装置を用いてC型形状に輪郭加工を行った。研削加工に際しては、複数の希土類焼結磁石ブロックを第1の搬送レール上に配置し、搬送ローラによって搬送しながら内R面及び傾斜面の研削加工を行った後、第2の搬送レールによって搬送を行いながら外R面の研削加工を行った。したがって、本実施例では、第2の研削加工の際には、第2の搬送レールの傾斜面によって希土類焼結磁石ブロックの両端傾斜面が支持される。
被加工物として50mm×20mm×3mmの四角いブロック状の希土類焼結磁石を用い、図3に示す研削装置を用いてC型形状に輪郭加工を行った。研削加工に際しては、複数の希土類焼結磁石ブロックを第1の搬送レール上に配置し、搬送ローラによって搬送しながら内R面及び傾斜面の研削加工を行った後、第2の搬送レールによって搬送を行いながら外R面の研削加工を行った。したがって、本実施例では、第2の研削加工の際には、第2の搬送レールの傾斜面によって希土類焼結磁石ブロックの両端傾斜面が支持される。
研削砥石(第1の輪郭加工用砥石及び第2の輪郭加工用砥石)にはダイヤモンド砥粒を電着した電着砥石を用いた。各輪郭加工用砥石は2個取りに対応するものであり、図2(a)及び図2(b)に示すように、第1の輪郭加工用砥石は2つの内R面に対応した2つの円弧面を有し、第2の輪郭加工用砥石は2つの外R面に対応した2つの円弧面を有する。また、ダイヤモンド砥粒の粒径は100〜500μmとした。研削加工の際の研削砥石の回転数は3000rpm、希土類焼結磁石ブロックの送り速度は200mm/分とした。
比較例
輪郭加工用砥石を1個取りに対応するものとし、他は実施例と同様に希土類焼結磁石ブロックをC型形状に輪郭加工した。したがって、被加工物としては50mm×10mm×3mmの四角いブロック状の希土類焼結磁石を用いた。また、第1の輪郭加工用砥石は1つの内R面に対応した1つの円弧面を有し、第2の輪郭加工用砥石は1つの外R面に対応した1つの円弧面を有する。
輪郭加工用砥石を1個取りに対応するものとし、他は実施例と同様に希土類焼結磁石ブロックをC型形状に輪郭加工した。したがって、被加工物としては50mm×10mm×3mmの四角いブロック状の希土類焼結磁石を用いた。また、第1の輪郭加工用砥石は1つの内R面に対応した1つの円弧面を有し、第2の輪郭加工用砥石は1つの外R面に対応した1つの円弧面を有する。
寸法精度の計測
輪郭加工後のC型希土類焼結磁石において、内R面及び外R面の中心位置及び両端部の厚さを測定した。前記測定をC型希土類焼結磁石の搬送方向の先端部、中央部、後端部について行い、実施例と比較例の寸法精度を比較した。結果を表1に示す。なお、表1において「全体」とあるのは、前記中心位置及び両端部の肉厚を測定し算術平均した値であり、「中央のみ」とあるのは前記中心位置のみについての肉厚の測定結果である。
輪郭加工後のC型希土類焼結磁石において、内R面及び外R面の中心位置及び両端部の厚さを測定した。前記測定をC型希土類焼結磁石の搬送方向の先端部、中央部、後端部について行い、実施例と比較例の寸法精度を比較した。結果を表1に示す。なお、表1において「全体」とあるのは、前記中心位置及び両端部の肉厚を測定し算術平均した値であり、「中央のみ」とあるのは前記中心位置のみについての肉厚の測定結果である。
この表1から明らかなように、2個取りを行った実施例において、比較例に比べて寸法精度が大幅に改善されることがわかる。勿論、2個取りを行った実施例では、比較例の2倍の生産性が実現された。
1 被加工物、1a,1b 内R面、1c,1d,1e,1f 傾斜面、1g,1h 外R面、3 輪郭加工用砥石、3a,3b 円弧面、3c 傾斜面、3d 凸部、4 輪郭加工用砥石、4a,4b 円弧面、4c 凸部、5,6 加工物、11 第1の搬送レール、12 第1の研削砥石、13 支持治具、21 第2の搬送レール、21a,21b,21c,21d 傾斜面、21e,21f 補助レール部、22 第2の研削砥石
Claims (21)
- 単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されており、被加工物に対して複数加工物分の輪郭加工が一括して行われることを特徴とする輪郭加工用砥石。
- 各輪郭加工面が円弧状の面であることを特徴とする請求項1記載の輪郭加工用砥石。
- 前記輪郭加工面が偶数個形成されており、電着砥石全体の形状が左右対称であることを特徴とする請求項1または2記載の輪郭加工用砥石。
- 各輪郭加工面の形状が左右非対称または左右対称であることを特徴とする請求項3記載の輪郭加工用砥石。
- 各輪郭加工面間に加工物間を切り離す凸部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の輪郭加工用砥石。
- 被加工物の両面に対してそれぞれ輪郭加工を行う1組の輪郭加工用砥石を備えた輪郭加工用砥石セットであって、
各輪郭加工用砥石は単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されており、被加工物に対して複数加工物分の輪郭加工が一括して行われることを特徴とする輪郭加工用砥石セット。 - 各輪郭加工用砥石に形成された各輪郭加工面が円弧状の面であり、前記加工物形状がC型形状であることを特徴とする請求項6記載の輪郭加工用砥石セット。
- 各輪郭加工用砥石において前記輪郭加工面が偶数個形成されており、電着砥石全体の形状が左右対称であることを特徴とする請求項6または7記載の輪郭加工用砥石セット。
- 各輪郭加工面の形状が左右非対称または左右対称であることを特徴とする請求項8記載の輪郭加工用砥石セット。
- 前記1組の輪郭加工用砥石の各加工物間の境界部分における研削加工代が互いに重なるように設定され、これにより前記境界部分が切断されることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項記載の輪郭加工用砥石セット。
- 前記各輪郭加工用砥石は、各加工物間の境界部分にそれぞれ凸部を有することを特徴とする請求項10記載の輪郭加工用砥石セット。
- 被加工物を搬送する搬送レールと、前記搬送レールによって搬送される被加工物を輪郭加工する輪郭加工用砥石とを備え、
前記輪郭加工用砥石は、単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されていることを特徴とする研削装置。 - 前記被加工物には、各加工物の両端部分に対応して傾斜面が複数組形成されるとともに、
前記搬送レールには、前記被加工物の傾斜面に対応する複数組の傾斜面が搬送方向に延在するように形成され、
被加工物の各傾斜面が搬送レールの各傾斜面で支持された状態で搬送され、前記輪郭加工用砥石により被加工物に対して複数加工物分の輪郭加工が一括して行われることを特徴とする請求項12記載の研削装置。 - 前記被加工物が各加工物に対応して複数組の傾斜面を有し、前記搬送レールがこれら複数組の傾斜面に対応して複数組の傾斜面を有することを特徴とする請求項13記載の研削装置。
- 被加工物に対して第1の研削加工を施す第1研削エリアと、第2の研削加工を施す第2研削エリアを備え、
前記第1の研削エリアにおいて被加工物の両端部分に傾斜面が形成され、第2研削エリアの搬送レールが前記傾斜面を有する搬送レールとされていることを特徴とする請求項13または14項記載の研削装置。 - 前記第1研削エリア及び第2研削エリアにおいて被加工物の両面に対してそれぞれ輪郭加工が行われ、各輪郭加工用砥石は単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されていることを特徴とする請求項15記載の研削装置。
- 前記第1研削エリアの輪郭加工用砥石は、複数組の傾斜面形成部を有するとともに、これら傾斜面形成部間にそれぞれ前記輪郭加工面を有することを特徴とする請求項16記載の研削装置。
- 前記第2研削エリアの輪郭加工用砥石は、各輪郭加工面間に凸部が形成されており、
前記第1研削エリアの輪郭加工用砥石の傾斜面形成部の研削加工代と、前記第2研削エリアの輪郭加工用砥石の凸部の研削加工代とが重なることにより、各加工物間の境界部分が切断されることを特徴とする請求項17記載の研削装置。 - 1組の輪郭加工用砥石により被加工物の両面に対してそれぞれ輪郭加工を行う研削方法であって、
前記各輪郭加工用砥石は単一の電着砥石に加工物形状に対応した輪郭加工面が複数形成されたものとし、被加工物に対して複数加工物分の輪郭加工を一括して行うことを特徴とする研削方法。 - 前記輪郭加工と同時に各加工物間の切断を行うことを特徴とする請求項19記載の研削方法。
- 被加工物が希土類焼結磁石であることを特徴とする請求項19または20記載の研削方法。
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