JP2006283100A - 希土類合金粉成形体の切断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 目詰まりによる切断効率の低下を招くことがなく、また成形体を破損することなく効率的に切断することが可能な希土類合金粉成形体の切断方法を提供する。
【解決手段】 希土類元素を含む原料合金粉を成形し、成形した成形体を所定の形状に切断加工するに際し、ワイヤーソーを用いて切断加工を行う。切断に際しては、成形体強度とワイヤーテンションを適切な関係にする。具体的には、成形体の抗折強度を0.4〜1.3MPaとし、ワイヤーソーのワイヤテンションを580〜1770N/mm2とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 希土類元素を含む原料合金粉を成形し、成形した成形体を所定の形状に切断加工するに際し、ワイヤーソーを用いて切断加工を行う。切断に際しては、成形体強度とワイヤーテンションを適切な関係にする。具体的には、成形体の抗折強度を0.4〜1.3MPaとし、ワイヤーソーのワイヤテンションを580〜1770N/mm2とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、希土類磁石粉末成形体の切断方法に関するものであり、特に、ワイヤーソーを用いた切断方法の改良に関する。
例えばNd−Fe−B磁石等のR−T−B系(Rは、Yを含む希土類元素の1種以上である。Tは、Feを必須とし、その他金属元素を含む。)焼結磁石は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であること等の利点を有することから、近年、その需要は益々拡大する傾向にある。このような状況から、R−T−B系焼結磁石の磁気特性を向上するための研究開発や、品質の高い希土類焼結磁石を製造するための製造方法の改良等が各方面において進められている。
希土類焼結磁石の製造方法としては、粉末冶金法が知られており、低コストでの製造が可能なことから広く用いられている。粉末冶金法による希土類焼結磁石の製造方法は、基本的には、先ず、原料合金インゴットを粗粉砕及び微粉砕し、粒径が数μm程度の原料合金粉を得る。このようにして得られた原料合金粉を静磁場中で磁場配向させ、磁場を印加した状態で成形を行う。磁場中成形後、成形体を真空中、または不活性ガス雰囲気中で焼結を行う。
前述の粉末冶金法による希土類焼結磁石の製造においては、得られる希土類焼結磁石を所定の形状とするため成形金型へ原料合金粉を充填して行なっている。しかしながら近年の小型化・薄型化に対応するため、焼結体寸法として厚さ2.5mm程度のものが要求されており、成形体寸法として厚さ3.5mm程度に成形する必要がある。単一成形品を成形しようとすると、金型の開口部が狭くなり、原料合金粉の充填が均一に行えなくなる不具合が出てきている。これを解消するために、原料合金粉をブロック状に成形し、ブロック成形体を焼結した後に所望の厚さに機械加工(切断加工)することが行なわれてきている。この機械加工としては、ダイヤモンド砥石やカッター等を用いて切断する方法が知られている。
しかしながら、焼結後に切断する方法を採用した場合、製造コストの点で問題が多い。例えば、切断加工により焼結体から多量の切粉が生じるが、この切粉は既に焼結されているため、再利用することは極めて困難であり、加工の仕方によっては焼結体のロスが多くなり、材料歩留まりの低下を招く。希土類焼結磁石を構成する材料は高価であるため、材料歩留まりの低下は、コストに対して致命的な欠陥となる。また、希土類焼結磁石の焼結体は、極めて硬く脆いうえに、加工負荷が大きいため、高精度な加工が困難であり、加工時間を長時間要するという問題もある。
このような状況から、焼結前の成形体の段階で切断加工を行うことも以前から提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2等を参照)。特許文献1には、希土類焼結磁石の製造方法であって、磁石粉末の成形体を作製する工程と、メタルソーを用い不活性ガス(N2ガス)を吹き付けて前記成形体を加工する工程と、前記成形体を焼結する工程と、を包含する焼結磁石の製造方法が開示されている。そして、成形体の段階で切断加工を行うことで、希土類焼結磁石の加工時間及び加工コストの低減を実現している。特許文献2記載の発明では、切断手段としてワイヤソーを用いている。
特開昭53−899号公報
特開2003−303728号公報
前記ワイヤーソーによる切断は、例えば半導体インゴット等の切断方法としても知られるものであり、研削砥粒を含むスラリーを供給しながら行う方法(遊離砥粒方式)や、砥粒を固着したワイヤを用いる方法(固定砥粒方式)等が知られている。
ワイヤーを用いて切断する場合は、固定砥粒方式のワイヤーを用いるのが適している。これは次の理由による。遊離砥粒方式のワイヤーでは、切削油を使う必要があるが、例えば、希土類合金粉成形体は、酸化し易い希土類合金粉によって構成されているので、切削油等を用いることはできない。前記成形体が未焼成であり、この段階で切削油等と接触すると、切削油等が残存して焼結時に酸素源、炭素源となり、得られる希土類焼結磁石の磁気特性を低下するためである。また、希土類合金粉成形体は、希土類合金粉を加圧することにより押し固めたものであり、脆くて崩れ易く、取り扱いが難しい。固定砥粒方式のワイヤーを用いた場合、メタルソー等の回転運動の砥石を用いる方法と異なり、発火の危険性が少ない利点があるが、目詰まりを起こして安定な切断ができないという課題がある。特許文献2記載の発明では切削液を用いて、目詰まりを解消するとしているが、成形体に切削液が染み込んで希土類焼結磁石の表面近傍の磁気特性が劣化するために、薄い形状の希土類焼結磁石を得るための切断加工には適していない。
また、希土類合金粉成形体は、希土類合金粉を加圧することにより押し固めたものであり、脆くて崩れ易く、取り扱いが難しい。本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、目詰まりによる切断効率の低下を招くことがなく、また希土類焼結磁石の表面近傍の磁気特性劣化を起こさせることがなく、さらには成形体を破損することなく切断加工の厚みを薄く且つ効率的に切断することが可能な希土類合金粉成形体の切断方法を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の切断方法は、希土類元素を含む原料合金粉を成形し、成形した成形体を所定の形状に切断加工するに際し、ワイヤーソーを用いて前記切断加工を行うとともに、前記成形体の抗折強度を0.4〜1.3MPaとし、前記ワイヤーソーのワイヤテンションを580〜1770N/mm2とすることを特徴とする。
希土類合金粉の成形体をワイヤーソーを用いて切断加工する場合、切断対象となる成形体の強度(抗折強度)に応じてワイヤーテンションを適切な関係に設定する必要がある。具体的には、前記のように、成形体の抗折強度を0.4〜1.3MPaとし、前記ワイヤーソーのワイヤテンションを580〜1770N/mm2とすることで、ワイヤーの目詰まりが解消される。また、寸法精度が高く、寸法バラツキの少ない成形体切断片が得られる。さらに、切削油等を使用する必要がないので、それらに含まれる酸素、炭素等の影響を受けず、焼結後に表面近傍の磁気特性劣化を起らないため、成形体の切断寸法として4mm未満のものが得られる。
本発明によれば、希土類合金粉成形体を切断するに際して、目詰まりによる切断効率の低下を招くことがないので、効率的に希土類合金粉成形体を切断することが可能である。また、成形体の抗折強度とワイヤーテンションを適切な関係に設定しているので、寸法精度が高く、寸法バラツキの無い切断加工が可能である。さらに、切削油等を使用する必要がないので、酸素や炭素等の悪影響を受けることがなく、焼結後に磁気特性に優れた希土類磁石を得ることが可能である。
以下、本発明を適用した希土類合金粉成形体の切断方法について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の切断方法において、切断対象となる希土類合金粉成形体は、希土類焼結磁石の製造過程で成形される希土類合金粉成形体であり、希土類合金粉末を加圧成形したものである。希土類焼結磁石の粉末冶金法による製造においては、希土類合金粉末を成形して成形体とし、これを焼結することにより希土類焼結磁石とすることが行われている。本発明の切断方法は、この希土類焼結磁石の製造において、焼結前の成形体をワイヤーソーで切断するものである。
最終的に作製される希土類焼結磁石は、例えば希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素を主成分とするものであるが、磁石組成は特に限定されず、用途等に応じて任意に選択すればよい。例えば、希土類元素Rとは、具体的にはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuのことをいい、これらから1種又は2種以上を用いることができる。中でも、資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主成分をNdとすることが好ましい。また、遷移金属元素Tは、従来から用いられている遷移金属元素をいずれも用いることができ、例えばFe、Co、Ni等から1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、焼結性の点からFe、Coが好ましく、特に磁気特性の点からFeを主体とすることが好ましい。また、前記希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bの他、保磁力等の特性改善を目的として、例えばAl等の元素を添加してもよい。これらの元素の他、不可避的不純物又は微量添加物として、例えば炭素や酸素等が含有されていてもよい。
以下においては、粉末冶金法による希土類焼結磁石の製造方法について説明し、その中で本発明の切断方法について説明する。
前記の通り、希土類焼結磁石は粉末冶金法によって作製されるが、その製造プロセスは、基本的には、合金化工程、粗粉砕工程、微粉砕工程、磁場中成形工程、成形体切断加工工程、焼結工程、時効工程、機械加工工程、及び表面処理工程とにより構成される。なお、酸化防止のために、焼結後までの各工程は、ほとんどの工程を真空中、あるいは不活性ガス雰囲気中(窒素ガス雰囲気中、Arガス雰囲気中等)で行う。
合金化工程では、原料となる金属、あるいは合金を所望の希土類合金粉末の組成に応じて配合し、真空あるいは不活性ガス、例えばAr雰囲気中で溶解し、鋳造することにより合金化する。鋳造法としては、任意の方法を採用し得るが、溶融した高温の液体金属を回転ロール上に供給し、合金薄板を連続的に鋳造するストリップキャスト法(連続鋳造法)が生産性等の観点から好適であり、得られる合金の形態の点でも好適である。
前記合金化の際に用いる原料金属(合金)としては、純希土類元素、希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金等を使用することができる。合金は、ほぼ最終磁石組成である単一の合金を用いても良いし、最終磁石組成になるように、組成の異なる複数種類の合金を混合しても良い。
粗粉砕工程では、先に鋳造した原料合金の薄板、あるいはインゴット等を、粒径数百μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用いることができる。粗粉砕性を向上させるために、水素を吸蔵させて脆化させた後、粗粉砕を行うことが効果的である。
前述の粗粉砕工程が終了した後、粗粉砕した原料合金粉に潤滑剤を添加する。潤滑剤としては、例えば脂肪酸系化合物等を使用することができるが、特に、融点が60℃〜120℃の脂肪酸や脂肪酸アミドを潤滑剤として用いることで、良好な磁気特性、特に高配向度で高い磁化を有する希土類焼結磁石を得ることができると共にその種類や添加量によって、成形体強度を所定の値に調整することができる。潤滑剤の添加量としては、0.03〜0.2質量%程度とすることが好ましい。潤滑剤の添加量が0.03質量%未満であると、潤滑剤の磁気特性に与える効果が十分に得られず、また成形体強度が高すぎて切断加工が困難となる。0.2質量%以下の添加量であれば、焼結後の残留炭素の量を効果的に抑制することができ、希土類焼結磁石の磁気特性を向上させる上で有効であるが、0.2質量%を越えると、成形体強度が低くなり、切断加工時に割れ等の欠陥が生じる。
粗粉砕工程の後、微粉砕工程を行うが、この微粉砕工程は、例えば気流式粉砕機等を使用して行われる。微粉砕の際の条件は、用いる気流式粉砕機に応じて適宜設定すればよく、原料合金粉を平均粒径が1〜10μm程度、例えば3〜6μmとなるまで微粉砕する。気流式粉砕機としては、ジェットミル等が好適である。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粉体の粒子を加速し、粉体の粒子同士の衝突や、衝突板あるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。ジェットミルは、一般的に、流動層を利用するジェットミルや渦流を利用するジェットミル等、気流生成手法により、あるいは衝突板を用いるジェットミル等、作用物もしくは機構により分類される。気流生成手法や作用物等の組合せ並びに条件により、粉砕粒径等を設定・制御する。これらのジェットミルのうちでは、流動層を利用するジェットミル、及び渦流を利用するジェットミルが好ましく、特に流動層を利用するジェットミルが好ましい。例えば原料合金粉と潤滑剤とは比重が大きく異なるが、流動層中及び渦流中では比重の違いに殆ど関係なく良好に粉砕及び混合が行なわれ、特に流動層中では比重の違いは殆ど問題とならないからである。
微粉砕工程の後、磁場中成形工程において、原料合金粉を磁場中にて成形する。具体的には、微粉砕工程にて得られた原料合金粉を電磁石を配置した金型内に充填し、磁場印加によって結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。磁場中成形は、成形圧力と磁界方向が平行な縦磁場成形、成形圧力と磁界方向が直交する横磁場成形のいずれであってもよい。さらに、磁界印加手段として、パルス電源と空芯コイルも採用することができる。この磁場中成形は、例えば700〜1300kA/mの磁場中で、130〜160MPa前後の圧力で行えばよい。
前記成形工程においては、成形体の強度、ここでは抗折強度を適切に設定する必要があり、具体的には、前記抗折強度を0.4〜1.3MPaとする。成形体の抗折強度が0.4MPa未満であると、切断加工時に割れ等の欠陥を生じ易いという不都合が生ずるおそれがある。逆に、成形体の抗折強度が1.3MPaを超えると、切断加工時に目詰まりを生じ易くなるとともに、ワイヤーの断線が起き易くなり、安定な切断が困難になるという問題が生ずるおそれがある。
前記成形体の抗折強度を前記範囲内にするには、融点が60℃〜120℃の脂肪酸系化合物を潤滑剤として使用し、その添加量を0.03〜0.2質量%の間で調整した原料合金粉を用い、さらに成形圧力を50〜150MPaの間で調整する。主にこの2つの条件により、前記成形体強度が得られる。
次に、成形体切断加工工程において、成形体に加工を施して任意の形状とする。本発明の場合、切断加工にワイヤーソーを用い、これにより所定の厚さに切断する等の切断加工を施す。図1は、例えば直方体形状の成形体1をワイヤーソー2で切断する様子を示すものであり、成形体1をワイヤーソー2の複数本(本例では4本)のワイヤー2a〜2dによって所定の切断線で所定の厚さにスライス加工する。
前記ワイヤーソー2は、切断用の各ワイヤー2a〜2dと、各ワイヤー2aから2dの安定走行のためのガイド溝を設けた一対のガイドローラ3,4とから構成されており、これらガイドローラ3,4間の領域において、各ワイヤー2a〜2dの走行により被加工物である成形体1の切断が行われる。
ここで、前記ワイヤーソー2は、固定砥粒方式のものを採用することが好ましい。例えば遊離砥粒方式のものを採用すると、砥粒を含むスラリーを供給する必要が生じ、スラリーに含まれる有機溶媒や油等の酸素や炭素が成形体に残存し、焼結後の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。これに対して、固定砥粒方式では、遊離砥粒方式のようなスラリーの供給は不要であり、各ワイヤー2a〜2dに固着された砥粒によって切断が行われる。
前記ワイヤーソー2による切断に際しては、前記成形体1の抗折強度との関係で、ワイヤーテンションを適切に設定する必要がある。具体的には、前記成形体1の抗折強度を0.4〜1.3MPaとした場合、ワイヤーテンションを580〜1770N/mm2とする。前記ワイヤーテンションが580N/mm2未満であると、切断加工厚みの不均一という不都合が生ずる。逆に、ワイヤーテンションが1770N/mm2を超えると、切断加工中に起こるワイヤーの断線が問題になる。
また、前記のように固定砥粒方式のワイヤーソー2を用いて成形体1を切断する場合、ワイヤー2a〜2dに切削粉が付着する目詰まりが起こる可能性が高い。ワイヤー2a〜2dが目詰まりすると、効率的な切断が難しくなり、極端な場合には、ほとんど切断が不可能な状態となる。
そこで、前記ワイヤーソー2による切断に際して、前記目詰まりの防止策を施すことが好ましい。通常、ワイヤーソー2の目詰まり防止策としては、例えば切削油を流す等、液体により切削粉を除去することで目詰まりを回避することが行われる、このような切削油を用いた目詰まり防止では、切削油の酸素や炭素が成形体に残存し、焼結後の特性に悪影響を与える可能性が生ずる。
本実施形態では、前記目詰まり防止に切削油等の液体を用いず、例えば、図2に示すように、高圧ガスをワイヤーソー2のワイヤー列に向けて噴射することが好ましい。前記高圧ガスをワイヤー列に向けて噴射することで、各ワイヤー2a〜2dに付着した切削粉を吹き飛ばし、これを除去して目詰まりを防止することができる。なお、本例では、高圧ガス噴射用のノズル5a〜5dを各ワイヤー2a〜2dに対向して設置し、各ノズル5a〜5dから噴射される高圧ガスにより各ワイヤー2a〜2dに付着した切削粉を吹き飛ばすようにしているが、これに限らず、例えばスリット状のノズル等により、複数本のワイヤー2a〜2dに一括して高圧ガスを噴射するようにしてもよい。あるいは、単一のノズルをワイヤーの配列方向に移動もしくは首振りさせてもよい。
前記高圧ガスの噴射において、高圧ガスとしては不活性ガス、例えば窒素ガス等を用いることが好ましい。高圧ガスとして空気等を用いると、酸素が含まれるため、成形体1が酸化するおそれがあり、前記切削油等を用いた場合と同様、焼結後の特性に悪影響を与える可能性が生ずる。活性度の高い(酸素濃度が少ない)原料合金粉を使用する場合には急激な酸化により発熱・発火を起こす危険性もある。
前記高圧ガスの噴射圧力は、1.0〜3.0MPaとすることが好ましい。噴射圧力が低すぎると、ワイヤー2a〜2dに付着した切削粉を十分に除去することができなくなるおそれがある。逆に、噴射圧力が前記範囲を越えて高すぎても、切削粉の除去効率はさほど変わらず、高圧化のための装置構造の改良が必要になったり、周囲に与える影響を考慮する必要が生ずる等、設備投資等の点でデメリットが生ずるおそれがある。また、切削粉が舞い上がり、粉塵火災の危険性もある。特に、活性度の高い(酸素濃度が少ない)原料合金粉を使用する場合にはより危険性が高い。
また、前記高圧ガスは、前記各ノズル5a〜5dから常時噴射するようにしてもよいし、間欠的に噴射するようにしてもよい。前者によれば、常にワイヤー2a〜2dをリフレッシュすることができ、円滑な切断を実現することが可能である。後者の場合、間欠的な噴射による衝撃により、強固に付着した切削粉を除去することができ、また高圧ガスの消費を最小限に抑えることができる。
さらに、前記高圧ガスは、複数の方向から噴射するようにしてもよい。各ワイヤー2a〜2dにおいては、その周囲に切削粉が付着し、一方向からの高圧ガスの噴射だけでは付着した切削粉を十分に除去しきれない場合がある。このような場合、前記のように高圧ガスを複数の方向から噴射することで、ワイヤー2a〜2dに付着した切削粉を満遍なく除去することができる。なお、高圧ガスを複数の方向から噴射する場合、複数の方向から同時に高圧ガスを噴射するようにしてもよいし、時間差を設けて別々の方向から順次噴射するようにしてもよい。
前記高圧ガス噴射用のノズル5a〜5dを設置して、各ノズル5a〜5dから噴射される高圧ガスにより各ワイヤー2a〜2dに付着した切削粉を吹き飛ばす場合、各ノズル5a〜5dから噴射される高圧ガスを成形体1に直接吹き付けないようにすることが好ましい。高圧ガスが成形体1に直接吹き付けられると、成形体1の強度にもよるが、特に成形体1の強度が低い場合等には変形や崩壊の可能性が生ずる。
以上のように、ワイヤーソー2を用い、高圧ガスを噴射しながら成形体1を切断することで、ワイヤー2a〜2dの目詰まりを解消することができ、寸法精度の高い切断が可能で、寸法バラツキの小さな切断片を得ることが可能である。また、ワイヤー2a〜2dの目詰まり防止に切削油等の液体を用いていないので、それらに含まれる酸素や炭素等の影響を受けず、次の焼結工程において焼結体の組成変動等が起こらない。
以上の成形体切断加工工程の後、焼結工程において、所定の形状に加工した成形体に対して焼結処理を実施する。すなわち、前述のように高圧流体で所望の形状に加工した成形体を、真空または不活性ガス雰囲気中(Arガス雰囲気中等)で焼結する。
焼結工程においては、必要に応じて、焼結に先立って脱脂処理を行う。脱脂処理は、例えば温度100〜500℃、圧力10−1Torr以下の条件下で30分以上保持して行う。この処理により、成形体中に残留した有機溶媒、油等の流体を十分に除去することができる。なお、保持温度は、100〜500℃の温度範囲であれば一点に固定する必要はなく、異なる二点以上の温度に保持するようにしてもよい。また、例えば10−1Torr以下の圧力下で、室温から500℃までの昇温速度を10℃/分以下、好ましくは5℃/分以下とすることによっても、前記処理と同様な効果を得ることができる。
焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、例えば1000〜1150℃で1〜5時間程度焼結すればよく、焼結後、急冷することが好ましい。
前記焼結後には、得られた焼結体に時効処理を施すことが好ましい。この時効処理は、得られる希土類磁石の保磁力Hcjを制御する上で重要な工程であり、例えば不活性ガス雰囲気中あるいは真空中で時効処理を施す。時効処理としては、2段時効処理が好ましく、1段目の時効処理工程では、800℃前後の温度で1〜3時間保持する。次いで、室温〜200℃の範囲内にまで急冷する第1急冷工程を設ける。2段目の時効処理工程では、550℃前後の温度で1〜3時間保持する。次いで、室温まで急冷する第2急冷工程を設ける。600℃近傍の熱処理で保磁力Hcjが大きく増加するため、時効処理を一段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
前記時効工程の後、加工工程及び表面処理工程を行う。加工工程は、所望の形状に機械的に成形する工程であるが、本発明では、ワイヤーソー切断加工により、製品形状に近い形状に成形体を予め加工してあるため、省略してもよい。また、加工工程を実施する場合でも、従来の方法に比べて、焼結後の加工量や、焼結後の加工に用いる加工治具への負荷を大幅に低減することができる。表面処理工程は、得られた希土類焼結磁石の酸化を抑えるために行う工程であり、例えばめっき被膜や樹脂被膜を希土類焼結磁石の表面に形成する。
次に、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
試料の作製
本実施例では、以下のように矩形形状のNdFeB磁石を製造した。すなわち、先ず、Nd30質量%、Dy4質量%、B1.0質量%、Co0.5質量%、残部Feなる組成を有する磁石原料粉を作製し、磁場中成形して成形体を得た。これをワイヤーソーにより切断加工した後、焼結して希土類焼結磁石とし、その表面にエポキシ樹脂を塗装し、永久磁石試料とした。
本実施例では、以下のように矩形形状のNdFeB磁石を製造した。すなわち、先ず、Nd30質量%、Dy4質量%、B1.0質量%、Co0.5質量%、残部Feなる組成を有する磁石原料粉を作製し、磁場中成形して成形体を得た。これをワイヤーソーにより切断加工した後、焼結して希土類焼結磁石とし、その表面にエポキシ樹脂を塗装し、永久磁石試料とした。
実施例1〜4
前記成形体の抗折強度を0.4〜1.3MPa、ワイヤーソーのワイヤーテンションを580〜1770N/mm2とし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
前記成形体の抗折強度を0.4〜1.3MPa、ワイヤーソーのワイヤーテンションを580〜1770N/mm2とし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
比較例1
前記成形体の抗折強度を0.3MPaとし、ワイヤーソーのワイヤーテンションを1180N/mm2とし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
前記成形体の抗折強度を0.3MPaとし、ワイヤーソーのワイヤーテンションを1180N/mm2とし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
比較例2
前記成形体の抗折強度を1.5MPaとし、ワイヤーソーのワイヤーテンションを1180N/mm2とし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
前記成形体の抗折強度を1.5MPaとし、ワイヤーソーのワイヤーテンションを1180N/mm2とし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
比較例3
前記ワイヤーテンションを390N/mm2とし、成形体の抗折強度を0.8MPaとし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
前記ワイヤーテンションを390N/mm2とし、成形体の抗折強度を0.8MPaとし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
比較例4
前記ワイヤーテンションを2550N/mm2とし、成形体の抗折強度を0.8MPaとし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
前記ワイヤーテンションを2550N/mm2とし、成形体の抗折強度を0.8MPaとし、切断寸法を3.5mmに設定して成形体の切断を行った。
比較例5
前記ワイヤーテンションを1180N/mm2とし、成形体の抗折強度を0.3MPa(ワイヤーテンション並びに成形体の抗折強度は比較例1と同条件)として、切断寸法を4.8mmに設定して成形体の切断を行った。
前記ワイヤーテンションを1180N/mm2とし、成形体の抗折強度を0.3MPa(ワイヤーテンション並びに成形体の抗折強度は比較例1と同条件)として、切断寸法を4.8mmに設定して成形体の切断を行った。
これら実施例及び比較例について、切断加工歩留まりを調べた。結果を表1に示す。なお、表1の判定の欄において、「○」は切断加工歩留まりが90%以上であった場合を表し、「△」は切断加工歩留まりが90%未満、85%以上であった場合、「×」は切断加工歩留まりが85%未満であった場合をそれぞれ表す。
この表1から明らかなように、成形体強度とワイヤーテンションの関係が適切でない各比較例では、目詰まりの発生等により切断加工歩留まりが低下し、また成形体切断片の寸法精度も低いものであった。なお、切断寸法を4.8mmとした比較例5では、切断加工歩留まりは90%に満たなかった(89.5%)ものの、比較例1よりも切断加工歩留まりが改善されている。これは、切断加工寸法を厚くしたことによるものと考えられる。これに対して、本発明を適用した実施例では、切断寸法が小さくても、目詰まり無く高い寸法精度の成形体切断片を歩留まり良く得ることができ、焼結後の希土類焼結磁石も磁気特性に優れるものであった。
1 成形体、2 ワイヤーソー、2a〜2d ワイヤー、3,4 ガイドローラ、5a〜5d 高圧ガス噴射ノズル
Claims (3)
- 希土類元素を含む原料合金粉を成形し、成形した成形体を所定の形状に切断加工するに際し、
ワイヤーソーを用いて前記切断加工を行うとともに、前記成形体の抗折強度を0.4〜1.3MPaとし、前記ワイヤーソーのワイヤテンションを580〜1770N/mm2とすることを特徴とする希土類合金粉成形体の切断方法。 - 前記ワイヤーソーは、固定砥粒方式のワイヤーソーであることを特徴とする請求項1記載の希土類合金粉成形体の切断方法。
- 前記成形体の切断寸法が4mm未満であることを特徴とする請求項1または2記載の希土類合金粉成形体の切断方法。
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