JP2022054683A - R-t-b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R-t-b系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】不活性雰囲気の準備が不要なR-T-B系焼結磁石の製造方法を提供する。【解決手段】本開示のR-T-B系焼結磁石の製造方法は、R-T-B系焼結磁石用合金の粉末を準備する粉砕工程S10と、前記粉末を用いて粉末成形体を作製する成形工程S20と、前記粉末成形体を切断し、複数の成形体片に分割する切断工程S30と、前記複数の成形体片のそれぞれを焼結して複数の焼結体を作製する焼結工程S40とを含み、前記切断工程は、液体中に沈めた前記粉末成形体を、走行する金属素線によって切断することを含む。【選択図】図1

Description

本願は、R-T-B系焼結磁石の製造方法に関する。
R-T-B系焼結磁石(Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択される少なくとも1つを必ず含み、Tは遷移金属の少なくとも1つでありFeを必ず含み、Bはホウ素である)は、RFe14B型結晶構造を有する化合物の主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相および微量添加元素や不純物の影響により生成する化合物相とから構成されている。R-T-B系焼結磁石は、高い残留磁束密度B(以下、単に「B」と記載する場合がある)と、高い保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と記載する場合がある)を示し、優れた磁気特性を有することから、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られている。このため、R-T-B系焼結磁石は、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車(EV、HV、PHV)用モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品など多種多様な用途に用いられている。
このようなR-T-B系焼結磁石は、例えば、合金粉末を準備する工程、合金粉末をプレス成形して粉末成形体を作製する工程、粉末成形体を焼結する工程を経て製造される。合金粉末は、例えば、以下の方法で作製される。
まず、インゴット法またはストリップキャスト法などの方法によって各種原料金属の溶湯から合金を製造する。得られた合金を粉砕工程に供し、所定の粒径分布を有する合金粉末を得る。この粉砕工程には、通常、粗粉砕工程と微粉砕工程とが含まれており、前者は、例えば水素脆化現象を利用して、後者は例えば気流式粉砕機(ジェットミル)を用いて行われる。
粉末成形体を焼結する工程によって得られた焼結体は、その後、研削、切断などの機械的な加工を施され、所望の形状およびサイズを持つように個片化される。より詳細には、まず、R-Fe-B系希土類磁石粉末をプレス装置で圧縮成形することにより、最終的な磁石製品よりも大きいサイズの成形体が作製される。そして、成形体を焼結工程によって焼結体にした後、例えば超硬合金製ブレードソー、または回転砥石などによって焼結体を研削加工し、所望の形状を付与することが行われている。例えば、まずブロック形状を有する焼結体を作製した後、その焼結体をブレードソーなどでスライスすることによって複数のプレート状焼結体部分を切り出すことが行われている。
しかしながら、R-Fe-B系焼結磁石などの希土類合金磁石の焼結体は極めて硬くて脆い上に、加工負荷が大きいため、高精度の研削加工は困難な作業であり、加工時間が長くかかる。また、加工によって滅失する材料部分が不可避的に発生する。このため、加工工程が製造コスト増加の大きな原因となっていた。
例えば前者の問題を解決するために、特許文献1は、磁石成形体を焼結前にワイヤソーを用いて加工する技術を記載している。ワイヤソーとは、一方向または双方向に走行するワイヤを、加工すべき成形体に押し付け、ワイヤと成形体との間にある砥粒によって成形体を研削または切断する加工技術である。この技術によれば、焼結体よりも格段に柔らかくて加工しやすい状態にある粉末成形体を切断するため、切断加工に要する時間が大幅に短縮される。
特開2003-303728号公報
特許文献1は、0.1mm以上1.0mm以下の外径を有するワイヤと、このワイヤに固定された砥粒とを有するワイヤソーを用いて、酸素濃度がモル比で全体の5%以上18%以下に調節された不活性ガス雰囲気中で粉末成形体を加工することを開示している。このように酸素濃度が制御された不活性雰囲気中でワイヤソー加工を行うことは、設備や管理が煩雑になり、量産性に劣る。
本開示の実施形態は、不活性雰囲気の準備が必要ないワイヤソー工程を可能にする新しいR-T-B系焼結磁石の製造方法を提供する。
本開示のR-T-B系焼結磁石の製造方法は、例示的な実施形態において、R-T-B系焼結磁石用合金(Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択される少なくとも1つを必ず含み、Tは遷移金属の少なくとも1つでありFeを必ず含み、Bはホウ素である)の粉末を準備する粉砕工程と、前記粉末を用いて粉末成形体を作製する成形工程と、前記粉末成形体を切断し、複数の成形体片に分割する切断工程と、前記複数の成形体片のそれぞれを焼結して複数の焼結体を作製する焼結工程とを含み、前記切断工程は、液体中に沈めた前記粉末成形体を、走行する金属素線によって切断することを含む。
ある実施形態では、前記切断工程において、前記金属素線の走行速度は300m/分以上である。
ある実施形態では、前記切断工程において、前記金属素線の張力は3kgf以上である。
ある実施形態では、前記切断工程において、前記金属素線の走行方向に対して直交する方向の切込み速度は、100mm/分以上である。
ある実施形態において、前記粉末成形体を準備する工程は、湿式プレスによって前記粉末を成形する工程を含む。
ある実施形態において、前記湿式プレスは、前記切断工程における前記液体と同一種類の液体を前記粉末に加えて行う。
ある実施形態において、前記切断工程によって前記粉末成形体から削られた前記粉末の粒子を前記液体中から回収する工程を更に含む。
本開示の実施形態によれば、不活性雰囲気を準備することなくワイヤソーによる切断が可能となり、量産性に優れる。さらに、ワイヤソーから脱落した砥粒が切粉中に混入することを防ぐことも可能になる。このため、ワイヤソーによる切断工程中に粉末成形体から出た切粉を再利用して磁石の製造に用いることが容易になり、高性能磁石の特性を維持しつつ、製造コストの低減を実現することも可能になる。
図1は、本開示の実施形態における製造方法の主な工程を示すフローチャートである。 図2は、本開示の実施形態で用いられるワイヤソー装置の構成を模式的に示す斜視図である。 図3Aは、液体中に沈めた粉末成形体をワイヤソーによって切断する工程を説明するための正面図である。 図3Bは、液体中に沈めた粉末成形体を金属素線のワイヤソーによって切断する工程を説明するための正面図である。 図4Aは、液体中に沈めた粉末成形体をワイヤソーによって切断する工程を説明するための側面図である。 図4Bは、液体中に沈めた粉末成形体をワイヤソーによって切断する工程を説明するための側面図である。 図5Aは、液体中に沈めた粉末成形体をワイヤソーによって切断する工程を説明するための側面図である。 図5Bは、液体中に沈めた粉末成形体をワイヤソーによって切断する工程を説明するための側面図である。 図6Aは、ワイヤソーによって粉末成形体10に形成される切断面を模式的に示す図である。 図6Bは、ワイヤソーによって粉末成形体10に形成される切断面を模式的に示す図である。 図6Cは、ワイヤソーによって粉末成形体10に形成される切断面を模式的に示す図である。 図7は、ワイヤ走行速度と切込み速度が成形体片の形状にどのような影響を与えるかを示すグラフである。 図8は、ワイヤ走行速度と切込み速度が成形体片の形状にどのような影響を与えるかを示すグラフである。
以下、本開示によるR-T-B系焼結磁石の製造方法の実施形態を説明する。本実施形態におけるR-T-B系焼結磁石の製造方法は、図1のフローチャートに示すように、
・R-T-B系焼結磁石用合金(Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択される少なくとも1つを必ず含み、Tは遷移金属の少なくとも1つでありFeを必ず含み、Bはホウ素である)の粉末を準備する粉砕工程(S10)と、
・粉末を用いて粉末成形体を作製する成形工程S20)と、
・粉末成形体を切断し、複数の成形体片に分割する切断工程(S30)と、
・複数の成形体片のそれぞれを焼結して複数の焼結体を作製する焼結工程(S40)と、
を含み、
切断工程(S30)は、液体中に沈めた前記粉末成形体を、走行する金属素線によって切断することを含む。
本開示のR-T-B系焼結磁石の製造方法によれば、粉末成形体を液体中に沈めた状態でワイヤソーによる切断を行うため、不活性雰囲気を準備する必要が無い。本開示の実施形態で利用可能な液体の例は、鉱物油または合成油などの油剤である。
従来、粉末成形体をワイヤソーで切断するには、ワイヤソーを構成する金属素線の表面に固着した硬い砥粒が粉末成形体と接触し、摩擦により粉末成形体の一部を削り取ることが必要であると考えられてきた。しかし、本発明者による実験の結果、走行する金属素線が、液体中に沈められた粉末成形体と接すると、砥粒が固着していない金属素線だけでも粉末成形体を研削し、切断できることがわかった。発明者の検討の結果、所定範囲の速度で走行する金属素線と粉末成形体とが接触している領域およびその近傍では、高速の液体流(ジェット流)が発生し、それによって粉末成形体を構成している粉末粒子が削り取られることがわかった。粉末成形体から削り取られた粉末粒子の一部は、高速で流れる液体に乗って金属素線と粉末成形体との間に挟まれ、遊離砥粒と同様の研削機能を発揮して粉末成形体の切断を促進すると考えられる。液中でワイヤが粉末成形体を切断するメカニズムから、ワイヤの表面の形状および形態は特に限定されないと考えられる。言い換えると、ワイヤの表面は、通常のピアノ線のように平滑であってもよい。
切断工程において、ワイヤの走行速度は300m/分以上であることが好ましく、そのときのワイヤの張力は3kgf(29.4N)以上、例えば15kgf(147N)以下であることが好ましい。ワイヤの走行速度が300m/分未満であると、粉末成形体を切断するために必要な十分な流速が得られないし、ワイヤの張力が3kgf未満であると、ワイヤが撓み、切断面の平坦性が低下してしまう可能性がある。ワイヤの張力が15kgfを超えると、ワイヤが破断するという問題が生じる可能性がある。また、切断工程において、ワイヤの走行方向に対して直交する方向の切込み速度(ワーク送り速度)は、100mm/分以上であることが好ましい。切込み速度が100mm/分未満であると、切断工程に要する時間が長くなり、生産効率が低下するからである。
なお、ワイヤの直径が200μm以上のとき、ワイヤの走行速度を500m/分以上にすることができる。ワイヤの走行速度が高いほど、切りこみ速度を高めることができる。例えば、ワイヤの直径が250μmで、ワイヤの走行速度を500m/分以上の場合、切りこみ速度を250mm/分以上にすることができる。
液体中で粉末成形体を切断することの利点のひとつは、粉末成形体とワイヤソーとが接触する部分での摩擦熱による温度上昇が抑制され、発生した熱も液体中に散逸しやすいことにある。大気中であれば、発生した摩擦熱で高温になった粉末成形体が大気中の酸素または水蒸気と反応してしまい、最終的に得られる焼結磁石中の酸素濃度の上昇と磁石特性の劣化を招くところであるが、本実施形態では、そのような問題も回避できる。
液体中で粉末成形体を切断することの他の利点は、ワイヤソーによって粉末成形体から削り取られた粉末粒子が液体中に沈殿し、回収が容易になることである。好ましい実施形態において、粉末成形体を準備する工程は、湿式プレスによって粉末を成形する工程を含む。その場合、湿式プレスは、切断工程における液体と同一種類の液体を前記粉末に加えて行うことが望ましい。切断工程によって粉末成形体から削られた粉末の粒子を液体中から回収して、再利用することが容易になるからである。
また、ワイヤソーの切込み速度を水平横方向に向けても液体中ならば粉末成形体を切断することが可能になることがわかった。粉末成形体の表面に少なくとも一部(例えば上面)は、粉末プレス工程によっては凹凸を有する場合があり、焼結工程後の加工によって切削または研磨することが必要であった。本開示の実施形態によれば、そのような切削または研磨を行う工程を削除することができるため、高性能磁石の特性を維持しつつ、製造コストの低減を実現することが可能になる。
図2を参照しながら、上記の製造方法に利用可能なワイヤソー装置の構成例を説明する。図2は、本開示の実施形態におけるワイヤソー装置100の構成例を示す斜視図である。図には、参考のため、互いに互いに直交するX軸、Y軸、およびX軸が示されている。この例において、XY平面は水平であり、Z軸は鉛直方向を向いている。
図2のワイヤソー装置100は、回転の中心軸が互いに平行になるように配列されたローラ30a、30b、30cと、一本の連続したワイヤ40を有している。ローラ30a、30b、30cのそれぞれは、支持装置50によって回転可能に支持されている。支持装置50は、不図示の駆動装置によって上下、縦方向(Z軸の正および負の方向)に移動することができる。駆動装置は、油圧シリンダによって駆動力を得てもよいし、モータによって動作してもよい。また、後述する水平横方向(X軸方向)に沿った切断を行うため、支持装置50は、水平横方向に移動してもよい。
成形工程(S20)で作製された粉末成形体10は、図示されていないクランプ部によって固定用ベース20に固定され、液体60を蓄える槽70の内部に配置される。図2では、槽70が破線で示され、液体60の表面の高さが点線で示されている。図2の例において、粉末成形体10の全体が液体60に浸漬している。なお、支持装置50が上下縦方向および水平横方向に移動する代わりに、固定用ベース20が上下縦方向および水平横方向に移動するように構成されていてもよい。
粉末成形体10を作製する工程の具体例は後述する。ここで留意する点は、粉末成形体10は焼結体ではなく、焼結される前の粉末の成形体(グリーンコンパクト)であることである。粉末成形体は、R-T-B系焼結磁石用合金(Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択される少なくとも1つを必ず含み、Tは遷移金属の少なくとも1つでありFeを必ず含み、Bはホウ素である)の粉末を配向磁場中において湿式プレスまたは乾式プレスで成形することによって得られる。
ローラ30a、30b、30cは、X軸に平行な方向からみたとき、回転中心の軸が三角形の頂点に位置するように、所定の間隔を隔てて配置される。ローラ31a、31b、31cのそれぞれの側面に複数の溝が設けられている。ワイヤ40は、ローラ30a、30b、30cの複数の溝に順番に巻き架けられている。複数の溝の中心間隔(ピッチ)は、ワイヤソーによる切断によって分割される要素の幅を規定する。ワイヤ40の両端は、例えば、不図示の回収ボビンに巻回されている。
本開示の実施形態におけるワイヤ40は、表面に砥粒が固着していない金属素線である。従来のワイヤソー技術では、ワイヤは素線(芯線)と、素線の外周面に位置する砥粒と備えている。砥粒の平均粒径は、例えば数μmから数十μmである。このような砥粒の典型例は、人工ダイヤモンドであり、希土類合金の硬度よりも高い硬度を有している。このような従来のワイヤとは異なり、本実施形態におけるワイヤ40は、例えば炭素鋼などの金属材料から形成されており、切断工程中に例えば3kgf以上の張力が与えられても伸長することなく使用可能である。ワイヤ40に使用可能な金属素線は、例えばピアノ線、高張力鋼線などであり得る。ワイヤ40の表面にメッキがなされていてもよい。ワイヤ40の直径は、例えば100μm以上350μmの範囲にあり、200μm以上300μm以下の範囲にあることが好ましい。ワイヤ40の直径が100μm未満になると、強度不足により、切断中にワイヤ40が延びてしまう問題がある。ワイヤ40の直径が大きいほど、切り粉の排出性が向上するが、切り粉の量が増加してしまうため、350μm以下であることが望ましい。
切断時には、ローラ30a、30b、30cおよび回収ボビンが回転する。ローラ30a、30b、30cの回転方向は、これらの配置やワイヤ40の掛け方に依存する。図2に示すワイヤソー装置100では、ローラ30a、30b、30cは同一方向に回転する。
所定長さのワイヤ40が、一方の回収ボビンに巻き取られたら、回収ボビンおよびローラ30a、30b、30cを逆方向に回転させる。これにより、ワイヤ40が逆方向に移動し、これを繰り返すことによって、ワイヤ40が往復運動(移動)させることができる。
本実施形態では、ワイヤ40によって粉末成形体10を切断する工程が、粉末成形体10を液体60中に沈めた状態で実行される。粉末成形体10が湿式プレスによって形成された粉末成形体である場合、液体60の好ましい例は、湿式プレスで使用した油剤(鉱物油または合成油)などの分散媒と同一種類の油剤である。
このようなワイヤソー装置100によって粉末成形体10を加工するとき、ワイヤ40によって切削された部分から粉末成形体10を構成している粉末粒子が切り粉となって落ちる。これらの切り粉は、粉末成形体10を構成する粉末粒子が粉末成形体10から脱落したものであり、個々の粒子が金属の切り粉(切削くず)のような荒れた破断面を有しているわけではない。焼結前の粉末成形体からワイヤによって削り落ちた切り粉を構成する粒子の形状およびサイズは、粉末成形体10の作製に用いられた粉末粒子の形状およびサイズと同様である。本願発明者は、この切り粉を再利用することを検討した。粉末成形体を焼結して得られる硬い焼結体を切削した場合、その切り粉は焼結によって粒成長したり、化学反応によって組成が変化したりした粒子、または粒子の結合物である。そのため、それらを希土類磁石の粉末に混ぜて再利用しても磁石特性が劣化する可能性が高い。これに対して、焼結前の粉末成形体から得られる切り粉であれば、粉末成形体に含まれている他の粒子に比べて組成およびサイズも同様であるため、再利用しやすい。
本発明者の検討によると、砥粒付きの従来のワイヤを用いた場合、粉末成形体10から削り取られた希土類合金の粉末粒子を回収し、回収した粉末粒子を含む希土類合金の粉末成形体から焼結磁石を作製すると、磁石特性が劣化する場合のあることがわかった。その原因は、回収した粉末中にワイヤ40から脱落した砥粒が含まれていることにあった。砥粒の材料の典型例はダイヤモンドであり、炭素から構成されている。ダイヤモンド粒子の混入は、焼結工程で巣(空洞)を発生させ、磁石特性(特に耐食性)を劣化させ得ることがわかった。しかし、砥粒のない金属素線のワイヤ40を用いたとき、回収した粉末(切り粉)中に砥粒は含まれず、高性能な磁石を歩留りよく製造することが可能であった。
また、粉末成形体10が湿式プレスによって作製される場合、分散剤と同種の油剤中でワイヤソー加工を行えば、回収した粉末(切り粉)をそのまま湿式プレスに用いることが可能であり、生産効率が上昇する。
以下、本実施形態のR-T-B系焼結磁石の製造方法を詳細に説明する。
S10:粉砕工程
粉砕工程(S10)では、R-T-B系焼結磁石用合金の粉末を準備する。以下、R-T-B系焼結磁石用合金の組成、合金の製造工程、および合金の粉末を準備する工程を順に説明する。
<R-T-B系焼結磁石用合金希の組成>
Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択される少なくとも1つを必ず含む。好ましくは、Nd-Dy、Nd-Tb、Nd-Dy-Tb、Nd-Pr-Dy、Nd-Pr-Tb、Nd-Pr-Dy-Tb、Nd-Ce-Dy、Nd-Ce-Tb、Nd-Ce-Dy-Tb、Nd-Pr-Ce-Dy、Nd-Pr-Ce-Tb、Nd-Pr-Ce-Dy-Tbで示される希土類元素の組合せを用いる。
Rのうち、DyおよびTbは、特にHcJの向上に効果を発揮する。上記元素以外にはLaなど他の希土類元素を含有してもよく、ミッシュメタルやジジムを用いることもできる。また、Rは純元素でなくてもよく、工業上入手可能な範囲で、製造上不可避な不純物を含有するものでもよい。含有量は、例えば、27質量%以上35質量%以下である。好ましくは、R-T-B系焼結磁石のR含有量は31質量%以下(27質量%以上31質量%以下、好ましくは、29質量%以上31質量%以下)である。R-T-B系焼結磁石のR含有量を31質量%以下でかつ、酸素の含有量が500ppm以上3500ppm以下(好ましくは500ppm以上3200ppm以下、さらに好ましくは500ppm以上2500ppm以下)とすることにより、より高い磁気特性を得ることができる。
Tは、鉄を含み(Tが実質的に鉄から成る場合も含む)、質量比でその50%以下をコバルト(Co)で置換してもよい(Tが実質的に鉄とコバルトとから成る場合を含む)。Coは温度特性の向上、耐食性の向上に有効であり、合金粉末は10質量%以下のCoを含んでよい。Tの含有量は、RとBあるいはRとBと後述するMとの残部を占めてよい。
Bの含有量についても公知の含有量で差し支えなく、例えば、0.9質量%~1.2質量%が好ましい範囲である。0.9質量%未満では高いHcJが得られない場合があり、1.2質量%を超えるとBが低下する場合がある。なお、Bの一部はC(炭素)で置換することができる。
上記元素に加え、HcJ向上のためにM元素を添加することができる。M元素は、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、TaおよびWからなる群から選択される一種以上である。M元素の添加量は5.0質量%以下が好ましい。5.0質量%を超えるとBrが低下する場合があるためである。また、不可避的不純物も許容することができる。
R-T-B系焼結磁石におけるN(窒素)の含有量は、50ppm以上600ppm以下が好ましい。また、R-T-B系焼結磁石におけるC(炭素)の含有量は、50ppm以上1000ppm以下が好ましい。
<R-T-B系焼結磁石用合金の製造工程>
R-T-B系焼結磁石用合金の製造工程を例示する。上述した組成となるように事前に調整した金属または合金を溶解し、鋳型に入れるインゴット鋳造法により合金インゴットを得ることができる。また、溶湯を単ロール、双ロール、回転ディスクまたは回転円筒鋳型等に接触させて急冷し、インゴット法で作られた合金よりも薄い凝固合金を作製するストリップキャスト法または遠心鋳造法に代表される急冷法により合金フレークを製造することができる。
本開示の実施形態においては、インゴット法と急冷法のどちらの方法により製造された材料も使用可能であるが、ストリップキャスト法などの急冷法により製造されることが好ましい。急冷法によって作製した急冷合金の厚さは、通常0.03mm~1mmの範囲にあり、フレーク形状である。合金溶湯は冷却ロールの接触した面(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)と比較して、短時間で冷却されているため、組織が微細化され、結晶粒径が小さい。また粒界の面積が広い。Rリッチ相は粒界内に大きく広がるため、急冷法はRリッチ相の分散性に優れる。このため水素粉砕法により粒界で破断し易い。急冷合金を水素粉砕することで、水素粉砕粉(粗粉砕粉)のサイズを例えば1.0mm以下とすることができる。このようにして得た粗粉砕粉を例えばジェットミルで微粉砕する。
<R-T-B系焼結磁石用合金の粉末を準備する工程>
R-T-B系焼結磁石用の希土類合金の粉末は活性であり、酸化しやすい。このため、ジェットミルで使用される気体としては、発熱・発火の危険性の回避、不純物としての酸素含有量を低減させて磁石の高性能化を図るため、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが用いられる。
ジェットミルに投入された被粉砕物(粗粉砕粉)は、例えば、平均粒度(中位径:d50)が2.0μm以上4.5μm以下の粒度分布を持つ微粉末に粉砕されてからサイクロン捕集装置に移動することになる。サイクロン捕集装置は、粉末を運ぶ気流から粉末を分離するために使用される。具体的には、R-T-B系焼結磁石用合金の粗粉砕粉が前段のジェットミルで粉砕され、粉砕によって生成された微粉末が、粉砕に利用された気体とともにサイクロン捕集装置に供給される。不活性ガス(粉砕ガス)と粉砕された微粉末との混合物が高速な気流をなして、サイクロン捕集装置に送られてくる。サイクロン捕集装置は、これらの粉砕ガスと微粉末とを分離するために利用される。粉砕ガスから分離された微粉末は、粉末捕集器で回収される。
S20:成形工程
成形工程(S20)では、粉砕工程(S10)で得られた粉末を用いて粉末成形体を作製する。
本実施形態では、磁場中プレスによって上記の粉末から粉末成形体を作製する。磁場中プレスでは、酸化抑制の観点から、不活性ガス雰囲気中によるプレスまたは湿式プレスによって粉末成形体を形成することが好ましい。特に湿式プレスは粉末成形体を構成する粒子の表面が油剤などの分散剤によって被覆され、大気中の酸素や水蒸気との接触が抑制される。このため、プレス工程の前後あるいはプレス工程中に粒子が大気によって酸化されることを防止または抑制することができる。
磁場中湿式プレスを行う場合、微粉末に分散媒を混ぜたスラリーを用意し、湿式プレス装置の金型におけるキャビティに供給して磁場中でプレス成形する。こうして形成される粉末成形体は、例えば、4g/cm以上5g/cm以下の密度を有している。
・分散媒
分散媒は、その内部に合金粉末を分散させることによりスラリーを得ることができる液体である。
本開示に用いる好ましい分散媒として鉱物油または合成油を挙げることができる。鉱物油または合成油はその種類が特定されるものではないが、常温での動粘度が10cStを超えると粘性の増大によって合金粉末相互の結合力が強まり磁場中湿式成形時の合金粉末の配向性に悪影響を与える場合がある。このため、鉱物油または合成油の常温での動粘度は10cSt以下が好ましい。また鉱物油または合成油の分留点が400℃を超えると成形体を得た後の脱油が困難となり、焼結体内の残留炭素量が多くなって磁気特性が低下する場合がある。したがって、鉱物油または合成油の分留点は400℃以下が好ましい。また、分散媒として植物油を用いてもよい。植物油は植物より抽出される油を指し、植物の種類も特定の植物に限定されるものではない。
・スラリーの作製
得られた合金粉末と分散媒とを混合することでスラリーを得ることができる。
合金粉末と分散媒との混合率は特に限定されないが、スラリー中の合金粉末の濃度は、質量比で、好ましくは70%以上(すなわち、70質量%以上)である。20~600cm/秒の流量において、キャビティ内部に効率的に合金粉末を供給できると共に、優れた磁気特性が得られるからである。スラリー中の合金粉末の濃度は、質量比で、好ましくは90%以下である。合金粉末と分散媒との混合方法は特に限定されない。合金粉末と分散媒とを別々に用意し、両者を所定量秤量して混ぜ合わせることによって製造してよい。また、粗粉砕粉をジェットミル等で乾式粉砕して合金粉末を得る際にジェットミル等の粉砕装置の合金粉末排出口に分散媒を入れた容器を配置し、粉砕して得られた合金粉末を容器内の分散媒中に直接回収しスラリーを得てもよい。この場合、容器内も窒素ガスおよび/またはアルゴンガスからなる雰囲気とし、得られた合金粉末を大気に触れさせることなく直接分散媒中に回収して、スラリーとすることが好ましい。さらには、粗粉砕粉を分散媒中に保持した状態で振動ミル、ボールミルまたはアトライター等を用いて湿式粉砕し、合金粉末と分散媒とから成るスラリーを得ることも可能である。
こうして得たスラリーを公知の湿式プレス装置で成形することにより、所定の大きさおよび形状を有する粉末成形体を得ることができる。従来、この粉末成形体を焼結して焼結体を得ることが通常であるが、本実施形態では、以下に説明するように、焼結前にワイヤソーによって粉末成形体を分割する。
S30:切断工程
切断工程(S30)では、粉末成形体を切断し、複数の成形体片に分割する。
この工程における粉末成形体の切断は、例えば図2に示されるワイヤソー装置によって行われる。図3Aおよび図3Bは、それぞれ、液体60中に沈めた粉末成形体10をワイヤ40によって切断する工程を説明するための正面図である。図3Aは、切断工程が開始する前の状態を示し、図3Bは切断工程の途中の状態を示している。図3Bに示される粉末成形体10内の破線は、粉末成形体10を切断中のワイヤ40の位置を模式的に示している。ワイヤ40の破線で示される位置が粉末成形体10の上面から下方に移動し、粉末成形体10の底面に達したとき、粉末成形体10は複数の成形体片に分割される。
図示される例において、ワイヤ40はY軸方向に所定の速度で走行ながら、ワイヤ40の走行方向に対して直交する方向(Z軸の負の方向)に移動する。ワイヤ40の走行方向に対して直交する方向は、切込み方向であり、この方向の速度(切り込み速度)は、例えば100mm/分以上に設定される。図3Bに示される例では、静止した状態の粉末成形体10に対して、走行するワイヤ40がZ軸の負の方向に移動しているが、粉末成形体10が固定用ベース20とともにZ軸の正の方向に持ち上げられてもよい。
図4Aおよび図4Bは、それぞれ、液体60中に沈めた粉末成形体10をワイヤ40によって切断する工程を説明するための側面図である。図4Aは、切断工程が開始する前の状態を示し、図4Bは切断工程の途中の状態を示している。図示される例において、1個の粉末成形体10が8個の成形体片に分割される。
ワイヤ40の直径は、例えば100μm以上350μm以下である。ワイヤ40の走行速度(ワイヤ線速)は、例えば、100m/分以上800m/分以下の範囲に設定され得る。一方、切込み速度(図2のZ軸の負の方向における、粉末成形体10に対するワイヤの送り速度)は、例えば、100mm/分以上600mm/分以下の範囲に設定され得る。ワイヤ40に印加され張力は、例えば3kgf以上15kgf以下である。張力は、例えばローラ30cのローラ30aおよびローラ30bに対する距離を調整することにより、調整され得る。ワイヤソー切断によって、粉末成形体10は、例えば厚さ1~10mm程度の成形体片に分割され得る。成形体片の厚さは、図4Bに示されるように、ワイヤ40の間隔およびワイヤ40の直径によって決まる。
ワイヤソー加工を液体中で行うことにより、切り粉の排出が促進される利点もある。また、前述したように、粉末成形体10を湿式プレスで作製するときに使用した分散媒(鉱物油または合成油)中に粉末成形体10を浸漬させた状態で行う(油中切断)ことにより、ワイヤソー加工中に液体中に沈殿した粉末粒子を回収し、回収した粉末粒子をそのまま成形工程で再利用することができる。
図5Aおよび図5Bは、液体60中に沈めた粉末成形体10をワイヤ40によって水平方向に切断する工程を説明するための側面図である。図示される例において、切断工程中において、ローラ30a、30b、30cが粉末成形体10に対して相対的に水平方向に移動している。図3Aから図4Bを参照しながら説明した工程を行う前に、ワイヤ40による水平方向の切りこみを行うことにより、粉末成形体10の表面を平坦にすることが可能になる。粉末成形体10の表面の少なくとも一部(例えば上面)は、粉末プレス工程によっては凹凸を有する場合がある。例えば、粉末ブレス装置のダイの孔に粉末を充填した後、粉末をパンチで押圧する前、パンチと粉末との間に「ろ布」が配されて、ろ布を介して分散剤(油剤)を吐出させることが行われ得る。その場合、得られた粉末成形体の上面にろ布によって凹凸が形成され得る。
本開示の実施形態では、このような凹凸面を焼結工程前にワイヤによって切除するため、焼結工程後に平坦化のための切削または研磨を行う工程を省略することができる。
図6Aから図6Cは、ワイヤソーによって粉末成形体10に形成される切断面を模式的に示す図である。図5Aおよび図5Bを参照しながら説明した工程(第1処理工程)により、液体60中に沈めた粉末成形体10に対し、走行するワイヤ40が図6Aの破線11cに沿って移動することにより、粉末成形体10の荒れた表面領域10Tが薄く切断されて、Z軸方向と直交する第1切断面11が形成される。その後、図4Aおよび図4Bを参照しながら説明した工程(第2処理工程)を行うことにより、第1切断面11に対して交差する複数の第2切断面12が形成される。第2処理工程では、第2切断面12は、走行するワイヤが破線12cに沿って移動することによって形成される。第1処理工程および第2処理工程は、同一のワイヤソー装置を用いて行ってもよいし、異なるワイヤソー装置を用いて行ってもよい。言い換えると、第2処理工程は、第1処理工程で粉末成形体が沈められた液体と同一の液体中に沈められた状態で、同一のワイヤソーによって切断されてもよいし、異なる液体中に沈められた状態で異なるワイヤソーによって切断されてもよい。
図6Aから図6Cに示される例において、第1切断面11は、水平面に平行であり、第2切断面12は、第1切断面11に直交している。第1切断面11および第2切断面12のそれぞれの向きは、この例に限定されない。
S40:焼結工程
焼結工程(S40)では、複数の成形体片のそれぞれを焼結して複数の焼結体を作製する。すなわち、上記のワイヤソー工程によって切断された個々の成形体片を焼結してR-T-B系焼結磁石(焼結体)を得る。成形体片の焼結工程は、例えば、0.13Pa(10-3Torr)以下、好ましくは0.07Pa(5.0×10-4Torr)以下の圧力下で、例えば温度1000℃~1150℃の範囲で行なうことができる。焼結による酸化を防止するために、雰囲気の残留ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより置換され得る。得られた焼結体に対しては時効処理などの付加的な熱処理を行うことが好ましい。このような熱処理により、磁気特性を向上させることができる。熱処理温度、熱処理時間などの熱処理条件は、公知の条件を採用することができる。こうして得たR-T-B系焼結磁石に対しては、必要に応じて、研削・研磨工程、表面処理工程、および着磁工程が施され、最終的なR-T-B系焼結磁石が完成する。
ある好ましい実施形態において、本開示のR-T-B系焼結磁石の製造方法は、重希土類元素RH(RHは、Tb、Dy、Hoの少なくとも1つ)を焼結体の表面から内部に拡散する拡散工程を更に含む。重希土類元素RHを焼結体の表面から内部に拡散すると、保磁力を効率的に高めることができる。拡散工程の方法は特に問わない。公知の方法を採用することができる。
(実施例)
Nd:22.6%、Pr:7.8%、B:0.9%、Co:0.5%、Al:0.1%、Cu:0.2%、Ga:0.4%(いずれも質量%)、残部Feの組成となるように各元素の原料を秤量し、ストリップキャスティング法により合金を作製した。得られた合金を水素粉砕し粗粉砕粉を得た。
次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100質量%に対して0.04質量%添加、混合した後、ジェットミルを用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。前記微粉砕分を窒素雰囲気中で分留点が250℃、室温での動粘度が2cStの鉱物油に浸漬してスラリーを準備した。スラリー濃度は、85質量%であった。得られたスラリーを磁界中で成形(湿式成形)し、粉末成形体を作製した。粉末成形体のサイズは、80mm×45mm×60mmであった。
前記粉末成形体を直径250μmのワイヤソー(ピアノ線からなる金属素線)で8個の成形体片に分割した。ワイヤソーによる切断は、粉末成形体を液体中(液体は成形時に使用した前記鉱物油と同じものを使用)に沈めた状態で行った。平行に走行する8本のワイヤ(マルチワイヤ)で各粉末成形体を切断した。切断時にワイヤに印加した張力は10kgであり、ローラ間隔は250mmであった。
図7は、ワイヤ走行速度と切込み速度が成形体片の形状にどのような影響を与えるかを示すグラフである。グラフの横軸はワイヤ走行速度[m/分]、縦軸は切込み速度[mm/分]である。このグラフに示されている「×」は、ワイヤソー切断によって分割された成形体片の一部に「割れ」が発生したことを意味し、「〇」は、そのような割れが成形体片に発生せず、良好な形状の成形体片に分割できたことを意味している。
直径250μmのワイヤを用いた場合、300m/分の走行速度では、100~150mm/分の切込み速度で割れのない成形体片を得ることができた。さらに、500m/分の走行速度では、250mm/分の切込み速度で割れのない成形体片を得ることができた。さらに、700m/分の走行速度では、400mm/分の切込み速度でも、切断中にワイヤは撓まず、割れのない成形体片を得ることができた。
なお、直径が160μmのワイヤを用いた場合は、走行速度および切り込み速度の両方が比較的低い場合に良好な形成体片に分割することができた。ワイヤの直径が小さくなるほど、ワイヤが延びやすく、撓みやすいため、高い張力を印加して高速度で走行させると、粉末成形体の切断時に割れや欠けが発生しやすくなると考えられる。このため、ワイヤ(金属素線)の直径は200μm以上であることが好ましい。なお、ワイヤの直径が大きく成るほど、削りしろが増加するが、正常な切断は可能である。
また、比較のため、大気中に置いた粉末成形体を金属素線だけで切断しようとしても、正常に切断を行うはできず、走行する金属素線と粉末成形体との接触は、液体(好ましくは油)中で行うことが必要であることが確認された。
図8は、図5Aおよび図5Bに示されるようにして、1本のワイヤによって粉末成形体の上面領域を水平横方向に油中切断したときの実験結果を示している。「横送り」は、水平横方向の切り込み速度であり、「線速」は、ワイヤの走行速度である。直径250μmのワイヤを用いた場合、300m/分の走行速度では、100~300mm/分の切込み速度で割れのない成形体片を得ることができた。さらに、500m/分の走行速度では、300mm~500/分の切込み速度で割れのない成形体片を得ることができた。さらに、700m/分の走行速度でも500mm/分の切込み速度で割れのない成形体片を得ることができた。
「横送り」によって粉末成形体の上面付近を切り取るには、粉末成形体が十分な「硬さ」を有していることが好ましい。粉末成形体の固さは、例えば粉末成形時の成形圧力または密度などによって評価できる。空気中にあるとき(油等の液体を除外したとき)の粉末成形体の密度が4g/cmを下回ると、切断面が平滑でなくなるという問題があることがわかった。このため、粉末成形体の密度は4g/cm以上であることが好ましい。
10・・・粉末成形体、20・・・固定用ベース、30a、30b、30c・・・ローラ、40・・・ワイヤ、50・・・支持装置、60・・・液体、70・・・槽、100・・・ワイヤソー装置

Claims (7)

  1. R-T-B系焼結磁石用合金(Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択される少なくとも1つを必ず含み、Tは遷移金属の少なくとも1つでありFeを必ず含み、Bはホウ素である)の粉末を準備する粉砕工程と、
    前記粉末を用いて粉末成形体を作製する成形工程と、
    前記粉末成形体を切断し、複数の成形体片に分割する切断工程と、
    前記複数の成形体片のそれぞれを焼結して複数の焼結体を作製する焼結工程と、
    を含み、
    前記切断工程は、液体中に沈めた前記粉末成形体を、走行する金属素線によって切断することを含む、R-T-B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記切断工程において、前記金属素線の走行速度は300m/分以上である、請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記切断工程において、前記金属素線の張力は29.4N(3kgf)以上である、請求項1または2に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法。
  4. 前記切断工程において、前記金属素線の走行方向に対して直交する方向の切込み速度は、100mm/分以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法。
  5. 前記粉末成形体を準備する工程は、湿式プレスによって前記粉末を成形する工程を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法。
  6. 前記湿式プレスは、前記切断工程における前記液体と同一種類の液体と前記粉末を混交して行う、請求項5に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法。
  7. 前記切断工程によって前記粉末成形体から削られた前記粉末の粒子を前記液体中から回収する工程を更に含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法。
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