JP2007220335A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウムイオン二次電池は、高温状態での容量劣化を十分抑制する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池は、含リチウム金属酸化物とリン酸アルカリ金属塩とを含む混合物を用いて形成された正極と、六フッ化リン酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドとを溶解させた電解液と、を備えることを要旨とする。このリチウムイオン二次電池によれば、高温状態での容量劣化を十分抑制することができる。具体的には、高温状態(例えば50℃以上)で貯蔵した後の容量維持率の低下や高温状態で充放電を繰り返し行った後の容量維持率の低下を十分に抑制することができる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池は、含リチウム金属酸化物とリン酸アルカリ金属塩とを含む混合物を用いて形成された正極と、六フッ化リン酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドとを溶解させた電解液と、を備えることを要旨とする。このリチウムイオン二次電池によれば、高温状態での容量劣化を十分抑制することができる。具体的には、高温状態(例えば50℃以上)で貯蔵した後の容量維持率の低下や高温状態で充放電を繰り返し行った後の容量維持率の低下を十分に抑制することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
従来、マンガン酸リチウムを正極に用いたリチウムイオン二次電池では、50℃以上の高温で保存すると容量が劣化することが知られている。このように高温状態で容量が劣化する原因は、正極に用いたマンガン酸リチウムからマンガンイオンが電解液に溶け出したあと負極に付着して負極が劣化するからであると考えられる。このように正極から金属イオンが溶出することによる負極の劣化を抑制することを目的として種々の研究が行われている。例えば、特許文献1では、マンガン酸リチウムとポリリン酸アンモニウムとを含むスラリーを用いて作製した正極と、炭素粒子を含むスラリーを用いて作製した負極とを備えるリチウムイオン二次電池が開示されている。この特許文献1では、ポリリン酸アンモニウムを含まない正極に比べて、ポリリン酸アンモニウムを含む正極を用いた場合には高温寿命サイクル数が高い値になっている。
特開平11−329444号公報
しかしながら、ポリリン酸アンモニウムを含む正極を用いたとしても高温状態での容量劣化を十分抑制できないことがあった。
本発明のリチウムイオン二次電池は、高温状態での容量劣化を十分抑制することを目的とする。
本発明者らは、リチウムイオン二次電池に関して、正極中の含リチウム金属酸化物から金属イオンが溶出する機構は、電解液中に存在する酸であるプロトンと含リチウム金属酸化物とが反応して金属イオンが溶出すると考え、また、電解液中に存在する酸は電解液や電極材料中に存在する水が電解質である六フッ化リン酸イオンと反応して生じると考えた。これらに基づけば、正極中の含リチウム金属酸化物から金属イオンが溶出するのを抑制するには、電解液や電極材料中に存在する水を取り除くことや水と反応して酸を生じる六フッ化リン酸イオンを使用しないことが好ましいが、現状ではこれらを実現することは困難である。そこで、本発明者らは、電解液中に存在する酸を中和するアルカリ類を金属化合物と共存させることにより金属イオンの溶出を抑制することが可能となるのではないかと考え、鋭意研究を行った結果、リン酸アルカリ金属塩が金属イオンの溶出を抑制する作用を示すことを見い出し、更にそのときの電解液も六フッ化リン酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドとを溶解させたものを用いることが最適であることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のリチウムイオン二次電池は、含リチウム金属酸化物とリン酸アルカリ金属塩とを含む混合物を用いて形成された正極と、六フッ化リン酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドとを溶解させた電解液と、を備えることを要旨とする。このリチウムイオン二次電池によれば、高温状態での容量劣化を十分抑制することができる。具体的には、高温状態(例えば50℃以上)で貯蔵した後の容量維持率の低下や高温状態で充放電を繰り返し行った後の容量維持率の低下を十分に抑制することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、含リチウム金属酸化物とリン酸アルカリ金属塩とを含む混合物を用いて形成された正極と、六フッ化リン酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドとを溶解させた電解液と、を備えることを要旨とする。
本発明のリチウムイオン二次電池において、含リチウム金属酸化物は、特に限定されるものではないが、例えばマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウム、コバルトニッケルマンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどからなる群より選ばれる1種以上の酸化物としてもよい。このうちマンガン酸リチウムが好ましい。マンガン酸リチウムは、マンガンイオンを電解液に溶出しやすいため本発明を適用する意義が高いからである。また、マンガン酸リチウムは、LiMn2O4の組成に限定されるものではなく、Mnの一部をLi,Na,Mg,Ca,Al,Cr,Fe,Co,Niなどの異種金属イオンで置換したものでも構わない。この点はコバルト酸リチウム等においても同様である。
本発明のリチウムイオン二次電池において、リン酸アルカリ金属塩は、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属の第1リン酸塩(MH2PO4,Mはアルカリ金属)、第2リン酸塩(M2HPO4)、第3リン酸塩(M3PO4)、ピロリン酸塩(M4P2O7)、トリポリリン酸塩(M5P3O10)、テトラポリリン酸塩(M6P4O13)及びヘキサメタリン酸塩(MPO3)n からなる群より選ばれる1種以上の化合物としてもよい。このうちアルカリ金属のピロリン酸塩が好ましい。アルカリ金属のピロリン酸塩は、電解液中の水により加水分解して第1リン酸塩となり電解液中の水を脱水しやすくなるうえ酸を取り除く能力が高いと考えられ、これにより本発明の効果が顕著に得られるものと推察される。なお、ピロリン酸塩は、第2リン酸塩を高温(例えば500℃以上)で熱処理したものを使用してもよい。また、アルカリ金属としては、ナトリウムやカリウムなどが挙げられ、このうちナトリウムが好ましい。
含リチウム金属酸化物とリン酸アルカリ金属塩とを含む混合物を調製する場合、含リチウム金属酸化物に均等にリン酸アルカリ金属塩が付着するように調製することが好ましい。例えば粉体同士を混合したり、リン酸アルカリ金属塩の水溶液を含リチウム金属酸化物へ含浸したりすることが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。なお、含リチウム金属酸化物にリン酸アルカリ金属塩が付着するように調製する代わりに、含リチウム金属酸化物の近傍にリン酸アルカリ金属塩が存在するように調製してもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池において、正極は、含リチウム金属酸化物に対して2〜20重量%のリン酸アルカリ金属化合物を含む混合物を用いて形成されていることが好ましい。リン酸アルカリ金属化合物の含有率が2重量%未満では高温状態の容量劣化を十分抑制できないことがあるため好ましくなく、20重量%を超えても容量劣化の抑制効果はあまり変わらず経済的に不利になるため好ましくない。なお、より高い容量劣化の抑制効果を得るには、リン酸アルカリ金属化合物の含有率を5重量%以上、特に8重量%以上とするのが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池において、電解液は、リチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドを0.5〜1.5Mの濃度に、六フッ化リン酸リチウムを0.01〜0.2Mの濃度に溶解させた溶液であることが好ましい。六フッ化リン酸イオンは、水と反応して酸を生じることにより含リチウム金属酸化物から金属イオンを溶出させることを考慮するとなるべく使用しないことが好ましく、酸を発生しにくいリチウムビス(パーフロオロアルカンスルホニル)イミドを使用することが好ましいが、リチウムビス(パーフロオロアルカンスルホニル)イミドのみを用いると正極の集電体として使用される金属材料(例えばAlなど)を腐食するといった別の問題を生じる。そのため、リチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドを0.5〜1.5Mの濃度に、六フッ化リン酸リチウムを0.01〜0.2Mの濃度に溶解させた電解液を使用することにより、水と反応して生じる酸の量を抑えると共に正極の集電体として使用される材料の腐食も抑えることが好ましい。ここで、リチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドは、化学式(CnF2n+1SO2)(CmF2m+1SO2)NLi(m,nは1以上の整数)で表される化合物であれば使用することができるが、このうちリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池において、負極は、リチウムイオンが挿入・脱離できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、低結晶カーボンなどの炭素質材料や、Si,Snなどの金属の酸化物などが挙げられる。炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)から得られるPAN系炭素繊維、石炭もしくは石油などのピッチから得られるピッチ系炭素繊維、セルロースから得られるセルロース系炭素繊維、低分子量有機物の気体から得られる気相成長炭素繊維などが挙げられる。これらの炭素繊維の中で、用いられる負極および電池の特性に応じて、その特性を満たす炭素繊維が適宜選択されるが、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維が好ましく、特にメゾフェーズピッチコークスを焼成して得られるピッチ系炭素繊維(メゾフェーズピッチカーボン)が好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、充放電を繰り返し行う要請のある電子機器や車両、電力貯蔵所などに広く利用することができる。例えば、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車、電気自動車などの自動車は、室内で使用される家電製品などと異なり、気候や天候によって使用温度が大きく変化するため、高温状態でも容量劣化の少ない本発明のリチウムイオン二次電池を利用する意義が高い。
本発明のリチウムイオン二次電池は、どのような外観形状のものでもよいが、例えば角型や円筒型、コイン型としてもよい。ここで、コイン型リチウムイオン二次電池の構造を図1に例示する。図1はコイン型リチウムイオン二次電池10の断面図である。図1に示すように、コイン型リチウムイオン二次電池10は、ステンレス製の正極ケース12と同じくステンレス製の負極ケース14とを環状で電気絶縁性のガスケット16を介して嵌め合わせた電池缶18と、正極ケース12に収容され上向きにバネ付勢されたスペーサ20上に載せられた正極ペレット22と、この正極ペレット22の上面に載せられ周縁がガスケット16に接触しているポリプロピレン製の微孔セパレータ24と、負極ケース14に収容されセパレータ24の上面にガラスフィルタ26を介して配置された負極ペレット28とを備え、内部空間に電解液30が充填されている。なお、通常のリチウムイオン二次電池ではAl箔上に正極活物質を塗布するが、図1のコイン型リチウムイオン二次電池10ではAl箔を用いていない。
次に実施例によって本発明を更に具体的に説明する。
[実施例1]
日本重化学工業製のスピネル型マンガン酸リチウム(Li/Mn=0.51,単位格子長0.8241nm)1000mgとピロリン酸ナトリウム100mgに水25mLを加えて溶解し、50℃でゆっくり乾燥した後150℃で1晩乾燥してメノウ乳鉢でよく粉砕し、粉末にした。この粉末22mgに導電剤と結着剤との混合物である双栄通商株式会社製のCB−2(ポリテトラフルオロエチレン33.3重量%とアセチレンブラック66.6重量%の混合物)を11mg加えて混練したあと加圧して、直径13mm,厚さ0.16mmの正極ペレットとした。負極に株式会社ペトカ製のメゾフェーズピッチカーボンMCFを8.8mgと、結合剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリムとスチレンブタジエンゴムを0.136mg用い、銅箔上に塗布した後に、直径14mm,厚さ0.045mmの負極ペレットとした。そして、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートを体積比で1対2に混合した溶媒に、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドを0.975Mの濃度に、六フッ化リン酸リチウムを0.025Mの濃度になるように溶解させることにより、電解液を調製した。このようにして作製した正極ペレットと負極ペレットと電解液とを用いて、図1の構造を持つコイン型リチウムイオン二次電池(CR2032型)を作製した。このようにして作製したコイン型リチウムイオン二次電池の容量を室温で測定しこれを初期容量とした後に、50%の充電状態に設定して、55℃で4週間貯蔵した。貯蔵後、室温に戻して、容量を再度測定して、容量維持率を調べた。容量維持率は(再測定時の容量/初期容量)×100%とした。その結果を表1に示す。表中、LiBETIはリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドの略である。なお、容量の測定は、次の手順に従って行った。即ち充電は2.5mAの電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行い、4.2Vを3時間保った。その後、2.5mAの電流で電池電圧が2.5Vに達するまで放電して、初期電池容量を測定した。その後、充電率50%になるまで2.5mAの電流で充電した後に、コイン電池を55℃で4週間貯蔵した。その後、2.5mAの電流で電池容量を測定した。
日本重化学工業製のスピネル型マンガン酸リチウム(Li/Mn=0.51,単位格子長0.8241nm)1000mgとピロリン酸ナトリウム100mgに水25mLを加えて溶解し、50℃でゆっくり乾燥した後150℃で1晩乾燥してメノウ乳鉢でよく粉砕し、粉末にした。この粉末22mgに導電剤と結着剤との混合物である双栄通商株式会社製のCB−2(ポリテトラフルオロエチレン33.3重量%とアセチレンブラック66.6重量%の混合物)を11mg加えて混練したあと加圧して、直径13mm,厚さ0.16mmの正極ペレットとした。負極に株式会社ペトカ製のメゾフェーズピッチカーボンMCFを8.8mgと、結合剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリムとスチレンブタジエンゴムを0.136mg用い、銅箔上に塗布した後に、直径14mm,厚さ0.045mmの負極ペレットとした。そして、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートを体積比で1対2に混合した溶媒に、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドを0.975Mの濃度に、六フッ化リン酸リチウムを0.025Mの濃度になるように溶解させることにより、電解液を調製した。このようにして作製した正極ペレットと負極ペレットと電解液とを用いて、図1の構造を持つコイン型リチウムイオン二次電池(CR2032型)を作製した。このようにして作製したコイン型リチウムイオン二次電池の容量を室温で測定しこれを初期容量とした後に、50%の充電状態に設定して、55℃で4週間貯蔵した。貯蔵後、室温に戻して、容量を再度測定して、容量維持率を調べた。容量維持率は(再測定時の容量/初期容量)×100%とした。その結果を表1に示す。表中、LiBETIはリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドの略である。なお、容量の測定は、次の手順に従って行った。即ち充電は2.5mAの電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行い、4.2Vを3時間保った。その後、2.5mAの電流で電池電圧が2.5Vに達するまで放電して、初期電池容量を測定した。その後、充電率50%になるまで2.5mAの電流で充電した後に、コイン電池を55℃で4週間貯蔵した。その後、2.5mAの電流で電池容量を測定した。
また、同様にして作製したコイン型リチウムイオン二次電池の容量を室温で測定しこれを初期容量とした後に、コイン型リチウムイオン二次電池を55℃にして、充電放電を繰り返して放電容量を測定して、容量維持率を調べた。その結果を表2に示す。なお、充放電試験は、充電に際しては定電流(2.5mA)定電圧(4.2V)方式で行い、放電は定電流(2.5mA)で2.5Vになるまで行った。各充電各放電の休止時間は1分間とした。
[実施例2〜9及び比較例1〜9]
実施例2,3及び比較例1〜4のそれぞれにつき、表1に示す正極添加剤と電解質を用いた以外は実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。そして、それぞれについて、初期容量を測定し、その後50%の充電状態に設定して55℃で4週間貯蔵した後室温に戻して容量を再度測定して、容量維持化率を調べた。その結果を表1に示す。また、実施例2,3及び比較例1〜4のそれぞれについて、初期容量を測定し、その後コイン型リチウムイオン二次電池を55℃にして充電放電を繰り返して放電容量を測定して、容量維持率を調べた。その結果を表2に示す。
実施例2,3及び比較例1〜4のそれぞれにつき、表1に示す正極添加剤と電解質を用いた以外は実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。そして、それぞれについて、初期容量を測定し、その後50%の充電状態に設定して55℃で4週間貯蔵した後室温に戻して容量を再度測定して、容量維持化率を調べた。その結果を表1に示す。また、実施例2,3及び比較例1〜4のそれぞれについて、初期容量を測定し、その後コイン型リチウムイオン二次電池を55℃にして充電放電を繰り返して放電容量を測定して、容量維持率を調べた。その結果を表2に示す。
更に、実施例4〜9及び比較例5〜9のそれぞれにつき、表1に示す正極添加剤と電解質を用いた以外は実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。そして、それぞれについて、初期容量を測定し、その後コイン型リチウムイオン二次電池を55℃にして充電放電を繰り返して放電容量を測定して、容量維持率を調べた。その結果を表2に示す。
表1から明らかなように、1Mの六フッ化リン酸リチウムの電解液の場合、添加剤なしでは容量維持率が47%(比較例1)となるのに対して、正極添加剤として第3リン酸ナトリウムを5重量%添加すると容量維持率は61%(比較例3)となり、ピロリン酸ナトリウムを5重量%添加すると容量維持率が66%(比較例4)と向上した。また、正極添加剤を加えずに電解質にリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドを加えた電解液を用いると、容量維持率は74%となったが、これでは十分とは言えないと判断した。そこで、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドを0.975Mの濃度に、六フッ化リン酸リチウムを0.025Mの濃度に溶解させた電解液を用いて、正極添加剤としてピロリン酸ナトリウムを10重量%加えたところ、容量維持率が90%(実施例1)となり、正極添加剤としてピロリン酸ナトリウムを5重量%加えたところ、容量維持率が78%(実施例2)となり、正極添加剤として第3リン酸ナトリウムを5重量%加えたところ、容量維持率は76%(実施例3)となり、容量維持率が十分に向上した。この結果から、添加剤としてピロリン酸ナトリウムが優れ、また、電解液としては、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドを0.975Mの濃度に、LiPF6を0.025Mの濃度に溶解させたものが優れていることがわかった。
次に、表2から明らかなように、1Mの六フッ化リン酸リチウムの電解液の場合、添加剤なしでは100サイクル後の容量維持率が48%(比較例1)となるのに対して、同じ電解液を用いて第3リン酸ナトリウムやピロリン酸ナトリウムを添加したり、正極添加剤なしで電解液にリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドを加えたりしても、100サイクル後の容量維持率は十分向上しなかった(比較例2〜8)。これに対して、正極添加剤としてピロリン酸ナトリウムや第3リン酸ナトリウムを加えると共に電解質として六フッ化リン酸リチウムとリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドとを用いた電解液を使用した場合には、実施例1〜9に示すように100サイクル後の容量維持率は十分向上して73〜84%となった。
なお、特許文献1を参考にして、実施例1のピロリン酸ナトリウムに代えてポリリン酸アンモニウム(NH4PO3)nをスピネル型マンガン酸リチウムに対して5重量%加えて作製した正極ペレットと、実施例1と同様の負極ペレットと、同じく実施例1と同様の電解液(つまり0.025MのLiPF6と0.975MのLiBETIを含む電解液)を用いて図1のコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、表2と同様の容量維持率を調べたところ、その容量維持率は65%に過ぎなかった。また、実施例1では正極ペレットにピロリン酸ナトリウムを加えたが、正極ペレットではなく負極ペレットにピロリン酸ナトリウム(MCFに対して5重量%)を添加して図1のコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、表2と同様の容量維持率を調べたところ、その容量維持率は57%に過ぎなかった。
10 コイン型リチウムイオン二次電池、12 正極ケース、14 負極ケース、16 ガスケット、18 電池缶、20 スペーサ、22 正極ペレット、24 微孔セパレータ、26 ガラスフィルタ、28 負極ペレット、30 電解液。
Claims (6)
- 含リチウム金属酸化物とリン酸アルカリ金属塩とを含む混合物を用いて形成された正極と、
六フッ化リン酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドとを溶解させた電解液と、
を備えるリチウムイオン二次電池。 - 前記含リチウム金属酸化物は、マンガン酸リチウム化合物である、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。 - 前記リン酸アルカリ金属塩は、アルカリ金属の第1リン酸塩(MH2PO4,Mはアルカリ金属)、第2リン酸塩(M2HPO4)、第3リン酸塩(M3PO4)、ピロリン酸塩(M4P2O7)、トリポリリン酸塩(M5P3O10)、テトラポリリン酸塩(M6P4O13)及びヘキサメタリン酸塩(MPO3)n からなる群より選ばれる1種以上の化合物である、
請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。 - 前記正極は、前記含リチウム金属酸化物に対して2〜20重量%のリン酸アルカリ金属化合物を含む混合物を用いて形成されている、
請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。 - 前記電解液は、リチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドを0.5〜1.5Mの濃度に、六フッ化リン酸リチウムを0.01〜0.2Mの濃度に溶解させた溶液である、
請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。 - 前記電解液は、リチウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドとしてリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドを含む、
請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
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