しかしながら、従来技術では、球状弁部材を支持部材に収める穴(図13参照)の加工が必要となり、支持部材の先端内への穴加工には工数が多くかかってしまうという問題があった。
また、支持部材と球状弁部材との組付け時に、球状弁部材の平坦面が傾いたまま組付けられてしまう場合があると、球状弁部材が弁座に着座する際に、弁座のシート面を傷付けるおそれがある。傾いた平坦面により弁座を傷付けてしまった場合には、弁座への着座により圧力制御室内を閉塞し、圧力制御室内の圧力を増加させようとするときに、圧力が逃げてしまい、燃料噴射特性やリーク燃料量特性が燃料噴射弁の性能規格を満足しないという問題が発生する可能性がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、略球状の弁部材を介して支持部材が弁座に着座および離座するものにおいて、弁部材に接する支持部材の先端が安価な形状に形成可能な流体制御弁およびそれを用いた燃料噴射弁を提供することにある。
また、別の目的は、略球状の弁部材を介して支持部材が弁座に着座および離座するものにおいて、弁部材に接する支持部材の先端が安価な形状に形成可能であるとともに、支持部材と弁部材の組付けを容易にする流体制御弁およびそれを用いた燃料噴射弁を提供することにある。
さらにまた、別の目的は、略球状の弁部材を介して支持部材が弁座に着座および離座するものにおいて、弁部材に接する支持部材の先端が安価な形状に形成可能であるとともに、弁部材を弁座に精度よく同軸組付け可能な流体制御弁およびそれを用いた燃料噴射弁を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を備える。
即ち、請求項1乃至14に記載の発明では、流体通路の高圧側と低圧側との流体流れを遮断および流通する流体制御弁において、流体通路の高圧側と低圧側とを連通する連通路を有する弁座を有する弁ボディと、略球状の球面部を有し、弁座に着座および離座することにより流体通路の高圧側と低圧側とを閉塞および開放する弁部材と、弁部材の球面部を支持し、軸方向に移動可能な支持部材とを備え、
弁座には、弁座よりも突出すると共に、弁部材の側面をガイドするガイド部が設けられていることを特徴とする。
これによると、流体通路の高圧側と低圧側とを連通する連通路を有する弁座には、弁座よりも突出すると共に、球面部を有する弁部材の側面をガイドするガイド部が設けられているので、略球状の弁部材を支持するバルブアーマチャ等の支持部材の形状は、従来技術のように弁部材を収容するための複雑な穴形状にする必要がない。
したがって、略球状の弁部材を介して支持部材が弁座に着座および離座するものにおいて、弁部材に接する支持部材の先端を安価な形状に形成することができる。
また、請求項2に記載の発明では、支持部材の弁部材側の端面は、平坦面であることを特徴とする。
これによると、支持部材の弁部材側の端面は、平坦面であることが好ましい。これにより、組付性向上が図れる安価な支持部材形状とすることができる。例えば支持部材と、弁部材をガイドするガイド部との軸ずれが生じる場合があっても、支持部材、弁部材、およびガイド部と弁座を有するオリフィス部材等の弁ボディを組付け易くすることができる。
また、請求項3に記載の発明では、弁座は、平面状のシート面であることを特徴とする。
これにより、略球状の弁部材において、弁座に着座および離座する弁部材の形状は、球面部の球面、および平面部を有する弁部材の平面のいずれであっても、弁部材の弁座への着座により連通路を閉塞することができる。
また、請求項4に記載の発明では、弁座は、弁ボディに形成された段差部であることを特徴とする。
これにより、弁ボディをプレス加工することで段差部を容易に加工できるため、弁座を安価に形成することが可能である。
また、請求項5に記載の発明では、ガイド部と弁ボディの端面は面一であることを特徴とする。
これによると、ガイド部と弁ボディの端面は面一であることが好ましい。これにより、弁ボディをプレス加工により形成する場合において、ガイド部と弁ボディの端面は面一であるので、弁ボディのプレス加工素材は例えば円筒状体のような比較的簡素な形状から形成できるとともに、プレス加工自体も弁ボディの端面を複雑な凹凸状に形成するための特殊な加工が不要となる。
したがって、プレス加工により弁ボディを比較的安価に形成することが可能である。
また、請求項6に記載の発明では、ガイド部の内壁には、弁座より低圧側へ流出する流体の流路面積を拡大する低圧流体通路が形成されていることを特徴とする。
一般に、略球状の弁部材を軸方向移動可能にガイドするためのガイド部の内壁形状は、弁部材を支持する有底の円状の穴となる。この場合、弁部材が弁座より離座したとき弁座より流出する流体は、穴の内周と弁部材の側面との隙間を介してのみ低圧側へ流出されるため、低圧側へ流出する流体の流量は、隙間の流路面積により絞られるおそれがある。
これに対して請求項6に記載の発明では、ガイド部の内壁に、弁座より低圧側へ流出する流体の流路面積を拡大する低圧流体通路を設けるので、弁部材が弁座より離座したときに、弁座より低圧側へ流出する流体の流量が絞られることはなく、弁座の連通路より流出すべき流体の流量を確保することができる。
また、請求項7に記載の発明では、低圧流体通路は、内壁内に形成され、弁座から放射状に延出する流体リーク溝であることを特徴とする。
これにより、弁部材が弁座より離座したときに弁座の連通路より流出すべき流体の流量に応じて、放射状に延出する流体リーク溝を複数個設けることができる。さらに、複数個の流体リーク溝を放射状に設けるので、流体リーク溝を流れる流体の流体力によって弁部材の姿勢が不安定になるのを防止できる。
また、請求項8乃至11に記載の発明では、弁座を有する弁ボディには、弁部材の側面をガイドするガイド部が設けられていることを特徴とする。
これによると、弁座とガイド部とを弁ボディに備えているので、ガイド部は、弁座より延出するものに限らず、例えば弁座より突出する方向に配置されるように構成することができる。
また、請求項9乃至11に記載の発明では、ガイド部は、弁座よりも突出する方向に向けて弁ボディに配置された第2弁ボディに形成されていることを特徴とする。
これによると、上記弁座とガイド部とを有する弁ボディとは、一体形成されるものに限らず、弁座を有する弁ボディと、ガイド部を形成する第2弁ボディとから構成される組付体とすることができる。
特に、請求項10に記載の発明では、第2弁ボディと弁ボディは、弁部材の側面を支持するガイド部の内壁と、弁座内の連通路とを同軸に配置する係止部が設けられていることを特徴とする。
一般に、弁座の連通路は、流体通路の高圧側と低圧側とを連通するものであるので、弁部材が弁座から離座している間、略球状の弁部材に流体流れが作用する。この略球状の弁部材と、弁ボディにおける弁座の連通路の軸ずれが比較的顕著である場合には、弁部材が回転するおそれがある。例えば略球状の弁部材の平面で弁座に着座する場合において、流体流れにより弁部材が回転し、弁部材の弁座への着座時に、弁部材の平面が傾いたまま弁座に着座すると、弁座の摩耗等が促進されるおそれがある。
また、従来技術の如く、弁部材が支持部材の収容穴に支持される構成では、例えば弁部材と連通路の同軸組付けは、支持部材、支持部材を軸方向に移動可能にする弁ハウジング等の第1組付部材、弁ボディ、および弁ボディを位置決めする第2組付部材を介して決められている。少なくとも3部材を介して弁部材と連通路を精度よく同軸組付けすることは比較的難しい。
これに対して請求項10に記載の発明では、弁部材と連通路の同軸組付けを弁ボディと第2ボディの2部材のみを介して行なうことができる。しかも、第2弁ボディと弁ボディは、弁部材の側面を支持するガイド部の内壁と、弁座内の連通路とを同軸に配置する係止部が設けられているので、弁部材と連通路の同軸組付けを精度よく行なうことができる。
また、請求項11に記載の発明では、第2弁ボディおよび弁ボディのうちの一方は凸状の第1段差部を有し、他方は第1段差部に係合可能な凹状の第2段差部を有しており、
係止部は、第1段差部および第2段差部に設けられ、軸方向に拡径するテーパ面を有していることを特徴とする。
これによると、係止部は、第1段差部および第2段差部に設けられたテーパ面同士で係止されるので、上記同軸組付けする際に、第2弁ボディと弁ボディとの軸ずれがある状態で組付ける場合であっても、互いのテーパ面に倣わせることができる。したがって、弁部材と連通路を精度よく同軸組付けるための組付性向上が図れる。
また、請求項12乃至15に記載の発明では、弁部材は、弁座に対向配置される第2の平坦面を有していることを特徴とする。
これによると、略球状の弁部材は、例えば球面部と平面部を有しその平面部に、弁座に対向配置される第2の平坦面を有しているので、弁部材の第2の平坦面を弁座に向けて弁ボディのガイド部内へ挿入し、その弁部材に支持部材を当接させるだけで、弁部材を支持部材が支持する組付けが容易にできる。したがって、従来技術のように支持部材と弁部材との組付け時に、弁部材の平坦面が傾いたまま組付けられてしまうことはない。
また、請求項13に記載の発明では、弁座には、弁座と第2の平坦面との密着領域において、流体逃がし通路が設けられていることを特徴とする。
これによると、弁座には、弁座と第2の平坦面との密着領域において、流体逃がし通路が設けられていることが好ましい。これにより、弁部材が弁座に着座した状態において、流体逃がし通路が着座領域内に形成されているので、支持部材を反弁座方向に移動させる流体の油圧力を比較的小さく設定できる。したがって、例えば支持部材を弁座方向に付勢するスプリング等の付勢部材の付勢力や、支持部材を電磁力で駆動する電磁コイルを有するソレノイドなどの電磁駆動部の駆動力を小さくすることが可能である。
また、請求項14乃至15に記載の発明では、流体逃がし通路は、弁座側よりガイド部側の流路面積が大きく形成されていることを特徴とする。
これにより、弁部材が弁座より離座したときに弁座より流出する流体をスムースに低圧側に流すことができる。
特に、請求項15に記載の発明では、流体逃がし通路は、弁ボディの流体出口周縁部を環状に囲むよう形成された流体溜まり部を有していることを特徴とする。
これにより、弁部材の弁座より離座時に、弁座より流出する流体を、流体逃がし通路を介して、低圧側の流体通路の配置位置に関係なく効果的に排出できる。
また、請求項16に記載の発明では、弁部材は、球体であることを特徴とする。
これによると、略球状の弁部材の形状は、平坦面を有するものに限らず、単に球体であるものであっても、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の発明による効果を得ることができる。
また、請求項17に記載の発明では、支持部材を軸方向移動可能に収容する弁ハウジングを備え、弁ハウジングと弁ボディのガイド部側の端面との間には、弁室が形成され、弁室の内壁は、前記端面におけるガイド部の領域より大きく形成されていることを特徴とする。
これにより、支持部材を軸方向移動可能に収容するバルブボデー等の弁ハウジングを備える場合において、弁ハウジングと弁ボディのガイド部側の端面との間には、弁室が形成され、弁室の内壁は、前記端面におけるガイド部の領域より大きく形成することができる。
また、請求項18に記載の発明では、連通路には、オリフィスが設けられていることを特徴とする。
これによると、連通路に、流体の流量を制限するオリフィスを設けているので、弁座へ導かれる高圧側の流体源の流量が制限されているため、弁部材が弁座より離座したときに、弁座より低圧側へ流出する流体の流量が絞られにくくなる。
また、請求項19乃至21に記載の発明では、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の流体制御弁を備えていることを特徴とする。これにより、例えば内燃機関の各気筒に取り付けられ、流体として燃料を噴射および噴射停止する燃料噴射弁や、燃料を高圧状態に蓄圧するコモンレール等の蓄圧器装置に取り付けられる減圧装置や、燃料圧が限界値を超えた場合に蓄圧した高圧燃料の圧力を下げる安全弁としてのプレッシャリミッタなどの燃料噴射装置を制御する流体制御弁に用いることができる。
また、請求項20乃至21に記載の発明では、噴孔と、内部を軸方向移動可能なノズルニードルとを有し、噴孔を開閉するノズル部と、ノズルニードルを噴孔閉塞方向へ付勢する高圧の燃料が蓄えられる圧力制御室を有し、圧力制御室の燃料圧力によりノズルニードルを駆動する制御ピストンを内部に収容するノズル本体と、前記連通路の開閉により、圧力制御室内の燃料圧力を制御することを特徴とする。
これにより、燃料を噴射および噴射停止する燃料噴射装置の場合において、圧力制御室内の制御圧を増減させ、その制御圧を介して噴孔を開閉するノズルニードルを駆動する流体制御弁に用いることで、安価な流体制御弁を有する燃料噴射弁を提供することが可能である。
また、請求項21に記載の発明では、請求項20に記載の燃料噴射弁は、コモンレールに蓄圧されている高圧燃料を噴射可能な蓄圧式燃料噴射装置に用いられる燃料噴射弁であって、弁ボディは、連通路が圧力制御室に接続可能であるとともに、コモンレールから供給される高圧燃料を圧力制御室に導くように、連通路に導入する第2オリフィスが設けられていることを特徴とする。
以下、本発明の流体制御弁を、蓄圧式燃料噴射装置に用いられる燃料噴射弁に適用して具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の流体制御弁の要部を示す部分断面図である。図2は、図1中の弁ボディとしてのオリフィス部材を示す平面図である。図3は、本実施形態の流体制御弁を適用した蓄圧式燃料噴射装置を示す断面図である。図4は、図1中の電磁弁装置の弁部材の着座および離座過程を説明する図であって、弁部材が離座した開時状態を示す部分断面図である。
図3に示すように、蓄圧式燃料噴射装置1に使用される燃料噴射弁2は、例えば自動車等の車両に搭載された図示しない多気筒(例えば、4気筒)のディーゼルエンジン(以下、エンジンと呼ぶ)の各気筒ごとに設けられ、図示しない高圧燃料供給ポンプ(以下、サプライポンプ)3から圧送された高圧燃料を蓄圧器(以下、コモンレール)4内に蓄圧し、このコモンレール4に蓄圧した高圧燃料を燃焼室内に直接噴射供給するいわゆるインジェクタである。
この燃料噴射弁2は、ノズルニードル20を軸方向に移動可能に収容するノズルボデー12と、ノズルニードル20を閉弁側に付勢する付勢部材としてのスプリング35を収容するロアボデー11と、ノズルボデー12とロアボデー11とを所定の締付軸力により締結する締付け部材としてのリテーニングナット14と、流体制御弁としての電磁弁装置7とを含んで構成されている。ノズルボデー12、ロアボデー11、およびリテーニングナット14は、ノズルボデー12とロアボデー11とをリテーニングナット14で締結することで燃料噴射弁のノズル本体を構成している。ノズルニードル20とノズルボデー12はノズル部を構成している。
ノズルボデー12は、略筒状体に形成され、先端部(図3中の下方側の端部)側に、高圧燃料を燃焼室に噴射するための噴孔12bを1個または複数個備えた略筒状部材である。
このノズルボデー12の内部には、中実円柱状のノズルニードル20を軸方向移動可能に保持するための収容孔(以下、第1ニードル収容孔)12eが形成されている。この第1ニードル収容孔12eの図中の中間部位には、その孔径が拡げられた燃料溜り室12cが設けられている。具体的には、ノズルボデー12の内周は、燃料流れの下流に向かって、第1ニードル収容孔12e、燃料溜り室12c、弁座12aの順に形成されており、弁座12aの下流側にノズルボデー12の内外を貫通する噴孔12bが設けられている。
弁座12aは、図3に示すように、円錐台面を有しており、円錐台面の大径側が第1ニードル収容孔12eに連続し、小径側が噴孔12bに向かって延びている。この弁座12aにノズルニードル20が着座および離座可能に配置され、着座および離間することでノズルニードル20が閉弁および開弁する。
さらに、ノズルボデー12には、このノズルボデー12の図示上端側の合わせ面から燃料溜り室12cへ延びる燃料送出路12dが設けられている。この燃料送出路12dは、ロアボデー11の後述の燃料供給路11bと連通することで、コモンレール4内で蓄圧された高圧燃料を燃料溜り室12cを経由し弁座12a側へ送り込む。燃料送出路12dと燃料供給路11bとは高圧燃料通路を構成する。
ロアボデー11は、図3に示すように、略筒状体に形成されており、内部に、スプリング35、およびノズルニードル20を駆動するための制御ピストン30を軸方向に移動可能に収容するための収容孔(以下、第2ニードル収容孔)11dが設けられている。この第2ニードル収容孔11dの図示下端側の合わせ面には、中間の内周11d1よりは大きく拡げられた内周11d2が形成されている。
具体的には、この内周(以下、スプリング室とも呼ぶ)11d2は、スプリング35、および環状部材31、および制御ピストン30のニードル部30cを収容するいわゆるスプリング室が形成されている。環状部材31は、スプリング35とノズルニードル20との間に挟み込まれて配置されており、スプリング35をノズルニードル20の閉弁方向に付勢するスプリング受け部を構成する。ニードル部30cは、ノズルニードル20に、環状部材31を介して間接的に、もしくは直接的に当接可能に構成されている。
さらに、ロアボデー11には、コモンレール4の分岐管に接続される高圧配管(図示せず)が気密に連結する継手部(以下、インレット部)11fが設けられている。このインレット部11fは、コモンレールから供給された高圧燃料を、内部に装着されたバーフィルタ13を介して燃料供給路11bへ導く燃料導入部である。ロアボデー11のインレット部11fの内部、およびスプリング室11d2の周囲には、燃料供給路11bが設けられている。
また、ロアボデー11には、スプリング室11d2に導かれた燃料を、図示しない燃料タンク等の低圧配管系内に戻すための燃料逃がし通路(リーク回収用通路とも呼ぶ)(図示せず)が設けられている。燃料逃がし通路11c、スプリング室11d2は低圧燃料通路を構成する。
なお、図3に示すように、制御ピストン30の他端部側には、電磁弁装置7により油圧が給排され圧力制御室(以下、油圧制御室)8、16cが設けられている。この油圧制御室8、16cの油圧を増減することで、ノズルニードル20を閉弁および開弁する。具体的には、油圧制御室8、16cから油圧が抜かれ、減少すると、ノズルニードル20および制御ピストン30がスプリング35の付勢力に抗して図1中の軸方向上方に移動し、ノズルニードル20が開弁する。一方、油圧制御室8、16cに油圧が導入され、増加すると、ノズルニードル20および制御ピストン30がスプリング35の付勢力によって図1中の軸方向下方に移動し、ノズルニードル20が閉弁する。
なお、制御ピストン30の端部外壁30pと、第2ニードル収容孔11dと、圧力制御室部16cの内壁によって圧力制御室8、16cが形成している。
次に、電磁弁装置7について詳細に説明する。電磁弁装置7は、圧力制御室8、16cと低圧通路(以下、導通路とも呼ぶ)17dとを断続する電磁二方弁である。電磁弁装置7は、ロアボデー11の反噴孔側の端部に配設されている。電磁弁装置7は、ボデーアッパー52によりロアボデー11に固定されている。
図3に示すように、第2ニードル収容孔11dの反噴孔側の端部には、弁ボディとしてのオリフィス部材16が設けられている。オリフィス部材16には、連通路16a、16b、16cが設けられている。連通路(以下、オリフィスとも呼ぶ)16a、16b、16cは、出口側絞り部としてのオリフィス(以下、アウトオリフィス)16aと、入口側絞り部としてのオリフィス(以下、インオリフィス)16bと、第2ニードル収容孔11dに連通する圧力制御室部16cとを有する。
アウトオリフィス16aは、弁座16d(図1参照)と圧力制御室部16cとを連通するように配置され、弁部材41を介したバルブアーマチャ42の閉弁および開弁により閉塞および流通する。インオリフィス16bは、圧力制御室部16cと燃料供給路11bとを連通するように配置されている。
なお、弁部材41を介して開弁および閉弁するオリフィス部材16の弁座16dと、バルブアーマチャ42の弁構造については後述する。
オリフィス部材16の反噴孔側には、弁ハウジングとしてのバルブボデー17が設けられている。バルブボデー17の外周部には雄ねじが形成されており、バルブボデー17がロアボデー11の筒状ねじ部にねじ込まれることによってオリフィス部材16がバルブボデー17とロアボデー11とに挟持されている。バルブボデー17は略円筒形状に形成されており、貫通孔17a、17bが設けられている。貫通孔(以下、ガイド孔とも呼ぶ)17aと貫通孔17bとの間には、導通路17dが形成されている。
オリフィス部材16のバルブボデー側端面161(図1参照)と、貫通孔17aの内壁とによって弁室17cが形成されている。オリフィス部材16の外壁には、二面幅面(図2参照)が形成されており、二面幅面と、ロアボデー11の内壁の間に形成された隙間16kは貫通孔17bに連通している。
コイル61は、図3に示すように、樹脂製のスプール62に直接巻回され、スプール62およびコイル61の外周側は図示しない樹脂モールドにより覆われている。なお、巻回装置により巻回されたコイル(以下、巻回コイル)61の外周を樹脂モールドにより被覆した後に、被覆された巻回コイル61に2次樹脂成形を行なってスプール62と一体に成形されるものであってもよい。コイル61の端部には、ターミナル51が電気的に接続されている。
固定コア63は、図3に示すように、略円筒状に形成されており、内周側コア部と、外周側コア部と、これら両コア部に接続する上端部とを備え、内周側コア部と外周側コア部との間にコイル61が挟み込まれている。固定コアは磁性材で形成されている。
固定コア63の図3中の下部側には、バルブアーマチャ42が固定コア63に向き合うように配置されおり、固定コア63の下端面(以下、磁極面)とバルブアーマチャ42の上端面(以下、磁極面)が近接および離間可能に配置されている。電流供給によりコイル61に発生する電磁力を利用し、内周側コア部および外周側コア部の磁極面からバルブアーマチャ42の磁極面に向けて磁束が流れ、磁束密度に応じた吸引力がバルブアーマチャ42に作用する。
固定コア63の内側には、略円筒状のストッパ64が挿入配置され、固定コア63と上部ハウジング53の間に挟まれて固定されている。ストッパ64内には、圧縮スプリングなどの付勢部材59が配置されている。この付勢部材59の付勢力は、バルブアーマチャ42に作用し、バルブアーマチャ42の磁極面と固定コアの磁極面のエアギャップが広がる方向に付勢している。ストッパ64のバルブアーマチャ側の端面は、バルブアーマチャ42がフルリフトする際のリフトを規制する。
ストッパ64およびボデーアッパー52の内側には、弁室17c、貫通孔17bを介して流出した燃料が低圧側へ流出する燃料通路37が形成されている。
ここで、図3に示すように、上部ハウジングとしてのボデーアッパー52と、中間ハウジング54と、下部ハウジングとしてのバルブボデー17とは、弁ハウジングを構成している。中間ハウジング54は略筒状に形成され、固定コア63をガイドするように収容している。具体的には、固定コア63は段付きの略有底円筒状に形成され、中間ハウジング54の下端部の内周側に挿入されている。固定コア63の外周は、段付きを境に下方に向かって縮径しており、その段付きが、中間ハウジング54の内周側に形成された段差に係止されることにより、固定コア63が中間ハウジング54から脱落するのを防止している。
バルブアーマチャ42は、略平板状に形成された平板部と、平板部より小径の小径軸部とを備えている。平板部の上端面は、内側コア部および外側コア部の磁極面に対向して配置される磁極面が形成されている。バルブアーマチャ42は磁性材からなり、例えばパーメンジュールで形成されている。平板部の下部側に小径軸部が形成されている。
バルブアーマチャ42の小径軸部の端面には、略球状の弁部材41が設けられており、バルブアーマチャ42は、弁部材41を介してオリフィス部材16の弁座16dに着座および離座が可能である。なお、オリフィス部材16は、ピン等の位置決め部材92を介してロアボデー11に位置決め固定されている。オリフィス部材16の貫通孔16p(図2参照)は、位置決め部材92を挿入する係止穴である。
次に、弁部材41を介して互いに着座および離座するバルブアーマチャ42と、弁座16dを有するオリフィス部材16の弁構造について、図1および図2に従って説明する。
図1に示すように、バルブアーマチャ42の小径軸部の弁部材側の端面42aは、平坦面に形成され、弁部材41の球面部41aに当接および離間可能である。また、バルブアーマチャ42の小径部は、バルブボデー17の貫通孔17aの内周に軸方向移動可能に保持されるとともに、弁室17cに挿通可能に配置されている。弁部材41を介してバルブアーマチャ42と弁座16dが着座および離座することにより、油圧制御室8、16cより弁室17cへの燃料流れが遮断および流通する。
具体的には、弁部材41は、平面部41bを有する球状体であって、平面部41bが、弁座16dに着座および離座可能に配置されている。弁部材41は、平面部41bの着座時にアウトオリフィス16aを閉塞する。平面部41bは、請求範囲に記載の第2の平坦面を構成する。
また、オリフィス部材16のバルブアーマチャ側の端面161には、図1に示すように、弁部材41の球面部41aを摺動自在に支持する有底孔状のガイド孔16gが設けられている。弁座16dは、ガイド孔16gの内周の底部に設けられており、平面状のシート面を形成している。弁座16dは請求範囲に記載のシート部を構成し、ガイド孔16gは請求範囲に記載のガイド部を構成する。また、弁座16dは、オリフィス部材16に形成された段差部を構成する。また、ガイド孔16gの開口端と、オリフィス部材16の端面161は面一であり、請求範囲に記載のガイド部とオリフィス部の端面は面一である特徴を有する。
弁座16dの外周は、図1および図2に示すように、ガイド孔16gの内周より小さく形成されており、弁座16dとガイド孔16gとの間には、環状の燃料逃がし通路16eが設けられている。弁座16dの外周は、弁部材41の平面部41bの外周より小さく形成されている。これにより、弁部材41の平面部41bと、弁座16dが着座および離座する際に、ガイド孔16gの底部のうち、平面部41bに着座する弁座16d以外の部位で燃料流れを制限することはない。
なお、燃料逃がし通路16eは、請求範囲に記載の弁座と第2の平坦面との密着領域において設けられる流体逃がし通路を構成する。
また、燃料逃がし通路16eは、図1に示すように、弁座16d側からガイド孔16g側に向かって流路断面積が大きくなるように形成されている。これにより、弁部材41が弁座16dより離座したときに弁座16dより流出する燃料をスムースに低圧側へ流すことができる。
上述のように弁部材41はガイド孔16gに軸方向移動可能に支持されているため、ガイド孔16gの内周と、弁部材41の球面部41aの球面との隙間の大きさは、互いに摺動可能な程度のガイドクリアランスに設定されている。このガイドクリアランスによる燃料リーク量だけでは、弁座16dより低圧側へ流出する燃料流量が限られる。
本実施形態では、ガイド孔16gの内壁には、低圧側の弁室17cに連通する燃料リーク溝16rが設けられており、この燃料リーク溝16rによって弁座16dより低圧側へ流出する燃料の流路面積を拡大する。これにより、ガイド孔16gの内壁に、弁座16dより低圧側へ流出する燃料の流路面積を拡大する燃料リーク溝16rを設けるので、弁部材41が弁座16dより離座したときに、弁座16dより低圧側へ流出する燃料の流量が絞られることはなく、連通路16a、16b、16cより流出すべき燃料流量を確保することができる。
なお、上記燃料リーク溝16rは、図2に示すように、弁座16dより放射状に延出するように、ガイド孔16gの内壁に形成されている。これにより、上記連通路16a、16b、16cより流出すべき燃料流量に応じて、複数個(本実施例では、6個)の燃料リーク溝16rを設けることができる。さらに複数個の燃料リーク溝16rを放射状に設けるので、弁座16dから流出し、燃料リーク溝16rを流れる燃料の流体力によって弁部材41の姿勢が不安定になることを防止できる。
なお、弁座16dの内周は、段付き内周に形成されており、出口側内周16l、アウトオリフィス16a、および圧力制御室部16cの順に形成されている。
なお、ここで、バルブアーマチャ42は、特許請求の範囲に記載の支持部材を構成する。オリフィス部材16は、特許請求の範囲に記載の弁座を有する弁ボディを構成する。また、バルブボデー17は、特許請求の範囲に記載の弁ハウジングを構成する。
上述の構成を有する燃料噴射弁2の作動について以下説明する。高圧源であるコモンレール4から高圧配管、燃料供給路11b、燃料送出路12dを介して燃料溜り室12cに高圧燃料が供給されるとともに、燃料供給路11b、インオリフィス16bを介して油圧制御室8、16cに高圧燃料が供給される。
コイル61への非通電時には、バルブアーマチャ42および弁部材41は、付勢部材59の付勢力により弁座16d側(図3の下方)へ押し当てられ、弁部材41が弁座16dに着座する。弁部材41の着座によりアウトオリフィス16aが閉塞され、油圧制御室8、16cから弁室17c、低圧通路17dへの燃料流れが遮断される。
このとき、油圧制御室8、16cに蓄えられている燃料圧力(以下、背圧)は、コモンレール4の内部の燃料圧力(以下、コモンレール圧)と同一の圧力に維持される。油圧制御室8、16cに蓄えられている背圧により制御ピストン30を介してノズルニードル20を噴孔閉塞方向へ付勢する作用力(以下、第1作用力)と、スプリング35の付勢力によりノズルニードル20を噴孔閉塞方向へ付勢する作用力(以下、第2作用力)との和は、燃料溜り室12cおよび弁座12a近傍のコモンレール圧によりノズルニードル20が噴孔開放方向に受ける作用力(以下、第3作用力)より大きくなっている。そのため、ノズルニードル20は弁座12aに着座し、噴孔12bが閉塞されている。噴孔12bから燃料は噴射されない。なお、弁座16dに着座している弁部材41には、閉塞されているアウトオリフィス16a(詳しくは、出口側内周16l)内の燃料圧力(背圧)が作用している。
コイル61への通電が開始されると(以下、燃料噴射弁2の開時)、コイル61に電磁力が発生し、固定コア63とバルブアーマチャ42の両磁極面間に発生する磁気吸引力により、バルブアーマチャ42が固定コア63方向に吸引される。このとき、弁部材41は、上記アウトオリフィス16aの背圧により離座方向に受ける作用力(以下、第4作用力)が働いているので、バルブアーマチャ42と共に弁部材41が弁座16dから離座する。その弁部材41が離座すると、ガイド孔16gに沿って弁部材41が固定コア63方向に移動する。
このとき、バルブアーマチャ42および弁部材41の弁座16dからの着座により、アウトオリフィス16aを介して油圧制御室8、16cから弁室17c、低圧通路17dへ流れる燃料流れが流通する。油圧制御室8、16c内の燃料が低圧側へ開放されるため、油圧制御室8、16cの背圧が低下する。背圧が低下すると、第1作用力が次第に減少する。そして、ノズルニードル20の噴孔閉塞方向に作用する第1作用力および第2作用力より、ノズルニードル20の噴孔開放方向に作用する第3作用力が大きくなると、ノズルニードル20は弁座12aより離座し、図3の上方へリフトする。ノズルニードル20がリフトすると、噴孔12bは開放され、噴孔12bより燃料が噴射される。
また、コイル61への通電が停止されると(以下、燃料噴射弁2の閉時)、コイル61の電磁力が消滅するため、付勢部材59の付勢力によりバルブアーマチャ42および弁部材41が弁座16d方向に移動する。弁部材41の平面部41bが弁座16dに着座すると、油圧制御室8、16cから弁室17c、低圧通路17dへの燃料の流出が停止される。そして油圧制御室8、16cの背圧が増加し、第1作用力および第2作用力が第3作用力に勝るようになると、ノズルニードル20が図3の下方へ移動し始める。そして、ノズルニードル20が弁座12aに着座すると、燃料噴射が終了する。
なお、ここで、本実施形態の効果と比較説明するための比較例を、図13、図14、および図15に従って説明する。図13および図14において、比較例の電磁弁装置は、本実施形態と同様に、バルブアーマチャ942と、このバルブアーマチャ942が弁部材41を介して着座および離座する弁座916dを有するオリフィス部材916を備えている。弁部材41は、平面部41bが弁座916dに着座および離座可能である。弁部材41の球面部41aは、バルブアーマチャ942の小径部の端面942a側の収容孔942d、942gに収容されている。この収容孔942d、942gは、球面部41aの球面に沿って弁部材41を支持する内周942gと、球面部41aの球面に当接する円錐台面942dとが形成されている。
比較例のバルブアーマチャ942では、弁部材41を収容孔942d、942gに収容するので、バルブアーマチャ942に弁部材41を組付けるときに、弁部材41の平面部41bが図13の水平方向ではなく、弁座916dに対して傾いて組付けられてしまう可能性がある。平面部41bが傾いた状態で弁座916dに着座すると、弁座916dの弁座面を傷付けるおそれがある。
なお、弁部材41の平面部41bの全平面と、弁座916dとがほぼ密着するように構成されており、弁座916dのうち、燃料通路溝916k、916fのみが平面部41bと密着しないようになっている。また、弁部材41が弁座916dより着座する際には、図14および図15に示すように、互いに対応する弁部材41の平面部41bと弁座916dの間、および燃料通路溝916k、916fを通じて、アウトオリフィス16aよりの燃料が弁室17c、低圧通路17dへ流出する。
これに対して本実施形態では、オリフィス部材16には、弁部材41の球面部41aを摺動自在に支持するガイド部としてのガイド孔16gと、弁部材41が離座および着座する弁座16dとが設けられている。さらに、弁座16dはガイド孔16gの底部に形成されており、弁座16dに対してガイド孔16gが延出するように突き出している。これにより、略球状の弁部材41を支持するバルブアーマチャ42の形状は、従来技術のように弁部材41を収容するための複雑な穴942d、942g形状にする必要がない。
したがって、略球状の弁部材41を介してバルブアーマチャ42が弁座16dに着座および離座するものにおいて、弁部材41に接するバルブアーマチャ42の先端を、例えば平坦面のような安価な形状に形成することができる。
また、本実施形態では、バルブアーマチャ42の小径部の弁部材41側の端面42aを、平坦面に形成している。これにより、組付性向上が図れる安価なバルブアーマチャ42形状とすることができる。バルブアーマチャ42と、弁部材41の球面部41aの球面をガイドするガイド孔16gとの軸ずれが生じる場合があっても、バルブアーマチャ42の端面42aと、これに当接する弁部材41の球面部41aとの間で、弁部材41を介してバルブアーマチャ42が弁座16dに着座および離座する機能を維持しつつ、軸ずれを容易に吸収できる。したがって、バルブアーマチャ42、弁部材41、およびオリフィス部材16を組付け易くする構成を提供することができる。
また、本実施形態では、弁座16dは、ガイド孔16gの底部に形成されており、オリフィス部材16の段差部を構成している。これにより、オリフィス部材16をプレス加工することで段差部を容易に加工できるため、弁座16dを安価に形成することが可能である。
また、本実施形態では、ガイド部としてのガイド孔16gの開口端と、オリフィス部材16の端面161は面一に構成されている。これにより、オリフィス部材16をプレス加工により形成する場合において、オリフィス部材16のプレス加工素材は例えば円筒状体のような比較的簡素な形状から形成できる。さらに、プレス加工自体もオリフィス部材16の端面161を複雑な凹凸状に形成するための特殊な加工が不要となる。したがって、プレス加工によりオリフィス部材を比較的安価に形成することが可能である。
また、本実施形態では、ガイド孔16gの内壁には、低圧側の弁室17cに連通する燃料リーク溝16rが設けられている。
一般に、略球状の弁部材41を軸方向移動可能にガイドするためのガイド部16gの内壁形状は、弁部材41を支持する有底の円状のガイド孔16gとなる。この場合、弁部材41が弁座16dより離座したときに弁座16dより流出する流体は、ガイド孔16gの内周と弁部材41の球面部41aの球面との隙間を介してのみ低圧側の弁室17cなどへ流出されるため、低圧側へ流出する流体の流量は、その隙間の流路面積により絞られるおそれがある。
これに対して本実施形態では、図2および図4に示す矢印の燃料流れのように、この燃料リーク溝16rによって弁座16dより低圧側へ流出する燃料の流路面積を拡大する。このようにガイド孔16gの内壁に、弁座16dより低圧側へ流出する燃料の流路面積を拡大する燃料リーク溝16rを設けるので、弁部材41が弁座16dより離座したときに、弁座16dより低圧側へ流出する燃料の流量が絞られることはなく、弁座16dの上流側の連通路16a、16b、16cより流出すべき燃料流量を確保することができる。
なお、上記燃料リーク溝16rは、ガイド孔16gの内壁に形成された溝に限らず、例えば燃料逃がし通路16eと弁室17cとの間を連通する連通穴等であってもよく、弁座16dより低圧側へ流出する燃料の流路面積を拡大する低圧燃料通路であればよい。
また、本実施形態において、燃料リーク溝16rは、図1に示すような燃料逃がし通路16eと弁室17cを連絡する傾斜溝に限らず、円弧状の溝や、ガイド孔16gの内周に沿って形成された段差状の溝であってもよい。
また、本実施形態では、燃料リーク溝16rは、弁座16dより放射状に延出するように、ガイド孔16gの内壁に形成されている。これにより、上記連通路16a、16b、16cより流出すべき燃料流量に応じて、複数個の燃料リーク溝16rを設けることができる。さらに複数個の燃料リーク溝16rを放射状に設けるので、弁座16dから流出し、燃料リーク溝16rを流れる燃料の流体力によって弁部材41の姿勢が不安定になることを防止できる。
また、本実施形態では、略球状の弁部材41は平面部41bを有しており、平面部41bは、ガイド孔16gの底部にある弁座16dに対向配置されている。これによると、弁部材41は、弁座16dに対向配置される平坦面を有しているので、弁部材41の平面部41bの平坦面を弁座16dに向けてガイド孔16g内へ挿入し、その弁部材41の球面部41aのいずれかの部位にバルブアーマチャ42を当接させるだけで、弁部材41をバルブアーマチャ42が支持する組付けが容易にできる。したがって、従来技術のようにバルブアーマチャと弁部材との組付け時に、弁部材の平坦面が傾いたまま組付けられてしまうことはない。
また、本実施形態では、弁座16dには、弁座16dと平面部41bとの密着領域において、燃料逃がし通路16eが設けられていることが好ましい。これにより、弁部材41が弁座16dに着座した状態において、流体逃がし通路16eが着座領域内に形成されているので、弁部材41およびバルブアーマチャ42を反弁座方向に移動させる流体の油圧力を比較的小さく設定できる。したがって、例えばバルブアーマチャ42を弁座16d方向に付勢する付勢部材59の付勢力や、バルブアーマチャ42を電磁力で駆動するコイル61を有するソレノイドなどの電磁駆動部の駆動力を小さくすることが可能である。
なお、上記燃料逃がし通路16eは、弁座16d側からガイド孔16g側に向かって流路断面積が大きくなるように形成されている。これにより、弁部材41が弁座16dより離座したときに弁座16dより流出する燃料をスムースに低圧側へ流すことができる。
また、本実施形態では、燃料逃がし通路16eは、弁座16dとガイド孔16gの間に環状に配置されており、弁座16dの出口側のアウトオリフィス16aに対して、そのアウトオリフィス16a周りを環状に配置された燃料溜まり部を形成している。これにより、弁部材41が弁座16dより離座するときに、弁座16dより流出する燃料を、燃料逃がし通路16eを介して、低圧通路17d等の低圧側燃料通路の配置位置に関係なく効果的に排出できる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰返さない。
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した複数個の燃料リーク溝において、6個の燃料リーク溝16rに代えて、図5に示すように、4個の燃料リーク溝116rとする。図5は、本実施形態に係わるオリフィス部材を示す平面図である。
図5に示すように、燃料リーク溝116rの溝幅を、燃料リーク溝16rに対して拡大している。この溝幅の設定方法としては、4個の燃料リーク溝116rの総流路面積が、6個の燃料リーク溝16rの総流路面積と同等以上になるように設定している。
なお、4個の燃料リーク溝116rは、周方向にほぼ均等配置されていることが好ましい。これにより、弁座16dより放射状に延出する燃料リーク溝116rの個数が少ない場合であっても、弁部材41の弁座16dよりの離座時において、弁座16dから流出し、燃料リーク溝16rを流れる燃料の流体力によって弁部材41の姿勢が不安定になることを抑制することができる。
このように構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、燃料リーク溝116rの個数を4個で説明したが、2個、3個、5個、あるいは8個等いずれの個数であってもよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した略球状の弁部材において、平面部41bを有する弁部材41に代えて、図6に示すように、球体の弁部材241とする。図6は、本実施形態の電磁弁装置の要部を示す部分断面図である。図7は、図6中のオリフィス部材を示す平面図である。図8は、図6中の電磁弁装置の弁部材の着座および離座過程を説明する図であって、弁部材が離座した開時状態を示す部分断面図である。
図6に示すように、電磁弁装置7は、バルブアーマチャ42と、このバルブアーマチャ42が弁部材216を介して着座および離座する弁座126d、216dを有するオリフィス部材216を備えている。
弁座126d、216dは、オリフィス部材216の段差部に形成されている。弁座126d、216dは、弁部材241の球面部41aに対して、円錐台状の弁座126dおよび平面状の弁座216dのうちの少なく一方が球面部41aに着座および離座可能な形状である。なお、以下本実施形態の説明では、円錐台状の弁座126dで弁部材241に着座および離座するものとする。
弁座126d、216dの外周側には、弁部材241の球面部41aを側面で支持するガイド孔16gが設けられている。ガイド孔16gの内壁には、円錐台状の弁座126dの延長上に燃料リーク溝216rが形成されている。この燃料リーク溝216rによって、図7および図8に示す矢印の燃料流れのように、弁座216dより低圧側へ流出する燃料の流路面積の拡大が図れる。
なお、弁部材241は球体であるため、弁座126dと弁座216dの接続部、および弁座216dとガイド孔16gとの接続部は、弁部材241の着座時に、球面部41aの球面で区画される空間が必ず形成される。このため、第1の実施形態で説明したような燃料逃がし通路16eを特に設ける必要はない。
このように構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態を図9に示す。第4の実施形態は、弁座とガイド部との構成を、弁座16dを有するオリフィス部材(以下、オリフィス部材本体とも呼ぶ)316と、ガイド部(ガイド孔)315aを有する第2オリフィス部材315で構成される組付体とする一例を示すものである。図9は、第4の実施形態の流体制御弁の要部を示す部分断面図である。図10は、図9中の第2オリフィス部材を下方からみた平面図である。図11は、図9中のオリフィス部材を上方からみた平面図である。
弁座41dと、ガイド孔315aとを有するオリフィス部材は、図9に示すように、弁座16dを有するオリフィス部材本体316と、弁部材41の球面部41aを支持するガイド孔315aを有する第2オリフィス部材315とで構成されている。第2オリフィス部材315は、オリフィス部材本体316の上端面側に配置されており、ガイド孔315aは、弁座41dより突出する方向に配置されている。
第2オリフィス部材315は略円板状に形成されており、第2オリフィス部材315の外壁はオリフィス部材本体316の外壁の形状とほぼ同じに形成されている。即ち、図10および図11に示すように、第2オリフィス部材315およびオリフィス部材本体316の外壁は、二面幅を有する略円筒に形成されている。
また、図9に示すように、第2オリフィス部材315は、ガイド孔315aを有する平板部315cと段差部(以下、第1段差部)315gを備えており、オリフィス部材本体316は、第1段差部315gに係合可能な第2段差部316gを備えている。これにより、第2オリフィス部材315およびオリフィス部材本体316は、第1段差部315gと第2段差部316gを互いに嵌合させることにより一体的に組付けられ、組付体となる。具体的には、第2オリフィス部材315の下端面側には、弁座16d、燃料通路溝316f、および燃料逃がし通路316eの外周側に、図9の下方に向けて形成される凸状の上記第1段差部315gが形成されている。第1段差部315gは、オリフィス部材本体316の外周部側に形成された凹状の上記第2段差部316gに嵌合可能である。
さらに、第2オリフィス部材315とオリフィス部材本体316は、図9に示すように、係止部315t、316tを備えており、係止部315t、316tによって、ガイド孔315aの内周と、弁座16d内側のアウトオリフィス16aとが同軸に配置されている。これにより、弁部材41とアウトオリフィス16aとの同軸組付けを精度よく行なうことができる。
上記係止部315t、316tは、第1段差部315gおよび第2段差部316gの側壁で構成され、その側壁は、軸方向に拡径するテーパ面に形成されていることが好ましい。これにより、係止部315t、316tは、第1段差部315gおよび第2段差部316gに設けられたテーパ面同士で係止されるので、上記同軸組付けする際に、第2オリフィス部材315とオリフィス部材本体316との軸ずれがある状態で組付ける場合であっても、互いのテーパ面に倣わせることができる。したがって、弁部材41とアウトオリフィス16aを精度よく同軸組付けるための組付性向上が図れる。
なお、上記側壁は、テーパ面に限らず、軸方向に平行な円周面であってもよい。
また、第2オリフィス部材315の第1段差部315gの内側には、図9の上方に向けて形成される凹状の内側段差部315dが形成されている。平板部316cの下面と、オリフィス部材本体316における弁座16d、燃料通路溝316f、および燃料逃がし通路316eが配置された上面との間には、偏平空間からなる弁室部315dcが形成されている。弁室部315dcと、偏平空間からなる弁室17cとは、平板部316cを内外に貫通する第2低圧通路315bを介して連通している。第2低圧通路315bは、図10に示すように、平板部315cの内側段差部315dのガイド孔315bの外周側に、周方向に複数箇所(本実施例では、4箇所)設けられている。なお、図9のオリフィス部材本体316の断面は、図11中に示すIXからみた断面である。
なお、ここで、第2オリフィス部材315は請求範囲に記載の第2弁ボディに対応し、オリフィス部材本体316は弁ボディに対応している。
以上説明した本実施形態では、弁座およびガイド孔を有するオリフィス部材を、弁座16dを有するオリフィス部材本体316と、ガイド孔315aを有する第2オリフィス部材315で構成しているので、ガイド孔315aは、弁座16dより延出するものに限らず、弁座16dより突出する方向に配置するように設定することができる。
また、上記弁座およびガイド孔を有するオリフィス部材を、オリフィス部材本体316と第2オリフィス部材315で構成される組付体としている。これによると、上記弁座およびガイド孔を有するオリフィス部材は、一体成形されるものに限らず、オリフィス部材本体316と第2オリフィス部材315との組付体で構成することができる。
ここで、弁座16dのアウトオリフィス16aは、いわゆる流体通路の高圧側と低圧側とを連通するものであるので、弁部材41が弁座16dから離座している間、略球状の弁部材41に流体流れが作用する。この略球状の弁部材41と、弁座16dのアウトオリフィス16aの軸ずれが比較的顕著である場合には、弁部材41が回転するおそれがある。
その流体流れにより弁部材41が回転し、弁部材41の弁座16dへの着座時に、弁部材41の平面部41bが傾いたまま弁座16dに着座すると、弁座16dの摩耗等が促進されるおそれがある。
また、図13の比較例の如く、弁部材941がバルブアーマチャ(支持部材)942の収容穴942d、942gに支持される構成では、例えば弁部材941とアウトオリフィス916aの同軸組付けは、バルブアーマチャ942、バルブアーマチャ942を軸方向に移動可能にする弁ハウジング等の第1組付部材917、オリフィス部材916、およびオリフィス部材916を位置決めする第2組付部材11を介して決められている。少なくとも3部材を介して弁部材と連通路を精度よく同軸組付けすることは比較的難しい。
これに対して本実施形態では、弁部材41とアウトオリフィス16aの同軸組付けを、オリフィス部材本体316と第2オリフィス部材315の2部材のみを介して行なうことができる。しかも、オリフィス部材本体316と第2オリフィス部材315は、弁部材41の球面部41aを支持するガイド孔315aと、アウトオリフィス16aとを同軸に配置する係止部315t、316tが設けられているので、弁部材41とアウトオリフィス16aの同軸組付けを精度よく行なうことができる。
また、上記係止部315t、316tは、第1段差部315gおよび第2段差部316gの側壁で構成され、その側壁は、軸方向に拡径するテーパ面に形成されていることが好ましい。これにより、弁部材41とアウトオリフィス16aを精度よく同軸組付けるための組付性向上が図れる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態を図12に示す。第5の実施形態は、弁座とガイド部との構成を、オリフィス部材本体316と、第2オリフィス部材415で構成される組付体とする他の一例を示すものである。図12は、第5の実施形態に係わる第2オリフィス部材を示す平面図である。
図12に示すように、第2オリフィス部材415は、第2低圧通路415bを有しており、低圧通路415bは、ガイド孔315aの内周に形成された段差部からなる。段差部は、ガイド孔315aの内周に複数箇所(本実施例では4箇所)設けられている。これにより、弁室部315dcと、弁室17cとは、第2低圧通路415bをを介して連通している。
(その他の実施形態)
(1)以上説明した本実施形態において、弁座16dを有する弁ボディを、オリフィス部材16で説明した。この弁座16dを有するオリフィス部材16に限らず、流体通路の高圧側と低圧側とを連通する連通路を有する弁座を有するものであれば、いずれの構造を有する部材であってもよい。
(2)以上説明した第2の実施形態において、球体の弁部材241が着座および離座する弁座を、円錐台状の弁座126dで説明した。この円錐台状の弁座126dに限らず、円錐台状の弁座126dおよび平面状の弁座216dのうちの少なく一方が球面部41aに着座および離座するものであってもよい。
この場合、第1および第2の実施形態において、弁部材41、241が着座および離座する弁座を、平面状の弁座16d、116dとすることができる。これにより、略球状の球面部を有する弁部材において、弁部材の弁座へ着座する部位の形状は、球体の球面、および平面部を有する弁部材の平面のいずれであっても、弁部材の弁座への着座により連通路を閉塞することができる。
(3)以上説明した本実施形態において、バルブアーマチャ42を軸方向移動可能に収容する弁ハウジングとしてのバルブボデー17を備え、バルブボデー17と、ガイド孔16g側のオリフィス部材16、216の端面との間には弁室17cが形成されていると説明した。この弁室17cの内壁を、ガイド孔16gの開口端より大きく形成していることが好ましい。これにより、ガイド孔16gの内壁に設ける燃料リーク溝16r、216rの配置自由度の向上が図れる。
(4)以上説明した本実施形態では、オリフィス部材16、216の連通路16a、16b、16cには、オリフィス16a、16bが設けられているとした。これによると、弁座16d、216dの上流側に配置された連通路に、燃料の流量を制限するオリフィス16a、16bを設けているので、弁座16d、216dへへ導かれる高圧側の燃料源の流量が制限されている。したがって、弁部材41、241が弁座16d、216dより離座したときに、弁座16d、216dより低圧側へ流出する燃料の流量が絞られにくくなる。
(5)以上説明した本実施形態では、本発明を燃料噴射弁2に適用した例について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の流体制御弁に適用可能であり、例えば、燃料を高圧状態に蓄圧するコモンレール4等の蓄圧器装置に取り付けられる減圧装置や、燃料圧が限界値を超えた場合に蓄圧した高圧燃料の圧力を下げる安全弁としてのプレッシャリミッタなどの燃料噴射装置を制御する流体制御弁に用いることができる。
(6)以上説明した本実施形態では、燃料噴射弁2は、噴孔12b、および内部を軸方向移動可能なノズルニードル20を有し、噴孔12bを開閉するノズル部と、ノズルニードル20を噴孔閉塞方向へ付勢する高圧の燃料が蓄えられる油圧制御室8、16cを有し、油圧制御室8、16c内の燃料の背圧によりノズルニードル20を駆動する制御ピストン30を内部に収容するノズル本体と、油圧制御室8、16c内の背圧を制御するように構成されている。
これにより、燃料を噴射および噴射停止する燃料噴射装置1の場合において、油圧制御室8、16c内の背圧を増減させることで、その背圧を介して噴孔12bを開閉するノズルニードル20を駆動する流体制御弁に用いることで、安価な流体制御弁を有する燃料噴射弁2を提供することが可能である。
(7)以上説明した本実施形態では、弁部材41、241を支持するガイド部としてのガイド孔16gの開口端と、オリフィス部材16の端面161とは面一であるとした。
なお、ガイド部とオリフィス部材16の端面161は面一である場合に限らず、ガイド部がオリフィス部材16の端面より突出しているものであってもよく、ガイド部が弁座よりも突出すると共に、弁部材の側面をガイトするように設けたものであればいずれの構造であってもよい。
(8)以上説明した第4、第5の実施形態では、略球状の弁部材を、球面部41aと平面部41bを有する弁部材41として説明したが、これに限らず、球体に形成された弁部材であってもよい。
(9)以上説明した第4、第5の実施形態では、第2オリフィス部材315、415の第1段差部315gを凸状とし、オリフィス部材本体316の第2段差部316gを、凸状の第1段差部315gに係合可能な凹状に形成するものとした。第2オリフィス部材の第1段差部と、オリフィス部材本体の第2段差部は、これに限らず、第2オリフィス部材およびオリフィス部材本体のうちの一方は凸状の段差部を有し、他方は凸状の段差部に係合可能な凹状の段差部を有するものであればよい。