JP2007216564A - 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヘッドの破壊を防止して信頼性及びコストを低減した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口21に連通する圧力発生室12を有する液体流路が設けられた流路形成基板10と、該流路形成基板10の一方面に設けられて前記圧力発生室12に圧力を付与する圧力発生手段300と、前記流路形成基板10の前記圧力発生手段300側に接合されて前記圧力発生手段300を覆う圧力発生室保持部31を有する保護基板30とを具備し、前記流路形成基板10上の前記保護基板30との接合領域の少なくとも前記液体流路に相対向する領域に有機化合物からなる緩衝膜400を設ける。
【選択図】図2
【解決手段】液体を噴射するノズル開口21に連通する圧力発生室12を有する液体流路が設けられた流路形成基板10と、該流路形成基板10の一方面に設けられて前記圧力発生室12に圧力を付与する圧力発生手段300と、前記流路形成基板10の前記圧力発生手段300側に接合されて前記圧力発生手段300を覆う圧力発生室保持部31を有する保護基板30とを具備し、前記流路形成基板10上の前記保護基板30との接合領域の少なくとも前記液体流路に相対向する領域に有機化合物からなる緩衝膜400を設ける。
【選択図】図2
Description
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、液体としてインク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室が形成された基板の表面に圧電素子を形成して、圧電素子の変位によりインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室とこの圧力発生室に連通する連通部とが形成される流路形成基板と、この流路形成基板の一方面側に形成される圧電素子と、流路形成基板の圧電素子側の面に接合され連通部と共にリザーバの一部を構成するリザーバ部を有するリザーバ形成基板とを具備するものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、流路形成基板とリザーバ形成基板との接着領域に異物が存在する場合、大きな異物は洗浄することにより除去することができるものの、微小な異物(例えば、1μm以下の異物)は洗浄により除去するのが困難であると共に、洗浄して異物を除去しても、微小な異物は静電気等によって再付着してしまうという問題がある。
そして、流路形成基板とリザーバ形成基板との接合領域には、圧力発生室に連通するインク供給路が形成され、このインク供給路を封止する振動板の一部が延設されているため、流路形成基板とリザーバ形成基板との接合領域に微小な異物が存在すると、異物がリザーバ形成基板に押圧されることにより振動板に応力が印加され、振動板に亀裂等の破壊が発生してしまうという問題がある。
このように振動板に亀裂等の破壊が発生すると圧電素子を正常に駆動できなくなると共に、インクが漏れる虞があり、漏れたインクによって圧電素子等が破壊されてしまうという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑み、ヘッドの破壊を防止して信頼性及びコストを低減した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を有する液体流路が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面に設けられて前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、前記流路形成基板の前記圧力発生手段側に接合されて前記圧力発生手段を覆う圧力発生室保持部を有する保護基板とを具備し、前記流路形成基板上の前記保護基板との接合領域の少なくとも前記液体流路に相対向する領域に有機化合物からなる緩衝膜が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第1の態様では、保護基板によって押圧された接合領域の異物が緩衝膜に埋め込まれることによって、液体流路に相対向する領域の膜に応力が印加されるのを防止して、液体流路に相対向する領域の膜に亀裂等の破壊が発生するのを防止することができる。
かかる第1の態様では、保護基板によって押圧された接合領域の異物が緩衝膜に埋め込まれることによって、液体流路に相対向する領域の膜に応力が印加されるのを防止して、液体流路に相対向する領域の膜に亀裂等の破壊が発生するのを防止することができる。
本発明の第2の態様は、前記有機化合物が、ポリイミド樹脂及びフッ素含有樹脂からなる群から選択される少なくとも1つからなることを特徴とする第1の態様の液体噴射ヘッドにある。
かかる第2の態様では、所定材料の緩衝膜とすることで、接合領域の異物を確実に埋め込ませて、液体流路に相対向する領域の膜に応力が印加されるのを防止することができる。
かかる第2の態様では、所定材料の緩衝膜とすることで、接合領域の異物を確実に埋め込ませて、液体流路に相対向する領域の膜に応力が印加されるのを防止することができる。
本発明の第3の態様は、前記緩衝膜上には、前記接着剤が1μm以下の厚さで形成されていることを特徴とする第1又は2の態様の液体噴射ヘッドにある。
かかる第3の態様では、緩衝膜上に接着剤が薄く形成されても、保護基板によって押圧された異物を緩衝膜に埋め込ませることができる。
かかる第3の態様では、緩衝膜上に接着剤が薄く形成されても、保護基板によって押圧された異物を緩衝膜に埋め込ませることができる。
本発明の第4の態様は、前記圧力発生手段が、前記流路形成基板の一方面側に振動板を介して接合された圧電素子からなると共に、前記接合領域の前記液体流路に相対向する領域に前記振動板の少なくとも一部が延設されていることを特徴とする第1〜3の何れかの態様の液体噴射ヘッドにある。
かかる第4の態様では、緩衝膜によって延設された振動板の一部に応力が印加されるのを防止して、延設された振動板の異物による亀裂等の破壊を防止することができる。
かかる第4の態様では、緩衝膜によって延設された振動板の一部に応力が印加されるのを防止して、延設された振動板の異物による亀裂等の破壊を防止することができる。
本発明の第5の態様は、前記流路形成基板には、幅方向に並設された複数の圧力発生室と、該圧力発生室に連通して共通の液体室となる連通部と、該連通部と前記圧力発生室とを連通する液体供給路とが設けられ、前記液体流路が、前記圧力発生室と前記液体供給路とで構成されていることを特徴とする第1〜4の何れかの態様の液体噴射ヘッドにある。
かかる第5の態様では、緩衝膜が接合領域の圧力発生室と液体供給路とに相対向する領域に設けられることで、接合領域の圧力発生室と液体供給路とに相対向する領域の薄膜の破壊を防止することができる。
かかる第5の態様では、緩衝膜が接合領域の圧力発生室と液体供給路とに相対向する領域に設けられることで、接合領域の圧力発生室と液体供給路とに相対向する領域の薄膜の破壊を防止することができる。
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる第6の態様では、信頼性を向上して製造コストを低減した液体噴射装置を実現できる。
かかる第6の態様では、信頼性を向上して製造コストを低減した液体噴射装置を実現できる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造方法によって製造されるインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。図示するように、ベース基板となる流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造方法によって製造されるインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。図示するように、ベース基板となる流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、圧力発生室12毎に設けられた液体供給路であるインク供給路14を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板30のリザーバ部32と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。ここで、本実施形態では、圧力発生室12と液体供給路であるインク供給路14とが液体流路を構成している。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、圧力発生室12を形成する際のマスクとして用いられるマスク膜54を介して、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用するが、弾性膜50、絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみを残して下電極膜60を振動板としても良い。
そして、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)又は白金(Pt)等の貴金属からなるリード電極90がそれぞれ接続されている。本実施形態では、リード電極90が、圧電素子300の長手方向のインク供給路14とは反対側の端部近傍から引き出され、弾性膜50上に流路形成基板10の端部近傍までそれぞれ延設されている。そして、このように延設されたリード電極90の圧電素子300とは反対側の端部近傍は、図示しない外部配線等が接続されて、各圧電素子300にリード電極90を介して選択的に電圧が印加されるようになっている。
また、圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31を有する保護基板30が、接着剤35によって接合されている。なお、圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
また、保護基板30には、連通部13に対向する領域にリザーバ部32が設けられており、このリザーバ部32は、上述したように、流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
このような保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。また、流路形成基板10と保護基板30とを接合する接着剤35は、特に限定されず、例えば、エポキシ系接着剤等を挙げることができる。
ここで、保護基板30が流路形成基板10に接合される接合領域は、保護基板30の圧電素子保持部31の周囲の領域とリザーバ部32の周囲の領域とに相対向する領域である。すなわち、保護基板30は、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向の一端部側のリード電極90上に亘ってと、圧力発生室12の長手方向他端部側のインク供給路14に相対向する領域とに接合される。
そして、流路形成基板10の保護基板30が接合される接合領域の少なくとも液体流路に相対向する領域には、有機化合物からなる緩衝膜400が設けられている。本実施形態では、インク供給路14及び連通部13に相対向する領域に複数のインク供給路14及び連通部13に連続して緩衝膜400を設けた。なお、緩衝膜400の材料である有機化合物としては、接着剤35とは別の有機化合物であれば特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂又はフッ素含有樹脂などが挙げられる。
このような緩衝膜400は、流路形成基板10と保護基板30とを接着剤35を介して接合する際に、リード電極90が設けられた領域と、その他の領域との高さ合わせを行って、接合領域の接着剤35の量を均一化して、余分な接着剤35の流出や接合不良等を防止する。すなわち、接合領域の高さが異なる場合、保護基板30等に接着剤35を不均一に塗布しなければならず煩雑である。また、接合領域の高さが異なる場合、均一に接着剤35を塗布して接合すると、高い領域で接着剤35が流出してしまう。
また、緩衝膜400は、流路形成基板10と保護基板30との接合時に、接合面に付着した微小な異物を緩衝膜400内に埋め込ませて、微小な異物による液体流路に相対向する領域の弾性膜50及び絶縁体膜55の亀裂等の破損を防止する。すなわち、流路形成基板10及び保護基板30の接合面に付着した異物は、洗浄することにより大きな異物だけは除去することができるが、微小な異物(特に1μm以下の異物)は除去することが難しく、また、微小な異物は除去できたとしても静電気等によって再付着してしまう。そして、流路形成基板10と保護基板30との接合領域の接着剤35は約1μm以下の厚さで形成されるため、接合領域に接着剤35の厚さよりも大きな異物が存在すると、接合時に保護基板30が異物を流路形成基板10側に押圧し、液体流路に相対向する領域の弾性膜50及び絶縁体膜55に亀裂等の破損が生じてしまう。また、接着剤35の厚さよりも小さな異物(微小な異物)が存在したとしても、微小な異物によって液体流路に相対向する領域の弾性膜50及び絶縁体膜55が押圧されて亀裂等の破損が生じてしまう。このため、有機化合物からなる緩衝膜400を設けることによって、保護基板30が微小な異物を押圧しても、微小な異物を緩衝膜400内に埋め込ませて、保護基板30に液体流路に相対向する領域の延設された振動板の一部に微小な異物による応力が印加されるのを防止して、振動板の一部に亀裂等の破損が生じるのを防止することができる。これにより信頼性を向上することができると共に歩留まりを向上して、製造コストを低減することができる。
なお、液体流路以外の領域は、延設された振動板の下に流路形成基板10が存在するため、微小な異物が存在しても延設された振動板に亀裂等が発生することがない。また、流路形成基板10と保護基板30とを接合する緩衝膜400上の接着剤35の厚さは、約1μm以下である。
また、保護基板30上には、圧電素子300を駆動するための駆動回路200が固定されている。この駆動回路200としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路200とリード電極90とはボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線210を介して電気的に接続されている。
さらに、保護基板30には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
なお、このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口44からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路200からの記録信号に従い、外部配線を介して圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図6を参照して説明する。なお、図3〜図6は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜53を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
次に、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜53)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜53)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図3(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。次に、図3(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成し、これら圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。
また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。
次に、図3(e)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成し、その後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図4(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130が接合される領域の液体流路に相対向する領域に有機化合物からなる緩衝膜400を形成する。具体的には、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300が形成された面に亘って緩衝膜400を形成した後、図示しないマスクパターンを介してパターニングすることで所望の領域に緩衝膜400を形成することができる。なお、緩衝膜400としては、例えば、ポリイミド又はフッ素含有樹脂等が挙げられる。
そして、このように形成された緩衝膜400上には、緩衝膜400成膜時や搬送時などに異物401が付着する。流路形成基板10に付着した異物401は、洗浄することにより大きなものは除去できるが、例えば、1μm以下の微小な異物401は、除去することができず、また、除去できたとしても静電気などにより再付着してしまう。
次に、図4(b)に示すように、複数の保護基板30が形成された保護基板用ウェハ130を、流路形成基板用ウェハ110上に接着剤35によって接着する。具体的には、保護基板用ウェハ130の圧電素子保持部31が設けられた面に亘って接着剤35を塗布し、保護基板用ウェハ130を流路形成基板用ウェハ110に所定の圧力で押圧することで両者を接合する。このとき、緩衝膜400は、リード電極90が設けられた領域と、その他の領域との高さ合わせを行って、接合領域の接着剤35の量を均一化して、余分な接着剤35の流出や接合不良等を防止する。すなわち、接合領域の高さが異なる場合、保護基板30等に接着剤35を不均一に塗布しなければならず煩雑である。また、接合領域の高さが異なる場合、均一に接着剤35を塗布して接合すると、高い領域で接着剤35が流出してしまう。
また、緩衝膜400は、接合面に付着した微小な異物を緩衝膜400内に埋め込ませて、微小な異物による液体流路に相対向する領域の弾性膜50及び絶縁体膜55の亀裂等の破損を防止する。すなわち、流路形成基板10及び保護基板30の接合面に付着した異物は、洗浄することにより大きな異物だけは除去することができるが、微小な異物(特に1μm以下の異物)は除去することが難しく、また、微小な異物は除去できたとしても静電気等によって再付着してしまう。そして、流路形成基板10と保護基板30との接合領域の接着剤35は約1μm以下の厚さで形成されるため、接合領域に接着剤35の厚さよりも大きな異物が存在すると、接合時に保護基板30が異物を流路形成基板10側に押圧し、液体流路に相対向する領域の弾性膜50及び絶縁体膜55に亀裂等の破損が生じてしまう。また、接着剤35の厚さよりも小さな異物(微小な異物)が存在したとしても、微小な異物によって液体流路に相対向する領域の弾性膜50及び絶縁体膜55が押圧されて亀裂等の破損が生じてしまう。このため、有機化合物からなる緩衝膜400を設けることによって、保護基板30が微小な異物を押圧しても、微小な異物を緩衝膜400内に埋め込ませて、保護基板30に液体流路に相対向する領域の延設された振動板の一部に微小な異物による応力が印加されるのを防止して、振動板の一部に亀裂等の破損が生じるのを防止することができる。これにより信頼性を向上することができると共に歩留まりを向上して、製造コストを低減することができる。
なお、保護基板用ウェハ130には、圧電素子保持部31、リザーバ部32等が予め形成されたものである。また、保護基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するシリコンウェハであり、保護基板用ウェハ130を接合することで流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次いで、図5(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、更にフッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、研磨及びウェットエッチングによって、流路形成基板用ウェハ110を、約70μmの厚さとなるように加工した。次いで、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜54を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図5(c)に示すように、このマスク膜54を介して流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチング(ウェットエッチング)して、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。具体的には、流路形成基板用ウェハ110を、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液等のエッチング液によってエッチングすることより、圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14を同時に形成する。
その後は、図2(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって上述した構造のインクジェット式記録ヘッドが製造される。
以上説明したように、本実施形態では、流路形成基板10となる流路形成基板用ウェハ110上の保護基板30となる保護基板用ウェハ130が接合される接合領域の液体流路に相対向する領域に緩衝膜400を設けるようにしたため、流路形成基板用ウェハ110と保護基板用ウェハ130との接合時に異物401を緩衝膜400に埋め込ませて、接合領域に延設された振動板に印加される応力を減少させて、延設された振動板に亀裂等の破壊が発生するのを防止することができる。これにより信頼性を向上すると共に歩留まりを向上して製造コストを低減することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、緩衝膜400を流路形成基板10上の接合領域の液体流路に相対向する領域に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、緩衝膜をリザーバ部32の開口の周囲に亘って設けるようにしてもよい。勿論、緩衝膜をその他の接合領域にも設けるようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態1を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、緩衝膜400を流路形成基板10上の接合領域の液体流路に相対向する領域に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、緩衝膜をリザーバ部32の開口の周囲に亘って設けるようにしてもよい。勿論、緩衝膜をその他の接合領域にも設けるようにしてもよい。
また、例えば、上述した実施形態1では、成膜及びリソグラフィ法を応用して製造される薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のインクジェット式記録ヘッドや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型のインクジェット式記録ヘッドにも本発明を採用することができる。
さらに、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図6は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図6に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
なお、上述した実施形態1においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 圧電素子保持部、32 リザーバ部、 35 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 110 流路形成基板用ウェハ、 130 保護基板用ウェハ、 300 圧電素子、 400 緩衝膜、 401 異物
Claims (6)
- 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を有する液体流路が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面に設けられて前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、前記流路形成基板の前記圧力発生手段側に接合されて前記圧力発生手段を覆う圧力発生室保持部を有する保護基板とを具備し、
前記流路形成基板上の前記保護基板との接合領域の少なくとも前記液体流路に相対向する領域に有機化合物からなる緩衝膜が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 前記有機化合物が、ポリイミド樹脂及びフッ素含有樹脂からなる群から選択される少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
- 前記緩衝膜上には、前記接着剤が1μm以下の厚さで形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
- 前記圧力発生手段が、前記流路形成基板の一方面側に振動板を介して接合された圧電素子からなると共に、前記接合領域の前記液体流路に相対向する領域に前記振動板の少なくとも一部が延設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液体噴射ヘッド。
- 前記流路形成基板には、幅方向に並設された複数の圧力発生室と、該圧力発生室に連通して共通の液体室となる連通部と、該連通部と前記圧力発生室とを連通する液体供給路とが設けられ、前記液体流路が、前記圧力発生室と前記液体供給路とで構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液体噴射ヘッド。
- 請求項1〜5の何れかに記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2006041043A JP2007216564A (ja) | 2006-02-17 | 2006-02-17 | 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 |
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JP (1) | JP2007216564A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012176874A1 (ja) * | 2011-06-22 | 2012-12-27 | コニカミノルタホールディングス株式会社 | インクジェットヘッド及びインクジェット描画装置 |
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2006
- 2006-02-17 JP JP2006041043A patent/JP2007216564A/ja active Pending
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WO2012176874A1 (ja) * | 2011-06-22 | 2012-12-27 | コニカミノルタホールディングス株式会社 | インクジェットヘッド及びインクジェット描画装置 |
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