ところが、処理槽に対してワークを入槽及び出槽させると、処理槽の内容積(即ち、処理槽内において不活性ガスが占有できる空間の容積)が変化する。例えば図5(a)に示すように、処理槽51内にワーク52をワーク支持体53で支持しながら入槽させると、ワーク52及びワーク支持体53の合計の体積分だけ処理槽51の内容積が減少する。その結果、内容積の減少分と同量の不活性ガスが処理槽51外に流出してしまう。この場合、ワーク52の出槽後に新たに不活性ガスを供給しなければならないため、不活性ガスの消費量が多くなり、コストアップの原因となる。特に、ワーク52が三次元的な形状を有する大型のワークである場合、内容積の減少分がより大きくなるため、不活性ガスの消費量の増大がより顕著となる。
また、図5(b)に示すように、ワーク52をワーク支持体53で支持しながら処理槽51外に出槽させると、ワーク52及びワーク支持体53の合計の体積分だけ処理槽51の内容積が増加する。その結果、内容積の増加分と同量の空気が処理槽51内に流入してしまう。この場合、処理槽51内の酸素濃度が高くなって酸素阻害が生じやすくなるため、上記のようにUVランプの高出力化が必要となり、コストアップの原因となる。特に、ワーク52が三次元的な形状を有する大型のワークである場合、内容積の増加分がより大きくなるため、処理槽51内の酸素濃度の上昇がより顕著となる。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、不活性ガスの消費量を低減でき、しかも硬化処理を行う際の酸素阻害を防ぐことができる紫外線塗料硬化設備及び塗料硬化方法を提供することにある。また、他の目的は、大型のワークに硬化処理を行うのに適した紫外線塗料硬化設備及び塗料硬化方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ガス不透過性の壁材により構成され、ワーク出入口が形成された処理槽を備え、前記処理槽内に不活性ガスを溜めた状態で、前記処理槽内を通過するワークに紫外線を照射して、そのワーク表面に塗布された紫外線硬化型塗料を硬化させる紫外線塗料硬化設備であって、前記ワーク出入口を介した前記ワークの入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させるようにして前記ワークを複数個同時に搬送する搬送手段を備えたことを特徴とする紫外線塗料硬化設備をその要旨とする。
従って、請求項1に記載の発明によると、ワークの入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させることで、ワークの入槽に伴って処理槽の内容積が減少するのと同時に、ワークの出槽に伴って処理槽の内容積が増加する。ゆえに、処理槽内の不活性ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の減少に伴う処理槽外への不活性ガスの流出を防止できるため、不活性ガスの消費量を低減できる。また、ワークが大型のワークであったとしても、不活性ガスの消費量を低減できる。しかも、内容積の増加に伴う処理槽内への空気の流入を防止できるため、処理槽内の酸素濃度の上昇を防止でき、それに起因した硬化処理を行う際の酸素阻害を防止できる。また、ワークが大型のワークであったとしても、処理槽内の酸素濃度の上昇を防止できる。
なお、搬送手段が仮にワークを1個しか搬送しなければ、紫外線塗料硬化設備には、処理槽内に入槽するワーク、及び、処理槽外に出槽するワークのいずれか一方しか存在しない。ゆえに、ワークの入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させようとしてもそもそも無理である。それに対して、請求項1に記載の発明では、搬送手段がワークを複数個搬送するため、紫外線塗料硬化設備に、処理槽内に入槽するワーク、及び、処理槽外に出槽するワークの両方を存在させることができる。これにより、ワークの入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させる条件が揃うため、処理槽内の不活性ガス容積の変動に起因する問題点を確実に解消できる。しかも、搬送手段は、ワークを1個ずつ搬送するのではなく、複数個のワークを搬送するため、ワークの搬送効率が向上する。また、搬送手段が複数個のワークを同時にかつ連続的に搬送するため、ワークの入槽タイミング及び出槽タイミングを容易に同期させることができる。
ここで、不活性ガスとしては、狭義にはヘリウムガスやアルゴンガスなどの希ガス族元素が挙げられ、広義には化学反応性の低い窒素ガスや炭酸ガスなども挙げられる。なお、不活性ガスは、空気より重くてもよいし空気よりも軽くてもよい。空気よりも重い不活性ガスとしては、アルゴンガスや炭酸ガスなどが挙げられる。一方、空気よりも軽い不活性ガスとしては、ヘリウムガスや窒素ガスなどが挙げられるが、ヘリウムガスに比べてかなり安価な窒素ガスを用いることが好ましい。また、不活性ガスとして窒素ガスを用いれば、ヘリウムガスに比べて気体拡散速度が低いため、不活性ガスが処理槽外に漏れにくくなる。
上記課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、ガス不透過性の壁材により構成され、ワーク出入口が形成された処理槽を備え、前記処理槽内に不活性ガスを溜めた状態で、前記処理槽内を通過するワークに紫外線を照射して、そのワーク表面に塗布された紫外線硬化型塗料を硬化させる紫外線塗料硬化設備であって、前記ワーク出入口を介して前記ワークを前記処理槽内に入槽させるとともに、前記ワーク出入口を介して前記ワークを前記処理槽外に出槽させる搬送手段と、前記ワークの入槽タイミングに同期させて前記処理槽の内容積を実質的に増加させ、前記ワークの出槽タイミングに同期させて前記処理槽の内容積を実質的に減少させることにより、前記処理槽内の不活性ガス容積の変動を抑制する処理槽内容積調整機構とを備えることを特徴とする紫外線塗料硬化設備をその要旨とする。
従って、請求項2に記載の発明によると、ワークの入槽タイミングに同期させて処理槽の内容積を実質的に増加させることで、処理槽内の不活性ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の減少に伴う処理槽外への不活性ガスの流出を防止できるため、不活性ガスの消費量を低減できる。また、ワークが大型のワークであったとしても、不活性ガスの消費量を低減できる。しかも、ワークの出槽タイミングに同期させて処理槽の内容積を実質的に減少させることで、処理槽内の不活性ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の増加に伴う処理槽内への空気の流入を防止できるため、処理槽内の酸素濃度の上昇を防止でき、それに起因した硬化処理を行う際の酸素阻害を防止できる。また、ワークが大型のワークであったとしても、処理槽内の酸素濃度の上昇を防止できる。
さらに、搬送手段が複数個のワークを搬送する場合だけでなく、1個のワークのみを搬送する場合であっても、処理槽内容積調整機構によって処理槽内の不活性ガス容積の変動を抑制できる。
上記課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、不活性ガスが溜められている処理槽内に入槽させたワークに紫外線を照射して、そのワーク表面に塗布された紫外線硬化型塗料を硬化させた後、前記ワークを前記処理槽外に出槽させる塗料硬化方法であって、前記処理槽のワーク出入口を介した前記ワークの入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させるようにして前記ワークを複数個同時に搬送することを特徴とする塗料硬化方法をその要旨とする。
従って、請求項3に記載の発明によると、ワークの入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させることで、ワークの入槽に伴って処理槽の内容積が減少するのと同時に、ワークの出槽に伴って処理槽の内容積が増加する。ゆえに、処理槽内の不活性ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の減少に伴う処理槽外への不活性ガスの流出を防止できるため、不活性ガスの消費量を低減できる。また、ワークが大型のワークであったとしても、不活性ガスの消費量を低減できる。しかも、内容積の増加に伴う処理槽内への空気の流入を防止できるため、処理槽内の酸素濃度の上昇を防止でき、それに起因した硬化処理を行う際の酸素阻害を防止できる。また、ワークが大型のワークであったとしても、処理槽内の酸素濃度の上昇を防止できる。
さらに、処理槽内に不活性ガスが溜められている状態でワークが入槽するため、ワークに紫外線が照射される時点で、処理槽内には不活性ガスが充満している。よって、酸素に阻害されることなく硬化処理を行うことができる。
上記課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、不活性ガスが溜められている処理槽内に入槽させたワークに紫外線を照射して、そのワーク表面に塗布された紫外線硬化型塗料を硬化させた後、前記ワークを前記処理槽外に出槽させる塗料硬化方法であって、前記ワークの入槽タイミングに同期させて前記処理槽の内容積を実質的に増加させ、前記ワークの出槽タイミングに同期させて前記処理槽の内容積を実質的に減少させることにより、前記処理槽内の不活性ガス容積の変動を抑制することを特徴とする塗料硬化方法をその要旨とする。
従って、請求項4に記載の発明によると、ワークの入槽タイミングに同期させて処理槽の内容積を実質的に増加させることで、処理槽内の不活性ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の減少に伴う処理槽外への不活性ガスの流出を防止できるため、不活性ガスの消費量を低減できる。また、ワークが大型のワークであったとしても、不活性ガスの消費量を低減できる。しかも、ワークの出槽タイミングに同期させて処理槽の内容積を実質的に減少させることで、処理槽内の不活性ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の増加に伴う処理槽内への空気の流入を防止できるため、処理槽内の酸素濃度の上昇を防止でき、それに起因した硬化処理を行う際の酸素阻害を防止できる。また、ワークが大型のワークであったとしても、処理槽内の酸素濃度の上昇を防止できる。
また、処理槽内に不活性ガスが溜められている状態でワークが入槽するため、ワークに紫外線が照射される時点で、処理槽内には不活性ガスが充満している。よって、酸素に阻害されることなく硬化処理を行うことができる。
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、不活性ガスの消費量を低減でき、しかも硬化処理を行う際の酸素阻害を防ぐことができる紫外線塗料硬化設備及び塗料硬化方法を提供することができる。また、他の目的は、大型のワークに硬化処理を行うのに適した紫外線塗料硬化設備及び塗料硬化方法を提供することにある。
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示される紫外線塗料硬化設備11は、大型のワークWを製造するための製造ラインに組み込まれている。紫外線塗料硬化設備11は、ワークWに紫外線を照射して、前工程においてワーク表面に塗布された紫外線硬化型塗料(UV塗料)を硬化させる硬化処理を行う設備である。なお、本実施形態のワークWは、被塗面W1を表面側に有する一方で被塗面W1でない凹状曲面W2を裏面側に有する樹脂製の車両用部品(バンパー)である。
また、紫外線塗料硬化設備11は、例えば鉄板などのようなガス不透過性の壁材によって略直方体状に形成された処理槽12を備えている。処理槽12の槽上部12aは天井によって閉塞されている。一方、処理槽12の槽底部12b(槽最下部)には、処理槽12内にワークWを入槽させるためのワーク入槽口12c(ワーク出入口)と、処理槽12外にワークWを出槽させるためのワーク出槽口12d(ワーク出入口)とがそれぞれ別の場所に開口されている。
図1に示されるように、紫外線塗料硬化設備11は、搬送手段としてのフロアコンベア14を備えている。フロアコンベア14は、凹状曲面W2を下方に向けた状態の複数個のワークWを、それぞれワーク支持体19で支持しながら同時に搬送するようになっている。また、フロアコンベア14は、ワークWを上昇させながらワーク入槽口12cを介して処理槽12内に入槽させるとともに、ワークWを下降させながらワーク出槽口12dを介して処理槽12外に出槽させるようになっている。なお、フロアコンベア14は、ワーク支持体19が搬送されるワーク搬送経路18を備えている。ワーク搬送経路18は、一対のガイドレール17aによって構成されている。両ガイドレール17aは、ワーク搬送経路18の長手方向に平行に設けられている。
図1に示されるように、ワーク支持体19は、4つの車輪(図示略)が回転可能に取り付けられた台車17を備えている。各車輪は、一対のガイドレール17aによって支持されるようになっている。このため、台車17は、例えば図示しない牽引部材(ワイヤやチェーン等)で引っ張られることにより、両ガイドレール17a(ワーク搬送経路18)に沿って移動する。なお、台車17が自走する構成であってもよい。また、ワーク支持体19は、台車17に対して回動可能に設けられた支持棒17bを備えている。支持棒17bは、上端部にてワークWを支持するとともに、下端部にワークWよりも重い錘17dを有している。これにより、ワーク支持体19がワーク搬送経路18の傾斜部分を通過する際に、支持棒17bは、錘17dによって台車17に対して回動する。このため、支持棒17bはガイドレール17aの設置面に対してほぼ直立状態に維持され、支持棒17bに支持されるワークWの向きはほぼ同じ状態に維持される。
図1に示されるように、前記処理槽12には、複数のUVランプ13が設置されている。各UVランプ13は、処理槽12内においてフロアコンベア14の最高到達点がある箇所に対応して設けられている。具体的にいうと、UVランプ13は、処理槽12において互いに対向する側壁12eの上部に各2本ずつ設けられている。よって、紫外線を照射する照射ゾーンは、槽上部12a近傍に位置するようになる。これらUVランプ13は、ワークWの搬送方向(処理槽12の長手方向)と平行(即ち横置き)に設置されており、処理槽12内を通過するワークWに紫外線を照射するようになっている。なお、各UVランプ13は、横置きに設置されていたが、縦置きに設置されていてもよい。このようにすれば、UV塗料をムラなく硬化させることができる。
なお、本実施形態のUVランプ13としては、発光部と、凹状の反射面を有するアルミ板(反射板)とを備える集光形のランプが用いられる。UVランプ13と処理槽12とを区画する位置には、熱線カットフィルタ13cが設けられている。熱線カットフィルタ13cは、UVランプ13から照射される紫外線を処理槽12内に透過させるようになっている。よって、UVランプ13は、窒素ガスが充満している処理槽12に近付けて配置される。
図1に示されるように、紫外線塗料硬化設備11は、空気よりも軽い窒素ガス(不活性ガス)を送り出すタンク32を備えている。また、紫外線塗料硬化設備11は、タンク32と処理槽12内との間を連通しうる窒素ガス供給経路を構成する窒素ガス供給管37を備えている。また、窒素ガス供給管37上には、窒素ガス供給ポンプ33、窒素ガス供給バルブ35及びガス供給口36が設置されている。窒素ガス供給ポンプ33は、タンク32の下流側に配置されており、タンク32から送り出された窒素ガスを処理槽12側に供給するようになっている。窒素ガス供給バルブ35は、窒素ガス供給ポンプ33の下流側に配置されており、窒素ガス供給管37を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。窒素ガス供給バルブ35は、開状態に切り替えられた際に、処理槽12内に窒素ガスを供給可能とするようになっている。なお、本実施形態の窒素ガス供給バルブ35は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。また、ガス供給口36は、処理槽12の前記槽上部12aにて開口しており、窒素ガスを処理槽12内に供給するようになっている。これにより、窒素ガスが処理槽12内に溜まるようになる。
図1に示されるように、処理槽12内の前記照射ゾーンには、酸素濃度計24が設置されている。酸素濃度計24は、処理槽12内の酸素濃度を測定して、CPU21に酸素濃度測定信号を出力するようになっている。なお、酸素濃度計24は、処理槽12内のフロアコンベア14の最高到達点の近傍に位置しており、最高到達点に搬送されてきたワークWの下端よりも下方に位置している。従って、酸素濃度計24によってワークW付近の酸素濃度を正確に測定できる。また、ワーク入槽口12cに、光センサからなるワーク入槽検知センサを設け、ワーク出槽口12dに、同じく光センサからなるワーク出槽検知センサを設けてもよい。ワーク入槽検知センサは、ワーク入槽口12cを通過するワークWを検知してCPU21にワーク入槽信号を出力し、ワーク出槽検知センサは、ワーク出槽口12dを通過するワークWを検知してCPU21にワーク出槽信号を出力するようになっている。このようにすれば、ワーク入槽口12cを介して処理槽12内に入槽するワークWの入槽タイミングと、ワーク出槽口12dを介して処理槽12外に出槽するワークWの出槽タイミングとを確実に検知することができる。
次に、紫外線塗料硬化設備11の電気的構成について説明する。
図1に示されるように、紫外線塗料硬化設備11は、設備全体を統括的に制御するための制御装置15を備えている。制御装置15は、CPU21、ROM22、RAM23、入出力回路等により構成されている。CPU21は、UVランプ13、窒素ガス供給ポンプ33及び窒素ガス供給バルブ35に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
また、CPU21には、前記酸素濃度計24から出力された酸素濃度測定信号が入力されるようになっている。そして、CPU21は、酸素濃度測定信号が示す酸素濃度が閾値以上(例えば5%以上)であるか否かを判定するようになっている。酸素濃度測定信号が示す酸素濃度が閾値以上である場合、CPU21は、窒素ガス供給バルブ35を開状態に切り替える制御を行うようになっている。一方、酸素濃度測定信号が示す酸素濃度が閾値未満である場合、CPU21は、窒素ガス供給バルブ35を閉状態に切り替える制御を行うようになっている。このような制御によれば、処理槽12内の酸素濃度を一定に保つことができるため、塗装品質が安定する。また、窒素ガスの無駄な供給が減るため、窒素ガスの消費量をよりいっそう低減できる。
さらに、CPU21は、フロアコンベア14に電気的に接続されており、同フロアコンベア14をコンベア駆動信号によって制御するようになっている。具体的に言うと、CPU21は、複数個のワークWを同時に搬送する制御を行うようになっている。
なお、処理槽12の内容積は基本的には変化しないが、窒素ガス容積(即ち実質的な内容積)はワーク支持体19(ワークW)の入槽及び出槽によって変化する。即ち、処理槽12の内容積は、処理槽12内において窒素ガスが占有できる空間の容積である。そして、CPU21は、処理槽12内の窒素ガス容積の変動を抑制する制御を行っている。具体的には、CPU21は、ワーク入槽口12cを介して処理槽12内に入槽するワークWの入槽タイミングと、ワーク出槽口12dを介して処理槽12外に出槽する別のワークWの出槽タイミングとを同期させる制御を行う。詳述すると、入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させる制御は、例えば以下の方法で行われる。まず、処理槽12側に出槽するワークWがワーク出槽口12dに到達した際に、処理槽12内に入槽するワークWがワーク入槽口12cに位置するように各ワークWの間隔を設定する。この状態で、CPU21がフロアコンベア14にコンベア駆動信号を出力して各ワークWを同時に搬送させる制御を行えば、ワークWの入槽タイミング及び出槽タイミングが同期される。
なお、処理槽12が前記ワーク入槽検知センサ及び前記ワーク出槽検知センサを有する場合、入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させる制御を、以下の方法で行ってもよい。即ち、CPU21は、ワークWがワーク出槽口12dに到達してワーク出槽検知センサから前記ワーク出槽信号が入力された際に、ワーク入槽検知センサから前記ワーク入槽信号が入力されているか否かを判定する。ワーク入槽信号が入力されていなければ、CPU21は、フロアコンベア14に停止信号を出力して、複数のワークWのうちワーク出槽口12dに到達したワークWのみを一旦停止させる制御を行う。そして、別のワークWがワーク入槽口12cに到達してワーク入槽検知センサからワーク入槽信号が入力されると、CPU21は、フロアコンベア14への停止信号の出力を停止し、全てのワークWの搬送を再開させる制御を行う。これにより、ワークWがワーク入槽口12cを通過するタイミング(入槽タイミング)と、ワークWがワーク出槽口12dを通過するタイミング(出槽タイミング)とが同期される。
次に、紫外線塗料硬化設備11を用いた塗料硬化方法を説明する。
まず、CPU21は、窒素ガス供給ポンプ33及び窒素ガス供給バルブ35に駆動信号を出力する。これにより、窒素ガス供給バルブ35が開状態に切り替わり、タンク32から送り出された窒素ガスが、窒素ガス供給ポンプ33によって窒素ガス供給管37を通過し、処理槽12内に溜められる。なお、窒素ガスの比重(0℃での比重は0.967)は、空気の比重(0℃での比重は1)よりも小さい。即ち、窒素ガスは空気よりも軽いため、槽底部12bにあるワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dを介して窒素ガスが処理槽12外に漏れることが防止される。
この状態で、CPU21は、フロアコンベア14にコンベア駆動信号を出力し、複数個のワーク支持体19(ワークW)を同時に搬送する制御を行う。各ワークWは、途中で停止することなく一定の速度で搬送される。なお、処理槽12が前記ワーク入槽検知センサ及び前記ワーク出槽検知センサを有する場合、各ワークWがワーク出槽口12dなどで一旦停止するようにしてもよい。
以下、複数個のワークWのうち、任意のワークWaと、ワークWaの後に搬送されてくる任意のワークWbとに着目して説明する。フロアコンベア14によって搬送されてきたワークWaは、ワーク入槽口12cを介して処理槽12内に入槽する。なお、UVランプ13は、紫外線の出力が安定するまでに時間がかかるため、常時点灯している。このため、照射ゾーンに到達したワークWaには紫外線が照射される。これにより、ワークWaの表面に塗布されたUV塗料が硬化する。
その後、処理槽12内に位置するワークWaは、ワーク出槽口12dの手前に到達する。このとき、処理槽12外に位置するワークWbは、ワーク入槽口12cの手前に到達する(図2(a)参照)。そして、ワークWaがワーク出槽口12dを介して処理槽12外に出槽すると、これと同時に、ワークWbがワーク入槽口12cを介して処理槽12内に入槽する(図2(b)参照)。即ち、CPU21は、ワークWbの入槽タイミングと、ワークWaの出槽タイミングとを同期させる制御を行っている。これにより、処理槽12の内容積の増加分と減少分とが相殺される。その後、ワークWbが照射ゾーンに到達すると、ワークWbに対する硬化処理が行われる。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の紫外線塗料硬化設備11では、例えばワークWbの入槽タイミングとワークWaの出槽タイミングとを同期させることで、ワークWbの入槽に伴って処理槽12の内容積が減少すると同時に、ワークWaの出槽に伴って処理槽12の内容積が増加する。なお、ワークWa及びワーク支持体19の合計の体積は、ワークWb及びワーク支持体19の合計の体積と等しいため、ワークWbの入槽に伴う内容積の減少分は、ワークWaの出槽に伴う内容積の増加分と等しくなっている。ゆえに、処理槽12内の窒素ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の減少に伴う処理槽12外への窒素ガスの流出を防止できるため、窒素ガスの消費量を低減できる。しかも、内容積の増加に伴う処理槽12内への空気の流入を防止できるため、処理槽12内の酸素濃度の上昇を防止でき、それに起因した硬化処理を行う際の酸素阻害を防止できる。ゆえに、硬化処理を確実に行うためにUVランプ13を高出力化しなくても済むため、イニシャル及びランニングコストを抑えることができる。
(2)本実施形態のワークWは、被塗面W1及び凹状曲面W2を有する三次元的な形状をなしているため、搬送時に空気を乱しやすい。よって、ワークWの入槽時などにおいて処理槽12内の窒素ガス容積が変動しやすく、ワークWの入槽に伴う内容積の減少分以上に窒素ガスが流出する可能性が高い。ゆえに、本実施形態のワークWを、搬入タイミング及び搬出タイミングを同期させる構成に適用することにより、得られる効果(窒素ガスの消費量低減)が大きくなる。
(3)本実施形態では、処理槽12がガス不透過性の壁材により構成されているため、窒素ガスが槽上部12aの天井、槽底部12b及び側壁12eなどを透過して処理槽12外に漏れることがない。さらに、ワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dが槽底部12bに形成されているため、ワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dからの窒素ガスの漏れを最小限に抑えることができる。従って、ある程度大きくワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dを形成することも可能となり、例えば三次元的な形状を有する大型のワークWに対する処理も可能となる。また、大型のワークWは、処理槽12内の窒素ガス容積を変動させやすいが、ワークWの入槽タイミング及び出槽タイミングを同期させることで、処理槽12内の内容積の増加分と減少分とが相殺される。よって、大型のワークWであったとしても、入槽時の窒素ガスの消費量を低減できる。また、処理槽12内の酸素濃度の上昇を防止できる。
(4)本実施形態では、ワークWを支持するワーク支持体19が、ワーク搬送経路18の傾斜部分を上昇しながらワーク入槽口12cを通過し、ワーク搬送経路18の傾斜部分を下降しながらワーク出槽口12dを通過する。このように、ワーク支持体19がワーク搬送経路18の傾斜部分を通過する場合、支持棒17bは、錘17dによって台車17に対して回動する。その結果、支持棒17bがガイドレール17aの設置面に対してほぼ直立した状態を維持し、支持棒17bに支持されるワークWの向きがほぼ同じ状態を維持するため、ワーク支持体19を上下方向から見た際の投影面積は、傾斜部分を通過する際であっても増加しない。従って、ワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dの開口面積を小さくすることができる。ゆえに、窒素ガスがワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dを介して処理槽12外に漏れることをより確実に防止できる。
(5)本実施形態の塗料硬化方法では、ワークWを入槽させてから処理槽12内に窒素ガスを溜めるのではなく、窒素ガスを溜めておいてからワークWを入槽させている。よって、紫外線の照射に際し、ワークWaを入槽させた状態でフロアコンベア14を止めて、窒素ガスが溜まるのを待たなくても済む。従って、UV塗料の硬化作業を効率良く行うことができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の紫外線塗料硬化設備11について説明する。なお、第1実施形態と共通している構成については、同一の部材番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
図3に示されるように、本実施形態の紫外線塗料硬化設備11は、処理槽12の内壁面に処理槽内容積調整機構41を設置した点が第1実施形態と異なる。処理槽内容積調整機構41は、どの位置に設置されていてもよいが、本実施形態では槽上部12aの天井と側壁12eとの接続部分に配置されている。このようにすれば、処理槽内容積調整機構41がフロアコンベア14から離間して配置されるため、搬送されるワークWとの接触が防止される。また、処理槽内容積調整機構41がワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dから離間して配置されるため、処理槽内容積調整機構41(蛇腹部43)の動きによって処理槽12内の窒素ガスに乱れを生じさせなくて済む。しかも、処理槽内容積調整機構41がUVランプ13から離間して配置されるため、紫外線の照射の邪魔にならなくて済む。
処理槽内容積調整機構41は、本体42と、本体42の側面に変形可能に設けられた蛇腹部43と、本体42に内蔵された電動アクチュエータ44とを備えている。電動アクチュエータ44は、本体部44aと、同本体部44aに対して出没可能なロッド44bとを有しており、ロッド44bの先端は蛇腹部43の先端部内側面に連結されている。従って、電動アクチュエータ44のロッド44bは、本体部44aから突出した際に蛇腹部43を伸長させ、本体部44a側に没入した際に蛇腹部43を収縮させる。なお、本実施形態の蛇腹部43は、体積が最大となる伸長段階、体積が伸長段階の2/3程度となる第1収縮段階、及び、体積が伸長段階の1/3程度となる第2収縮段階の3段階に変形する。また、蛇腹部43が伸長段階−第1収縮段階間で変形した際や、蛇腹部43が第1収縮段階−第2収縮段階間で変形した際において、処理槽12内の窒素ガス容積の変動分は、ワークの体積とワーク支持体19の体積との合計に等しくなっている。
図3に示されるように、CPU21は、処理槽内容積調整機構41の電動アクチュエータ44に電気的に接続されており、電動アクチュエータ44を駆動信号によって制御する。また、本実施形態では、ワーク入槽口12cにワーク入槽検知センサを有し、ワーク出槽口12dにワーク出槽検知センサを有している。そして、CPU21は、処理槽12内の窒素ガス容積の変動を抑制する制御を行っている。具体的に言うと、CPU21は、ワークWがワーク入槽口12cに到達してワーク入槽検知センサからワーク入槽信号が入力された際に、電動アクチュエータ44に駆動信号を出力する。その結果、ロッド44bが本体部44aに没入する。これにより、ワークWの入槽タイミングに同期して蛇腹部43が収縮するため、処理槽12の内容積が実質的に増加する。また、CPU21は、ワークWがワーク出槽口12dに到達してワーク出槽検知センサからワーク出槽信号が入力された際に、電動アクチュエータ44に駆動信号を出力する。その結果、ロッド44bが本体部44aから突出する。これにより、ワークWの出槽タイミングに同期して蛇腹部43が伸長するため、処理槽12の内容積が実質的に減少する。
次に、本実施形態の紫外線塗料硬化設備11を用いた塗料硬化方法を説明する。
処理槽12内に窒素ガスが溜められている状態で、CPU21は、フロアコンベア14にコンベア駆動信号を出力し、複数個のワークWを同時に搬送する制御を行う。以下、複数個のワークWのうち、4個のワークWa,Wb,Wc,Wdに着目して説明する。まず、フロアコンベア14によって最初に搬送されてきたワークWaが処理槽12内に入槽する際、ワーク入槽検知センサは、ワークWaのワーク入槽口12cの通過を検知して、CPU21にワーク入槽信号を出力する。そして、CPU21は、処理槽内容積調整機構41の電動アクチュエータ44に駆動信号を出力して蛇腹部43を第1収縮段階に変形させる制御を行う(図4(a)参照)。続いて、フロアコンベア14によって2番目に搬送されてきたワークWbが処理槽12内に入槽し、CPU21に再びワーク入槽信号が出力されると、CPU21は、電動アクチュエータ44に駆動信号を出力して蛇腹部43を第2収縮段階に変形させる制御を行う(図4(b)参照)。
その後、ワークWa,Wbは、硬化処理後にワーク出槽口12dを介して処理槽12外に順次出槽するが、これと同時に、別のワークWがワーク入槽口12cを介して処理槽12内に順次入槽する。なお、本実施形態では、常時2個のワークWが入槽した状態となる。
そして、フロアコンベア14によって最後から2番目に搬送されてきたワークWcが処理槽12外に出槽する際、ワーク出槽検知センサは、ワークWaのワーク出槽口12dの通過を検知して、CPU21にワーク出槽信号を出力する。そして、CPU21は、電動アクチュエータ44に駆動信号を出力して蛇腹部43を第1収縮段階に変形させる制御を行う(図4(c)参照)。続いて、フロアコンベア14によって最後に搬送されてきたワークWdが処理槽12外に出槽し、CPU21に再びワーク出槽信号が出力されると、CPU21は、電動アクチュエータ44に駆動信号を出力して蛇腹部43を伸長段階に変形させる制御を行う(図4(d)参照)。
従って、本実施形態によれば、ワークWの入槽タイミングに同期させて蛇腹部43を収縮させ、処理槽12の内容積を実質的に増加させることで、処理槽12内の窒素ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の減少に伴う処理槽12外への窒素ガスの流出を防止できるため、窒素ガスの消費量を低減できる。しかも、ワークWの出槽タイミングに同期させて蛇腹部43を伸長させ、処理槽12の内容積を実質的に減少させることで、処理槽12内の窒素ガス容積の変動が抑制される。これにより、内容積の増加に伴う処理槽12内への空気の流入を防止できるため、処理槽12内の酸素濃度の上昇を防止でき、それに起因した硬化処理を行う際の酸素阻害を防止できる。
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第2実施形態の処理槽内容積調整機構41は、処理槽12の内壁面に設置されていたが、処理槽12の外壁面に設置されていてもよい。また、上記第2実施形態の処理槽内容積調整機構41は、蛇腹部43や電動アクチュエータ44などから構成していたが、この構成に限定されるものではない。例えば、処理槽内容積調整機構41を、膨張及び収縮可能なゴム製のバッグと、バッグ内に空気を吹き込む空気供給手段から構成してもよい。しかし、処理槽内容積調整機構41を蛇腹部43や電動アクチュエータ44から構成すれば、処理槽12の内容積を微調節しやすくなる。
・上記実施形態の処理槽12は、槽上部12aを閉塞される一方で、槽底部12bにワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dが形成されていた。しかし、処理槽12は、槽上部12aにワーク入槽口12c及びワーク出槽口12dが形成される一方で、槽底部12bが閉塞されていてもよい。この場合、不活性ガスとして空気よりも重い炭酸ガスを用いれば、処理槽12外への漏れを防止できる。
・上記実施形態では、紫外線塗料硬化設備11によって塗装されるワークWとしてバンパーを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、空力付加物(スポイラーなど)などの他の車両用部品をワークWとしてもよい。また、ワークWは、必ずしも車両用部品でなくてもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)請求項1または2において、前記処理槽は、ガス不透過性の壁材により構成され、槽上部が閉塞されている一方で槽最下部に前記ワーク出入口が形成されており、前記不活性ガスは空気よりも軽いガスであり、前記搬送手段は、前記ワークを上昇させながら前記ワーク出入口を介して前記ワークを前記処理槽内に入槽させるとともに、前記ワークを下降させながら前記ワーク出入口を介して前記処理槽外に前記ワークを出槽させることを特徴とする紫外線塗料硬化設備。
(2)請求項1または2において、前記搬送手段は、前記ワークをワーク支持体で支持しながら搬送するフロアコンベアであることを特徴とする紫外線塗料硬化設備。
(3)請求項1または2において、前記ワークは、被塗面を表面側に有する一方で被塗面でない凹状曲面を裏面側に有する車両用部品であり、前記搬送手段は、前記凹状曲面のある裏面側を下方に向けた状態の前記ワークをワーク支持体で支持しながら搬送するフロアコンベアであることを特徴とする紫外線塗料硬化設備。
(4)請求項1または2において、前記ワーク出入口は、前記処理槽内に前記ワークを入槽させるためのワーク入槽口と、前記処理槽外に前記ワークを出槽させるためのワーク出槽口とからなることを特徴とする紫外線塗料硬化設備。
(5)請求項2において、前記処理槽内容積調整機構によって抑制される前記処理槽内の不活性ガス容積の変動分は、前記ワークの体積と、前記ワークを支持するワーク支持体の体積との合計に等しいことを特徴とする紫外線塗料硬化設備。