JP2007215455A - 低付着性で耐老化性の米飯又は米飯加工品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記項目の調整法により得られる米飯又は米飯加工品。(1)ライスマスターで測定した精米粉末の表層硬さが15kg/cm2以上であり、表層老化度が100以下である精米を選択する、(2)前記精米を油脂と共に加熱した後に、水に浸漬して炊飯する、又は精米を実質的に水を添加することなく加熱し、その後に、水に浸漬して炊飯する、(3)加温後25℃で2時間保蔵した後にテンシプレッサーで測定した米飯表層の硬さが100000dyn以下であり、かつ、表層付着量が1.2mm以下であり、さらに喫食状態に加温後5℃で24時間保蔵した後にテンシプレッサーで測定した米飯老化性指標が200以下である。
【選択図】なし
Description
一方、タイやインドの高アミロース米に代表される、きわめて硬くて粘りの弱い米飯の場合は、タイやインドでは好まれるものの、わが国の食文化の歴史、消費者の嗜好性の相違により、消費者の受容性がきわめて低い。このことは、平成5年の米不作の際に緊急輸入されたタイの高アミロース米が不評であったことにも示されている。
高アミロースのインド型米でも、炊飯直後は比較的軟らかくて僅かに付着性を示すが、時間経過とともに急激に糊化澱粉が老化し、硬くて粘りのない米飯になるために、消費者の嗜好に一層適合しないことが報告されている(非特許文献1)。
また、本発明は、喫食状態に加温後25℃で2時間保蔵した後にテンシプレッサーで測定した米飯表層の硬さ(H1)が100000dyn以下であり、かつ、表層付着量(L3)が1.2mm以下であり、さらに喫食状態に加温後5℃で24時間保蔵した後にテンシプレッサーで測定した米飯老化性指標が200以下である米飯又は米飯加工品を提供する。
また、本発明は、前記精米を重量割合で10%〜90%含み、炊飯後に炊飯食味計で測定した米飯塊のバランス度が3〜8であり、5℃で24時間冷蔵保存した後に炊飯食味計で測定した米飯塊のバランス度減少率が5〜75%である米飯又は米飯加工品を提供する。
また、本発明は、前記精米を油脂と共に加熱した後に、水に浸漬して炊飯することを含む米飯又は米飯加工品の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記精米を実質的に水を添加することなく加熱し、その後に、水に浸漬して炊飯することを含む米飯又は米飯加工品の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記精米と、調味料とを含む精米加工品を提供する。
また、本発明により、外層が硬く、粒全体は軟らかい日印交雑系統の新用途を開拓することができる。
また、本発明により、表層が硬くて老化の遅い米をブレンドすることにより、適度のバランス度を有し、老化の緩やかな米飯を調製することが可能となる。
さらに、本発明により、炊飯前に油脂と共に加熱するか、又は、実質的に水を添加することなく加熱することにより表面が過度に粘らずに粒全体は軟らかくて老化の遅い米飯に調製することが可能となる。
さらに、本発明により、香り米や古米の用途が広がる。
精米粉末の表層硬さは、下記式(1)で表される。
表層硬さ=13.4+2.69×(最高粘度)−0.92×最終粘度−2.83×(最高粘度−最低粘度) (1)
また、精米粉末の表層老化度は、下記式(2)で表される。
表層老化度=−0.105−0.0081×最高粘度−0.0025×最低粘度+0.035×最終粘度 (2)
ここで、最高粘度とは、精米粉末を水中に懸濁し、一定の熱履歴で加熱・冷却しながら、撹拌する際に、澱粉の糊化が十分に進行して、液の粘度が最高に達したときの粘度を示す。最低粘度とは、糊化が十分に進行した後、撹拌による物理的破壊とでんぷん粒の膨潤破裂とによって粘度が最も低下したときの粘度を示す。最終粘度とは、さらに冷却によって糊化でんぷんの老化が進行して再び粘度が上昇して測定が終了するときの粘度を示す。なお、一定の熱履歴とは、上記懸濁液の温度を50℃で3分間保持し、次いで50℃から95℃にまで3分間で昇温させた後、95℃で7分間保持し、次いで95℃から50℃にまで3分間で冷却し、その後、50℃で3分間保持して加熱・冷却することをいう。
また、本発明の精米は、調味料と組み合わせて精米加工品としてもよく、例えばカレーソースやハヤシソース、ハッシュドビーフ、シチューなどの調味ソースを作るための調味料と組み合わせた精米加工品としてもよい。予備的な炊飯試験や調味ソースを配合調整することなく、嗜好性の高いカレーライス等を容易に調理することが可能となる。
表層付着量(L3)とは、岡留博司らの上記文献で説明しているように、試料米飯粒の厚みに対し、25%圧縮した際の抵抗値検知開始から抵抗値が0となるまでの移動距離L3を指し、米飯表層の付着性に相当し、食味評価と正の相関を示すと報告されている値である。良食味米であるコシヒカリのように表層の付着性が強い原料米は、カレーライスやチャーハンなどの用途には適しておらず、カレーソース等の調味ソースのしみこみを妨げ、業務用炊飯装置に対して付着して作業性を低下させるので不適当であり、表層付着量(L3)は1.2mm以下が好適である。
米飯老化性指標とは、岡留博司らの上記文献にある表層のバランス度(−H1/H1)が5℃、24時間の保蔵によって炊飯後2時間の−H1/H1から低下する割合を指す。すなわち、下記式(3)で表される。
米飯老化性指標=炊飯後2時間のバランス度(−H1/H1)/5℃−24時間の保蔵のバランス度(−H1/H1)×100
この値が200を超える米飯は、時間経過とともに老化が速やかに進行して硬い米飯になるので不適当であり、200以下の米飯が好適である。
炊飯後に炊飯食味計で測定した米飯塊のバランス度は、好ましくは3〜8であり、より好ましくは5〜7.5である。5℃で24時間冷蔵保存した後に炊飯食味計で測定した米飯塊のバランス度減少率は、好ましくは5〜75%であり、より好ましくは20〜60%である。上記範囲を満たす場合には、特に米飯又は米飯加工品に適している。
本発明の実施形態を以下の実施例に示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
平成17年度産北陸149号の玄米を山本製作所製の試験用摩擦式精米機(YP−30)を用いて歩留まり90%に精白して精米を得た。
コシヒカリの玄米を実施例1と同様にして精米を得た。
インド型米である夢十色の玄米を実施例1と同様にして精米を得た。
実施例1及び比較例1〜2の精米を、夫々、サイクロテック粉砕機(Udy社製)によって粉末化して試料とし、試料3.5gに純水25mLを加え、ライスマスター(フォス・ジャパン製)によって糊化特性値に基づく表層硬さおよび表層老化度の測定を行った。その結果を表1に示す。
実施例1及び比較例1〜2の精米300gに純水420mlを加えて1時間浸漬の後、電気釜(東芝製RC−183)により炊飯して米飯を得た。
実施例1及び比較例1〜2の米飯をシャーレに移し、プラスチックフィルムで密閉して25℃の保温庫に2時間静置した後、タケトモ電機製テンシプレッサーマイボーイにより表層の硬さ(H1)と表層付着量(L3)を測定した。また、実施例1及び比較例1〜2の米飯を5℃の保温庫に2時間静置した後の表層老化度(米飯老化性指標)を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例1及び比較例1〜2の米飯について(株)サタケ製炊飯食味計付属の試料調製装置を用いて直径3.3cm、高さ2cmの円筒型米飯塊を調製し、着色した澱粉溶液(2%および3%)を滴下して米飯塊内部に浸透するまでの時間を測定した。その結果を表2に示す。
実施例1及び比較例1〜2の米飯にカレーソースを掛けてカレーライスを調製し、9名の審査員によって官能評価を行った。この官能評価では、比較例1のコシヒカリのカレーライスを対象(0点)として、硬さ、粘り、外観について−3〜+3の7段階により比較評価を行うと共に、いずれのカレーライスを最も好むか順位付けを行った。その結果は、表4に示すように、カレーライスとして、実施例1(北陸149号)の評価が最も高く、次いで比較例1(コシヒカリ)、比較例2(夢十色)の順であった。
実施例1及び比較例1〜2のカレーライスを5℃の保温庫に24時間保管した後に電子レンジで温めて喫食したところ、実施例1及び比較例1のカレーライスは老化が緩やかであり、もとの食感を保持していた。これに対して、比較例2のカレーライスは老化が大きく進行しており、もとの食感を保持していなかった。
実施例1と同じ平成17年度産北陸149号の玄米とコシヒカリの玄米を山本製作所製の試験用摩擦式精米機(YP−30)を用いて歩留まり90%に精白し、両者を1:1も割合でブレンドした精米を得た。この精米300gに純水420mlを加えて1時間浸漬の後、電気釜(東芝製RC−183)により炊飯して米飯を得た。
夢十色の玄米とコシヒカリの玄米を実施例2と同様に精白し、両者を1:1も割合でブレンドした精米を得た。この精米を実施例2と同様に炊飯して米飯を得た。
はえぬきの玄米ときらら397の玄米を実施例2と同様に精白し、両者を1:1も割合でブレンドした精米を得た。この精米を実施例2と同様に炊飯して米飯を得た。
実施例2及び比較例3〜4の米飯をプラスチックフィルムで密閉して25℃の保温庫に2時間静置した後、炊飯食味計(株式会社サタケ製)により米飯塊のバランス度を測定した。また、これらの米飯を5℃の保温庫に24時間静置し、再び炊飯食味計で測定して米飯塊のバランス度の変化率をバランス度変化率として測定した。その結果を表5に示す。
北陸149号と香り米(サリークイーン)とをブレンド割合を変えて香り粥を調製して官能検査を行った。その結果を表6に示す。
平成17年度産北陸149号の玄米を用いて実施例1と同様に米飯を調製した。次に、フライパンにラードを入れ、この米飯200gをフライパンに投入しラードと共に炒め、次いで、食塩1.8g及びコショウ0.2gからなる調味料を加えて更に炒めてチャーハンを調製した。このチャーハンは、米飯粒の表面が粘らずに(表面の粘りが弱く)粒全体は軟らかく、また老化の緩やかなものであった。
コシヒカリの玄米を用いて比較例1と同様に米飯を調製した。次に、この米飯を用いて実施例7と同様にしてチャーハンを調製した。このチャーハンは、ほぐれにくく、米飯粒の表面に粘りがあった(強かった)。
夢十色の玄米を用いて比較例2と同様に米飯を調製した。次に、この米飯を用いて実施例7と同様にしてチャーハンを調製した。このチャーハンは、米飯粒の表面は粘らないものの、粒全体は硬く、また老化の速いものであった。
コシヒカリおよび平成17年度産北陸149号の精米を原料米として使用した。比較例9及び実施例8は前処理を行わず、実施例9及び実施例10は、炊飯前処理として、精米をパウチに充填して真空パックした後、3分間及び5分間加熱した。実施例11は、精米を直接、常圧飽和水蒸気で20分間加熱した。その後、これらの精米を洗米し、精米と加水の重量割合が1:1.5となるよう加水して25℃で1時間浸漬した後、ナショナル電気炊飯器(NEURO-FUZZY F)により炊飯し米飯を得た。実施例8〜11、および比較例9の米飯にカレーソースを加えてカレーライスとしての官能検査を行った。官能検査の結果、実施例8は比較例9に比べて米飯の粒感が感じられ、カレーとの相性が良かった。実施例9〜11の場合は、さらに粒感があり、コシヒカリとの相違がさらに顕著になった。カレーライスとしての総合評価は、実施例9及び実施例10が最も高かった。また、25℃で2時間保温した後、タケトモ電機製テンシプレッサーマイボーイを用いて米飯物性の測定を行った。その結果を表7に示す。表7より、実質的に水を添加することなく加熱することにより、表層及び全粒の硬さが増し、カレーライスとしての適性が向上したことが示された。
平成17年度産北陸149号、平成17年度産コシヒカリおよび平成16年産北陸149号の3種類の精米を原料とし、ドライカレー、ピラフ、リゾット、パエリヤ、サフランライス、ナシゴレン、手巻きずし、粥を調製して比較した結果、いずれの場合も、コシヒカリのは粘りが強すぎて評価が低く、平成16年度産北陸149号の評価が最も高く、平成17年度産北陸149号がこれに次ぐ第2位の嗜好性を示した。
実施例1と同様にして調製した平成17年度産北陸149号の米飯をプラスチック製の上方開口部を有する有底容器に充填し、無菌室内で蒸気を当てて加熱殺菌して後に、前記上方開口部にフィルム蓋をシールして密封して包装し無菌包装米飯に調製した。これにレトルトパウチ入りのレトルトカレーソースを添付して本発明における米飯加工品とした。この米飯加工品は、無菌包装米飯のシール開封後にカレーソースを米飯にかけて電子レンジで喫食状態に加温することにより、米飯粒の表層が粘ることなく、軟らかく、かつ老化が緩やかなカレーライスを得ることができた。
平成17年度産北陸149号の精米150gを1袋包装とし、これにレトルトパウチ入りのレトルトカレーソースをつけた精米加工品を調製した。この精米加工品は、精米150gを小型電気炊飯器で炊飯後、再加熱したカレーをかけることにより、米飯粒の表層が粘ることなく、軟らかく、かつ老化が緩やかなカレーライスを得ることができた。
Claims (10)
- ライスマスターで測定した精米粉末の表層硬さが15kg/cm2以上であり、表層老化度が100以下である精米。
- 精米が古米である、請求項1記載の精米。
- 喫食状態に加温後25℃で2時間保蔵した後にテンシプレッサーで測定した米飯表層の硬さ(H1)が100000dyn以下であり、かつ、表層付着量(L3)が1.2mm以下であり、さらに喫食状態に加温後5℃で24時間保蔵した後にテンシプレッサーで測定した米飯老化性指標が200以下である米飯又は米飯加工品。
- 請求項1又は請求項2記載の精米を重量割合で10%〜90%含み、炊飯後に炊飯食味計で測定した米飯塊のバランス度が3〜8であり、5℃で24時間冷蔵保存した後に炊飯食味計で測定した米飯塊のバランス度減少率が5〜75%である米飯又は米飯加工品。
- 香り米を含む請求項4記載の米飯又は米飯加工品。
- 米飯又は米飯加工品が調味ソースを含む、請求項3〜請求項5のいずれか1項記載の米飯又は米飯加工品。
- 米飯又は米飯加工品がカレーライス、ハヤシライス、ドライカレー、チャーハン、ピラフ、リゾット、パエリヤ、サフランライス、ナシゴレン、すし飯及び粥からなる群から選ばれる、請求項3〜請求項5のいずれか1項記載の米飯又は米飯加工品。
- 請求項1又は請求項2記載の精米を油脂と共に加熱した後に、水に浸漬して炊飯することを含む米飯又は米飯加工品の製造方法。
- 請求項1又は請求項2記載の精米を実質的に水を添加することなく加熱し、その後に、水に浸漬して炊飯することを含む米飯又は米飯加工品の製造方法。
- 請求項1又は請求項2記載の精米と、調味料とを含む精米加工品。
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JP2009136210A (ja) * | 2007-12-06 | 2009-06-25 | House Foods Corp | 容器入り即食リゾットの製造方法 |
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Non-Patent Citations (1)
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JPN6010041702, 日本食品科学工学会誌,vol.43, pp.1004−1011 (1996) * |
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