JP2007215412A - 悪性転移性胃癌の判定方法 - Google Patents

悪性転移性胃癌の判定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】胃癌腹膜播種転移におけるメカニズムの解明及び新規治療薬のターゲットとなりうるタンパク質や特異性の高い腫瘍マーカーを同定し、悪性転移性胃癌の判定方法、胃癌腹膜転移再発のリスク評価方法、抗癌剤の有効性の判定方法、及びそれらのためのキットを提供すること。
【解決手段】二次元ディファレンシャル電気泳動(2D―DIGE)法を用いて胃癌細胞株MKN45とその腹膜播種転移株クローンであるMKN45P由来のセルライセートの二次元電気泳動像の比較を行った。次に、統計学的手法により両細胞株間でタンパク質の発現量が有意に異なるスポットをゲルからピックアップし、各スポットのタンパク質についてマススペクトル解析(MALDI−TOF MS:proteomics analyzer 4700)を実施し、データベース検索を行った。その結果、胃癌細胞株に比べて腹膜播種転移株において有意に増加、もしくは減少したタンパク質を数種類同定できた。
【選択図】なし

Description

本発明は、悪性転移性胃癌の判定方法及びそのためのキット、腹膜転移再発のリスク評価方法及びそのためのキット、抗癌剤の有効性の判定方法及びそのためのキット、並びに、腹膜転移再発抑制剤のスクリーニング方法に関する。
胃癌は、日本と東南アジアでは消化管で最も多くみられる悪性腫瘍であり、癌死亡率では、胃癌が世界で第2位を占めている。胃癌の予後は、診断技術や胃癌の治療法の発達により改善しているが、進行癌の治癒的切除の後に起こる再発の主原因は腹膜播種である。胃漿膜にまで浸潤した胃癌の予後は、5年生存率が35%と低い。また、進行胃癌術後の腹膜播種再発においてはいまだに有効な治療法がなく、5年生存率は5%以下と報告されている。胃癌細胞のこのような悪性の特性のうちで、腹膜への転移は特に複雑な現象であり、多くのステップと多くの遺伝子が関与している。胃癌の腹膜播種には、接着分子、アポトーシス関連遺伝子および他の遺伝子が深く関与しているという報告があるが、胃癌の転移のメカニズム解明には、さらなる研究が必要であるとされている。
胃癌腹膜播種又は腹腔内遊離癌細胞の検出のため、特異性の高い新規マーカーを同定する方法としては、被験者から生体試料を採取するステップと、アルデヒドデヒドロゲナーゼ又はドーパデカルボキシラーゼの少なくとも一方の存在を被検者の生体試料から検出するステップと、アルデヒドデヒドロゲナーゼ又はドーパデカルボキシラーゼの少なくとも一方が存在する場合には、胃癌由来の転移癌細胞が前記試料中に含まれている可能性が高いと判断するステップとを含む方法により、胃癌由来の転移癌細胞を検出し、これらを胃癌由来の転移癌細胞のマーカーとして使用することによって、胃癌患者の腹膜転移の有無を迅速かつ確実に検出することができ、腹腔内癌化学療法を適用すべきかの決定のための有力な材料を提供することができる方法(例えば、特許文献1参照。)が開発されている。
また、新規な腫瘍マーカーを提供するものであって、既知のI型コラーゲンのC端非3重鎖テロペプチド(ICTP)の変動をマーカーにすることを特徴とする、進行胃癌、特にスキルス胃癌の適切な診断マーカー(例えば、特許文献2参照。)や、従来のRLGS法に比較して少量のDNAサンプルを用い簡便で、迅速、安価に癌患者の予後が良好か否かを診断することのできる技術を確立するものであって、癌部または非癌部組織検体より得られたDNA繰り返し配列中に存在する脱メチル化DNA数を測定し、その割合に基づいて、肝細胞癌、神経膠芽腫、骨髄腫、胃癌、膵臓癌、脳腫瘍、大腸癌、肺細胞癌、腎癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌及び白血病といった癌疾患の予後が良好か否かを判断する方法(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
さらに、転移性結腸直腸癌あるいは原発性および/または転移性の胃癌または食道癌をスクリーニング・診断するための試薬、キットおよび方法や、その患者を処置するためにインビボでイメージングするための化合物や組成物、その治療や予防のための薬物、遺伝子療法薬およびアンチセンス化合物を運搬するための組成物、ワクチンおよび方法(例えば、特許文献4参照。)や、細胞の生体エネルギー的指数を作成するため、構造タンパク質およびミトコンドリアの呼吸(それぞれ例えば、hsp60やチトクロームオキシダーゼのサブユニットIおよびIV)に関して、ミトコンドリアの生体エネルギー的機能のタンパク質(H−ATP合成酵素のβ−触媒サブユニットなど)の発現についての研究を使用すること、そしてグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素およびピルビン酸キナーゼMなどの細胞の解糖経路のタンパク質の発現に関連する前記ミトコンドリア生体エネルギー指数(β−ATPase/hsp60比;β−ATPase/COXI比;β−ATPase/COXIV比)を使用することからなる、細胞の代謝性マーカーの研究に基づいて、癌の検出、進行の解析、および悪性腫瘍を予後診断するための方法(例えば、特許文献5参照。)等が提案されている。
特開2004−321102号公報 特開2001−33460号公報 特開2002−112799号公報 特表2003−532389号公報 特表2005−526980号公報
癌転移には、複数の遺伝子が協同して関与することが知られているにもかかわらず、単一の遺伝子又は少数の遺伝子と転移との関連についてのみしか報告されていない。また、癌原発巣の転移能の相違は、発現された遺伝子の組み合わせが異なることに起因するものと考えられている。そのため、転移の程度および転移先の点で異なる転移能を有する胃癌細胞の遺伝子発現及び産物のプロテオミクス解析は、胃癌腹膜播種のメカニズムの解明に重要である。本発明の課題は、胃癌腹膜播種転移におけるメカニズムの解明及び新規治療薬のターゲットとなりうるタンパク質や特異性の高い腫瘍マーカーを同定し、悪性転移性胃癌の判定方法、胃癌腹膜転移再発のリスク評価方法、抗癌剤の有効性の判定方法、及びそれらのためのキットを提供することにある。
進行胃癌術後の腹膜播種再発においてはいまだに有効な治療法がなく、5年生存率は5%以下と報告されている。そこで、我々は腹膜播種転移におけるメカニズムの解明および新規治療薬のターゲットとなりうるタンパク質や腫瘍マーカーの同定を目的として、プロテオミクスによる網羅的なタンパク質の発現解析を行った。まず、二次元ディファレンシャル電気泳動(2D―DIGE)法を用いて胃癌細胞株MKN45とその腹膜播種転移株クローンであるMKN45P由来のセルライセートの二次元電気泳動像の比較を行った。次に、統計学的手法により両細胞株間でタンパク質の発現量が有意に異なるスポットをゲルからピックアップし、各スポットのタンパク質についてマススペクトル解析(MALDI−TOFMS:proteomics analyzer 4700)を実施し、データベース検索を行った。その結果、胃癌細胞株に比べて腹膜播種転移株において有意に増加、もしくは減少したタンパク質を数種類同定することができた。本発明は、上記プロテオミクスによる網羅的なタンパク質の発現解析を行って得られた知見に基づき完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、(1)胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価することを特徴とする悪性転移性胃癌の判定方法や、(2)配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする悪性転移性胃癌の判定用キットや、(3)配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする悪性転移性胃癌の判定用キットに関する。
また本発明は、(4)胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価することを特徴とする腹膜転移再発のリスク評価方法や、(5)配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする腹膜転移再発のリスク評価用キットや、(6)配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする腹膜転移再発のリスク評価用キットに関する。
また本発明は、(7)抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価することを特徴とする抗癌剤の有効性の判定方法や、(8)配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする抗癌剤の有効性判定用キットや、(9)配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする抗癌剤の有効性判定用キットに関する。
さらに本発明は、(10)ヒト胃癌培養細胞株(MKN45P)を被検物質の存在下に培養し、細胞溶解物中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価することを特徴とする腹膜転移再発抑制剤のスクリーニング方法や、(11)細胞溶解物を二次元電気泳動に供試して、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価することを特徴とする上記(10)記載の腹膜転移再発抑制剤のスクリーニング方法に関する。
本発明によると、腹膜播種転移におけるメカニズムの解明および新規治療薬のターゲットとなりうるタンパク質や腫瘍マーカーの同定において有用であるタンパク質を用いることによって、悪性転移性胃癌の判定、腹膜転移再発のリスク評価、抗癌剤の有効性の判定、腹膜転移再発抑制剤のスクリーニングを行うことができ、本発明により進行胃癌術後の腹膜播種再発を治療しうる可能性がある。
本発明の悪性転移性胃癌の判定方法としては、胃癌患者から採取した血清、胃癌組織等の生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の悪性転移性胃癌の判定用キットとしては、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、ここで、悪性転移性胃癌とは、肝臓や腹膜やリンパ節など胃以外の他の臓器・組織に転移する胃癌を意味する。また、上記タンパク質のうち少なくとも一つの発現量の測定は、血清、胃癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の悪性転移性胃癌の判定用キットを用いるELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT(Reverse Transcription)−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。
本発明の腹膜転移再発のリスク評価方法としては、胃癌患者から採取した血清、胃癌組織等の生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の腹膜転移再発のリスク評価用キットとしては、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、ここで、腹膜転移再発のリスクとは、胃癌の摘出手術後に腹膜に転移する腹膜転移や腹膜播種のリスクを意味する。また、上記タンパク質のうち少なくとも一つの発現量の測定は、血清、胃癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の悪性転移性胃癌の判定用キットを用いるELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT(Reverse Transcription)−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。
本発明の抗癌剤の有効性の判定方法としては、抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した血清、胃癌組織等の生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の抗癌剤の有効性判定用キットとしては、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、抗癌剤の有効性を判定することにより、各患者個人に適した治療、いわゆるテーラーメイド治療が可能となる。また、上記タンパク質のうち少なくとも一つの発現量の測定は、血清、胃癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の悪性転移性胃癌の判定用キットを用いるELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT(Reverse Transcription)−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。
本発明の腹膜転移再発抑制剤のスクリーニング方法としては、ヒト胃癌培養細胞株(MKN45P)を被検物質の存在下に培養し、細胞溶解物中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価する方法であれば特に制限されず、上記タンパク質の発現量を測定する方法としては、ヒト胃癌培養細胞株(MKN45P)の細胞溶解物を二次元電気泳動に供試して、後述する実施例に記載されているように、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法の他、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を用いるELISA法等の免疫反応を利用する方法や、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を用いるドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT(Reverse Transcription)−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法を挙げることができる。
上記配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、interferon-induced Mx protein(AAA36337 gi|188901)であり、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、glycyl-tRNA synthetase(AAA86443 gi|493066)であり、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、flavoprotein subunit of complex II(BAA06332 gi|506338)であり、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、ts11 cell cycle control protein(AAA36781 gi|339987)であり、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、Tyrosyl-tRNA synthetase(AAH16689 gi|16741793)であり、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、Keratin 5(AAH42132 gi|27503816)であり、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、transfer RNA-Trp synthetase(AAA61298 gi|340368)であり、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、adenylate kinase 2(CAI19351 gi|56202448)であり、これらのタンパク質は、胃癌細胞株MKN45に比べて腹膜播種転移株MKN45Pにおいて有意に増加するタンパク質(以下、これらを総称して「腹膜播種転移株有意増加タンパク質」ということがある)である。
他方、上記配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、pyruvate kinase(CAA39849 gi|35505)であり、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、cytokeratin 8 (279 AA)(CAA31376 gi|30313)であり、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、dihydrodiol dehydrogenase isoform DD1(BAA05121 gi|556516)であり、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、Annexin I(1AIN gi|442631)であり、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、Annexin A2, isoform 2(AAH23990 gi|18645167)であり、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、Annexin A2, isoform 2(AAH09564 gi|16306978)であり、配列番号15に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、Carbonic Anhydrase II (Carbonate Dehydratase) (HCA II) (E.C.4.2.1.1) Mutant With Val 121 Replaced(12CA gi|229657)であり、これらのタンパク質は、胃癌細胞株MKN45に比べて腹膜播種転移株MKN45Pにおいて有意に減少するタンパク質(以下、これらを総称して「腹膜播種転移株有意減少タンパク質」ということがある)である。
上記本発明の悪性転移性胃癌の判定方法においては、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意増加タンパク質の発現量が増加しているとき、及び/又は、悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意減少タンパク質の発現量が減少しているとき、被検胃癌患者の胃癌は悪性転移性胃癌と判定され、逆に、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意増加タンパク質の発現量が増加していないとき、及び/又は、悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意減少タンパク質の発現量が減少していないとき、被検胃癌患者の胃癌は良性の胃癌と判定される。
上記本発明の腹膜転移再発のリスク評価方法においては、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意増加タンパク質の発現量が増加しているとき、及び/又は、悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意減少タンパク質の発現量が減少しているとき、被検胃癌患者は腹膜転移再発のリスクがあると評価され、逆に、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意増加タンパク質の発現量が増加していないとき、及び/又は、悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意減少タンパク質の発現量が減少していないとき、被検胃癌患者は腹膜転移再発のリスクがないと評価される。
上記本発明の抗癌剤の有効性の判定方法においては、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意増加タンパク質の発現量が増加しているとき、及び/又は、悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意減少タンパク質の発現量が減少しているとき、被検抗癌剤は有効でないと判定され、逆に、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意増加タンパク質の発現量が増加していないとき、及び/又は、悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比べて、被検抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した生体試料中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意減少タンパク質の発現量が減少していないとき、被検抗癌剤は有効であると判定される。
上記本発明の腹膜転移再発抑制剤のスクリーニング方法においては、抗癌剤、抗癌候補物質、低分子化合物、天然有機高分子物質、天然の動植物の抽出物、ペプチドなどの被検物質の存在下に、ヒト胃癌培養細胞株(MKN45P)を5%FBS/RPMI1640培地等で培養し、培養後の細胞溶解物中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意増加タンパク質の発現量が、被検物質非存在下における場合と比べて有意に減少しているとき、及び/又は、培養後の細胞溶解物中の1若しくは2以上の腹膜播種転移株有意減少タンパク質の発現量が、被検物質非存在下における場合と比べて有意に増加しているとき、被検物質は腹膜転移再発抑制剤として有用である可能性がある。
上記配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、2つのエピトープを同時に認識することができる二機能性抗体等を例示することができる。これら抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質又はエピトープを含む断片を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV−ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc.,1985)など任意の方法を用いることができる。
また、一本鎖抗体をつくるために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778 号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,455,030号)を用いることができ、ヒト化抗体をつくるために、ヒト化抗体の調製法(米国特許第5,585,089号、Nature, 321, 522-525, 1986、Protein Engineering, 4, 773-783, 1991)を用いることができ、キメラ抗体をつくるために、キメラ抗体の調製法(米国特許第4,816,567号、Science, 229, 1202-1207, 1985、BioTechniques, 4, 214, 1986、Nature, 312, 643-646, 1984、Nature, 314, 268.270, 1985)を用いることができる。二機能性抗体は、2つの関連した抗体を産生する2つのモノクローナル細胞系同士のハイブリッド、または2つの抗体の断片の化学結合によって産生することができる。
また、上記抗体のFab断片やF(ab’)断片等も、上記抗体と同様に用いることができる。例えば、Fab断片は抗体をパパイン等で処理することにより、またF(ab’)断片はペプシン等で処理することにより調製することができる。
これら抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、14C、35S又はH等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、上記腹膜播種転移株有意増加タンパク質や腹膜播種転移株有意減少タンパク質を免疫学的測定方法により測定することができる。かかる免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
上記配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対としては、これらタンパク質のmRNA又はcDNAのうち、上流及び下流の配列の一部とハイブリダイズしうる相補的なプライマー対であれば、プライマー配列の長さ及びmRNA又はcDNAのどの部位と相補的であるかなどは特に制限されず、例えば、これらのプライマーは、5’側又は3’側、又はその両方に、上記タンパク質のmRNA又はcDNA配列と一部に相補的ではない配列を含んでも、これらとハイブリダイズできる限り、プライマーとして用いることができる。また、非特異的な増幅を防ぐためや、適当な制限酵素認識部位を導入するために、これらのmRNA又はcDNAと相補的でないミスマッチ配列を持つプライマーを使用することができる。
上記配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプローブとしては、これらタンパク質をコードするDNA(cDNA)又はRNA(cRNA)とハイブリダイズしうるアンチセンス鎖の全部又は一部であり、プローブとして成立する程度の長さ(少なくとも20ベース以上)を有するものが好ましく、例えば、これらのプローブは、5’側又は3’側、又はその両方に、上記タンパク質のmRNA又はcDNA配列と一部に相補的ではない配列を含んでも、これらとハイブリダイズできる限り、プローブとして用いることができ、また、検出しやすいように、任意の配列を付加したものを用いることができる他、検出しやすいように5’末端を標識したものを用いることもでき、そのような標識としては、たとえば、ビオチン、蛍光、又は32Pなどを例示することができる。
上記配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子として、interferon-induced Mx protein遺伝子(M30817)、glycyl-tRNA synthetase遺伝子(U09510)、flavoprotein subunit of complex II遺伝子(D30648)、ts11 cell cycle control protein遺伝子(M15798)、Tyrosyl-tRNA synthetase遺伝子(BC016689)、Keratin 5遺伝子(BC042132)、transfer RNA-Trp synthetase遺伝子(M61715)、adenylate kinase 2遺伝子(AL020995)pyruvate kinase遺伝子(X56494)、cytokeratin 8 (279 AA) 遺伝子(X12882)、dihydrodiol dehydrogenase isoform DD1遺伝子(D26124)、Annexin I遺伝子(NM_000700)、Annexin A2, isoform 2遺伝子(BC023990)、Annexin A2, isoform 2遺伝子(BC009564)、Carbonic Anhydrase II (Carbonate Dehydratase) (HCA II) (E.C.4.2.1.1) Mutant With Val 121 Replaced遺伝子(CR536526)を例示することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[使用試薬と機器]
1.細胞培養
ヒト胃癌培養細胞株(MKN45)と高度の腹膜転移能を持つ胃癌培養細胞株(MKN45P)は米村先生よりご供与頂いた。両細胞株は5%FBS/RPMI1640培地で培養した。
2.タンパク質の抽出
各細胞株をフラスコ内で80〜90%コンフルエンスな状態にまで培養した後、cell dissociation bufferを用いて細胞を剥がし、PBS(-)で3回洗った。細胞ペレットにlysis buffer(L.B.:50mMTris−HCl,pH8.5,7Murea,2Mthiourea,4%CHAPS)を添加し、よく攪拌した後に氷上で超音波処理を実施した。15000rpmで30分遠心した後、上清を回収し、2−DClean−UpKit(GE Helthcare Amersham Biosciences)で夾雑物を除去した。pHを8〜9に調整し、タンパク濃度をQuick Start protein Assay Kit (Bio-Rad Laboratories )で測定した後、L.B.で5mg/mlに調製した。
3.タンパク質のCyDyeラベル
メーカー推奨通り、50μgのタンパク質と400pmolのアミン反応性CyDye(GE Healthcare Amersham Biosciences)を反応させた。内部標準サンプルはCy2で、比較サンプルはそれぞれCy3とCy5を反応させ、氷上暗所で30分間静置することによってラベル化した。反応停止は10nmolのリジンを用いた。その後、3つのCyDyeでラベルしたサンプルを混合し、等量の×2サンプルバッファー(7Murea,2Mthiourea,4%CHAPS,2%IPGバッファー,2.4%Destreak Reagent)を加えた。ラベルされた混合物は1%IPGバッファーを含むrehydration bufferで450μlに調整した。
3.実験デザイン
内部標準法はAlbanらが示した方法論に基づいて実施した。上述したようにMKN45由来タンパク質(50μg)はCy3で、MKN45P由来タンパク質(50μg)はCy5で、内部標準として両細胞の混合物(MKN45+MKN45P:25ug+25ug)をCy2でそれぞれラベルし、タンパク質の発現差異解析に用いた。一方、タンパク同定用として別にサンプルを調製した。MKN45由来タンパク質(200μg)とMKN45P由来タンパク質(200μg)を混合し、1% IPGバッファーを含むrehydration buffer(GE Healthcare Amersham Biosciences)を加えて450μLとした。すべてのサンプルは次のセクションで述べたように2−DEによって分離した(蛍光ラベルサンプル:n=5、同定用サンプル:n=1)。再現性を確認するために、当該実験は独立して3回実施した。
4.二次元電気泳動法(2−DE)によるタンパク分離
全てのサンプルは二次元電気泳動法によって分離した。一次元目は、等電点の違いによって分離し、二次元目は分子量の違いによって分離した。IPGphorII system(GE Healthcare Amersham Biosciences)を用いて、IPGストリップ(24cm、pIレンジ3.0−11NL)を各サンプルで20℃、30Vの条件で12時間膨潤した後、20℃で35kVhの条件で等電点分離を行った。IPGストリップを1%DTT含有loading buffer (glycerol,SDS, urea, trace BPB)で15分処理した後、2.5% iodoacetamide含有loading bufferで15分処理することによって、タンパク質中に含まれるシステイン残基を還元アルキル化すると共にストリップの平衡化を行った。その後、IPGストリップは24cmアクリルアミドゲル(10〜12.5%)に載せ、SDS−PAGEによる分子量分離を行った。SDS−PAGEは2.5W/ゲルで30分間、15℃で泳動した後30W/ゲル(最大100W)で4〜5時間、15℃で泳動した。全ての工程は暗所で実施した。
5.ゲルイメージング
解析用(蛍光ラベルサンプル)のゲルは、Typhoon 9410(GE Healthcare Amersham Biosciences)を用いてCy2、Cy3、Cy5の各最適波長でスキャンした。Cy2は488nmレーザー/520nm band pass(BP)40蛍光フィルターで、Cy3は532nmレーザー/580nm BP30蛍光フィルターで、Cy5は633nmレーザー/670nm BP30蛍光フィルターでそれぞれスキャンした(5枚ゲル×3=15画像)。タンパク同定用のゲルは、10%メタノール、7%酢酸で2時間固定した後、Sypro Ruby(Invitrogen) 染色を行った(暗所、O/N)。ゲルを洗浄した後、Typhoon 9410を用いて457nmレーザー/610BP30蛍光フィルターでスキャンした。すべてのゲルは100umの解像度でスキャンした。
6.スポット検出と統計解析
統計解析用ゲルの各スポットは、DeCyderソフトウエアー(GE Healthcare Amersham Biosciences)のDIAモードで計測と定量化を行った。推定スポット検出数はおよそ4000スポットで、ゴミのような人工的スポットは排除した。1枚のゲルからCy2,Cy3,Cy5の3パターンの画像を得た後、Cy3とCy5のスポット強度を同じゲルのCy2強度でノーマライズした。次に、BVAモードでCy2画像を用いて5枚のゲルのマッチングを行い、ゲル間の誤差を補正した。各ゲルのCy3:Cy2とCy5:Cy2のDIA比から、平均発現変化比とp値(t検定)を算出し、Cy3とCy5間で2倍以上発現変化があったスポットだけをピックアップした。次に、統計解析によってピックアップした各スポットを、タンパク質同定用ゲルのスポットとマッチングさせ、XY座標を確定した。
7.ゲル内消化とペプチド精製
タンパク同定用ゲルから目的スポットをピックアップするために、スポットのXY座標をテキストファイルに変換し、SpotPicker(自動スポットコレクター、GE Healthcare Amersham Biosciences)に認識させた。それから、タンパク同定用ゲルをSpotPickerに設置し、目的スポットのピックを自動で行った。ピックしたスポットに含有するタンパク質は、トリプシンを用いてゲル内消化を行った。まず、ゲル片に100mM 重炭酸アンモニウムを加えて20分間静置し、上清を除去することによってゲルを洗浄した(3回実施)。次に、ゲル片を10分間アセトニトリル処理し、脱水操作を行った後、完全にゲルを乾固させた。その後、0.1% RapiGest/100mM 重炭酸アンモニウムで溶解したMSスペクトル解析用のトリプシン(Promega)を、125ng/ゲルとなるように乾固したゲルに加え、37℃で1時間インキュベートした。さらに塩酸を加えて37℃、45分間インキュベートすることで、残存するRapiGestを分解した。トリプシン消化されたペプチドをゲルから溶出するために、80%アセトニトリル/1%トリフルオロ酢酸で30分処理し(2回)、溶出液をSpeedvacで吸引乾燥させ、5uL程度に濃縮した。続いてMS解析を実施するために、濃縮液をC18脱塩濃縮マイクロカラム(ZipTip)で精製した。
8.タンパク質の同定
精製ペプチドをMALDI−TOF−MS(Matrix-assisted Laser Desorption Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)の4700 proteomics analyzer (Applied Biosystems)を用いて解析した。ペプチドをマトリックスであるα-cyano-4-hydroxy-trans-cinnamic acid (SIGMA)と混合し、ターゲットプレートにスポットし、リフレクターモードで質量分析を実施した。バックグランドピーク(トリプシン自己消化産物由来ピークなど)を差し引いて、各サンプルに特異的なピークリストを作成し、MASCOT(www.matrixscience.com)データーベース検索を行った。検索条件は、一部修飾として、システイン残基のカルバミドメチル化とメチオニン残基の酸化を考慮し、トリプシンによるミス分解許容は1として行った。統計学的に有意のあるスコア値を持つ同定タンパク質をピックアップした。
9.結果
図1に示すように、胃癌細胞株(MKN45)と高度の腹膜転移能を持つ胃癌細胞株(MKN45P)に発現するタンパクの発現差異解析を、2D−DIGE法を用いて実施した。MKN45由来タンパクとMKN45P由来タンパクを、それぞれCy3とCy5で蛍光ラベルし、内部標準としてMKN45とMKN45Pの等量混合物をCy2でラベルした。3種の蛍光ラベルサンプルを混合し、同一ゲルで二次元電気泳動を行った後、各最適波長でゲルをスキャンして1枚のゲルから3パターンのゲル画像を得(5枚×3パターン=15画像)、統計解析に用いた。図2AにCy3とCy5の二色重ね合わせ画像を示した。緑のスポットはMKN45のタンパク発現量がMKN45Pと比較して高いことを示し、赤のスポットはMKN45のタンパク発現量がMKN45Pより低いことを示す。次にDeCyderソフトウエアーを用いてゲル画像を解析した。5枚の各ゲルのスポット数をDIAモードで検出し、それぞれ約4000のスポットを得た。次に、Cy3とCy5でタンパク発現量が統計学的に有意に異なるスポットをBVAモードで解析した(n=5、p<0.01)。Cy3とCy5のスポットペアを3−Dモードに変換し、ピーク体積を数値化した図を図2に示した。スポットNo.8では、MKN45Pのタンパク発現量はMKN45より2.58倍高く(図2B)、スポットNo.18では、MKN45Pのタンパク発現量はMKN45より1/2.1倍であった(図2C)。MKN45とMKN45Pで2倍以上発現差があったスポットは1回目では28スポット、2回目では42スポット、3回目では42スポット検出された。
統計解析用とは別にタンパク質同定用として両細胞の混合サンプルを調製し、二次元電気泳動を実施した。ゲルをSypro Rubyで染色し、最適波長でゲルをスキャンした後、上述の解析用ゲル画像とのマッチングを行った。2倍以上発現差異があったスポットをタンパク同定用ゲル上で確認した後、SpotPickerでゲルをピックした。1〜3回の実験でピックした各ゲルは、トリプシンによるゲル内消化、ZipTipによる精製・濃縮、質量分析、Mascotデータベース検索の各工程を経て同定した。図2のNo.8とNo.18の質量分析データを図3と図4に示した。3回の繰り返し実験で、2回以上同定できたスポットは、19個存在した(図5)。そのうち、MKN45Pで増加したタンパク質は8個、減少したタンパク質は11個であった(表1)。
実施例1と同じ実験を繰り返し、MKN45Pで増加したタンパク質を9個、減少したタンパク質を19個検出した(表2)。
2D−DIGEのプロトコールのフローを示す図である。 2色の色を重ね合わせた2D−DIGEのゲルの図である。 A)緑:MKN45>MKN45P、赤:MKN45P>MKN45 B)MKN45とMKN45Pの間におけるスポットNo.8の量的変化 C)MKN45とMKN45Pの間におけるスポットNo.18の量的変化 スポットNo.8から得られたペプチドのマススペクトルの結果を示す図である。 スポットNo.18から得られたペプチドのマススペクトルの結果を示す図である。 SYPRO Ruby染色を行ったゲルのイメージである。 Ratio:≧2.0 あるいは ≦−2.0 Significance level:p<0.01 実施回数:3回(n=5) 検出されたスポット数:19スポット(増加:8、減少:11)

Claims (11)

  1. 胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価することを特徴とする悪性転移性胃癌の判定方法。
  2. 配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする悪性転移性胃癌の判定用キット。
  3. 配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする悪性転移性胃癌の判定用キット。
  4. 胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価することを特徴とする腹膜転移再発のリスク評価方法。
  5. 配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする腹膜転移再発のリスク評価用キット。
  6. 配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする腹膜転移再発のリスク評価用キット。
  7. 抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、良性の胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合、及び/又は悪性の転移性胃癌に罹患している患者から採取した生体試料を用いた場合と比較・評価することを特徴とする抗癌剤の有効性の判定方法。
  8. 配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする抗癌剤の有効性判定用キット。
  9. 配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうちのいずれか1種以上のタンパク質のmRNAの存在を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする抗癌剤の有効性判定用キット。
  10. ヒト胃癌培養細胞株(MKN45P)を被検物質の存在下に培養し、細胞溶解物中の、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価することを特徴とする腹膜転移再発抑制剤のスクリーニング方法。
  11. 細胞溶解物を二次元電気泳動に供試して、配列番号1〜15のいずれかに示されたアミノ酸配列からなるタンパク質のうち少なくとも一つの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価することを特徴とする請求項10記載の腹膜転移再発抑制剤のスクリーニング方法。
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