JP2007292746A - 胃癌の判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】胃癌に対し特異性の高い腫瘍マーカーを同定し、悪性の胃癌の判定方法、胃癌転移・再発のリスク評価方法、抗癌剤の有効性の判定方法、及びそれらのためのキットを提供すること。
【解決手段】腫瘍マーカー候補物質の探索を目的として、ヒト胃癌由来培養細胞株の培養上清に放出されるタンパク質・ペプチドのプロテオーム解析を行い、ヒト胃癌由来培養細胞株であるAZ521、AZ521の腹膜転移株であるAZ521−P7a、腹水転移株であるAZ521−P7a−Ascitesは全て培養上清中にプログルカゴン(proGlucagon)を放出するが、肺癌由来の細胞においてはプログルカゴンが放出されないことを見い出し、ヒトから採取した生体試料中のプログルカゴンを、プログルカゴンに対する抗体やプログルカゴンのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブを測定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、胃癌の判定方法及びそのためのキット、胃癌再発のリスク評価方法及びそのためのキット、抗癌剤の有効性の判定方法及びそのためのキット、並びに、胃癌の抑制剤・治療剤のスクリーニング方法に関する。
胃癌は、日本と東南アジアでは消化管で最も多くみられる悪性腫瘍であり、癌死亡率では、胃癌が世界で第2位を占めている。胃癌の予後は、診断技術や胃癌の治療法の発達により改善しているが、進行癌の治癒的切除の後に起こる再発の主原因は腹膜播種である。胃漿膜にまで浸潤した胃癌の予後は、5年生存率が35%と低い。また、進行胃癌術後の腹膜播種再発においてはいまだに有効な治療法がなく、5年生存率は5%以下と報告されている。胃癌細胞のこのような悪性の特性のうちで、腹膜への転移は特に複雑な現象であり、多くのステップと多くの遺伝子が関与している。胃癌の腹膜播種には、接着分子、アポトーシス関連遺伝子および他の遺伝子が深く関与しているという報告があるが、胃癌の転移のメカニズム解明には、さらなる研究が必要であるとされている。
胃癌をはじめとした癌治療における診断方法として、血中腫瘍マーカーの計測が挙げられる。腫瘍マーカーは腫瘍または腫瘍と反応した正常細胞が作る物質の中で、血中や尿中などに放出され腫瘍の体外診断を可能としているものである。
上記腫瘍マーカーに関しては、乳癌患者と正常人の胸部組織に差異的に発現する遺伝子を使用した悪性腫瘍、特に乳癌を予想、診断、予後判定、予防および処置するための新規な組成物、方法および使用(例えば、特許文献1参照。)や、肝炎ウイルスの感染に起因し慢性肝炎または肝硬変を発症した患者に対し、肝炎ウイルスに感染した患者のミトコンドリアDNAの塩基配列を評価することによって肝臓癌の発癌リスクを評価する方法(例えば、特許文献2参照。)や、その遺伝子産物がCLL細胞および前立腺癌細胞の新生物性または腫瘍形成性増殖を抑制するmiR15およびmiR16のコピー数、変異状態または遺伝子発現を検出することによる慢性リンパ性白血病または前立腺癌の診断方法(例えば、特許文献3参照。)や、無症候性期または初期段階の患者における発癌過程の存在を検出するのに適当な迅速な癌の診断方法や、癌患者の血清中に存在する炭酸脱水酵素IIの活性化化合物、すなわち腫瘍マーカー、該癌の診断方法によって、無症候性期または初期段階の患者の癌を検出することを特徴とする癌の処置方法;ならびに該癌の診断方法を行うためのキット(例えば、特許文献4参照。)等が知られている。
また、胃癌に関しては、既知のI型コラーゲンのC端非3重鎖テロペプチド(ICTP)の変動をマーカーにすることを特徴とする、進行胃癌、特にスキルス胃癌の適切な診断マーカー(例えば、特許文献5参照。)や、従来のRLGS法に比較して少量のDNAサンプルを用い簡便で、迅速、安価に癌患者の予後が良好か否かを診断することのできる技術を確立するものであって、癌部または非癌部組織検体より得られたDNA繰り返し配列中に存在する脱メチル化DNA数を測定し、その割合に基づいて胃癌をはじめ、種々の癌疾患の予後が良好か否かを判断する方法(例えば、特許文献6参照。)や、転移性結腸直腸癌あるいは原発性および/または転移性の胃癌または食道癌をスクリーニング・診断するための試薬、キットおよび方法や、その患者を処置するためにインビボでイメージングするための化合物や組成物、その治療や予防のための薬物、遺伝子療法薬およびアンチセンス化合物を運搬するための組成物、ワクチンおよび方法(例えば、特許文献7参照。)や、細胞の生体エネルギー的指数を作成するため、構造タンパク質およびミトコンドリアの呼吸(それぞれ例えば、hsp60やチトクロームオキシダーゼのサブユニットIおよびIV)に関して、ミトコンドリアの生体エネルギー的機能のタンパク質(H−ATP合成酵素のβ−触媒サブユニットなど)の発現についての研究を使用すること、そしてグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素およびピルビン酸キナーゼMなどの細胞の解糖経路のタンパク質の発現に関連する前記ミトコンドリア生体エネルギー指数(β−ATPase/hsp60比;β−ATPase/COXI比;β−ATPase/COXIV比)を使用することからなる、細胞の代謝性マーカーの研究に基づいて、癌の検出、進行の解析、および悪性腫瘍を予後診断するための方法(例えば、特許文献8参照。)等が提案されている。
さらに、胃癌腹膜播種又は腹腔内遊離癌細胞の検出のため、特異性の高い新規マーカーを同定する方法としては、被験者から生体試料を採取するステップと、アルデヒドデヒドロゲナーゼ又はドーパデカルボキシラーゼの少なくとも一方の存在を被検者の生体試料から検出するステップと、アルデヒドデヒドロゲナーゼ又はドーパデカルボキシラーゼの少なくとも一方が存在する場合には、胃癌由来の転移癌細胞が前記試料中に含まれている可能性が高いと判断するステップとを含む方法により、胃癌由来の転移癌細胞を検出し、これらを胃癌由来の転移癌細胞のマーカーとして使用することによって、胃癌患者の腹膜転移の有無を迅速かつ確実に検出することができ、腹腔内癌化学療法を適用すべきかの決定のための有力な材料を提供することができる方法(例えば、特許文献9参照。)が開発されている。
特開2004−159640号公報 特開2004−121029号公報 特表2006−506469号公報 特表2001−524815号公報 特開2001−33460号公報 特開2002−112799号公報 特表2003−532389号公報 特表2005−526980号公報 特開2004−321102号公報
本発明の課題は、胃癌に対し特異性の高い腫瘍マーカーを同定し、悪性の胃癌の判定方法、胃癌転移・再発のリスク評価方法、抗癌剤の有効性の判定方法、及びそれらのためのキットを提供することにある。
本発明者らは、腫瘍マーカー候補物質の探索を目的として、ヒト胃癌由来培養細胞株の培養上清に放出されるタンパク質・ペプチドのプロテオーム解析を行い、ヒト胃癌由来培養細胞株であるAZ521、AZ521の腹膜転移株であるAZ521−P7a、腹水転移株であるAZ521−P7a−Ascitesは全て培養上清中にプログルカゴン(proGlucagon)を放出するが、肺癌由来の細胞においてはプログルカゴンが放出されないこ
とを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)ヒトから採取した生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定することを特徴とする胃癌の判定方法や、(2)ヒトから採取した生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定することを特徴とする胃癌の悪性度の判定方法や、(3)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌の判定用キットや、(4)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌の判定用キットに関する。
また本発明は、(5)胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定することを特徴とする胃癌再発のリスク評価方法や、(6)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌再発のリスク評価用キットや、(7)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌再発のリスク評価用キットに関する。
さらに本発明は、(8)抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定することを特徴とする胃癌に対する抗癌剤の有効性の判定方法や、(9)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌に対する抗癌剤の有効性判定用キットや、(10)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌に対する抗癌剤の有効性判定用キットや、(11)ヒト胃癌培養細胞株を被検物質の存在下に培養し、細胞溶解物中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価することを特徴とする胃癌の抑制剤・治療剤のスクリーニング方法に関する。
本発明によると、胃癌の判定、胃癌再発のリスク評価、抗癌剤の有効性の判定、胃癌再発抑制剤のスクリーニングを行うことができる。
本発明の胃癌の判定方法や胃癌の悪性度の判定方法としては、胃癌患者から採取した血清、胃癌組織等の生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチド(プログルカゴン)の発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の胃癌の判定用キットとしては、プログルカゴンに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、プログルカゴンのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、また、上記プログルカゴンの発現量の測定は、血清、胃組織溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の胃癌の判定用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT(Reverse Transcription)−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、プログルカゴンの発現を検出した場合、対象者は胃癌患者と判定され、特に発現量が顕著な場合は悪性胃癌と判定されることになる。
本発明の胃癌再発のリスク評価方法としては、胃癌患者から採取した血清、胃癌組織等の生体試料中の、プログルカゴンの発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の胃癌再発のリスク評価用キットとしては、プログルカゴンに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、プログルカゴンのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、また、上記プログルカゴンの発現量の測定は、血清、胃癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の胃癌再発のリスク評価用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、プログルカゴンの発現を検出した場合、対象者は胃癌が再発していると判定されることになる。
本発明の抗癌剤の有効性の判定方法としては、抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した血清、胃癌組織等の生体試料中の、プログルカゴンの発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の胃癌に対する抗癌剤の有効性判定用キットとしては、プログルカゴンに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、プログルカゴンのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、抗癌剤の有効性を判定することにより、各患者個人に適した治療、いわゆるテーラーメイド治療が可能となる。また、上記ペプチドプログルカゴンの発現量の測定は、血清、胃癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の胃癌に対する抗癌剤の有効性判定用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、抗癌剤の服用の結果、プログルカゴンの発現量が減少した場合、当該抗癌剤は胃癌の治療に有効であると判定されることになる。
本発明の胃癌の抑制剤・治療剤のスクリーニング方法としては、ヒト胃小細胞癌培養細胞株(例えば、ヒト胃癌由来培養細胞株であるAZ521、AZ521の腹膜転移株であるAZ521−P7a、腹水転移株であるAZ521−P7a−Ascites)を、抗癌剤、抗癌候補物質、低分子化合物、天然有機高分子物質、天然の動植物の抽出物、ペプチドなどの被検物質の存在下に培養し、細胞溶解物中のプログルカゴンの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価する方法であれば特に制限されず、上記プログルカゴンの発現量を測定する方法としては、ヒト胃癌培養細胞株の細胞溶解物を二次元電気泳動に供試して所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法の他、プログルカゴンに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を用いるELISA法等の免疫反応を利用する方法や、プログルカゴンのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を用いるドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法を挙げることができる。そして、被検物質の存在下に培養した細胞溶解物中のプログルカゴンの発現量が、被検物質の非存在下における場合と比較して減少している場合、当該被検物質は胃癌の治療や転移抑制に有効な胃癌の抑制剤・治療剤である可能性が大きい。
上記プログルカゴンに特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、2つのエピトープを同時に認識することができる二機能性抗体等を例示することができる。これら抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチド又はエピトープを含む断片を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV−ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIESAND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc., 1985)など任意の方法を用いることができる。
また、一本鎖抗体をつくるために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,455,030号)を用いることができ、ヒト化抗体をつくるために、ヒト化抗体の調製法(米国特許第5,585,089号、Nature, 321, 522-525, 1986、Protein Engineering, 4, 773-783, 1991)を用いることができ、キメラ抗体をつくるために、キメラ抗体の調製法(米国特許第4,816,567号、Science, 229, 1202-1207, 1985、BioTechniques, 4, 214, 1986、Nature, 312, 643-646, 1984、Nature, 314, 268.270, 1985)を用いることができる。二機能性抗体は、2つの関連した抗体を産生する2つのモノクローナル細胞系同士のハイブリッド、または2つの抗体の断片の化学結合によって産生することができる。
また、上記抗体のFab断片やF(ab’)断片等も、上記抗体と同様に用いることができる。例えば、Fab断片は抗体をパパイン等で処理することにより、またF(ab’)断片はペプシン等で処理することにより調製することができる。
これら抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、14C、35S又はH等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、上記配列番号1に示されるアミノ酸からなるペプチドを免疫学的測定方法により測定することができる。かかる免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
上記プログルカゴンのmRNAの存在を検出するためのプライマーセットとしては、これらプログルカゴンのmRNA又はcDNA(配列番号2)のうち、上流及び下流の配列の一部とハイブリダイズしうる相補的なプライマーセットであれば、プライマー配列の長さ及びmRNA又はcDNAのどの部位と相補的であるかなどは特に制限されず、例えば、これらのプライマーは、5’側又は3’側、又はその両方に、上記ペプチドのmRNA又はcDNA配列と一部に相補的ではない配列を含んでも、これらとハイブリダイズできる限り、プライマーとして用いることができる。また、非特異的な増幅を防ぐためや、適当な制限酵素認識部位を導入するために、これらのmRNA又はcDNAと相補的でないミスマッチ配列を持つプライマーを使用することができる。
上記プログルカゴンのmRNAの存在を検出するためのプローブとしては、これらペプチドをコードするDNA(cDNA)又はRNA(cRNA)とハイブリダイズしうるアンチセンス鎖の全部又は一部であり、プローブとして成立する程度の長さ(少なくとも20ベース以上)を有するものが好ましく、例えば、これらのプローブは、5’側又は3’側、又はその両方に、上記ペプチドのmRNA又はcDNA配列と一部に相補的ではない配列を含んでも、これらとハイブリダイズできる限り、プローブとして用いることができ、また、検出しやすいように、任意の配列を付加したものを用いることができる他、検出しやすいように5’末端を標識したものを用いることもでき、そのような標識としては、たとえば、ビオチン、蛍光、又は32Pなどを例示することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(培養細胞株)
本研究では12種類の培養細胞を用いた。胃癌由来の細胞としてAZ−521、AZ521−P7a、AZ521−P7a−Ascites、肺癌由来の細胞としてSBC−3、SBC−5、NCI−H650、NCI−H1650、NCI−H661、NCI−H1581、NCI−H460、NCI−H2170、NCI−H1869を用いた。これらの細胞株は、American Type Culture Collection (ATCC社)または財団法人ヒューマン振興財団から入手することができるが、AZ521−P7aおよびAZ521−P7a−Ascitesは、静岡がんセンター米村豊博士より供与されたものである。
(培養上清の調整)
培養上清は以下のように回収した。各々の細胞を1×10となるよう10cmシャーレに播種し、一晩インキュベートして細胞をシャーレに接着させた。培地は10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)を含むRPMI1640(Sigma社製)を用いた。次にリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)で2回洗浄した後、FBSを含まないRPMI1640培地に交換した。系内にFBSが存在すると測定誤差が大きくなるため、実施例では無血清培地を使用した。RPMI1640培地で1時間インキュベートした後、培地を捨て、PBSでさらに2回洗浄し、RPMI1640培地を7ml加えた。48時間インキュベートした後この培地を回収し、実験に用いた。
(培養上清中のタンパク質のカラムクロマトグラフィーによる分離)
培養上清中のタンパク質を、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製した。カラムクロマトグラフィーシステムとしてProteomeLab PF2D(ベックマン社製)を、カラムとしてMightysil RP−18 GP250−4.6(5μm:関東化学社製)を用いた。溶出曲線を図1に示す。図のように保持時間が18−19分前後に培地には無いピークが検出された。
(タンパク質のトリプシン消化とMS/MSスペクトル測定)
カラムクロマトグラフィーで得られた18−19分前後の画分中のタンパク質をトリプシン消化し、MS/MS測定を行うことによって、タンパク質の配列を決定した。トリプシン消化は以下のように行った。得られた画分を減圧下で遠心濃縮し、0.2% Rapi Gest(Waters社製)を15μl加えタンパク質を溶解した。これにトリプシン溶液(8.3ng/μl、50mM 炭酸水素アンモニウム)を15μl加え、37℃で1時間インキュベートした。500mM 塩酸3μlを加えて反応を停止した後、Zip Tipを用いて脱塩を行い、MSスペクトルとMS/MSスペクトルを測定した。
AZ521−P7a−Ascitesの培養上清を、上記に従いトリプシン消化を行い、MSスペクトルを測定した。その結果、m/zが988.4、1277.7、1602.8、1758.9、2177.0、2338.0にピークが検出された。これらのタンパク質断片のペプチドに対しMS/MSスペクトルの測定し、ペプチド配列を決定した。結果を表1に示す。これらのペプチドはプログルカゴンの一部であることが分かった。図2にプログルカゴンのアミノ酸配列(配列番号1)を示す。太字で示したものが、実際に検出されたペプチドである。
以上のことよりAZ521−P7a−Ascites培養上清にはプログルカゴンが放出されていることが明らかとなった。グルカゴンは図2の下線部分の構造を持つ。これまでの研究によりグルカゴンはペプチドホルモンとして機能することが分かっているが、腫瘍細胞がグルカゴンの前駆体であるプログルカゴンを放出しているという報告が無く、本研究によってはじめて明らかとなった。一般的にペプチドホルモンは血中で不安定である場合が多く、腫瘍マーカーとしては不適切である場合が多かった。しかしながらプログルカゴンはペプチドホルモンの前駆体であるため、血中安定性が高く、腫瘍マーカー候補として適切である可能性が高い。
また、同様の実験をAZ521、AZ521−P7aに対しても行った結果、いずれの細胞もプログルカゴンを放出していることが分かった。これらの細胞株におけるタンパクヒットスコアを表2に示す。ヒットスコアは存在するタンパクが多いほど高いことが知られている。そのため、AZ521−P7a−Ascites>AZ521−P7a>AZ521の順にプログルカゴン放出量が多いことが示唆される。このため、プログルカゴンは胃癌の腹膜播種化や腹水化といった悪性度の高い癌の指標となる可能性も示唆できる。
(種々の肺癌由来培養細胞との比較)
9種類のヒト肺癌由来培養細胞(小細胞癌としてSBC3、SBC5、腺癌としてH650、H1650、大細胞癌としてH661、H1581、H460、扁平上皮癌としてH2170、H1869)を用いて上記同様の実験を行ったところ、培養上清中にプログルカゴンは検出できなかった。以上のことよりプログルカゴンは胃癌特異的なマーカーとして期待できる。さらに腹膜転移能を獲得した株に高濃度で検出できたことから、腹膜転移に関わるマーカーとしても期待できる。なお、正常者の胃由来の細胞からプログルカゴンの放出は報告されていない。
(培養上清中のタンパク質のカラムクロマトグラフィーによる分離とnanoLC−ESI−LIT−TOF質量分析)
AZ521−P7a−Ascitesの培養上清を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、得られたタンパク質画分をトリプシン消化した。消化されたタンパク質断片(ペプチド)に対し、nanoLC−ESI−LIT−TOF質量分析計 NanoFrontier((株)日立ハイテクノロジーズ社製)での測定を行った。トリプシン消化は以下のように行った。
カラムクロマトグラフィーで得られた18−19分前後の画分を減圧下で遠心濃縮し、トリプシン溶液30μl(トリプシンが0.5μg含まれた50mM炭酸水素アンモニウム溶液)を加え、37℃で18時間インキュベートし、その反応液5μlを分析した。
その結果、表3に示すPro−グルカゴンの一部であるペプチド断片が検出された。N末端を含むほとんどの配列の検出に成功した(図3参照)。
(グルカゴン、Glucagon like peptide 1、Glucagon like peptide 2に対する抗体を用いたウエスタンブロット)
Pro−グルカゴンは分子内にグルカゴン(33−61)、GLP1(Glucagon like peptide 1、78−107)、GLP2(Glucagon like peptide 2、136−158)配列を有する(図4)。そこで、これらに対する抗体を用い、前述の方法に従ってAZ521、AZ521−P7a、AZ521−P7a−Ascitesを培養し、それぞれの培養細胞の上清に対するウエスタンブロットを行った。結果を図5に示す。
いずれの場合でもpro−グルカゴン(分子量18611)前後に陽性バンドが検出された(赤矢印)。グルカゴン、GLP1、GLP2の分子量はこれと大きく異なることから、検出できたバンドはpro−グルカゴンであると言える。抗体を使ってpro−グルカゴンが検出できたため、今後ELISAなど汎用の臨床検査を用いてもpro−グルカゴンが検出できる可能性を示している。
培養上清中のタンパク質を、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製した際の溶出曲線を示す図である。 プログルカゴンのアミノ酸配列を示す図である。 nanoLC−ESI−LIT−TOF型質量分析計を用いて検出されたpro−グルカゴンペプチド(下線部分)を示す図である。 Pro−グルカゴンの配列とグルカゴン、GLP1、GLP2の配列を示す図である。グルカゴンを実線、GLP1を破線の点線、GLP2を2点鎖線の点線の下線により示す。 グルカゴン、GLP1、GLP2に対する抗体を用い、各種細胞の培養上清についてウエスタンブロットを行った結果を示す図である。Lane1にはAZ521、Lane2にはAZ521−P7a、Lane3にはAZ521−P7a−Ascitesのそれぞれを無血清培養した培養上清を泳動した。また、左から(a)グルカゴン抗体、(b)GLP1抗体、(c)GLP2抗体を用いた結果となっている。

Claims (11)

  1. ヒトから採取した生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定することを特徴とする胃癌の判定方法。
  2. ヒトから採取した生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定することを特徴とする胃癌の悪性度の判定方法。
  3. 配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌の判定用キット。
  4. 配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌の判定用キット。
  5. 胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定することを特徴とする胃癌再発のリスク評価方法。
  6. 配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌再発のリスク評価用キット。
  7. 配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌再発のリスク評価用キット。
  8. 抗癌剤を服用している胃癌患者から採取した生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定することを特徴とする胃癌に対する抗癌剤の有効性の判定方法。
  9. 配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌に対する抗癌剤の有効性判定用キット。
  10. 配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする胃癌に対する抗癌剤の有効性判定用キット。
  11. ヒト胃癌培養細胞株を被検物質の存在下に培養し、細胞溶解物中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価することを特徴とする胃癌の抑制剤・治療剤のスクリーニング方法。
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