JP2007214466A - 超電導コイル - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、超電導コイルが熱収縮や電磁力により動き、それに伴う発熱によりクエンチが生じることを低減した超電導コイルを提供するものである。
【解決手段】本発明は、超電導コイルの巻枠と超電導導体との間の摺動発熱を低減すると共に、その発熱が超電導導体に伝わるのを妨げるためのスペーサを挿入し、摺動時のクエンチを抑制することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、超電導磁石を構成する超電導コイルに係り、特に、電磁力の大きい超電導磁石に好適な超電導コイルに関する。
超電導コイルを用いた超電導コイル装置に求められている出力は、年々上昇しており、それに伴って電磁力も増加している。このため、超電導コイルが摺動した場合の発熱量が増えるため、それを防ぐために巻き付け張力も増やす必要があるが、負荷を上げすぎると超電導導体が塑性変形し、巻き付け作業に障害が起こる可能性があると共に、超電導コイルの性能の低下を引き起こし、磁場が不安定になる場合がある。
こうした場合、従来は、例えば、特許文献1に記載されているように、巻枠と超電導導体との間に、低摩擦となる材料を挿入し、摺動時に発生する熱量を低減する構造が用いられている。
特開平9−139309号公報
しかし、こうした場合でも、摩擦係数を抑えた効果以上に面圧が上昇した場合には、クエンチの原因となるおそれがある。
そこで、本発明は、高磁場化の際に問題となるクエンチの原因の一つを回避することのできる超電導コイルを提供することを目的とする。
本発明は、超電導コイルの巻枠と超電導導体との間の摺動発熱を低減すると共に、その発熱が超電導導体に伝わるのを妨げるための絶縁材を効率よく、低コストで形成し、摺動時のクエンチを抑制することを特徴とする。
つまり、本発明の超電導コイルは、内周面とフランジ側の平面とを有する巻枠と、巻枠に巻きつけられた超電導導体と、を有するものであって、巻枠と超電導導体との間には、巻枠と超電導導体との間を絶縁するための絶縁材を具備するスペーサが配置され、スペーサは、内周面には、複数の絶縁材がシート状に積層されて形成され、フランジ側の平面には、予め成型した板状の絶縁材が形成されることを特徴とする。
また、超電導コイルの外周面にバインドを有し、バインドと超電導導体との間には、バインドと超電導導体との間を絶縁するための絶縁材を具備するスペーサが配置され、スペーサは、複数の絶縁材がシート状に積層されて形成されてもよい。
また、巻枠と超電導導体との間の内周面側、および、バインドと超電導導体との間の外周面側、に配置されるスペーサのうち、磁力によって超電導コイルに作用する力が働く方向にある内周面または外周面のいずれか一面に配置されるスペーサの絶縁抵抗を、他面に配置されるスペーサの絶縁抵抗より、大きくすることが好ましい。
また、巻枠の一方のフランジ側の平面と超電導導体との間、および、巻枠の他方のフランジ側の平面と超電導導体との間、に配置されるスペーサのうち、磁力によって超電導コイルに作用する力が働く方向にあるいずれか一方に配置されるスペーサの絶縁抵抗を、他方に配置されるスペーサの絶縁抵抗より、大きくすることが好ましい。
さらには、巻枠と超電導導体との間には、巻枠と超電導導体との間の摩擦係数を、または、バインドと超電導導体との間には、バインドと超電導導体との間の摩擦係数を、低減するための摩擦材が形成されることが好ましい。なお、ここでいう摩擦材は、部材間の摩擦力を低減するものであり、摺動材と呼称してもよい。
スペーサは、ガラス繊維からなる強化層と絶縁材とを積層した構造であることが好ましく、スペーサの最表面にガラス繊維からなる強化層が形成されることが好ましい。
また、スペーサは、室温から極低温、例えば、4.2K 程度まで温度が変化した場合に、スペーサの繊維方向の熱ひずみが、−0.3〜−0.5%であることが好ましい。
また、スペーサと超電導導体とは、樹脂含浸により一体化されていることが好ましい。
さらに、巻枠の摺動部の摺動面の粗さは、摩擦材の厚さより小さいことが好ましく、巻枠の摺動部の熱伝導率は、スペーサの熱伝導率よりも高いことが好ましい。
なお、これらの超電導コイルは、極低温下、例えば20K程度の環境下で使用される超電導コイル装置に用いられる。
本発明の超電導コイルは、電磁力を受けて超電導コイルが摺動した際に発熱する熱が、超電導導体に伝わることを抑制することができるため、出力を向上させても、クエンチを抑制でき、信頼性の高い超電導コイルを提供できる。
以下、超電導コイルの摺動による発熱を低減し、クエンチを抑制するという目的を、簡易な構造で性能を低下させることなく実現する実施形態を説明する。
図1は、本形態の一つの実施例の断面図である。
図1に示されているように、超電導コイルは、巻枠1と巻枠1に巻きつけられた超電導コイル2とを有し、これらは含浸樹脂3により含浸され、一体化されている。
巻枠1を構成する材料は、ステンレス鋼などの非磁性金属を用いる。電気的絶縁を行うために、巻枠1と超電導コイル2との間にスペーサ5,6を挿入する。また、巻枠1と超電導コイル2との間には、摩擦力を低減するために、ふっ素樹脂などの摩擦材4を挿入する。
巻枠1の内周面側に形成されるスペーサ5は、ガラス繊維からなる強化材と伝熱抵抗を高くするために熱伝導率が低い絶縁材とを積層して構成する。絶縁材には厚さの調整が容易で、樹脂などで含浸させることもできることからポリイミドなどが適当である。
超電導コイルの内周面の曲面部には、シート状のガラス強化材および絶縁材を一層ずつ積層して配置する。そして、スペーサ5を構成する部材と超電導コイル2とを含浸樹脂3で含浸する。このようにすることで積層されたシートが互いに接着され、一体化し、繊維強化プラスチック(FRP)のような状態になり、それぞれの間で剥離が生じることを防ぐことができる。
また、シート状のものを貼り付けるため、巻枠1の内周面に倣った形状を作ることができ、隙間が生じない構造にすることができる。それに加え、このように複数の材料を組み合わせることにより、線膨張係数や伝熱抵抗を制御することができ、後述するようなスペーサに必要な特性を持った、好適な部材を形成できる。
一方、巻枠1のフランジ側の平面に形成されるスペーサ6には、予め成型したFRPを配置する。このFRPの構成材料は、前述したシート状の部材と同等の特性を持つ材料とする。
このように圧力を負荷して成型したFRPは、樹脂の含有量を調整することができ、また、樹脂の間にボイドが入ることを防げるため密着性が向上し、高強度にでき、厚さなども調整しやすい。
このため、スペーサの特性を安定化させることができる。また、製作時の扱いも容易であるため組立て工程を短縮でき、コストを低減することができる。
この時、積層構造の最表面はガラス繊維からなる強化材とする。シート状の絶縁材を最表面に配置した場合、摺動時に損傷を受ける可能性が高いため、損傷を受けにくいガラス繊維からなる強化材が最表面となるように配置することが好ましい。
スペーサ5,6は、室温から極低温(液体ヘリウム温度:4.2K )までの熱ひずみが、超電導コイル2の熱ひずみ−0.4% に対して、±0.1% の−0.3〜−0.5%となるように絶縁材と強化材とを構成するとよい。
一般的に超電導コイルの含浸に用いる樹脂のヤング率は10GPa程度で、含浸不良などで0.1mm 程度の欠陥が存在する可能性を考慮すると、樹脂の強度は10〜20MPa程度となることが予想される。そのため超電導コイル2とスペーサ5,6との間で0.1%〜0.2% の熱ひずみが発生すると、含浸樹脂の割れが生じて発熱したり、励磁時にそこで摺動して発熱が起こり、クエンチの要因となる可能性がある。
そのため、このようにスペーサ5,6の熱ひずみを超電導コイル2に対して±0.1% 以下に調整し、熱ひずみ差を制御することにより、含浸樹脂の割れを防ぎ、クエンチの原因となる発熱を抑制することができる。
例えば、絶縁材としてポリイミドのフィルムを用いる場合には、室温から極低温で発生する熱ひずみは、それぞれガラスは−0.15%、ポリイミドのフィルムは−0.6%であるため、ガラスとポリイミドのフィルムとの比率が決まり、ガラスが1に対して、ポリイミドのフィルムは0.5以上3.5以下となる。
このような構造にすることにより、超電導コイルを冷却した場合でも、超電導コイル2とスペーサ5,6とが一体となったままで変位し、超電導導体での発熱を避けることができる。
また、スペーサ5,6の厚さは、摺動による発熱量を推定しそれに従って決定する。摺動発熱量qは、摺動距離をδ、面圧をσ、摺動部の摩擦係数をμとすると、以下の式から計算される。
q=μσδ
摩擦係数μは、前記したようなふっ素樹脂やポリイミドのフィルムなどの摩擦材4を挿入することにより、μ=0.1程度となる。
摺動距離δは、摩擦材4を挿入した場合、図7に示すように、接線力が静摩擦力を上回った場合に滑って変位を生じ、その後、動摩擦力により停止するスティックスリップ現象が起こりにくいため、大きく摺動せず、滑らかに変位する。
そのため、一般的な励磁速度では瞬間的な摺動距離はおおよそ0.1mm 以下の範囲に限られる。
面圧σは、基本的に磁場に対して線形な関係で変化し、超電導コイルで発生する磁場強度が増加するほど大きな負荷が加わる。
超電導コイルの磁場強度は、コイルの形状,大きさ,構造により異なるが、本構造では、含浸樹脂3により含浸を行っているため、含浸樹脂の強度以下で使用する必要がある。
含浸樹脂の強度は、一般的に100〜200MPa程度なので、それ以下となるような条件で設計される。
安全率を2倍取ると考えると、50MPa以下が適当である。より厳しい条件で用いられる場合でも100MPa以上で用いることは現実的ではないため、上限は100MPa程度と考えられる。
以上のような条件から、摺動発熱量qを計算すると、0.5mJ/mm2が発生する場合を考えれば、このような発熱が起こっても、クエンチに対して十分裕度のある構造とすることができる。
一方、摺動発熱の許容量は、摺動部からスペーサ5,6を介して超電導コイル2に伝わる熱量により決まる。スペーサ5,6の伝熱抵抗を大きくするほど伝熱量は小さくなるため、超電導コイルを高磁場で使用する場合は、超電導コイルに用いる絶縁材は伝熱抵抗を大きくする必要がある。
しかし、絶縁材を増やしすぎるとコイル全体の剛性が低くなり、また、コスト上昇にもつながってしまう。そのため、磁場に応じて適正な絶縁抵抗を設定する必要がある。
巻枠1と摩擦材4との間で摺動発熱が生じた場合、発熱は巻枠1とスペーサ5,6とに伝熱するが、その量はそれぞれの伝熱抵抗により決まる。
巻枠1は、一般的にステンレス鋼を用いて製作されることが多いため、ここではこのような構造について説明する。
このような場合について、スペーサ5,6の厚さを変えた時の伝熱抵抗と限界入熱量との関係は、図6に示すようなほぼ線形の関係となる。これは、厚さと伝熱抵抗とがほぼ比例関係にあることから明らかである。この関係における傾きについては、線材の温度裕度によって変化するが、この場合、温度裕度を1.4K とした場合のものを例にとっている。
以上のような結果からクエンチ発生に対して十分な裕度をもつように、スペーサの伝熱抵抗を設計する。摺動発熱量が前記したように0.5mJ/mm2で、温度裕度が1.4K とした場合、図6の関係から伝熱抵抗が1.1×105 K/W・mm2以上2.2×105 K/W・mm2 以下にすればクエンチの発生を避けられる。このように、コイルの仕様をもとに発熱量を推定し、それに応じて伝熱抵抗を設定するとよい。磁場を増加させた場合、線材の温度裕度が低下するため、それを考慮した伝熱抵抗とする。
このように超電導コイル2と巻枠1との間の摺動部に摩擦材4を挿入すると共に、十分大きな伝熱抵抗をもつ、熱ひずみを調整したスペーサ5,6を挿入することにより、高磁場を発生する負荷の大きい超電導コイルにおいても、クエンチのない安定した状態で使用することができる。
このような超電導コイルの全体を、超電導コイル2を超電導転移温度以下の温度に保つために、液体ヘリウムなどの極低温の液体中に浸漬させる。このように冷却することにより超電導コイルが超電導状態となり、そこに電流を流すことにより磁場を発生させる。
このように極低温下においては、各部材の比熱が著しく小さくなるため、わずかな発熱で超電導状態から常電導状態に転移するクエンチが生じる可能性がある。
極低温下の超電導コイルでクエンチが生じる原因としては機械的擾乱が挙げられる。超電導コイルを含浸している樹脂の割れや、超電導コイルを構成している部材同士、あるいは、その周辺の部材との間で相対的変位が発生した場合の摺動などの機械的擾乱が起こると、それに伴い発熱が生じクエンチを引き起こす。
このような樹脂の割れや摺動は、超電導コイルを冷却することにより、超電導コイルを構成する各部材が熱収縮し、それぞれ収縮率が異なるため、含浸樹脂が熱応力により割れて、構成部材間で剥離が生じ、さらに励磁時に電磁力を受けることにより、剥離が進展し、構成部材間で相対的な変位が生じるために起こると考えられる。
このようなクエンチに対して、本形態のものであれば、それを低減することができる。
なお、本形態では、電磁力を受けた場合の対策の一つとして、超電導コイル2に張力が残り、巻枠1に対して滑らないように、予め一定以上の張力を負荷した状態で巻き付ける方法を採用してもよい。
以下で、超電導コイルの巻線張力について、工程毎の変化を説明する。
まず、最初に巻線機を用いて、超電導コイル2を所定の張力で巻枠1に巻き付ける。
巻線終了後に含浸樹脂3で含浸する際には、含浸樹脂3を硬化させるため、高温で一定時間保持する必要がある。通常、用いられるエポキシ樹脂では、100℃前後の温度で数時間から数十時間保持される。この時に、高温クリープにより張力は低下する。このようにして含浸した超電導コイル2を超電導コイル装置に組み込み、組み立てを終了する。
その後、超電導コイル2を冷却して使用するが、冷却時には超電導コイル全体が収縮し、張力が変化する。なお、巻枠1として、超電導コイル2に比較して線膨張係数の小さいステンレス鋼などの非磁性金属を用いた場合は、張力の低下は少ない。
さらに、このような超電導コイルを励磁した場合、電磁力により外周方向にフープ力が発生するような条件で使われる場合がある。この時、励磁前の巻線張力がフープ力よりも大きければ拘束されたままである。しかし、フープ力のほうが大きい場合、張力に抗して変位が生じ、接触面で起きる摺動発熱によりクエンチしてしまう可能性がある。
そこで、本形態でも、励磁時に剥離,摺動が起こらないように、冷却時の残った張力が電磁力よりも大きくなるように設計することが好ましい。
これらにより、超電導コイルが熱収縮や電磁力により動き、それに伴う発熱によりクエンチが生じることが低減される。
図4は、本実施例における巻枠1,摩擦材4,スペーサ5の関係を示したものである。
図4は、巻枠1の摺動面の粗さRy1 よりも摩擦材4の厚さを大きくすることを示している。摩擦材4は、薄いシート状のものが使われることが多いが、この厚さが摺動面の凹凸よりも小さいと、面圧が負荷された場合に部分的にシートが凹凸に入り込んで、巻枠1,摩擦材4、および、摩擦材4と絶縁材とが接触しない部分が生じ、接触面積が減少する。そのため接触面圧が上昇し、摩擦材4が過度に圧縮され損傷して、低摩擦構造とならないおそれがある。
また、スペーサ5の表面粗さRy2 にも凹凸が存在する場合には、巻枠1と絶縁材との両者の凹凸の最大値を加えた値よりもスペーサ5のシート厚さを大きくする必要がある。
このような構造にすることにより、摺動部の摩擦係数を小さくでき、摺動時の発熱量を低減できるため、絶縁材の厚さを小さくすることができ、低コストで小型の超電導コイルを製作することができる。
図2は、本形態の他の実施例を示す断面図である。
図2に示した符号1〜6は、図1と同様である。本実施例では超電導コイル2の外周面には超電導コイル2を動きにくくするために、バインド7を配置する構造とする。超電導コイル2とバインド7との間には、実施例1の超電導コイル2の内周側に形成した同様な摩擦材4とシート状のガラス強化材および絶縁材を一層ずつ積層したスペーサ5を配置し、スペーサ5,6と超電導コイル2とを一体にするために含浸樹脂3で含浸する。
また、スペーサ5,6の構造は実施例1で示したような絶縁抵抗を満たす構造とする。このような構造とすることで、電磁力により超電導コイル2とバインド7との間の面圧が上昇しても、バインド7とスペーサ6との間で摺動させることができ、超電導コイル2に伝わる熱量を抑制しクエンチの発生を避けることができる。
このように、外周側にはコイルを動きにくくするために、バインドを巻き付ける構造が適用されることも好ましい。
こうした場合、巻枠1と超電導コイル2との間、あるいは、バインド7と超電導コイル2との間の摩擦力を低減するために、摩擦材4を挿入することが好ましい。
図3は、本形態の他の実施例を示す断面図である。
図3に示した符号1〜4は図1と同様である。
本実施例では、磁力によって超電導コイルに作用する力の方向の一例を示した。
超電導コイルは用いる場所や機能によって、磁力によって超伝導コイルに作用する力の方向が異なる。
その力が外周側Aに働く場合には、超電導コイル2を巻枠1に巻きつける際に張力を付与して、磁力が働いても動かないようにしているが、前述したような高磁場化により張力よりも磁力が大きくなり、それに伴って外周側に変位が生じる。
それを防ぐために、外周側にバインド7が形成されるが、その面には面圧が生じることとなり、超電導コイルに垂直方向に働く磁力により変位した場合は発熱の要因となる。そのためこのように磁力が張力を上回って外周側に面圧を生じさせる場合は、外周側のスペーサ5bの絶縁抵抗を大きくし、摺動発熱が導体に伝わりにくい構造とすると良い。
なお、絶縁抵抗を大きくするためには、その厚さを厚くすればよい。
逆に、張力のほうが大きく内周側の面圧が高くなる場合には、内周側のスペーサ5aの絶縁抵抗を大きくすることが好ましい。
また、フランジ側のスペーサについても、磁力によって超伝導コイルが作用する力の方向Bにあるスペーサ6aを、反対側にあるスペーサ6bよりも絶縁抵抗を高くするとクエンチの発生を抑えることができる。
磁力の作用によって超電導コイルが受ける力の方向と逆のスペーサの適正値は以下のように考えられる。
まず、外周側に磁力が働く場合について示す。励磁前の内周側にかかる面圧は超電導コイル2の張力によって負荷されるものである。超電導コイル2は、塑性変形を生じると電気的特性が低下したり、巻き付け時に所定の位置からずれたりして超電導コイルとしての性能の低下を引き起こす原因となる。このため、超電導コイル2の耐力以下となるような張力で巻き付けることが必要となる。
超電導コイル2の導体性能を十分確保するため、超電導コイル2の最大塑性変形量を耐力の10%に制限した場合、一般的な超電導コイル2で負荷できる応力は、約100MPaである。超電導コイルの半径をr、超電導コイル断面の幅をt、内周側にかかる面圧をPとし、簡易的に超電導コイルを薄肉円筒と考えると、以下の式でPが求められる。
σ=rP/t
核磁気共鳴イメージング装置に用いられる超電導コイルを考えた場合、装置の設置場所の制約から、超電導コイルの半径は1000〜2000mm程度が一般的である。超電導コイルの断面の幅を100mm、σを100MPaとすると面圧Pはおおよそ5〜10MPaとなる。
従って、外周側に磁力が働く場合には、張力による面圧の摩擦発熱に対してクエンチを起こさない絶縁抵抗以上となるようにすればよい。
図6の例で考えると1.1×104 K/W・mm2以上であればよい。
磁力のかかる外周側については、実施例1に示したような伝熱抵抗を満たす絶縁材を構成すればよい。
一方、内周側に磁力が働き、外周側に接触しない場合には、外周側にはスペーサを配置しなくてもよい。
また、フランジ側には、巻き付け時に張力に応じた側圧がかかるため、磁力が働かない面は最低限この側圧での摩擦発熱について検討すればよい。
このように負荷される面圧の大きさに応じてスペーサ5,6を調整することにより、材料を効率よく用いることができ低コスト化が図れる。
このようにすることにより、内外周のいずれか一面、および、フランジ側のいずれか一面に配置するスペーサ5の絶縁抵抗を好適に配置することができる。
図5は、本形態の他の実施例を示した断面図である。
本実施例では、巻枠1の摺動面の熱伝導率がスペーサ5,6の熱伝導率よりも高い物を用いる場合を示している。巻枠1を繊維強化プラスチックなどの熱伝導率が低い材料で構成する場合には、図5のように巻枠1とスペーサ5,6との間に熱伝導率の高い材料で製作した冷却板8を挿入することが好ましい。
このような部材は、アルミニウムなどの非磁性金属や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などで作成するとよい。このような構成にすることにより、摺動発熱は両者へ拡散するが、そのとき熱伝導率が高い巻枠1側または冷却板8側に多くの熱が伝わる。
一方、スペーサ5,6を介して超電導コイル2に入る熱は減少するため、クエンチに対する裕度が向上する。
なお、図5に使用された他の符号は、図2に用いられたものと同様である。
本発明は、超電導磁石を構成する超電導コイルに係り、将来、益々電磁力が大きくなると予想される超電導磁石に利用可能な超電導コイルに関するものである。
本形態の実施例を示す超電導コイルの断面図である。 本形態の他の実施例を示す超電導コイルの断面図である。 本形態のさらなる他の実施例を示す超電導コイルの断面図である。 本形態の実施例における巻枠,摩擦材,スペーサとの関係を示した断面図である。 本形態のさらなる他の実施例を示す超電導コイルの断面図である。 本形態の実施例における超電導コイルの構成の時の伝熱抵抗と限界入熱量との関係を示した図である。 本形態の実施例における摩擦材を挿入した場合の接線力と変位との関係を示した図である。
符号の説明
1…巻枠、2…超電導コイル、3…含浸樹脂、4…摩擦材、5,6…スペーサ、7…バインド、8…冷却板。

Claims (13)

  1. 内周面とフランジ側の平面とを有する巻枠と、前記巻枠に巻きつけられた超電導導体と、を有する超電導コイルにおいて、
    前記巻枠と前記超電導導体との間には、前記巻枠と前記超電導導体との間を絶縁するための絶縁材を具備するスペーサが配置され、
    前記スペーサは、前記内周面には、複数の絶縁材がシート状に積層されて形成され、前記フランジ側の平面には、予め成型した板状の絶縁材が形成されることを特徴とする超電導コイル。
  2. 請求項1に記載の超電導コイルにおいて、
    前記超電導コイルの外周面にバインドを有し、前記バインドと前記超電導導体との間には、前記バインドと前記超電導導体との間を絶縁するための絶縁材を具備するスペーサが配置され、
    前記スペーサは、複数の絶縁材がシート状に積層されて形成されることを特徴とする超電導コイル。
  3. 請求項2に記載の超電導コイルにおいて、
    前記巻枠と前記超電導導体との間の内周面側、および、前記バインドと前記超電導導体との間の外周面側、に配置される前記スペーサのうち、磁力によって前記超電導コイルに作用する力が働く方向にある内周面または外周面のいずれか一面に配置されるスペーサの絶縁抵抗を、他面に配置されるスペーサの絶縁抵抗より、大きくすることを特徴とする超電導コイル。
  4. 請求項1に記載の超電導コイルにおいて、
    前記巻枠の一方のフランジ側の平面と前記超電導導体との間、および、前記巻枠の他方のフランジ側の平面と前記超電導導体との間、に配置される前記スペーサのうち、磁力によって前記超電導コイルに作用する力が働く方向にあるいずれか一方に配置されるスペーサの絶縁抵抗を、他方に配置されるスペーサの絶縁抵抗より、大きくすることを特徴とする超電導コイル。
  5. 請求項1に記載の超電導コイルにおいて、
    前記巻枠と前記超電導導体との間には、さらに、前記巻枠と前記超電導導体との間の摩擦係数を低減するための摩擦材が形成されることを特徴とする超電導コイル。
  6. 請求項2に記載の超電導コイルにおいて、
    前記バインドと前記超電導導体との間には、さらに、前記バインドと前記超電導導体との間の摩擦係数を低減するための摩擦材が形成されることを特徴とする超電導コイル。
  7. 請求項1に記載の超電導コイルにおいて、
    前記スペーサは、ガラス繊維からなる強化層と絶縁材とを、積層した構造であることを特徴とする超電導コイル。
  8. 請求項7に記載の超電導コイルにおいて、
    前記スペーサは、前記スペーサの最表面にガラス繊維からなる強化層が形成されることを特徴とする超電導コイル。
  9. 請求項1に記載の超電導コイルにおいて、
    前記スペーサと前記超電導導体とは、樹脂含浸により一体化されていることを特徴とする超電導コイル。
  10. 請求項1に記載の超電導コイルにおいて、
    前記スペーサは、室温から極低温までの繊維方向の熱ひずみが、−0.3〜−0.5%であることを特徴とする超電導コイル。
  11. 請求項5に記載の超電導コイルにおいて、
    前記巻枠の摺動部の摺動面の粗さを前記摩擦材の厚さより小さくすることを特徴とする超電導コイル。
  12. 請求項1に記載の超電導コイルにおいて、
    前記巻枠の摺動部の熱伝導率が、前記スペーサの熱伝導率よりも高いことを特徴とする超電導コイル。
  13. 請求項1に記載の超電導コイルを極低温下において使用することを特徴とする超電導コイル装置。
JP2006034645A 2006-02-13 2006-02-13 超電導コイル Active JP4788377B2 (ja)

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