JP2007211379A - 横編機の編地引き下げ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 誘導モータを使用して、拘束状態でも安定なトルクを発生させることができる横編機の編地引き下げ装置を提供する。
【解決手段】 インバータ回路25は、巻下げモータ9および編み出しモータ13の誘導モータに与える駆動電力の電圧Vおよび周波数fを変更して、拘束状態を含む領域で誘導モータのトルクおよび回転速度をそれぞれ変更可能である。編地4の編成動作中に、機構の摩擦や編糸に生じる瘤などで負荷変動があっても、回転速度に張力変動の影響を受けにくいトルクと回転速度との関係特性を実現することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、横編機で前後の針床が対向する歯口の下方に設けられる編地巻下げ装置や編み出し装置などの横編機の編地引き下げ装置に関するものである。
従来から、前後の針床が対向する歯口で編地を編成する横編機では、たとえば特許文献1に開示されているような編み出し装置や巻下げ装置が用いられている。編み出し装置は、編地の編成開始時から編地を歯口の下方に引き下げるために用いられる。編地の編成が進行すると、編地の引き下げは、巻下げ装置によって行われるようになる。
従来の横編機の編地の編み出し装置や編地の巻下げ装置では、駆動にトルクモータを使用している。トルクモータは、交流電力を与えて回転させ、位相制御による電圧調整で出力軸のトルクを変更可能である。編地の引き下げでは、回転速度が0rpm付近の拘束制御を含む一定のトルクを維持することによって、安定した編地の編成が可能になる。
しかしながら、トルクモータの電圧制御では、周波数の制御は行わないので、機構の摩擦や編糸に生じる瘤などの要因で張力が変動すると、回転速度が変動しやすい。このため、拘束状態や低回転速度の領域での制御は困難となる。また、トルクモータは、比較的高コストであるとともに、大型であるために収納する横編機のコストをさらに上昇させる。
一般に、誘導モータは、トルクモータに比較して低コストで小型であることが知られている。しかし、誘導モータをトルクモータと同様に位相制御しても、トルク制御を行うことはできず、高トルクも得られない。
誘導モータのトルク制御は、インバータを使用すれば可能となる。たとえば特許文献2には、走行用または昇降用の搬送機械を駆動するための誘導モータに対し、インバータ装置を使用して可変速度制御を行う際に、拘束状態を検知すると、誘導モータに流れる電流が電流制限値を超過しないで十分なトルクが発生するように周波数を切り換える技術が開示されている。ただし、この技術は移動を主とする搬送機械で、安定な当て止め停止状態に切り換えることが目的であり、拘束状態で安定なトルクを発生させることまでは考慮されていない。
特公平01−41740号公報 特許第3139916号公報
本発明の目的は、誘導モータを使用して、拘束状態でも安定なトルクを発生させることができる横編機の編地引き下げ装置を提供することである。
本発明によれば、歯口の下方から編地を引き下げる横編機の編地引き下げ装置は、誘導モータとインバータと、設定器とを含む。編地の引き下げ駆動を誘導モータが行うので、トルクモータを使用する場合に比較して、横編機のコストを低減することができる。インバータは、誘導モータに与える駆動電力の電圧および周波数を変更して、拘束状態を含む領域で誘導モータのトルクおよび回転速度をそれぞれ変更可能である。編地の編成動作中に、機構の摩擦や編糸に生じる瘤などで負荷変動があっても、張力変動の影響を受けにくいトルクと回転速度との関係特性を実現することができる。設定器では、インバータの電圧および周波数を、編地の引き下げ張力に対応させて設定する。編地の引き下げ張力を指定して、拘束状態でも安定なトルクを発生させ、誘導モータによるトルク制御を容易に行うことができる。
また本発明によれば、設定器で設定するインバータの電圧および周波数の範囲は、所望のトルクを維持しても誘導モータの発熱が許容範囲内となるように、予め求められている。横編機の使用に際しては、予め求められている範囲内で容易に電圧と周波数との設定を行うことができる。引き下げ張力に対応させる電圧および周波数の関係は、テーブルデータとして有する。所望の引き下げ張力に対して、データテーブルを参照して、対応する電圧と周波数との組合せを容易に求めることができる。
また本発明によれば、編地の編成開始時には編地の編み出し装置で編地を引き下げ、さらに編地の巻下げ装置で編地を連続的に引き下げることができる。編み出し装置と巻下げ装置とに、それぞれ誘導モータが設けられるので、編成開始時には編み出し装置のみを駆動し、編地の連続的な引き下げは巻下げ装置のみを駆動して行うことができる。編み出し装置および巻下げ装置の各誘導モータに印加する電力の電圧と周波数とを編地の引き下げ張力に応じてそれぞれ設定し、円滑に編み出しから巻下げに移行させることができる。
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
図1は、本発明の一実施例である横編機1に設けられる編地引き下げ装置の概略的な電気的構成を示す。編地引き下げ装置は、横編機1で前後の針床2が対峙する歯口3の下方に設けられ、歯口3で編成される編地4を引き下げるための編地巻下げ装置5および編地編み出し装置6を備える。
編地巻下げ装置5は、編地4の表裏両側を2つの巻下げローラ7で挟んで連続的に巻下げる。2つの巻下げローラ7は、開閉機構8で間隔を開閉することができる。開閉機構8で巻下げローラ7間を閉じている状態での編地4を巻下げるための駆動は、巻下げモータ9によって行う。巻下げモータ9としては、誘導モータを使用する。
編地編み出し装置6は、編地4の編成開始時に、編み出し板10の上端を昇降機構11で歯口3に上昇させ、針床2で編成が開始された編地の編み端を係止する。編み出し板10を上昇させている間は、編地巻下げ装置5の巻下げローラ7を、開閉機構8で開いておく。編地4の編成の進行とともに、昇降機構11で編み出し板10を下降させる。編み出し板10が巻下げローラ7の位置よりも下方に引き下げられて、編地4が巻下げローラ7間を通るようになれば、開閉機構8で巻下げローラ7間を閉じる。編み出し板10に係止されている編地4は、目外し機構12で外す。昇降機構11での編み出し板10の昇降は、編み出しモータ13で駆動する。編み出しモータ13としては、誘導モータを使用する。
誘導モータである巻下げモータ9および編み出しモータ13は、コントローラ20による制御下で駆動する。コントローラ20は、編成データ入力部21、データ処理部22、引き下げ張力設定部23、V/fデータテーブル24およびインバータ回路25を含む。編成データ入力部21には、編地4を編成するための編成データが入力される。編成データは、予めデザインシステムなどで作成され、オンラインで、または記録媒体に記録されて入力される。データ処理部22は、編成データに基づいて、横編機1の各部を制御するための処理を行う。引き下げ張力設定部23は、編地4を引き下げるための張力を設定する。V/fデータテーブル24には、編地の引き下げ張力に対し、インバータ回路25に設定する電圧Vおよび周波数fの組合せが設定されている。電圧Vおよび周波数fの組合せは、所望のトルクを維持しても、巻下げモータ9および編み出しモータ13の誘導モータからの発熱が許容範囲内となるように、予め求められている。
インバータ回路25は、巻下げモータ9および編み出しモータ13の誘導モータに与える駆動電力の電圧Vおよび周波数fを変更して、拘束状態を含む領域で誘導モータのトルクおよび回転速度をそれぞれ変更可能である。編地4の編成動作中に、機構の摩擦や編糸に生じる瘤などで負荷変動があっても、回転速度に張力変動の影響を受けにくいトルクと回転速度との関係特性を実現することができる。
引き下げ張力設定部23は、インバータ回路25の出力電力の電圧Vおよび周波数fを、編地4の引き下げ張力に対応させて設定する設定器として機能し、操作パネル30を有する。操作パネル30には、操作部31および表示部32が設けられる。表示部32に表示される範囲内で、編地4の引き下げ張力を操作部31で指定して、誘導モータによるトルク制御を容易に行うことができる。
図2aは、図1の巻下げモータ9について、巻下げ張力と回転速度との関係を示す。実線で示すうち、Aは電圧Vが最大、周波数fがある周波数αであるときの特性を示す。Bは、電圧VをAの最大値から低下させているときの特性を示す。Cは電圧Vが最大で、周波数fがαよりも低いときの特性を示す。破線のDは、トルクモータを電圧Vが最大となる条件で使用するときの特性を、参考用として示す。
Aでは、機構の摩擦や編糸の瘤などの外的要因による巻下げ張力の変動による回転速度変動が少ない。Bでは、外的要因による巻下げ張力の変動による回転速度変動は少ない。電圧制御によって、巻下げ張力を調整可能であることが判る。Cでも、外的要因による巻下げ張力の変動による回転速度変動は少ない。回転速度が0rpm付近を維持する特性にすれば、拘束制御を実現することができ、任意のトルクを出力することが可能となる。
Aに示す特性とDとを比較すると、Aの方が回転速度の変動を低速側の狭い範囲に調整可能であることが判る。AとBとから、周波数fを変えずに、電圧Vを低下させることによって、巻下げ張力が変化していることが判る。またAとCとから、電圧Vを最大に保ち、周波数fを低下させることによって、回転速度が変化していることが判る。すなわち、電圧制御で編地巻下げ装置5の巻下げ張力を調整可能であり、周波数制御で回転速度を調整可能であることが判る。このため、周波数fを変更して、外的要因による回転速度変動の影響を受けにくい特性にすることも可能である。また、一定の回転速度を維持する条件で、任意のトルクを出力させることもできる。
図2bは、トルクモータの位相制御での巻下げ張力と回転速度との関係を示す。トルクモータは、トルクが制御可能であるとされているけれども、編地巻下げ装置での巻下げ張力は必ずしも一定にはならない。Dは、電圧Vが最大での特性を示す。Eは、電圧Vが50%となるときの特性を示す。Fは、電圧Vをさらに小さくするときの特性を示す。Gは、トルクモータに替えて誘導モータを電圧Vが最大となる条件で位相制御するときの特性を示す。
D,E,Fを比較すると、電圧Vを低下させて低トルクとすることで、見かけ上の低回転速度駆動が実現されている。電圧Vで制御するので、巻下げ張力を調整可能となる。ただし、張力変動による回転速度への影響は大きい。周波数fは制御することができないので、すべりによる若干の変化はあっても、回転速度の調整を行うことはできない。外的要因による巻下げ張力の変動により、回転速度が変化してしまうので、特に、拘束させる場合などに影響が出る。GとDとを比較すると、誘導モータでは最大トルクがトルクモータよりも劣るため、巻下げ装置には不適であることも判る。
図2cは、一般的な誘導モータのインバータ制御でのトルクと回転速度との関係を示す。誘導モータのインバータ制御では、電圧Vと周波数fとの調整によって、Hとして示すように、一定回転速度を維持しつつ任意トルクを得ることができる。また、Iとして示す中間の特性を経て、Jとして示すように、一定トルクを維持して、任意回転速度を得ることもできる。しかし、高回転速度と高トルクとの両方を満たす出力には適さないことが判る。
図3aは、図1に示す操作パネル30の表示部32での巻下げ張力設定画面の一例を示す。針本数は、横編機1の針床2に設けられる編針のうち、編成に使用するものの数を設定する。すなわち、”min”では、最小編幅が設定される。また、”max”では、最大編幅が設定される。巻下げ張力は、巻下げデータとして設定される。巻下げデータの最小値”min”は、最小編幅での巻下げ張力として設定される。巻下げデータの最大値”max”は、最大編幅での巻下げ張力として設定される。
図3bは、図1に示す操作パネル30の表示部32での巻下げ張力設定画面の他の例を示す。図3bでは、図3aよりも簡潔に表示され、編幅との関連は表示しないで、巻下げデータのみを0〜100までの間で、たとえば60として設定する。
図3aや図3bでは、編地巻下げ装置5の巻下げ張力のみを設定しているけれども、設定された巻下げ張力は、編地編み出し装置6の編み出し板10を下降させる張力としても設定されるようにしておく。これによって、編地編み出し装置6による編み出しから、設定された張力で編地4の引き下げを行い、編地巻下げ装置5による連続的な編地4の巻下げまで、引き下げ張力の変動が少ない状態で編地4の引き下げを行わせることができる。
ただし、横編機1の編地引き下げ装置としては、必ずしも編地巻下げ装置5および編地編み出し装置6の両方を設ける必要はない。編成する編地4のコース数が少なく、長さが短くなるような場合は、編地編み出し装置6のみが設けられていればよい。また、編地4の長さが長くなれば、自重で引き下げるようにすることもできる。さらに、編み出しモータ13で駆動する編地編み出し装置6は用いずに、編み出し板10を重りで引き下げ、編地巻下げ装置5に達したら、巻下げモータ9で巻下げるようにしてもよい。
本発明では、巻下げモータ9または編み出しモータ13の一方を用いる場合も、両方を用いる場合も、誘導モータを使用し、インバータ回路25から出力する電力の電圧Vおよび周波数fを引き下げ張力に応じて調整することによって、適切に編地4の引き下げを行うことができる。
本発明の一実施例である横編機の編地引き下げ装置の概略的な電気的構成を示すブロック図である。 図2aは図1に示す編地巻下げ装置5の巻下げモータ9のインバータ制御での巻下げ張力と回転速度との関係を示すグラフ、図2bはトルクモータの位相制御での巻下げ張力と回転速度との関係を示すグラフ、図2cは一般的な誘導モータのインバータ制御でのトルクと回転速度との関係を示すグラフである。 図3aは図1に示す操作パネル30の表示部32での巻下げ張力設定画面の一例を示す図、図3bは図1に示す操作パネル30の表示部32での巻下げ張力設定画面の他の例を示す図である。
符号の説明
1 横編機
3 歯口
4 編地
5 編地巻下げ装置
6 編地編み出し装置
7 巻下げローラ
9 巻下げモータ
10 編み出し板
13 編み出しモータ
20 コントローラ
23 引き下げ張力設定部
24 V/fデータテーブル
25 インバータ回路
30 操作パネル
32 表示部

Claims (3)

  1. 歯口の下方から編地を引き下げる横編機の編地引き下げ装置において、
    編地の引き下げ駆動を行う誘導モータと、
    誘導モータに与える駆動電力の電圧および周波数を変更して、拘束状態を含む領域で誘導モータのトルクおよび回転速度をそれぞれ変更可能なインバータと、
    インバータの電圧および周波数を、編地の引き下げ張力に対応させて設定する設定器とを、
    含むことを特徴とする横編機の編地引き下げ装置。
  2. 前記設定器で設定する前記インバータの電圧および周波数は、所望のトルクを維持しても前記誘導モータの発熱が許容範囲内となるように予め求められているテーブルデータから選択されることを特徴とする請求項1記載の横編機の編地引き下げ装置。
  3. 前記編地引き下げ装置は、
    編成開始時に編地を編成位置から引き下げる編地の編み出し装置と、
    編み出し装置で引き下げる編地を巻下げる編地の巻下げ装置とを備え、
    前記誘導モータは、編み出し装置と巻下げ装置とにそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1または2記載の横編機の編地引き下げ装置。
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