JP2007211300A - 金属めっき材 - Google Patents

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Abstract

【課題】下地金属に金属めっきを施して防錆性を高めるとともに、導電性,EMI性,溶接性を向上させた金属めっき材を提供する。
【解決手段】下地金属の表面に金属めっきを有する金属めっき材において、金属めっきが突起物を有し、その突起物は金属めっきと同一の成分を有しかつ単一の金属相からなる金属めっき材である。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子機器,家電製品,建材,自動車等で使用される金属部材の防錆効果を高める金属めっき材に関し、金属めっきと同一成分の突起物を有することによって導電性,電磁波シールド性(いわゆるEMI性),溶接性を向上させるとともに、さらに金属めっきの表面に被覆層を形成して防錆効果を向上する金属めっき材に関するものである。
種々の機器類や建築構造物等で使用される金属製の様々な部材の腐食を防止するために、その部材の表面に防錆性を有する金属めっきを形成する技術が従来から種々実用化されている。ここではその部材を構成する金属を、金属めっきと区別するために、下地金属と記す。また、下地金属に金属めっきを施したものを金属めっき材と記す。
一般に、金属めっき材は下地金属に金属めっきを施して使用されるが、特に顕著な防錆性が要求される場合は、金属めっきの表面に化成処理(たとえばクロメート処理等)を施したり、金属めっきの表面に無機被膜や有機被膜からなる被覆層を形成することによって防錆効果を高めて使用される。
クロメート処理によって形成される被膜(以下、クロメート被膜という)はサブミクロン程度の厚さで優れた防錆性が得られるばかりでなく、導電性や溶接性にも優れている。ところが、クロメート被膜はクロムを含有するという問題がある。つまりクロム、特に6価クロムは有害物質として従来から種々の規制を受けており、とりわけ欧州連合(いわゆるEU)が制定した有害化学物質規制に6価クロムが指定されたことを受けて、クロメート被膜を有する金属めっき材の使用量が減少している。
そこで、クロムを含有しない被膜(以下、クロメートフリー被膜という)を金属めっきの表面に形成して防錆効果を高める技術が検討されている。しかし、クロメートフリー被膜の厚さをサブミクロン程度に制限しつつクロメート被膜と同等の防錆性を発揮することは困難である。一方、金属めっき材の防錆性を確保するためにクロメートフリー皮膜の厚さを増大させると、導電性や溶接性が低下する。したがって、防錆性,導電性,溶接性を兼ね備えたクロメートフリー被膜の実用化を達成するためには、厚みがサブミクロンであっても防錆性が優れるクロメートフリー被膜を形成する技術の開発等の課題が残されている。
また、金属めっきの厚さは数μm〜数十μmであり、下地金属の表面の凹凸(たとえば表面の粗さ,うねり等)に沿って金属めっきの表面にも凹凸が生じる。このような表面の凹凸は金属めっき材の防錆性,導電性,溶接性に悪影響を及ぼすので、凹凸のある下地金属に金属めっきを施すにあたって、平坦な表面を有する金属めっきを形成する技術を開発する必要がある。
下地金属の凹凸は、その製造工程で不可避的に生じるものの他に、専用の設備(たとえばショットブラスト等)を用いて付与されるものがある。たとえば下地金属が鋼板である場合は、レーザーダルロールと呼ばれる特殊な圧延用ロールを用いて、鋼板の表面に所定の寸法を有する凸部を一定の間隔で分布させる自動車用鋼板がある。この自動車用鋼板は高鮮映性鋼板と呼ばれ、車体の塗装を鮮明な光沢に仕上げることができる。なお、レーザーダルロールは、レーザービームを用いてロールの表面に所定の寸法の凹部を設け、かつその凹部を一定の間隔で分布させた圧延用ロールである。レーザーダルロールで鋼板を圧延することによって、鋼板の表面に所定の寸法の凸部が一定の間隔で生じる。
特許文献1には、凹部を有する圧延用ロールで鋼板を圧延し、表面に凸部が分布した鋼板を得た後、その鋼板に表面処理を施すことによって耐食性と導電性を高める技術が開示されている。
鋼板のみならず金属材を圧延する際には、圧延用ロールや搬送用ロールの間で金属材に張力が作用する。そのため、特許文献1に開示されたような圧延によって生じた凸部は、次工程に送給されるまでに、その高さが徐々に減少していく。さらに、圧延した金属材をコイルに巻き取る場合は、金属材が互いに押圧されるので、凸部が変形するのは避けられない。したがって特許文献1に開示されたような圧延用ロールで金属材の表面に凸部を生じさせる技術は、圧延した後の凸部形状の変化を考慮して、圧延用ロールに設ける凹部の形状を設定する必要がある。しかも、圧延から一連の工程を経た後で金属材の表面の凸部が所定の形状を維持するように、厳格な操業管理が要求されるので、金属材の製造コストが上昇するのは避けられない。
このようにして所定の形状の凸部を有する金属材を製造しても、その金属材(すなわち下地金属)に金属めっき、さらには各種被膜層等の表面処理を施すことによって、凸部の形状(とくに角部の形状)にダレが生じる。つまり金属めっき等の被覆剤が下地金属の凸部間の基底部に堆積することによって、凸部の高さが減少し、金属めっき材の導電性や溶接性が損なわれる。
特開2005-139551号公報
本発明は上記のような問題を解消し、下地金属に金属めっきを施して防錆性を高めるとともに、導電性,EMI性,溶接性を向上させた金属めっき材を提供することを目的とする。
本発明は、下地金属の表面に金属めっきを有する金属めっき材において、金属めっきが突起物を有し、その突起物は金属めっきと同一の成分を有しかつ単一の金属相からなる突起物を有する金属めっき材である。
本発明の金属めっき材においては、突起物が下地金属表面1mm2あたり1〜3000個の密度で分布することが好ましい。また、突起物の最先端部の高さが突起物間の基底部に位置する金属めっきの表面から0.3〜1000μmの範囲内を満足し、かつ突起物の横断面の最大幅が0.3〜600μmの範囲内を満足することが好ましい。さらに、金属めっきの表面に無機被膜、有機被膜、または無機有機複合被膜ならびにこれらの積層被膜からなる被膜層を有し、突起物の先端部が被膜層の外表面から突出することが好ましい。金属めっきは、亜鉛めっきであることが好ましい。
本発明によれば、下地金属に金属めっきを施して防錆性を高めるとともに、導電性,EMI性,溶接性を向上させた金属めっき材を得ることができる。
本発明の金属めっき材は、板状の下地金属のみならず、管状,線状の下地金属に金属めっきを施したものであり、その下地金属は鋼材の他にアルミ材,銅材,チタン材等の金属材料を使用する。ただし、鋼材を下地金属として金属めっきを施した金属めっき材が安価で、多様な用途に使用されている。
また、下地金属として単体の金属材料を使用すれば、金属めっき材の製造コストを低減することが可能である。ただし、金属めっき材の用途に応じて必ずしも単体の金属材料を下地金属とする必要はない。たとえばプラスチック等の化学樹脂や陶磁器,ガラス等のセラミックスを所定の形状に成形した後、その外表面にPb,Ni,Cr,Cu,Co,Al,Ti,Sn,Fe,Mg,P等の金属あるいはそれらの合金の化学めっきを施したものを下地金属とすることもできる。
このような下地金属に脱脂および/または酸洗を施した後、下地金属の表面に金属めっきを施す。脱脂と酸洗は、いずれか片方のみを行なっても良いし、あるいは両方を併用しても良い。
また、金属めっきを施す前、脱脂および/または酸洗を施した後に、表面調整を施す。表面調整は、表面調整処理液に下地金属を浸漬して行なう。この表面調整処理液は、Cuイオンを含有する水溶液を用いる。Cuイオンを含有する表面調整処理液を用いて表面調整することによって、本発明の特徴である突起物を形成することができる。表面調整処理液に添加するCu源は可溶性のCu塩であれば良く、対イオンの種類を問わない。
また、脱脂液あるいは酸洗液にCuイオンを添加しても良く、突起物形成効果が得られる。この場合は表面調整工程を省略しても良いし、Cuイオンを添加しない表面調整処理液を用いて表面調整しても良い。
Cuイオンの添加量は、Cu原子濃度に換算して0.0001〜1.0質量%とすることが好ましい。Cuイオンの添加量がこの範囲の下限値未満では、後述する突起物が金属めっきの表面に形成されない。一方、上限値を超えると、突起物が金属めっきの表面に形成されても金属めっきの密着性が劣るので好ましくない。また、さらに金属めっき液中に添加してめっきを施しても突起物が形成されるが、添加量の上限値を超えると、金属めっきの耐食性が劣るので好ましくない。
金属めっきの方法は、特定のめっき技術に限定せず、電気めっき等の従来から知られている技術を使用する。また金属めっきの種類は特に限定せず、従来の技術でめっきが可能な金属を使用する。
このようにしてCuイオンを添加した表面調整処理液または脱脂液,酸洗液を使用して、表面調整または脱脂,酸洗を行なった下地金属に金属めっきを施すことによって、金属めっきと同一の成分を有する突起物が、金属めっきと同時にその表面に形成される。したがって突起物は単一の金属相からなり、金属めっきと一体的に形成される。
図1は、下地金属に施された金属めっきの表面を走査型電子顕微鏡(いわゆるSEM)で観察(500倍)して、突起物1の形状と分布状況を描いた平面図である。図2は、SEMでさらに拡大して観察(5000倍)した突起物1の形状を描いた斜視図である。図3は、SEMで観察(5000倍)した突起物1の形状を描いた断面図である。
これらの図から明らかなように、本発明の金属めっき材の金属めっきと突起物とは一体的に形成されており、かつ突起物は単一の金属相からなり、フォトレジストによるマスキング技術等を利用して金属めっき上に金属材料を積層した突起物とは異なる。
本発明の金属めっき材に形成される突起物の分布密度が、下地金属表面1mm2あたり1個以上であると、金属めっき材の導電性,EMI性や溶接性の向上が顕著となる。一方、1mm2あたり3000個以下であると、金属めっき材の防錆性が特に優れる。したがって、突起物の分布密度は金属めっき1mm2あたり1〜3000個の範囲内が好ましい。より好ましくは5〜2000個である。さらに10〜1000個が一層好ましい。
突起物の高さを0.3μm以上とすると、後述する被膜層を形成したときに、突起物が被膜層から突出し、特に優れた導電性EMI性や溶接性を得ることができる。一方、1000μm以下とすると、突起物が崩壊することがなく、加工成形時に金型に付着して異物となり傷付きの原因となることがない。したがって、突起物の高さは0.3〜1000μmの範囲内が好ましい。より好ましくは5〜100μmである。さらに1〜50μmが一層好ましい。なお、突起物の高さとは、突起物間の基底部に位置する金属めっきの表面から突起物の最先端部までの距離を指す。
また突起物の横断面の最大幅を0.3μm以上とすると、突起物が崩壊することがなく、金属めっき材の導電性,EMI性や溶接性の向上が顕著となる。一方、600μm以下とすると、後述する被膜層から突起物が露出する面積が適度となり、優れた防錆性を確保することが可能となる。したがって、突起物の横断面は0.3〜600μmの範囲内が好ましい。なお、突起物の横断面とは、下地金属の表面に平行な断面を指す。
本発明の金属めっき材は、金属めっきによって下地金属の防錆性が改善されているが、さらに防錆性を高めるために金属めっきの表面に被膜層を形成しても良い。その被膜層は、
(a)無機被膜、
(b)有機被膜、
(c)無機有機複合被膜
(d)上記の(a)(b)(c)から選ばれる2以上の積層被膜
のうちのいずれかで形成される。この被膜層の厚さは特定の数値に限定しない。ただし、金属めっきの表面に形成される突起物の高さより薄い被膜層を形成することが好ましい。このようにして突起物の先端部を被膜層から突出させると、金属めっき材の導電性,EMI性,溶接性が特に優れる。つまり、突起物の先端部は被膜層に覆われていないので、その先端部を導通点として、金属めっき材の導電性,EMI性を向上させることができる。また、突起物の先端部は同様に、金属めっき材の溶接性を向上させることができる。
さらに、従来は導電性,EMI性を確保するためには被膜層の膜厚を薄くする必要があり、耐食性の確保が困難であった。しかし本発明では、被膜層の膜厚を厚くしても導電性,EMI性を確保できるため、優れた耐食性を得ることができ、非常に有用である。
[実施例1]
冷延鋼板(KTUX)に電解脱脂を施し、さらに酸洗を行なった。その後、表面調整処理液にはCuイオンをCu原子の濃度に換算して0.02質量%添加し、鋼板を5秒浸漬した。
この冷延鋼板を下地金属として、電気亜鉛めっきを施した。電気亜鉛めっきの条件は表1に示す通りである。
Figure 2007211300
このようにして得られた電気亜鉛めっき冷延鋼板(すなわち金属めっき材)から試料を採取し、金属めっきの表面をSEMで観察(500倍)した結果の一例を図1に示す。突起物1の分布密度は472個/mm2(任意の10視野の平均値)であった。また、任意の60個の突起物1について、レーザー顕微鏡によって最先端部の高さと横断面の最大幅を測定した。その結果、突起物1の最先端部の高さは最大7.5μm,横断面の最大幅は最大15.9μmであった。
次いで、電気亜鉛めっき冷延鋼板に珪酸ナトリウム(和光純薬製)をバーコーターで塗布し、20秒で120℃に到達する条件で焼付乾燥した。珪酸ナトリウムの付着量は1.5g/m2として、突起物1の先端部を珪酸ナトリウム被膜(無機被膜)の外表面から突出させた。これを発明例とする。
一方、比較例として、市販の亜鉛めっき鋼板に、珪酸リチウム(和光純薬製)をバーコーターで塗布し、20秒で180℃に到達する条件で焼付乾燥した。珪酸リチウムの付着量は1.5g/m2とした。
発明例の電気亜鉛めっき冷延鋼板と比較例の亜鉛めっき鋼板から試料(50mm×100mm)を採取し、端面部をシールし。中性塩水噴霧試験(JIS規格Z2371-2000)に準拠した塩水噴霧試験を行ない、5%白錆発生面積時間を調査することによって、防錆性を評価した。その結果、発明例と比較例の5%白錆発生面積時間は、いずれも48時間と同等であり、防錆性の差異は認められなかった。
さらに、発明例と比較例の試料を用いて表面抵抗(Loresta AP:MCP-TC400:三菱化学製)を測定した。その結果、発明例の表面抵抗は10〜60mΩであったのに対して、比較例は107Ω以上であり極めて高い値であった。
[実施例2]
実施例1で作製した発明例1の金属めっき材にアクリルエマルジョン樹脂(アクリルシタコン酸樹脂+メラミン架橋剤を含む)100質量部(固形分として)に、Al,Mn,Zn,Mg,Vの各金属(金属イオンとして)を合計して2質量部,りん酸を10質量部,ポリエチレンワックスを6質量部添加した有機無機複合被膜用の塗料を塗布し、20秒で180℃に到達する条件で焼付乾燥し、付着量の異なる有機無機複合被膜を形成した。実施例1と同様に防錆性を調査した。
図4は、5%白錆発生時間に及ぼす被膜付着量の影響を示すグラフである。これにより発明例は突起物を有していても防錆性に悪影響を及ぼしていないことが分かる。
図5は、プローブ先端にかかる荷重を増加させ評価した導電する最小荷重に及ぼす被膜付着量の影響を示すグラフである。低抵抗測定装置(Loresta GP:三菱化学(株)製:ESPプローブ)を用い、表面抵抗値が1mΩ未満となる最小の荷重を10箇所測定し、平均値を求めた結果である。比較例では導電する最小荷重が被膜付着量とともに急激に上昇し、導電性が不良になっていた。これに対して発明例では導電する最小荷重が被膜付着量と上昇する傾向があるが、比較例と比べて導電性が良好であった。
また、従来からの知見により本実施例の有機無機複合被膜の場合、この最小荷重がおよそ550g以下でEMI性が良好になることが確認されている。したがって、比較例の場合、0.75g/m2で既にEMI性を確保するための付着量の上限に達しているのに対して、発明例の場合、2.5g/m2になっても優れたEMI性が得られる。
本発明の金属めっき材に形成される突起物の形状と分布状況を描いた平面図である。 本発明の金属めっき材に形成される突起物の形状を描いた斜視図である。 本発明の金属めっき材に形成される突起物の形状を描いた断面図である。 防錆性に及ぼす被膜付着量の影響を示すグラフである。 導電性に及ぼす被膜付着量の影響を示すグラフである。
符号の説明
1 突起物
2 金属めっき
3 下地金属

Claims (5)

  1. 下地金属の表面に金属めっきを有する金属めっき材において、前記金属めっきが突起物を有し、該突起物は金属めっきと同一の成分を有しかつ単一の金属相からなることを特徴とする金属めっき材。
  2. 前記突起物が前記下地金属表面1mm2あたり1〜3000個の密度で分布することを特徴とする請求項1に記載の金属めっき材。
  3. 前記突起物の最先端部の高さが突起物間の基底部に位置する前記金属めっきの表面から0.3〜1000μmの範囲内を満足し、かつ前記突起物の横断面の最大幅が0.3〜600μmの範囲内を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の金属めっき材。
  4. 前記金属めっきの表面に無機被膜、有機被膜、または無機有機複合被膜、ならびにこれらの積層被膜からなる被膜層を有し、前記突起物の先端部が前記被膜層の外表面から突出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属めっき材。
  5. 前記金属めっきが亜鉛めっきであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属めっき材。
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