JP2007210426A - ブレーキ装置のブレーキ液充填構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 BBW式のブレーキ装置において、その液路にブレーキ液を充填する際にエアの混入を最小限に抑える。
【解決手段】 BBW式のブレーキ装置の液路17a〜17pにブレーキ液を充填すべく、その液路17a〜17pの内部をリザーバ31のポートP3から真空引きしたとき、制動力発生手段17F,17Rの液室24に負圧が発生しても、前記負圧によるピストン21の前進をスプリング33の弾発力で阻止し、ピストン21によるシリンダ20の第2ポートP2の閉塞を防止することができる。これにより、シリンダ20の第1、第2ポートP1,P2を連通させ、液路17a〜17pの全体を真空引きしてエアの混入を最小限に抑え、液路17a〜17pへのブレーキ液の充填を確実に行うことができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、正常時に電気的な制動力発生手段により車輪を制動し、制動力発生手段が作動不能になる異常時に運転者のブレーキ操作によりマスタシリンダが発生するブレーキ液圧で車輪を制動するブレーキ装置に関し、特にその液路にブレーキ液を充填するための構造に関する。
ブレーキ液圧を発生する動力液圧源が作動可能な正常時には、運転者がブレーキペダルを踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと車輪を制動する液圧ブレーキとの連通をマスタシリンダカット弁で遮断した状態で、動力液圧源が発生するブレーキ液圧で液圧ブレーキを作動させ、また動力液圧源が作動不能になる異常時には、マスタシリンダカット弁を開弁してマスタシリンダが発生するブレーキ液圧で液圧ブレーキを作動させ、かつ前記正常時にマスタシリンダが発生するブレーキ液圧をストロークシミュレータで吸収してブレーキペダルのストロークを可能にする、いわゆるBBW(ブレーキ・バイ・ワイヤ)式のブレーキ装置が、下記特許文献1により公知である。
特開2000−127805号公報
ところで、この種のBBW式のブレーキ装置の制動力発生手段が、シリンダに摺動自在に嵌合するピストンをアクチュエータを駆動してブレーキ液圧を発生する構造になっている場合、液路にブレーキ液を充填すべく該液路の内部を真空引きしたときに、その負圧によって制動力発生手段のシリンダ内でピストンが移動してシリンダのポートを塞いでしまう可能性があった。このような場合、真空引きを行っても前記液路が制動力発生手段の位置で遮断されてしまい、液路全体のエアを完全に真空引きできなくなってブレーキ液にエアが混入する問題があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、BBW式のブレーキ装置において、その液路にブレーキ液を充填する際にエアの混入を最小限に抑えることを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、運転者のブレーキ操作によりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、マスタシリンダおよびホイールシリンダを接続する液路に設けられて異常時に開弁する踏力遮断弁と、運転者のブレーキ操作に応じて車輪を制動する制動力を電気的に発生する制動力発生手段とを備えたブレーキ装置のブレーキ液充填構造であって、前記制動力発生手段は、シリンダと、このシリンダに摺動自在に嵌合するピストンと、このピストンをブレーキ液圧を発生する前進方向に駆動するアクチュエータと、前記ピストンを後退方向に付勢する弾発手段と、前記シリンダおよび前記ピストン間に形成された液室と、この液室を前記ホイールシリンダに連通させる第1ポートと、前記液室を前記マスタシリンダに連通させるとともに、前記ピストンの前進に伴って閉塞される第2ポートとを備え、ブレーキ液の充填時に前記液路のエアを真空引きした後にブレーキ液を充填するものにおいて、前記弾発手段の弾発力を、前記真空引きによって前記ピストンが前記シリンダ内を前進しても、前記ピストンによって前記第2ポートが閉塞されない大きさに設定したことを特徴とするブレーキ装置のブレーキ液充填構造が提案される。
尚、実施の形態の電動モータ22は本発明のアクチュエータに対応し、実施の形態のスプリング33は本発明の弾発手段に対応する。
請求項1の構成によれば、制動力発生手段が作動可能な正常時には、踏力遮断弁を閉弁してマスタシリンダおよびホイールシリンダ間の連通を遮断した状態で、制動力発生手段により車輪を制動することができる。制動力発生手段が作動不能な異常時には、踏力遮断弁を開弁してマスタシリンダおよびホイールシリンダ間を連通させた状態で、運転者のブレーキ操作により作動するマスタシリンダが発生するブレーキ液圧をホイールシリンダに供給して車輪を制動することができる。
液路にブレーキ液を充填すべく該液路を真空引きしたとき、制動力発生手段の液室に負圧が発生しても、前記負圧によるピストンの前進を弾発手段の弾発力で阻止し、ピストンによるシリンダの第2ポートの閉塞を防止することができる。これにより、液路の全体を真空引きしてエアの混入を最小限に抑え、液路へのブレーキ液の充填を確実に行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1〜図3は本発明の実施の形態を示すもので、図1は車両用ブレーキ装置の正常時の液圧系統図、図2は図1に対応する異常時の液圧系統図、図3は制動力発生手段のシリンダおよびピストンの縦断面図である。
図1に示すように、タンデム型のマスタシリンダ10は、運転者がブレーキペダル11を踏む踏力に応じたブレーキ液圧を出力する第1、第2出力ポート12a,12bを備えており、第1出力ポート12aは例えば左前輪および右後輪のディスクブレーキ装置13,14に接続されるとともに、第2出力ポート12bは例えば右前輪および左後輪のディスクブレーキ装置に接続される。図1には、第1出力ポート12aに連なる一方のブレーキ系統だけが図示されており、第2出力ポート12bに連なる他方のブレーキ系統は図示されていないが、一方および他方のブレーキ系統の構造は実質的に同一である。以下、第1出力ポート12aに連なる一方のブレーキ系統について説明する。
マスタシリンダ10の第1出力ポート12aと前輪のディスクブレーキ装置13のホイールシリンダ15とが液路17a〜17fで接続されるとともに、液路17c,17d間から分岐する液路17g〜17jが後輪のディスクブレーキ装置14のホイールシリンダ16に接続される。
液路17b,17c間に常開型電磁弁である踏力遮断弁18が配置され、液路17d,17e間に前輪の制動力発生手段19Fが配置される。制動力発生手段19F(図3参照)は、液路17d,17e間に配置されたシリンダ20を備えており、そのシリンダ20に摺動自在に嵌合するピストン21は電動モータ22により減速機構23を介して駆動されるもので、ピストン21の前面に形成された液室24にブレーキ液圧を発生させることができる。ピストン21はスプリング33の弾発力で後退方向に付勢される。
シリンダ20の前端に形成された第1ポートP1は、液路17eに常時連通する。またシリンダ20の側壁には液路17dに連通する第2ポートP2が形成される。ピストン21の前部には径方向に貫通する通孔21aが形成されており、このピストン21が摺動自在に嵌合するシリンダ20の内壁面に前後一対のシール部材34,35が設けられる。ピストンが図3に示す後退位置にあるとき、第2ポートP2は通孔21aおよび液室24を介して第1ポートP1に連通するが、電動モータ22でピストン21が僅かに前進して通孔21aが前側のシール部材34を通過すると、第2ポートP2および第1ポートP1の連通が遮断されて液室24にブレーキ液圧が発生する。
同様に、液路17h,17i間に後輪の制動力発生手段19Rが配置され。る後輪の制動力発生手段19Rの構造は、上述した前輪の制動力発生手段19Fの構造と同一である。
液路17a,17b間から分岐する液路17k〜17nの下流端に接続されたストロークシミュレータ25は、シリンダ26にスプリング27で付勢されたピストン28を摺動自在に嵌合させたもので、ピストン28の反スプリング27側に形成された液室29が液路17nに連通する。液路17m,17n間には、常閉型電磁弁である反力許可弁30が配置される。また液路17g,17h間から分岐する液路17o,17pがマスタシリンダ10のリザーバ31に連通しており、その液路17o,17p間に常閉型電磁弁である大気弁32が配置される。
踏力遮断弁18、反力許可弁30、大気弁32および制動力発生手段19F,19Rの電動モータ22,22の作動を制御する不図示のBBW電子制御ユニットには、マスタシリンダ10が発生するブレーキ液圧を検出する液圧センサSaと、前輪のディスクブレーキ装置13に伝達されるブレーキ液圧を検出する液圧センサSbと、後輪のディスクブレーキ装置14に伝達されるブレーキ液圧を検出する液圧センサScとが接続される。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
図1に示す正常時には、図示せぬBBW電子制御ユニットからの指令で踏力遮断弁18、反力許可弁30および大気弁32のソレノイドが励磁され、踏力遮断弁18が閉弁してマスタシリンダ10およびディスクブレーキ装置13,14間の連通を遮断し、反力許可弁30が開弁してマスタシリンダ10およびストロークシミュレータ25間を連通させ、かつ大気弁32が開弁する。この状態で運転者がブレーキペダル11を踏み込んでマスタシリンダ10がブレーキ液圧を発生すると、踏力遮断弁18で閉塞された液路17kのブレーキ液圧を液圧センサSaが検出する。BBW電子制御ユニットは、液圧センサSaが検出したブレーキ液圧と同じ液圧を液路17f,17jに発生させるべく、前輪および後輪の制動力発生手段19F,19Rを作動させる。
その結果、前輪の制動力発生手段19Fの電動モータ22の駆動力が減速機構23を介してピストン21に伝達され、シリンダ20の液室24に発生したブレーキ液圧が液路17e,17fを介してディスクブレーキ装置13のホイールシリンダ15に伝達されて前輪が制動される。このとき、液路17fのブレーキ液圧を液圧センサSbで検出し、そのブレーキ液圧が液路17kの液圧センサSaで検出したブレーキ液圧に一致するように電動モータ22の作動がフィードバック制御される。
同様に、後輪の制動力発生手段19Rの電動モータ22の駆動力が減速機構23を介してピストン21に伝達され、シリンダ20の液室24に発生したブレーキ液圧が液路17i,17jを介してディスクブレーキ装置14のホイールシリンダ16に伝達されて後輪が制動される。このとき、液路17jのブレーキ液圧を液圧センサScで検出し、そのブレーキ液圧が液路17kの液圧センサSaで検出したブレーキ液圧に一致するように電動モータ22の作動がフィードバック制御される。
尚、シリンダ20内のピストン21が電動モータ22によって僅かに前進すると、液室24と液路17d(あるいは液路17h)との連通が絶たれるため、シリンダ20が発生したブレーキ液圧が液路17o,17p間に設けた大気弁32を介してリザーバ31に逃げる虞はない。
ところで、上述した正常時には、電源の失陥のような異常状態が発生しない限り踏力遮断弁18は閉弁状態に保持されるため、従来はディスクブレーキ装置13,14のブレーキパッドが摩耗してシリンダ20,20およびディスクブレーキ装置13,14間の液路17e,17fあるいは液路17i,17jの容積が増加しても、その分のブレーキ液をリザーバ31から補給することができず、しかもホイールシリンダ15,16の引きずりを低減することができないという問題が発生する可能性がある。
しかしながら、シリンダ20,20内でピストン21,21が後退すると、液室24,24が開弁した大気弁32を介してリザーバ31に連通するため、ディスクブレーキ装置13,14のブレーキパッドの摩耗により不足するブレーキ液をリザーバ31から補給するとともに、制動力の解放時におけるホイールシリンダ15,16の引きずりを低減することができる。
また正常時に運転者がブレーキペダル11を踏んでマスタシリンダ10がブレーキ液圧を発生すると、そのブレーキ液圧がストロークシミュレータ25の液室29に伝達されてピストン28がスプリング27の弾発力に抗して移動することで、ブレーキペダル11の踏込みに対する反力を発生させることができる。これにより、実際には電動モータ22,22の駆動力でディスクブレーキ装置13,14を作動させているにも関わらず、運転者の踏力でディスクブレーキ装置13,14を作動させているのと同等の操作フィーリングを得ることができる。
一方、バッテリ外れ等により電源が失陥したような異常時には、図2に示すように踏力遮断弁18が開弁してマスタシリンダ10およびディスクブレーキ装置13,14間が連通し、反力許可弁30が閉弁してマスタシリンダ10およびストロークシミュレータ25間の連通が遮断され、かつ大気弁32が閉弁してマスタシリンダ10およびリザーバ31間の連通が遮断される。その結果、運転者がブレーキペダル11を踏み込んでマスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧は、開弁した踏力遮断弁18および制動力発生手段19Fを介して前輪のディスクブレーキ装置13のホイールシリンダ15に伝達され、また開弁した踏力遮断弁18および制動力発生手段19Rを介して後輪のディスクブレーキ装置14のホイールシリンダ16に伝達され、前輪および後輪が制動される。
これと同時に、反力許可弁30の閉弁によりストロークシミュレータ25とマスタシリンダ10との連通が遮断されるため、ストロークシミュレータ25は機能を停止する。その結果、ブレーキペダル11のストロークが不必要に増加して運転者に違和感を与えるのを防止することができ、しかもマスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧はストロークシミュレータ25に吸収されることなくホイールシリンダ15,16に伝達され、高い応答性で制動力を発生させることができる。
しかして、電源が失陥して踏力遮断弁18、反力許可弁30、大気弁32および制動力発生手段19F,19Rが作動不能になっても、運転者がブレーキペダル11を踏んでマスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧で前輪および後輪のホイールシリンダ15,16を支障なく作動させることができ、これにより異常時に前輪および後輪を制動して車両をより安全に停止させることができる。
ところで、ブレーキ装置の液路17a〜17pにブレーキ液を充填するとき、液路17a〜17pにエアが残っているとブレーキ液を充分に充填できないため、予め液路17a〜17pのエアを真空引きした後にブレーキ液を充填するようになっている。エアの真空引きおよびブレーキ液の充填は、図1および図2に示す一方のブレーキ系統に対してはマスタシリンダ10のリザーバ31に開口する一方のポートP3を介して行われ、図示せぬ他方のブレーキ系統に対してはマスタシリンダ10のリザーバ31に開口する他方のポートP4を介して行われる。
リザーバ31のポートP3から真空引きを行うと、制動力発生手段19Fのピストン21の通孔21aを介して液室24が大気圧よりも低く減圧されるため、大気圧との差圧によってピストン21がシリンダ20内を前進し(図3の矢印A参照)、ピストン21の通孔21aが前側のシール部材34を通過した瞬間に、第2ポートP2と液室24との連通が遮断されてしまう可能性がある。このようになると、リザーバ31のポートP3からいくら真空引きを行っても、液室24の第1ポートP1に連なる液路17e,17fおよびホイールシリンダ15を真空引きすることができなくなり、その後にリザーバ31のポートP3からブレーキ液を充填しても液路17a〜17pにエアが残留することになる。
しかしながら、本実施の形態によれば、リザーバ31のポートP3から真空引きを行うことで制動力発生手段19Fの液室24が大気圧以下に減圧され、ピストン21が前進方向(図3の矢印A方向)に付勢されても、液室24内に配置されたスプリング33の弾発力が前記ピストン21の前進を阻止することで、液室24が第2ポートP2から遮断されるのを防止し、液路17a〜17p全体のエアを確実に真空引きしてブレーキ液を完全に充填することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態ではリザーバ31のポートP3,P4からエアの真空引きおよびブレーキ液の充填を行っているが、液路17a〜17pの任意の位置から真空引きおよびブレーキ液の充填を行うことができる。
車両用ブレーキ装置の正常時の液圧系統図 図1に対応する異常時の液圧系統図 制動力発生手段のシリンダおよびピストンの縦断面図
符号の説明
10 マスタシリンダ
15 ホイールシリンダ
16 ホイールシリンダ
17a〜17j 液路
18 踏力遮断弁
19F 制動力発生手段
19R 制動力発生手段
20 シリンダ
21 ピストン
22 電動モータ(アクチュエータ)
24 液室
33 スプリング(弾発手段)
P1 第1ポート
P2 第2ポート

Claims (1)

  1. 運転者のブレーキ操作によりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ(10)と、
    マスタシリンダ(10)およびホイールシリンダ(15,16)を接続する液路(17a〜17j)に設けられて異常時に開弁する踏力遮断弁(18)と、
    運転者のブレーキ操作に応じて車輪を制動する制動力を電気的に発生する制動力発生手段(19F,19R)と、
    を備えたブレーキ装置のブレーキ液充填構造であって、
    前記制動力発生手段(19F,19R)は、シリンダ(20)と、このシリンダ(20)に摺動自在に嵌合するピストン(21)と、このピストン(21)をブレーキ液圧を発生する前進方向に駆動するアクチュエータ(22)と、前記ピストン(21)を後退方向に付勢する弾発手段(33)と、前記シリンダ(20)および前記ピストン(21)間に形成された液室(24)と、この液室(24)を前記ホイールシリンダ(15,16)に連通させる第1ポート(P1)と、前記液室(24)を前記マスタシリンダ(10)に連通させるとともに、前記ピストン(21)の前進に伴って閉塞される第2ポート(P2)とを備え、
    ブレーキ液の充填時に前記液路(17a〜17j)のエアを真空引きした後にブレーキ液を充填するものにおいて、
    前記弾発手段(33)の弾発力を、前記真空引きによって前記ピストン(21)が前記シリンダ(20)内を前進しても、前記ピストン(21)によって前記第2ポート(P2)が閉塞されない大きさに設定したことを特徴とするブレーキ装置のブレーキ液充填構造。
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