図1は、本発明の1実施例のハイブリッド車両10の駆動装置および制御装置を説明する図である。図1において、このハイブリッド車両10では、車両において、主駆動源である第1駆動源12のトルクが出力部材として機能する出力軸14に伝達され、その出力軸14から差動歯車装置16を介して左右一対の前輪または後輪である駆動輪18にトルクが伝達されるようになっている。このハイブリッド車両10には、走行のための駆動力を出力する力行制御あるいはエネルギを回収するための回生制御を実行可能な第2駆動源20が設けられており、この第2駆動源20は変速機22を介して上記出力軸14に連結されている。したがって、第2駆動源20から出力軸14へ伝達されるトルク容量がその変速機22で設定される変速比γs(=MG2の回転速度/出力軸14の回転速度)に応じて増減されるようになっている。
上記変速機22の変速比γsは「1」以上の複数段に設定されるように構成されており、第2駆動源20からトルクを出力する力行時にはそのトルクを増大させて出力軸14へ伝達することができるので、第2駆動源20が一層低容量もしくは小型に構成される。これにより、例えば高車速に伴って出力軸14の回転数が増大した場合には、第2駆動源20の運転効率を良好な状態に維持するために、変速比γsを低下させて第2駆動源20の回転数が低下させられ、また、出力軸14の回転数が低下した場合には、変速比γsが増大させられたりする。
上記変速機22の変速の場合、その変速機22でのトルク容量が低下したり、あるいは回転数の変化に伴う慣性トルクが生じたりし、これが出力軸14のトルクすなわち出力軸トルクに影響する。そこで上記のハイブリッド車両10では、変速機22による変速の際に第1駆動源12のトルクを補正して出力軸14のトルク変動を防止もしくは抑制するように制御される。
上記第1駆動源12は、エンジン24と、第1モータジェネレータ(以下、MG1という)と、これらエンジン24とMG1との間でトルクを合成もしくは分配するための動力分配機構として機能する遊星歯車装置26とから主体的に構成されている。上記エンジン24は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の内燃機関であって、マイクロコンピュータを主体とするエンジン制御用の電子制御装置(E−ECU)28によって、スロットル開度或いは吸入空気量、燃料供給量、点火時期などの運転状態が電気的に制御されるように構成されている。上記電子制御装置28には、アクセルペダル27の操作量を検出するアクセル開度センサAS、ブレーキペダル29の操作を検出するためのブレーキセンサBS等からの検出信号が供給されている。
上記MG1は、たとえば同期電動機であって、駆動トルクを発生させる電動機としての機能と発電機としての機能とを選択的に生じるように構成され、インバータ30を介してバッテリー、コンデンサなどの蓄電装置32に接続されている。そして、マイクロコンピュータを主体とするモータジェネレータ制御用の電子制御装置(MG−ECU)34によってそのインバータ30が制御されることにより、MG1の出力トルクあるいは回生トルクが調節或いは設定されるようになっている。上記電子制御装置34には、シフトレバー35の操作位置を検出する操作位置センサSS、起動操作のためのキーが差し込まれたことを検出するキースイッチKEYSW、起動操作のための指令操作を検出する起動操作釦POWER等からの検出信号が供給され、電子制御装置34からは、その起動操作に応答して車両が走行可能状態となったことを表示する走行可能表示器READYが点灯させられるようになっている。
前記遊星歯車装置26は、サンギヤS0と、そのサンギヤS0に対して同心円上に配置されたリングギヤR0と、これらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合うピニオンギヤP0を自転かつ公転自在に支持するキャリヤC0とを三つの回転要素として備えて公知の差動作用を生じるシングルピニオン型の遊星歯車機構である。遊星歯車装置26はエンジン24および変速機22と同心に設けられている。遊星歯車装置26および変速機22は中心線に対して対称的に構成されているため、図1ではそれらの下半分が省略されている。
本実施例では、エンジン24のクランク軸36はダンパー38を介して遊星歯車装置26のキャリヤC0に連結されている。これに対してサンギヤS0にはMG1が連結され、リングギヤR0には出力軸14が連結されている。このキャリヤC0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能している。
前記トルク合成分配機構として機能するシングルピニオン型の遊星歯車装置26の各回転要素の回転速度の相対的関係は、図2の共線図により示される。この共線図において、縦軸S、縦軸C、および縦軸Rは、サンギヤS0の回転速度、キャリヤC0の回転速度、およびリングギヤR0の回転速度をそれぞれ表す軸であり、縦軸S、縦軸C、および縦軸Rの相互の間隔は、縦軸Sと縦軸Cとの間隔を1としたとき、縦軸Cと縦軸Rとの間隔がρ(サンギヤS0の歯数Zs/リングギヤR0の歯数Zr)となるように設定されたものである。
上記遊星歯車装置26において、キャリヤC0に入力されるエンジン24の出力トルクに対して、MG1による反力トルクがサンギヤS0に入力されると、出力要素となっているリングギヤR0には、エンジン24から入力されたトルクより大きいトルクが現れるので、MG1は発電機として機能する。また、リングギヤR0の回転速度(出力軸回転速度)NOが一定であるとき、MG1の回転速度を上下に変化させることにより、エンジン24の回転速度NEを連続的に(無段階に)変化させることができる。図2の破線はMG1の回転速度を実線に示す値から下げたときにエンジン24の回転速度NEが低下する状態を示している。すなわち、エンジン24の回転速度NEを例えば燃費が最もよい回転速度に設定する制御を、MG1を制御することによって実行されることができる。この種のハイブリッド形式は、機械分配式あるいはスプリットタイプと称される。
図1に戻って、本実施例の前記変速機22は、一組のラビニョ型遊星歯車機構によって構成されている。すなわち変速機22では、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とが設けられており、その第1サンギヤS1にショートピニオンP1が噛合するとともに、そのショートピニオンP1がこれより軸長の長いロングピニオンP2に噛合し、そのロングピニオンP2が前記各サンギヤS1,S2と同心円上に配置されたリングギヤR1に噛合している。上記各ピニオンP1,P2は、共通のキャリヤC1によって自転かつ公転自在にそれぞれ保持されている。また、第2サンギヤS2がロングピニオンP2に噛合している。
前記第2駆動源20は、前記モータジェネレータ制御用の電子制御装置(MG−ECU)34によりインバータ40を介して制御されることにより、アシスト用出力トルクあるいは回生トルクが調節或いは設定される電動機または発電機である第2モータ・ジェネレータ(以下、MG2という)から構成されており、第2サンギヤS2にはその前述したMG2が連結され、上記キャリヤC1が出力軸14に連結されている。第1サンギヤS1とリングギヤR1とは、各ピニオンP1,P2と共にダブルピニオン型遊星歯車装置に相当する機構を構成し、また第2サンギヤS2とリングギヤR1とは、ロングピニオンP2と共にシングルピニオン型遊星歯車装置に相当する機構を構成している。
そして、変速機22には、第1サンギヤS1を選択的に固定するためにその第1サンギヤS1と変速機ハウジング42との間に設けられた第1ブレーキB1と、リングギヤR1を選択的に固定するためにそのリングギヤR1と変速機ハウジング42との間に設けられた第2ブレーキB2とが設けられている。これらのブレーキB1、B2は摩擦力によって制動力を生じるいわゆる摩擦係合装置であり、多板形式の係合装置あるいはバンド形式の係合装置を採用することができる。そして、これらのブレーキB1、B2は、油圧アクチュエータ等により発生させられる係合圧に応じてそのトルク容量が連続的に変化するように構成されている。
以上のように構成された変速機22は、第2サンギヤS2が入力要素として機能し、またキャリヤC1が出力要素として機能し、第1ブレーキB1が係合させられると「1」より大きい変速比γshの高速段Hが達成され、第1ブレーキB1に替えて第2ブレーキB2が係合させられるとその高速段Hの変速比γshより大きい変速比γslの低速段Lが設定されるように構成されている。これらの変速段HおよびLの間での変速は、車速や要求駆動力(もしくはアクセル開度)などの走行状態に基づいて実行される。より具体的には、変速段領域を予めマップ(変速線図)として定めておき、検出された運転状態に応じていずれかの変速段を設定するように制御される。その制御をおこなうためのマイクロコンピュータを主体とした変速制御用の電子制御装置(T−ECU)44が設けられている。
上記電子制御装置44には、作動油の温度を検出するための油温センサTS、第1ブレーキB1の係合油圧を検出するための油圧スイッチSW1、第2ブレーキB2の係合油圧を検出するための油圧スイッチSW2、ライン圧PLを検出するための油圧スイッチSW3等からの検出信号が供給されている。
図3は、上記変速機22を構成しているラビニョ型遊星歯車機構についての各回転要素の相互関係を表すために4本の縦軸S1、縦軸R1、縦軸C1、および縦軸S2を有する共線図を示している。それら縦軸S1、縦軸R1、縦軸C1、および縦軸S2は、第1サンギヤS1の回転速度、リングギヤR1の回転速度、キャリヤC1の回転速度、および第2サンギヤS2の回転速度をそれぞれ示すためのものである。
以上のように構成された変速機22では、第2ブレーキB2によってリングギヤR1が固定されると、低速段Lが設定され、MG2の出力したアシストトルクがそのときの変速比γslに応じて増幅されて出力軸14に付加される。これに替えて、第1ブレーキB1によって第1サンギヤS1が固定されると、低速段Lの変速比γslよりも小さい変速比γshを有する高速段Hが設定される。この高速段Hにおける変速比も「1」より大きいので、MG2の出力したアシストトルクがその変速比γshに応じて増大させられて出力軸14に付加される。
なお、各変速段L,Hが定常的に設定されている状態では、出力軸14に付加されるトルクは、MG2の出力トルクを各変速比に応じて増大させたトルクとなるが、変速機22の変速過渡状態では各ブレーキB1、B2でのトルク容量や回転数変化に伴う慣性トルクなどの影響を受けたトルクとなる。また、出力軸14に付加されるトルクは、MG2の駆動状態では、正トルクとなり、被駆動状態では負トルクとなる。
図4は、上記各ブレーキB1、B2の係合解放によって変速機22の変速を自動的に制御するための変速用油圧制御回路50を示している。この油圧制御回路50には、エンジン24のクランク軸36に作動的に連結されることによりそのエンジン24により回転駆動されるメカニカル式油圧ポンプ46と、電動機48aと、それにより回転駆動されるポンプ48bを備えた電動式油圧ポンプ48とを油圧源として備えており、それらメカニカル式油圧ポンプ46および電動式油圧ポンプ48は、図示しないオイルパンに還流した作動油をストレーナ52を介して吸入し、或いは還流油路53を介して直接還流した作動油を吸入してライン圧油路54へ圧送する。上記還流した作動油温度TOILを検出するための油温センサTSが上記油圧制御回路50を形成するバルブボデー51に設けられているが、他の部位に接続されていてもよい。
ライン圧調圧弁56は、リリーフ形式の調圧弁であって、ライン油路54に接続された供給ポート56aとドレン油路58に接続された排出ポート56bとの間を開閉するスプール弁子60と、そのスプール弁子60の閉弁方向の推力を発生させるスプリング62を収容すると同時にライン圧PLの設定圧を高く変更するときに電磁開閉弁64を介してモジュール圧油路66内のモジュール圧PMを受け入れる制御油室68と、スプール弁子60の開弁方向の推力を発生させる上記ライン圧油路54に接続されたフィードバック油室70とを備え、予め設定された低圧値およびそれよりも高い高圧値の2種類のいずれかの一定のライン圧PLを出力する。上記制御油室68には、それにモジュール圧PMが供給されていないときにはオフ状態であるがそのモジュール圧PMが供給されるとオン作動させられる油圧スイッチSW3が接続されている。ライン圧調圧弁56では、制御油室68内にモジュール圧PMが供給されていないときにはライン圧PLが低圧側の値となるように調圧され、制御油室68内にモジュール圧PMが供給されるとライン圧PLが高圧側の値となるように調圧されるので、油圧スイッチSW3はライン圧油路54内のライン圧PLが高圧側の値であるときにオン作動し、低圧側の値以下であるときにオフ作動する。このように油圧スイッチSW3が配置されることにより、油圧スイッチSW3がライン圧油路54に接続される場合に比較して、メカニカル式油圧ポンプ46或いはポンプ48bから圧送される作動油圧の脈動や設定調圧値からライン圧PLが上昇(ライジング)することに起因してライン圧PLが低圧側であるときでも油圧スイッチSW3のオンオフ作動が繰り返される所謂ハンチング現象が回避されている。
モジュール圧調圧弁72は、上記ライン圧PLを元圧とし、そのライン圧PLの変動に拘わらず、低圧側のライン圧PLよりも低く設定された一定のモジュール圧PMをモジュール圧油路66に出力する。第1ブレーキB1を制御するための第1リニヤソレノイド弁SLB1および第2ブレーキB2を制御するための第2リニヤソレノイド弁SLB2は、上記モジュール圧PMを元圧として電子制御装置44からの指令値である駆動電流ISOL1およびISOL2に応じた制御圧PC1およびPC2を出力する。
第1リニヤソレノイド弁SLB1は、非通電時において入力ポートと出力ポートとの間が開弁(連通)される常開型の弁特性を備え、図5に示すように、駆動電流ISOL1の増加に伴って出力される制御圧PC1が低下させられる。図5に示すように、第1リニヤソレノイド弁SLB1の弁特性には、駆動電流ISOL1が所定値Iaを超えるまで出力される制御圧PC1が低下しない不感帯Aが設けられている。第2リニヤソレノイド弁SLB2は、非通電時において入力ポートと出力ポートとの間が閉弁(遮断)される常閉型の弁特性を備え、図6に示すように、駆動電流ISOL2の増加に伴って出力される制御圧PC2が増加させられる。図6に示すように、第2リニヤソレノイド弁SLB2の弁特性には、駆動電流ISOL2が所定値Ibを超えるまで出力される制御圧PC2が増加しない不感帯Bが設けられている。
B1コントロール弁76は、ライン圧油路54に接続された入力ポート76aおよびB1係合油圧PB1を出力する出力ポート76bとの間を開閉するスプール弁子78と、そのスプール弁子78を開弁方向に付勢するために上記第1リニヤソレノイド弁SLB1からの制御圧PC1を受け入れる制御油室80と、スプール弁子78を閉弁方向に付勢するスプリング82を収容し、出力圧であるB1係合油圧PB1を受け入れるフィードバック油室84とを備え、ライン圧油路54内のライン圧PLを元圧として、第1リニヤソレノイド弁SLB1からの制御圧PC1に応じた大きさのB1係合油圧PB1を出力し、インターロック弁として機能するB1アプライコントロール弁86を通してブレーキB1に供給する。
B2コントロール弁90は、ライン圧油路54に接続された入力ポート90aおよびB2係合油圧PB2を出力する出力ポート90bとの間を開閉するスプール弁子92と、そのスプール弁子92を開弁方向に付勢するために上記第2リニヤソレノイド弁SLB2からの制御圧PC2を受け入れる制御油室94と、スプール弁子92を閉弁方向に付勢するスプリング96を収容し、出力圧であるB2係合油圧PB2を受け入れるフィードバック油室98とを備え、ライン圧油路54内のライン圧PLを元圧として、第2リニヤソレノイド弁SLB2からの制御圧PC2に応じた大きさのB2係合油圧PB2を出力し、インターロック弁として機能するB2アプライコントロール弁100を通してブレーキB2に供給する。
B1アプライコントロール弁86は、B1コントロール弁76から出力されたB1係合油圧PB1を受け入れる入力ポート86aおよび第1ブレーキB1に接続された出力ポート86bとの間を開閉するスプール弁子102と、そのスプール弁子102を開弁方向に付勢するためにモジュール圧PMを受け入れる油室104と、そのスプール弁子102を閉弁方向に付勢するスプリング106を収容し且つB2コントロール弁90から出力されたB2係合油圧PB2を受け入れる油室108とを備え、第2ブレーキB2を係合させるためのB2係合油圧PB2が供給されるまでは開弁状態とされるが、そのB2係合油圧PB2が供給されると閉弁状態に切換られて、第1ブレーキB1の係合が阻止される。
また、上記B1アプライコントロール弁86には、そのスプール弁子102が開弁位置(図4の中心線の右側に示す位置)であるときに閉じられ、逆にそのスプール弁子102が閉弁位置(図4の中心線の左側に示す位置)にあるときに開かれる一対のポート110aおよび110bが設けられている。この一方のポート110aにはB2係合油圧PB2を検出するための油圧スイッチSW2が接続され、他方のポート110bには第2ブレーキB2が直接接続されている。この油圧スイッチSW2は、B2係合油圧PB2が予め設定された高圧状態となるとオン状態となり、B2係合油圧PB2が予め設定された低圧状態以下となるとオフ状態に切り換えられるように構成されている。この油圧スイッチSW2は、B1アプライコントロール弁86を介して第2ブレーキB2に接続されているので、B2係合油圧PB2の異常と同時に、第1ブレーキB1の油圧系を構成する第1リニヤソレノイド弁SLB1、B1コントロール弁76、B1アプライコントロール弁86等の異常も判定可能となっている。
B2アプライコントロール弁100も、B1アプライコントロール弁86と同様に、B2コントロール弁90から出力されたB2係合油圧PB2を受け入れる入力ポート100aおよび第2ブレーキB2に接続された出力ポート100bとの間を開閉するスプール弁子112と、そのスプール弁子112を開弁方向に付勢するためにモジュール圧PMを受け入れる油室114と、そのスプール弁子112を閉弁方向に付勢するスプリング116を収容し且つB1コントロール弁76から出力されたB1係合油圧PB1を受け入れる油室118とを備え、第1ブレーキB1を係合させるためのB1係合油圧PB1が供給されるまでは開弁状態とされるが、そのB1係合油圧PB1が供給されると閉弁状態に切換られて、第2ブレーキB2の係合が阻止される。
上記B2アプライコントロール弁100にも、そのスプール弁子112が開弁位置(図4の中心線の右側に示す位置)であるときに閉じられ、逆にそのスプール弁子112が閉弁位置(図4の中心線の左側に示す位置)にあるときに開かれる一対のポート120aおよび120bが設けられている。この一方のポート120aにはB1係合油圧PB1を検出するための油圧スイッチSW1が接続され、他方のポート120bには第1ブレーキB1が直接接続されている。この油圧スイッチSW1は、B1係合油圧PB1が予め設定された高圧状態となるとオン状態となり、B1係合油圧PB1が予め設定された低圧状態以下となるとオフ状態に切り換えられるように構成されている。この油圧スイッチSW1は、B2アプライコントロール弁100を介して第1ブレーキB1に接続されているので、B1係合油圧PB1の異常と同時に、第2ブレーキB2の油圧系を構成する第2リニヤソレノイド弁SLB2、B2コントロール弁90、B2アプライコントロール弁100等の異常も判定可能となっている。
図7は、以上のように構成された油圧制御回路50の作動を説明する図表である。図7では、○印が励磁状態或いは係合状態を示し、×印が非励磁状態或いは解放状態を示している。すなわち、第1リニヤソレノイド弁SLB1および第2リニヤソレノイド弁SLB2は共に励磁状態とされることによって、第1ブレーキB1が解放状態に、第2ブレーキB2が係合状態とされ、変速機22の低速段Lが達成される。そして、第1リニヤソレノイド弁SLB1および第2リニヤソレノイド弁SLB2は共に非励磁状態とされることによって、第1ブレーキB1が係合状態に、第2ブレーキB2が解放状態とされ、変速機22の高速段Hが達成される。
したがって、油圧スイッチSW1、SW2、SW3は、正常状態であれば、図8に示すようなオンオフ状態となる。すなわち、油圧スイッチSW1、SW2、SW3は、変速機22の変速段に拘わらずライン圧PLが低圧状態であるときはいずれもオフ状態であるが、ライン圧PLが高圧状態であると、変速機22が低速段Lであるとは油圧スイッチSW2およびSW3がオン状態とされ、変速機22が低速段Lであるとは油圧スイッチSW1およびSW3がオン状態とされる。上記油圧スイッチSW1、SW2、SW3は、作動圧以上の圧力が作用されることによって切換作動するオンオフスイッチ構造であることから、検出しようとする油圧に脈動(圧力振動)が含まれると作動圧を下回る油圧であっても繰り返しオンオフを繰り返すハンチング状態とされる場合がある。本実施例では、油圧源として機能するメカニカル式油圧ポンプ46および電動式油圧ポンプ48はギヤ式ポンプ等の定容積型ポンプであることから、それらのポンプ46および48から圧送される作動油圧には圧力振動が含まれることが避けられないが、電動式油圧ポンプ48はメカニカル式油圧ポンプ46よりも小容量であるので、専らメカニカル式油圧ポンプ46が問題となる。たとえば、エンジン回転速度NEが1200rpm以上となるとハンチング現象が発生する。図9は、そのメカニカル式油圧ポンプ46を駆動するエンジン24の回転速度NEと油圧スイッチSW1、SW2のハンチング量との関係を示している。この関係において、エンジン回転速度NEが増加するほど、油圧スイッチSW1、SW2のハンチング量すなわち単位時間当たりのオン回数を示している。また、この特性は、作動油温度が低くなるほと高く、作動油温度が高くなるほど低くなる性質を備えている。
図10は、電子制御装置28、34および44の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図10において、ハイブリッド駆動制御手段130は、たとえば、キーがキースロットに挿入された後、ブレーキペダルが操作された状態でパワースイッチが操作されることにより制御が起動されると、アクセル操作量に基づいて運転者の要求出力を算出し、低燃費で排ガス量の少ない運転となるようにエンジン24および/またはMG2から要求出力を発生させる。たとえば、エンジン24を停止し専らMG2を駆動源とするモータ走行モード、エンジン24の動力で発電を行いMG2を駆動源として走行する走行モード、エンジン24の動力を機械的に駆動輪18に伝えて走行するエンジン走行モードを、走行状態に応じて切り換える。
上記ハイブリッド駆動制御手段130は、エンジン24を駆動する場合であっても、MG1によって最適燃費曲線上で作動するようにエンジン24の回転速度を制御する。また、MG2を駆動してトルクアシストする場合、車速が遅い状態では変速機22を低速段Lに設定して出力軸14に付加するトルクを大きくし、車速が増大した状態では、変速機22を高速段Hに設定してMG2の回転速度を相対的に低下させて損失を低減し、効率の良いトルクアシストを実行させる。さらに、コースト走行時には車両の有する慣性エネルギーでMG1或いはMG2を回転駆動することにより電力として回生し、蓄電装置32にその電力を蓄える。
変速制御手段132は、たとえば図11に示す予め記憶された変速線図から、車両の速度Vおよび駆動力Pに基づいて変速機22の変速段を決定し、決定された変速段に自動的に切り換えられるように第1ブレーキB1および第2ブレーキB2を制御する。
ライン圧制御手段134は、前記算出された運転者の要求出力が予め設定された出力判定値よりも大きい場合、或いは変速機22の変速中すなわち変速過渡時である場合などでは、前記電磁開閉弁64を閉状態から開状態に切り換えてモジュレータ圧PMをライン圧調圧弁56の油室68内に供給してスプール弁子60の閉弁方向に向かう推力を所定値増加させることにより、ライン圧PLの設定圧を低圧状態から高圧状態へ切り換える。
異常判定手段136は、油圧スイッチSW1、SW2、SW3のうちライン圧調圧弁56により調圧されるライン油圧PLが低圧状態であるときには変速機22の変速状態に拘わらずオン作動するものを異常と判定する。また、異常判定手段136は、ライン油圧PLが高圧状態であるときに変速機22の変速状態に対応してオン作動しないものを異常と判定する。たとえば、変速機22が低速段Lであるときに、油圧センサSW1がオフ状態でなければ異常と判定し、油圧センサSW2がオン状態でなければ異常と判定し、油圧センサSW3がオン状態でなければ異常と判定し、変速機22が高速段Hであるときに、油圧センサSW1がオン状態でなければ異常と判定し、油圧センサSW2がオフ状態でなければ異常と判定する。
エンジン作動中判定手段138は、エンジン24の作動中であるか否かを、たとえば図示しないエンジン回転センサにより検出されるエンジン回転速度NE、吸入空気量、或いは燃料噴射量などに基づいて判断する。ライン圧判定手段140は、ライン圧調圧弁56によって調圧されるライン圧PLが低圧状態であるか高圧状態であるかが、たとえば電子制御装置44から電磁開閉弁64へ供給される指令信号に基づいて判断される。この指令信号が電磁開閉弁64を開くものであればライン圧の高圧指令であり、電磁開閉弁64を閉じるものであればライン圧の低圧指令となる。判定値決定手段142は、たとえば図12に示す予め記憶された関係から油温センサにより検出された作動油温度TOILに基づいてエンジン24の回転速度NEが異常判定を制限する回転領域であるか否かを判定するための判定値N1(rpm)を決定する。図12に示す関係は、油圧スイッチSW1、SW2、SW3のハンチング現象が発生する回転領域の下限値の作動油温度TOILに対する変化を示すものであり、作動油温度TOILが高くなるほど判定値N1が大きくなるように設定されている。その関係では、たとえば作動油温度TOILが−20℃であるときは判定値N1が1000rpm、0℃であるときは判定値N1が1200rpm、20℃であるときは判定値N1が1600rpm、120℃であるときは判定値N1が2400rpmとなるように設定されている。この図12に示す関係はグラフ表示されているが、データマップの形態で関係が記憶されていてもよい。
異常判定制限手段144は、エンジン作動中判定手段138によってエンジン24の始動動作中を含めてエンジン24の作動中であると判定されたときは、前記異常判定手段136による異常判定を制限する。異常判定制限手段144は、エンジン作動に起因して異常判定結果の信頼性が乏しい状態であることから、その異常判定手段136による判定作動を停止させたり、その異常判定手段136による判定結果の出力を保留したりすることにより制限して、誤ったフェイル処理の実行等を防止する。
上記異常判定制限手段144は、好適には、エンジン24の作動中であるときであって、ライン圧判定手段140によってライン圧調圧弁56によって調圧されるライン圧PLが低圧状態であると判定されたときに、上記の異常判定手段136による異常判定の制限を実行する。前述のように、油圧スイッチSW1、SW2、SW3のハンチング現象はライン圧PLが低圧状態であるときに発生する可能性が生じるからである。
さらに好適には、上記異常判定制限手段144は、作動中のエンジン24の実際の回転速度NEが前記判定値決定手段142により決定された判定値N1を越えた回転領域であるときであって、ライン圧判定手段140によってライン圧調圧弁56によって調圧されるライン圧PLが低圧状態であると判定されたときに、上記の異常判定手段136による異常判定の制限を実行する。
図13乃至図15は、電子制御装置28、34および44の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図13および図14は異常判定手段136に対応する油圧スイッチ異常判定ルーチンであり、図15は異常判定制限手段144に対応する異常判定制限制御ルーチンである。
図13および図14において、ステップ(以下、ステップを省略する)S1では、ライン圧PLが高圧状態であるか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合はS11以下のライン圧PLの低圧時の異常判定ルーチンが実行されるが、肯定される場合はS2乃至S10のライン圧PLの高圧時の異常判定ルーチンが実行される。
上記S1の判断が肯定される場合は、S2において変速機22が低速段Lであるか否かが判断される。このS2の判断が肯定される場合は、変速機22が低速段Lであることから、各油圧スイッチSW1、SW2、SW3が図8の低速段L且つ高圧状態の欄に示す正常な作動状態であるか否かが判断されるとともに、S2の判断が否定される場合は、変速機22が高速段Hである状態であることから、各油圧スイッチSW1、SW2、SW3が図8の高速段H且つ高圧状態の欄に示す正常な作動状態であるか否かが判断される。すなわち、S2の判断が肯定される場合は、S3において油圧スイッチSW1がオフ状態であるか否かが判断され、S4において油圧スイッチSW2がオン状態であるか否かが判断され、S5において油圧スイッチSW3がオン状態であるか否かが判断される。上記S3、S4、およびS5の判断がいずれも肯定される場合は各油圧スイッチSW1、SW2、SW3が正常な作動状態であるのでS11以下が実行される。反対に、上記S2の判断が否定される場合は、S6において油圧スイッチSW1がオン状態であるか否かが判断され、S7において油圧スイッチSW2がオフ状態であるか否かが判断され、S5において油圧スイッチSW3がオン状態であるか否かが判断される。上記S6、S7、およびS5の判断がいずれも肯定される場合は各油圧スイッチSW1、SW2、SW3が正常な作動状態であるのでS11以下が実行される。
しかし、S3またはS6の判断が否定される場合はS8において油圧スイッチSW1の故障が判定されるとともに記憶され、S4またはS7の判断が否定される場合はS9において油圧スイッチSW2の故障が判定されるとともに記憶され、S5の判断が否定される場合はS10において油圧スイッチSW3の故障が判定されるとともに記憶された後、S11以下が実行される。
S11では、ライン圧PLが低圧状態であるか否かが判断される。このS11の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、ライン圧PLが低圧状態であることから、各油圧スイッチSW1、SW2、SW3が図8の低速段Lまたは高速段H且つ低圧状態の欄に示す正常な作動状態であるか否かが判断される。すなわち、S12において油圧スイッチSW1がオフ状態であるか否かが判断され、S13において油圧スイッチSW2がオフ状態であるか否かが判断され、S14において油圧スイッチSW3がオフ状態であるか否かが判断される。上記S6、S7、およびS5の判断がいずれも肯定される場合は各油圧スイッチSW1、SW2、SW3が正常な作動状態であるので本ルーチンが終了させられる。しかし、S12の判断が否定される場合はS15において油圧スイッチSW1の故障が判定されるとともに記憶され、S13の判断が否定される場合はS16において油圧スイッチSW2の故障が判定されるとともに記憶され、S14の判断が否定される場合はS17において油圧スイッチSW3の故障が判定されるとともに記憶された後、本ルーチンが終了させられる。
上記油圧スイッチ異常判定ルーチンにおいて、油圧スイッチSW1、SW2、SW3のいずれかが故障であると判定される場合は、所定のフェイル処理が実行される。
図15において、前記エンジン作動中判定手段138に対応するSA1において、エンジン24の作動中であるか否かが判断される。このSA1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記ライン圧判定手段140に対応するSA2において、ライン圧PLが低圧状態であるか否かすなわちライン圧PLを低圧状態とする指令が出されているか否かが判断される。このSA2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記判定値決定手段142に対応するSA3において、たとえば図12に示す予め記憶された関係から油温センサTSにより検出された作動油温度TOILに基づいてエンジン24の回転速度NEが異常判定を制限する回転領域であるか否かを判定するための判定値NE1(rpm)が決定される。
次いで、上記SA4では、エンジン回転速度NEが上記判定値NE1(rpm)以上であるか否かが判断される。このSA4の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記異常判定制限手段144に対応するSA5において、図13および図14に示す油圧スイッチ異常判定ルーチンの実行を中止させるか或いは実行結果の記憶を解消して実行結果の反映を禁止する。
上述のように、本実施例のハイブリッド車両10の制御装置によれば、エンジン24の作動中であるときは、異常判定制限手段144(SA5)により異常判定手段136(S1〜S17)による異常判定が制限されることから、エンジン24の作動中という誤判定の発生しやすい条件下での異常判定が制限されるので、油圧スイッチSW1、SW2、SW3の異常についての誤判定が好適に防止される。
また、本実施例のハイブリッド車両10の制御装置によれば、異常判定制限手段144はエンジン24の始動動作中であるときに異常判定手段136による異常判定を制限するものであることから、誤判定の発生しやすいエンジン24の始動動作中での異常判定が制限されるので、油圧スイッチSW1、SW2、SW3の異常についての誤判定が好適に防止される。
また、本実施例のハイブリッド車両10の制御装置によれば、異常判定制限手段144はエンジン24の回転速度NEが予め設定された判定値NE1以上となる回転領域であるときに異常判定手段136による異常判定を制限するものであることから、誤判定の発生しやすいエンジン回転速度領域での異常判定が制限されるので、油圧スイッチSW1、SW2、SW3の異常についての誤判定が好適に防止される。
また、本実施例のハイブリッド車両10の制御装置によれば、油圧制御回路50内の作動油の温度TOILを検出する油温センサTSと、たとえば図12に示す予め記憶された関係からその油温センサTSにより検出された作動油の温度TOILに基づいて判定値NE1を決定する判定値決定手段142とが含まれ、異常判定制限手段144は、エンジン24の回転速度NEがその判定値決定手段142により決定された判定値NE1以上となった回転領域内であるときに異常判定手段136による異常判定を制限するものであることから、誤判定の発生しやすいエンジン回転速度領域内においてのみ異常判定の制限が行われてその制限が必要最小限とされるので、異常判定の制限を少なくしつつ、油圧スイッチSW1、SW2、SW3の異常についての誤判定が好適に防止される。
また、本実施例のハイブリッド車両10の制御装置によれば、異常判定制限手段144は、圧力指令信号がライン圧調圧弁56により調圧されるライン油圧PLを油圧スイッチSW1、SW2の検出圧力よりも低くする圧力指令であるときに、異常判定手段136による異常判定を制限するものであることから、油圧スイッチSW1、SW2が本来は作動しない状況において、それら油圧スイッチSW1、SW2の作動の有無に基づいて異常を判定することができる。
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用できる。
たとえば、前述の実施例の異常判定制限手段144は、エンジン24の始動中を含むエンジン24の作動中において異常判定手段136の異常判定を制限するものであったが、エンジン始動時だけその異常判定を制限するものであってもよい。
また、前述の実施例の異常判定制限手段144では、エンジン回転速度NEの回転領域を判定するために、予め記憶された関係から油温センサTSにより検出された作動油の温度TOILに基づいて決定された判定値NE1が用いられていたが、その判定値NE1は一定値であっても差し支えない。その判定値NE1を一定値とする場合は、たとえば図12の関係から決定される値の最低値が好適に採用される。
また、前述の実施例の異常判定制限手段144は、エンジン回転速度NEが判定値NE1以上となった領域において異常判定手段136の異常判定を制限するものであったが、必ずしもそのような領域判定が行われなくてもよく、エンジン24の作動中においてはエンジン回転速度NEに拘わらず異常判定手段136の異常判定を制限するものであってもよい。
また、前述の実施例の変速機22は、低速段Lおよび高速段Hの2段の変速機であったが、3段以上の変速機であってもよい。
また、前述の実施例のハイブリッド車両は、左右一対の前輪または後輪である駆動輪18が駆動される形式のものであったが、前後輪の4輪が駆動される形式の車両であってもよい。
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。