JP2007204819A - 金属酸化物成膜装置及び金属酸化物成膜方法 - Google Patents

金属酸化物成膜装置及び金属酸化物成膜方法 Download PDF

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Abstract

【課題】品質が良く成膜対象基板上で緻密な金属酸化物を効率良く成膜する。
【解決手段】高周波電圧が印加される金属標的及び成膜対象基板が対向して配置される反応室に対して、減圧と不活性気体及び成膜用気体の供給とを行うことにより、不活性気体のイオンで金属標的の表面をスパッタし、金属標的の表面から飛翔する金属と成膜用気体とから金属酸化物を生成し、金属酸化物で成膜対象基板の表面を成膜する金属酸化物成膜装置であって、成膜用気体として酸素ラジカルを供給する酸素ラジカル供給部、を備えてなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、基板の表面に、例えば光触媒機能等を有する金属酸化物をスパッタリング法により成膜する金属酸化物成膜装置及び金属酸化物成膜方法である。
例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化鉄(Fe2O3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の金属酸化物は、いわゆる光触媒としての機能を有することが知られている。光触媒とは、価電子帯の電子が例えば紫外光の入射により伝導電子帯に励起されて、この価電子帯に残った正孔とともに電子・正孔対(electron-hole pair)を生成する物質のことである。ここで、入射される光の波長は、価電子帯と伝導電子帯との間のバンドギャップエネルギー以上のエネルギーに対応している必要がある。この電子・正孔対は、光触媒の表面において、空気中の水分子と反応してラジカルや負イオン等の状態の活性酸素種を生成し、この活性酸素種の持つ酸化力が、有害な有機物等を分解するとされている。
特に、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタンは、前述した光触媒活性が高い上に、光励起されると高度な親水性を発現することが知られている。そこで、二酸化チタンは、例えばガラスにコートされて、表面に付着する有機物の汚れを分解するセルフクリーニング作用を高めたり、表面に付着する水滴を濡れ広げさせることにより視覚を確保したりすること等に用いられている。このアナターゼ型の二酸化チタンの薄膜を形成する方法としては、湿式(wet-process)及び乾式(dry-process)の2つの方法がとられてきた。湿式法とは、二酸化チタンの微粒子を有機又は無機のバインダで固定する方法や、チタンアルコキシド等の前駆体に基づくゾル・ゲル法等のことである(例えば、特許文献1参照。)。
一方、乾式法とは、スパッタリング法等のことであり、湿式法が適用される基板よりも大きな表面積を有する基板に適用可能である。スパッタリング法では、酸化膜が形成されたチタンターゲットの表面を希ガス等のイオンでスパッタして酸化チタン粒子を生成し、ターゲットと対向する基板の表面に対し酸化チタン粒子を堆積させることにより、基板の表面に二酸化チタンの薄膜を形成する(例えば、特許文献2参照。)。
或いは、金属チタンターゲットの表面からスパッタされて生成する金属チタン粒子が基板の表面に到達するまでに酸素気体(O2)により酸化して酸化チタン粒子を生成し、これを基板の表面に堆積させて二酸化チタンの薄膜を形成する(例えば、特許文献3参照。)。
また或いは、金属チタンターゲットのスパッタリングにより基板の表面に先ず金属チタンを成膜した後、これを酸化する方法も開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
ところで、一般に、前述したセルフクリーニング作用や親水性等を高めるためには、二酸化チタンの薄膜が、不純物等を含まないアナターゼ型の結晶構造を有するもの(つまり高品質)であり、基板の表面上で緻密である、ことが重要とされている。
以上の品質及び緻密性の点に加えて量産性という点において、前述した湿式法は、スパッタリング法に比べて劣るとされている。例えば、前述したバインダで固定する方法の場合、二酸化チタンの微粒子を基板の表面に十分に密着させるためには、二酸化チタンに対しバインダの量を相対的に増やす必要が生じる。このため、薄膜中の二酸化チタンの割合が低下して、薄膜の品質が低下する虞がある。また、例えば、前述したゾル・ゲル法の場合、形成された薄膜に均一性をもたせるのが困難であるため、その緻密性が低下する虞がある。
特開2002−60689号公報 特開2000−126613号公報 特開平11−130434号公報 特開2004−137101号公報
しかしながら、前述したスパッタリング法には、二酸化チタンの成膜レートが低いという問題がある。
例えば特許文献4で言及されているように、前述した酸化チタンターゲットをスパッタしても、酸化チタン粒子が飛翔し難いため、成膜レートが低いとされている。
また、例えば特許文献4で言及されているように、前述した金属チタンターゲットをスパッタして生成された金属チタン粒子(Ti)を酸素気体(O2)と反応させる場合、TiとO2との反応速度が遅いが故に、金属チタン粒子が基板の表面に到達するまでにこの反応が終了しない虞がある。これは、やはり成膜レートの低さにつながる。TiとO2との反応速度の遅さを補うべく酸素気体の分圧をより高くした場合、今度は不純物(例えばアナターゼ型TiO2以外の酸化チタン)の混入率が増大するため、これは薄膜の品質低下につながる虞がある。また、酸素気体の分圧を高くするほど、電場により基板へ向かって加速される例えば負イオンO-が薄膜へダメージを及ぼす確率が大きくなるため、これは薄膜の緻密性の低下につながる。
更に、基板の表面に成膜された金属チタンを酸化する場合、金属チタンの膜厚が或る程度以上になると酸化レートが低くなるため、形成可能な膜厚が制限されてしまうという問題がある。これは、結局、二酸化チタンの成膜レートが低いことと等価である。
以上述べたことは二酸化チタンの薄膜に限ったことではなく、例えば前述した光触媒機能を有するとされている金属酸化物の薄膜についても当てはまることである。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、品質が良く成膜対象基板上で緻密な金属酸化物を効率良く成膜することにある。
前記課題を解決するための発明は、高周波電圧が印加される金属標的及び成膜対象基板が対向して配置される反応室に対して、減圧と不活性気体及び成膜用気体の供給とを行うことにより、前記不活性気体のイオンで前記金属標的の表面をスパッタし、前記金属標的の表面から飛翔する金属と前記成膜用気体とから金属酸化物を生成し、前記金属酸化物で前記成膜対象基板の表面を成膜する金属酸化物成膜装置であって、前記成膜用気体として酸素ラジカルを供給する酸素ラジカル供給部、を備えてなる。
この金属酸化物成膜装置における成膜用気体は、例えば特開平11−130434号公報に開示されている酸素分子(O2)のみではなく、酸素ラジカル(O)を含むものとなる。酸素分子よりも活性とされる酸素ラジカルの方が金属との反応速度はより速いため、これは金属酸化物の成膜レートの向上に寄与し得る。よって、この金属酸化物成膜装置によれば、成膜対象基板の表面上に金属酸化物を効率良く成膜できる。
このように、酸素分子を用いる場合よりも成膜レートが高ければ、この高い分だけ、酸素ラジカルの供給レートを抑制できる。酸素ラジカルの供給レートを抑制すれば、この際に2つの表面間に流入し得る酸素分子の分圧が低下する。また、酸素ラジカルの供給レートの抑制にともないその分圧が低下すれば、この酸素ラジカルと所定の比率で供給される不活性気体の分圧も低下し得る。つまり、これは2つの表面間の成膜圧力の低下につながる。これにより、例えば放電で生成される酸素イオン(O-)の分圧も低下し、例えば放電で生成される不活性気体のイオン(一般に、正イオン)の分圧も低下し得る。
ここで、前述した酸素イオンは、2つの表面間の電場に加速されて成膜対象基板の表面上に形成された薄膜にダメージを与える虞があるとされている。同様に、前述した不活性気体の正イオンのうち、金属標的の表面に対する衝突で中性化された原子は、反射時の運動エネルギーをもって薄膜に衝突してこれにダメージを与える虞があるとされている。
本発明の金属酸化物成膜装置によれば、成膜レートを向上させつつ、酸素分子を用いる場合と比較して成膜圧力をより低下させることができるため、酸素イオンや不活性気体の正イオン・原子等による薄膜へのダメージを抑制できる。
また、成膜圧力がより低下すれば、不純物の混入も抑制できる。これにより、薄膜における金属酸化物の純度を向上させることができる。
以上から、例えば特開平11−130434号公報に開示されている酸素分子のみを用いる場合に比べて、本発明によれば、薄膜における金属酸化物の純度をより高めるとともに、例えば薄膜の平坦性といった緻密性をより高めることができる。
また、かかる金属酸化物成膜装置において、前記酸素ラジカル供給部は、酸素分子が供給される入口と、前記酸素ラジカルを前記反応室へ供給する出口と、を有する筒体と、前記筒体の内部をプラズマ状態として前記酸素分子から前記酸素ラジカルを解離するべく、前記筒体の周囲に巻回されるとともに高周波電圧が印加される高周波コイルと、を有することが好ましい。
この金属酸化物成膜装置によれば、酸素ラジカル供給部の筒体の内部では例えば誘導結合型プラズマが発生するため、そのジュール熱により酸素分子は酸素ラジカルに解離する。例えば電極等を用いた放電により酸素ラジカルを生成する場合と比べて、電極を用いない誘導結合型プラズマを利用して酸素ラジカルを生成する方が、電極物質等に起因した汚染の虞が少ないという利点がある。汚染が少なければ、薄膜における金属酸化物の純度はより向上する。
また、かかる金属酸化物成膜装置において、前記不活性気体は、アルゴン(Ar)であることが好ましい。
アルゴンは不活性な希ガスであるため、薄膜の表面へダメージを与え難い。また、アルゴンは希ガスの中でも安価な気体であるため、成膜コストの節減に寄与する。
また、かかる金属酸化物成膜装置において、前記金属標的は、チタン(Ti)であり、前記金属酸化物は、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO2)である、ことが好ましい。
気相中において、チタンと酸素分子との反応速度に比べて、チタンと酸素ラジカルとの反応速度の方が速ければ、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタンの成膜レートの向上に寄与し得る。
また、前記課題を解決するための発明は、高周波電圧が印加される金属標的及び成膜対象基板が対向して配置される反応室を減圧し、前記反応室に不活性気体を供給し、前記反応室に酸素ラジカルを供給することにより、前記不活性気体のイオンで前記金属標的の表面をスパッタし、前記金属標的の表面から飛翔する金属と前記酸素ラジカルとから金属酸化物を生成し、前記金属酸化物で前記成膜対象基板の表面を成膜してなる金属酸化物成膜方法である。
品質が良く成膜対象基板上で緻密な金属酸化物を効率良く成膜できる。
===金属酸化物成膜装置===
図1乃至図3を参照しつつ、本実施の形態のスパッタ装置(金属酸化物成膜装置)1の構成例について説明する。
図1のブロック図に例示されるように、本実施の形態のスパッタ装置1は、主として、スパッタ銃10と、主チャンバ(反応室)20と、アルゴン供給部30と、RF電源40と、酸素ラジカル供給部50とを備えて構成されている。このスパッタ装置1は、基板(成膜対象基板)2の表面に例えば二酸化チタン(TiO2)の薄膜を形成するための、いわゆるRFマグネトロンスパッタ装置である。
本実施の形態のスパッタ銃10は、主として、(二酸化チタンの薄膜を形成する場合には)金属チタン(Ti)のターゲット(金属標的)10aと、このターゲット10aに外部からRF電圧(高周波電圧)を印加するための電極10bとを備えて構成されている。また、このスパッタ銃10は、ターゲット10aの背面側(基板2と対向する面の裏側)に、スパッタリング現象で生じたプラズマをターゲット10a側に閉じ込めるための所定の磁石(不図示)が設けられている。
本実施の形態の主チャンバ20は、例えばステンレス製の気密容器であって、ゲートバルブ等のバルブが設けられた真空配管24、25を通じて、ターボ分子ポンプ(TMP)22及び粗引きポンプ(RP)24により真空排気されるようになっている。図1の例示では、ターボ分子ポンプ22の背圧は、真空配管24を通じて、粗引きポンプ23により形成されるようになっている。また、同図の例示では、真空配管25を通じて、粗引きポンプ23のみによる主チャンバ20の真空排気も可能となっている。
本実施の形態のアルゴン供給部30は、主チャンバ20内部にアルゴン(Ar)(不活性気体)を所定流量で供給するための手段である。このアルゴン供給部30は、アルゴン気体が充填された容器30aと、この容器30aと主チャンバ20とを連結する供給配管30bと、この供給配管30bの途中に設けられたマスフローコントローラ(MFC)30cとを備えて構成されている。
本実施の形態のRF電源40は、基板2の表面と、スパッタ銃10のターゲット10aの表面との間にRF電圧を印加する装置である。このRF電源40では、例えば100W乃至200Wの出力(RF出力)が可能である。本実施の形態では、基板2とターゲット10aとの間にRF電圧を印加することにより、基板2を陽極(+)とし、ターゲット10aを陰極(−)とするものである。
本実施の形態の酸素ラジカル供給部50は、基板2の表面と、ターゲット10aの表面との間隙に対し酸素ラジカル(つまり、酸素原子O)(成膜用気体)を供給するための手段である。この酸素ラジカル供給部50は、主として、後述するラジカル銃500を備えて構成されるものである。本実施の形態の酸素ラジカル供給部50は、更に、酸素気体(O2)が充填された容器510と、この容器510とラジカル銃500とを連結する供給配管520と、ラジカル銃500に対しRF電圧を印加するRF電源530と、ラジカル銃500内部の放電発光を検出する検出部540とを備えている。
尚、本実施の形態の主チャンバ20には、ゲートバルブ21aを介して、基板2交換用のロードロックチャンバ21が設けられている。このロードロックチャンバ21は、主チャンバ20よりは容積が小さい上に、専用のターボ分子ポンプ(TMP)21b及び粗引きポンプ21cにより真空排気が可能となっている。既に真空状態にある主チャンバ20内部のマニピュレータ3に基板2を装着する場合、(1)ゲートバルブ21aを閉じた状態でロードロックチャンバ21の扉(不図示)を開けて、周知の移動機構21dの端部に基板2を装着し、(2)ロードロックチャンバ21内部を真空排気し、(3)ゲートバルブ21aを開けて、移動機構21dにより基板2を主チャンバ20内部に移動させてからマニピュレータ3に装着する、ことにより、主チャンバ20内部の真空状態を破らずに装着動作を実行できる。ここで、マニピュレータ3は、基板2を保持するとともに、主チャンバ20の真空状態を破ることなく、この基板2を例えば図1の矢印の方向に回転させる機能を有するものである。このマニピュレータ3は、基板2を所定温度に保持するための周知の温度調節手段(例えばヒータ、不図示)を備えているものとする。また、基板2とターゲット10aとの間隙には、スパッタリング時以外に基板2の表面を保護するための可動式シャッタ(不図示)が設けられている。
また、本実施の形態の主チャンバ20には、成膜前の真空度又は成膜圧力を測定するための所定の真空計/圧力計(不図示)が設けられている。本実施の形態では、例えば、この圧力計により測定された圧力を示す信号に基づいてマスフローコントローラ30cが動作し、主チャンバ20内部の成膜圧力が所定値に保持されるようなアルゴンの流量が設定されるようになっている。
本実施の形態のスパッタ装置1は、主チャンバ20内部に酸素気体(O2)を所定流量で供給するための酸素供給部60を更に備えている。この酸素供給部60は、酸素気体が充填された容器60aと、この容器60aと主チャンバ20とを連結する供給配管60bと、この供給配管60bの途中に設けられたマスフローコントローラ(MFC)60cとを備えて構成されている。この酸素供給部60の適用例として、基板2の表面から炭素不純物等を除去してその平坦性を確保するための酸素アニール処理等が挙げられる。但し、この酸素供給部60は、本実施の形態のスパッタ装置1に対して必須の構成ではない。
以上の構成を備えたスパッタ装置1を用いて、基板2及びターゲット10aに対し、例えば特開2003−311157号公報に開示された周知のRFマグネトロンスパッタ方法を実施することができる。
尚、図1に例示されるスパッタ装置1におけるスパッタ銃10、主チャンバ20、アルゴン供給部30、及びRF電源40の構成は、周知のRFマグネトロンスパッタ方法を実施するための一例であり、同図の例示に限定されるものではない。例えば、主チャンバ20を真空又は減圧にするためのポンプは、いわゆるバックグラウンドの真空度が所定値に到達するとともに、スパッタリング時に所定の成膜圧力を保持できる(減圧できる)ものであれば、いかなるポンプを使用してもよい。
<<<酸素ラジカル供給部>>>
図2の部分断面図に例示されるように、前述したラジカル銃500は、例えばステンレス製の本体501における筒状部501aの内部にRF用コイル(高周波コイル)503を有し、この筒状部501aの大気側の開口部(出口)をフランジ部(入口)501bで閉じた構成を備えて、いわゆる誘導結合型プラズマを発生させるものである。
筒状部501aは、誘導結合型プラズマを発生させるためにRF用コイル503が巻回された空間(筒体)502を内部に有している。つまり、RF用コイル503は、空間502を画成する筒状部501a内壁に設けられている。空間502の長手方向の大気側(主チャンバ20の外側)から真空側(主チャンバ20の内側)まで酸素分子(O2)が流れる途中でその一部が酸素ラジカル(O)に解離するようになっている。具体的には、空間502内部の酸素分子がRF用コイル503からの高電圧によりプラズマ状態となり、このプラズマの内部で、更にRFコイル503からの変動磁場により誘起された誘導電流が流れてジュール熱が発生する。酸素分子は、このジュール熱により酸素ラジカルに熱解離する。尚、筒状部501aの真空側の開口部には、電荷を帯びていない中性物質(例えば、酸素ラジカル)のみを通過可能とする所定のアパーチャ504が設けられている。
フランジ部501bは、RF用コイル503の電極505と、空間502に連通するビューイングポート506とを有し、このビューイングポート506用の管部には、前述した酸素分子(酸素気体)の容器510につながる供給管520が連結されている。
以上の構成を備えた酸素ラジカル供給部50の動作例の概略について述べる。本実施の形態のラジカル銃500内部の空間502は、前述した主チャンバ20に接続されていることにより真空状態に保たれている。そこで、容器510から供給管520を通じて空間502へ酸素分子を所定の押し圧をもって供給すると、この酸素分子は、空間502と主チャンバ20との差圧により主チャンバ20へ向かって飛行する。このとき、RF用コイル503のRFにより誘起される放電により、酸素分子の一部は酸素ラジカルに解離し、この酸素ラジカルがアパーチャ504により選別されて主チャンバ20内部に到達するようになっている。
従って、酸素ラジカル供給部50における酸素ラジカルの生成効率を決めるパラメータは、空間502に与えられるRFパワー及び酸素分子の圧力と言える。そこで、RF電源530のRF出力と、ラジカル銃500動作時の主チャンバ20内部の圧力とをモニタしつつ、空間502内部の放電発光強度(これが大きいほど酸素ラジカルの生成効率も高くなる)を求めることにより、これらのパラメータを予め最適化することができる。尚、図2に例示されるように、放電発光強度は、例えば、ビューイングポート506に設けられた検出部540による検出結果から求めることができる。
図3のグラフの例示によれば、本実施の形態の酸素ラジカル供給部50の仕様として、RF出力を例えば350Wとし、且つ、主チャンバ20内部の圧力が例えばおよそ4×10-5Torrとなるように空間502内部の酸素分子の圧力を設定すれば、酸素ラジカルの生成効率が最大となる、と言える。
尚、前述した酸素ラジカル供給部50は、誘導結合型プラズマを利用して酸素分子を酸素ラジカルに解離させるものであったが、これに限定されるものではない。一般に、酸素分子を原子(酸素ラジカル)に解離させることは、酸素分子に対し光照射や電子衝撃等を作用させるための様々な手段により実現できる。また、放電で解離させる場合、例えば電極を用いた放電であってもよい。但し、本実施の形態のように電極を用いない誘導結合型プラズマの方が、酸素ラジカルに対し、電極物質に起因した汚染の虞が少ないという利点がある。
===金属酸化物成膜方法===
図4乃至図6を参照しつつ、前述した構成を備えたスパッタ装置1を用いた金属酸化物成膜方法について説明する。以下、基板2の表面にアナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO2)の薄膜を形成するものとする。
図4のフローチャートに例示されるように、ロードロックチャンバ21を用いて成膜対象の基板2をマニピュレータ3に装着し、主チャンバ20において、基板2の表面と、ターゲット10aの表面とを対向配置させる(S100)。
次に、アルゴン供給部30及び酸素ラジカル供給部50を動作させて主チャンバ20内部にアルゴン(Ar)及び酸素ラジカル(O)を供給しつつ、RF電源40を動作させて基板2及びターゲット10a間にRF電圧を印加して、スパッタリングプロセスを開始させる(S101)。このスパッタリングプロセス中は、成膜圧力を所定値に維持するべくアルゴン供給部30及び酸素ラジカル供給部50を制御するものとする。
以下、スパッタリングプロセスにおいて進行すると予想される原子レベルのプロセス(素過程)の一例について説明する。
陽極(+)としての基板2と、陰極(−)としてのターゲット10aとの間隙にはプラズマが発生するとともに、基板2からターゲット10aへ向かう電場が形成されるため、放電により前記間隙において生成されたアルゴンイオン(Ar+)は、ターゲット10aに向かって加速される(S200:図4)(図5のプロセスA)。
加速されたアルゴンイオンが、ターゲット10aの表面を構成するチタン原子(Ti)をノックオン(knock-on)することにより、表面からは、例えばチタン原子が基板2及びターゲット10aの間隙内に飛翔する(S201:図4)(図5のプロセスB)。
基板2及びターゲット10aの間隙内を飛翔するチタン原子と、同間隙内に供給された酸素ラジカルとが反応して例えば二酸化チタン分子(TiO2)となる(S202:図4)(図5のプロセスC)。
基板2及びターゲット10aの間隙内を飛翔する二酸化チタン分子が基板2の表面に到達する(S203:図4)(図5のプロセスD)。
尚、前述したプロセスA乃至Dは、気相中で1つのチタン原子が2つの酸素ラジカルと反応するといった、あくまでも一例に過ぎない。実際には、基板2及びターゲット10aの間隙はプラズマ状態にあるため、多数のイオン・原子・分子どうしが衝突し合って、より複雑なプロセスが同時に進行し得る。例えば、ターゲット10aの表面から飛翔するチタンは、1個の原子とは限らず、複数個の原子からなるクラスタの場合もあり得る。また例えば、チタンの原子又はクラスタと酸素ラジカルとが気相中で反応して生成される酸化チタンは、TiO2なる化学組成にならない場合もあり得る。本実施の形態のスパッタ装置1では、もし気相中でTiO2とは異なる化学組成の酸化チタンが生成されても、この酸化チタンで基板2の表面を成膜した結果、当該表面にTiO2なる化学組成の薄膜2aが形成されることを実現可能とするものである。このような基板2上での現象には、例えばこの基板2の温度(例えば300℃)が重要なパラメータになると考えられる。
図4に例示されるように、前述したステップS101のスパッタリングプロセスを停止させ(S102)、ロードロックチャンバ21を通じて、表面にアナターゼ型二酸化チタン薄膜2a(図6)が形成された基板2を主チャンバ20から取り出す(S204:YES、S205、S103)。
===品質が良く基板上で緻密な金属酸化物の効率良い成膜===
本実施の形態のスパッタ装置1によれば、前述したプロセスBでノックオンされたチタン原子(Ti)を酸化するために供給する気体は、例えば特開平11−130434号公報に開示されている酸素分子(O2)のみではなく、酸素ラジカル(O)を含むものである。酸素分子より活性とされる酸素ラジカルの方が、チタン原子との反応速度はより速いため、これはアナターゼ型二酸化チタン(TiO2)の成膜レートの向上に寄与し得る。よって、本実施の形態のスパッタ装置1によれば、基板2の表面上にアナターゼ型二酸化チタン薄膜2a(図6)を効率良く形成できる。
このように、酸素分子を用いる場合よりも成膜レートが高ければ、この高い分だけ、酸素ラジカルの流量、つまり容器510からラジカル銃500に供給する酸素分子の流量を抑制することができるため、これは主チャンバ20内部の成膜圧力の低下につながる。成膜圧力が低いと、これにともない、基板2及びターゲット10aの間隙における例えば酸素イオン(O-)の分圧も低下し得る。また、成膜圧力が低いと、これにともない、基板2及びターゲット10aの間隙における例えばアルゴンイオン(Ar+)の分圧も低下し得る。
図6の模式図に例示されるように、前述した酸素イオンは、電場に加速されて基板2の表面上に形成された二酸化チタン薄膜2aにダメージを与える虞があるとされている。同様に、前述したアルゴンイオンのうち、ターゲット10aへの衝突時に中性化されてアルゴン原子(Ar)となったものは、その反射の運動エネルギーをもって二酸化チタン薄膜2aに衝突してこれにダメージを与える虞があるとされている。本実施の形態のスパッタ装置1によれば、成膜レートを向上させつつ、酸素分子を用いる場合よりも成膜圧力を低下させることができるため、酸素イオンやアルゴンイオン・原子等による薄膜へのダメージを抑制できる。
また、成膜圧力がより低下すれば、この圧力を構成するアルゴン、酸素ラジカル、酸素イオン、酸素分子、チタン、酸化チタン等以外の不純物の混入も抑制できる。これにより、薄膜2aにおけるアナターゼ型二酸化チタンの純度を向上させることができる。
以上から、例えば特開平11−130434号公報に開示されている酸素分子のみを用いる場合に比べて、本実施の形態では、薄膜2aにおけるアナターゼ型二酸化チタンの純度をより高めるとともに、薄膜2aの平坦性といった緻密性をより高めることができる。
===その他の実施の形態===
前述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
前述した実施の形態の金属酸化物の一例としてアナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO2)を挙げたが、これに限定されるものではない。本発明の金属酸化物は、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化鉄(Fe2O3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等、光触媒としての機能を有するものであればいかなる金属酸化物でもよい。
また、前述した実施の形態の成膜対象基板の一例としてチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を挙げたが、これに限定されるものではない。本発明の成膜対象基板は、金属酸化物薄膜と密着性の良い表面を有する基板であればいかなるものでもよい。
また、前述した実施の形態の不活性気体の一例としてアルゴンを挙げたが、これに限定されるものではない。本発明の不活性気体は、例えば、他の希ガスや窒素等の不活性気体であればいかなる気体でもよい。
前述した実施の形態のスパッタ装置1を用いて、基板2の表面上に薄膜2aを形成する実験を行った。以下述べる各実施例に共通する成膜条件は以下の通りである。ターゲット10aは公称純度99.99%の金属チタン(Ti)であった。基板2の表面はチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の単結晶の(100)面であった。スパッタリングプロセス中の基板2の温度は300℃に保持された。酸素ラジカル供給部50におけるRF出力は350Wであった。
===実施例1===
図7乃至図9を参照しつつ、実施例1の実験結果について説明する。実施例1では、成膜用気体として、本発明の酸素ラジカル(O)と、例えば特開平11−130434号公報に開示されている酸素分子(O2)とを用いた。つまり、前述した酸素ラジカル供給部50を動作させて基板2に薄膜2aを形成し(第1サンプル)、前述した酸素供給部60を成膜用気体としての酸素分子を供給するべく動作させて基板2に薄膜2aを形成した(第2サンプル)。何れの場合も、成膜圧力を7.5mTorrに保持し、基板2及びターゲット10a間の距離を70mmとして、この間に印加するRF出力を200Wとした。また、何れの場合も、スパッタ装置1を用いて薄膜2aを単層形成した後、周知のX線回折装置(XRD:X-Ray Diffraction)(不図示)を用いて、その結晶性をいわゆるθ−2θ法にて測定した。ここで、第1サンプル及び第2サンプルに形成された薄膜2aの厚さは、光の反射による周知の膜厚測定装置(不図示)により測定した。更に、第1サンプルについては、周知の分光光度計(Hitachi High Technologies社製U2800型)を用いて光の透過率の波長依存を測定するとともに、周知の原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)(不図示)を用いて薄膜2aの表面の画像を得た。
図7のグラフに示される、単層薄膜2aに対するX線回折の強度分布によれば、アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)の(004)及び(008)面に帰属されるピークに関して、酸素ラジカルによる第1サンプルの場合が、酸素分子による第2サンプルの場合よりも、強度が大きいことがわかった。尚、同図の2つの強度分布は、薄膜2aの下地であるチタン酸ストロンチウムの(200)面に帰属されるピークの強度をもって規格化してある。同図に示される結果は、酸素ラジカルによる第1サンプルの場合が、酸素分子による第2サンプルの場合よりも、薄膜2aにおけるアナターゼ型二酸化チタンの割合が高いことを意味する(高品質)。
また、単層薄膜2aを形成するのに要したスパッタリング時間に基づいて求めた成膜レートは、酸素ラジカルによる第1サンプルの場合、2.1nm/分であったのに対し、酸素分子による第2サンプルの場合、0.5nm/分であった。これは、酸素ラジカルにより酸化する場合が、酸素分子により酸化する場合よりも、成膜レートがおそそ4倍高いことになる。
図8のグラフに示される透過率曲線によれば、入射光の波長およそ390nmを境にして、入射光に対する第1サンプルの薄膜2aの吸収に大きな変化が生じることがわかった。一方、アナターゼ型二酸化チタンのバンドギャップエネルギー(Eg)は3.2eV、即ち388nmとされているため、図8に示される結果により、第1サンプルの薄膜2がいわゆるアナターゼ型二酸化チタンの電子状態と略同じ電子状態を有するものであると言える。
図9の写真に示される原子間力顕微鏡の画像に基づいて、第1サンプルの薄膜2の表面の荒さを示すRMS(Root Mean Square)は、0.32nmと求められた。これにより、薄膜2aには、前述した光触媒がセルフクリーニング作用や親水性等を発現するという点で十分な平坦性が確保されていると言える。
===実施例2===
図10乃至図13を参照しつつ、実施例2の実験結果について説明する。実施例2では、成膜用気体として、本発明の酸素ラジカル(O)のみを用い、成膜圧力を5、6、7.5、8、9、10、15mTorrに変化させて、基板2の表面上に薄膜2aを形成した。但し、成膜圧力7.5mTorrの結果は前述した実施例1の第1サンプルの結果と同一である。何れの場合も、基板2及びターゲット10a間の距離を70mmとして、この間に印加するRF出力を200Wとした。尚、成膜圧力が5、6mTorrの場合の薄膜2aをそれぞれ第3、第4サンプルとし、成膜圧力が8、9、10、15mTorrの場合の薄膜2aをそれぞれ第5、第6、第7、第8サンプルとする。何れの薄膜2aについても、X線回折装置を用いてその結晶性をθ−2θ法にて測定し、厚さを膜厚測定装置により測定し、光の屈折率と光の透過率の波長依存とを分光光度計により測定し、表面の画像を原子間力顕微鏡により撮影した。
図10のグラフに示されるX線回折の強度分布によれば、アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)の(004)及び(008)面に帰属されるピークは、成膜圧力が6mTorr以下ではその強度が略ゼロである一方、成膜圧力が8mTorrから15mTorrへと高くなるにつれて、その強度がより小さくなることがわかった。尚、同図の7つの強度分布は、薄膜2aの下地であるチタン酸ストロンチウムの(200)面に帰属されるピークの強度をもって規格化してある。
図11のグラフに示される成膜レートによれば、薄膜2aの厚さ及びスパッタリング時間に基づいて求めた成膜レートは、成膜圧力が6mTorrから7.5mTorrへと高くなるにつれて急峻に低下する一方、成膜圧力が7.5mTorrから15mTorrへと高くなるにつれて徐々に低下することがわかった。
以上の結果から、成膜圧力が5、6mTorrの場合(第3、第4サンプル)に急速に成長した薄膜2aはアナターゼ型二酸化チタンの単結晶ではなかったが、成膜圧力が7.5、8、9、10、15mTorrの場合(第1、第5、第6、第7、第8サンプル)に単層分成長した薄膜2aはアナターゼ型二酸化チタンの単結晶であったと言える。
図12(a)のグラフに示される屈折率曲線によれば、第1、第5、第6、第7、第8サンプルの屈折率は2.51乃至2.58であり、これはアナターゼ型二酸化チタンの屈折率の文献値(”Applied Surface Science”、Elsevier、第195巻、2002年、p.284)の2.54に近い値であることがわかった。これにより、第1、第5、第6、第7、第8サンプルの薄膜2がいわゆるアナターゼ型二酸化チタンの電子状態と略同じ電子状態を有するものであると言える。
図12(b)のグラフに示される透過率曲線によれば、入射光の波長およそ390nmを境にして、入射光に対する第1、第5、第6、第7、第8サンプルの薄膜2aの吸収に大きな変化が生じることがわかった。一方、アナターゼ型二酸化チタンのバンドギャップエネルギー(Eg)は3.2eV、即ち388nmとされているため、同図に示される結果により、第1、第5、第6、第7、第8サンプルの薄膜2がいわゆるアナターゼ型二酸化チタンの電子状態と略同じ電子状態を有するものであると言える。
図13の写真に示される原子間力顕微鏡の画像に基づいて、第8サンプル(a)、第7サンプル(b)、第6サンプル(c)、第5サンプル(d)、第1サンプル(e)の薄膜2の表面の荒さを示すRMS(Root Mean Square)は、それぞれ0.22nm、0.27nm、0.29nm、0.32nm、0.32nmと求められた。これにより、薄膜2aには、前述した光触媒がセルフクリーニング作用や親水性等を発現するという点で十分な平坦性が確保されていると言える。
===実施例3===
図14を参照しつつ、実施例3の実験結果について説明する。実施例3では、本発明の酸素ラジカル(O)を成膜用気体とし、基板・ターゲット間距離を120mm及び70mmの2種類に設定して、薄膜2aを形成した。何れの場合も、成膜圧力を5mTorrに保持し、基板2及びターゲット10a間に印加するRF出力を200Wとした。尚、基板・ターゲット間距離が120mmの場合の薄膜2aを第9サンプルとする(一方、「70mm」の場合の薄膜2aは前述した第3サンプルである)。第9サンプルの薄膜2aについて、X線回折装置を用いてその結晶性をθ−2θ法にて測定し、厚さを膜厚測定装置により測定し、表面の画像を原子間力顕微鏡により撮影した。これら第9サンプルの結果を、実施例2で求めた第3サンプルの結果と比較した。
図14(a)のグラフに示されるX線回折の強度分布によれば、アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)の(004)及び(008)面に帰属されるピークは、距離70mmではその強度が略ゼロである一方、距離120mmでは有意なものが出現した。尚、同図の2つの強度分布は、薄膜2aの下地であるチタン酸ストロンチウムの(200)面に帰属されるピークの強度をもって規格化してある。
第3サンプルで急速に成長した薄膜2aは、前述したように、アナターゼ型二酸化チタンの単結晶ではなかった。一方、基板・ターゲット間距離を70mmから120mmへと長くする以外には第3サンプルと同一の条件で形成された第9サンプルの薄膜2aは、アナターゼ型二酸化チタンの単結晶を含むものとなった。しかも、第9サンプルの薄膜2aの成膜レートは、7.6nm/分であって、前述した第2サンプルの成膜レート(0.5nm/分)よりも高い結果となった。しかし、図14(b)の写真に示される画像に基づいて求めた第9サンプルの薄膜2の表面の荒さを示すRMS(Root Mean Square)は33nmであるため、この薄膜2aは単層ではない上に、十分な平坦性があるとは言えない。
===実施例4===
図15を参照しつつ、実施例4の実験結果について説明する。実施例4では、本発明の酸素ラジカル(O)を成膜用気体とし、基板・ターゲット間のRF出力を200W及び100Wの2種類に設定して、薄膜2aを形成した。何れの場合も、成膜圧力を5mTorrに保持し、基板・ターゲット間距離を70mmとした。尚、基板・ターゲット間のRF出力が100Wの場合の薄膜2aを第10サンプルとする(一方、200Wの場合の薄膜2aは前述した第3サンプルである)。第10サンプルの薄膜2aについて、X線回折装置を用いてその結晶性をθ−2θ法にて測定し、厚さを膜厚測定装置により測定し、表面の画像を原子間力顕微鏡により撮影した。これら第10サンプルの結果を、実施例2で求めた第3サンプルの結果と比較した。
図15(a)のグラフに示されるX線回折の強度分布によれば、アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)の(004)及び(008)面に帰属されるピークは、RF出力200Wではその強度が略ゼロである一方、RF出力100Wでは有意なものが出現した。尚、同図の2つの強度分布は、薄膜2aの下地であるチタン酸ストロンチウムの(200)面に帰属されるピークの強度をもって規格化してある。
第3サンプルで急速に成長した薄膜2aは、前述したように、アナターゼ型二酸化チタンの単結晶ではなかった。一方、基板・ターゲット間のRF出力を200Wから100Wへと小さくする以外には第3サンプルと同一の条件で形成された第10サンプルの薄膜2aは、アナターゼ型二酸化チタンの単結晶を含むものとなった。しかも、図15(b)の写真に示される画像に基づいて求めた第10サンプルの薄膜2の表面の荒さを示すRMS(Root Mean Square)は0.16nmであるため、第10サンプルの薄膜2aは、前述した光触媒がセルフクリーニング作用や親水性等を発現するという点で十分な平坦性が確保されていると言える。しかし、第10サンプルの薄膜2aの成膜レートは、0.2nm/分であって、前述した第2サンプルの成膜レート(0.5nm/分)よりも低い結果となった。
===成膜条件===
以下、表1に、第1乃至第4実施例で設定された成膜条件及び実験結果を示す。
表1によれば、本発明のスパッタ装置1を用いて、薄膜2aの品質(薄膜2aにおけるアナターゼ型二酸化チタンの割合)、緻密性(RMS値)、及び成膜レートを、従来の方法に基づく第2サンプルよりも向上させるような成膜条件は、以下の通りとなる。即ち、これは、第1、第5、第6、第7、第8サンプルの成膜条件であって、成膜圧力をおよそ7.5mTorr乃至15mTorrとし、基板・ターゲット(ST)間のRF出力をおよそ200Wとし、基板・ターゲット(ST)間距離をおよそ70mmとするものである。
本実施の形態のスパッタ装置の構成例を示すブロック図である。 本実施の形態の酸素ラジカル供給部の構成例を示す部分断面図である。 本実施の形態の主チャンバ内部の圧力と、ラジカル銃内部の放電発光強度との関係をRF出力ごとに示すグラフである。 本実施の形態のスパッタ装置を用いてアナターゼ型二酸化チタン薄膜を形成する作業手順及び主チャンバ内部のスパッタリングプロセスの一例を示すフローチャートである。 本実施の形態の基板及びターゲット間におけるスパッタリングプロセスの一例を示す模式図である。 本実施の形態の基板及びターゲット間における他のプロセスの一例を示す模式図である。 酸素ラジカルを用いて形成された単層薄膜に対するX線回折の強度分布と、酸素分子を用いて形成された単層薄膜に対するX線回折の強度分布とを示すグラフである。 酸素ラジカルを用いて形成された薄膜に対する光の透過率の波長依存を示すグラフである。 酸素ラジカルを用いて形成された薄膜の表面を原子間力顕微鏡により撮影して得た画像を示す写真である。 酸素ラジカルを用い、5、6、7.5、8、9、10、15mTorrの成膜圧力で形成された薄膜に対するX線回折の強度分布を示すグラフである。 成膜圧力に対する成膜レートの変化を示すグラフである。 (a)は、成膜圧力に対する薄膜の屈折率の変化を示すグラフでああり、(b)は、各成膜圧力で形成された薄膜に対する光の透過率の波長依存を示すグラフである。 各成膜圧力で形成された薄膜の表面を原子間力顕微鏡により撮影して得た画像を示す写真である。 (a)は、基板・ターゲット間距離を120mmとして形成された薄膜に対するX線回折の強度分布と、基板・ターゲット間距離を70mmとして形成された薄膜に対するX線回折の強度分布とを示すグラフであり、(b)は、基板・ターゲット間距離を120mmとして形成された薄膜の表面を原子間力顕微鏡により撮影して得た画像を示す写真である。 (a)は、基板・ターゲット間のRF出力を200Wとして形成された薄膜に対するX線回折の強度分布と、基板・ターゲット間のRF出力を100Wとして形成された薄膜に対するX線回折の強度分布とを示すグラフでああり、(b)は、基板・ターゲット間のRF出力を100Wとして形成された薄膜の表面を原子間力顕微鏡により撮影して得た画像を示す写真である。
符号の説明
1 スパッタ装置
2 基板 2a 薄膜
3 マニピュレータ 10 スパッタ銃
10a ターゲット 10b 電極
20 主チャンバ 21 ロードロックチャンバ
21a ゲートバルブ 21b、22 ターボ分子ポンプ
21c、23 粗引きポンプ 21d 移動機構
24、25 真空配管 30 アルゴン供給部
30a、60a 容器 30b、60b 供給管
30c、60c マスフローコントローラ 40 RF電源
50 酸素ラジカル供給部 500 ラジカル銃
501 本体 501a 筒状部
501b フランジ部 502 空間
503 RF用コイル 504 アパーチャ
505 電極 506 ビューイングポート
510 容器 520 供給管
530 RF電源 540 検出部

Claims (5)

  1. 高周波電圧が印加される金属標的及び成膜対象基板が対向して配置される反応室に対して、減圧と不活性気体及び成膜用気体の供給とを行うことにより、
    前記不活性気体のイオンで前記金属標的の表面をスパッタし、
    前記金属標的の表面から飛翔する金属と前記成膜用気体とから金属酸化物を生成し、
    前記金属酸化物で前記成膜対象基板の表面を成膜する金属酸化物成膜装置であって、
    前記成膜用気体として酸素ラジカルを供給する酸素ラジカル供給部、を備えたことを特徴とする金属酸化物成膜装置。
  2. 前記酸素ラジカル供給部は、
    酸素分子が供給される入口と、前記酸素ラジカルを前記反応室へ供給する出口と、を有する筒体と、
    前記筒体の内部をプラズマ状態として前記酸素分子から前記酸素ラジカルを解離するべく、前記筒体の周囲に巻回されるとともに高周波電圧が印加される高周波コイルと、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物成膜装置。
  3. 前記不活性気体は、アルゴン(Ar)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属酸化物成膜装置。
  4. 前記金属標的は、チタン(Ti)であり、
    前記金属酸化物は、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO2)である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属酸化物成膜装置。
  5. 高周波電圧が印加される金属標的及び成膜対象基板が対向して配置される反応室を減圧し、
    前記反応室に不活性気体を供給し、
    前記反応室に酸素ラジカルを供給することにより、
    前記不活性気体のイオンで前記金属標的の表面をスパッタし、
    前記金属標的の表面から飛翔する金属と前記酸素ラジカルとから金属酸化物を生成し、
    前記金属酸化物で前記成膜対象基板の表面を成膜する、
    ことを特徴とする金属酸化物成膜方法。

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