JP2007204796A - 機械構造用部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.3〜1.3mass%、Si:1.1mass%以下、Mn:2.0mass%以下、Al:0.25mass%以下およびMo:0.05〜2.0mass%を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼材に、800〜900℃の温度範囲で総加工率が10%以上の加工を施し、次いで700〜500℃の温度範囲で総加工率が10%以上の加工を施し、かつ700〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を0.2℃/s以上として500℃以下まで冷却し、その後600〜800℃の温度範囲の昇温速度を400℃/s以上、加熱温度を800〜1050℃および800℃以上の滞留時間を5秒以下とする条件にて高周波焼入れを施す。
【選択図】なし
Description
他方、近年、環境問題から自動車用部品に対する軽量化への要求が強く、この観点から自動車用部品における疲労強度の一層の向上が要求されている。
例えば、ねじり疲労強度を向上させるためには、高周波焼入れによる焼入れ深さを増加させることが考えられる。しかしながら、焼入れ深さを増加してもある深さで疲労強度は飽和する。
また、ねじり疲労強度の向上には、粒界強度の向上も有効であり、この観点から、TiCを分散させることによって旧オーステナイト粒径を微細化する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、上記の特許文献1に開示された技術をもってしても、近年の疲労強度に対する要求には十分に応えられないところにも問題を残していた。
しかしながら、上記のCD/Rを制御したとしても疲労特性の向上には限界があり、やはり近年のねじり疲労強度に対する要求には十分に応えることができなかった。
その結果、高周波焼入前に施す加工の条件、加工時の冷却条件および高周波焼入条件を規制することによって、ねじり疲労強度、曲げ疲労強度および転動疲労強度などの疲労特性が改善することを見出すに到った。
記
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)>2.0 ・・・(1)
記
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)(1+2.1Cr)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0 ・・・(2)
記
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)(1+2.1Cr)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)(1+1000B)>2.0 ・・・(3)
本発明の機械構造用部品は、自動車用のドライブシャフト、インプットシャフト、アウトプットシャフト、クランクシャフト、等速ジョイントの内輪および外輪、ハブ、そしてギア等、部品毎に様々な形状並びに構造に成るが、いずれにおいても、特に疲労強度が要求される部分または全部に焼入れを施して硬化層を形成するものである。
なお、加工法としては、例えば、冷間鍛造、冷間しごき、転造加工、ショット等が挙げられる。
C:0.3〜1.3 mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.3mass%に満たないと、必要とされる疲労強度を確保するために焼入れ硬化深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、またベイナイト組織も生成し難くなるため、0.3mass%以上を添加する。一方、1.3 mass%を超えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度も低下し、また切削性、冷間鍛造性および耐焼き割れ性も低下する。このためCは、0.3〜1.3 mass%の範囲に限定した。好ましくは 0.4〜0.6 mass%の範囲である。
Siは、脱酸剤として作用するだけでなく、強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が1.1mass%を超えると、被削性および鍛造性の低下を招くため、Si量は1.1mass%以下とする。
なお、強度向上のためには0.05mass%以上とすることが好ましい。
Mnは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化深さを確保する上で有用な成分であるため、添加できる。含有量が 0.2mass%未満ではその添加効果に乏しいので、0.2mass%以上が好ましい。好ましくは 0.3mass%以上である。一方、Mn量が 2.0mass%を超えると焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは 2.0mass%以下が好ましい。なお、Mnは含有量が多いと、母材の硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるので、1.2 mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは 1.0mass%以下である。
Alは、脱酸に有効な元素である。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって焼入れ硬化層の粒径を微細化する上でも有用な元素であるので添加してもよい。含有量が 0.005mass%に満たないとその添加効果に乏しいため、0.005mass%以上とすることが好ましい。一方0.25mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、Alは0.25mass%以下の範囲で含有させる。好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
Moは、焼入硬化層の旧γ粒径を微細化するのに、さらに前述の微細析出物を得るのに必須の元素である。そのためには、0.05mass%以上含有する必要があるが、2.0mass%以上添加させてもその効果は飽和し、かつ被削性の劣化も招くため、Moは2.0mass%以下とする。
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)>2.0----(1)
これは、(1)式を満たすようにC、Si、MnおよびMoの含有量を調整することにより、高周波焼入前組織として、ベイナイトとマルテンサイトの合計の組織分率を10vol%以上とすることが可能となり、高周波焼入れ後の硬化層を本発明の組織とすることが可能となる。また、(1)式の値が2.0以下では高周波焼入後の硬化層の硬さも小さくなり、さらに、硬化層深さを十分に確保することも困難となる。
Cr:2.5 mass%以下
Crは、焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用な元素である。しかし、過度に含有されると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有は極力低減することが望ましいが、2.5 mass%までは許容できる。好ましくは1.5mass%以下である。
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。さらに、炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0 mass%を超えると熱間加工時に割れが発生するため、1.0 mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5 mass%以下である。
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、2.5 mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、2.5 mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上含有させることが望ましい。さらに、好ましくは 0.1〜1.0 mass%である。
Vは、鋼中でC, Nと結合し析出強化元素として作用する。V析出物を微細かつ多量に析出させることにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5 mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.5 mass%以下とすることが好ましい。なお、0.01mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.03〜0.3 mass%である。
Wは、W(C,N)として析出することにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。さらに、脆化作用により被削性を向上させる元素である。しかしながら、1.0mass%を超えて添加しても、効果が飽和する上、コストが上昇し、経済的に不利となるため、1.0 mass%以下で含有させることが好ましい。なお、被削性の改善のためには、Wは 0.005mass%以上含有させることが好ましい。
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0----(2)
Ti:0.1mass%以下
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。さらにはTi(C,N)となり析出することにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。この効果を得るためには、0.005mass%以上で含有することが好ましいが、0.1 mass%を超えて含有されるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くため、Tiは0.1 mass%以下とすることが好ましい。好ましくは0.01〜0.07mass%の範囲である。
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、Nb(C,N)として析出することにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1 mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1 mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005 %未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005 mass%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.01〜0.05mass%である。
Zrは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、Zr(C,N)として析出することにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに、好ましくは0.01〜0.05mass%である。
Bは、粒界強化により疲労特性を改善するだけでなく、強度を向上させる有用な元素であり、好ましくは0.0003mass%以上で添加するが、0.01mass%を超えて添加しても、その効果は飽和するため、0.01mass%以下に限定した。
上記の4成分のうちの1種または2種以上を、基本成分に添加する場合は、上記した式(1)と同様の理由から、次式(3)を満足する必要がある。
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)(1+1000B)>2.0----(3)
上記した所定の成分組成に調整した鋼材を、棒鋼圧延後に熱間鍛造などの熱間加工を施して部品形状とし、部品の少なくとも一部に加熱温度:800〜1000℃の条件下で高周波焼入れを施す。この少なくとも一部を疲労強度が要求される部位とする。
以下、各製造工程について詳しく説明する。
熱間加工の際の800〜900℃での総加工率を10%以上とし、その後700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の平均速度で500℃以下まで冷却する。この条件により、焼入れ前の組織を微細なベイナイトおよび/またはマルテンサイト組織とすることができ、その後の高周波焼入の加熱時にオーステナイト粒が微細化し、さらに、残留炭化物も減少し、結果として得られる硬化層は微細となる。より好ましくは、800〜900℃での総加工率を20%以上かつ平均冷却速度を0.5℃/s以上とする。
さらに、700〜500℃の間で総加工率が10%以上の加工を施す。これは、前述したとおり、微細Mo析出物の析出を促進、疲労強度を向上させるためである。
加熱温度を800〜1050℃とし、600〜800℃を400℃/s以上の昇温速度で昇温する。加熱温度が800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不充分となり、硬化層を得ることができない。一方、加熱温度が1050℃を超える場合と600〜800℃の昇温速度が400℃/s未満の場合にはオーステナイト粒の成長が促進され粗大な旧オーステナイト粒が多くなり、また、Mo析出物が溶解するため、疲労強度の低下を招く。
また、高周波加熱時において800℃以上の滞留時間が長くなると、オーステナイト粒が成長して、さらには、Mo析出物が溶解する傾向にあるので、800℃以上の滞留時間は5秒以下とすることが好ましい。
2 スプライン部
3 つかみ具
Claims (3)
- C:0.3〜1.3mass%、Si:1.1mass%以下、Mn:2.0mass%以下、Al:0.25mass%以下およびMo:0.05〜2.0mass%を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼材に、800〜900℃の温度範囲で総加工率が10%以上の加工を施し、次いで700〜500℃の温度範囲で総加工率が10%以上の加工を施し、かつ700〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を0.2℃/s以上として500℃以下まで冷却し、その後600〜800℃の温度範囲の昇温速度を400℃/s以上、加熱温度を800〜1050℃および800℃以上の滞留時間を5秒以下とする条件にて高周波焼入れを施すことを特徴とする機械構造用部品の製造方法。
記
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)>2.0 ・・・(1) - 前記鋼材は、さらに、Cr:2.5mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:2.5mass%以下、V:0.5mass%以下およびW:1.0mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成となり、かつ前記式(1)に替えて下記式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用部品の製造方法。
記
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)(1+2.1Cr)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0 ・・・(2) - 前記鋼材は、さらに、Ti:0.1mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下およびB:0.01mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成となり、かつ、前記式(1)または(2)に替えて下記式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の機械構造用部品の製造方法。
記
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)(1+2.1Cr)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)(1+1000B)>2.0 ・・・(3)
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