JP3815499B2 - 機械構造用部品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも部分的に高周波焼入れによる硬化層をそなえる、機械構造用部品に関するものである。ここで、機械構造用部品としては、自動車用のドライブシャフト、インプットシャフト、アウトプットシャフト、クランクシャフト、等速ジョイントの内輪および外輪、ハブ、そしてギア等を挙げることができる。
従来、例えば自動車用ドライブシャフトや等速ジョイントなどの機械構造用部品は、熱間圧延棒鋼に、熱間鍛造、さらには切削、冷間鍛造などを施して所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ−焼戻しを行うことにより、機械構造用部品としての重要な特性であるねじり疲労強度、曲げ疲労強度、転動疲労強度およびすべり転動疲労強度等の疲労強度を確保しているのが一般的である。
他方、近年、環境問題から自動車用部品に対する軽量化への要求が強く、この観点から自動車用部品における疲労強度の一層の向上が要求されている。
上述したような疲労強度を向上させる手段としては、これまでにも種々の方法が提案されている。
例えば、ねじり疲労強度を向上させるためには、高周波焼入れによる焼入れ深さを増加させることが考えられる。しかしながら、焼入れ深さを増加してもある深さで疲労強度は飽和する。
また、ねじり疲労強度の向上には、粒界強度の向上も有効であり、この観点から、TiCを分散させることで、旧オーステナイト粒径を微細化する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
上記の特許文献1に記載された技術では、高周波焼入れ加熱時に微細なTiCを多量に分散させることで、旧オースステナイト粒径の微細化を図るものであるため、焼入れ前にTiCを溶体化しておく必要があり、熱間圧延工程で1100℃以上に加熱する工程を採用している。そのため、熱延時に加熱温度を高くする必要があり、生産性に劣るという問題があった。
また、上記の特許文献1に開示された技術をもってしても、近年の疲労強度に対する要求には十分に応えられないところにも問題を残していた。
さらに、特許文献2には、硬化層深さCDと高周波焼入れ軸物部品の半径Rとの比(CD/R)を0.3〜0.7に制限した上で、このCD/Rと高周波焼入れ後の表面から1mmまでのオーステナイト粒径γf、高周波焼入れままの(CD/R)=0.1までの平均ビッカース硬さHfおよび高周波焼入れ後の軸中心部の平均ビッカース硬さHcで規定される値AをC量に応じて所定の範囲に制御することによってねじり疲労強度を向上させた機械構造用軸物部品が提案されている。
しかしながら、上記のCD/Rを制御したとしても疲労特性の向上には限界があり、やはり近年のねじり疲労強度に対する要求には十分に応えることができなかった。
特開2000−154819号公報(特許請求の範囲、段落〔0008〕) 特開平8−53714号公報(特許請求の範囲)
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、従来よりも疲労強度を一層向上させた機械構造用部品を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、前記したような疲労特性を効果的に向上させるべく、特に高周波焼入れ組織について鋭意検討を行った。
その結果、高周波焼入れ組織の旧オーステナイト粒の粒径分布に着目し、旧オーステナイト粒の平均粒径および最大粒径を微細化することにより、ねじり疲労強度、曲げ疲労強度および転動疲労強度などの疲労特性が改善することを見出すに到った。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(i)少なくとも一部分に焼入れを施した鋼材を用いた機械構造用部品であって、C:0.3〜1.5mass%、Si:3.0mass%以下、Mn:2.0mass%以下、Al:0.25mass%以下、S:0.1mass%以下およびN:0.01mass%以下を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物の成分組成を有し、前記焼入れ組織は、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下であることを特徴とする機械構造用部品。

1/2 (1+0.7Si)(1+3Mn)>2.0 ・・・(1)
ただし、C、SiおよびMn:各元素の含有量(mass%)
(ii)前記成分組成として、さらに、Cr:2.5mass%以下、Mo:1.0mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:2.5mass%以下、V:0.3mass%以下およびW:1.0mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、かつ前記式(1)に替えて下記式(2)を満足することを特徴とする上記(i)に記載の機械構造用部品。

1/2 (1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0 ・・・(2)
ただし、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、VおよびW:各元素の含有量(mass%)
(iii)前記成分組成として、さらに、Ti:0.1mass%以下、Nb:0.1mass%以下、
Zr:0.1mass%以下およびB:0.01mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、かつ前記式(1)又は(2)に替えて下記式(3)を満足することを特徴とする上記(i)または(ii)に記載の機械構造用部品。
(iv)前記成分組成として、さらに、Pb:0.1mass%以下、Se:0.1mass%以下、Te:0.1mass%以下、Ca:0.01mass%以下、Mg:0.01mass%以下およびREM:0.1mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(i)、(ii)または(iii)に記載の機械構造用部品。
(v)C:0.3〜1.5mass%、Si:3.0mass%以下、Mn:2.0mass%以下、Al:0.25mass%以下、S:0.1mass%以下およびN:0.01mass%以下を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物の成分組成を有し、微細なベイナイト組織および微細なマルテンサイト組織のいずれか一方または両方を合計で10体積%以上含有する鋼材を素材として、該素材の少なくとも一部分に、昇温速度400℃/s以上かつ到達温度1000℃以下の高周波加熱を1回以上施すことを特徴とする機械構造用部品の製造方法。

1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)>2.0 ・・・(1)
ただし、C、SiおよびMn:各元素の含有量(mass%)
(vi)上記(v)において、前記素材は、800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工工程と、該熱間加工工程後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却する冷却工程と、さらに、該冷却工程の前に700〜800℃未満の温度域で20%以上の加工を施すか、あるいは該冷却工程の後にA 点変態点以下の温度域で20%以上の加工を施す第2加工工程と、を経て製造することを特徴とする機械構造用部品の製造方法。
(vii)上記(v)または(vi)において、1回の高周波加熱における800℃以上の滞留時間を5秒以下とすることを特徴とする機械構造用部品の製造方法。
(viii)前記素材は、さらに、Cr:2.5mass%以下、Mo:1.0mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:2.5mass%以下、V:0.3mass%以下およびW:1.0mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、かつ前記式(1)に替えて下記式(2)を満足する組成であることを特徴とする上記(v)乃至(vii)のいずれかに記載の機械構造用部品の製造方法。

1/2 (1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0 ・・・(2)
ただし、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、VおよびW:各元素の含有量(mass%)
(ix)前記素材は、さらに、Ti:0.1mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下およびB:0.01mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、かつ前記式(1)又は(2)に替えて下記式(3)を満足することを特徴とする上記(v)乃至(viii)のいずれかに記載の機械構造用部品の製造方法。

1/2 (1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+1000B)(1+0.5W)>2.0 ・・・(3)
ただし、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、BおよびW:各元素の含有量(mass%)
(x)前記素材は、さらに、Pb:0.1mass%以下、Se:0.1mass%以下、Te:0.1mass%以下、Ca:0.01mass%以下、Mg:0.01mass%以下およびREM:0.1mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(v)乃至(ix)のいずれかに記載の機械構造用部品の製造方法。
本発明によれば、ねじり疲労特性をはじめとして、曲げ疲労特性、転動疲労特性およびすべり転動疲労特性等の全ての疲労特性に優れた機械構造用部品を安定して得ることができ、その結果、自動車用部品の軽量化等の要求に対し偉効を奏する。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の機械構造用部品は、自動車用のドライブシャフト、インプットシャフト、アウトプットシャフト、クランクシャフト、等速ジョイントの内輪および外輪、ハブ、そしてギア等、部品毎に様々な形状並びに構造に成るが、いずれにおいても、特に疲労強度が要求される部分または全部に焼入れを施した硬化層を有し、この硬化層の焼入れ組織は、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下、さらに最大粒径が平均粒径の4倍以下であることが肝要である。
以下に、この知見を得るに到った研究結果について説明する。
下記a鋼またはb鋼に示す成分組成の鋼素材を150kg真空溶解炉にて溶製し、150mm角に熱間鍛造後、ダミービレットを製造し、種々の熱間加工条件に従って棒鋼圧延材を製造した。

[a鋼]C:0.48mass%、Si:0.55mass%、Mn:0.78mass%、P:0.011mass%、S:0.019mass%、Al:0.024mass%、N:0.0043mass%、残部Feおよび不可避不純物。
[b鋼]C:0.48mass%、Si:0.51mass%、Mn:0.79mass%、P:0.011mass%、S:0.021mass%、Al:0.024mass%、N:0.0039mass%、Mo:0.45mass%、Ti:0.021mass%、B:0.0024mass%、残部Feおよび不可避不純物。
ついで、この棒鋼を所定の長さに切断後、表面切削加工と一部冷間での引き抜き加工を加えて径を調整すると同時に、スプライン部の転造加工を施して、図1に示す寸法および形状になるスプライン部2を有するシャフト1を作製した。
このシャフトに、周波数:10〜200kHzの高周波焼入れ装置を用いて、種々の条件下で加熱、焼入れを行った後、加熱炉を用いて170℃×30分の条件で焼もどしを行い、その後ねじり疲労強度について評価した。
なお、ねじり疲労強度は、シャフトのねじり疲労試験において破断繰り返し数が1×105回の時のトルク値(N・m)で評価した。ねじり疲労試験は、油圧式疲労試験機を用い、図2(a)に示すように、スプライン部2a,2bをそれぞれ円盤状のつかみ具3a,3bに組み込み、つかみ具3a,3bとの間に周波数:1〜2Hzで繰り返しねじりトルクを負荷することにより行った。
また、同じシャフトについて、その硬化層の組織を、光学顕微鏡を用いて観察し、旧オーステナイト平均粒径および最大旧オーステナイト粒径を求めた。
旧オーステナイト平均粒径の測定は、光学顕微鏡により、400倍(1視野の面積:0.25mm×0.225mm)から1000倍(1視野の面積:0.10mm×0.09mm)で、表面から硬化層厚の1/5位置、1/2位置および4/5位置のそれぞれの位置について5視野の観察を行い、各位置おける平均旧オーステナイト粒径を測定し、その最大値を平均旧オーステナイト粒径とした。なお、硬化層厚は、表面からマルテンサイト組織の面積率が98%に減少するまでの深さ領域とした。
一方、最大旧オーステナイト粒径は、400倍(1視野の面積:0.25mm×0.225mm)で硬化層厚さ方向の上記各位置で5視野相当、計15視野相当の面積について測定し、全視野内の粒度分布から下記式で求められる値を最大粒径とした。
最大粒径=平均粒径+3σ(σ:標準偏差)
なお、旧オーステナイト粒の測定は、硬化層の厚さ方向に切断した断面について、水500gに対しピクリン酸:50gを溶解させたピクリン酸水溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:11g、塩化第1鉄:1gおよびシュウ酸:1.5gを添加したものを腐食液として作用させ、旧オーステナイト粒界を図3に示すように現出させて行った。
まず、図4に平均旧オーステナイト粒径とねじり疲労強度との関係を示す。図4(a)に示すように、平均粒径が小さくなる程、疲労強度が増加することが認められた。しかし、旧オーステナイト粒径が12μm以下と小さい場合、粒径が同程度の場合であっても疲労強度に差が生じることがあり、この原因が、粒径分布、特に最大の粒径に依存することを見出した。この点についてさらに鋭意検討を重ねた結果、最大粒径が平均粒径の4倍以下となると、平均粒径を微細化することによる疲労強度の向上効果が顕著となることがわかった。図4(a)に示した、各プロットを最大粒径/平均粒径が4以下の場合を白抜きの四角または菱形、最大粒径/平均粒径が4超の場合を黒塗りの四角または菱形としてプロットし直したものを図4(b)に示す。
このように、平均粒径および最大粒径が疲労強度に影響を及ぼす要因としては以下のように推定される。
疲労破壊の原因となる不純物元素は旧オーステナイト粒界に偏析し易い。従って、旧オーステナイト粒界の粒径が微細になるほど偏析する面積が増加し、個々の偏析箇所における不純物の濃度が減少し、破壊強度が増加する。また、切り欠き等による旧オーステナイト粒界への応力集中も粒径が微細となると分散され、個々の粒界へ作用する応力が減少し、結果として疲労強度が増加する。このような効果は平均粒径に影響されるだけでなく、最大粒径にも影響されると推定される。すなわち、大きな粒の近傍では、粒界の面積が少ないため、不純物の濃化も進み易い。さらに応力の分散も生じにくいと考えられる。
かように、平均粒径の4倍を超えるような大きな粒が存在すると、上記のような作用により疲労強度を低下させる可能性が増加するものと推定される。
特に、旧オーステナイト粒の最大粒径は20μm以下であると、広範囲の部品形状において大きな疲労強度の向上が安定して期待できる。より好ましくは、平均粒径を5μm以下とする。さらに好ましくは平均粒径を4μm以下とする。
次に、図5は、ねじり疲労強度に及ぼす、硬化層の平均旧オーステナイト粒径と、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径との影響を示すグラフである。平均旧オーステナイト粒径が12μm以下である場合に、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径が4以下とすることにより、疲労強度が格段に向上できることがわかる。また、平均オーステナイト粒径を5μm以下、さらには3μm以下とすると、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径が4以下であることによる疲労強度向上効果がさらに顕著になることがわかる。
図6に、ねじり疲労強度に及ぼす、800℃未満の加工率および高周波加熱時の最高到達温度(加熱温度)および昇温速度の影響を示す。図6より、800℃未満の温度域の加工率が25%以上、高周波焼入れ時の最高到達温度が1000℃以下および昇温速度が400℃/s以上の条件下で優れた疲労特性が得られることが分る。
さらに、平均旧オーステナイト粒径と、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径とが、転動疲労特性に及ぼす影響を調査した。上記a鋼またはb鋼に示す成分組成の鋼素材を150kg真空溶解炉にて溶製し、150mm角に熱間鍛造後、ダミービレットを製造し、種々の条件にて熱間加工、冷間引き抜き加工を行った後、切削を施して12mmφの棒鋼とした。この棒鋼の表面に種々の条件にて高周波焼入れを施し、所定の長さに切断して転動疲労試験片として、図2(b)に示したラジアル型転動疲労試験を実施した。
図7には、この試験結果を示す。上述のねじり疲労の場合と同様に、平均旧オーステナイト粒径が12μm以下である場合に、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径を4以下とすることにより、疲労強度を格段に向上できることがわかる。また、平均オーステナイト粒径を5μm以下、さらは3μm以下とすると、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径が4以下であることによる疲労強度向上効果がさらに顕著になることがわかる。
なお、上述の図4〜6を得るのに用いた試験結果を表1に、図7を得るのに用いた結果を表2に、それぞれ示す。なお、転動疲労特性は、破損に至るまでの時間を、従来品に相当する表2中の試験No.1の同時間に対する比として示した。
ここで、旧オーステナイト粒の平均粒径を12μm以下、さらに最大粒径を平均粒径の4倍以下とするためには、高周波焼入れ前の組織に、均一微細なベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を含有させておく方法が有利に適合する。以下に、この方法について説明する。
すなわち、高周波焼入れ前組織に関しては、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織の組織分率を10vol%以上、好ましくは25vol%以上とする。焼入れ前組織にベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織が多いと、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織は炭化物が微細に分散した組織であるため、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイトであるフェライト/炭化物界面の面積が増加し、生成したオーステナイトは微細化するため、焼入れ硬化層の旧オーステナイト粒径を微細化するのに有効に寄与する。焼入れ加熱時にオーステナイト粒径が微細化することで粒界強度が上昇し、疲労強度は向上する。
均一微細なベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織の組織分率を10vol%以上とするには、後述する成分組成の鋼を800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工を施し、この熱間加工後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却するとよい。なぜなら、800〜1000℃での総加工率が80%未満であると、十分に均一微細なベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織が得られないからである。また、熱間加工後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却しないと、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を合計で10vol%以上とできない。
さらに、高周波焼入れ後の硬化層について、旧オーステナイトの平均粒径および最大粒径を微細化するためには、高周波焼入れ前に800℃未満の温度域で20%以上の加工を施す(第2加工工程)必要がある。800℃未満の温度域での加工は、熱間加工工程で、前記冷却速度の冷却前(700〜800℃未満の温度域)に行ってもよいし、冷却後に別途冷間加工を施すか、あるいはA1変態点以下の温度で再加熱して温間加工を施しても良い。800℃未満での加工率は、30%以上とする事がより好ましい。
なお、加工法としては、例えば冷間鍛造、冷間しごき、転造加工、ショット等が挙げられる。
次に、このような前組織を得るための好適な鋼成分について説明する。
C:0.3〜1.5mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.3mass%に満たないと、必要とされる疲労強度を確保するために焼入れ硬化層深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、またベイナイト組織も生成し難くなるため、0.3mass%以上を添加する。一方、1.5mass%を越えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度も低下し、また切削性、冷間鍛造性および耐焼割れ性も低下する。このため、Cは0.3〜1.5mass%の範囲に限定した。好ましくは0.4〜0.6mass%の範囲である。
Si:3.0mass%以下
Siは脱酸剤として作用するだけでなく、強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が3.0mass%を超えると、被削性および鍛造性の低下を招くため、Si量は3.0mass%以下が好ましい。
なお、強度向上のためには0.05mass%以上とすることが好ましい。
Mn:2.0mass%以下
Mnは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化層深さを確保する上で有用な成分であるため添加する。含有量が0.2mass%未満ではその添加効果に乏しいので、0.2mass%以上が好ましい。より好ましくは0.3mass%以上である。一方、Mn量が2.0mass%を超えると焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは2.0mass%以下が好ましい。なお、Mnは含有量が多いと、母材の硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるので、1.2mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは1.0mass%以下である。
本発明では、以上の3成分を基本成分とし、これら基本成分において、次式(1)を満足することが肝要である。
1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)>2.0 ・・・(1)
これは、(1)式を満たすようにC、Si、Mnの含有量を調整することにより、高周波焼入前組織として、ベイナイトとマルテンサイトの合計組織分率を10vol%以上とすることが可能となり、高周波焼入れ後の硬化層を本発明の組織とすることが可能となる。また、(1)式の値が2.0以下では高周波焼入後の硬化層の硬さも小さくなり、さらに、硬化層深さを十分に確保することも困難となる。
さらに、上記基本成分に加えて、以下のAlおよびSを添加することができる。
Al:0.25mass%以下
Alは、脱酸に有効な元素である。しかしながら、含有量が0.25mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、Alは0.25mass%以下の範囲で含有させることが好ましい。より好ましくは0.001乃至0.10mass%の範囲である。
S:0.1mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる有用元素であるが、0.1mass%を超えて含有させると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、Sは0.1mass%以下に制限した。好ましくは0.04mass%以下である。
以上、基本成分およびAlについて説明したが、本発明ではその他にも、以下に述べる6成分のうちの1種または2種以上を適宜含有させることができる。
Cr:2.5mass%以下
Crは、焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用な元素である。しかし、過度に含有されると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有は極力低減することが望ましいが、2.5mass%までは許容できる。好ましくは1.5mass%以下である。
Mo:1.0mass%以下
Moは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには0.05mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Moは1.0mass%以下とすることが好ましい。
Cu:1.0mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。さらに、炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0mass%を超えると熱間加工時に割れが発生するため、1.0mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5mass%以下である。なお、0.03mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.03mass %以上含有させることが望ましい。
Ni:2.5mass%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、2.5mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、2.5mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上で含有させることが望ましい。さらに、好ましくは0.1〜1.0mass%である。
V:0.3mass%以下
Vは、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.3mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、0.3mass%以下とすることが好ましい。なお、0.01mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいため、0.01mass%以上で添加することが望ましい。さらに好ましくは0.03mass%以上である。
W:1.0mass%以下
Wは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには0.005mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Wは1.0mass%以下とすることが好ましい。
ここで、粒界強度の観点から、Coを以下の範囲で含有することもできる。
Co:1.0mass%以下
Coは、炭化物の生成を抑制して、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Coは極めて高価な元素であり、1.0mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、1.0mass%以下の添加とする。なお、0.01mass%未満の添加では、粒界強度の低下抑制効果が小さいため、0.01mass%以上は添加することが望ましい。より好ましくは0.02〜0.5mass%である。
上記の6成分のうちの1種または2種以上を、基本成分に添加する場合は、上記した式(1)と同様の理由から、次式(2)を満足する必要がある。
1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0 ・・・(2)
さらに、本発明では、Ti:0.1mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下およびB:0.01mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有させることができる。
Ti:0.1mass%以下
Tiは、不可避不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が焼失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。この効果を得るためには、0.005mass%以上で含有することが好ましいが、0.1mass%を超えて含有されるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くため、Tiは0.1mass%以下とすることが好ましい。好ましくは0.01〜0.07mass%の範囲である。
Nb:0.1mass%以下
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.01〜0.05mass%である。
Zr:0.1mass%以下
Zrは、焼入れ性向上効果があるだけでなく、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに、好ましくは0.01〜0.05mass%である。
B:0.01mass%以下
Bは、粒界強化により疲労特性を改善するだけでなく、強度を向上させる有用な元素であり、好ましくは0.0003mass%以上で添加するが、0.01mass%を超えて添加しても、その効果は飽和するため、0.01mass%以下に限定した。
また、上記の4成分の他にも、主に転動疲労の劣化防止の観点から、Ta、HfおよびSbを、以下の範囲で含有することができる。
Ta:0.5mass%以下
Taは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.5mass%を超えて含有量を増加させても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.5mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Hf:0.5mass%以下
Hfは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.5mass%を超えて含有量を増加させても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.5mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Sb:0.015mass%以下
Sbは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.015mass%を超えて含有量を増加させると靭性が劣化するので、0.015mass%以下、好ましくは0.010mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.005mass%以上とすることが好ましい。
上記のTi、Nb、ZrおよびBの4成分のうちの1種または2種以上を、基本成分に添加する場合は、上記した式(1)と同様の理由から、次式(3)を満足する必要がある。
1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+1000B)(1+0.5W)>2.0 ・・・(3)
さらにまた、本発明では、Pb:0.1mass%以下、Se:0.1mass%以下、Te:0.1mass%以下、Ca:0.01mass%以下、Mg:0.01mass%以下およびREM:0.1mass%以下を含有させることができる。
Pb:0.1mass%以下
Pbは、切削時の溶融、潤滑および脆化作用により、被削性を向上させるので、この目的で添加することができる。しかしながら、Pb:0.1 mass%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、成分コストが上昇するため、上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Pbは0.01mass%以上含有させることが好ましい。
Se:0.1mass%以下
Te:0.1mass%以下
SeおよびTeはそれぞれ、Mnと結合してMnSeおよびMnTeを形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、含有量が0.1 mass%を超えると、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、いずれも0.1 mass%以下で含有させるものとした。また、被削性の改善のためには、Seの場合は 0.003mass%以上およびTeの場合は 0.003mass%以上で含有させることが好ましい。
Ca:0.01mass%以下
REM:0.1mass%以下
CaおよびREMはそれぞれ、MnSと共に硫化物を形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、CaおよびREMをそれぞれ、0.01mass%および0.1mass%を超えて含有させても、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Caは0.0001mass%以上およびREM は0.0001mass%以上含有させることが好ましい。
Mg:0.01mass%以下
Mgは、脱酸元素であるだけでなく、応力集中源となって被削性を改善する効果があるので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰に添加すると効果が飽和する上、成分コストが上昇するため、0.01mass%以下で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Mgは0.0001mass%以上で含有させることが好ましい。
以上説明した元素以外の残部はFeおよび不可避不純物であることが好ましく、不可避不純物としてはPおよびOが挙げられ、それぞれ、P:0.10mass%およびO:0.008mass%までをそれぞれ許容できる。
次に、本発明の製造方法について説明する。
上記した所定の成分組成に調整した鋼材を、棒鋼圧延後に熱間鍛造などの熱間加工を施して部品形状とし、部品の少なくとも一部に加熱温度:800〜1000℃の条件下で高周波焼入れを施す。この少なくとも一部を疲労強度が要求される部位とする。
この一連の工程において、まず、熱間加工を800〜1000℃の温度域の総加工率を80%以上として行った後、700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の速度で冷却し、次いで、800℃未満の温度域で20%以上の加工を施すか、あるいは、熱間加工を800〜1000℃の温度域の総加工率が80%以上として行った後、800℃未満の温度域で20%以上の加工を施した後、700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の速度で冷却すること、さらに、以下に詳述する高周波焼入れ条件を採用することにより、旧オーステナイト粒径の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下の焼入れ組織とすることが可能となる。
以下、各規制について詳しく説明する。
[加工条件]
熱間加工の際の800〜1000℃での総加工率を80%以上とし、その後700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の速度で冷却する。この条件により、焼入れ前の組織を均一微細なベイナイトおよび/またはマルテンサイト組織とすることができ、その後の高周波焼入の加熱時にオーステナイト粒が微細化する。より好ましくは、冷却速度を0.5℃/s以上とする。
さらに、高周波焼入れ前に、800℃未満の温度域で20%以上の加工を施す。800℃以下の温度域での加工は、熱間加工工程で、前記冷却速度の冷却の前(700〜800℃未満の温度域)で行ってもよいし、冷却後に別途冷間加工を施すか、あるいは、A1変態点以下の温度で再加熱して温間加工を施しても良い。800℃未満での加工は、30%以上とする事が好ましい。なお、加工法としては、例えば、冷間鍛造、冷間しごき、転造加工、ショット等が挙げられる。800℃以下で加工を施すことにより、高周波焼入れ前のベイナイトあるいはマルテンサイト組織が微細化し、結果として高周波焼入れ後に得られる硬化層における旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下のものとなり、これにより、疲労強度が向上する。
なお、ここで言う、加工率とは、圧延、鍛造、伸線の場合には加工前後での断面減少率である。また、断面減少率で定義できないようなショット等のような場合には、断面減少率に対応する硬さ変化によって見積もるものとする。
[高周波焼入条件]
加熱温度を800〜1000℃とし、600〜800℃を400℃/s以上の昇温速度で昇温する。加熱温度が800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不十分となり、硬化層を得ることができない。一方、加熱温度が1000℃を超えると、オーステナイト粒の成長速度が著しく増加し、平均粒径が増加すると同時に、急成長する温度域においては個々の粒成長速度にも著しい差が生じ易いため、最大粒径が平均粒径の4倍超となり疲労強度の低下を招く。
また、600〜800℃の昇温速度が400℃/s未満の場合にもオーステナイト粒の成長が促進されると同時に粒の大きさのばらつきが大きくなり、最大粒径が平均粒径の4倍超となり、疲労強度の低下を招く。これは、昇温速度が遅いとより低い温度でフェライトからオーステナイトへの逆変態が開始し、場所により不均一な粒成長を生じ易いためと推定される。
なお、加熱温度は800〜950℃とすることが好ましく、600〜800℃の昇温速度は700℃/s以上であることが好ましい。より好ましくは1000℃/s以上である。
また、高周波加熱時において800℃以上の滞留時間が長くなると、オーステナイト粒が成長して、結果として最大粒径が平均粒径の4倍超となり易くなるので、800℃以上の滞留時間は5秒以下とすることが好ましい。
本発明の機械構造用部品として、自動車のドライブシャフト、アウトプットシャフト、インプットシャフトを模擬したシャフトを製造した。すなわち、表3に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×400mmであった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延した後、仕上温度を800℃以上として、表4に示す熱間加工条件に従って棒鋼に圧延した。ここで、800〜1000℃の総加工率は、この温度範囲における断面減少率である。また、圧延後の冷却は表4に示す条件とした。
ついで、この棒鋼を所定の長さに切断後、表面切削加工と一部冷間での引き抜き加工を加え径を調整すると同時に、スプライン部の転造加工を施して、図1に示す寸法・形状になるスプライン部2を有するシャフト1を作製した。なお、冷間加工率は、断面減少率である。
このシャフトに、周波数:15kHzの高周波焼入れ装置を用いて、表4に示す条件下で焼入れを行った後、加熱炉を用いて170℃×30分の条件で焼もどしを行い、その後ねじり疲労強度について調査した。ここで、一部のシャフトについては、焼もどしを省略して、ねじり疲労強度の調査を行った。
なお、ねじり疲労強度は、シャフトのねじり疲労試験において破断繰り返し数が1×10回の時のトルク値(N・m)で評価した。ねじり疲労試験は、油圧式疲労試験機を用い、図2に示すようにスプライン部2a,2bをそれぞれ円盤状のつかみ具3a,3bに組み込み、つかみ具3a,3bとの間に周波数1〜2Hzで繰り返しねじりトルクを負荷することにより行った。
また、同じシャフトについて、その硬化層をピクリン酸を主成分とした腐食液(水:500gに対しピクリン酸:50gを溶解させたピクリン酸水溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:11g、塩化第1鉄:1gおよびシュウ酸:1.5gを添加したもの)にてエッチング後、その組織を光学顕微鏡を用いて観察し、旧オーステナイト粒の平均粒径および最大粒径を求めた。平均粒径および最大粒径の測定にあたっては、前述した方法と同様とした。
さらに、同じシャフトについて、耐焼割れ性についても調査した。
この耐焼割れ性は、高周波焼入れ後のスプライン部のC断面5ヶ所を切断・研磨し、光学顕微鏡(倍率:100〜200倍)で観察した時の焼割れ発生個数で評価した。
得られた結果を表4に併記する。
表4から明らかなように、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下である、焼入れ組織を有するシャフトはいずれも、高いねじり疲労強度および焼割れ個数:0という優れた耐焼割れ性を得ることができた。
これに対し、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下となっていない焼入れ組織を有するシャフトはいずれも疲労強度が低い。
本発明の機械構造用部品として、図8に示すクランクシャフトを製造した。すなわち、このクランクシャフト4は、シリンダーへのジャーナル部5、ピストン用コネクティングロッドの軸受け部であるクランクピン部6、クランクウェブ部7およびカウンタウェイト部8をそなえていて、特にジャーナル部5およびクランクピン部6には高周波焼入れを施して、その疲労強度の向上を図っている。
表3に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×400mmであった。この鋳片を、熱間圧延により90mmφの棒鋼に圧延した。ついで、この棒鋼を所定の長さに切断後、700〜1100℃の温度範囲で曲げから仕上げまでの各熱間鍛造を行い、さらにバリ取りを行ってクランクシャフト形状に成形後、表5に示す速度で冷却した。熱間鍛造にあたっては、鍛造工程を複数の工程に分割し、最終段の鍛造工程を700〜800℃未満で行い、それ以外の鍛造工程は800〜1000℃で行った。その際、それぞれの鍛造工程におけるクランクピン部6の径を調整することで、800〜1000℃の総加工率および700〜800℃未満の総加工率を調整した。
ついで、図9に示すクランクシャフト断面図のようにクランクシャフトのクランクピン部およびジャーナル部の表面に、それぞれ表5に示す条件で高周波焼入れを行って焼入れ組織層9を形成させたのち、加熱炉を用いて170℃、30分の焼戻しを行い、さらに仕上げ加工を施して、製品とした。ここで、一部のクランクシャフトについては焼戻しを省略した。
かくして得られたクランクシャフトの曲げ疲労寿命について調べた結果を、表5に示す。
ここに、クランクシャフトの曲げ疲労寿命は、次のようにして評価した。
図10に示すように、クランクシャフトの端部は固定した状態で、各コネクティングロッドに一定の繰り返し荷重(5000N)を負荷する耐久試験を行い、その時のピン部またはジャーナル部が破損するまでの繰り返し数によって、曲げ疲労寿命を評価した。
また、同じクランクシャフトについて、硬化層の旧オーステナイト平均粒径および旧オーステナイト最大粒径を、前述した方法と同様の手法にて求めた。
これらの結果も表5に併記する。

表5から明らかなように、硬化層が旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下である、焼入れ組織を有するクランクシャフトはいずれも、破損までの繰り返し数が9×10回以上という優れた曲げ疲労寿命を得ることができた。
これに対し、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下となっていない比較例では、曲げ疲労強度が劣っている。
本発明の機械構造用部品として、図11に示す、ドライブシャフト10からの動力を車輪のハブ11に伝えるために介在させる、等速ジョイント12を製造した。
この等速ジョイント12は、外輪13および内輪14の組み合わせになる。すなわち、外輪13のマウス部13aの内面に形成したボール軌道溝に嵌めるボール15を介して、マウス部13aの内側に内輪14を揺動可能に固定してなり、この内輪14にドライブシャフト10を連結する一方、外輪13のステム部13bをハブ11に例えばスプライン結合させることによって、ドライブシャフト10からの動力を車輪のハブ11に伝えるものである。
表3に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×400mmであった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延したのち、50mmφの棒鋼に圧延した。
ついで、この棒鋼を所定長さに切断後、800℃以上の温度で表6または表7に示す条件にて熱間鍛造を行い、等速ジョイント外輪のマウス部(外径:60mm)およびステム部(直径:20mm)を一体に成形し、次いで切削または冷間鍛造によって等速ジョイント外輪のマウス部内面のボールの軌条溝などの成形を行うとともに、切削加工または転造加工によって等速ジョイント外輪のステム部にスプライン軸とする成形を行った。熱間鍛造後の冷却は表6または表7に示す条件とした。熱間鍛造、転造加工における総加工率は、高周波焼入れが施される部位の軸方向に直交する断面の断面積変化率を調整することで行った。
そして、図12または図13に示すように、この等速ジョイント外輪13のマウス部13aの内周面またはステム部13bの外周面に、周波数:15kHzの高周波焼入れ装置を用いて、焼入れを行い焼入れ組織層16を形成した後、加熱炉を用いて180℃×2hの条件で焼もどしを行って製品とした。ここで、焼入れ条件は表6または表7に示す条件とした。また、一部の等速ジョイント外輪については、焼もどしを省略した。かくして得られた等速ジョイント外輪は、そのマウス部にボール(鋼球)を介して、ドライブシャフトを連結した内輪を装着するとともに、ステム部をハブに嵌合させることによって、等速ジョイントユニットとした(図11参照)。なお、ボール、内輪およびハブの仕様は下記の通りである。

ボール:高炭素クロム軸受鋼SUJ2の焼入れ焼戻し鋼
内輪:クロムSCrの浸炭焼入れ焼もどし鋼
ハブ:機械構造用炭素鋼
次に、この等速ジョイントユニットを用いて、ドライブシャフトの回転運動を等速ジョイントの内輪そして外輪を経てハブに伝える動力伝達系において、マウス部の内周面に高周波焼入れを施したものについては転動疲労強度に関する耐久試験を、ステム部の外周面に高周波焼入れを施したものについては、ねじり疲労強度に関する耐久試験を行った。
転動疲労試験は、トルク:900N・m、作動角(外輪の軸線とドライブシャフト軸線とがなす角度):20°および回転数:300rpmの条件下で動力伝達を行い、マウス部の内周部分が転動疲労破壊するまでの時間を転動疲労強度として評価した。
さらに、この動力伝達系において、ねじり疲労強度に関する耐久試験を実施した。ここでのねじり疲労試験は、等速ジョイントユニットの作動角(外輪の軸線とドライブシャフト軸線とのなす角度):0°とし、最大トルク:4900N・mのねいじり疲労試験機を用いて、ハブとドライブシャフトとの間にねじり力を負荷するようにし、ステム部の最大トルクを変化させることで両振りで応力条件を変えて行い、1×10回の寿命となる応力をねじり疲労強度として評価した。
なお、ねじり疲労試験にあたっては、等速ジョイント外輪のねじり疲労を評価するため、ハブ、ドライブシャフトの強度が十分大きくなるように、ハブ、ドライブシャフト形状、寸法を調整した。
同様に、転動疲労試験に当たっても、等速ジョイント内輪および鋼球等の寸法、形状を、耐久試験時に等速ジョイント外輪内周面が最弱部になるように設定した。
また、同じ条件で作製した等速ジョイント外輪について、硬化層の平均旧オーステナイト粒径および最大旧オーステナイト粒径を、前述した方法と同様の手法にて求めた。
表6および表7には、これらの結果も併記する。


表6および表7から明らかなように、硬化層が、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下である、焼入れ組織を有する等速ジョイント外輪はいずれも、優れた転動疲労特性およびねじり疲労強度を得ることができた。
これに対し、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下となっていない場合、転動疲労特性、ねじり疲労特性ともに悪い。
本発明の機械構造用部品として、図14に示す、ドライブシャフト10から動力を車輪のハブ11に伝えるために介在させる、等速ジョイント12を製造した。
この等速ジョイント12は外輪13および内輪14の組み合わせになる。すなわち、外輪13のマウス部13aの内面に形成したボール軌道溝に嵌めるボール15を介して、マウス部13aの内側に内輪14を揺動可能に固定してなり、この内輪14にドライブシャフト10を連結する一方、外輪13のステム部13bをハブ11に例えばスプライン結合させることによって、ドライブシャフト10からの動力を車輪のハブ11に伝えるものである。
表3に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×400mmであった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延したのち、55mmφの棒鋼に圧延した。
ついで、この棒鋼を所定長さに切断後、熱間鍛造によって等速ジョイント内輪(外径:45mmおよび内径:20mm)を成形し、次いで切削加工または転造加工によって嵌合面にスプライン結合のための条溝を形成した。また、切削加工または冷間鍛造によって、ボールの転動面を形成した。熱間鍛造後の冷却は表8または表9に示す条件とした。ここで、熱間鍛造、冷間鍛造における総加工率は、転動面の軸方向に直交する断面の断面減少率を調整することで行った。
図15または図16に示すように、この等速ジョイント内輪のドライブシャフトとの嵌合面14bまたは等速ジョイント外輪との間に介在するボールの転動面14aに、周波数:15Hzの高周波焼入れ装置を用いて、表8または表9に示す条件下で焼入れを行って焼入れ組織層16とした後、加熱炉を用いて180℃×2hの条件で焼もどしを行って焼入れた。なお、一部の等速ジョイントについては焼もどしを省略した。かくして得られた等速ジョイント内輪は、その嵌合面にドライブシャフトを嵌合するとともに、等速ジョイント外輪のマウス部にボール(鋼球)を介して装着し、一方等速ジョイント外輪のステム部にハブを嵌合することによって、等速ジョイントユニットとした(図11参照)。なお、ボール、外輪、ドライブシャフトおよびハブの仕様は下記の通りである。

ボール:高炭素クロム軸受鋼SUJ2の焼入れ焼戻し鋼
外輪:機械構造用炭素鋼の高周波焼入れ焼戻し鋼
ハブ:機械構造用炭素鋼の高周波焼入れ焼戻し鋼
ドライブシャフト:機械構造用炭素鋼の高周波焼入れ焼戻し鋼
次に、この等速ジョイントを用いて、ドライブシャフトの回転運動を等速ジョイントの内輪そして内輪を経てハブに伝える動力伝達系において、ドライブシャフトとの嵌合面に高周波焼入れを施したものについては、ドライブシャフトの嵌合部のすべり転動疲労強度に関する耐久試験を、ボールの転動面に高周波焼入れを施したものについては、ボールの転動面の転動疲労強度に関する耐久試験を行った。
転動疲労試験は、トルク:900N・m、作動角(内輪の軸線とドライブシャフト軸線とがなす角度):20°および回転数:300rpmの条件下で動力伝達を行い、等速ジョイント内輪の転動面にはく離が生じるまでの時間を転動疲労強度として評価した。なお、ここでドライブシャフト、等速ジョイント外輪等の寸法、形状は、耐久試験時に等速ジョイントない輪が最弱部になるように設定した。
また、同じ条件で作製した等速ジョイント内輪について、硬化層の平均旧オーステナイト粒径および最大旧オーステナイト粒径を、前述した方法と同様の手法にて求めた。
表8または表9には、これらの結果も併記する。


表8または表9から明らかなように、硬化層が、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下である、焼入れ組織を有する等速ジョイント内輪はいずれも、優れた疲労特性を得ることができた。
これに対し、旧オーステナイト粒径の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下となっていない場合、疲労特性は悪い。
本発明の機械構造用部品として、図17に示す、自動車の車輪のハブを製造した。
この自動車の車輪のハブ17は、軸受けの内輪を兼ねる軸部18を有し、その外周面において外輪20との間に挿入したボール21を介して軸受けを構成している。なお、図17中の符号19はハブの軸部18と外輪20との間にボール21を保持するためのスペーサである。この図17に示したところにおいて、ハブの軸受けをなすボールが転動する外周面(転動面)22では転動疲労寿命の向上が要求される。
表3に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×400mmであった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延したのち、24mmφの棒鋼に圧延した。ついで、この棒鋼を所定の長さに切断後、熱間鍛造によってハブ形状に成形後、表10に示す冷却速度で冷却した。ついで、切削あるいは冷間鍛造によりハブ軸部の軸受けボールが転動する外周面について、表10に示す条件で高周波焼入れを行って焼入れ組織層を形成したのち、加熱炉を用いて170℃、30分の焼戻しを行い、さらに仕上げ加工を施して、製品とした。ここで、一部のハブについては焼戻しを省略した。なお、熱間鍛造、冷間鍛造における総加工率は、転動面についての軸方向と直行する断面の面積変化率を調整することにより調整した。
かくして得られたハブの転動疲労寿命について調べた結果を表10に示す。
ハブの転動疲労寿命は、次のようにして評価した。
ハブの軸部の外周面に軸受けボールを配置すると共に、外輪を装着し、ハブを固定した状態で、図17に示すように、ハブ外輪20に一定の荷重(900N)を負荷した状態でハブ外輪20を一定の回転速度(300rpm)で回転させる耐久試験を行って、高周波焼入れ組織層22が転動疲労破壊するまでの時間を転動疲労寿命として評価した。
そして、この転動疲労寿命は、表10中No.22の従来例(本発明外の熱間加工、高周波焼入れ条件を適用したもの)の転動疲労寿命を1とした時の相対比で表した。
なお、ここで、他の外輪、鋼球等の寸法・形状は、耐久試験時にハブの軸部転動面が最弱部になるように設定した。
また、同じハブについて、その焼入れ組織を硬化層の平均旧オーステナイト粒径および最大旧オーステナイト粒径を、前述した方法と同様の手法にて求めた。
これらの結果も表10に併記する。

表10から明らかなように、硬化層が、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下である、焼入れ組織を有するハブはいずれも、従来例に比べて10倍以上の優れた転動疲労寿命を得ることができた。
これに対し、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下となっていない比較例は転動疲労寿命が短い。
本発明の機械構造用部品として、実施例5と同様に図18に示すハブを製造した。すなわち、表3に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×400mmであった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延したのち、24mmφの棒鋼に圧延した。ついで、この棒鋼を所定の長さに切断後、熱間鍛造によってハブ形状に成形後、表11に示す速度で冷却した。ついで、ハブ軸部に、等速ジョイントの軸部と嵌合するためのスプライン加工を、切削加工あるいは転造加工により設けた。
ついで、ハブ軸部の、等速ジョイントの軸部と嵌合する周面(図18中の嵌合部23)について、表10に示す条件で高周波焼入れを行って焼入れ組織層を形成したのち、加熱炉を用いて170℃、30分の焼戻しを行い、さらに仕上げ加工を施して、製品とした。なお、一部のハブについては焼戻しを省略した。なお、熱間鍛造、転造加工における総加工率は、ハブ軸部の等速ジョイントとの嵌合部がある部分について、その軸方向断面の変化率を調整することで行った。
かくして得られたハブの等速ジョイント軸部と嵌合する周面のすべり転動疲労寿命について調べた結果を、表11に示す。
ハブのすべり転動疲労寿命は次のようにして評価した。
すべり転動疲労寿命
図19に示すように、ハブの軸部の内周面に等速ジョイントの軸部24を嵌合し、ハブを固定した状態で等速ジョイントの軸部を両振りで繰り返しねじり力を負荷した(最大トルク:700N、2サイクル/秒)時のハブスプライン部ですべり転動疲労による破損が起こるまでの繰り返し数で疲労寿命を評価した。
そして、このすべり転動疲労寿命は、表11中No.22の従来例(本発明外の熱間加工、高周波焼入れ条件を適用したもの)のすべり転動疲労寿命を1とした時の相対比で表わした。
また、同じハブについて、硬化層の平均旧オーステナイト粒径および最大旧オーステナイト粒径を、前述した方法と同様の手法にて求めた。
これらの結果も表11に併記する。

表11から明らかなように、硬化層が、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒系の4倍以下である、焼入れ組織を有するハブはいずれも、従来例に比べて10倍以上という優れたすべり転動疲労寿命を得ることができた。
これに対し、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下となっていない比較例はすべり転動疲労寿命が短い。
本発明の機械構造用部品として、図20に示す、ギア25を製造した。
すなわち、図20に示す代表的なギア25は、その周面に多数の歯26を刻んで成る。そして、本発明に従うギアでは、図21に示すように、多数の歯26とこれら歯26相互間の歯底27との表層部分に、高周波焼入れによる焼入れ組織層28を有するものである。なお、図示例では、歯26および歯底27の表層部分に焼入れ組織層28を形成したが、その他の部分、例えば各種駆動軸が差し込まれる軸穴29の内周面に焼入れ組織層を設けることも可能である。
表3に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×400mmであった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延したのち、表12に示す条件の熱間加工条件として90mmφの棒鋼に圧延した。圧延後の冷却は表12に示す条件とした。ここで、加工率はそれぞれの温度範囲における断面減少率を示す。
ついで、この棒鋼から、下記のギアを切削加工により作製した。

小径ギア:外径75mm、モジュール2.5、歯数28、基準ピッチ円直径70mm
大径ギア:外径85mm、モジュール2.5、歯数32、基準ピッチ円直径80mm
このギアに、周波数:200kHzの高周波焼き入れ装置を用いて、表12に示す条件下で焼入れを行った後、加熱炉を用いて180℃×2hの条件で焼もどしを行い、その後ギア実体疲労試験を行った。なお、一部のギアについては焼もどしを省略した。
ギア実体疲労試験は、小径および大径のギアを噛み合わせて、回転速度3000rpmおよび負荷トルク245N・mの条件で回転させ、いずれかのギアが破損するまでのトルク負荷回数で評価した。
得られた結果を表12に併記する。
また、同じ条件で作製したギアについて、硬化層の平均オーステナイト粒径および最大旧オーステナイト粒径を、前述した方法と同様の手法にて求めた。
表12には、これらの結果も併記する。

表12から明らかなように、硬化層が、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下である、トルク負荷回数約1000×104回以上の優れた疲労特性を得ることができた。
これに対し、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下で、かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下となっていない焼入れ組織を有するギアは疲労特性が悪い。
代表的なシャフトの正面図である。 疲労試験の要領を示す図であり、(a)はシャフトのねじり疲労試験の要領を、(b)は転動疲労試験の要領を示す。 焼入れ組織の光学顕微鏡観察像を示す写真である。 平均旧オーステナイト粒径とねじり疲労強度との関係を示すグラフである。 ねじり疲労強度に及ぼす、硬化層の旧オーステナイト粒径と、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径との影響を示すグラフである。 ねじり疲労強度に及ぼす、800℃未満の加工率および高周波焼入の条件の影響を示すグラフである。 転動疲労寿命に及ぼす、硬化層の旧オーステナイト粒径と、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径との影響を示すグラフである。 クランクシャフトの模式図である。 クランクシャフトの高周波焼入れ位置を示した図である。 耐久試験の概要を示した図である。 等速ジョイントの部分断面図である。 等速ジョイント外輪における焼入れ組織層を示す断面図である。 等速ジョイント外輪における焼入れ組織層を示す断面図である。 等速ジョイントの部分断面図である。 等速ジョイント内輪における焼入れ組織層を示す断面図である。 等速ジョイント内輪における焼入れ組織層を示す断面図である。 ハブおよびハブ軸受けユニットを示した図である。 ハブおよびハブ軸受けユニットを示した図である。 すべり転動疲労試験の概略を示した図である。 ギアの斜視図である。 ギアの歯および歯底における表面硬化層を示す断面図である。
符号の説明
1 シャフト
2 スプライン部
3 つかみ具
4 クランクシャフト
5 ジャーナル部
6 クランクピン
7 クランクウェブ部
8 カウンタウェイト部
9 焼入れ組織層
10 ドライブシャフト
11 ハブ
12 等速ジョイント
13 外輪
13a マウス部
13b ステム部
14 内輪
15 ボール
16 焼入れ組織層
17 ハブ
18 ハブの軸部
19 スペーサ
20 ハブの外輪
21 ボール
22 転動面
23 嵌合部
24 等速ジョイントの軸部
25 ギア
26 歯
27 歯底
28 焼入れ組織層
29 軸穴

Claims (10)

  1. 少なくとも一部分に焼入れを施した鋼材を用いた機械構造用部品であって、
    C:0.3〜1.5mass%、
    Si:3.0mass%以下、
    Mn:2.0mass%以下、
    Al:0.25mass%以下、
    S:0.1mass%以下および
    N:0.01mass%以下
    を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物の成分組成を有し、前記焼入れ組織は、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下であることを特徴とする機械構造用部品。

    1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)>2.0 ・・・(1)
    ただし、C、SiおよびMn:各元素の含有量(mass%)
  2. 前記成分組成として、さらに、
    Cr:2.5mass%以下、
    Mo:1.0mass%以下、
    Cu:1.0mass%以下、
    Ni:2.5mass%以下、
    V:0.3mass%以下および
    W:1.0mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、かつ前記式(1)に替えて下記式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用部品。

    1/2 (1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0 ・・・(2)
    ただし、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、VおよびW:各元素の含有量(mass%)
  3. 前記成分組成として、さらに
    Ti:0.1mass%以下、
    Nb:0.1mass%以下、
    Zr:0.1mass%以下および
    B:0.01mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、かつ前記式(1)又は(2)に替えて下記式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の機械構造用部品。

    1/2 (1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+1000B)(1+0.5W)>2.0 ・・・(3)
    ただし、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、BおよびW:各元素の含有量(mass%)
  4. 前記成分組成として、さらに
    Pb:0.1mass%以下、
    Se:0.1mass%以下、
    Te:0.1mass%以下、
    Ca:0.01mass%以下、
    Mg:0.01mass%以下および
    REM:0.1mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の機械構造用部品。
  5. C:0.3〜1.5mass%、
    Si:3.0mass%以下、
    Mn:2.0mass%以下、
    Al:0.25mass%以下、
    S:0.1mass%以下および
    N:0.01mass%以下
    を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物の成分組成を有し、微細なベイナイト組織および微細なマルテンサイト組織のいずれか一方または両方を合計で10体積%以上含有する鋼材を素材として、該素材の少なくとも一部分に、昇温速度400℃/s以上かつ到達温度1000℃以下の高周波加熱を1回以上施すことを特徴とする機械構造用部品の製造方法。

    1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)>2.0 ・・・(1)
    ただし、C、SiおよびMn:各元素の含有量(mass%)
  6. 請求項において、前記素材は、800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工工程と、該熱間加工工程後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却する冷却工程と、さらに、該冷却工程の前に700〜800℃未満の温度域で20%以上の加工を施すか、あるいは該冷却工程の後にA点変態点以下の温度域で20%以上の加工を施す第2加工工程と、を経て製造することを特徴とする機械構造用部品の製造方法。
  7. 請求項またはにおいて、1回の高周波加熱における800℃以上の滞留時間を5秒以下とすることを特徴とする機械構造用部品の製造方法。
  8. 前記素材は、さらに、
    Cr:2.5mass%以下、
    Mo:1.0mass%以下、
    Cu:1.0mass%以下、
    Ni:2.5mass%以下、
    V:0.3mass%以下および
    W:1.0mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、かつ前記式(1)に替えて下記式(2)を満足する組成であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の機械構造用部品の製造方法。

    1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0 ・・・(2)
    ただし、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、VおよびW:各元素の含有量(mass%)
  9. 前記素材は、さらに、
    Ti:0.1mass%以下、
    Nb:0.1mass%以下、
    Zr:0.1mass%以下および
    B:0.01mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、かつ前記式(1)又は(2)に替えて下記式(3)を満足することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の機械構造用部品の製造方法。

    1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+1000B)(1+0.5W)>2.0 ・・・(3)
    ただし、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、BおよびW:各元素の含有量(mass%)
  10. 前記素材は、さらに
    Pb:0.1mass%以下、
    Se:0.1mass%以下、
    Te:0.1mass%以下、
    Ca:0.01mass%以下、
    Mg:0.01mass%以下および
    REM:0.1mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の機械構造用部品の製造方法。
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