JP2007204794A - 鋼部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来よりも疲労強度を一層向上させた冷延鋼板を用いた鋼部品を提供する。
【解決手段】冷延鋼板を用いて製造された鋼部品において、少なくとも一部分に焼入れによる硬化組織を有し、該硬化組織の旧オーステナイト粒径を12μm以下とする。
【選択図】なし
【解決手段】冷延鋼板を用いて製造された鋼部品において、少なくとも一部分に焼入れによる硬化組織を有し、該硬化組織の旧オーステナイト粒径を12μm以下とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、冷延鋼板を用いて製造され、少なくとも部分的な焼入れ、中でも高周波焼入れによる硬化組織を有する鋼部品に関するものである。ここで、鋼部品としては、自動車用のギアやミッション等を挙げることができる。
自動車部品(ギア、ミッション)等に使用される高炭素鋼板は、打抜き、成形後、焼入れ焼戻し等の熱処理が施される。従来、この用途においては、部品メーカーは、鋳造材や棒鋼を用い、これを切削加工や熱間鍛造による加工を行うことで部品形状に成形していたが、近年、成形工程の簡略化のために、素材として高炭素鋼板を用い、これを打抜き加工やプレス成形することにより部品形状に成形する試みがなされている。
例えば、特許文献1には、プレス成形や冷間鍛造による割れが発生しにくい、加工性に優れた高焼入れ性高炭素冷延鋼板の製造方法についての開示がある。この特許文献1に記載の技術では、熱延鋼板の組織を所定量のベイナイトを有する組織に制御することにより、冷間圧延および焼鈍後に炭化物の均一分散とフェライト粒の粗大化を達成し、その結果、高い焼入れ性を確保しつつ、極めて軟質で加工性に優れた高炭素冷延鋼板を得ている。
このような冷延鋼板を用いて、部品形状に成形を施した後、焼入れを施して必要な硬度および強度を確保することが考えられるが、疲労特性については考慮がなされておらず、冷延鋼板を用いてギアやミッション等の部品を製造する場合には、疲労特性を確保するための技術が必要であった。
特開2003−73740号公報
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、従来より疲労強度を一層向上させた、冷延鋼板を用いた鋼部品について提供することを目的とする。
さて、発明者らは、疲労特性を効果的に向上させるべく、特に焼入れ組織について鋭意検討を行った。その結果、最終的に強度を確保するための硬化処理として、所定の焼入れ条件を採用することにより、硬化組織における旧オーステナイト粒径が格段に微細化し、優れた疲労特性が得られるという知見を得るに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(i)冷延鋼板を用いて製造された鋼部品であって、少なくとも一部分に焼入れによる硬化組織を有し、該硬化組織における旧オーステナイト粒径が12μm以下であることを特徴とする鋼部品。
(i)冷延鋼板を用いて製造された鋼部品であって、少なくとも一部分に焼入れによる硬化組織を有し、該硬化組織における旧オーステナイト粒径が12μm以下であることを特徴とする鋼部品。
(ii)上記(i)において、前記冷延鋼板は、C:0.3〜1.5mass%、Si:3.0mass%以下およびMn:2.0mass%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする鋼部品。
(iii)上記(ii)において、前記鋼組成は、さらに、Cr:2.5mass%以下、Mo:1.0mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:2.5mass%以下、Co:1.0mass%以下、V:0.5mass%以下、Nb:0.5mass%以下、Ti:0.5mass%以下、Zr:0.2mass%以下、Al:1.0mass%以下、B:0.01mass%以下、W:1.0mass%以下、Sb:0.2mass%以下およびHf:0.1mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼部品。
(iv)上記(ii)または(iii)において、前記鋼組成は、さらに、S:0.1mass%以下、Te:0.2mass%以下、Se:0.2mass%以下、Ca:0.02mass%以下、Mg:0.02mass%以下、REM:0.03mass%以下、Pb:0.6mass%以下およびBi:0.3mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼部品。
本発明によれば、冷延鋼板を用いて製造された機械構造用部品においても、疲労特性に優れた鋼部品を安定して得ることができる。
次に、本発明を具体的に説明する。
本発明の鋼部品は、自動車のギア、ミッション等の機械構造用部品であり、様々な形状並びに構造に成るが、いずれにおいても、特に疲労強度が要求される部分または全部に焼入れを施した硬化組織を有し、この硬化組織は旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下であることが肝要である。
本発明の鋼部品は、自動車のギア、ミッション等の機械構造用部品であり、様々な形状並びに構造に成るが、いずれにおいても、特に疲労強度が要求される部分または全部に焼入れを施した硬化組織を有し、この硬化組織は旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下であることが肝要である。
以下に、この知見を得るに至った研究結果について説明する。
下記a鋼またはb鋼に示す成分組成の鋼素材を150kg真空溶解炉にて溶製し、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延、焼鈍の工程を経て、冷延鋼板とした。
[a鋼]C:0.48mass%、Si:0.55mass%、Mn:0.78mass%、P:0.011mass%、S:0.019mass%、Al:0.024mass%、N:0.0043mass%、残部Feおよび不可避的不純物。
[b鋼]C:0.48mass%、Si:0.51mass%、Mn:0.79mass%、P:0.011mass%、S:0.021mass%、Al:0.024mass%、N:0.0039mass%、Mo:0.45mass%、Ti:0.021mass%、B:0.0024mass%、残部Feおよび不可避的不純物。
得られた冷延鋼板をプレス加工、打抜き加工および仕上切削加工により、下記のギア形状とした。
記
小径ギア:外径75mm、モジュール2.5、歯数28、基準ピッチ円直径70mm、厚さ2.3mm
大径ギア:外径85mm、モジュール2.5、歯数32、基準ピッチ直径80mm、厚さ2.3mm
このギアに、周波数:200kHzの高周波焼入れ装置を用いて、種々の条件で焼入れを行った後、加熱炉を用いて180℃×2hの条件で焼もどしを行い、その後ギアの実体疲労試験を行った。ギアの実体疲労試験は、小径および大径のギアを噛み合わせて、回転速度3000rpmおよび負荷トルク245N・mの条件で回転させ、いずれかのギアが破損するまでのトルク負荷回数で評価した。
下記a鋼またはb鋼に示す成分組成の鋼素材を150kg真空溶解炉にて溶製し、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延、焼鈍の工程を経て、冷延鋼板とした。
[a鋼]C:0.48mass%、Si:0.55mass%、Mn:0.78mass%、P:0.011mass%、S:0.019mass%、Al:0.024mass%、N:0.0043mass%、残部Feおよび不可避的不純物。
[b鋼]C:0.48mass%、Si:0.51mass%、Mn:0.79mass%、P:0.011mass%、S:0.021mass%、Al:0.024mass%、N:0.0039mass%、Mo:0.45mass%、Ti:0.021mass%、B:0.0024mass%、残部Feおよび不可避的不純物。
得られた冷延鋼板をプレス加工、打抜き加工および仕上切削加工により、下記のギア形状とした。
記
小径ギア:外径75mm、モジュール2.5、歯数28、基準ピッチ円直径70mm、厚さ2.3mm
大径ギア:外径85mm、モジュール2.5、歯数32、基準ピッチ直径80mm、厚さ2.3mm
このギアに、周波数:200kHzの高周波焼入れ装置を用いて、種々の条件で焼入れを行った後、加熱炉を用いて180℃×2hの条件で焼もどしを行い、その後ギアの実体疲労試験を行った。ギアの実体疲労試験は、小径および大径のギアを噛み合わせて、回転速度3000rpmおよび負荷トルク245N・mの条件で回転させ、いずれかのギアが破損するまでのトルク負荷回数で評価した。
また、同じ条件で作製したギアについて、高周波焼入れによる硬化組織の平均オーステナイト粒径を測定した。硬化組織の観察にあたっては、ピクリン酸を主成分とした腐食液(水:500gに対しピクリン酸:50gを溶解させたピクリン酸水溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:11g、塩化第1鉄:1gおよびシュウ酸:1.5gを添加したもの)にてエッチング後、その組織を光学顕微鏡を用いて観察し、旧オーステナイト粒の平均粒径を観察した。旧オーステナイト平均粒径の測定は、光学顕微鏡により、400倍(1視野の面積:0.25mm×0.225mm)から1000倍(1視野の面積:0.10mm×0.09mm)で、表面から硬化層厚の1/5位置、1/2位置および4/5位置のそれぞれの位置について5視野の観察を行い、各位置における平均旧オーステナイト粒径を測定し、その最大値を平均旧オーステナイト粒径とした。なお、硬化層厚は、表面からマルテンサイト組織の面積率が98%に減少するまでの深さ領域とした。
図1に、硬化組織における旧オーステナイト粒の平均粒径と、トルク負荷回数の関係について調査した結果を示す。図1に示すように、平均粒径が小さくなる程、疲労強度が増加することが認められる。そして、平均粒径が12μm以下、好ましくは10μm未満であると、トルク負荷回数が格段に向上することがわかる。平均粒径がトルク負荷回数に影響を及ぼす要因は以下のように推定される。
疲労破壊の原因となる不純物元素は旧オーステナイト粒界に偏析し易い。従って、旧オーステナイト粒界の粒径が微細になるほど偏析する面積が増加し、個々の偏析箇所における不純物の濃度が減少し、破壊強度が増加する。また、切り欠き等による旧オーステナイト粒界への応力集中も粒径が微細になると分散され、個々の粒界へ作用する応力が減少し、結果として疲労強度が増加する。
さらに、図1に示すように、平均粒径が12μm以下の領域においては、同程度の平均粒径であってもトルク負荷回数にばらつきがあるので、発明者らはこの原因についても調査を行い、平均粒径が12μm以下の領域で比較的トルク負荷回数が小さいものは、混粒組織となっていることがわかった。これは、大きな粒が存在していると、大きな粒の近傍では、粒界の面積が少ないために、不純物の濃化が進み易く疲労特性に悪影響を及ぼしているものと推定される。そして、平均粒径12μm以下のものについて、最大粒径/平均粒径の値でトルク負荷回数を整理し直すと、図2に示すように、最大粒径/平均粒径が4以下の場合に特に良好な疲労強度を示すことがわかった。なお、最大粒径は、400倍(1視野の面積:0.25mm×0.225mm)で硬化層の厚さ方向の上記各位置で5視野、計15視野の面積について測定し、全視野内の粒度分布から下記式で求められる最大粒径とした。
最大粒径=平均粒径+3σ(σ:標準偏差)
最大粒径=平均粒径+3σ(σ:標準偏差)
以上の知見から、良好な疲労強度を得るためには、硬化組織における旧オーステナイト粒径を12μm以下、好ましくは10μm未満とする必要があり、さらに、最大粒径/平均粒径の値を4以下とすることが特に好ましいことが判明した。
次に、このような組織を得るための好適な鋼成分について説明する。
C:0.3〜1.5mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.3mass%に満たないと、必要とされる疲労強度を確保するために焼入れ硬化層深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、また後述する製造方法を用いても焼入れ後の硬化組織の微細化が困難となるため、0.3mass%以上を必要とする。一方、1.5mass%を超えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度も低下し、また成形性および耐焼割れ性も低下する。このため、Cは0.3〜1.5mass%の範囲に限定した。好ましくは0.4〜0.6mass%の範囲である。
C:0.3〜1.5mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.3mass%に満たないと、必要とされる疲労強度を確保するために焼入れ硬化層深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、また後述する製造方法を用いても焼入れ後の硬化組織の微細化が困難となるため、0.3mass%以上を必要とする。一方、1.5mass%を超えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度も低下し、また成形性および耐焼割れ性も低下する。このため、Cは0.3〜1.5mass%の範囲に限定した。好ましくは0.4〜0.6mass%の範囲である。
Si:3.0mass%以下
Siは脱酸剤として作用するだけでなく、強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が3.0mass%を超えると、被削性および成形性の低下を招くため、Si量は3.0mass%以下が好ましい。なお、強度向上のためには、0.05mass%以上とすることが好ましい。
Siは脱酸剤として作用するだけでなく、強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が3.0mass%を超えると、被削性および成形性の低下を招くため、Si量は3.0mass%以下が好ましい。なお、強度向上のためには、0.05mass%以上とすることが好ましい。
Mn:2.0mass%以下
Mnは、焼入れ性を向上させる上で有用な成分である。含有量が0.2mass%未満ではその効果に乏しいので、0.2mass%以上が好ましい。より好ましくは0.3mass%以上である。一方、Mn量が2.0mass%を超えると焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは2.0mass%以下が好ましい。なお、Mnは含有量が多いと、母材の硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるので、1.2mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは1.0mass%以下である。
Mnは、焼入れ性を向上させる上で有用な成分である。含有量が0.2mass%未満ではその効果に乏しいので、0.2mass%以上が好ましい。より好ましくは0.3mass%以上である。一方、Mn量が2.0mass%を超えると焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは2.0mass%以下が好ましい。なお、Mnは含有量が多いと、母材の硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるので、1.2mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは1.0mass%以下である。
本発明では、さらに強化元素として以下の元素を含有していてもよい。
Cr:2.5mass%以下
Crは、焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用な元素である。しかし、過度に含有されると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有量は極力低減することが好ましいが、2.5mass%までは許容できる。好ましくは1.5mass%以下である。
Cr:2.5mass%以下
Crは、焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用な元素である。しかし、過度に含有されると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有量は極力低減することが好ましいが、2.5mass%までは許容できる。好ましくは1.5mass%以下である。
Mo:1.0mass%以下
Moは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには0.05mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Moは1.0mass%以下とすることが好ましい。
Moは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには0.05mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Moは1.0mass%以下とすることが好ましい。
Cu:1.0mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。さらに、炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0mass%を超えると熱間圧延時に割れが発生するため、1.0mass%以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5mass%以下である。また、0.03mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.03mass%以上含有させることが望ましい。
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。さらに、炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0mass%を超えると熱間圧延時に割れが発生するため、1.0mass%以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5mass%以下である。また、0.03mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.03mass%以上含有させることが望ましい。
Ni:2.5mass%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、2.5mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、2.5mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上で含有させることが好ましい。さらに、好ましくは0.1〜1.0mass%である。
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、2.5mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、2.5mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上で含有させることが好ましい。さらに、好ましくは0.1〜1.0mass%である。
Co:1.0mass%以下
Coは、炭化物の生成を抑制して、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Coは極めて高価な元素であり、1.0mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、1.0mass%以下の添加とする。なお、0.01mass%未満の添加では、粒界強度の低下抑制効果が小さいため、0.01mass%以上は添加することが望ましい。より好ましくは0.02〜0.5mass%である。
Coは、炭化物の生成を抑制して、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Coは極めて高価な元素であり、1.0mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、1.0mass%以下の添加とする。なお、0.01mass%未満の添加では、粒界強度の低下抑制効果が小さいため、0.01mass%以上は添加することが望ましい。より好ましくは0.02〜0.5mass%である。
V:0.5mass%以下
Vは、鋼中でC、Nと結合して析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5mass%を超えて含有させてもその添加効果は飽和するため、0.5mass%以下とすることが好ましい。なお、0.1mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいため、0.01mass%以上で添加することが望ましい。さらに好ましくは0.03〜0.3mass%である。
Vは、鋼中でC、Nと結合して析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5mass%を超えて含有させてもその添加効果は飽和するため、0.5mass%以下とすることが好ましい。なお、0.1mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいため、0.01mass%以上で添加することが望ましい。さらに好ましくは0.03〜0.3mass%である。
Nb:0.5mass%以下
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でC、Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005masss%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.01〜0.05mass%である。
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でC、Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005masss%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.01〜0.05mass%である。
Ti:0.5mass%以下
Tiは、不可避不純物として混入するNと結合して、TiNを形成する。Tiが0.1mass%を超えるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くため、Tiは0.1mass%以下とすることが好ましい。また、TiはBと複合添加した場合には、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。この効果を得るためには、0.005mass%以上で含有することが好ましい。最も好ましい範囲は、0.01〜0.07mass%である。
Tiは、不可避不純物として混入するNと結合して、TiNを形成する。Tiが0.1mass%を超えるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くため、Tiは0.1mass%以下とすることが好ましい。また、TiはBと複合添加した場合には、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。この効果を得るためには、0.005mass%以上で含有することが好ましい。最も好ましい範囲は、0.01〜0.07mass%である。
Zr:0.2mass%以下
Zrは、焼入れ性向上効果があるだけでなく、鋼中でC、Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.2mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.2mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに望ましくは0.01〜0.05mass%である。
Zrは、焼入れ性向上効果があるだけでなく、鋼中でC、Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.2mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.2mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに望ましくは0.01〜0.05mass%である。
Al:1.0mass%以下
Alは脱酸に有効な元素であり、さらに、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって焼入れ硬化組織の粒径を微細化する上でも有用な元素であるため含有されてもよく、この効果を有効に発現させるためには0.005mass%以上で含有させることが好ましい。しかし、1.0mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、1.0mass%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
Alは脱酸に有効な元素であり、さらに、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって焼入れ硬化組織の粒径を微細化する上でも有用な元素であるため含有されてもよく、この効果を有効に発現させるためには0.005mass%以上で含有させることが好ましい。しかし、1.0mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、1.0mass%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
B:0.01mass%以下
Bは、粒界強化により疲労特性を改善するだけでなく、強度を向上させる有用な元素であり、好ましくは0.0003mass%以上で添加するが、0.01mass%を超えて添加しても、その効果は飽和するため、0.01mass%以下に限定した。
Bは、粒界強化により疲労特性を改善するだけでなく、強度を向上させる有用な元素であり、好ましくは0.0003mass%以上で添加するが、0.01mass%を超えて添加しても、その効果は飽和するため、0.01mass%以下に限定した。
W:1.0mass%以下
Wは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには、0.005mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Wは1.0mass%以下とすることが好ましい。
Wは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには、0.005mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Wは1.0mass%以下とすることが好ましい。
Sb:0.2mass%以下
Sbは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化を防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.2mass%を超えると靭性が劣化するので、0.2mass%以下、好ましくは0.01mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.005mass%以上とすることが好ましい。
Sbは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化を防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.2mass%を超えると靭性が劣化するので、0.2mass%以下、好ましくは0.01mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.005mass%以上とすることが好ましい。
Hf:0.1mass%以下
Hfは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止に効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.1mass%を超えても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.1mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Hfは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止に効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.1mass%を超えても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.1mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
さらに、本発明では、被削性を向上させるために、以下の元素が含有されていてもよい。
S:0.1mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる有用な元素であるが、0.1mass%を超えて含有させると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、Sは0.1mass%以下に制限した。好ましくは0.04mass%以下である。
S:0.1mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる有用な元素であるが、0.1mass%を超えて含有させると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、Sは0.1mass%以下に制限した。好ましくは0.04mass%以下である。
Te:0.2mass%以下、Se:0.2mass%以下
TeおよびSeはそれぞれ、Mnと結合してMnTeおよびMnSeを形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、含有量が0.2mass%を超えると、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、いずれも0.2mass%以下で含有させるものとした。また、被削性の改善のためには、Teの場合は0.003mass%以上、Seの場合は0.003mass%以上で含有させることが好ましい。
TeおよびSeはそれぞれ、Mnと結合してMnTeおよびMnSeを形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、含有量が0.2mass%を超えると、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、いずれも0.2mass%以下で含有させるものとした。また、被削性の改善のためには、Teの場合は0.003mass%以上、Seの場合は0.003mass%以上で含有させることが好ましい。
Ca:0.02mass%以下、REM:0.03mass%以下
CaおよびREMはそれぞれ、MnSと共に硫化物を形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、CaおよびREMをそれぞれ、0.02mass%および0.03mass%を超えて含有させても、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Caは0.0001mass%以上、REMは0.0001mass%以上含有させることが好ましい。
CaおよびREMはそれぞれ、MnSと共に硫化物を形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、CaおよびREMをそれぞれ、0.02mass%および0.03mass%を超えて含有させても、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Caは0.0001mass%以上、REMは0.0001mass%以上含有させることが好ましい。
Mg:0.02mass%以下
Mgは、脱酸元素であるだけでなく、応力集中源となって被削性を改善する効果があるので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰に添加すると効果が飽和する上、成分コストが上昇するため、0.02mass%以下で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Mgは0.0001mass%以上で含有させることが好ましい。
Mgは、脱酸元素であるだけでなく、応力集中源となって被削性を改善する効果があるので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰に添加すると効果が飽和する上、成分コストが上昇するため、0.02mass%以下で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Mgは0.0001mass%以上で含有させることが好ましい。
Pb:0.6mass%以下、Bi:0.3mass%以下
PbおよびBiはいずれも、切削時の溶融、潤滑および脆化作用により、被削性を向上させるので、この目的で添加することができる。しかしながら、Pb:0.6mass%、Bi:0.3mass%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、成分コストを上昇するため、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Pbは0.01mass%以上、Biは0.01mass%以上含有させることが好ましい。
PbおよびBiはいずれも、切削時の溶融、潤滑および脆化作用により、被削性を向上させるので、この目的で添加することができる。しかしながら、Pb:0.6mass%、Bi:0.3mass%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、成分コストを上昇するため、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Pbは0.01mass%以上、Biは0.01mass%以上含有させることが好ましい。
以上説明した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物であることが好ましく、不可避的不純物としてはP、O、Nが挙げられ、それぞれ0.03mass%、0.02mass%、0.02mass%までを許容できる。
次に、本発明の製造方法について説明する。
上記した所定の成分組成に調整した鋼片を、熱間圧延により熱延鋼板とした後に巻取り、さらに、必要に応じて焼鈍を施した後、冷間圧延し、焼鈍を施して冷延鋼板とする。この冷延鋼板を用いて、部品の形状に成形した後、部品の少なくとも一部に焼入れを施す。この少なくとも一部を疲労強度が要求される部位とする。
上記した所定の成分組成に調整した鋼片を、熱間圧延により熱延鋼板とした後に巻取り、さらに、必要に応じて焼鈍を施した後、冷間圧延し、焼鈍を施して冷延鋼板とする。この冷延鋼板を用いて、部品の形状に成形した後、部品の少なくとも一部に焼入れを施す。この少なくとも一部を疲労強度が要求される部位とする。
この一連の工程において、まず、熱間圧延後の冷却速度を30℃/s以上とし、600℃以下の巻取温度にて巻取る。この冷却条件、巻取温度条件とすることにより、鋼中にベイナイト組織が生成する。このベイナイト組織が後の焼鈍工程において微細セメンタイトとなり、この微細セメンタイトの存在により、最終の焼入れ後の硬化組織の旧オーステナイト粒径を微細なものとでき、疲労強度の向上が達成できる。冷却速度が30℃/s未満であったり、巻取温度が600℃超である場合には、ベイナイトの生成が不十分となり、最終の硬化組織の旧オーステナイト粒径を12μm以下とすることができなくなる。
なお、上述したように硬化組織の旧オーステナイト粒径について、最大粒径/平均粒径を4以下として、より疲労強度の向上を図るには、熱間圧延時に800〜1000℃で総圧下率80%以上となるように熱間圧延を行うとよい。
次に、この熱延鋼板を素材として冷間圧延を行い、さらに焼鈍を施す。冷間圧延条件については特に制約はなく、通常の条件にて行えばよい。その後の焼鈍については、その温度を600℃以上Ac1変態点以下とする必要がある。この焼鈍において、熱間圧延後の冷却時に生成させたベイナイトを微細なセメンタイトとし、冷延鋼板の加工性を確保するとともに、微細セメンタイトが存在していることにより焼入れ加熱時のオーステナイト粒成長が防止でき、微細な旧オーステナイト粒径を有する硬化組織を得ることが可能となる。焼鈍温度が600℃以下では部品形状に加工する際の加工性が劣化する。また焼鈍温度がAc1変態点を超えると、熱間圧延後の冷却において生成させたベイナイトが粗大なセメンタイトとなるため、後の焼入れ加熱時にオーステナイト粒が粗大化し、硬化組織の旧オーステナイト粒径を12μm以下とすることができなくなる。
なお、冷間圧延に先だって必要に応じて焼鈍を施しても良い。すなわち、冷間圧延の素材となる熱延鋼板が硬すぎて冷間圧延が困難である場合には冷間圧延前に焼鈍を施すことにより、素材を軟質化して冷間圧延を可能とすることができる。但し、焼鈍を施す場合には、焼鈍温度はAc1変態点以下とする。Ac1変態点を超えると熱間圧延後の冷却工程において生成させたベイナイトが粗大なセメンタイトとなるので、焼入加熱時のオーステナイト粒成長抑制効果がなくなる。
次いで、この冷延鋼板を部品形状に加工する。加工は、打ち抜き加工、プレス成形、切削加工等、目的とする部品形状に応じて最適に選択することができる。ここで、加工条件として20%以上とすることが好ましい。冷延焼鈍板に対して20%以上の冷間加工を施した部分について後述の条件で焼入れを行うことにより、より微細な硬化組織とすることが可能となる。上述した成分組成において、Moを含有する場合はMoのオーステナイト粒成長抑制効果により、特に加工を施さずとも微細な硬化組織が得られるが、Moを含有していない場合には、20%以上の冷間加工を施しておき、焼入れ前に加工歪みを導入しておくことが必要となる。
部品形状に加工された後に、少なくとも一部分に焼入れ処理を施す。ここで、焼入れ条件が特に重要となる。すなわち、焼入れ時の加熱温度は800〜1000℃とし、600〜800℃の昇温速度は400℃/s以上とする。
加熱温度が800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不十分となり、硬化組織を得ることができない。一方、加熱温度が1000℃を超えると、オーステナイト粒の成長速度が著しく増加し、平均粒径が増加する。また、600〜800℃の昇温速度が400℃/s未満の場合にもオーステナイト粒の成長が促進される。
なお、加熱温度は800〜950℃とすることが好ましく、600〜800℃の昇温速度は700℃/s以上であることが好ましい。
加熱温度が800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不十分となり、硬化組織を得ることができない。一方、加熱温度が1000℃を超えると、オーステナイト粒の成長速度が著しく増加し、平均粒径が増加する。また、600〜800℃の昇温速度が400℃/s未満の場合にもオーステナイト粒の成長が促進される。
なお、加熱温度は800〜950℃とすることが好ましく、600〜800℃の昇温速度は700℃/s以上であることが好ましい。
さらに、焼入れ加熱時に800℃以上の滞留時間が長くなると、オーステナイト粒が成長して、結果として最大粒径が平均粒径の4倍超となりやすくなるので、800℃以上の滞留時間は5秒以下とすることが好ましい。
本発明の機械構造用部品として、図3に示すギア1を製造した。すなわち、図3に示す代表的なギア1は、その周面に多数の歯2を刻んで成る。そして、本発明に従うギアでは、図4に示すように、多数の歯2とこれら歯2相互間の歯底3との表層部分に、高周波焼入れによる硬化組織4を有するものである。なお、図示例では、歯2および歯底3の表層部分に焼入れによる硬化組織4を形成したが、その他の部分、例えば各種駆動軸が差し込まれる軸穴5の内周面に焼入れによる硬化組織を設けることも可能である。
表1に示す成分組成になる鋼素材を、転炉によって溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×1000mmであった。この鋳片を、表2に示す条件にて熱間圧延、焼鈍、冷間圧延、そして焼鈍を行い冷延鋼板とした。
得られた冷延鋼板、あるいは、さらに冷間圧延を行った鋼板から、打抜き加工および仕上切削加工により、下記のギア形状とした。
記
小径ギア:外径75mm、モジュール2.5、歯数28、基準ピッチ円直径70mm、厚さ2.3mm
大径ギア:外径85mm、モジュール2.5、歯数32、基準ピッチ直径80mm、厚さ2.3mm
このギアに、周波数:200kHzの高周波焼入れ装置を用いて、表2に示す条件下で焼入れを行った後、加熱炉を用いて180℃×2hの条件で焼もどしを行い、その後ギア実体疲労試験を行った。ギア実体疲労試験は、小径および大径のギアを噛み合わせて回転速度3000rpmおよび負荷トルク245N・mの条件で回転させ、いずれかのギアが破損するまでのトルク負荷回数で評価した。
得られた結果を表2に併記する。
得られた冷延鋼板、あるいは、さらに冷間圧延を行った鋼板から、打抜き加工および仕上切削加工により、下記のギア形状とした。
記
小径ギア:外径75mm、モジュール2.5、歯数28、基準ピッチ円直径70mm、厚さ2.3mm
大径ギア:外径85mm、モジュール2.5、歯数32、基準ピッチ直径80mm、厚さ2.3mm
このギアに、周波数:200kHzの高周波焼入れ装置を用いて、表2に示す条件下で焼入れを行った後、加熱炉を用いて180℃×2hの条件で焼もどしを行い、その後ギア実体疲労試験を行った。ギア実体疲労試験は、小径および大径のギアを噛み合わせて回転速度3000rpmおよび負荷トルク245N・mの条件で回転させ、いずれかのギアが破損するまでのトルク負荷回数で評価した。
得られた結果を表2に併記する。
また、同じ条件で作製したギアについて、高周波焼入れによる硬化組織の平均旧オーステナイト粒径および最大旧オーステナイト粒径を、前述した方法と同様の手法にて求めた。
表2には、これらの結果も併記する。
表2には、これらの結果も併記する。
1 ギア
2 歯
3 歯底
4 硬化層
5 軸穴
2 歯
3 歯底
4 硬化層
5 軸穴
Claims (4)
- 冷延鋼板を用いて製造された鋼部品であって、
少なくとも一部分に焼入れによる硬化組織を有し、該硬化組織における旧オーステナイト粒径が12μm以下であることを特徴とする鋼部品。 - 請求項1において、前記冷延鋼板は、C:0.3〜1.5mass%、Si:3.0mass%以下およびMn:2.0mass%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする鋼部品。
- 請求項2において、前記鋼組成は、さらに、Cr:2.5mass%以下、Mo:1.0mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:2.5mass%以下、Co:1.0mass%以下、V:0.5mass%以下、Nb:0.5mass%以下、Ti:0.5mass%以下、Zr:0.2mass%以下、Al:1.0mass%以下、B:0.01mass%以下、W:1.0mass%以下、Sb:0.2mass%以下およびHf:0.1mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼部品。
- 請求項2または3において、前記鋼組成は、さらに、S:0.1mass%以下、Te:0.2mass%以下、Se:0.2mass%以下、Ca:0.02mass%以下、Mg:0.02mass%以下、REM:0.03mass%以下、Pb:0.6mass%以下およびBi:0.3mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼部品。
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-
2006
- 2006-01-31 JP JP2006022770A patent/JP2007204794A/ja not_active Withdrawn
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