JP2007203550A - 液体吐出装置の駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の加圧室を覆う大きさを有する圧電セラミック層を含む圧電アクチュエータを備えた液体吐出装置の、前記圧電セラミック層の非活性領域が徐々にクリープ変形するのを、これまでよりもさらに抑制して、液滴の吐出性能を、より長期間に亘って、良好なレベルに維持することができる駆動方法を提供する。
【解決手段】互いに隣接する圧電変形領域に印加される駆動電圧VP、VP′の波形を、一部で極性が逆転する部分を有する波形とし、かつ、両駆動電圧VP、VP′が、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、それぞれの圧電変形領域に印加する駆動電圧VP、VP′の波形の位相を、時間D1だけずらす。
【選択図】図1
【解決手段】互いに隣接する圧電変形領域に印加される駆動電圧VP、VP′の波形を、一部で極性が逆転する部分を有する波形とし、かつ、両駆動電圧VP、VP′が、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、それぞれの圧電変形領域に印加する駆動電圧VP、VP′の波形の位相を、時間D1だけずらす。
【選択図】図1
Description
本発明は、液体吐出装置の駆動方法に関するものである。
図2は、オンデマンド型のインクジェットプリンタ等に用いられる、液体吐出装置1の一例を示す断面図である。また、図3は、前記液体吐出装置1の一例の、要部を拡大した断面図である。図2、図3を参照して、この例の液体吐出装置1は、インクが充てんされる加圧室2と、前記加圧室2に連通し、加圧室2内のインクを、インク滴として吐出させるためのノズル3とを有する複数の液滴吐出部4を、面方向に配列させて形成した基板5と、前記基板5の複数の加圧室2を覆う大きさを有する圧電セラミック層6を含み、前記基板5上に積層された、板状の圧電アクチュエータ7とを備えている。
圧電アクチュエータ7は、個々の加圧室2に対応して配設され、個別に電圧が印加されることによって、個別に、厚み方向に撓み変形する複数の圧電変形領域8と、前記圧電変形領域8を囲んで配設され、前記基板5に固定されることで変形が防止された拘束領域9とに区画されている。また、図の例の圧電アクチュエータ7は、圧電セラミック層6の、両図において上面に、加圧室2ごとに個別に形成されて、圧電変形領域8を区画する個別電極10と、前記圧電セラミック層6の下面に、順に積層された、共に、複数の加圧室2を覆う大きさを有する、共通電極11と振動板12とを備えた、いわゆるユニモルフ型の構成を有している。各個別電極10と、共通電極11とは、それぞれ別個に、駆動回路13に接続されており、駆動回路13は、制御手段14に接続されている。
圧電セラミック層6は、例えば、PZT等の圧電材料によって形成されていると共に、層の厚み方向に、あらかじめ分極されて、いわゆる横振動モードの圧電変形特性が付与されており、制御手段14からの制御信号によって、駆動回路13が駆動されて、任意の個別電極10と、共通電極11との間に、前記分極方向と同方向の電圧が印加されると、両電極10、11間に挟まれた、圧電変形領域8に対応する活性領域15が、図3に横向きの白矢印で示すように、層の面方向に収縮される。
しかし、圧電セラミック層6の下面は、共通電極11を介して振動板12に固定されているため、活性領域15が収縮すると、それに伴って、圧電アクチュエータ7の圧電変形領域8が、図3に下向きの白矢印で示すように、加圧室2の方向に突出するように撓み変形して、加圧室2内に充てんされたインクを振動させ、この振動によって加圧されたインクが、ノズル3を通して、インク滴として吐出される。
特許文献1に記載されているように、液体吐出装置においては、いわゆる引き打ち式の駆動方法が、広く一般に採用される。図5は、図2の液体吐出装置1を、一般的な引き打ち式の駆動方法によって駆動させる際に、圧電アクチュエータ7の圧電変形領域8に印加される駆動電圧VPの駆動電圧波形(太線の一点鎖線で示す)の一例と、この駆動電圧波形が印加された際の、ノズル3内における、インクの体積速度の変化〔太線の実線で示す、(+)がノズル3の先端側、つまりインク滴の吐出側、(−)が加圧室2側〕との関係を簡略化して示すグラフである。
図2、図3、図5を参照して、まず、図5中のt1より左側の、ノズル3からインク滴を吐出させない待機時には、駆動電圧VPをVHに維持(VP=VH)して、活性領域15を面方向に収縮させ続けることによって、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に突出するように撓み変形させて、前記加圧室2の容積を減少させた状態を維持しており、この間、インクは静止状態、すなわち、ノズル3におけるインクの体積速度は0を維持し、前記ノズル3内に、インクの表面張力によって形成されるインクメニスカスは静止している。
ノズル3からインク滴を吐出させて、紙面にドットを形成するには、まず、その直前のt1の時点で、圧電変形領域8に印加していた駆動電圧VPを放電(VP=0)して、活性領域15の面方向の収縮を解除させることによって、圧電変形領域8の撓み変形を解除する。そうすると、加圧室2の容積が一定量だけ増加するため、ノズル3内のインクメニスカスは、その容積の増加分だけ、前記加圧室2の方向に引き込まれる。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図5のt1とt2との間の部分に示すように、一旦、(−)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これは、太線の実線で示す、インクの体積速度の固有振動周期T1の、ほぼ半周期分に相当する。
次に、ノズル3でのインクの体積速度が限りなく0に近づいたt2の時点で、駆動電圧VPを、再びVHまで充電(VP=VH)して、活性領域15を面方向に収縮させることによって、圧電変形領域8を撓み変形させる。そうすると、ノズル3内のインクは、インクメニスカスが加圧室2の側に最も大きく引き込まれた状態(t2の時点の、体積速度が0の状態)から、逆に、ノズル3の先端方向へ戻ろうとしているところに、圧電変形領域8を撓み変形させて、加圧室2の容積を減少させることによって、前記加圧室2から押し出されたインクの圧力が加わることになるため、ノズル3の先端側の方向へ加速されて、前記ノズル3の外方へ大きく突出する。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図5のt2とt3との間の部分に示すように、一旦、(+)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。ノズル3の外方へ突出したインクが略円柱状に見えることから、この突出状態のインクを、一般に、インク柱と称する。
次に、ノズル3の外方に突出したインクの体積速度が限りなく0に近づいた時点(図5のt3の時点)で、駆動電圧VPを、再び、放電(VP=0)して、活性領域15の面方向の収縮を解除させることによって、圧電変形領域8の撓み変形を解除する。そうすると、インクが、ノズル3の外方に最も大きく突出した状態(t3の時点の、体積速度が0の状態)から、逆に、加圧室2の方向へ戻ろうとしているところに、圧電変形領域8の撓み変形を解除して、加圧室2の容積を再び増加させたことによる、マイナスの圧力が加わることによって、ノズル3の外方へ伸びきったインク柱が切り離されて、1滴目のインク滴が生成される。
インク柱が切り離されたノズル3内のインクは、再び、加圧室2の方向に引き込まれる。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図5のt3とt4との間の部分に示すように、一旦、(−)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これは、先に説明したように、インクの体積速度の固有振動周期T1の、ほぼ半周期分に相当する。
次に、ノズル3でのインクの体積速度が限りなく0に近づいたt4の時点で、駆動電圧VPを、再びVHまで充電(VP=VH)して、活性領域15を面方向に収縮させることによって、圧電変形領域8を撓み変形させる。そうすると、先の、t2からt3の間でのインクの挙動と同じメカニズムによって、インクが、再び、ノズル3の外方へ大きく突出して、インク柱が形成される。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図5のt4とt5との間の部分に示すように、一旦、(+)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。
そして、ノズル3でのインクの体積速度が0になった時点(図5のt5の時点)以降、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3の外方へ伸びきったインク柱が切り離されて、2滴目のインク滴が生成される。生成された1滴目および2滴目のインク滴は、それぞれ、ノズル3の先端に対向させて配設した紙面まで飛翔して、1つのドットを形成する。
前記一連の動作は、図5に太線の一点鎖線で示すように、パルス幅T2が固有振動周期T1の約1/2倍であるパルスを2回、含む駆動電圧波形を有する駆動電圧VPを、圧電変形領域8に印加していることに相当する。1つのドットを、1滴のみのインク滴で形成する場合は、前記パルスを、1回のみとすればよい。また、1つのドットを、3滴以上のインク滴で形成する場合は、パルスを、インク滴の数に応じた回数、発生させればよい。
引き打ち式の駆動方法によって、図2、図3に示したユニモルフ型の圧電アクチュエータ7を有する液体吐出装置1を駆動させる際には、先に説明したように、ノズル3からインク滴を吐出させない待機時に、圧電セラミック層6の活性領域15を、面方向に収縮させた状態を維持し続ける必要があり、圧電セラミック層6の、活性領域15を囲む非活性領域16(圧電アクチュエータ7の拘束領域9に対応する)が、待機時に、前記活性領域15の面方向の収縮によって、図3に黒矢印で示す方向に、長時間に亘って、引張応力を受けて伸び続けることになる。
そして、非活性領域16は、引張応力を受けて伸びている時間が長くなるほど、その内部で、応力を緩和するようにドメインが回転することによって、徐々にクリープ変形して行き、それに伴って、活性領域15が、収縮を解除しても、クリープ変形した非活性領域16からの圧縮応力を受けて、もとの静止状態まで伸びきることができなくなる度合いが大きくなる。そのため、圧電アクチュエータ7の圧電変形領域8における、図3に下向きの白矢印で示した方向に撓み変形した状態と、この撓み変形を解除した静止状態との間での、厚み方向の変位量が徐々に小さくなって行く結果、インク滴の吐出性能が低下するという問題を生じる。
なお、前記問題は、ユニモルフ型の圧電アクチュエータに限って発生するものではなく、横振動モードの圧電変形特性が付与された2層の圧電セラミック層を、互いに、逆方向に伸縮させることで、全体を厚み方向に撓み変形させるバイモルフ型の圧電アクチュエータや、単層の圧電セラミック層を傾斜機能材料化したり、半導体効果を利用したりして、振動板を積層することなく、厚み方向に撓み変形させるモノモルフ型の圧電アクチュエータにおいても、圧電セラミック層を、複数の加圧室を覆う大きさに一体形成している以上、同様に発生する。
しかも、圧電セラミック層を、複数の加圧室を覆う大きさに一体形成することは、インクジェットプリンタの高画質化に伴うドットピッチの高精細化に対応して、液体吐出装置を現状よりもさらに微細化し、しかも、できるだけ少ない工程で、生産性よく製造する上で、どうしても欠かせない構成であり、活性領域を囲む非活性領域が、徐々にクリープ変形するのを防止する技術が求められている。
特許文献2には、例えば、メカトロニクス等の分野において、アクチュエータとして用いられる、独立した積層型圧電素子を、従来に比べて、より低い電圧で駆動して、なおかつ、より大きな変位量を得るために、圧電材料層(圧電セラミック層)の初期分極時の印加電圧と逆方向、つまり分極方向と逆方向で、かつ抗電界以下の電圧と、前記初期分極時の印加電圧と同方向、つまり分極方向と同方向の電圧を印加して駆動させることが記載されている。
前記駆動方法(正逆両方向の電圧を印加することから、以下では、「バイポーラ駆動方法」と記載することがある)を、図2の液体吐出装置1の、圧電アクチュエータ7の駆動に応用すると、非活性領域16が、従来のように、面方向に一方的に伸長するように、徐々にクリープ変形するのを、抑制できると考えられる。
すなわち、バイポーラ駆動方法によれば、圧電セラミック層6の活性領域15を、インク滴の吐出時に、従来のように、圧電変形領域8に分極方向と同方向の電圧を印加することによって、面方向に収縮させたり、電圧の印加を解除することによって、収縮を解除させたりできるだけでなく、前記圧電変形領域8に、分極方向と逆方向の電圧を印加することによって、面方向に伸長させることもできる。そして、活性領域15を面方向に伸長させることによって、非活性領域16に圧縮応力を加えることができる。
すなわち、バイポーラ駆動方法によれば、圧電セラミック層6の活性領域15を、インク滴の吐出時に、従来のように、圧電変形領域8に分極方向と同方向の電圧を印加することによって、面方向に収縮させたり、電圧の印加を解除することによって、収縮を解除させたりできるだけでなく、前記圧電変形領域8に、分極方向と逆方向の電圧を印加することによって、面方向に伸長させることもできる。そして、活性領域15を面方向に伸長させることによって、非活性領域16に圧縮応力を加えることができる。
また、圧電アクチュエータ7の、電圧を印加しない静止状態に対する、撓み変形時の圧電変形領域8の、厚み方向の変位量を、これまでより小さくすることもできる。例えば、先に説明した、従来の、一般的な引き打ち式の駆動方法等における、静止状態と撓み変形状態との間の、厚み方向の変位量を1とすると、バイポーラ駆動方法において、圧電変形領域8の、厚み方向のトータルの変位量を、同じ1にするために、前記圧電変形領域8を、厚み方向の一方側および反対側に撓み変形させる変位量は、それぞれ、全体の約半分とすることができる。そのため、圧電変形領域8が撓み変形する際に、圧電セラミック層6の非活性領域16が受ける引張応力、および圧縮応力を、共に小さくすることができる。
したがって、バイポーラ駆動方法によれば、非活性領域16が、従来のように、面方向に一方的に伸長するように、徐々にクリープ変形するのを抑制できると考えられる。
特開平2−192947号公報(第3頁左上欄第19行〜同頁右上欄第6行、第3頁右上欄第14行〜同頁左下欄第2行、第16図(b))
特開平1−226187号公報(特許請求の範囲、第2頁右上欄第9行〜同頁左下欄第1行、第2頁左下欄第3行〜同頁右下欄第11行、第2図)
しかし、発明者の検討によると、バイポーラ駆動方法を採用したとしても、非活性領域が、徐々にクリープ変形するのを抑制する効果は、未だ十分ではない。特に、インクジェットプリンタに組み込まれる液体吐出装置の圧電アクチュエータは、ごく短時間に、極めて多数回にわたって駆動が繰り返されることから、バイポーラ駆動方法を採用しても、前記インクジェットプリンタの耐用年数等と比較して短期間で、非活性領域がクリープ変形して、インク滴の吐出性能が低下してしまうおそれがある。
本発明の目的は、複数の加圧室を覆う大きさを有する圧電セラミック層を含む圧電アクチュエータを備えた液体吐出装置の、前記圧電セラミック層の非活性領域が徐々にクリープ変形するのを、これまでよりもさらに抑制して、液滴の吐出性能を、より長期間に亘って、良好なレベルに維持することができる駆動方法を提供することにある。
請求項1記載の発明は、
(A) 液体が充てんされる加圧室と、前記加圧室に連通し、加圧室内の液体を、液滴として吐出させるためのノズルとを有する複数の液滴吐出部が、面方向に配列させて形成された基板と、
(B) 前記基板の複数の加圧室を覆う大きさを有する、少なくとも1層の圧電セラミック層を含み、前記基板に積層された板状の圧電アクチュエータと、
を備えると共に、前記圧電アクチュエータが、個々の加圧室に対応して配設され、個別に電圧が印加されることによって、個別に、厚み方向に撓み変形する複数の圧電変形領域と、前記圧電変形領域を囲み、基板に固定されて変形が規制された拘束領域とに区画された液体吐出装置の、前記圧電アクチュエータの任意の圧電変形領域に駆動電圧を印加して、前記圧電変形領域を、厚み方向に撓み変形させることで、対応する液滴吐出部の、加圧室の容積を変化させて、前記加圧室内の液体を、連通するノズルを通して、液滴として吐出させるための駆動方法であって、
個々の圧電変形領域に印加する駆動電圧の波形を、その一部において、極性が逆転する部分を有する波形とし、かつ、互いに隣接する少なくとも2つの圧電変形領域に印加される駆動電圧が、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、それぞれの圧電変形領域に印加する駆動電圧の波形の位相をずらすことを特徴とする液体吐出装置の駆動方法である。
(A) 液体が充てんされる加圧室と、前記加圧室に連通し、加圧室内の液体を、液滴として吐出させるためのノズルとを有する複数の液滴吐出部が、面方向に配列させて形成された基板と、
(B) 前記基板の複数の加圧室を覆う大きさを有する、少なくとも1層の圧電セラミック層を含み、前記基板に積層された板状の圧電アクチュエータと、
を備えると共に、前記圧電アクチュエータが、個々の加圧室に対応して配設され、個別に電圧が印加されることによって、個別に、厚み方向に撓み変形する複数の圧電変形領域と、前記圧電変形領域を囲み、基板に固定されて変形が規制された拘束領域とに区画された液体吐出装置の、前記圧電アクチュエータの任意の圧電変形領域に駆動電圧を印加して、前記圧電変形領域を、厚み方向に撓み変形させることで、対応する液滴吐出部の、加圧室の容積を変化させて、前記加圧室内の液体を、連通するノズルを通して、液滴として吐出させるための駆動方法であって、
個々の圧電変形領域に印加する駆動電圧の波形を、その一部において、極性が逆転する部分を有する波形とし、かつ、互いに隣接する少なくとも2つの圧電変形領域に印加される駆動電圧が、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、それぞれの圧電変形領域に印加する駆動電圧の波形の位相をずらすことを特徴とする液体吐出装置の駆動方法である。
発明者の検討によると、バイポーラ駆動方法を採用しても、非活性領域がクリープ変形するのを抑制する効果が十分に得られない傾向があるのは、従来の駆動方法では、圧電アクチュエータ上の、複数の圧電変形領域に印加される駆動電圧の波形を、駆動する全ての圧電変形領域において同期させており、各圧電変形領域に対応する活性領域が、同期させた駆動電圧の印加によって同時に収縮した際に、前記各活性領域間の非活性領域が、大きな引張応力を受けるためである。
例えば、互いに隣接する2つの圧電変形領域に対応する活性領域が、同期させた駆動電圧の印加によって、同時に、面方向に収縮すると、両活性領域間の非活性領域は、前記両活性領域から、1つの活性領域を単独で収縮させる際の、約2倍の引張応力を受けることになる。また3つ以上の、互いに隣接する活性領域が、同時に、面方向に収縮される際には、各活性領域間の非活性領域が、その位置に応じて異なるが、それぞれ、各活性領域の収縮によって発生する引張応力の、2倍以上の合力を受けることになる。
先に説明したように、バイポーラ駆動方法では、非活性領域は、駆動時に、引張応力だけでなく、それとほぼ同等の圧縮応力も受けるため、それによって、引張方向へのクリープ変形は、ある程度は解消されるものの、例えば、互いに隣接する複数の活性領域に囲まれた非活性領域等の、より大きな引張応力を受ける部分において、クリープ変形が完全に解消されずに残留しやすく、残留したクリープ変形が徐々に蓄積することによって、先に説明したように、インク滴の吐出性能が低下するのである。
これに対し、請求項1記載の発明の駆動方法によれば、互いに隣接する少なくとも2つの圧電変形領域に印加される駆動電圧が、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、それぞれの圧電変形領域に印加する駆動電圧の波形の位相をずらしているため、同時に駆動される2つ以上の圧電変形領域に対応する活性領域間の非活性領域に加えられる引張応力を、これまでよりも低減することができる。
例えば、互いに隣接する2つの圧電変形領域を、同時に駆動させる場合を例にとって説明すると、両圧電変形領域の駆動時に、請求項1記載の駆動方法によれば、一方の活性領域の収縮による引張応力が、他方の活性領域の、圧電変形領域への逆極性の電圧の印加による、面方向の伸長による圧縮応力によって相殺されることで、前記2つの圧電変形領域に対応する2つの活性領域間の非活性領域が、いずれの応力も受けない状態、あるいは、通常よりも応力が緩和された状態に置かれる期間が生じる。そのため、非活性領域にクリープ変形が蓄積するのを、これまでよりも抑制して、液滴の吐出性能を、より長期間に亘って、良好なレベルに維持することが可能となる。
なお、各圧電変形領域に印加する駆動電圧は、請求項2に記載したように、第1の電圧と、前記第1の電圧と等価で、かつ、逆極性の第2の電圧とを含む、先に説明したバイポーラ駆動方法の波形とするのが好ましい。つまり、個々の圧電変形領域の駆動方法として、前記バイポーラ駆動方法を採用すると、駆動時に、各圧電変形領域に対応する活性領域の周囲の非活性領域に加わる、活性領域の収縮に伴う引張応力と、伸長に伴う圧縮応力とをほぼ等しくすることができる。そのため、非活性領域にクリープ変形が蓄積するのを、さらに効果的に抑制して、液滴の吐出性能を、より一層、長期間に亘って、良好なレベルに維持することが可能となる。
液滴を吐出させない待機時に、従来の、引き打ち式の駆動方法では、先に説明したように、待機時に、圧電変形領域に、電圧を印加し続けて、活性領域を、面方向に収縮させた状態を維持し続ける必要があり、そのことが、クリープ変形の大きな原因となっていた。これに対し、請求項3に記載したように、圧電変形領域に電圧を印加しない状態を維持するようにすると、非活性領域にクリープ変形が蓄積するのを、さらに効果的に抑制して、液滴の吐出性能を、より一層、長期間に亘って、良好なレベルに維持することが可能となる。
本発明の駆動方法によって駆動させる液体吐出装置の、互いに隣接する圧電変形領域間の、拘束領域の幅の最小値は、請求項4に記載したように、100〜500μmであるのが好ましい。拘束領域の幅の最小値が、前記範囲未満では、前記拘束領域を挟んで隣り合う圧電変形領域間の、変位の干渉が大きくなって、個々の圧電変形領域の、初期の変位量が小さくなるおそれがある。
また、拘束領域の幅の最小値が、前記範囲を超える場合には、前記拘束領域を挟んで隣り合う少なくとも2つの圧電変形領域に、先に説明したように、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、位相をずらして駆動電圧を印加しても、一方の圧電変形領域に対応する活性領域の収縮によって、前記拘束領域に対応する非活性領域に加えられる引張応力を、他方の圧電変形領域に対応する活性領域の伸長によって、前記非活性領域に加えられる圧縮応力によって、良好に相殺できないおそれがある。
これに対し、拘束領域の幅の最小値が、前記範囲内であれば、クロストークが発生するのを防止しながら、一方の圧電変形領域に対応する活性領域の収縮によって、前記拘束領域に対応する非活性領域に加えられる引張応力を、他方の圧電変形領域に対応する活性領域の伸長によって、前記非活性領域に加えられる圧縮応力によって、良好に相殺することができ、非活性領域にクリープ変形が蓄積するのを、さらに効果的に抑制して、液滴の吐出性能を、より一層、長期間に亘って、良好なレベルに維持することが可能となる。
本発明によれば、複数の加圧室を覆う大きさを有する圧電セラミック層を含む圧電アクチュエータを備えた液体吐出装置の、前記圧電セラミック層の非活性領域が徐々にクリープ変形するのを、これまでよりもさらに抑制して、液滴の吐出性能を、より長期間に亘って、良好なレベルに維持することができる駆動方法を提供することができる。
図2は、オンデマンド型のインクジェットプリンタ等に用いられる、液体吐出装置1の一例を示す断面図である。図3は、前記液体吐出装置1の一例の、要部を拡大した断面図である。図4は、前記液体吐出装置1の一例の、要部を拡大した平面図である。
図2、図3を参照して、この例の液体吐出装置1は、先に説明したように、インクが充てんされる加圧室2と、前記加圧室2に連通し、加圧室2内のインクを、インク滴として吐出させるためのノズル3とを有する複数の液滴吐出部4を、面方向に配列させて形成した基板5と、前記基板5の複数の加圧室2を覆う大きさを有する圧電セラミック層6を含み、前記基板5上に積層された、板状の圧電アクチュエータ7とを備えている。
図2、図3を参照して、この例の液体吐出装置1は、先に説明したように、インクが充てんされる加圧室2と、前記加圧室2に連通し、加圧室2内のインクを、インク滴として吐出させるためのノズル3とを有する複数の液滴吐出部4を、面方向に配列させて形成した基板5と、前記基板5の複数の加圧室2を覆う大きさを有する圧電セラミック層6を含み、前記基板5上に積層された、板状の圧電アクチュエータ7とを備えている。
圧電アクチュエータ7は、個々の加圧室2に対応して配設され、個別に電圧が印加されることによって、個別に、厚み方向に撓み変形する複数の圧電変形領域8と、前記圧電変形領域8を囲んで配設され、前記基板5に固定されることで変形が防止された拘束領域9とに区画されている。また、図の例の圧電アクチュエータ7は、圧電セラミック層6の、両図において上面に、加圧室2ごとに個別に形成されて、圧電変形領域8を区画する個別電極10と、前記圧電セラミック層6の下面に、順に積層された、共に、複数の加圧室2を覆う大きさを有する、共通電極11と振動板12とを備えた、いわゆるユニモルフ型の構成を有している。
各個別電極10と、共通電極11とは、それぞれ別個に、駆動回路13に接続されており、駆動回路13は、制御手段14に接続されている。圧電セラミック層6は、例えば、PZT等の圧電材料によって形成されていると共に、層の厚み方向に、あらかじめ分極されて、いわゆる横振動モードの圧電変形特性が付与されている。
図4を参照して、この例では、前記複数の加圧室2、および、各加圧室2に対応して、圧電アクチュエータ7の、圧電変形領域8を規定する個別電極10が、共に、菱形の平面形状に形成されている。また、各個別電極10によって規定される複数の圧電変形領域8(および、それに対応する加圧室2)は、それぞれ、図において左右方向に、前記菱形の、長い方の対角線を一直線上に揃えた複数の列(・・・Ln-2、Ln-1、Ln、Ln+1、Ln+2・・・)に整列されると共に、各列の圧電変形領域8が、1つの列の、隣り合う2つの圧電変形領域8の間に、隣の列の1つの圧電変形領域8が位置するように、それぞれ、半ピッチずつ、ずらして配列されている。
図4を参照して、この例では、前記複数の加圧室2、および、各加圧室2に対応して、圧電アクチュエータ7の、圧電変形領域8を規定する個別電極10が、共に、菱形の平面形状に形成されている。また、各個別電極10によって規定される複数の圧電変形領域8(および、それに対応する加圧室2)は、それぞれ、図において左右方向に、前記菱形の、長い方の対角線を一直線上に揃えた複数の列(・・・Ln-2、Ln-1、Ln、Ln+1、Ln+2・・・)に整列されると共に、各列の圧電変形領域8が、1つの列の、隣り合う2つの圧電変形領域8の間に、隣の列の1つの圧電変形領域8が位置するように、それぞれ、半ピッチずつ、ずらして配列されている。
また、互いに隣接する圧電変形領域8間の、拘束領域9の幅の最小値(図4中のW1)は、100〜500μmであるのが好ましい。拘束領域9の幅の最小値W1が、前記範囲未満では、前記拘束領域9を挟んで隣り合う圧電変形領域8間の、変位の干渉が大きくなって、個々の圧電変形領域8の、初期の変位量が小さくなるおそれがある。
また、拘束領域9の幅の最小値W1が、前記範囲を超える場合には、前記拘束領域9を挟んで隣り合う少なくとも2つの圧電変形領域8に、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、位相をずらして駆動電圧を印加しても、一方の圧電変形領域8に対応する活性領域15の収縮によって、前記拘束領域9に対応する非活性領域16に加えられる引張応力を、他方の圧電変形領域8に対応する活性領域15の伸長によって、前記非活性領域16に加えられる圧縮応力によって、良好に相殺できないおそれがある。
また、拘束領域9の幅の最小値W1が、前記範囲を超える場合には、前記拘束領域9を挟んで隣り合う少なくとも2つの圧電変形領域8に、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、位相をずらして駆動電圧を印加しても、一方の圧電変形領域8に対応する活性領域15の収縮によって、前記拘束領域9に対応する非活性領域16に加えられる引張応力を、他方の圧電変形領域8に対応する活性領域15の伸長によって、前記非活性領域16に加えられる圧縮応力によって、良好に相殺できないおそれがある。
これに対し、拘束領域9の幅の最小値W1が、前記範囲内であれば、拘束領域9を挟んで隣り合う圧電変形領域8間の、変位の干渉が大きくなるのを防止しながら、一方の圧電変形領域8に対応する活性領域15の収縮によって、拘束領域9に対応する非活性領域16に加えられる引張応力を、他方の圧電変形領域8に対応する活性領域15の伸長によって、前記非活性領域16に加えられる圧縮応力によって、良好に相殺することができ、非活性領域16にクリープ変形が蓄積するのを、さらに効果的に抑制して、液滴の吐出性能を、より一層、長期間に亘って、良好なレベルに維持することが可能となる。
図1は、図2〜図4の液体吐出装置1を、本発明の駆動方法によって駆動する際に、圧電アクチュエータ7の圧電変形領域8に印加される駆動電圧VP、VP′の駆動電圧波形(太線の一点鎖線で示す)の一例と、前記駆動電圧波形が印加された際の、ノズル3内における、インクの体積速度の変化〔太線の実線で示す、(+)がノズル3の先端側、つまりインク滴の吐出側、(−)が加圧室2側〕との関係を簡略化して示すグラフである。
なお、図では、上側の駆動電圧VPの駆動電圧波形についてのみ、対応するインクの体積速度の変化を重ねて示している。下側の駆動電圧VP′の駆動電圧波形は、前記駆動電圧VPの駆動電圧波形の位相を、時間D1だけずらしただけで、基本的に同じ波形であり、それによって生じるインクの体積速度の変化も同じであるため、図では、記載を省略している。
図1、図4を参照して、図1の上側の駆動電圧VPは、先に説明した複数列の圧電変形領域8のうち、上下方向略中央の、列Lnを構成する各圧電変形領域8と、前記列Lnの上下、一列おきの列・・・Ln-4、Ln-2、Ln+2、Ln+4・・・を構成する各圧電変形領域8に印加される駆動電圧波形を示し、下側の駆動電圧VP′は、前記各列の間の、一列おきの列・・・Ln-5、Ln-3、Ln-1、Ln+1、Ln+3、Ln+5・・・を構成する各圧電変形領域8に印加される駆動電圧波形を示している。
図4の配列の各圧電変形領域8に、このように、各列ごとに交互に、位相をずらした駆動電圧VP、VP′を印加するようにした場合には、圧電アクチュエータ7上の全ての圧電変形領域8について、それぞれの周囲を囲む、直近の4つの圧電変形領域8(菱形の辺を対峙させた、斜め上下左右の圧電変形領域8)とは、位相をずらした駆動電圧を印加することができる。
例えば、列Lnに属する各圧電変形領域8には、駆動電圧VPが印加されると共に、その周囲を囲む、斜め上下左右、計4つの、列Ln-1、列Ln+1に属する圧電変形領域8には、必ず、駆動電圧VP′が印加される。また、列Ln-1に属する各圧電変形領域8には、駆動電圧VP′が印加されると共に、その周囲を囲む、斜め上下左右、計4つの、列Ln-2、列Lnに属する圧電変形領域8には、必ず、駆動電圧VPが印加される。他の列の圧電変形領域8についても同様である。
そのため、圧電アクチュエータ7上の全ての圧電変形領域8について、隣接する圧電変形領域8との間で、印加する駆動電圧の位相をずらすことによる、両圧電変形領域8間の拘束領域9に対応する非活性領域16への応力の蓄積と、それによるクリープ変形を抑制する効果を、均等に発現させることができる。
両駆動電圧VP、VP′は、この例では、先に説明したように、その位相を、時間D1だけずらした他は、基本的に、同じ駆動電圧波形とされる。そこで、代表させて、上側の駆動電圧VPの駆動電圧波形と、それによって生じるインクの体積速度の変化を説明する。
両駆動電圧VP、VP′は、この例では、先に説明したように、その位相を、時間D1だけずらした他は、基本的に、同じ駆動電圧波形とされる。そこで、代表させて、上側の駆動電圧VPの駆動電圧波形と、それによって生じるインクの体積速度の変化を説明する。
図1〜図4を参照して、まず、図1中のt1より左側の、ノズル3からインク滴を吐出させない待機時には、駆動電圧VPを印加せず(VP=0)、圧電変形領域8の撓み変形を解除した状態を維持しており、この間、インクは静止状態、すなわち、ノズル3におけるインクの体積速度は0を維持し、前記ノズル3内に、インクの表面張力によって形成されるインクメニスカスは静止している。
ノズル3からインク滴を吐出させて、紙面にドットを形成するには、まず、
(1) その直前のt1の時点で、駆動電圧VPを、分極方向と逆方向の第1の電圧(−VL)まで充電(VP=−VL)して、活性領域15を面方向に伸長させることで、圧電変形領域8を、加圧室2の方向と反対方向に撓み変形させる。そうすると、加圧室2の容積が一定量だけ増加するため、ノズル3内のインクメニスカスは、その容積の増加分だけ、前記加圧室2の方向に引き込まれる。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図1のt1とt2との間の部分に示すように、一旦、(−)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これは、太線の実線で示す、インクの体積速度の固有振動周期T1の、ほぼ半周期分に相当する。
(1) その直前のt1の時点で、駆動電圧VPを、分極方向と逆方向の第1の電圧(−VL)まで充電(VP=−VL)して、活性領域15を面方向に伸長させることで、圧電変形領域8を、加圧室2の方向と反対方向に撓み変形させる。そうすると、加圧室2の容積が一定量だけ増加するため、ノズル3内のインクメニスカスは、その容積の増加分だけ、前記加圧室2の方向に引き込まれる。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図1のt1とt2との間の部分に示すように、一旦、(−)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これは、太線の実線で示す、インクの体積速度の固有振動周期T1の、ほぼ半周期分に相当する。
(2) 次に、ノズル3でのインクの体積速度が限りなく0に近づいたt2の時点で、駆動電圧VPを、今度は、分極方向と同方向の第2の電圧(+VL)まで充電(VP=+VL)して、活性領域15を、面方向に収縮させることによって、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に突出するように撓み変形させる。そうすると、ノズル3内のインクは、インクメニスカスが加圧室2の側に最も大きく引き込まれた状態(t2の時点の、体積速度が0の状態)から、逆に、ノズル3の先端方向へ戻ろうとしているところに、圧電変形領域8を加圧室2の方向に撓み変形させて、加圧室2の容積を減少させることによって、前記加圧室2から押し出されたインクの圧力が加わることになるため、ノズル3の先端側の方向へ加速されて、前記ノズル3の外方へ大きく突出する。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図1のt2とt3との間の部分に示すように、一旦、(+)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これにより、先に説明したインク柱が形成される。
(3) 次に、ノズル3の外方へ突出したインクの体積速度が限りなく0に近づいた時点(図1のt3の時点)で、駆動電圧VPを、再び、第1の電圧(−VL)まで充電(VP=−VL)して、活性領域15を面方向に伸長させることによって、圧電変形領域8を、加圧室2の方向と反対方向に撓み変形させる。そうすると、インクが、ノズル3の外方へ最も大きく突出した状態(t3の時点の、体積速度が0の状態)から、逆に、加圧室2の方向へ戻ろうとしているところに、圧電変形領域8を加圧室2の方向と反対方向に撓み変形させて、加圧室2の容積を再び増加させたことによる、マイナスの圧力が加わることによって、ノズル3の外方へ伸び切ったインク柱が切り離されて、1滴目のインク滴が生成される。
インク柱が切り離されたノズル3内のインクは、再び、加圧室2の方向に引き込まれる。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図1のt3とt4との間の部分に示すように、一旦、(−)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。これは、先に説明したように、インクの体積速度の固有振動周期T1の、ほぼ半周期分に相当する。
(4) 次に、ノズル3でのインクの体積速度が限りなく0に近づいたt4の時点で、駆動電圧VPを、再び、第2の電圧(+VL)まで充電(VP=+VL)して、活性領域15を面方向に収縮させることによって、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に撓み変形させる。そうすると、先の、t2からt3の間でのインクの挙動と同じメカニズムによって、インクが、再び、ノズルの外方へ大きく突出して、インク柱が形成される。その際の、ノズル3内でのインクの体積速度は、図1のt4とt5との間の部分に示すように、一旦、(+)側に大きくなった後、徐々に小さくなって、やがて0に近づく。
そして、ノズル3でのインクの体積速度が0になった時点(図1のt5の時点)以降、インクの振動の速度が加圧室2の側に向かうことによって、ノズル3の外方へ伸びきったインク柱が切り離されて、2滴目のインク滴が生成される。生成された1滴目および2滴目のインク滴は、それぞれ、ノズル3の先端に対向させて配設した紙面まで飛翔して、1つのドットを形成する。
前記(1)〜(4)の一連の動作は、図1に太線の一点鎖線で示すように、パルス幅T2が固有振動周期T1の約1/2であるパルスを2回、含む駆動電圧波形を有する駆動電圧VPを、圧電変形領域8に印加していることに相当する。1つのドットを、1滴のみのインク滴で形成する場合は、前記パルスを、1回のみとすればよい。また、1つのドットを、3滴以上のインク滴で形成する場合は、パルスを、インク滴の数に応じた回数、発生させればよい。
一連の動作が終了後、引き続いて、次のドットを形成する場合は、再び、t1から始まる操作が繰り返し行われる。また、次のドットを形成しない場合は、駆動電圧VPを印加しない(VP=0)待機状態とされる。
次に、図1の下側の駆動電圧VP′について説明する。先に説明したように、駆動電圧VP′は、その位相を、時間D1だけずらした他は、基本的に、駆動電圧VPと同じ駆動電圧波形である。すなわち、紙面にドットを形成しない待機時には、図1中のt1′より左側に示すように、駆動電圧VP′を印加せず(VP′=0)、圧電変形領域8の撓み変形を解除した状態を維持する。
次に、図1の下側の駆動電圧VP′について説明する。先に説明したように、駆動電圧VP′は、その位相を、時間D1だけずらした他は、基本的に、駆動電圧VPと同じ駆動電圧波形である。すなわち、紙面にドットを形成しない待機時には、図1中のt1′より左側に示すように、駆動電圧VP′を印加せず(VP′=0)、圧電変形領域8の撓み変形を解除した状態を維持する。
紙面にドットを形成する際には、下記(1)′〜(4)′の操作を、t1′からt2′までの間隔、およびt3′からt4′までの間隔を、いずれも、インクの体積速度の固有振動周期T1の、ほぼ半周期分に設定し、かつ、t1′からt3′までの間隔を、前記固有振動周期T1の、ほぼ1周期分に設定すると共に、第1の電圧(−VL)と、第2の電圧(+VL)とを、それぞれ、駆動電圧VPの場合と同じ電圧値に設定して実施する。
(1)′ 駆動電圧VPの印加を開始したt1の時点から、前記時間D1だけ遅らせた、図中のt1′の時点で、駆動電圧VP′を、分極方向と逆方向の第1の電圧(−VL)まで充電(VP=−VL)して、活性領域15を面方向に伸長させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向と反対方向に撓み変形させる。
(2)′ t2の時点で、駆動電圧VP′を、分極方向と同方向の第2の電圧(+VL)まで充電(VP=+VL)して、活性領域15を、面方向に収縮させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に突出するように撓み変形させる。
(2)′ t2の時点で、駆動電圧VP′を、分極方向と同方向の第2の電圧(+VL)まで充電(VP=+VL)して、活性領域15を、面方向に収縮させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に突出するように撓み変形させる。
(3)′ t3′の時点で、駆動電圧VP′を、再び、第1の電圧(−VL)まで充電(VP=−VL)して、活性領域15を面方向に伸長させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向と反対方向に撓み変形させる。
(4)′ t4′の時点で、駆動電圧VPを′、再び、第2の電圧(+VL)まで充電(VP=+VL)して、活性領域15を面方向に収縮させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に撓み変形させる。
(4)′ t4′の時点で、駆動電圧VPを′、再び、第2の電圧(+VL)まで充電(VP=+VL)して、活性領域15を面方向に収縮させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に撓み変形させる。
そうすると、ノズル3内のインクが、先に説明した、駆動電圧VPを印加したときと同じ挙動をして、t3′の時点と、図示していないが、前記t3′の時点から、固有振動周期T1の、ほぼ1周期分の時間が経過した時点で、それぞれ、1滴ずつ、計2滴のインク滴が生成され、生成された2滴のインク滴が、ノズル3の先端に対向させて配設した紙面まで飛翔して、1つのドットを形成する。
前記一連の動作は、図1に太線の一点鎖線で示すように、パルス幅T2が固有振動周期T1の約1/2であるパルスを2回、含む駆動電圧波形を有する駆動電圧VP′を、圧電変形領域8に印加していることに相当する。1つのドットを、1滴のみのインク滴で形成する場合は、前記パルスを、1回のみとすればよい。また、1つのドットを、3滴以上のインク滴で形成する場合は、パルスを、インク滴の数に応じた回数、発生させればよい。
一連の動作が終了後、引き続いて、次のドットを形成する場合は、再び、t1′から始まる操作が繰り返し行われる。また、次のドットを形成しない場合は、駆動電圧VP′を印加しない(VP=0)待機状態とされる。
先に説明したように、隣り合う異なる列に属し、互いに隣接する、少なくとも2つの圧電変形領域8に、それぞれ、駆動電圧VP、VP′を印加して駆動させると、図中の、t2からt2′までの期間P1、t3からt3′までの期間P2、およびt4からt4′までの期間P3にわたって、両圧電変形領域8に、それぞれ逆極性の駆動電圧を印加することができるため、両圧電変形領域8に挟まれた拘束領域9に対応する、圧電セラミック層6の非活性領域16を、引張および圧縮のいずれの応力も受けない状態、あるいは、通常よりも応力が緩和された状態に置くことができる。
先に説明したように、隣り合う異なる列に属し、互いに隣接する、少なくとも2つの圧電変形領域8に、それぞれ、駆動電圧VP、VP′を印加して駆動させると、図中の、t2からt2′までの期間P1、t3からt3′までの期間P2、およびt4からt4′までの期間P3にわたって、両圧電変形領域8に、それぞれ逆極性の駆動電圧を印加することができるため、両圧電変形領域8に挟まれた拘束領域9に対応する、圧電セラミック層6の非活性領域16を、引張および圧縮のいずれの応力も受けない状態、あるいは、通常よりも応力が緩和された状態に置くことができる。
すなわち、期間P1、および期間P3には、それぞれ、駆動電圧VPが第2の電圧(+VL)、駆動電圧VP′が第1の電圧(−VL)となることから、前記駆動電圧VPが印加された圧電変形領域8に対応する活性領域15を、面方向に収縮させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に突出するように撓み変形させると共に、駆動電圧VP′が印加された圧電変形領域8に対応する活性領域15を、面方向に伸長させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向と反対方向に突出するように撓み変形させることができる。
また、期間P2には、駆動電圧VPが第1の電圧(−VL)、駆動電圧VP′が第2の電圧(+VL)となることから、前記駆動電圧VPが印加された圧電変形領域8に対応する活性領域15を、面方向に伸長させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向と反対方向に突出するように撓み変形させると共に、駆動電圧VP′が印加された圧電変形領域8に対応する活性領域15を、面方向に収縮させて、圧電変形領域8を、加圧室2の方向に突出するように撓み変形させることができる。
そのため、両圧電変形領域8に挟まれた拘束領域9に対応する、圧電セラミック層6の非活性領域16を、図1に示す、紙面に1つのドットを形成するための1動作のうち、期間P1〜期間P3の間、一方の圧電変形領域8に対応する活性領域15の収縮による引張応力が、他方の圧電変形領域8に対応する活性領域15の伸長による圧縮応力によって相殺されて、いずれの応力も受けない状態、あるいは、通常よりも応力が緩和された状態に置くことができる。したがって、前記非活性領域16が徐々にクリープ変形するのを、これまでよりもさらに抑制して、液滴の吐出性能を、より長期間に亘って、良好なレベルに維持することができる。
また、図の駆動方法では、先に説明したように、個々の圧電変形領域8に印加する駆動電圧VP、VP′を、共に、第1の電圧(−VL)と、前記第1の電圧(−VL)と等価で、かつ、逆極性の第2の電圧(+VL)とを含む、バイポーラ駆動方法の波形としていると共に、液滴を吐出させない待機時に、圧電変形領域8に電圧を印加しない状態を維持しているため、非活性領域16にクリープ変形が蓄積するのを、さらに効果的に抑制して、液滴の吐出性能を、より一層、長期間に亘って、良好なレベルに維持することもできる。
駆動電圧VP、VP′の位相を、どの程度、ずらすかについては、特に限定されない。例えば、位相をずらす時間D1を、パルス幅T2と等しくなるように設定して、両駆動電圧VP、VP′の位相を、完全に逆転させれば、図1のt2の時点からt4′の時点までの間、連続して、前記駆動電圧VP、VP′を、互いに逆極性の状態に維持することができる。そのため、非活性領域16にクリープ変形が蓄積するのを抑制する効果を、最大限に発現させることができる。
しかし、時間D1が長くなるほど、駆動電圧VPが印加されて、ノズル3からインク滴が吐出されるタイミングと、駆動電圧VP′が印加されて、ノズル3からインク滴が吐出されるタイミングとのずれが大きくなって、画質に影響を及ぼすおそれが生じる。そのため、非活性領域16にクリープ変形が蓄積するのを抑制する効果と、良好な画質を得ることとを併せ考慮すると、時間D1は、パルス幅T2の0.3〜1.0倍、特に0.5〜1.0倍であるのが好ましい。
本発明の構成は、以上で説明した各図の例に限定されるものではない。例えば、本発明の駆動方法は、図に示したユニモルフ型の圧電アクチュエータ7を備えた液体吐出装置1に限らず、先に説明したバイモルフ型やモノモルフ型の圧電アクチュエータを備えた液体吐出装置の駆動に適用することもでき、そのいずれの場合にも、複数の加圧室を覆う大きさを有する圧電セラミック層を含む圧電アクチュエータを備えた液体吐出装置の、前記圧電セラミック層の非活性領域が徐々にクリープ変形するのを、これまでよりもさらに抑制して、液滴の吐出性能を、より長期間に亘って、良好なレベルに維持することができる。
《実施例1〜5、比較例1、2》
〈圧電アクチュエータの作製〉
粒径0.5〜3.0μmのチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電セラミック粉体に対して、アクリル系樹脂エマルションと、純水とを配合し、平均粒径10mmのナイロンボールと共に、ボールミルを用いて30時間、混合してスラリーを調製した。次に、前記スラリーを用いて、引き上げ法によって、厚み30μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、圧電セラミック層6、振動板12のもとになる、厚み35〜37μmのグリーンシートを形成した。
〈圧電アクチュエータの作製〉
粒径0.5〜3.0μmのチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電セラミック粉体に対して、アクリル系樹脂エマルションと、純水とを配合し、平均粒径10mmのナイロンボールと共に、ボールミルを用いて30時間、混合してスラリーを調製した。次に、前記スラリーを用いて、引き上げ法によって、厚み30μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、圧電セラミック層6、振動板12のもとになる、厚み35〜37μmのグリーンシートを形成した。
次に、前記グリーンシートを、PETフィルムと共に、縦50mm×横50mmの正方形に裁断したものを2枚、用意し、そのうち1枚のグリーンシートの、露出した表面のほぼ全面に、共通電極11のもとになる金属ペーストを、スクリーン印刷法によって印刷した後、2枚のグリーンシートを、防爆型の乾燥機を用いて、50℃で20分間、乾燥させた。なお、金属ペーストとしては、共に平均粒径が2〜4μmである銀粉末とパラジウム粉末とを、重量比で7:3の割合で配合したものを用いた。また、もう1枚のグリーンシートには、共通電極11への配線のためのスルーホールを形成した。
次に、乾燥させた1枚目のグリーンシートの、金属ペーストを印刷した面に、もう1枚のグリーンシートを位置合わせしながら重ね合わせた後、その厚み方向に5MPaの圧力をかけながら、60℃で60秒間、保持して熱圧着させ、次いで、両グリーンシートからPETフィルムを剥離すると共に、スルーホールに、前記と同じ金属ペーストを充てんして積層体を作製した。
次に、前記積層体を、乾燥機中で、100℃から昇温を開始して、毎時8℃の昇温速度で、25時間かけて300℃まで昇温させて脱脂した後、室温まで冷却した。そして、さらに焼成炉中で、ピーク温度1100℃で2時間、焼成して、圧電セラミック層6と、共通電極11と、振動板12との積層体を得た。圧電セラミック層6、振動板12の厚みは、共に20μmであった。また、圧電セラミック層6の抗電界の強さは、17kV/cmであった。
次に、前記積層体のうち、圧電セラミック層6の、露出した表面に、スクリーン印刷法によって、前記と同じ金属ペーストを用いて、複数個の個別電極10に対応するパターンを印刷し、ピーク温度850℃で30分間かけて連続炉中を通過させることで、金属ペーストを焼き付けて、複数個の個別電極10を形成した後、積層体を、ダイシングソーを用いて周辺をカットして、外形を、縦33mm×横12mmの長方形に揃えた。圧電変形領域8を規定する個別電極10のパターンは、平面形状が菱形で、かつ、長い方の対角線の長さが600μm、短いほうの対角線の長さが400μmの個別電極10を、図4に示す並べ方で、15列、各列40個、配列して、ユニモルフ型の圧電アクチュエータ7を作製した。なお、互いに隣接する圧電変形領域8間の、拘束領域9の幅の最小値W1は、表1に示す値とした。
〈液体吐出装置の製造〉
厚み100μmのステンレス箔をエッチング加工して、平面形状が菱形で、かつ、長い方の対角線の長さが700μm、短いほうの対角線の長さが500μmの加圧室2が、前記個別電極10の形成ピッチに合わせて配列された第1基板を作製した。また、厚み100μmのステンレス箔を、同じくエッチング加工して、インクジェットプリンタのインク補給部から、各加圧室にインクを供給するための共通供給路と、加圧室2とノズル3とを繋ぐ流路とが、加圧室2の配列に対応させて配列された第2基板を作製した。さらに、厚み40μmのステンレス箔をエッチング加工して、直径26μmのノズル3が、加圧室2の配列に対応させて配列された第3基板を作製した。
厚み100μmのステンレス箔をエッチング加工して、平面形状が菱形で、かつ、長い方の対角線の長さが700μm、短いほうの対角線の長さが500μmの加圧室2が、前記個別電極10の形成ピッチに合わせて配列された第1基板を作製した。また、厚み100μmのステンレス箔を、同じくエッチング加工して、インクジェットプリンタのインク補給部から、各加圧室にインクを供給するための共通供給路と、加圧室2とノズル3とを繋ぐ流路とが、加圧室2の配列に対応させて配列された第2基板を作製した。さらに、厚み40μmのステンレス箔をエッチング加工して、直径26μmのノズル3が、加圧室2の配列に対応させて配列された第3基板を作製した。
そして、前記第1〜第3基板を、接着剤を用いて貼り合わせて基板5を作製し、この基板5と、先に作製した圧電アクチュエータ7とを、接着剤を用いて貼り合わせた後、圧電アクチュエータ7の表面側において、各個別電極10と、スルーホール内に充てんされ、共通電極11と接続された電極層剤の露出部とを、フレキシブル基板を用いて、駆動回路13に接続して、図1の液体吐出装置1を製造した。
〈駆動試験〉
製造した液体吐出装置1を、それぞれ、下記の駆動方法で連続的に駆動させた。そして、圧電変形領域8の、駆動初期の変位量(初期変位量)と、30億回、連続駆動させた後の変位量の低下率とを求めた。測定には、ドップラー変位計を使用し、圧電変形領域8を変形させた状態における、前記圧電変形領域8の中心位置と、周辺の、基板5と接着された領域との高さの差を、変位量とした。
製造した液体吐出装置1を、それぞれ、下記の駆動方法で連続的に駆動させた。そして、圧電変形領域8の、駆動初期の変位量(初期変位量)と、30億回、連続駆動させた後の変位量の低下率とを求めた。測定には、ドップラー変位計を使用し、圧電変形領域8を変形させた状態における、前記圧電変形領域8の中心位置と、周辺の、基板5と接着された領域との高さの差を、変位量とした。
(実施例1〜5)
図1に示す本発明の駆動方法であって、
駆動電圧VP:第1の電圧(−VL)=−10V、第2の電圧(+VL)=+10V、パルス幅T2=16μsec、
駆動電圧VP′:第1の電圧(−VL)=−10V、第2の電圧(+VL)=+10V、パルス幅T2=16μsec、
とし、かつ、隣り合う異なる列に属し、互いに隣接する各圧電変形領域8に、それぞれ、駆動電圧VP、VP′を印加するタイミングをずらす時間D1を、D1=10μsecとした。
図1に示す本発明の駆動方法であって、
駆動電圧VP:第1の電圧(−VL)=−10V、第2の電圧(+VL)=+10V、パルス幅T2=16μsec、
駆動電圧VP′:第1の電圧(−VL)=−10V、第2の電圧(+VL)=+10V、パルス幅T2=16μsec、
とし、かつ、隣り合う異なる列に属し、互いに隣接する各圧電変形領域8に、それぞれ、駆動電圧VP、VP′を印加するタイミングをずらす時間D1を、D1=10μsecとした。
(比較例1)
図5に示す、従来の、引き打ち式の駆動方法であって、駆動電圧VPを、電圧VH=+20V、パルス幅T2=16μsecとして、全ての圧電変形領域8において同期させた。
(比較例2)
従来のバイポーラ駆動方法であって、駆動電圧VPを、第1の電圧(−VL)=−10V、第2の電圧(+VL)=+10V、パルス幅T2=16μsecとして、全ての圧電変形領域8において同期させた。
図5に示す、従来の、引き打ち式の駆動方法であって、駆動電圧VPを、電圧VH=+20V、パルス幅T2=16μsecとして、全ての圧電変形領域8において同期させた。
(比較例2)
従来のバイポーラ駆動方法であって、駆動電圧VPを、第1の電圧(−VL)=−10V、第2の電圧(+VL)=+10V、パルス幅T2=16μsecとして、全ての圧電変形領域8において同期させた。
結果を表1に示す。
表より、各実施例の駆動方法によれば、従来の、引き打ち式の駆動方法や、バイポーラ駆動方法に比べて、変位量の低下率を少なくできることが判った。そして、このことから、実施例の駆動方法によれば、圧電セラミック層6の非活性領域16が徐々にクリープ変形するのを、これまでよりもさらに抑制して、液滴の吐出性能を、より長期間に亘って、良好なレベルに維持できることが確認された。また、各実施例を比較したところ、非活性領域16に対応する拘束領域9の幅の最小値W1は、100〜500μmであるのが好ましいことが確認された。
1 液体吐出装置
2 加圧室
3 ノズル
4 液滴吐出部
5 基板
6 圧電セラミック層
7 圧電アクチュエータ
8 圧電変形領域
9 拘束領域
10 個別電極
11 共通電極
12 振動板
13 駆動回路
14 制御手段
15 活性領域
16 非活性領域
VP、VP′ 駆動電圧
D1 ずらす時間
2 加圧室
3 ノズル
4 液滴吐出部
5 基板
6 圧電セラミック層
7 圧電アクチュエータ
8 圧電変形領域
9 拘束領域
10 個別電極
11 共通電極
12 振動板
13 駆動回路
14 制御手段
15 活性領域
16 非活性領域
VP、VP′ 駆動電圧
D1 ずらす時間
Claims (4)
- (A) 液体が充てんされる加圧室と、前記加圧室に連通し、加圧室内の液体を、液滴として吐出させるためのノズルとを有する複数の液滴吐出部が、面方向に配列させて形成された基板と、
(B) 前記基板の複数の加圧室を覆う大きさを有する、少なくとも1層の圧電セラミック層を含み、前記基板に積層された板状の圧電アクチュエータと、
を備えると共に、前記圧電アクチュエータが、個々の加圧室に対応して配設され、個別に電圧が印加されることによって、個別に、厚み方向に撓み変形する複数の圧電変形領域と、前記圧電変形領域を囲み、基板に固定されて変形が規制された拘束領域とに区画された液体吐出装置の、前記圧電アクチュエータの任意の圧電変形領域に駆動電圧を印加して、前記圧電変形領域を、厚み方向に撓み変形させることで、対応する液滴吐出部の、加圧室の容積を変化させて、前記加圧室内の液体を、連通するノズルを通して、液滴として吐出させるための駆動方法であって、
個々の圧電変形領域に印加する駆動電圧の波形を、その一部において、極性が逆転する部分を有する波形とし、かつ、互いに隣接する少なくとも2つの圧電変形領域に印加される駆動電圧が、少なくとも一時的に、互いに逆極性となるように、それぞれの圧電変形領域に印加する駆動電圧の波形の位相をずらすことを特徴とする液体吐出装置の駆動方法。 - 圧電変形領域に印加する駆動電圧の波形を、第1の電圧と、前記第1の電圧と等価で、かつ、逆極性の第2の電圧とを含む波形とする請求項1記載の液体吐出装置の駆動方法。
- 液滴を吐出させない待機時には、圧電変形領域に電圧を印加しない状態を維持する請求項1または2記載の液体吐出装置の駆動方法。
- 駆動させる液体吐出装置の、互いに隣接する圧電変形領域間の、拘束領域の幅の最小値が100〜500μmである請求項1〜2のいずれかに記載の液体吐出装置の駆動方法。
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---|---|---|---|
JP2006023767A JP2007203550A (ja) | 2006-01-31 | 2006-01-31 | 液体吐出装置の駆動方法 |
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JP (1) | JP2007203550A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20100223768A1 (en) * | 2009-03-05 | 2010-09-09 | Yasuhiro Sekiguchi | Method of manufacturing liquid transporting apparatus |
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JP2011093130A (ja) * | 2009-10-28 | 2011-05-12 | Kyocera Corp | 液体吐出ヘッドの使用方法および記録装置 |
JP2012030379A (ja) * | 2010-07-28 | 2012-02-16 | Kyocera Corp | 液体吐出ヘッドの駆動方法および記録装置 |
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-
2006
- 2006-01-31 JP JP2006023767A patent/JP2007203550A/ja active Pending
Cited By (6)
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US8959733B2 (en) * | 2009-03-05 | 2015-02-24 | Brother Kogyo Kabushiki Kaisha | Method of manufacturing liquid transporting apparatus |
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JP2011093130A (ja) * | 2009-10-28 | 2011-05-12 | Kyocera Corp | 液体吐出ヘッドの使用方法および記録装置 |
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