JP2007201810A - 無線通信装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】周波数選択性フェージング環境において、送信電力を増加させずにパケット誤り率を改善することができる無線通信装置及び方法を提供する。
【解決手段】受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する伝送路計測部12と、伝送路計測部12で計測された受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて通信先が信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する演算処理部14と、演算処理部14で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ制御部14とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、直交周波数分割多重方式(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)の無線通信装置及び方法に関するものである。
近年、IEEE802.11a/gに代表される無線LAN(Local Area Network)、また、IEEE802.16、すなわちWiMax等、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調技術を搭載した通信機器が多く普及してきている。その多くは、バッテリー駆動型端末に搭載されているために、消費電力を必要最低限に抑えつつ、通信品質の安定化と高スループット化を同時に確保することが求められている。
このように相反する要件を実現するための技術として、送信電力の適応制御が注目されている。もっとも単純化した例としては、送受信端末対の伝送距離が短い場合には小電力で通信を行い、距離が大きくなるに従って必要な量だけ送信電力を追加し、送信電力を必要最小限に抑えるような方法が挙げられる。
実際の無線伝送路上には、壁や地面等の様々な反射物に起因されるマルチパスが存在し、周波数選択性フェージングが生じている。具体的な例を図9に示すと、ある周波数帯について均一な電力密度で送信電力を発信した場合、マルチパスによる多数の遅延波が原因で、受信スペクトラムにおいて電力密度の均一性が失われる。
フェージング現象がOFDMに与える影響を考えると、OFDMは多数の狭帯域キャリア(以下、サブキャリア)で構成されているので、各サブキャリア間の信号減衰量に差異が生じることになる。そのため、各サブキャリア間の誤り特性にばらつきが生じ、全てのサブキャリアについてエラーフリーな状態を保つのは困難となる。
そこで、より受信感度を上げるために、送信電力を追加するか、よりエラー耐性の良い変調方式を選択し直すか、誤り符号化率の調整をするかの対処が必要になるが、いずれの場合も、消費電力の増加または周波数効率の低減を強いることとなる。
特許文献1には、受信側において各サブキャリアの受信レベルのばらつきが少なくなるように、送信側で各サブキャリアの送信電力の増加減制御を行い、それでも所望の受信品質が得られない場合は、全ての送信電力について均一に送信電力を追加する方法が提案されている。
また、特許文献2には、マルチキャリア通信において、ノイズの少ないキャリアに多くの送信電力および送信ビットを割り振り、ノイズの多いキャリアについては送信電力を抑えて送信ビット数を削減する方法が提案されている。
さらに、特許文献3には、マルチキャリア通信において、注水定理に基づいて、信号電力とノイズ電力の和が一定となるように、S/N比が高いキャリアについては多くの電力を割り振り、逆にS/N比が低いキャリアには少ない電力を割り振る方法が提案されている。また、この特許文献3では、周波数軸だけでなく、時間軸においても同様の定理にしたがって最適電力配分を行っている。
この特許文献2及び特許文献3の共通点は、各送信電力を最適配分し、全サブキャリアの合計チャネル容量の最大化することによって、全サブチャネルについての送信可能なビット数を最大化することである。つまり、全体の送信電力に一定とした場合であっても、この特許文献2及び特許文献3の方法を用いることによって、単位周波数および単位時間あたりの送信電力配分について最適化制御を行い、スループットを増加させることが可能になる。
特開2005−45505号公報 特開2001−186102号公報 特開2004−266585号公報
ところが、実際のマルチパス伝送路には、ディープフェージングと呼ばれる大きな信号減衰量を持った帯域が存在することがある。したがって、上記特許文献1の方法では、ディープフェージングによって悪化したサブチャネルも含めて全ての受信電力のばらつきを小さくするので、多くの送信電力がこの大きく信号減衰されたサブチャネルへの充当に割り当てられることになる。さらに、多くの通信システムは誤り訂正能力を有していることから、これらディープフェージングによって生じる誤りビットが誤り訂正符号によって修正される場合を考えると、これらの割り増しされたサブキャリアの送信電力は不要に費やされたことになる。
また、現行の無線LANの通信規格では、サブキャリアごとに異なったビット数を割り当てることは許されていないため、サブキャリア毎にチャネル容量に見合った最適なビット割り当てをすることができない。さらに、上記特許文献2及び特許文献3が想定する通信システムでは、現行の無線通信の通信品質を確保するための技術として、重要な役割を負っている誤り訂正符号が与える誤り率特性への影響が考慮されていない。したがって、無線LANの現行のシステムにおいて、上述のようなチャネル容量の最大化制御は、スループットの最大化および誤り率特性の改善のための最良な方法ではない。
本発明は、これらの問題点を鑑みてなされたものであり、周波数選択性フェージング環境において、送信電力を増加させずにパケット誤り率を改善することができる無線通信装置及び方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明は、直交周波数分割多重方式の信号を送受信し、通信先と通信する無線通信装置において、上記通信先から受信した受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する計測手段と、上記計測手段で計測された上記受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて上記通信先が上記信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて上記信号の変調方式に制限される制限付相互情報量の平均が最大となるように各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する算出手段と、上記算出手段で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ制御手段とを備えることを特徴としている。
また、本発明は、直交周波数分割多重方式の信号を送受信し、通信先と通信する無線通信装置において、上記通信先から受信した受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する計測手段と、上記計測手段で計測された上記受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて上記通信先が上記信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて閾値を算出し、当該閾値と上記予測信号レベルとの比較結果に基づいて各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する算出手段と、上記算出手段で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ送信制御手段とを備えることを特徴としている。
また、本発明は、直交周波数分割多重方式の信号を送受信し、通信先と通信する無線通信方法において、上記通信先から受信した受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する計測工程と、上記計測工程で計測された上記受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて上記通信先が上記信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて上記信号の変調方式に制限される制限付相互情報量の平均が最大となるように各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する算出工程と、上記算出工程で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ制御工程とを有することを特徴としている。
また、本発明は、直交周波数分割多重方式の信号を送受信し、通信先と通信する無線通信方法において、上記通信先から受信した受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する計測工程と、上記計測工程で計測された上記受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて上記通信先が上記信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて閾値を算出し、当該閾値と上記予測信号レベルとの比較結果に基づいて各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する算出工程と、上記算出工程で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ送信制御工程とを有することを特徴としている。
本発明によれば、マルチパスが生じている伝送路においても、送信電力を増加させることなく、誤り率特性を向上させることができる。
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)通信の各サブキャリアへの送信電力配分について論文(E.Malkamaki and H.Leib, “Coded Diversity on Block-Fading Channels”, in IEEE Trans. Inform. Theory, vol.45, No.2, pp771781, 1999)を参照して説明する。この論文には、ランダム符号が施されたマルチキャリアシステムにおいて、フェージングにより信号が減衰した場合のパケット誤り率について記載されている。
図1は、マルチキャリア通信システムを模式的に示す図である。ランダム符号器1は、変調方式Mに応じてkビットの入力データのビット系列b〜bを符号化率R(k/n)によってnビットの符号語c〜cへ変換する。この符号語c〜cはサイズnのパケットとされる(n=LNlog(M))。パケットの各ビットは、マッピング2により、サブキャリア数L、パケット長Nへマッピングされ、サブキャリア毎にBPSKで変調され、マルチキャリア送信される。
伝送路において、各サブキャリアxiの信号にはフェージングに起因する減衰率αiにて信号減衰が生じ、伝送路上のホワイトノイズniが重畳される。ここで、全キャリアのフェージング減衰率をベクトル表示するとα=[α1, α2,…, αL]となり、各要素αiの確立分布はRice分布に従うものとする。
受信された信号nビットは、BPSK復調され、最尤(Maximum likelihood)復号器3によって誤り訂正処理が行われkビットのデータを得る。
このようなマルチキャリア通信システムでは、送出される1パケットのサイズ(パケット長×キャリア数)が十分に大きい場合、パケット誤り率Peは、次式により近似することができる。
Figure 2007201810
ここで、Cは、各サブキャリアの相互情報量C(αi)の平均値を表す。
Figure 2007201810
一般に、伝送路の相互情報量はチャネル容量log2(1+s/n)を上限値とするが、各サブキャリアは変調方式が決定されており、相互情報量はその変調方式の送信ビット数を上限として制限される(以下、制限付情報量と呼ぶ。)。ここでは、各サブキャリアはBPSK変調されているので、最大相互情報量は1bit/Hzとなる。また、Rは伝送情報量を表すが、変調方式はBPSKであり、各サブキャリアの送信ビット数は1ビットであるため、符号化率がそのまま伝送情報量となる。つまり、(1)式は、各サブキャリアが減衰率αiで与えられたときに、このサブキャリアの条件付情報量Cが伝送情報量Rを上回っていれば受信成功、下回っていれば受信失敗となることを意味し、パケット誤り率は、各サブキャリアについての誤り出現確率の平均値であることを表している。
また、論文中には、上記ランダム符号の誤り率の上界についての理論解析結果と、拘束長7の畳み込み符合(無線LANと同等の誤り訂正技術)を用いたシミュレーション結果を比較した結果が記載されており、RicianFactorが小さいときは、理論カーブとシミュレーションカーブが良く一致し、最も差異の大きなAWGN(Additive White Gaussian Noise:加法的白色ガウス雑音)の条件下であっても、その差異は2−3dB以内に抑えられることが記載されている。よって、畳み込み符号を用いた際にも、上記条件付情報量と誤り率特性の関係性が広く成立することが分かる。
本発明の具体例として示す無線通信装置は、各サブチャネルの送信電力配分を最適化することにより、全サブキャリアの合計電力を増加させることなく、パケット誤り特性を改善する。
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。無線通信装置10は、送受信アンテナ11と、伝送路計測部12と、演算処理部13と、送信パラメータ制御部14と、誤り訂正符号器15と、インターリーブ処理部16と、シリアル/パラレル(S/P)変換部17と、サブキャリア変調器18〜18と、IFFT(逆高速フーリエ変換)部19と、UPコンバータ部20と、パワーアンプ部21とを備えて構成されている。
送受信アンテナ11は、複数の搬送波(マルチキャリア)により複数の伝送パスルが周波数多重されているマルチキャリア伝送信号を送受信する。
伝送路計測部12は、送受信アンテナ11から入力されたマルチキャリア伝送信号を計測し、伝送路情報を取得する。具体的には、サブキャリア毎のC/Nを計測し、その平均C/N値を計算することにより、伝送路で生じる平均信号減衰量を取得する。また、受信したマルチキャリア伝送信号のパケット誤り率を測定する。
演算処理部13は、伝送路計測部12が取得した伝送路情報に基づいて各サブキャリアの増減比率、誤り訂正符号率、変調方式、パワーアンプ21の出力等を算出する。例えば、各サブキャリアの増減比率は、後述するように、制限付情報量の平均値が最大となるように算出される。
送信パラメータ制御部14は、演算処理部13で算出された誤り訂正符号率、変調方式、各サブキャリアの増減比率、パワーアンプ21の出力の送信パラメータを、サブキャリア変調18〜18、乗算器181〜181、パワーアンプ21にそれぞれ出力する。
誤り訂正符号器15は、入力されたベースバンドのデータを誤り訂正符号処理する。
インターリーブ処理部16は、バーストノイズ等の局所的な誤りによって誤り訂正の利得が低下することを避けるために、訂正符号処理されたデータをインターリーブ処理する。
シリアル/パラレル(S/P)変換部17は、インターリーブ処理されたシリアル系列のデータをサブチャネル数Lのパラレル信号へ変換する。
サブキャリア変調器18〜18は、サブチャネル数Lのパラレル信号へ変換された各データを変調処理する。乗算器181〜181によって、増減比率に応じたサブキャリア間の送信電力を再配分する。
IFFT(逆高速フーリエ変換)部19は、送信電力が再配分された複数の並列サブキャリア変調波を逆高速フーリエ変換し、1本のマルチキャリア伝送信号を生成する。
UPコンバータ部20は、マルチキャリア伝送信号を所定の周波数帯までアップコンバートする。
パワーアンプ部21は、アップコンバートされたマルチキャリア伝送信号を所定の利得を与える。
データを送信する場合、ベースバンドのデータは、誤り訂正符号器15で誤り訂正符号処理され、インターリーブ処理部16でインターリーブ処理される。そして、S/P変換器17によってシリアル系列のデータは、サブチャネル数Lのパラレル信号へ変換され、並列の各データは、サブキャリア変調器18〜18によって変調処理される。これらのL本の並列な変調波形は、各々設定された増減比率によってサブキャリア間の送信電力が再配分される。送信電力が再配分された複数の並列サブキャリア変調波は、IFFT19にて逆高速フーリエ変換され、1本のマルチキャリア伝送信号が生成される。さらに、UPコンバータ20によって、マルチキャリア伝送信号の出力波形は、実際に伝送される周波数帯までアップコンバートされ、パワーアンプ21によって必要な利得を得て、送受信アンテナ11から伝送路へと送出される。
続いて、図3に示すフローチャートを用いて最適な送信パラメータを設定する過程について説明する。
ステップS1において、伝送路計測部12は、通信相手が送出したマルチキャリア伝送信号を送受信アンテナ11で受信し、この受信信号を計測することで伝送路情報を入手する。具体的には、マルチキャリア伝送信号のサブキャリア毎のC/N値γpre(1)、γpre(2)、…、γpre(L)を計測し、その平均C/N値γpre_avgを集計する。
ステップS2において、伝送路計測部12は、以下のいずれかの方法によって、伝送路で生じる平均信号減衰量Ploss(dB)を得る。1つ目の方法としては、IEEE802.11h規格に記載されているチャネル測定リクエストを実行することで、通信相手から受信結果報告パケットを受けとり、伝送路上での平均信号減衰量Ploss(dB)を算出する。2つ目の方法としては、送受信間において伝送路が対称であると仮定し、直接計測したC/N値と通信相手の送出電力レベルとの差異を算出することによって伝送路上での平均信号減衰量Ploss(dB)を得る。また、3つ目の方法としては、送出したパケットの誤り率とその時の変調方式とを集計することによって、通信相手の受信C/Nを予測し、平均信号減衰量Ploss(dB)を算出する。
演算処理部13は、伝送路情報である平均C/N値γpre_avgより、最適な変調方式M−QAM、誤り訂正符号率、パワーアンプの出力Ppa(dBm)を算出する。これらの送信パラメータの導出方法としては、平均C/N値γpre_avgと変調方式M−QAM、誤り訂正符号率、パワーアンプの出力Ppaを引数にAWGN下でのパケット誤り率についての理論式からそれぞれの予測されるパケット誤り率を算出し、各引数の計算結果を比較することで最適な送信パラメータを決定する方法ができる。また、平均C/N値、パケットエラー率等の伝送路情報を入力とした場合に、最適な送信パラメータ(変調方式M−QAM、誤り訂正符号率、パワーアンプの出力Ppa)が得られるテーブルを予め演算処理部13の内部に持つことにより、計算量を少なく、効率的に導出することができる。
ステップS3において、演算処理部13は、後述するように伝送路計測部12から取得した伝送路情報に基づいて各サブキャリアの送信出力について最適な増減比率を算出する。具体的には、伝送路計測部12で計測された各サブキャリアiのC/N値γpre(i)及び平均C/N値γpre_avgより通信相手側の各サブキャリアの推定受信レベルγiを、(3)式によって算出し、各サブキャリアの推定受信レベルγiを用いて各サブキャリアへの送信電力の増減比率を決定する。
Figure 2007201810
ステップS4において、演算処理部13は、各サブキャリアのゲインレベルを調整する。ステップS2にて算出した平均信号減衰量Ploss(dB)には誤差が含まれているため、上記(3)式より算出されるγiにも誤差が含まれることとなり、当然、最終的に得られる送信電力の増減比率P(γi)にも誤差が含まれることになる。そこで、この誤差を最小化し、送信パラメータを再設定する。具体的には、伝送路計測部12によって計測されるパケット誤り率が、予測していたよりも多かった場合には、PlossにΔPlossを加算することによって修正し、逆にパケット誤り率が予測していたよりも少なかった場合は、PlossにΔPlossを減算することによって修正する。そして、新しく算出したPlossを用いて、上記(3)式により受信信号レベルγiを取得し、最終的に更新された送信電力の増減比率P(γi)を取得する。
このように演算処理部13で得られた各サブキャリアの増減比率、誤り訂正符号、変調方式、パワーアンプの増幅率等は、送信パラメータ制御部14によって各機能ブロックに伝達及び設定される。
次に、演算処理部13で算出される各サブキャリアの増減比率の導出過程について説明する。図4は、第1の実施の形態における各サブキャリアへの送信電力配分を示す概念図である。上記(2)式を用いて説明したように、マルチキャリア通信における誤り率は、サブキャリアの制限付相互情報量によって決定される。別の言い方をするならば、(4)式となるように、各サブキャリアの送信電力配分を最適化し、制限付情報量の平均値を最大化することによって誤り率を削減することができる。
Figure 2007201810
その結果、送信電力の合計値を一定としたままであっても、誤り率を低下させスループットを改善することが可能となる。
ここで、IEEE802.11a/gの通信規格では、BPSK、QPSK、16QAM、64QAMの変調方式を選択可能であり、相互情報量の制限はこの変調方式に起因して決定される。具体的には、それぞれの変調方式は、BPSKが1ビット、QPSKが2ビット、16QAMが4ビット、64QAMが6ビットの最大相互情報量として、図5に示すような相互情報量を持つ。そして、この相互情報量とS/N比との関係は、それぞれ次式にて近似することができる。
Figure 2007201810
これをさらに一般化すると、(6)式を導出することができる。
Figure 2007201810
ここで、Mはコンスタレーション数、mM、hMはMに依存する係数とする。
(4)式の最大値は、Lagrangeの方程式を解くことによって求めることができる。ここで、等式制約条件g(x)=0のもとで超平面関数f(x)の最大値を求める一般的な方法を考える。このとき、xoptが求めたい最適解(最大値)であると仮定すると、g(x)なる制約条件の下では、xoptを少し移動しても、xoptは超平面f(x)の極大点にあるので、f(x)の値は変わらないはずである。また、超平面超曲面g(x)=0はxopt点において接(超)平面を共有するから、これらの超曲面の法線ベクトルΔfとΔgは点xoptにおいて平行になる。このような場合には、適当な定数λを取り入れると、次式が成り立つことが知られている。
Figure 2007201810
さらに、Lagrange方程式Lを(8)式のように置くと、偏微分方程式であるLagrangianが成立する。
Figure 2007201810
そこで、(4)式の最大値を求めるには、まず始めに拘束項を(10)式とし、Lagrange方程式と置くことによって、その最適解(最大値)を得ることができる。
Figure 2007201810
つまり、Lagrange方程式の微分係数であるLagrangianがゼロとなるとき、そのP(γi)が(4)式を最大化する解となる。
Figure 2007201810
そして、最適解は、(13)式で与えられる。
Figure 2007201810
ここで、負のPtiは存在しないので、(14)式の条件を適用して、電力配分がゼロとなるサブキャリアを特定する。
Figure 2007201810
そして、電力配分のあるサブキャリアについてのみ上記(13)式を用いて最適解の再計算を行い、最終的に得られたP(γi)を最適なサブキャリアの増減比率とする。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態における無線通信装置は、図3に示す第1の実施の形態と同様の構成ブロックによって実現される。したがって、送信データが誤り訂正符号器15によって誤り符合処理を受けて、送受信アンテナ11を介して伝送路上に放出されるまでの過程については、第1の実施の形態と同様な過程によって処理される。第2の実施の形態では、送信パラメータの設定手順に関し、第1の実施の形態よりも簡易な各サブキャリア送信電力の導出方法が演算処理部14に用いて実装される。
図6は、第2の実施の形態における各サブキャリアへの送信電力配分を示す概念図である。図6に示すように第2の実施の形態では、cutoff_levelよりもS/N比の小さいサブキャリアへの電力配分がゼロとなるようにし、残りのサブキャリアの受信電力が均一になるように各サブキャリアの送信電力の増減比率を調整する。
まず始めに、伝送路計測部12で得られた伝送路情報を基に、上記(3)式より通信相手側の各サブキャリアの推定受信レベルγiを求める。これらのサブキャリア受信レベルγiよりcutoff_levelを(15)式のように定める。
Figure 2007201810
次に、(16)の条件を適用して、cutoff_levelよりもS/N比の小さいサブキャリアへの電力配分がゼロとなるようにし、残りのサブキャリアの受信電力が均一になるように、各サブキャリアの送信電力の増減比率を調整する。
Figure 2007201810
なお、誤り訂正符号器15、サブキャリア変調器18〜18、及びパワーアンプ部21の増幅率の決定方法に関しては、上記第1の実施の形態と同様の方法である。
(第1の実施の形態及び第2の実施の形態のシミュレーション結果)
上記2つの送信電力配分方法の効果を確かめるために、シミュレーションを行い、誤り率の改善について検討した。ここで、シミュレーションに使用したパラメータについて説明すると、誤り訂正符号器15では拘束長7の畳み込み符号で符号率を1/2、2/3、又は3/4の何れかを用い、インターリーブ処理部16では深さ48、サブキャリア変調器18〜18では、BPSK、QPSK、16QAM、又は64QAMの何れかを用いることとした。また、伝送路上の各サブキャリアに生じるフェージング減衰αiは、Reyleigh分布(δ=√1/2)に従うものとした。
図7−1及び図7−2は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態の各サブキャリアの電力配分制御を実装した場合の制限付相互情報量を示す図である。第1の実施の形態又は第2の実施の形態の電力配分制御を実装することにより、どの変調方式でも制限付相互情報量が従来よりも増加しているのが分かる。
また、図8−1及び図8−2は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態の各サブキャリアの電力配分制御を実装した場合のBERを示す図である。第1の実施の形態又は第2の実施の形態の電力配分制御を施すことにより、誤り訂正符号率を含むどの変調方式でもBERが従来よりも改善されているのが分かる。
以上のように、本発明を適用することにより、マルチパスが生じている伝送路においても、送信電力を増加させることなく、誤り率特性を向上させることができる。したがって、マルチパスが多く生じ、信号減衰量も大きな環境であっても、より広範囲なエリアに渡って通信を行うことができる。
また、無線通信装置10の伝送路計測部12及び各サブキャリアへの送信電力配分を算出する演算処理部13は、既存の無線LAN、Wimax等のプロトコルを変更することなく実装することができるので、従来のネットワークシステムへの互換性を保つことができる。
また、従来のIEEE802.11hに規定されているようなTPC(TransmitPowerControl)は、消費電力を最小限に抑えるために、伝送路ロスに適応させて送信電力を必要最低限に設定し、マルチパスが生じている通信環境でこの規格を運用する場合、ディープフェージングによって生じる誤りを補うために、より大きな送信電力を設定する必要があったが、本発明を適用することによって、より少ない送信電力の設定でも、ディープフェージングに適応できる。その結果、TPCとの組み合わせによって、より強力な省電力制御を実現することができる。
マルチキャリア通信システムを模式的に示す図である。 第1の実施の形態に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。 各サブキャリア最適な増減比率を設定する方法を示すフローチャートである。 第1の実施の形態における各サブキャリアへの送信電力配分を示す概念図である。 相互情報量とS/N比との関係を示すグラフである。 第2の実施の形態における各サブキャリアへの送信電力配分を示す概念図である。 第1の実施の形態又は第2の実施の形態の各サブキャリアの電力配分制御を実装した場合の制限付相互情報量を示す図である(その1)。 第1の実施の形態又は第2の実施の形態の各サブキャリアの電力配分制御を実装した場合の制限付相互情報量を示す図である(その2)。 第1の実施の形態又は第2の実施の形態の各サブキャリアの電力配分制御を実装した場合のBERを示した図である(その1)。 第1の実施の形態又は第2の実施の形態の各サブキャリアの電力配分制御を実装した場合のBERを示した図である(その2)。 周波数選択性フェージングの例を模式的に示す図である。
符号の説明
1 ランダム符号器、2 マッピング、3 最尤復号器、10 無線通信装置、11 送受信アンテナ、12 伝送路計測部、13 演算処理部、14 送信パラメータ制御部、15 誤り訂正符号器、16 インターリーブ処理部、17 シリアル/パラレル変換部、18〜18 サブキャリア変調器、19 逆高速フーリエ変換部、20 UPコンバータ部、21 パワーアンプ部

Claims (10)

  1. 直交周波数分割多重方式の信号を送受信し、通信先と通信する無線通信装置において、
    上記通信先から受信した受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する計測手段と、
    上記計測手段で計測された上記受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて上記通信先が上記信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて上記信号の変調方式に制限される制限付相互情報量の平均が最大となるように各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する算出手段と、
    上記算出手段で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ制御手段と
    を備えることを特徴とする無線通信装置。
  2. 上記算出手段は、下記(1)式より、上記送信電力の増減比率Ptが0となるサブキャリアiを特定し、それ以外のサブキャリアiの予測信号レベルγを用いて、下記(1)式を再計算し、上記信号の各サブキャリアiの送信電力の増減比率Ptを算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
    Figure 2007201810
    ここで、Mはコンスタレーション数、及びmM、hMはそれぞれMに依存する係数である。
  3. 上記計測手段は、上記通信先から受信した受信信号のパケット誤り率を計測し、
    上記算出手段は、上記計測手段で計測されたパケット誤り率と上記通信先が上記信号を受信した際の予測パケット誤り率との比較結果に基づいて平均信号減衰量を補正し、当該平均減衰量に基づいて上記予測信号レベルを補正することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
  4. 上記算出手段は、上記計測手段で計測された上記信号レベル又は上記パケット誤り率を用いて、上記信号の電力増幅率、変調方式及び誤り訂正符号率を算出することを特徴とする請求項3記載の無線通信装置。
  5. 直交周波数分割多重方式の信号を送受信し、通信先と通信する無線通信装置において、
    上記通信先から受信した受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する計測手段と、
    上記計測手段で計測された上記受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて上記通信先が上記信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて閾値を算出し、当該閾値と上記予測信号レベルとの比較結果に基づいて上記信号の各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する算出手段と、
    上記算出手段で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ送信制御手段と
    を備えることを特徴とする無線通信装置。
  6. 上記算出手段は、上記予測信号レベルが上記閾値より小さいサブキャリアの送信電力を0とし、それ以外のサブキャリアの送信電力を均一とするように各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出することを特徴とする請求項5記載の無線通信装置。
  7. 上記計測手段は、上記通信先から受信した受信信号のパケット誤り率を計測し、
    上記算出手段は、上記計測手段で計測されたパケット誤り率と上記通信先が上記信号を受信した際の予測パケット誤り率との比較結果に基づいて平均信号減衰量を補正し、当該平均減衰量に基づいて上記予測信号レベルを補正することを特徴とする請求項5記載の無線通信装置。
  8. 上記算出手段は、上記計測手段で計測された上記信号レベル又は上記パケット誤り率を用いて、上記信号の電力増幅率、変調方式及び誤り訂正符号率を算出することを特徴とする請求項7記載の無線通信装置。
  9. 直交周波数分割多重方式の信号を送受信し、通信先と通信する無線通信方法において、
    上記通信先から受信した受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する計測工程と、
    上記計測工程で計測された上記受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて上記通信先が上記信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて上記信号の変調方式に制限される制限付相互情報量の平均が最大となるように各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する算出工程と、
    上記算出工程で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ制御工程と
    を有することを特徴とする無線通信方法。
  10. 直交周波数分割多重方式の信号を送受信し、通信先と通信する無線通信方法において、
    上記通信先から受信した受信信号の各サブキャリアの信号レベルを計測する計測工程と、
    上記計測工程で計測された上記受信信号の各サブキャリアの信号レベルに基づいて上記通信先が上記信号を受信した際の各サブキャリアの予測信号レベルを算出し、当該予測信号レベルに基づいて閾値を算出し、当該閾値と上記予測信号レベルとの比較結果に基づいて各サブキャリアの送信電力の増減比率を算出する算出工程と、
    上記算出工程で算出された各サブキャリアの送信電力の増減比率を含む送信パラメータを制御する送信パラメータ送信制御工程と
    を有することを特徴とする無線通信方法。
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