JP2007197795A - 電子部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固相状態の金属粉末を圧縮ガスと共に、基材21の表面に吹き付けて、金属粉末から被膜22を基材21表面に形成する電子部材20の製造方法であって、前記圧縮ガスは、少なくとも酸素ガスを含んでなる。
【選択図】図1
Description
(実施例1)
酸素を含むガスとしてエア(大気)を圧縮し、粉末粒度5〜53μmの銅からなる固相状態の金属粉末をこの圧縮したエア(圧縮ガス)と共に、大きさ30mm×20mm×厚さ5mmのアルミニウム合金(JIS規格:A6063S−T1)からなるヒートシンク部材(基材)の表面に吹き付けて、銅粉末からなる被膜がヒートシンク部材の表面に形成された、電子部材を製作した。
実施例1と同じヒートシンク部材21を準備して、このヒートシンク部材21の表面に被膜を形成した。実施例1と異なる点は、ホッパー14に銅材料よりも硬い硬質粉末である炭化ケイ素の粉末(粉末粒度5−53μm)を投入し、この被膜中に含まれる炭化ケイ素の粉末の割合が、20体積%となるように、銅粉末と炭化ケイ素粉末とをノズル12に供給した点である。そして、実施例1と同じ方法で電子部材を切断し被膜の断面を、光学顕微鏡観察を用いて観察した。この結果を図2(b)に示す。
実施例1と同じヒートシンク部材21を準備して、このヒートシンク部材21の表面に被膜を形成した。実施例1と異なる点は圧縮ガスにヘリウムガスを用いた点である。そして、実施例1と同じ方法で、この電子部材を切断し被膜の断面を、光学顕微鏡観察を用いて観察した。この結果を図2(c)に示す。
図2(a)〜(c)に示すように、実施例1の電子部材の被膜断面から、銅粉末が堆積して得られた粒界が一部確認でき、この被膜は、比較例1よりも粒界の金属結合が多かった。また、実施例2の電子部材の被膜断面には、粒界がほとんど無く、この被膜は実施例1よりも粒界の金属結合がかなり多かった。比較例1の電子部材の被膜断面には、その粒界は鮮明に確認され、その粒界の金属結合はほとんどなかった。
結果1の断面組織の観察結果から、実施例1の如くエアを圧縮ガスに用いた場合には、この圧縮ガスと共にヒートシンク部材21の表面に衝突する粉末の衝突エネルギと、この衝突時に酸素ガスと銅粉末22aとの酸化発熱反応により発生する発熱エネルギとにより被膜が形成されたため、図2(d)に示すように、これらの変形した粉末同士の界面には、やや厚い酸化膜22cが形成されるものの、金属結合の割合は、図2(f)に示す如き比較例1のものに比べて多くなったと考えられ、この結果、熱伝導性及び電気伝導性の高い被膜を形成することができると考えられる。
実施例1と同じようにして電子部材を製作した。実施例1と異なる点は、被膜を成膜する際の飛行中の粉末の温度(基材衝突前の粉末の温度)を50℃以上の図3に示すような温度条件で、被膜を形成した点である。これらの電子部材の被膜について常法(レーザフラッシュ法)により熱膨張率を測定した。また、この被膜についての熱伝導率も常法により測定した。その結果を図3に示す。
実施例2と同じようにして電子部材を製作した。実施例1と異なる点は、被膜を成膜する際の飛行中の粉末の温度を50℃以上の図3に示すような温度条件で、被膜を形成した点である。これらの被膜について常法により熱膨張率と熱伝導率を測定した。その結果を図3に示す。
比較例2,3は、それぞれ実施例3,4と同じようにして電子部材を製作した。実施例3,4と異なる点は、50℃以下の図3に示すような温度条件で、被膜を形成した点である。
図3に示すように、実施例3,4の熱伝導率は、比較例2,3のものに比べて高く、50℃以上のいずれの温度で成膜した被膜も熱伝導率は安定していた。
このように、安定した熱伝導率を得るためには、基材衝突前の粉末の温度を50℃以上にすることが好ましいと考えられる。そして、被膜の熱伝導率が向上したのは、被膜中の金属結合の割合が増加したからであると考えられ、この金属結合の増加は、粉末の加熱により、被膜形成時におけるエネルギが増加したことによるものであると考えられる。
実施例2と同じヒートシンク部材を準備して、このヒートシンク部材の表面に被膜を形成して、電子部材を製作した。実施例2と異なる点は、実施例5〜7は、下記の表1に示すように、順次、被膜中に含まれる炭化ケイ素(粒子)の割合を20体積%にした点、硬質粉末に窒化アルミニウム粉末を用いて、被膜中に含まれる窒化アルミニウム(粒子)の割合を30体積%にした点、硬質粉末である酸化アルミニウム粉末を用いて、被膜中に含まれる酸化アルミニウム(粒子)の割合を30体積%にした点である。そして、これら電子部材に対して、常法により熱膨張率と熱伝導率を測定した。その結果を図4に示す。
また、比較例4,5は、それぞれ比較例1,実施例1と同じ条件で電子部材を製作し、実施例5〜7と同じように熱膨張率及び熱伝導率を測定した。その結果を図4に示す。
比較例6〜8は、下記の表1に示すように、順次、銅、アルミニウム、銅−モリブデン合金からなる電子部材を製作した。そして、これらの部材に対して、実施例5〜7と同じように熱膨張率及び熱伝導率を測定した。その結果を図4に示す。
参考例1〜3として、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムの熱膨張率及び熱伝導率を図4に示した。
実施例5〜7熱伝導率は、比較例4,5,7,8(比較例6を除く)の熱伝導率よりも高かった。また、実施例5〜7の熱膨張率は、比較例6の熱膨張率よりも低かった。
結果3より、実施例5〜7の如き被膜は、これまでに放熱性を向上させるために電子部材の一部に使用されていた銅−モリブデン合金材(比較例8)よりも熱伝導性に優れ、さらに、これらの熱膨張率は、銅材(比較例6)の熱膨張率を抑制すべくモリブデンが添加された銅−モリブデン合金材(比較例8)の熱膨張率と同程度のものであることから、実施例5〜7に示す電子部材は、パワーモジュールなどの電子機器の部品として好適であると考えられる。さらに、このように、被膜の熱伝導率が向上したことから、この被膜の電気伝導率も向上していると考えられ、これらの電子部材は電気製品の部品として用いるには好適であると考えられる。
実施例8〜10は、順次、実施例5〜7と同じようにして電子部材を製作した。実施例8〜10が、この対応する実施例5〜7と相違する点は、被膜中に含まれる硬質粉末からなる粒子(硬質粒子)の割合を10堆積%〜70体積%の範囲の図5に示すような割合の条件で電子部材を製造した点である。これらの被膜について、実施例5〜7に示す方法と同じ方法で熱伝導率及び熱膨張率を測定した。それぞれの結果を図5(a),(b)に示す。
比較例9〜11は、順次、実施例8〜10と同じようにして電子部材を製作した。比較例9〜11が、この対応する実施例8〜10と相違する点は、被膜中に含まれる硬質粉末からなる粒子(硬質粒子)の割合を0体積%,5体積%で電子部材を製造した点である。これらの被膜について、実施例8〜10に示す方法と同じ方法で熱伝導率及び熱膨張率を測定した。それぞれの結果を図5(a),(b)に示す。
比較例12〜14は、順次、比較例9〜11と同じようにして電子部材の製作を行った。比較例12〜14が、この対応する比較例9〜11と相違する点は、被膜中に含まれる硬質粉末からなる粒子の割合を70体積%よりも大きくなるように電子部材を製造した点である。
図5(a)に示すように実施例8〜10のうち少なくとも硬質粒子の割合が10〜50体積%の被膜の熱伝導率は、これに対応する比較例9〜11の熱伝導率よりも高かった。実施例8〜10の被膜の熱伝導率は、硬質粒子の割合が10〜20体積%までは、硬質粒子の割合の増加に伴って高くなり、さらに硬質粒子の割合が40体積%〜70体積%までは、硬質粒子の割合の増加に伴って低くなった。
結果4より、比較例9〜11の熱伝導性が低かった理由としては、被膜中の硬質粉末からなる粒子が10体積%よりも小さい場合には、硬質粉末により成膜時の堆積された銅の酸化膜を効果的に研磨することができなかったためであると考えられる。また、硬質粒子が、50体積%より大きい場合には、被膜中に介在する硬質粒子の増加により、この硬質粒子を構成する材料の熱伝導率の影響を受けたため被膜の熱伝導率は低下したと考えられる。さらに、70体積%よりも大きいには、硬質粒子の割合が大きいため、銅粉末の結合を阻害してしまい被膜が形成されなかったと考えられる。また、硬質粒子の増加に伴い熱膨張率が低くなったのは、硬質粒子を構成する材料の熱膨張率の影響を受けたためであると考えられる。
実施例2と同じようにして、電子部材を製作した。実施例2と相違する点は、図1に示すホッパー14に炭化ケイ素の粉末を投入し、ホッパー13に、この被膜中に含まれる炭化ケイ素の粉末の割合が、粉末全体の40体積%となるように投入し、まず、ホッパー14に投入した炭化ケイ素の粉末を用いてヒートシンク部材21の表面をブラスト処理し、その後、実施例2と同じ条件で、この炭化ケイ素と銅の混合粉末を用いて、ヒートシンク部材21の表面に被膜を形成した点である。このようにして、図6(a)に示すように、ヒートシンク部材31の表面に銅材料32に均一に炭化ケイ素粒子33が介在した被膜34aを備えた電子部材30aを得た。
図7に示すように、この電子部材30aの被膜34aの表面を研磨し、この研磨面に絶縁基板として窒化アルミニウム材41をろう材(Sn−Cu−Ni−P)42により固定し、さらにヒートシンク部材31の表面を冷却水Wに浸し、窒化アルミニウム材41の表面から伝熱線51の入力電圧を一定としてこの電子部材30aを加熱した。そして、この窒化アルミニウム材41の表面の温度上昇を熱電対52により測定した。この結果を図8に示す。
図7に示す伝熱評価試験と同じように電子部材30aを配置し、室温から先の加熱条件まで電子部材を加熱し(6.5秒間)、さらにこの加熱条件に加熱された電子部材の表面を冷却し(3.5秒間)、これを一サイクルとして、連続して50000サイクル行った。なお、この50000サイクルのうち10000サイクルごとに、伝熱評価試験と同じ条件で電子部材を加熱し、絶縁板である窒化アルミニウム材の表面の温度を熱電対により測定した。この結果を図9に示す。また、50000サイクル後の窒化アルミニウム材41と被膜34aとのろう付材の状態を観察した。これらの結果を図9及び以下の表2に示す。
実施例11と同じようにして、電子部材を製作した。実施例11と相違する点は、図1に示すホッパー13に、被膜中に含まれる炭化ケイ素の粉末の割合が、20体積%となるような粉末を投入し、この粉末をヒートシンク部材に吹き付けて被膜厚み1.5mmの被膜を形成し、ホッパー13からこの粉末を取り出し、さらにこのホッパー13に被膜中に含まれる炭化ケイ素の粉末の割合が、40体積%となるような粉末を投入し、被膜厚みが3.2mmになるように成膜し、この被膜表面を研磨し、被膜厚み3.0mmを有する電子部材を製作した点である。このようにして、図6(b)に示すように、ヒートシンク部材31の表面に銅材料32に含む炭化ケイ素粒子(硬質粒子)33の割合の異なる二層の被膜34bを備えた電子部材30bを得た。そして、実施例11と同じ条件で、伝熱評価試験及び耐熱信頼性評価試験を行った。この結果を、図8、9及び表2に示す。
実施例11と同じようにして電子部材を製作した。実施例11と相違する点は、図1に示すホッパー14に、炭化ケイ素の粉末を投入し、ホッパー13に銅粉末を投入し、被膜中に含まれる炭化ケイ素の粉末の割合が20%となるように、銅粉末と炭化ケイ素粉末とをノズルに供給した。そして、この粉末をヒートシンク部材に吹き付けると共に、成膜中に炭化ケイ素の粉末の割合が増加するように(銅粉末の割合が減少するように)調整しながら成膜を行った。このようにして、図6(c)に示すように、ヒートシンク部材の表面からの被膜の厚み方向に向って、被膜34cに含有する炭化ケイ素粒子(硬質粒子)33の割合が増加するように形成された被膜34cを備えた電子部材30cを得た。そして、実施例11と同じ条件で、この電子部材30cの伝熱評価試験及び耐熱信頼性評価試験を行った。この結果を、図8、9及び表2に示す。
図10に示すように、実施例11〜13の被膜の代わりに銅−モリブデン合金ならなる板材98を用いて、この板材98をシリコングリース99を介して実施例11と同等のヒートシンク部材31に接着した電子部材を準備した。そして、図10に示すように、この板材98の表面を研磨し、さらにこの研磨面に絶縁基板として窒化アルミニウム材41をろう材42(Sn−Cu−Ni−P)により固定し、ヒートシンク部材31の表面を冷却水に浸した。そして、実施例11と同じ条件で、伝熱評価試験及び耐熱信頼性評価試験を行った。この結果を、図8、9及び表2に示す。
比較例15と同じようにして銅からなる板材98をシリコングリース99を介して実施例11と同等のヒートシンク部材31に接着した電子部材を作成した。そして、実施例11と同じ条件で、耐熱信頼性評価試験を行った。この結果を、図9及び表2に示す。
図8に示すように、実施例11〜13の計測された温度は、比較例15の計測された温度よりも小さかった。また、図9に示すように、実施例11〜13の計測された温度は、サイクル負荷の増加にかかわらず変化しなかった。一方、比較例16の温度は、サイクル負荷の増加に伴い上昇した。また、表2に示すように、比較例16のみがろう材に微小クラックを観察することができた。
実施例11〜13の計測温度は、比較例15の計測された温度よりも小さかったことから、実施例11〜13の如き方法により製造した電子部材は放熱性が高いと考えられる。これは、考察3に示したように、実施例11〜13の電子部材の被膜の熱伝導率が高いことによると考えられる。
Claims (13)
- 固相状態の金属粉末を圧縮ガスと共に、基材表面に吹き付けて、前記金属粉末から被膜を前記基材表面に形成する電子部材の製造方法であって、
前記圧縮ガスは、少なくとも酸素ガスを含むことを特徴とする電子部材の製造方法。 - 前記基材表面の吹き付けを、前記金属粉末に、該金属粉末よりも硬質の硬質粉末をさらに含めた粉末により行うことを特徴とする請求項1に記載の電子部材の製造方法。
- 前記硬質粉末は、熱伝導率が10W/mK以上、硬度がHv500以上の粉末であることを特徴とする請求項2に記載の電子部材の製造方法。
- 前記金属粉末は銅系材料からなる粉末であって、前記硬質粉末は、酸化アルミニウムの粉末、炭化ケイ素の粉末、又は窒化アルミニウムの粉末のいずれかの粉末からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子部材の製造方法。
- 前記圧縮ガスの圧力は、0.7MPa以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子部材の製造方法。
- 前記粉末は、前記被膜中の硬質粉末からなる粒子の割合が10〜70体積%となるように、前記硬質粉末を含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の電子部材の製造方法。
- 前記被膜の形成は、前記基材の表面からの前記被膜の厚み方向に向って、被膜に含有する前記硬質粉末からなる粒子の割合が増加するように行うことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の電子部材の製造方法。
- 前記製造方法は、50℃以上の粉末が前記基材の表面に吹き付けられるように、前記粉末を加熱する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の電子部材の製造方法。
- 前記被膜を形成する前工程として、前記圧縮ガスと共に前記硬質粉末を前記基材表面に吹き付けて、基材の表面処理を行うことを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の電子部材の製造方法。
- 基材の表面に被膜が形成された電子部材であって、
前記被膜は、金属被膜中に該金属被膜よりも硬い硬質粒子が介在した被膜であることを特徴とする電子部材。 - 前記請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法により製造された電子部材。
- 前記請求項10又は11に記載の基材の表面に被膜が形成された電子部材を備えたパワーモジュールであって、前記電子部材の基材が、前記パワーモジュールを構成するヒートシンク部材であって、前記パワーモジュールを構成するパワー素子と前記ヒートシンク部材との間に前記被膜が形成されていることを特徴とするパワーモジュール。
- 前記請求項12に記載のパワーモジュールを備えた車両用インバータ。
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