JP2007196185A - 水素透過炭化膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで、かつ多孔質基板上にも形成できると共に、高い水素透過流量を示すことができる水素透過炭化膜及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックス2と、その中に分散された分散粒子3とよりなる水素透過炭化膜1である。分散粒子3と炭化マトリックス2との間には空隙部4が形成されている。水素透過炭化膜1の製造にあたっては、少なくともポリイミド溶液作製工程と成膜工程と炭化工程とを行う。ポリイミド溶液作製工程においては、添加物とポリイミド又はポリアミック酸とを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製する。成膜工程においては、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に添加物が分散されてなるポリイミド膜を多孔質基板の表面に形成する。炭化工程においては、ポリイミド膜が形成された多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱しポリイミド膜を炭化させる。
【選択図】図1
【解決手段】ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックス2と、その中に分散された分散粒子3とよりなる水素透過炭化膜1である。分散粒子3と炭化マトリックス2との間には空隙部4が形成されている。水素透過炭化膜1の製造にあたっては、少なくともポリイミド溶液作製工程と成膜工程と炭化工程とを行う。ポリイミド溶液作製工程においては、添加物とポリイミド又はポリアミック酸とを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製する。成膜工程においては、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に添加物が分散されてなるポリイミド膜を多孔質基板の表面に形成する。炭化工程においては、ポリイミド膜が形成された多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱しポリイミド膜を炭化させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、混合気体から水素等の特定の気体を分離することが可能な水素透過炭化膜及びその製造方法に関する。
従来、例えば燃料電池等においては、混合ガスから分子径の小さな水素ガスを膜内に形成された微細な細孔による分子ふるい作用によって分離する水素透過膜が用いられている。水素透過膜は、膜を通過する分子の拡散透過速度の差を利用して水素ガスを分離することができる。具体的には、例えば水素分離膜の上流側に混合気体を導入し、水素分離膜の上流と下流との間の水素分圧差を駆動力として水素の拡散透過が起こり、水素分離膜の下流側で純度の高い水素ガスを得ることができる。
このような水素透過膜としては、Pt等の金属元素を含有する有機金属化合物を溶解した超臨界状態の二酸化炭素にポリマー膜を浸透し、有機金属化合物を担持させた後、有機金属化合物を分解させて微細な金属超微粒子又は金属酸化物超微粒子を膜内に生成させてなる複合ポリマー膜が開発されている(特許文献1参照)。また、その他にも、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Zn、Cd、Au等の硝酸塩、硫酸塩又は酢酸塩とポリイミド等とを有機溶媒に溶解し、ガラス板等の上に注ぎ、乾燥後、非酸化性雰囲気下で熱分解して得られる気体分離膜が開発されている(特許文献2参照)。
しかしながら、上記複合ポリマー膜は、その作製にあたって超臨界状態の二酸化炭素を用いるため高温高圧に耐えうる容器を必要とし、また、処理に手間がかかる。また、Pt等の貴金属の有機金属化合物を用いているため、コストが高くなるという問題があった。
また、上記気体分離膜においては、上記乾燥時に、粗大な硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩が膜内に析出し易い。そのため、熱分解時に大きな空隙が形成され、膜の局所的な強度低下を招きやすいという問題があった。また、ポリイミド膜を貫通した孔ができ易く、例えばN2に対するH2、He、O2、CO2の選択透過性が低下するおそれがあった。また、乾燥時に染み込んでしまうため、例えば多孔質基板等に気体分離膜を形成することは困難であった。
また、上記気体分離膜においては、上記乾燥時に、粗大な硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩が膜内に析出し易い。そのため、熱分解時に大きな空隙が形成され、膜の局所的な強度低下を招きやすいという問題があった。また、ポリイミド膜を貫通した孔ができ易く、例えばN2に対するH2、He、O2、CO2の選択透過性が低下するおそれがあった。また、乾燥時に染み込んでしまうため、例えば多孔質基板等に気体分離膜を形成することは困難であった。
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、低コストで、かつ多孔質基板上にも形成できると共に、高い水素透過流量を示すことができる水素透過炭化膜及びその製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子よりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に空隙部が形成された水素透過炭化膜の製造方法において、
金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドとを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製するポリイミド溶液作製工程と、
容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド溶液を噴霧し、霧状の上記ポリイミド溶液を上記多孔質基板の表面に付着させ、次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を上記多孔質基板の表面に形成する成膜工程と、
上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる炭化工程とを有することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法にある(請求項1)。
金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドとを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製するポリイミド溶液作製工程と、
容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド溶液を噴霧し、霧状の上記ポリイミド溶液を上記多孔質基板の表面に付着させ、次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を上記多孔質基板の表面に形成する成膜工程と、
上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる炭化工程とを有することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法にある(請求項1)。
本発明の製造方法においては、上記ポリイミド溶液作製工程と、成膜工程と、炭化工程とを行うことにより上記水素透過炭化膜を作製する。
上記ポリイミド溶液作製工程においては、金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドとを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製する。
上記ポリイミド溶液作製工程においては、金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドとを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製する。
上記成膜工程においては、容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド溶液を噴霧し、霧状の上記ポリイミド溶液を上記多孔質基板の表面に付着させ、次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を上記多孔質基板の表面に形成する。
そのため、上記多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液から上記有機溶媒を速やかに蒸発させることができる。それ故、上記樹脂マトリックス中において金属塩又は金属アルコキシドの結晶又はオルトケイ酸エステルの液滴が粗大化することを抑制し、上記添加物の微細な結晶又は液滴が上記樹脂マトリックス中に分散された上記ポリイミド膜を形成することができる。また、上記のごとく速やかに上記有機溶媒を蒸発させることができるため、上記多孔質基板に上記ポリイミド溶液が浸透してしまうことを防止できる。それ故、従来法では困難であった上記多孔質基板上に、上記ポリイミド膜を形成することができる。
そのため、上記多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液から上記有機溶媒を速やかに蒸発させることができる。それ故、上記樹脂マトリックス中において金属塩又は金属アルコキシドの結晶又はオルトケイ酸エステルの液滴が粗大化することを抑制し、上記添加物の微細な結晶又は液滴が上記樹脂マトリックス中に分散された上記ポリイミド膜を形成することができる。また、上記のごとく速やかに上記有機溶媒を蒸発させることができるため、上記多孔質基板に上記ポリイミド溶液が浸透してしまうことを防止できる。それ故、従来法では困難であった上記多孔質基板上に、上記ポリイミド膜を形成することができる。
上記炭化工程においては、上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる。即ち、上記炭化工程においては、上記成膜工程において形成した、微細な上記添加物の結晶又は液滴が上記樹脂マトリックス中に分散された上記ポリイミド膜を上記非酸化性雰囲気で加熱することにより炭化させている。このとき、ポリイミドからなる上記樹脂マトリックスが炭化して収縮するだけでなく、上記添加物の結晶又は液滴も分解して収縮する。その結果、上記添加物の分解生成物からなる上記分散粒子とポリイミド炭化物からなる上記炭化マトリックスとの間に微細な上記空隙部を形成することができる。
このようにして、ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子とよりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に、微細な上記空隙部が形成された上記水素透過炭化膜を得ることができる。本発明の製造方法によって得られる上記水素透過炭化膜は、上記のごとく微細な上記空隙部を有しているため、高い水素透過流量を示すことができる。
このようにして、ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子とよりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に、微細な上記空隙部が形成された上記水素透過炭化膜を得ることができる。本発明の製造方法によって得られる上記水素透過炭化膜は、上記のごとく微細な上記空隙部を有しているため、高い水素透過流量を示すことができる。
また、上記第1の発明の製造方法においては、例えば上記ポリイミド溶液作製工程における上記添加物と上記ポリイミドとの混合割合等を調整することにより、上記炭化工程において上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間に形成される上記空隙部の大きさを制御することができる。その結果、優れた水素透過流量と、水素を選択的に透過できる水素透過選択性とをバランスよく兼ね備えた上記水素透過炭化膜を容易に作製することができる。
また、本発明の製造方法においては、従来のように超臨界状態の気体や高温及び高圧に耐えうる特殊な容器を用いる必要がない。また、Pt等の貴金属だけでなく、ニッケル、マンガン、珪素等の非貴金属元素の金属塩又は金属アルコキシドを用いても、上記のごとく優れた水素透過流量を示す上記水素透過炭化膜を製造することができる。したがって、本発明においては、低コストで簡単に上記水素透過炭化膜を製造することができる。
第2の発明は、ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子よりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に空隙部が形成された水素透過炭化膜の製造方法において、
金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とを有機溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液を作製するポリイミド前駆体溶液作製工程と、
容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧し、霧状の上記ポリイミド前駆体溶液を上記多孔質基板の表面に付着させ、次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド前駆体溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、上記ポリアミック酸からなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド前駆体膜を上記多孔質基板の表面に形成する成膜工程と、
上記多孔質基板上に形成された上記ポリイミド前駆体膜を加熱し、上記ポリアミック酸を重合させることにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を生成させる加熱工程と、
上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる炭化工程とを有することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法にある(請求項5)。
金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とを有機溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液を作製するポリイミド前駆体溶液作製工程と、
容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧し、霧状の上記ポリイミド前駆体溶液を上記多孔質基板の表面に付着させ、次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド前駆体溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、上記ポリアミック酸からなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド前駆体膜を上記多孔質基板の表面に形成する成膜工程と、
上記多孔質基板上に形成された上記ポリイミド前駆体膜を加熱し、上記ポリアミック酸を重合させることにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を生成させる加熱工程と、
上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる炭化工程とを有することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法にある(請求項5)。
本発明の製造方法においては、上記ポリイミド前駆体溶液作製工程と、上記成膜工程と、上記加熱工程と、上記炭化工程とを行うことにより上記水素透過炭化膜を作製する。
上記ポリイミド前駆体溶液作製工程においては、金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とを有機溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液を作製する。
上記ポリイミド前駆体溶液作製工程においては、金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とを有機溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液を作製する。
上記成膜工程においては、容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧し、霧状の上記ポリイミド前駆体溶液を上記多孔質基板の表面に付着させ、次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド前駆体溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、ポリイミドの前駆体である上記ポリアミック酸からなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド前駆体膜を上記多孔質基板の表面に形成する。
そのため、上記第1の発明と同様に、上記多孔質基板に付着した上記ポリイミド前駆体溶液から上記有機溶媒を速やかに蒸発させることができる。それ故、上記樹脂マトリックス中において金属塩又は金属アルコキシドの結晶又はオルトケイ酸エステルの液滴が粗大化することを抑制し、上記添加物の微細な結晶又は液滴が上記樹脂マトリックス中に分散された上記ポリイミド前駆体膜を形成することができる。また、上記のごとく速やかに上記有機溶媒を蒸発させることができるため、上記多孔質基板に上記ポリイミド前駆体溶液が浸透してしまうことを防止できる。それ故、従来法では困難であった上記多孔質基板上に、上記ポリイミド前駆体膜を形成することができる。
そのため、上記第1の発明と同様に、上記多孔質基板に付着した上記ポリイミド前駆体溶液から上記有機溶媒を速やかに蒸発させることができる。それ故、上記樹脂マトリックス中において金属塩又は金属アルコキシドの結晶又はオルトケイ酸エステルの液滴が粗大化することを抑制し、上記添加物の微細な結晶又は液滴が上記樹脂マトリックス中に分散された上記ポリイミド前駆体膜を形成することができる。また、上記のごとく速やかに上記有機溶媒を蒸発させることができるため、上記多孔質基板に上記ポリイミド前駆体溶液が浸透してしまうことを防止できる。それ故、従来法では困難であった上記多孔質基板上に、上記ポリイミド前駆体膜を形成することができる。
上記加熱工程においては、上記多孔質基板上に形成された上記ポリイミド前駆体膜を加熱して上記ポリアミック酸を重合させることにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックスを生成させる。即ち、上記加熱工程においては、例えば温度250℃程度で上記ポリイミド前駆体膜を加熱することにより、上記ポリイミド膜前駆体膜における上記ポリアミック酸を重合させ、ポリイミドからなる樹脂マトリックスを生成させることができる。これにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を形成させることができる。
上記炭化工程においては、上記第1の発明と同様に、上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる。即ち、上記炭化工程においては、上記成膜工程において形成した、微細な上記添加物の結晶又は液滴が上記樹脂マトリックス中に分散された上記ポリイミド膜を上記非酸化性雰囲気で加熱することにより炭化させている。このとき、ポリイミドからなる上記樹脂マトリックスが炭化して収縮するだけでなく、上記添加物の結晶又は液滴も分解して収縮する。その結果、上記添加物の分解生成物からなる上記分散粒子とポリイミド炭化物からなる上記炭化マトリックスとの間に微細な上記空隙部を形成することができる。
このようにして、ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子とよりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に、微細な上記空隙部が形成された上記水素透過炭化膜を得ることができる。該水素透過炭化膜は、上記第1の発明と同様に、微細な上記空隙部を有しているため、高い水素透過流量を示すことができる。
このようにして、ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子とよりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に、微細な上記空隙部が形成された上記水素透過炭化膜を得ることができる。該水素透過炭化膜は、上記第1の発明と同様に、微細な上記空隙部を有しているため、高い水素透過流量を示すことができる。
また、上記第2の発明の製造方法においては、例えば上記ポリイミド前駆体溶液作製工程における上記添加物と上記ポリアミック酸との混合割合等を調整することにより、上記炭化工程において上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間に形成される上記空隙部の大きさを制御することができる。その結果、優れた水素透過流量と、水素を選択的に透過できる水素透過選択性とをバランスよく兼ね備えた上記水素透過炭化膜を容易に作製することができる。
その他の作用効果は、上記第1の発明と同様である。
その他の作用効果は、上記第1の発明と同様である。
第3の発明は、ポリイミド炭化物よりなる厚み1μm未満の炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された粒径100nm以下の分散粒子とよりなり、
上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部には、空隙部が形成されていることを特徴とする水素透過炭化膜にある(請求項15)。
上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部には、空隙部が形成されていることを特徴とする水素透過炭化膜にある(請求項15)。
上記水素透過炭化膜は、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に上記空隙部を有している。そのため、上記水素透過炭化膜においては、見かけの膜厚に比べて実際にH2ガスが透過する部分の膜厚が小さくなり、上記空隙部においては、H2ガスの透過が速やかに起こるため、上記水素透過炭化膜は高い水素透過流量を示すことができる。
また、上記水素透過炭化膜は、例えば上記第1の発明又は上記第2の発明の製造方法によって製造することができる。それ故、上記水素透過炭化膜は、上述のごとく多孔質基板上に形成することができ、また低コストで簡単に作製することができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
上記第1の発明においては、上記のごとく、上記ポリイミド溶液作製工程と、上記成膜工程と、上記炭化工程とを行うことにより、上記炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子とよりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に上記空隙部が形成された上記水素透過炭化膜を製造する。また、上記第2の発明においては、上記のごとく、上記ポリイミド前駆体溶液作製工程と、上記成膜工程と、上記加熱工程と、上記炭化工程とを行うことにより、上記第1の発明と同様の上記水素透過炭化膜を製造する。
上記第1の発明においては、上記のごとく、上記ポリイミド溶液作製工程と、上記成膜工程と、上記炭化工程とを行うことにより、上記炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子とよりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に上記空隙部が形成された上記水素透過炭化膜を製造する。また、上記第2の発明においては、上記のごとく、上記ポリイミド前駆体溶液作製工程と、上記成膜工程と、上記加熱工程と、上記炭化工程とを行うことにより、上記第1の発明と同様の上記水素透過炭化膜を製造する。
上記第1の発明の上記ポリイミド溶液作製工程においては、金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドとを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製する。
上記ポリイミド溶液中のポリイミドの含有量は、0.2質量%〜2質量%であることが好ましい(請求項2)。
ポリイミドの含有量が0.2質量%未満の場合には、上記ポリイミド溶液の粘度が低下し、上記成膜工程において、上記ポリイミド溶液が上記多孔質基板に染み込み易くなるおそれがある。一方、2質量%を越える場合には、上記ポリイミド溶液の粘度が高くなり、上記成膜工程において、均一な厚みで上記ポリイミド膜を形成することが困難になるおそれがある。
上記ポリイミド溶液中のポリイミドの含有量は、0.2質量%〜2質量%であることが好ましい(請求項2)。
ポリイミドの含有量が0.2質量%未満の場合には、上記ポリイミド溶液の粘度が低下し、上記成膜工程において、上記ポリイミド溶液が上記多孔質基板に染み込み易くなるおそれがある。一方、2質量%を越える場合には、上記ポリイミド溶液の粘度が高くなり、上記成膜工程において、均一な厚みで上記ポリイミド膜を形成することが困難になるおそれがある。
また、上記ポリイミド溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量をD1とし、ポリイミドの重量をD2とすると、0.05≦D1/D2≦1.0を満足することが好ましい(請求項3)。
この場合には、優れた水素ガスの選択透過性を示すことができる。
上記ポリイミド溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量とは、上記ポリイミド溶液中に、上記添加物として複数種類の金属及びケイ素を含有する場合には、すべての金属及びケイ素の合計量のことであり、上記添加物として一種類の金属又はケイ素のみを含有する場合には、その金属の量又はケイ素の量のことである。
D1/D2<0.05の場合には、上記添加物を添加することによる水素透過流量の向上効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、D1/D2>1.0の場合には、上記成膜工程において、上記添加物の結晶又は液滴が粗大化し易くなる。そのため、上記炭化工程後に、均質な上記水素透過炭化膜を得ることが困難になり、上記水素透過炭化膜の水素ガスの選択透過性が著しく低下するおそれがある。より好ましくは、0.1≦D1/D2≦0.8がよい。
この場合には、優れた水素ガスの選択透過性を示すことができる。
上記ポリイミド溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量とは、上記ポリイミド溶液中に、上記添加物として複数種類の金属及びケイ素を含有する場合には、すべての金属及びケイ素の合計量のことであり、上記添加物として一種類の金属又はケイ素のみを含有する場合には、その金属の量又はケイ素の量のことである。
D1/D2<0.05の場合には、上記添加物を添加することによる水素透過流量の向上効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、D1/D2>1.0の場合には、上記成膜工程において、上記添加物の結晶又は液滴が粗大化し易くなる。そのため、上記炭化工程後に、均質な上記水素透過炭化膜を得ることが困難になり、上記水素透過炭化膜の水素ガスの選択透過性が著しく低下するおそれがある。より好ましくは、0.1≦D1/D2≦0.8がよい。
また、上記第2の発明の上記ポリイミド前駆体溶液作製工程においては、金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とを有機溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液を作製する。
上記ポリイミド前駆体溶液中のポリアミック酸の含有量は、0.2質量%〜2質量%であることが好ましい(請求項6)。
ポリアミック酸の含有量が0.2質量%未満の場合には、上記ポリイミド前駆体溶液の粘度が低下し、上記成膜工程において、上記ポリイミド前駆体溶液が上記多孔質基板に染み込み易くなるおそれがある。一方、2質量%を越える場合には、上記ポリイミド前駆体溶液の粘度が高くなり、上記成膜工程において、均一な厚みで上記ポリイミド前駆体膜を形成することが困難になるおそれがある。
上記ポリイミド前駆体溶液中のポリアミック酸の含有量は、0.2質量%〜2質量%であることが好ましい(請求項6)。
ポリアミック酸の含有量が0.2質量%未満の場合には、上記ポリイミド前駆体溶液の粘度が低下し、上記成膜工程において、上記ポリイミド前駆体溶液が上記多孔質基板に染み込み易くなるおそれがある。一方、2質量%を越える場合には、上記ポリイミド前駆体溶液の粘度が高くなり、上記成膜工程において、均一な厚みで上記ポリイミド前駆体膜を形成することが困難になるおそれがある。
上記ポリイミド前駆体溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量をD3とし、ポリアミック酸の重量をD4とすると、0.05≦D3/D4≦1.0を満足することが好ましい(請求項7)。
この場合には、優れた水素ガスの選択透過性を示すことができる。
上記ポリイミド前駆体溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量とは、上記ポリイミド前駆体溶液中に、上記添加物として複数種類の金属及びケイ素を含有する場合には、すべての金属及びケイ素の合計量のことであり、上記添加物として一種類の金属又はケイ素のみを含有する場合には、その金属の量又はケイ素の量のことである。
D3/D4<0.05の場合には、上記添加物を添加することによる水素透過流量の向上効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、D3/D4>1.0の場合には、上記成膜工程において、上記添加物の結晶又は液滴が粗大化し易くなる。そのため、上記炭化工程後に、均質な上記水素透過炭化膜を得ることが困難になり、上記水素透過炭化膜の水素ガスの選択透過性が著しく低下するおそれがある。より好ましくは、0.1≦D3/D4≦0.8がよい。
この場合には、優れた水素ガスの選択透過性を示すことができる。
上記ポリイミド前駆体溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量とは、上記ポリイミド前駆体溶液中に、上記添加物として複数種類の金属及びケイ素を含有する場合には、すべての金属及びケイ素の合計量のことであり、上記添加物として一種類の金属又はケイ素のみを含有する場合には、その金属の量又はケイ素の量のことである。
D3/D4<0.05の場合には、上記添加物を添加することによる水素透過流量の向上効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、D3/D4>1.0の場合には、上記成膜工程において、上記添加物の結晶又は液滴が粗大化し易くなる。そのため、上記炭化工程後に、均質な上記水素透過炭化膜を得ることが困難になり、上記水素透過炭化膜の水素ガスの選択透過性が著しく低下するおそれがある。より好ましくは、0.1≦D3/D4≦0.8がよい。
次に、上記第1の発明及び上記第2の発明において、上記ポリイミド溶液作製工程及び上記ポリイミド前駆体溶液作製工程における上記金属塩としては、例えばニッケル、マンガン、コバルト、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、タングステン、及びインジウム等の金属の硝酸塩、硫酸塩、及び酢酸塩等を用いることができる。これらの金属塩は、単独で用いることもできるが、2種以上を併用することもできる。
上記金属アルコキシドとしては、例えばニッケル、マンガン、コバルト、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、タングステン、及びインジウム等の金属のアルコキシドを用いることができる。これらの金属アルコキシドは、単独で用いることもできるが、2種以上を併用することもできる。
上記金属塩及び上記金属アルコキシドとしては、上記の金属元素の中でもニッケル、マンガン、亜鉛、モリブデン、タングステン等の非貴金属元素の金属塩及び金属アルコキシドを用いることが好ましい。この場合には、上記水素透過炭化膜の製造コストを低減できる。また、本発明の製造方法によって得られる上記水素透過炭化膜においては、上記のごとく非貴金属元素を用いても優れた水素ガス選択透過性及び水素透過流量を示すことができる。
上記金属塩は、ニッケルの硝酸塩又は/及びマンガンの硝酸塩であることが好ましい(請求項9)
また、上記金属アルコキシドは、ニッケルのアルコキシド又は/及びマンガンのアルコキシドであることが好ましい(請求項10)。
これらの場合には、低コストで、膜厚が均一でかつ薄い上記水素透過炭化膜を作製することができるため、水素の透過流量を増大させることができる。
また、上記金属アルコキシドは、ニッケルのアルコキシド又は/及びマンガンのアルコキシドであることが好ましい(請求項10)。
これらの場合には、低コストで、膜厚が均一でかつ薄い上記水素透過炭化膜を作製することができるため、水素の透過流量を増大させることができる。
また、上記オルトケイ酸エステルとしては、例えばオルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラプロピル、及びオルトケイ酸テトラブチル等を用いることができる。
上記オルトケイ酸エステルは、オルトケイ酸テトラエチル又は/及びオルトケイ酸テトラメチルであることが好ましい(請求項11)。
この場合には、低コストで膜厚が均一でかつ薄い上記水素透過炭化膜を作製することができるため、水素透過流量を増大させることができる。
この場合には、低コストで膜厚が均一でかつ薄い上記水素透過炭化膜を作製することができるため、水素透過流量を増大させることができる。
また、上記有機溶媒としては、例えば1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等を用いることができる。
次に、上記第1の発明の上記成膜工程においては、容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド溶液を噴霧することにより、霧状の上記ポリイミド溶液を上記多孔質基板の表面に付着させる。次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液から上記有機溶媒を蒸発させる。これにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を上記多孔質基板の表面に形成する。
また、上記第2の発明の上記成膜工程においては、容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧することにより、霧状の上記ポリイミド前駆体溶液を上記多孔質基板の表面に付着させる。次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド前駆体溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、ポリアミック酸からなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド前駆体膜を上記多孔質基板の表面に形成する。これにより、ポリアミック酸からなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド前駆体膜を上記多孔質基板の表面に形成する。
また、上記第2の発明の上記成膜工程においては、容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧することにより、霧状の上記ポリイミド前駆体溶液を上記多孔質基板の表面に付着させる。次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド前駆体溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、ポリアミック酸からなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド前駆体膜を上記多孔質基板の表面に形成する。これにより、ポリアミック酸からなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド前駆体膜を上記多孔質基板の表面に形成する。
上記第1の発明の上記成膜工程において、上記非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド溶液を噴霧する際には、上記容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給することが好ましい(請求項4)。即ち、上記第1の発明の上記成膜工程においては、上記非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド溶液を噴霧し、さらに上記容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給しながら霧状の上記ポリイミド溶液を上記多孔質基板の表面に付着させることが好ましい。
この場合には、上記成膜工程において形成される上記ポリイミド膜の厚みの均一性を向上させることができる。
また、上記第2の発明の上記成膜工程において、上記非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧する際には、上記容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給することが好ましい(請求項8)。即ち、上記第2の発明の上記成膜工程においては、上記非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧し、さらに上記容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給しながら霧状の上記ポリイミド前駆体溶液を上記多孔質基板の表面に付着させることが好ましい。
この場合には、上記成膜工程において形成される上記ポリイミド前駆体膜の厚みの均一性を向上させることができる。
この場合には、上記成膜工程において形成される上記ポリイミド膜の厚みの均一性を向上させることができる。
また、上記第2の発明の上記成膜工程において、上記非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧する際には、上記容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給することが好ましい(請求項8)。即ち、上記第2の発明の上記成膜工程においては、上記非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧し、さらに上記容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給しながら霧状の上記ポリイミド前駆体溶液を上記多孔質基板の表面に付着させることが好ましい。
この場合には、上記成膜工程において形成される上記ポリイミド前駆体膜の厚みの均一性を向上させることができる。
また、上記第1の発明及び上記第2の発明において、上記成膜工程は、上記有機溶媒の蒸気圧をAとし、上記容器内における上記非酸化性ガス中の上記有機溶媒の分圧をBとすると、0.4≦B/A≦0.8となるような圧力条件下で行うことが好ましい(請求項12)。
上記圧力比B/Aが0.4未満の場合には、上記成膜工程において、霧状の上記ポリイミド溶液あるいは上記ポリイミド前駆体溶液が上記多孔質基板に付着するのとほぼ同時に上記有機溶媒の蒸発が起こってしまうおそれがある。そのためこの場合には、上記多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液あるいは上記ポリイミド前駆体溶液が上記多孔質基板上に充分に広がることができずに固化してしまうおそれがある。その結果、均一な厚みでかつ均質な上記ポリイミド膜あるいは上記ポリイミド前駆体膜を形成することが困難になるおそれがある。一方、圧力比B/Aが0.8を越える場合には、上記有機溶媒の蒸発が不十分になり、湿潤した上記ポリイミド膜あるいは上記ポリイミド前駆体膜が生成し、該ポリイミド膜あるいはポリイミド前駆体膜内の上記添加物の結晶又は液滴が粗大化し易くなるおそれがある。
上記圧力比B/Aが0.4未満の場合には、上記成膜工程において、霧状の上記ポリイミド溶液あるいは上記ポリイミド前駆体溶液が上記多孔質基板に付着するのとほぼ同時に上記有機溶媒の蒸発が起こってしまうおそれがある。そのためこの場合には、上記多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液あるいは上記ポリイミド前駆体溶液が上記多孔質基板上に充分に広がることができずに固化してしまうおそれがある。その結果、均一な厚みでかつ均質な上記ポリイミド膜あるいは上記ポリイミド前駆体膜を形成することが困難になるおそれがある。一方、圧力比B/Aが0.8を越える場合には、上記有機溶媒の蒸発が不十分になり、湿潤した上記ポリイミド膜あるいは上記ポリイミド前駆体膜が生成し、該ポリイミド膜あるいはポリイミド前駆体膜内の上記添加物の結晶又は液滴が粗大化し易くなるおそれがある。
上記非酸化性ガスとしては、N2ガス、Arガス等の不活性ガス、又はH2ガス等の還元ガスを用いることができる。また、上記非酸化性ガスとしては、上記不活性ガスと上記還元ガスとの混合ガスを用いることもできる。
上記多孔質基板の上記温度T℃は、40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満である。
上記温度T℃が40℃未満の場合には、上記圧力比B/Aを0.8以下にするために単位時間あたりの噴霧量を少なくしなければならなくなり、上記ポリイミド膜あるいは上記ポリイミド前駆体膜の形成に要する時間が非常に長くなるおそれがある。一方、T℃が上記有機溶媒の沸点を越える場合には、霧状の上記ポリイミド溶液あるいは上記ポリイミド前駆体溶液が上記多孔質基板に付着するとほぼ同時に上記有機溶媒の蒸発が起こってしまい、その結果、均一な厚みでかつ均質な上記ポリイミド膜あるいは上記ポリイミド前駆体膜を形成することが困難なるおそれがある。好ましくは、上記温度T℃は、40℃〜80℃であることがよい(請求項13)。
上記温度T℃が40℃未満の場合には、上記圧力比B/Aを0.8以下にするために単位時間あたりの噴霧量を少なくしなければならなくなり、上記ポリイミド膜あるいは上記ポリイミド前駆体膜の形成に要する時間が非常に長くなるおそれがある。一方、T℃が上記有機溶媒の沸点を越える場合には、霧状の上記ポリイミド溶液あるいは上記ポリイミド前駆体溶液が上記多孔質基板に付着するとほぼ同時に上記有機溶媒の蒸発が起こってしまい、その結果、均一な厚みでかつ均質な上記ポリイミド膜あるいは上記ポリイミド前駆体膜を形成することが困難なるおそれがある。好ましくは、上記温度T℃は、40℃〜80℃であることがよい(請求項13)。
次に、上記炭化工程においては、上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる。上記炭化工程における加熱においては、上記ポリイミド膜を炭化させると共に、上記添加物の結晶又は液滴を分解させて、上記添加物の分解生成物からなる上記分散粒子を形成させることができる。具体的には、上記添加物として、例えば金属塩及び/又は金属アルコキシドを用いた場合には、上記炭化工程において分解して、金属又は/及び金属酸化物からなる上記分散粒子を形成させることができる。また、上記添加物として、オルトケイ酸エステルを用いた場合には、ケイ素又は/及び酸化ケイ素からなる上記分散粒子を形成させることができる。
また、上記炭化工程における非酸化性ガスとしては、上記成膜工程と同様に、上記不活性ガス及び/又は上記還元ガスを用いることができる。
また、上記炭化工程における非酸化性ガスとしては、上記成膜工程と同様に、上記不活性ガス及び/又は上記還元ガスを用いることができる。
上記炭化工程においては、上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を温度550℃〜700℃で加熱することが好ましい(請求項14)。
上記炭化工程における加熱温度が550℃未満の場合には、上記炭化工程において上記ポリイミド膜を充分に炭化させることができないおそれがある。またこの場合には、上記添加物の分解が不十分になるおそれがある。その結果、得られる上記水素透過炭化膜の水素透過の選択性が低下するおそれがある。一方、700℃を越える場合には、上記炭化工程において上記ポリイミド膜が大きく収縮し、上記ポリイミド膜と上記分散粒子との間の上記空隙部が小さくなりすぎて、上記水素透過炭化膜の水素透過流量が低下するおそれがある。より好ましくは、上記炭化工程における加熱温度は600〜650℃がよい。
また、上記炭化工程においては、少なくとも30分以上加熱を行うことが好ましい。加熱時間が30分未満の場合には、上記炭化工程において上記ポリイミド膜を充分に炭化させることができないおそれがあり、また上記添加物の分解が不十分になるおそれがある。
上記炭化工程における加熱温度が550℃未満の場合には、上記炭化工程において上記ポリイミド膜を充分に炭化させることができないおそれがある。またこの場合には、上記添加物の分解が不十分になるおそれがある。その結果、得られる上記水素透過炭化膜の水素透過の選択性が低下するおそれがある。一方、700℃を越える場合には、上記炭化工程において上記ポリイミド膜が大きく収縮し、上記ポリイミド膜と上記分散粒子との間の上記空隙部が小さくなりすぎて、上記水素透過炭化膜の水素透過流量が低下するおそれがある。より好ましくは、上記炭化工程における加熱温度は600〜650℃がよい。
また、上記炭化工程においては、少なくとも30分以上加熱を行うことが好ましい。加熱時間が30分未満の場合には、上記炭化工程において上記ポリイミド膜を充分に炭化させることができないおそれがあり、また上記添加物の分解が不十分になるおそれがある。
次に、上記第3の発明において、上記水素透過炭化膜は、ポリイミド炭化物よりなる厚み10μm未満の炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された粒径100nm以下の分散粒子とよりなる。また、上記水素透過炭化膜において、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部には、空隙部が形成されている。
上記炭化マトリックスの厚みが10μm以上の場合には、単位時間あたりの水素の透過流量が少なくなるおそれがある。好ましくは上記炭化マトリックスの厚みは5μm未満がよく、より好ましくは1μm未満がよい。
上記炭化マトリックスの厚みは、例えば上記水素透過炭化膜の断面を走査型電子顕微(SEM)で観察し、その顕微鏡写真から測定することができる。
上記炭化マトリックスの厚みが10μm以上の場合には、単位時間あたりの水素の透過流量が少なくなるおそれがある。好ましくは上記炭化マトリックスの厚みは5μm未満がよく、より好ましくは1μm未満がよい。
上記炭化マトリックスの厚みは、例えば上記水素透過炭化膜の断面を走査型電子顕微(SEM)で観察し、その顕微鏡写真から測定することができる。
また、上記分散粒子の粒径が100nmを越える場合には、形成される空隙によって上記水素透過炭化膜の機械的強度が低下するおそれがある。
上記分散粒子の粒径は、例えば次のようにして測定することができる。
即ち、まず、上記水素透過炭化膜の断面をSEMで観察し、断面写真を撮る。次に、その断面写真(SEM写真)から一定区画内の全粒子の粒径を求め、それらの平均値を上記分散粒子の粒径とする。
上記分散粒子の粒径は、例えば次のようにして測定することができる。
即ち、まず、上記水素透過炭化膜の断面をSEMで観察し、断面写真を撮る。次に、その断面写真(SEM写真)から一定区画内の全粒子の粒径を求め、それらの平均値を上記分散粒子の粒径とする。
また、上記分散粒子は、金属、金属酸化物、珪素、及び珪素酸化物から選ばれる一種以上からなることが好ましい(請求項16)。この場合には、上記水素透過炭化膜の水素透過流量及び水素透過の選択性をより向上させることができる。具体的には、上記分散粒子は、例えばニッケル、マンガン、酸化ニッケル、酸化マンガン、ケイ素、酸化珪素等から選ばれる1種以上からなることが好ましい。
上記炭化マトリックスと上記分散粒子との間に形成された上記空隙部の幅は、1nm〜10nmであることが好ましい(請求項17)。
上記空隙部の幅が1nm未満の場合には、上記水素透過炭化膜の水素透過流量が低下するおそれがある。一方、10nmを越える場合には、水素透過の選択性が低下するおそれがある。
上記空隙部の幅は、上記炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された上記分散粒子との間の空隙部の最大幅で規定することができる。上記空隙部の幅は、例えば上記水素透過炭化膜の断面を走査型電子顕微(SEM)で観察し、その顕微鏡写真から測定することができる。
上記空隙部の幅が1nm未満の場合には、上記水素透過炭化膜の水素透過流量が低下するおそれがある。一方、10nmを越える場合には、水素透過の選択性が低下するおそれがある。
上記空隙部の幅は、上記炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された上記分散粒子との間の空隙部の最大幅で規定することができる。上記空隙部の幅は、例えば上記水素透過炭化膜の断面を走査型電子顕微(SEM)で観察し、その顕微鏡写真から測定することができる。
次に、本発明の水素透過炭化膜の実施例につき、説明する。
(実施例1)
図1に示すごとく、本例の水素透過炭化膜1は、ポリイミド炭化物よりなる厚み1μm未満の炭化マトリックス2と、その中に分散された粒径100nm以下の分散粒子3とよりなる。分散粒子3と炭化マトリックス2との間の少なくとも一部には、空隙部4が形成されている。本例においては、多孔質基板5上に、ニッケル、MO2、又はSiO2からなる分散粒子3を有する水素透過炭化膜1を作製する。
(実施例1)
図1に示すごとく、本例の水素透過炭化膜1は、ポリイミド炭化物よりなる厚み1μm未満の炭化マトリックス2と、その中に分散された粒径100nm以下の分散粒子3とよりなる。分散粒子3と炭化マトリックス2との間の少なくとも一部には、空隙部4が形成されている。本例においては、多孔質基板5上に、ニッケル、MO2、又はSiO2からなる分散粒子3を有する水素透過炭化膜1を作製する。
本例において、水素透過炭化膜1は、ポリイミド溶液作製工程と、成膜工程と、炭化工程とを行うことにより作製する。
ポリイミド溶液作製工程においては、オルトケイ酸エステル(オルトケイ酸テトラエチル)からなる添加物と、ポリイミドとを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製する。
ポリイミド溶液作製工程においては、オルトケイ酸エステル(オルトケイ酸テトラエチル)からなる添加物と、ポリイミドとを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製する。
成膜工程においては、容器内に40℃以上かつ有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、容器内に非酸化性ガスを用いて上記ポリイミド溶液を噴霧し、さらに容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給しながら霧状のポリイミド溶液を多孔質基板の表面に付着させ、次いでこの多孔質基板に付着したポリイミド溶液から有機溶媒を蒸発させる。成膜工程は、多孔質基板の温度T℃における有機溶媒の蒸気圧をAとし、非酸化性ガス中の有機溶媒の分圧をBとすると、0.4≦B/A≦0.8となるような圧力条件下で行う。これにより、図2に示すごとく、ポリイミドからなる樹脂マトリックス20中に添加物からなる液滴30が分散されてなるポリイミド膜10を多孔質基板5の表面に形成する。
また、炭化工程においては、図2に示すごとく、ポリイミド膜10が形成された多孔質基板5を非酸化性雰囲気下で加熱し、ポリイミド膜10を炭化させる。これにより、多孔質基板5上に、水素透過炭化膜1を形成する。
また、炭化工程においては、図2に示すごとく、ポリイミド膜10が形成された多孔質基板5を非酸化性雰囲気下で加熱し、ポリイミド膜10を炭化させる。これにより、多孔質基板5上に、水素透過炭化膜1を形成する。
具体的には、まず、SiO2からなる分散粒子3がポリイミド炭化物からなる炭化マトリックス2中に分散された水素透過炭化膜1を作製する。
即ち、まず、添加物としてのオルトケイ酸テトラエチル(和光純薬)を1−メチル−2−ピロリドン(東京化成)に溶解し、その後、ポリイミド溶液(宇部興産、U−ワニスS、ポリイミド含有量:18質量%)を加えてポリイミド溶液を作製した(ポリイミド溶液作製工程)。このポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
即ち、まず、添加物としてのオルトケイ酸テトラエチル(和光純薬)を1−メチル−2−ピロリドン(東京化成)に溶解し、その後、ポリイミド溶液(宇部興産、U−ワニスS、ポリイミド含有量:18質量%)を加えてポリイミド溶液を作製した(ポリイミド溶液作製工程)。このポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
次いで、以下のようにして成膜工程を行う。本例の成膜工程においては、図3に示すごとく噴霧装置6を用いて多孔質基板6上にポリイミド膜を作製した。
同図に示すごとく、噴霧装置6は、容器61と、ポリイミド溶液供給タンク69とを備える。容器61は、その底部に温度調節機能付きヒータ62が配置され、また容器61の上部には、開口部分の開閉を可能にする蓋部63が配置されている。また、蓋部63の略中央には、ポリイミド供給タンク63からチューブポンプ64によって供給されるポリイミド溶液を容器61内に噴霧する噴霧器631が備え付けられている。また、蓋部63の端部には、噴霧器631を挟むように、攪拌用の非酸化性ガスを供給するための2つの攪拌ガス供給口632が形成されている。
本例において、噴霧器631としては、高周波結合プラズマ原子発光分光分析装置(島津製作所、ICPS−2000)用のガラス製のネブライザーを使用した。
同図に示すごとく、噴霧装置6は、容器61と、ポリイミド溶液供給タンク69とを備える。容器61は、その底部に温度調節機能付きヒータ62が配置され、また容器61の上部には、開口部分の開閉を可能にする蓋部63が配置されている。また、蓋部63の略中央には、ポリイミド供給タンク63からチューブポンプ64によって供給されるポリイミド溶液を容器61内に噴霧する噴霧器631が備え付けられている。また、蓋部63の端部には、噴霧器631を挟むように、攪拌用の非酸化性ガスを供給するための2つの攪拌ガス供給口632が形成されている。
本例において、噴霧器631としては、高周波結合プラズマ原子発光分光分析装置(島津製作所、ICPS−2000)用のガラス製のネブライザーを使用した。
成膜工程においては、まず、容器61内の底部に、直径13mm、細孔径0.03μmの円盤状の多孔質基板5(ワットマン社製の「ANODISC」)を配置し、この多孔質基板5の温度をヒータ62によって55℃に調整した。次いで、攪拌ガス供給口632から攪拌用の非酸化性ガス(N2ガス)を0.8L/分で供給し、噴霧用の非酸化性ガス(N2ガス)を噴霧器631に1L/分で供給した。噴霧されるポリイミド溶液は、ポリイミド供給タンク63からチューブポンプ64によって0.05mL/分で供給した。噴霧された霧状のポリイミド溶液は多孔質基板5の表面に付着し、付着したポリイミド溶液から有機溶媒が蒸発することにより、多孔質基板5上にポリイミド膜30が形成された(図2及び図3参照)。
なお、単位時間あたりに噴霧されるポリイミド溶液の量は、多孔質基板5の温度、及びその温度における有機溶媒の蒸気圧A、噴霧及び攪拌用に供給される非酸化性ガス(N2ガス)量によって決定することができる。本例においては、単位時間あたりに噴霧されるポリイミド溶液中の有機溶媒がすべて気化し、気化した有機溶媒は噴霧用及び攪拌用に供給されたN2ガスと混合されているものとして、非酸化性ガス中の有機溶媒の分圧Bを算出し、多孔質基板5の温度55℃における有機溶媒の蒸気圧Aに対する圧力比B/A=0.7となるように、ポリイミド溶液の噴霧量を上記のごとく調整した。
このようにして、図2に示すごとく、ポリイミドからなる樹脂マトリックス20中にオルトケイ酸テトラエチルからなる液滴30が分散されてなるポリイミド膜10を多孔質基板5の表面に形成した。
次いで、ポリイミド膜10が形成された多孔質基板5を、H2とN2との混合ガス雰囲気下で温度600℃で1時間加熱した(炭化工程)。混合ガスのH2濃度は、3体積%とした。
図2に示すごとく、この加熱により、ポリイミド膜10におけるポリイミドからなる樹脂マトリックス20は炭化して収縮することにより、ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックス2を形成し、また、添加物(オルトケイ酸テトラエチル)の液滴30は分解して収縮することより、SiO2からなる分散粒子3を形成した。その結果、添加物(オルトケイ酸テトラエチル)の分解生成物(SiO2)からなる分散粒子3とポリイミド炭化物からなる炭化マトリックス2との間には、微細な空隙部4が形成された。このようにして、多孔質基板5上に水素透過炭化膜1を得た。これを試料E1とする。
図2に示すごとく、この加熱により、ポリイミド膜10におけるポリイミドからなる樹脂マトリックス20は炭化して収縮することにより、ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックス2を形成し、また、添加物(オルトケイ酸テトラエチル)の液滴30は分解して収縮することより、SiO2からなる分散粒子3を形成した。その結果、添加物(オルトケイ酸テトラエチル)の分解生成物(SiO2)からなる分散粒子3とポリイミド炭化物からなる炭化マトリックス2との間には、微細な空隙部4が形成された。このようにして、多孔質基板5上に水素透過炭化膜1を得た。これを試料E1とする。
次いで、試料E1における分散粒子の大きさを調べるために、試料E1の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。なお、SiがCよりも2.3倍以上重く、反射される電子数が多いと考えられることから、SEM観察は反射電子像にて行った。よって、Siが多く含まれる部分ほど白く見える。その結果を後述の図4に示す。
次に、上記試料E1の比較用として、試料E1に比べて有機溶媒の蒸発をよりゆっくりと行うことにより、水素透過炭化膜を作製した。これを試料C1とする。
試料C1の作製にあたっては、まず、上記試料E1と同様のポリイミド溶液を作製した。
次に、このポリイミド溶液を1滴テフロン(登録商標)板上に載せ、48時間かけてゆっくりと有機溶媒を蒸発させて乾燥させた。これにより、テフロン(登録商標)板上にポリイミド膜を形成した。次いで、試料E1と同様にして炭化工程を行い、SiO2からなる分散粒子がポリイミド炭化物からなる炭化マトリックス中に分散された水素透過炭化膜を作製した。これを試料C1とする。
試料C1についても、上記試料E1と同様に、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。その結果を図5に示す。
試料C1の作製にあたっては、まず、上記試料E1と同様のポリイミド溶液を作製した。
次に、このポリイミド溶液を1滴テフロン(登録商標)板上に載せ、48時間かけてゆっくりと有機溶媒を蒸発させて乾燥させた。これにより、テフロン(登録商標)板上にポリイミド膜を形成した。次いで、試料E1と同様にして炭化工程を行い、SiO2からなる分散粒子がポリイミド炭化物からなる炭化マトリックス中に分散された水素透過炭化膜を作製した。これを試料C1とする。
試料C1についても、上記試料E1と同様に、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。その結果を図5に示す。
図4及び図5より知られるごとく、試料E1においては、試料C1に比べて粒径が1/20以下の非常に微細な分散粒子が形成されていた。
また、試料E1においては、図4における矢印で示したように、破断によって水素炭化膜から脱落した分散粒子が認められた。よって、分散粒子は、水素透過炭化膜内に付着して存在しているのではなく、膜と粒子との間に空隙部のある状態で存在すると考えられる(図1参照)。
また、試料E1においては、図4における矢印で示したように、破断によって水素炭化膜から脱落した分散粒子が認められた。よって、分散粒子は、水素透過炭化膜内に付着して存在しているのではなく、膜と粒子との間に空隙部のある状態で存在すると考えられる(図1参照)。
このように、上記試料E1の水素透過炭化膜1は、炭化マトリックス2と分散粒子3との間の少なくとも一部に空隙部4を有している(図1参照)。そのため、水素透過炭化膜1においては、見かけの膜厚に比べて実際にH2ガスが透過する部分の膜厚が小さくなる。空隙部4においては、H2ガスの透過が速やかに起こるため、本例の水素透過炭化膜1(試料E1)は高い水素透過流量を示すことができる。
(実施例2)
本例は、実施例1とは異なる条件で、4種類の水素透過炭化膜(試料E2〜試料E5)を製造する例である。
まず、上記試料E1とは、オルトケイ酸テトラエチルの濃度が異なるポリイミド溶液を用いて2種類の水素透過炭化膜(試料E2及び試料E3)を作製した。試料E2及び試料E3は、ポリイミド溶液中のオルトケイ酸テトラエチルの濃度を変更した点を除いては上記試料E1と同様にして作製したものである。試料E2及び試料E2の作製に用いたポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
本例は、実施例1とは異なる条件で、4種類の水素透過炭化膜(試料E2〜試料E5)を製造する例である。
まず、上記試料E1とは、オルトケイ酸テトラエチルの濃度が異なるポリイミド溶液を用いて2種類の水素透過炭化膜(試料E2及び試料E3)を作製した。試料E2及び試料E3は、ポリイミド溶液中のオルトケイ酸テトラエチルの濃度を変更した点を除いては上記試料E1と同様にして作製したものである。試料E2及び試料E2の作製に用いたポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
また、本例においては、ポリイミド溶液の添加物として硝酸ニッケルを用いて水素透過炭化膜(試料E4)を作製した。試料E4は、オルトケイ酸テトラエチルの代わりに硝酸ニッケルを用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したものである。
即ち、試料E4の作製にあたっては、まず、添加物としての硝酸ニッケル・六水和物(和光純薬)を1−メチル−2−ピロリドン(東京化成)に溶解し、その後、ポリイミド溶液(宇部興産、U−ワニスS、ポリイミド含有量:18質量%)を加えてポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
即ち、試料E4の作製にあたっては、まず、添加物としての硝酸ニッケル・六水和物(和光純薬)を1−メチル−2−ピロリドン(東京化成)に溶解し、その後、ポリイミド溶液(宇部興産、U−ワニスS、ポリイミド含有量:18質量%)を加えてポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
次いで、上記試料E1と同様にして成膜工程を行い、ポリイミド溶液を多孔質基板に噴射し、有機溶媒を蒸発させて、多孔質基板上にポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜は、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に硝酸ニッケルの結晶が分散されてなる。さらに上記試料E1と同様にして、炭化工程を行った。
これにより、樹脂マトリックスは炭化して収縮することにより炭化マトリックスを形成し、また、添加物(硝酸ニッケル)の結晶は分解して収縮することより、ニッケルからなる分散粒子を形成した。その結果、添加物(硝酸ニッケル)の分解生成物(ニッケル)からなる分散粒子とポリイミド炭化物からなる炭化マトリックスとの間には、微細な空隙部が形成された。このようにして多孔質基板上に水素透過炭化膜(試料E4)を形成した。
これにより、樹脂マトリックスは炭化して収縮することにより炭化マトリックスを形成し、また、添加物(硝酸ニッケル)の結晶は分解して収縮することより、ニッケルからなる分散粒子を形成した。その結果、添加物(硝酸ニッケル)の分解生成物(ニッケル)からなる分散粒子とポリイミド炭化物からなる炭化マトリックスとの間には、微細な空隙部が形成された。このようにして多孔質基板上に水素透過炭化膜(試料E4)を形成した。
また、本例においては、ポリイミド溶液の添加物としてジ−i−プロポキシマンガンを用いて水素透過炭化膜(試料E5)を作製した。試料E5は、オルトケイ酸テトラエチルの代わりにジ−i−プロポキシマンガンを用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したものである。
即ち、試料E5の作製にあたっては、まず、添加物としてのジ−i−プロポキシマンガン(高純度化学)を1−メチル−2−ピロリドン(東京化成)に溶解し、その後、ポリイミド溶液(宇部興産、U−ワニスS、ポリイミド含有量:18質量%)を加えてポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
即ち、試料E5の作製にあたっては、まず、添加物としてのジ−i−プロポキシマンガン(高純度化学)を1−メチル−2−ピロリドン(東京化成)に溶解し、その後、ポリイミド溶液(宇部興産、U−ワニスS、ポリイミド含有量:18質量%)を加えてポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
次いで、上記試料E1と同様にして成膜工程を行い、ポリイミド溶液を多孔質基板に噴射し、有機溶媒を蒸発させて、多孔質基板上にポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜は、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中にジ−i−プロポキシマンガンの結晶が分散されてなる。さらに上記試料E1と同様にして、炭化工程を行った。
これにより、樹脂マトリックスは炭化して収縮することにより炭化マトリックスを形成し、また、添加物(ジ−i−プロポキシマンガン)の結晶は分解して収縮することより、MnO2からなる分散粒子を形成した。その結果、添加物(ジ−i−プロポキシマンガン)の分解生成物(MnO2)からなる分散粒子とポリイミド炭化物からなる炭化マトリックスとの間には、微細な空隙部が形成された。このようにして多孔質基板上に水素透過炭化膜(試料E5)を形成した。
これにより、樹脂マトリックスは炭化して収縮することにより炭化マトリックスを形成し、また、添加物(ジ−i−プロポキシマンガン)の結晶は分解して収縮することより、MnO2からなる分散粒子を形成した。その結果、添加物(ジ−i−プロポキシマンガン)の分解生成物(MnO2)からなる分散粒子とポリイミド炭化物からなる炭化マトリックスとの間には、微細な空隙部が形成された。このようにして多孔質基板上に水素透過炭化膜(試料E5)を形成した。
上記試料E2〜試料E5についても、実施例1の上記試料E1と同様にして、各試料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、上記試料E2〜上記試料E5においては、上記試料E1と同様に、炭化マトリックス中に、微細な分散粒子が分散されており、また、炭化マトリックスと分散粒子との間には空隙部が形成されていた(図示略)。
次に、本例においては、試料E1〜試料E5の比較用として、添加物を用いずに水素透過炭化膜(試料C2)を作製した。試料C2は、添加物を添加していないポリイミド溶液を用いた点を除いては、上記試料E1と同様にして作製したものである。
具体的には、まず、ポリイミド溶液(宇部興産、U−ワニスS、ポリイミド含有量:18質量%)に1−メチル−2−ピロリドン(東京化成)を加えてポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
具体的には、まず、ポリイミド溶液(宇部興産、U−ワニスS、ポリイミド含有量:18質量%)に1−メチル−2−ピロリドン(東京化成)を加えてポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液の組成を後述の表1に示す。
次いで、実施例1の上記試料E1と同様にして成膜工程を行い、ポリイミド溶液を多孔質基板に噴射し、有機溶媒を蒸発させて、多孔質基板上にポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜は、ポリイミドの樹脂マトリックスからなる。さらに上記試料E1と同様にして、炭化工程を行った。
これにより、樹脂マトリックスが炭化して収縮することにより炭化マトリックスを形成し、多孔質基板上にポリイミド炭化物からなる水素透過炭化膜(試料C2)を形成した。この試料C2は、上記試料E1〜試料E5のように、分散粒子を有していない。
これにより、樹脂マトリックスが炭化して収縮することにより炭化マトリックスを形成し、多孔質基板上にポリイミド炭化物からなる水素透過炭化膜(試料C2)を形成した。この試料C2は、上記試料E1〜試料E5のように、分散粒子を有していない。
次に、実施例1において作製した試料E1、本例において作製した試料E2〜試料E5及び試料C2について、水素透過流量(Lm-2min-1)及び水素透過の選択性を調べた。
「測定」
各試料(試料E1〜試料E5及び試料C2)の水素透過炭化膜を用いて、水素ガスの選択性試験を行った。このとき使用した測定装置を図6に示す。この測定装置は、水素透過炭化膜1が中央にシリコン系接着剤で接着されて設置され、その水素透過炭化膜1によって区画されたガス流路をもつガス分離器71と、ガス分離器71を所定温度に加熱保持できるヒータ72と、混合ガス通路73と、分離ガス通路74と、混合ガス通路73に設けられた第1圧力計75と、分離ガス通路74に設けられた第2圧力計76と、さらに第2圧力計の下流側に設けられたガス分析計77(ガスクロマトグラフ)とからなる。なお、ヒータ72は、水素透過炭化膜1を囲むように四方向に配置されているが、図6においては、図面作成の便宜のため一部省略してある。
「測定」
各試料(試料E1〜試料E5及び試料C2)の水素透過炭化膜を用いて、水素ガスの選択性試験を行った。このとき使用した測定装置を図6に示す。この測定装置は、水素透過炭化膜1が中央にシリコン系接着剤で接着されて設置され、その水素透過炭化膜1によって区画されたガス流路をもつガス分離器71と、ガス分離器71を所定温度に加熱保持できるヒータ72と、混合ガス通路73と、分離ガス通路74と、混合ガス通路73に設けられた第1圧力計75と、分離ガス通路74に設けられた第2圧力計76と、さらに第2圧力計の下流側に設けられたガス分析計77(ガスクロマトグラフ)とからなる。なお、ヒータ72は、水素透過炭化膜1を囲むように四方向に配置されているが、図6においては、図面作成の便宜のため一部省略してある。
水素透過炭化膜の選択性の評価は、上記測定装置の一方(図左側)からH2とN2との等量混合ガスを流し、他方(図右側)からはArを流して行った。そして、第1圧力計75および第2圧力計76によって混合ガス通路73及び分離ガス通路74の圧力を求めた。また、ガス分析計77によって水素透過炭化膜を透過したH2とN2との流量を求めると共に、両者の比率から水素透過の選択性を算出した。この結果を表1に示す。
表1より知られるごとく、試料E1〜試料E5は、試料C2に比べて高い水素透過流量を示すことがわかる。
また、ポリイミド溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量をD1とし、ポリイミドの重量をD2としたとき、D1/D2が0.05≦D1/D2≦1.0を満足するポリイミド溶液を用いて作製した試料E1、試料E2、試料E4及び試料E5は、試料C2と同等の水素透過選択性を示したのに対し、D1/D2が1.0を越える試料E3については、水素透過選択性が試料C2に比べて大きく低下していた。また、D1/D2が0.05未満の試料E2は、試料C2と同等の水素透過選択性を示すことができるが、試料C2に対する水素透過流量の向上幅が小さかった。したがって、0.05≦D1/D2≦1.0を満足することが好ましいことがわかる。
また、ポリイミド溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量をD1とし、ポリイミドの重量をD2としたとき、D1/D2が0.05≦D1/D2≦1.0を満足するポリイミド溶液を用いて作製した試料E1、試料E2、試料E4及び試料E5は、試料C2と同等の水素透過選択性を示したのに対し、D1/D2が1.0を越える試料E3については、水素透過選択性が試料C2に比べて大きく低下していた。また、D1/D2が0.05未満の試料E2は、試料C2と同等の水素透過選択性を示すことができるが、試料C2に対する水素透過流量の向上幅が小さかった。したがって、0.05≦D1/D2≦1.0を満足することが好ましいことがわかる。
1 水素透過炭化膜
2 炭化マトリックス
3 分散粒子
4 空隙部
5 多孔質基板
2 炭化マトリックス
3 分散粒子
4 空隙部
5 多孔質基板
Claims (17)
- ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子よりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に空隙部が形成された水素透過炭化膜の製造方法において、
金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドとを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を作製するポリイミド溶液作製工程と、
容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド溶液を噴霧し、霧状の上記ポリイミド溶液を上記多孔質基板の表面に付着させ、次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を上記多孔質基板の表面に形成する成膜工程と、
上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる炭化工程とを有することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。 - 請求項1において、上記ポリイミド溶液中のポリイミドの含有量は、0.2質量%〜2質量%であることを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項1又は2において、上記ポリイミド溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量をD1とし、ポリイミドの重量をD2とすると、0.05≦D1/D2≦1.0を満足することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項において、上記成膜工程において、上記非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド溶液を噴霧する際には、上記容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- ポリイミド炭化物よりなる炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された分散粒子よりなると共に、上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部に空隙部が形成された水素透過炭化膜の製造方法において、
金属塩、金属アルコキシド、及びオルトケイ酸エステルから選ばれる少なくとも1種の添加物と、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とを有機溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液を作製するポリイミド前駆体溶液作製工程と、
容器内に40℃以上かつ上記有機溶媒の沸点未満の温度T℃に調整された多孔質基板を配置し、非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧し、霧状の上記ポリイミド前駆体溶液を上記多孔質基板の表面に付着させ、次いで該多孔質基板に付着した上記ポリイミド前駆体溶液から上記有機溶媒を蒸発させることにより、上記ポリアミック酸からなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド前駆体膜を上記多孔質基板の表面に形成する成膜工程と、
上記多孔質基板上に形成された上記ポリイミド前駆体膜を加熱し、上記ポリアミック酸を重合させることにより、ポリイミドからなる樹脂マトリックス中に上記添加物からなる結晶又は液滴が分散されてなるポリイミド膜を生成させる加熱工程と、
上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を非酸化性雰囲気下で加熱し、上記ポリイミド膜を炭化させる炭化工程とを有することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。 - 請求項5において、上記ポリイミド前駆体溶液中のポリアミック酸の含有量は、0.2質量%〜2質量%であることを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項5又は6において、上記ポリイミド前駆体溶液中に含まれる上記添加物における金属及びケイ素の合計重量をD3とし、ポリアミック酸の重量をD4とすると、0.05≦D3/D4≦1.0を満足することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項5〜7のいずれか一項において、上記成膜工程において、上記非酸化性ガスを用いて上記容器内に上記ポリイミド前駆体溶液を噴霧する際には、上記容器内に攪拌用の非酸化性ガスを供給することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか一項において、上記金属塩は、ニッケルの硝酸塩又は/及びマンガンの硝酸塩であることを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項において、上記金属アルコキシドは、ニッケルのアルコキシド又は/及びマンガンのアルコキシドであることを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか一項において、上記オルトケイ酸エステルは、オルトケイ酸テトラエチル又は/及びオルトケイ酸テトラメチルであることを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか一項において、上記成膜工程は、上記多孔質基板の上記温度T℃における上記有機溶媒の蒸気圧をAとし、上記容器内における上記非酸化性ガス中の上記有機溶媒の分圧をBとすると、0.4≦B/A≦0.8となるような圧力条件下で行うことを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか一項において、上記温度T℃は、40℃〜80℃であることを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれか一項において、上記炭化工程においては、上記ポリイミド膜が形成された上記多孔質基板を温度550℃〜700℃で加熱することを特徴とする水素透過炭化膜の製造方法。
- ポリイミド炭化物よりなる厚み10μm未満の炭化マトリックスと、該炭化マトリックス中に分散された粒径100nm以下の分散粒子とよりなり、
上記分散粒子と上記炭化マトリックスとの間の少なくとも一部には、空隙部が形成されていることを特徴とする水素透過炭化膜。 - 請求項15において、上記分散粒子は、金属、金属酸化物、珪素、及び珪素酸化物から選ばれる一種以上からなることを特徴とする水素透過炭化膜。
- 請求項15又は16において、上記炭化マトリックスと上記分散粒子との間に形成された上記空隙部の幅は、1nm〜10nmであることを特徴とする水素透過炭化膜。
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2006
- 2006-01-30 JP JP2006020385A patent/JP2007196185A/ja active Pending
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