JP5412848B2 - 微細構造材料の製造方法 - Google Patents
微細構造材料の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5412848B2 JP5412848B2 JP2009014976A JP2009014976A JP5412848B2 JP 5412848 B2 JP5412848 B2 JP 5412848B2 JP 2009014976 A JP2009014976 A JP 2009014976A JP 2009014976 A JP2009014976 A JP 2009014976A JP 5412848 B2 JP5412848 B2 JP 5412848B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- microstructure
- solution
- vaporizable substance
- solvent
- substance
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Carbon And Carbon Compounds (AREA)
- Inert Electrodes (AREA)
Description
(a)ナノメートルレベルのファイバー、ロッド、チューブ、コイル、ウォール、ホーン、ワイヤー、コーン、ピラー、バンブー、若しくは粒子、あるいは、
(b)ナノメートルレベルの細孔を有する多孔体、
などの微細構造を有するナノ材料は、固体燃料電池の電極材料、電子放出材料などに用いられている。ナノ材料を用いることにより、電極材料の場合は反応面積の拡大、電子放出材料の場合は高アスペクト比化による電子放出特性の向上、などの効果が期待される。
ナノ材料を電極材料として応用する場合、ナノ材料に触媒微粒子を担持させる必要がある。また、ナノ材料に金属微粒子を担持させると、電子放出特性が向上することが報告されている。
例えば、特許文献1には、カーボンナノチューブを硝酸+硫酸中に入れて煮沸し、次いでK2PtCl4をエタノールに分散させた分散液にカーボンナノチューブを加え、所定の温度で攪拌する繊維状炭素への触媒担持方法が開示されている。
同文献には、
(1)カーボンナノチューブを硝酸+硫酸中で処理することにより、カーボンナノチューブの表面に凹部が形成され、凹部内にカルボン酸基、水酸基、アルデヒド基などの反応部位が導入される点、及び、
(2)反応部位が導入された凹部内に触媒粒子を担持させると、触媒粒子の凝集を抑制することができる点、
が記載されている。
同文献には、白金化合物を溶解させた超臨界流体とカーボンナノチューブを接触させると、超臨界流体が0.1μm程度のカーボンナノチューブのバンドル壁間に浸透し、カーボンナノチューブの表面に白金が析出する点が記載されている。
同文献には、
(1)このような方法により、カーボンナノチューブを凝集させることなく、カーボンナノチューブの表面に微粒子を担持できる点、及び、
(2)ストークス数を大きくすると、カーボンナノチューブのより深いところまで微粒子を侵入させることができる点、
が記載されている。
同文献には、このような方法により、炭素ナノ繊維からなる成形体の嵩密度が大幅に増加する点が記載されている。
(1)非晶質カーボンを含むカーボンナノチューブに樟脳及びエタノールを加えて乳鉢で混合し、エタノールを蒸発させて凝集体とし、
(2)凝集体から樟脳を昇華除去して多孔体とし、
(3)多孔体を酸化処理する
カーボンナノチューブの精製方法が開示されている。
同文献には、樟脳を昇華除去後の空洞は連続気孔となっているので、多孔体の内部への酸素の拡散が容易となり、非晶質カーボンの酸化除去が容易化する点が記載されている。
(1)白金担持カーボン、電解質、樟脳及び溶媒を含むインクを調製し、
(2)このインクを電解質膜上にスクリーン印刷法により塗布して電極形成部材を形成し、
(3)電極形成部材から溶媒を蒸発させて樟脳を析出させ、
(4)電解質と電極形成部材を接合し、
(5)樟脳を昇華させる
電極の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により電極内に細孔を形成することができる点、及び、溶媒の状態変化の速度を調節することにより細孔のサイズを調節することができる点が記載されている。
(1)4−BCMU(5,7−(ビス−1,12−n−ブチルカルボキシメチレン−ウレタン)ドデカジイン)をエタノール(4−BCMUの良溶媒)に溶解し、
(2)攪拌した純水(4−BCMUの貧溶媒)中に4−BCMU溶液を滴下して、白色の沈殿が分散した分散液とし、
(3)分散液に高圧水銀灯を照射し光重合させる、
ポリジアセチレン微粒子の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、有機物を良溶媒に溶解した溶液を、有機物の貧溶媒に混合することを利用して、有機超微粒子を製造することができる点が記載されている。
しかしながら、この乾燥過程において液体の表面張力がナノ材料に働き、ナノ材料中の微細構造の凝集が生ずるという問題がある。例えば、ナノ材料を電極材料として応用する場合、凝集は反応界面を減少させ、反応効率を低下させる原因となる。
一方、キャリアガスと共に微粒子を吹き付ける方法は、微細構造体が複雑形状、高密度、高アスペクト比を有する場合などには、ストークス数を制御しても、微粒子の担持状態の均一性に限界がある。
さらに、特別な装置を用いることなく、微細構造の凝集を抑制することができ、しかもナノ材料の形状によらず微細構造の内部まで均一に微粒子を担持させることが可能な方法が提案された例は、従来にはない。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、凝集が高度に抑制された微細構造体に金属、高分子有機物などが担持された微細構造材料の製造方法を提供することにある。
(1)前記微細構造材料の製造方法は、
気化性物質と前記気化性物質の良溶媒とを含む第1溶液を、微細構造体に接触させる第1工程と、
前記気化性物質の貧溶媒を含む第2溶液を、前記第1溶液に添加する第2工程と、
前記良溶媒及び前記貧溶媒を除去し、前記微細構造体と前記気化性物質とを含む複合体を得る第3工程と、
前記複合体から前記気化性物質を気化させる第4工程と
を備えている。
(2)前記微細構造体は、
(a)繊維状物、シート状物、微粒子、又は、繊維状物若しくはシート状物が基板上に固定されている材料であり、かつ、
(b)液体に浸漬された状態から前記液体を揮発させる際に凝集を生じる材料
からなる。
前記第1溶液及び/又は前記第2溶液は、金属錯体、金属塩、金属ナノ粒子、高分子有機物及び低分子有機物から選ばれるいずれか1以上をさらに含んでいても良い。
[1. 微細構造材料の製造方法]
本発明に係る微細構造材料の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを備えている。
第1工程は、気化性物質と気化性物質の良溶媒とを含む第1溶液を、微細構造体に接触させる工程である。
「気化性物質」とは、減圧や加熱によって固体から気体に変化する物質をいう。気化性物質には、分子構造を維持したまま固体から気体になる昇華性物質と、固体が熱分解することによって気体となる熱分解性物質とがある。気化性物質は、後述する良溶媒、微細構造体、及び貧溶媒に応じて最適なものを選択する。
昇華性物質としては、例えば、ナフタレン、パラジクロロベンゼン、樟脳、カンフェン、アントラセン、カフェイン、よう素などがある。
熱分解性物質としては、例えば、ポリメチルメタクリレートなどがある。
これらの熱分解性物質は、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
良溶媒とは、(a)微細構造体との濡れ性が高く、(b)気化性物質を溶解することが可能で、かつ(c)貧溶媒と相溶する又は均一に混合するもの、をいう。
「微細構造体との濡れ性が高い」とは、
(a)良溶媒を含む第1溶液と微細構造体とを接触させたときに、微細構造体の間隙に空気の層が形成されず、微細構造体の表面全体を濡らすことができ、かつ
(b)接触中に、液中にて微細構造体間の相互作用により生じる微細構造体の凝集が起きにくいもの、
をいう。
「気化性物質を溶解可能」とは、微細構造体の凝集を抑制することが可能な量の気化性物質を溶解させることができることをいう。良溶媒は、気化性物質の溶解度が高いものほど良い。良溶媒は、具体的には、第2溶液を添加する時の第1溶液の温度における気化性物質の溶解度が0.2質量%以上であるものが好ましい。良溶媒に対する気化性物質の溶解度は、さらに好ましくは、0.5質量%以上である。
「貧溶媒と相溶する又は均一に混合する」とは、良溶媒と貧溶媒とを混合したときに2層に分離せず、均一な溶液又は分散液になることをいう。
例えば、微細構造体が炭素系材料からなり、気化性物質がナフタレン、パラジクロロベンゼン等の昇華性物質である場合、良溶媒は、
(1)メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどの1価又は多価のアルコール系有機溶媒、
(2)アセトンなどのケトン系有機溶媒、
(3)カルボン酸系有機溶媒、
(4)アルデヒド系有機溶媒、
などが好ましい。
また、例えば、微細構造体が炭素系材料であり、気化性物質がポリメチルメタクリレートである場合、良溶媒は、
(1)アセトンなどのケトン系有機溶媒、
(2)ベンゼン、トルエンなどの芳香族系有機溶媒、
(3)クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化アルキル系有機溶媒、
(4)テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶媒、
などが好ましい。
いずれの場合においても、良溶媒には、上述したいずれか1種の溶媒を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
第1溶液とは、良溶媒に気化性物質を溶解させた溶液をいう。
第1溶液は、良溶媒と気化性物質のみを含むものでも良く、あるいは、これら以外の第3成分を含むものでも良い。第1溶液に含まれる気化性物質の濃度及び第3成分の濃度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
第3成分としては、具体的には、金属錯体、金属塩、金属ナノ粒子、高分子有機物、低分子有機物などがある。第3成分には、これらのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(1)触媒、
(2)熱分解、還元等により触媒となる触媒の前駆体、
(3)微細構造体に担持させた触媒にプロトンを供給するためのプロトン伝導体、
(4)微細構造体表面を修飾するための低分子有機物、
などがある。
第3成分が触媒又はその前駆体である場合、第3成分は、Pt、Rh、Irなどの貴金属を含む金属錯体、金属塩、金属ナノ粒子などが好ましい。
また、第3成分として、Ptを含む金属錯体を用いる場合、金属錯体は、白金ジニトロジアンミン錯体、白金アンミン錯体、白金アセチルアセトナート錯体などが好ましい。
微細構造体は、マイクロメートルレベル又はナノメートルレベルの微細構造を有するものをいう。このような微細構造体としては、
(1)ナノチューブ、ナノロッド、ナノファイバー、ナノコイル、ナノホーン、ナノワイヤー、ナノコーン、ナノピラー、ナノバンブーなどの繊維状物、
(2)マイクロメートルサイズ又はナノメートルサイズの細孔を有する多孔質体、
(3)ナノウォールなどのシート状物、
(4)マイクロメートルサイズ又はナノメートルサイズの微粒子、
などがある。
微細構造体を構成する材料としては、例えば、
(1)カーボンナノチューブ、カーボンナノウォール、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンナノピラー、カーボンナノバンブーなどの炭素系材料、
(2)シリコンナノロッド、シリコンナノピラー、シリコンナノワイヤーなどのSi系材料、
(3)チタニアナノチューブ、チタニアナノロッド、酸化亜鉛ナノロッド、酸化亜鉛ナノバンブー、酸化亜鉛ナノワイヤー、酸化タングステンナノチューブなどの酸化物系材料、
(4)銅ナノロッド、タングステンナノピラー、金ナノワイヤー、金ナノロッドなどの金属系材料、
(5)窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノロッド、窒化ホウ素ナノコーン、窒化インジウムナノロッド、窒化ガリウムナノワイヤーなどの窒化物系材料、
などがある。
第1溶液と微細構造体との接触方法は、特に限定されるものではなく、微細構造体の間隙に第1溶液を侵入させることが可能な方法であれば良い。
第1溶液と微細構造体との接触方法としては、例えば、
(1)第1溶液中に微細構造体を浸漬する方法、
(2)第1溶液中に微細構造体を分散させる方法、
(3)微細構造体の上に第1溶液を滴下する方法、
などがある。
微細構造体と接触させる際の第1溶液の温度は、気化性物質の性質に応じて、最適な温度を選択すれば良い。
第2工程は、気化性物質の貧溶媒を含む第2溶液を、第1溶液に添加する工程である。
貧溶媒とは、(a)気化性物質の溶解度が低く、かつ(b)良溶媒と相溶する又は均一に混合するものをいう。
貧溶媒は、良溶媒に比べて気化性物質の溶解度が低いものほど良い。貧溶媒は、具体的には、第1溶液に第2溶液を添加することにより生成される、第1溶液と第2溶液の混合液の温度における気化性物質の溶解度が、第1溶液中の気化性物質の濃度の1/2以下であるものが好ましい。貧溶媒に対する気化性物質の溶解度は、さらに好ましくは、第1溶液中の気化性物質の濃度の1/10以下、さらに好ましくは、1/100以下である。
「良溶媒と相溶する又は均一に混合する」とは、良溶媒と貧溶媒とを混合したときに2層に分離せず、均一な溶液又は分散液になることをいう。
例えば、微細構造体が炭素系材料からなり、良溶媒がアルコール系有機溶媒又はケトン系有機溶媒であり、気化性物質が昇華性物質である場合、貧溶媒は、水が好ましい。
また、例えば、微細構造体が炭素材料からなり、良溶媒がケトン系有機溶媒又はエーテル系有機溶媒であり、気化性物質がポリメチルメタクリレートである場合、貧溶媒は、
(1)水、
(2)アルコール系有機溶媒、
(3)ヘキサンなどのアルカン系有機溶媒、
などが好ましい。
また、例えば、微細構造体が炭素材料からなり、良溶媒がハロゲン化アルキル系有機溶媒又は芳香族系有機溶媒であり、気化性物質がポリメチルメタクリレートである場合、貧溶媒は、アルコール系有機溶媒、アルカン系有機溶媒などが好ましい。
第2溶液は、貧溶媒を含む。第2溶液は、貧溶媒のみからなるものでも良く、貧溶媒以外の第3成分が含まれていても良い。
第2溶液に第3成分が含まれる場合、第3成分は、貧溶媒に溶解するものでも良く、あるいは、溶解せずに単に分散するものでも良い。
第3成分としては、具体的には、金属錯体、金属塩、金属ナノ粒子、高分子有機物、低分子有機物などがある。第3成分には、これらのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、第3成分は、第1溶液又は第2溶液のいずれか一方に含まれていても良く、あるいは、双方に含まれていても良い。第1溶液と第2溶液の双方に第3成分が含まれる場合、第2溶液に含まれる第3成分は、第1溶液に含まれる第3成分と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
第3成分の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
第2溶液は、微細構造体と接触している第1溶液が流れ出さないように、第1溶液に添加するのが好ましい。
例えば、垂直配向カーボンナノチューブ膜の表面に第1溶液を滴下した場合、この第1溶液の上からさらに第2溶液を滴下するのが好ましい。
繊維状物、シート状物、又は粉末のみからなる微細構造体を第1溶液中に分散、浸漬、滴下等を行った場合も同様であり、微細構造体と接触している第1溶液中に第2溶液を滴下するのが好ましい。
第2溶液を添加するときの第1溶液の温度は、特に限定されるものではなく、気化性物質の性質に応じて、最適な温度を選択する。
同様に、第1溶液に添加する第2溶液の温度は、特に限定されるものではなく、気化性物質の性質、第1溶液の温度等に応じて、最適な温度を選択する。
第3工程は、良溶媒及び貧溶媒を除去し、微細構造体と気化性物質とを含む複合体を得る工程である。
第1溶液に第2溶液を添加すると、微細構造体の間隙に気化性物質が析出する。気化性物質が析出した後、良溶媒及び貧溶媒を除去する。
良溶媒及び貧溶媒の除去方法としては、例えば、
(1)第1溶液、第2溶液及び微細構造体の混合物を常温常圧下で大気中に放置する方法、
(2)混合物を加熱する方法、
(3)混合物を減圧下で保持する方法、
(4)(2)及び(3)の組み合わせ、
などがある。特に、(2)〜(4)の方法は、良溶媒及び貧溶媒の除去に要する時間が短いため、実用的には好ましい。
第4工程は、複合体から気化性物質を気化させる工程である。
気化性物質を気化させる方法としては、例えば、
(1)微細構造体と気化性物質の複合体を加熱する方法、
(2)複合体を減圧下で保持する方法、
(3)(1)及び(2)の組み合わせ、
などがある。
一方、良溶媒及び貧溶媒の揮発速度が気化性物質の気化速度に比べて著しく大きくないときには、先に良溶媒及び貧溶媒が除去され、次いで気化性物質が除去されるように、第3工程及び第4工程の条件を最適化するのが好ましい。
さらに、気化性物質が溶融状態となると、溶融した気化性物質から微細構造体に表面張力が働き、微細構造体の凝集が生じる。従って、気化性物質が溶融状態にならないように、気化性物質の性質に応じて、第3工程及び第4工程の条件を最適化するのが好ましい。
図1(a)に、液体の含浸及び乾燥に伴うカーボンナノチューブ(CNT)の凝集過程を示す。また、図1(b)に、本発明に係る方法を用いたCNTの凝集抑制過程を示す。
微細構造体の一種である垂直配向CNT膜10は、CNT10a、10a…が基板20に対して垂直に生成し、かつCNT10a、10a…同士が平行に配列した構造を有している。このような垂直配向CNT膜10は、各種の用途に用いる過程で、液体の含浸・乾燥処理が行われることが多い。
(1)貧溶媒添加時に気化性物質の微粒子がCNTの隙間に析出する段階、
(2)第1溶液中で気化性物質の微粒子が晶析した後、微粒子がCNTの隙間に沈降する段階、
(3)乾燥処理時に気化性物質の微粒子が、溶媒の減少とともにCNTのの隙間に入り込みながら凝集する段階、
の三段階があると考えられる。
例えば、第1溶液に白金錯体を添加し、これを垂直配向CNT膜に添加すると、CNTの凝集を抑制しながら、白金を垂直配向CNTの根元まで均一かつ高収率に担持することができる。貧溶媒添加による晶析では、微粒子が高純度に析出するため、貧溶媒添加時に白金錯体は気化性物質の微粒子に取り込まれないと推測される。
さらに、本発明は、微細構造体の中でも高いアスペクト比形状を有する垂直配向CNT膜の凝集を抑制することができる。従って、本発明は、他の様々な微細構造体の凝集抑制にも十分に適用することができる。
[1. 試料の作製]
[1.1 垂直配向CNTの作製]
垂直配向CNTは、文献(特開2007−268319号公報)に記載されている手法に従って作製した。Fe−Ti−O触媒微粒子を担持した1cm四方のSi基板を触媒基板とし、熱化学気相成長法(CVD)により垂直配向CNT膜を作製した。CVD条件は、水素流量:45sccm、アセチレン流量:30sccm、温度:600℃、圧力:400MPa、成長時間:10分とした。得られた垂直配向CNT膜は、チューブ径:約5nm、成長高さ:約50μmであった。
[1.2.1 実施例1]
70℃に加熱したエタノール(良溶媒)にナフタレン(昇華性物質)を溶解させた。ナフタレン濃度は、0.06g/mLとした。このナフタレン溶解エタノール(第1溶液)の液滴30μLを、垂直配向CNT膜の表面に滴下し、第1溶液を垂直配向CNT膜に含浸させた。続いて、垂直配向CNT膜に滴下した第1溶液に、ナフタレンの貧溶媒である水(第2溶液、温度:室温)を50μL滴下し、液体中でCNTの隙間にナフタレンの微粒子を析出させた。
次に、容器に試料を入れ、ロータリーポンプを用いて容器内を10kPa以下に減圧し、室温にて垂直配向CNT膜からエタノールと水を優先的に蒸発させた。その後、ナフタレン結晶を昇華させた。
エタノール30μLを、垂直配向CNT膜の表面に滴下した。滴下後、室温にて大気雰囲気中でエタノールを自然蒸発させた。
[1.2.3 比較例2]
90℃に加熱した溶融ナフタレンを、垂直配向CNT膜の表面全体が溶融ナフタレンに濡れるまで滴下した。続いて、室温にて大気雰囲気中に試料を放置し、試料を室温まで冷却することにより、垂直配向CNT膜上でナフタレンを結晶化させた。
次に、容器に試料を入れ、ロータリーポンプを用いて容器内を10kPa以下に減圧し、室温にて垂直配向CNT膜からナフタレン結晶を昇華させた。
[1.2.4 比較例3]
70℃に加熱したエタノールにナフタレンを溶解させた。ナフタレン濃度は、0.06g/mLとした。このナフタレン溶解エタノール溶液の液滴30μLを、垂直配向CNT膜の表面に滴下し、溶液を垂直配向CNT膜に含浸させた。続いて、室温にて大気雰囲気中でエタノールを自然乾燥させ、ナフタレン結晶を垂直配向CNT膜上に析出させた。
次に、容器に試料を入れ、ロータリーポンプを用いて容器内を10kPa以下に減圧し、室温にて垂直配向CNT膜からナフタレン結晶を昇華させた。
[2.1 無処理の垂直配向CNT膜]
図2(a)に、無処理の垂直配向CNT膜の光学顕微鏡像を示す。また、図3(a)及び図4(a)に、それぞれ、無処理の垂直配向CNT膜の低倍率及び高倍率の電界放射型走査型電子顕微鏡(FESEM)二次電子像を示す。光学顕微鏡像及び二次電子像より、Si基板表面が垂直配向CNT膜で均一に被覆されていることがわかる。
図2(b)〜(e)に、それぞれ、実施例1及び比較例1〜3で得られた処理後の垂直配向CNT膜の光学顕微鏡像を示す。
エタノールで処理した比較例1の場合、図2(c)に示すように、CNTが凝集した結果、CNTが高密度になった光反射率の低い領域と、CNTが低密度になり、下地のSi基板の表面からの光反射の影響が大きい領域とが形成され、明暗模様が観察された。貧溶媒を用いることなくナフタレンを昇華させた比較例2(図2(d))及び比較例3(図2(e))も同様であり、明暗模様が観察された。
これに対し、貧溶媒を用いてナフタレンを析出させた実施例1の場合、図2(b)に示すように、明暗模様が少ない。
エタノールで処理した比較例1の場合、図3(c)及び図4(c)に示すように、CNT同士が凝集により接近していることが分かる。貧溶媒を用いることなくナフタレンを昇華させた比較例2(図3(d)、図4(d))及び比較例3(図3(e)、図4(e))も同様であり、CNT同士が凝集により接近した。
溶融ナフタレンを用いた場合及びナフタレン溶解エタノール溶液のみを用いた場合のいずれも、CNTの凝集を抑制することができなかった。これは、いずれの場合も、ナフタレンがCNTの間隙に析出しなかったためと考えられる。
一方、貧溶媒を用いることによってCNTの凝集が抑制されたのは、貧溶媒の添加によってCNTの隙間にナフタレンの微粒子が析出したためと考えられる。
[1. 試料の作製]
[1.1 実施例2]
白金ジニトロジアンミン錯体(Pt(NO2)2(NH3)2)を溶解させ、70℃に加熱したエタノール溶液(第1溶液;0.989g−Pt/L)に、ナフタレンを溶解させた。ナフタレン濃度は、0.06g/mLとした。この第1溶液の液滴30μLを、実施例1で作製した垂直配向CNT膜の表面に滴下し、溶液を垂直配向CNT膜に含浸させた。続いて、垂直配向CNT膜に滴下した第1溶液に、ナフタレンの貧溶媒である水(第2溶液、温度:室温)を50μL滴下し、液体中でCNTの隙間にナフタレンの微粒子を析出させた。
次に、容器に試料を入れ、ロータリーポンプを用いて10kPa以下に減圧し、エタノールと水の蒸発、及びナフタレンの昇華を行った。その後、白金を還元するため、アルゴンと水素の混合ガス雰囲気中(水素:4%)で、200℃にて4時間熱処理を施した。
[1.2 比較例4]
白金ジニトロジアンミン錯体(Pt(NO2)2(NH3)2)のみを溶解させたエタノール溶液を、実施例1で得られた垂直配向CNT膜に滴下した。これを常温で数時間放置し、エタノールを蒸発させた。その後、白金を還元するため、アルゴンと水素の混合ガス雰囲気中(水素:4%)で、200℃にて4時間熱処理を施した。
図5(a)及び図5(b)に、それぞれ、実施例2及び比較例4で得られた熱処理後の垂直配向CNT膜のFESEM二次電子像を示す。図5(a)及び図5(b)より、比較例4はCNTの凝集が顕著に観察されるのに対し、実施例2はCNTの凝集が抑制されていることが分かる。
図5(c)及び図5(d)に、それぞれ、実施例2で得られた熱処理後の垂直配向CNT膜の高倍率FESEM二次電子像、及びこれと同じ領域から得られた反射電子像を示す。反射電子像にて明るく見える部分がPt微粒子である。図5(c)及び図5(d)より、Pt微粒子がCNTに均一に分散担持されていることが分かる。
(1)固体燃料電池、センサーなどの電極材料の製造方法、
(2)熱電子放出あるいは電界電子放出を利用する平面型ディスプレイ、電子顕微鏡、オージェ電子分光装置、プラズマ発生装置、X線発生装置、電子線リソグラフィー装置、サージ吸収装置などの電子放出材料の製造方法
などに応用できる。
Claims (8)
- 以下の構成を備えた微細構造材料の製造方法。
(1)前記微細構造材料の製造方法は、
気化性物質と前記気化性物質の良溶媒とを含む第1溶液を、微細構造体に接触させる第1工程と、
前記気化性物質の貧溶媒を含む第2溶液を、前記第1溶液に添加する第2工程と、
前記良溶媒及び前記貧溶媒を除去し、前記微細構造体と前記気化性物質とを含む複合体を得る第3工程と、
前記複合体から前記気化性物質を気化させる第4工程と
を備えている。
(2)前記微細構造体は、
(a)繊維状物、シート状物、微粒子、又は、繊維状物若しくはシート状物が基板上に固定されている材料であり、かつ、
(b)液体に浸漬された状態から前記液体を揮発させる際に凝集を生じる材料
からなる。 - 前記微細構造体は、ナノチューブ、ナノロッド、ナノファイバー、ナノコイル、ナノホーン、ナノウォール、ナノワイヤー、ナノコーン、ナノピラー、ナノバンブー、及び微粒子から選ばれるいずれか1以上を含む請求項1に記載の微細構造材料の製造方法。
- 前記微細構造体は、垂直配向カーボンナノチューブ膜である請求項1に記載の微細構造材料の製造方法。
- 前記良溶媒は、アルコール系有機溶媒及びケトン系有機溶媒から選ばれるいずれか1種以上である請求項1から3までのいずれかに記載の微細構造材料の製造方法。
- 前記気化性物質は、昇華性物質である請求項1から4までのいずれかに記載の微細構造材料の製造方法。
- 前記昇華性物質は、ナフタレンである請求項5に記載の微細構造材料の製造方法。
- 前記貧溶媒は、水である請求項1から6までのいずれかに記載の微細構造材料の製造方法。
- 前記第1溶液及び/又は前記第2溶液は、金属錯体、金属塩、金属ナノ粒子、高分子有機物及び低分子有機物(前記良溶媒及び前記貧溶媒を除く)から選ばれるいずれか1以上をさらに含む請求項1から7までのいずれかに記載の微細構造材料の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009014976A JP5412848B2 (ja) | 2009-01-27 | 2009-01-27 | 微細構造材料の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009014976A JP5412848B2 (ja) | 2009-01-27 | 2009-01-27 | 微細構造材料の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010173862A JP2010173862A (ja) | 2010-08-12 |
JP5412848B2 true JP5412848B2 (ja) | 2014-02-12 |
Family
ID=42705200
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009014976A Expired - Fee Related JP5412848B2 (ja) | 2009-01-27 | 2009-01-27 | 微細構造材料の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5412848B2 (ja) |
Families Citing this family (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102970914A (zh) | 2010-08-02 | 2013-03-13 | 奥林巴斯医疗株式会社 | 内窥镜系统 |
JP5831009B2 (ja) * | 2011-07-25 | 2015-12-09 | 株式会社豊田中央研究所 | 微細構造材料及びその製造方法、並びに、燃料電池用膜電極接合体 |
US9146525B2 (en) * | 2012-10-31 | 2015-09-29 | Xerox Corporation | Apparatus and method for cleaning an imaging surface of a printing system |
US10090531B2 (en) | 2013-02-26 | 2018-10-02 | Toyoto Motor Europe Nv/Sa | Vertically aligned titanium oxide nanotubes for fuel cell electrodes |
JP6186933B2 (ja) | 2013-06-21 | 2017-08-30 | 富士通株式会社 | 接合シート及びその製造方法、並びに放熱機構及びその製造方法 |
JP6325067B2 (ja) * | 2016-12-15 | 2018-05-16 | 東京エレクトロン株式会社 | 基板乾燥方法及び基板処理装置 |
JP6356207B2 (ja) * | 2016-12-15 | 2018-07-11 | 東京エレクトロン株式会社 | 基板乾燥方法及び基板処理装置 |
JP6866227B2 (ja) * | 2017-05-12 | 2021-04-28 | 日立造船株式会社 | カーボンナノチューブ複合体およびその製造方法 |
CN114464820B (zh) * | 2022-04-08 | 2022-07-12 | 湖南隆深氢能科技有限公司 | 一种用于燃料电池gdl疏水工艺的设备 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS61183182A (ja) * | 1985-02-11 | 1986-08-15 | 株式会社デンソー | 多孔質セラミツク構造体 |
JP4233031B2 (ja) * | 2001-09-13 | 2009-03-04 | 日立金属株式会社 | セラミックハニカムフィルタ及びその製造方法 |
JP4307794B2 (ja) * | 2002-07-01 | 2009-08-05 | クラスターテクノロジー株式会社 | 微細構造を有する型およびこの型を用いる成形体の製造方法 |
JP4915778B2 (ja) * | 2006-05-26 | 2012-04-11 | 富士通株式会社 | カーボンナノチューブ複合材料及びその製造方法 |
-
2009
- 2009-01-27 JP JP2009014976A patent/JP5412848B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2010173862A (ja) | 2010-08-12 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5412848B2 (ja) | 微細構造材料の製造方法 | |
EP2543632B1 (en) | Method for producing aligned carbon nanotube aggregate | |
JP4730707B2 (ja) | カーボンナノチューブ合成用触媒及びその製造方法、触媒分散液、並びに、カーボンナノチューブの製造方法 | |
JP4584142B2 (ja) | 単層カーボンナノチューブ製造用触媒金属微粒子形成方法 | |
US20080220244A1 (en) | Supercritical Fluids in the Formation and Modification of Nanostructures and Nanocomposites | |
Chen et al. | Electroless deposition of Ni nanoparticles on carbon nanotubes with the aid of supercritical CO2 fluid and a synergistic hydrogen storage property of the composite | |
KR100831069B1 (ko) | 나노크기의 금속분화 촉매 및 그의 제조방법 | |
Messing et al. | A comparative study of the effect of gold seed particle preparation method on nanowire growth | |
JP5403284B2 (ja) | ナノチューブ・ナノホーン複合体、およびその製造方法 | |
JP5629868B2 (ja) | カーボンナノ構造物成長用触媒層形成方法、触媒層形成用液及びカーボンナノ構造物製造方法 | |
JP2005263564A (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
JP4706852B2 (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
Sridhar et al. | Direct growth of carbon nanofiber forest on nickel foam without any external catalyst | |
JP5622278B2 (ja) | カーボンナノチューブ配向集合体製造用基材、カーボンナノチューブ配向集合体の製造方法、及びカーボンナノチューブ配向集合体製造用基材の製造方法 | |
KR20060002476A (ko) | 탄소나노튜브 제조용 촉매 베이스의 제조 방법 및 이를이용한 탄소나노튜브 제조 방법 | |
Xie et al. | Functionalized carbon nanotubes in platinum decoration | |
Gadd et al. | The encapsulation of Ni in graphitic layers using C60 as a precursor | |
KR101415228B1 (ko) | 1차원 탄소 나노섬유의 합성 방법 | |
JP2011168429A (ja) | 金属内包ナノカーボン材料とその製造方法 | |
CN110228811B (zh) | 一种低维稀土硼化物纳米材料及其固相制备方法 | |
Pan et al. | Multi-functionalized carbon nanotubes towards green fabrication of heterogeneous catalyst platforms with enhanced catalytic properties under NIR light irradiation | |
CN111924826B (zh) | 一种窄直径分布、高纯度金属性单壁碳纳米管的制备方法 | |
JP2007181766A (ja) | カーボンナノ構造体の製造方法、触媒金属粒子複合材料およびその製造方法 | |
KR101070870B1 (ko) | 실리콘 옥사이드 나노 와이어에 지지된 금속 나노 입자 촉매 및 이의 제조방법 | |
Mohammad et al. | Optimization of Cuprous Oxide Nanocrystals Deposition on Multiwalled Carbon Nanotubes |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20111108 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20130726 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20130806 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130830 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20131015 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20131028 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 5412848 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |