以下、本発明に係る結露防止装置の各種実施の形態について、図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1における結露防止装置の構成を示す斜視図であり、図2は側断面図である。光学部品を収納・保護するケースを模擬したケース1は、6面を板で囲まれており、一面の中央部に換気制御部としての略円形状の換気口2を備えている。換気口2の直径D1は、約1.24mmである。ケース1の外形寸法は、幅が約71mm、高さが約34mm、奥行きは約18mmである。換気口2を備える面は、真鍮の金属部材から成り、板厚は約4mmで形成されている。その他の5面は、アルミニウムの金属部材から成り、板厚は約1.5mmで形成されている。ケース1の内容積は、約15300mm3となり、内部の空間は、直径1.24mm、長さ4mmの細長い通路をなした換気口2によって外部とつながっている。この通路は有効面積が小さく、流動に対する抵抗が大きいので、強制的な圧力差をかかる状態でなければ、実質的にガスの流動は生じない。そにため、換気口2を通した物質の移動は、いわゆる拡散が支配的となる移動となる。つまり、換気口2を介したケース1の内部と外部との物質移動速度はFickの法則に従い、換気口2の通路内での物質の濃度勾配に比例する。
次に、動作について説明する。高温・高湿環境にあるケース1が低温・低湿環境に移された場合は、ケース1は外気により外壁から温度が下降し始め、換気口2からはケース1内部と外部の水蒸気分圧の差を駆動力として拡散による水蒸気の放出が始まる。しかし、ケース1の温度が緩やかに下降するのに対し、略円形状の換気口2により水蒸気が放出されることによる露点の下降速度の方が速いため、ケース1の内壁の温度が内部の露点温度を上回ることになるので、ケース1の内部では結露が発生しない。
図3は、60℃70%RHの環境から25℃30%RHの環境にケース1を移した時と、25℃30%RHの環境から60℃70%RHの環境にケース1を移した時の内部の空気の温度変化を示している。各々、ケース1の初期の内部空気の温度を0%とし、移動した後の環境温度を100%として、内部空気の温度変化の比率を経時的に示している。つまり、温度変化量△Tは次の式となる。
△T=100×{(Tin(t)−Tin(0))/(Tout−Tin(0))}ここで、Toutは外部の環境温度、Tin(0)は試験開始時のケース1の内部の温度、Tin(t)は試験開始からt時間後のケース1の内部の温度である。
図3より、低温・低湿環境から高温・高湿環境に移動した時の方が、高温・高湿環境から低温・低湿環境に移した時より、短時間に内部空気の温度変化が起こっていることが分かる。これは、低温・低湿環境から高温・高湿環境に移動した場合、ケース1の外部表面に結露が発生し、外気の水蒸気の潜熱が結露により付着した水滴から熱伝導によりケース1に伝わるためと考えられる。そのため、低温・低湿環境から高温・高湿環境に移動した場合、約85%で一度温度上昇が止まるが、その後、結露した水分が乾いた時点で、外部温度の100%まで上昇する。
低温・低湿環境にあるケース1が高温・高湿環境に移された場合、ケース1は外気により温度が上昇し始め、換気口2からは水蒸気の侵入が始まるが、換気口2以外に通風経路をもたない狭いケース1内では空気の流動がほとんどなく、ケース1内に侵入した水蒸気は換気口2付近に滞留し、換気口2内での水蒸気分圧の勾配は小さくなってしまう。そのため、換気口2の略円形状の換気口2によりケース1の内部への水蒸気の侵入速度は抑制され、露点の上昇速度が緩やかになる。一方、外気からの熱による温度上昇速度は上述したように速いので、ケース1の内壁の温度が、内部の露点温度を上回ることになり、ケース1の内部では結露が発生しない。
図4は、60℃70%RHの環境から25℃30%RHの環境にケース1を移した時と、25℃30%RHの環境から60℃70%RHの環境にケース1を移した時の内部の空気の絶対湿度変化量を示している。各々、ケース1の初期の内部空気の絶対湿度を0%とし、移動した後の環境の絶対湿度を100%として、内部空気の絶対湿度変化の比率を経時的に示している。つまり、絶対湿度変化量△Hは次の式となる。
△H=100×{(Hin(t)−Hin(0))/(Hout−Hin(0))}ここで、Houtは外部環境の絶対湿度、Hin(0)は試験開始時のケース1の内部の絶対湿度、Hin(t)は試験開始からt時間後のケース1の内部の絶対湿度である。
図4より、低温・低湿環境から高温・高湿環境に移動した時の方が、高温・高湿環境から低温・低湿環境に移した時より、内部空気の絶対湿度変化が遅い。この結果は、上述したようにケース1に水蒸気が侵入する(低湿度条件から高湿度条件へ移行時)場合は、水蒸気の移動速度が抑制され、逆に、ケース1から出る(高湿度条件から低湿度条件へ移行時)場合には、換気口2から出た水蒸気が流動性のある外気で希釈され、水蒸気分圧の勾配が高く保たれることにより、水蒸気の移動速度が保持されるためと考えられる。
このように、拡散による移動が支配的な通路でケース1内部と環境とを連通する換気口2を設けることにより、高温・高湿環境にあった前記ケース1が低温・低湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力に比べて、低温・低湿環境にあった前記ケース1が高温・高湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力が低くなると考えられ、前記ケース1の内壁の温度を前記ケース1内部の露点より高くするように換気能力差をもたせることで、ケース1の内部での結露を防ぐことができる。
つまり、高温・高湿環境にあった前記ケース1が低温・低湿環境に移された場合、内部空気の温度低下は遅く、水蒸気の放出速度は速いため、内部での結露は発生し難く、低温・低湿環境にあった前記ケース1が高温・高湿環境に移された場合、内部空気の温度上昇は早く、水蒸気の侵入速度が遅いため、内部での結露は発生し難くなる。内部部品の温度変化は、内部空気の温度変化と密接に関係しているため、内部部品温度の変化も同様のことが言えると考えられる。
ここで、絶対湿度がHaの高温・高湿環境において、ケース1を内部が環境と同じ温度、湿度になるまで放置し、その後、ケース1を絶対湿度がHbの低温・低湿環境に移したとき、時間とともに測定したケース1の内部の絶対湿度をH1とする。
また、絶対湿度がHbの低温・低湿環境において、ケース1を内部が環境と同じ温度、湿度になるまで放置し、その後、ケース1を絶対湿度がHaの高温・高湿環境に移したとき、時間とともに測定したケース1の内部の絶対湿度をH2とする。
この場合、ケース1を高温・高湿環境から低温・低湿環境に移動したときのケース1内部の絶対湿度H1の変化に対する、低温・低湿環境から高温・高湿環境に移動したときのケース1内部の絶対湿度H2の変化の比率H(換気能力比率)は、次の式で求められる。
H=100×{(H2−Hb)/(Ha−Hb)}/{(H1−Ha)/(Hb−Ha)}
図5は、本実施の形態1における結露防止装置での、高温・高湿環境が60℃・70%RH、低温・低湿環境が25℃・30%RHのときの、換気能力比率Hの時間による変化を示す。換気制御部としての略円形状の換気口2により、換気方向に対して能力差を生じ、高温・高湿環境にあったケース1が低温・低湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力に比べて、低温低湿環境にあった前記ケースが高温高湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力が低く(図中100%以下となる場合)なり、ケース1内部の結露を抑制することが分かる。
なお、上述の実施の形態1では、換気口の直径D1を、1.24mmで設けたが、これに限るものではない。内容積が同一であれば、0<D1<8mm(開口面積約50mm2)の範囲で設けてもよい。D1が8mm以上になると通路内にガスの流れが生じて、水蒸気の移動がいわゆる抵抗支配となって換気能力差を生じにくくなり、低温・低湿環境にあったケース1が高温・高湿環境に移された場合に水蒸気の換気能力が高くなり、ケース1内部に結露を発生しやすくなる。
図6は、換気口面積に対する換気能力比率を示したグラフである。換気能力比率は、各々実験開始から250秒後の値を使用している。換気口の面積を変えた場合の60℃70%RHの環境から25℃30%RHの環境にケース1を移した時の内部空気の絶対湿度変化の値から直線近似した式と、25℃30%RHの環境から60℃70%RHの環境にケース1を移した時の内部空気の絶対湿度変化の値から直線近似した式を用いて換気能力比率Hを求めている。
図6より、各環境変化(60℃70%RHと25℃70%RH間、60℃70%RHと5℃30%RH間、60℃40%RHと25℃30%RH間)に共通して、換気口面積が大きくなると換気能力比率は大きくなり、つまり、高温・高湿環境にあったケース1が低温・低湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力と、低温・低湿環境にあった前記ケース1が高温・高湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力に差がなくなることになる。換気口面積が50mm2になると、換気能力比率は70%から90%程度となり、内部結露を抑制するのが困難となってくることが分かる。
また、ここでは、換気口2をケース1の一面の中央部に一個だけ設けたが、これに限るものではない。ただし、換気口の数や位置に制約は無いが、総面積が大きくなると、総面積が同じであれば換気口の数を多くした方が換気能力差は発生し難くなる傾向にある。
図6の中の丸印(○)のマーカーの値は、図7に示すように、換気口を設ける面の上下左右対称の位置に、同じ直径の穴6aから6dを横並びに4個開け、各々の穴中心の間隔を15mmとしている。4個の穴の総面積が換気口面積となる。同じ環境条件の換気口穴1個の菱形(◇)のマーカーの値と比較すると、換気口面積が小さい場合は、換気能力比率に大きな差は見られないが、換気口面積が大きくなるに従って、4個の穴を開けた方が換気能力比率が大きくなり、換気能力差が無くなってくることが分かる。このため、換気口の数は少なく、また、位置は近い場所に設けた方が、換気能力差は大きくなることが分かる。これは、換気口が離れた位置に並存するため、各換気口周辺の圧力差により、一方の換気口から他方の換気口へつながる気流が発生し、換気口内に抵抗支配のガス流が生じたためと考えられる。
以上のように、本実施の形態1では、密閉性のケース1に拡散による移動が支配的となる通路でケース1内部と環境とを連通する略円形状の換気口2を設けたので、換気方向に対して能力差を生じさせることができ、環境変化による筐体内部の結露発生を抑制できる。また、ヒータを含む除湿装置を必要とせず、装置の小型化が容易で、低消費電力を実現できる。さらに、換気口の加工が容易であり、樹脂材料等、使用材料の選択範囲が広い。
実施の形態2.
実施の形態1の結露防止装置においては、収納ケースに略円形状の換気口を設けた場合について示したが、実施の形態2では、スリット形状の換気口を設けた場合について示す。
図8は、本実施の形態2における結露防止装置の構成を示す斜視図であり、図9は側断面図である。実施の形態2は、実施の形態1の結露防止装置に、略円形状の替わりにスリット形状の換気口3a、3b、3cを備えたものである。その他の構成に関しては、実施の形態1と同様であり、相当部分には図1と同一符号を付して説明を省略する。
ケース1の一面の換気口3a、3b、3cを備える面は、真鍮の金属部材から成り、板厚は約4mmで形成されている。その他の5面は、アルミニウムの金属部材から成り、板厚は約1.5mmで形成されている。換気口3a、3b、3cはいずれも、幅が約63mmで、高さhは約0.01mmで設けられている。
図10は、本実施の形態2における結露防止装置での、高温・高湿環境が60℃・75%RH、低温・低湿環境が25℃・30%RHのときの、換気能力比率Hの時間による変化を示す。換気制御部としてのスリット形状の換気口3a、3b、3cにより、換気方向に対して能力差を生じ、高温・高湿環境にあったケース1が低温・低湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力に比べて、低温・低湿環境にあった前記ケース1が高温・高湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力が低くなり、ケース1内部の結露を抑制することになる。
なお、上述の実施の形態2では、換気口を3本設けたが、これに限るものではない。換気能力差は、ケース1の内部の内容積が同じであれば、換気口の総面積でほぼ決まる。換気口の数や位置に制約は無いが、上述したように各換気口間の距離が長くならないようにすることが好ましい。また、内容積が異なれば、必要な換気口の総面積も異なる。
図11は、図6に示した換気口面積に対する換気能力比率を示したグラフに、スリット形状の換気口の値を加えたものである。図中米印(*)のマーカーが実施の形態2のケース1の値である。換気口が5mm2以下の場合は、略円形状の換気口を1個(◇マーカー)設けた場合、または、略円形状の穴を4個設けた場合(*マーカー)の実施の形態1とほぼ同様の値を示すが、換気口面積が大きくなるにつれて急激に換気能力比率が大きくなり、換気能力差が失われていくのが分かる。この図11からも、換気能力差が換気口の面積によって決まり、また、開口部が離れた位置に存在する場合には、換気能力差が減少するので、換気口は前記ケース1の一部にまとまっている方が換気能力差が大きくなることが分かる。
また、ここでは、換気口のスリット高さhを、0.01mmで設けたが、これに限るものではない。換気口の総面積が同じであれば、0<h<約0.06mm(換気口面積が約11mm2)の範囲で設けてもよい。hが約0.06mm(換気口面積が約11mm2)以上になると換気能力差を生じにくくなり、低温・低湿環境にあったケース1が高温・高湿環境に移された場合に水蒸気の換気能力が高くなり、ケース1内部に結露を発生しやすくなる。
以上のように、本実施の形態2では、ケース1にスリット形状の換気口3a、3b、3cを設けたので、換気方向に対して能力差を生じさせることができ、環境変化による筐体内部の結露発生を抑制できる。また、スリット形状の換気口によりごみや塵などの侵入を防ぐことができる。
実施の形態3.
実施の形態2の結露防止装置においては、ケースにスリット形状の換気口のみを設けた場合について示したが、換気口のスリット高さが狭く加工に課題があった。実施の形態3では、このスリット形状の換気口を備える面に防塵板(結露板)を設けた場合について示す。
図12は、本実施の形態3における結露防止装置の構成を示す斜視図であり、図13は側断面図である。実施の形態3は、実施の形態2の結露防止装置に、防塵板(結露板)4を備え、形状は同じであるがスリット高さhの寸法が大きい換気口3a、3b、3cを設けている。その他の構成に関しては、実施の形態1と同様であり、相当部分には図1と同一符号を付して説明を省略する。
防塵板4は、ケース1の換気口3a、3b、3cを備える面に、両面テープ等の粘着材6a、6bにより取付けられている。この防塵板4は、アクリルの樹脂部材から成り、板厚は約3mmで形成されている。換気口3a、3b、3cを備える面と防塵板4との間には、粘着材6a、6bにより隙間d1が約0.01mmで確保される。換気口3a、3b、3cのスリット高さhは、約0.1mmで設けられている。
図14は、本実施の形態3における結露防止装置での、高温・高湿環境が60℃・75%RH、低温・低湿環境が25℃・30%RHのときの、換気能力比率Hの時間による変化を示す。換気制御部としてのスリット形状の換気口3a、3b、3cとこの換気口を備える面と防塵板4との隙間d1により、実施の形態2と同様に、換気方向に対して能力差を生じ、高温・高湿環境にあったケース1が低温・低湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力に比べて、低温・低湿環境にあったケース1が高温・高湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力が低くなり、ケース1内部の結露を抑制することになる。動作については、実施の形態2と同様であり、その説明を省略する。
なお、上述の実施の形態2においても、換気口を3本設けたが、これに限るものではない。換気能力差は、換気口の総面積で決まり、換気口の数や位置に制約は無い。また、換気口の総面積は、収納ケースの内部の容積により異なり、同じ容積の収納ケースであれば換気口の総面積が同じであればよい。ただし、上述のように、離れた位置に開口部が存在しないようにした方がよい。
以上のように、本実施の形態3では、換気口3a、3b、3cを覆う防塵板4を設けたので、換気口の有効面積を換気口の外周と換気口を備える面と防塵板の隙間により規定され、拡散による移動が支配的となる。そのため、換気方向に対して能力差を生じさせることができ、環境変化による筐体内部の結露発生を抑制できる。また、換気口にごみや塵が侵入し難くなり目詰まりを避けることができるだけでなく、スリット形状の換気口の加工がしやすくなる。
実施の形態4.
実施の形態2及び実施の形態3の結露防止装置においては、収納ケースにスリット形状の換気口を設けた場合について示したが、スリットを加工できる材料の種類又は加工方法の選択に制限があり、製品とするに当っての課題があった。実施の形態4では、略円形状の換気口を設け、換気口を備える面に、相対する面に凹凸を施した防塵板を設けた場合について示す。
図15は、本実施の形態4における結露防止装置の構成を示す斜視図であり、図16は側断面図である。実施の形態4は、実施の形態3の結露防止装置に、片面に凹凸部7aを施した防塵板7を備え、寸法の大きい略円形状の換気口2を設けたものである。その他の構成に関しては、実施の形態3と同様であり、相当部分には図12と同一符号を付して説明を省略する。
図16に示すように、防塵板7は、ケース1の略円形状の換気口2を備える面に、凹凸部7aを施した面が相対して当接するように配設される。この防塵板7は、アクリルの樹脂材料から成り、板厚は約3mmで形成されている。換気口2の直径D2は、約14mmで設けられている。凹凸部7aの高さd2は0.015<d2<0.05mmの幅で設けられている。
防塵板7に施す凹凸部7aは、例えば、樹脂部材等に設けたシボ加工で形成される。金属部材の表面をエッチングにより形成したものでもよい。また、プリント配線基板を用いる場合は、導体パターンや絶縁用のコーティング部材で設けてもよい。凹凸形状は、防塵板7側の面の替わりに、ケース1側の面に設けてもよい。
図17は、本実施の形態4における結露防止装置での、高温・高湿環境が60℃・75%RH、低温・低湿環境が25℃・30%RHのときの、換気能力比率Hの時間による変化を示す。換気制御部としての換気口2を備える面と防塵板7の凹凸部7aの隙間により、実施の形態1と同様に、換気方向に対して能力差を生じ、高温・高湿環境にあったケース1が低温・低湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力に比べて、低温・低湿環境にあった前記ケースが高温・高湿環境に移された場合の水蒸気の換気能力が低くなり、ケース1内部の結露を抑制することになる。動作については、実施の形態1と同様であり、その説明を省略する。
なお、上述の実施の形態4においては、換気口2は直径D2の約14mm略円形状(換気口面積が約154mm2)のものを用いたが、これに限るものではない。換気能力は、換気口2を備える面と防塵板7の凹凸部7aの隙間の形状で決まり、換気口の形状、寸法、数や位置に制約は無い。
また、ここでは、凹凸部7aの高さd2は0.015<d2<0.035mmの幅で設けられているが、これに限るものではない。内容積が同一であれば、0<d2<0.50mmの範囲で設けてもよい。d2が0.050mm以上になると換気能力差を生じにくくなり、低温低湿環境にあったケース1が高温高湿環境に移された場合に水蒸気の換気能力が高くなり、ケース1内部に結露を発生しやすくなる。
以上のように、本実施の形態4では、ケース1の換気口2を備える面に凹凸部7aを施した防塵板7を当接するように設けたので、換気口2を備える面と防塵板7の凹凸部7aの隙間により、換気方向に対して能力差を生じさせることができ、環境変化による筐体内部の結露発生を抑制できる。また、換気口の形状や、換気口を備える面と防塵板の隙間の寸法を制御する必要がなく、安定して換気能力差が得られる。さらに、ごみや塵の侵入による換気口の目詰まりを避けることができるとともに、凹凸を有する防塵板を前記ケース1に当接するか、前記ケース1の面に凹凸加工を施し、平板の防塵板を当接するだけで換気制御部を構成できるため、結露防止装置の製作が容易となる。また、防塵板7が換気口2の邪魔板の役割を果たし、外部環境で強い気流が存在していても、防塵板7が換気口2への動圧の伝播を防止するので、拡散支配を維持し、換気能力差を確保することが容易となり、結露を有効に防止できる。
ここで、上記各実施の形態で示した、密閉性のケース1に拡散が支配的な換気口2を設けた場合の、換気能力、及び結露防止効果を検討するため、さらに換気口2の条件を変えて試験を行った。
実施の形態5.
実施の形態1の結露防止装置においては、ケースに略円形状の換気口を横一列(直線的)に設けた場合について示したが、実施の形態5では、略円形状の換気口を平面的に配置した場合について示す。
図18は、本実施の形態5における結露防止装置の構成を示す斜視図であり、図19は換気口面積に対する換気能力比率を示したグラフである。図18に示すように、実施の形態5は、実施の形態1の図1に示すケース1の換気口2の代わりに、略円形状の換気口2a、2b、2c、2dを平面的な広がりをもって、四角形の各頂点に配列したものである。その他の構成に関しては、実施の形態1と同様であり、相当部分には図1と同一符号を付して説明を省略する。
実施の形態1では、図1でケース1の一面の中央付近に1個の換気口を設けており、図7では4個の換気口を直線状に並べる配列とした実施の形態を示した。本実施の形態では、換気口を設ける面に各々略円形状で同じ直径の4個の換気口2a〜2dを長方形の頂点の位置に配置し、換気口の配列は、換気口2aと2c、換気口2bと2dの間隔は30mmであり、換気口2aと2b、換気口2cと2dの間隔は15mmである。各換気口間の最大距離となる対角の距離は、約34mmで、実施の形態1で換気口を直列に4個並べた時の最大距離の7割程度となる。
図19は、換気口面積(総面積)に対する換気能力比率を示したグラフであり、実施の形態1の図6に本実施の形態における略円形状の換気口を四角の配置した場合の値(丸印(●)のマーカー)を加えている。なお、4個の穴の総面積がX軸の換気口面積となる。4個の換気口を平面的に配列した場合、同じ直径の4個の換気口が直線に並んだ場合(○)よりも換気能力差が大きく、総面積が同じで換気口穴1個の場合(◇)とほぼ同様の換気能力差となっていることが分かる。
これは、各換気口の直径が異なっていても総面積が同じであれば、ほぼ同程度の換気能力差が得られるが、同じ数の換気口を使用する場合には、換気口の距離を短く保つことが必要であることを示している。各換気口の直径に関係なく、総面積が同じであれば、換気能力差が同じ程度になることから、換気能力が換気口の水力直径(ある流路の断面と等価な円管の直径のこと。4A/L(A:断面積、L:流体が接触する断面長)で示される。)に影響されない、つまり、各換気口での水蒸気の移動が抵抗支配よりも拡散支配が優位となっていることが示唆される。一方、換気口間の距離が開くことによって換気能力差が低下することから、上述したように、一方の開口部から他方の開口部へつながる気流が発生し、換気口内に抵抗支配のガス流が生じたためと考えられる。したがって、換気口を複数の換気口で構成する場合は、直線的に並べるよりも、距離を置かないように平面的に配置する方が望ましいことが分かる。
実施の形態6.
実施の形態2の結露防止装置においては、収納ケースにスリット形状の換気口を設けた場合について示したが、実施の形態6では、スリットについても開口面積が同じで、形状の異なる場合について比較検討した結果について示す。
図20と図21は本実施の形態6における結露防止装置の構成を示す斜視図である。換気口を設けるケース1の面の、向かって左側には4本のスリットが、向かって右側には3本のスリットが設けられている。その他の構成に関しては、実施の形態2と同様であり、相当部分には図1と同一符号を付して説明を省略する。図22は、図20と図21で示す本実施の形態6による結露防止装置での、高温・高湿環境を60℃・90%RH、低温・低湿環境を25℃・30%RHとしたときの、換気能力比率Hの時間による変化を示したグラフである。
本実施の形態6の結露防止装置は、各スリット形状は異なるが、総換気口面積を同一にしている。図20に示す結露防止装置は、幅15mmのスリットを4本、幅20mmのスリットを3本設け、各々のスリット高さhを0.01mmとしている。左側のスリット(3d、3e、3f、3g)と右側のスリット(3a、3b、3c)との間隔は、10.5mmであり、上下方向の各スリット中心の間隔(ピッチ)は、6mmである。図21の結露防止装置は、幅1.5mmのスリットを4本、幅2.0mmのスリットを3本開け、各々のスリット高さhを0.1mmとしている。左側のスリット(3k、3l、3m、3n)と右側のスリット(3h、3i、3j)との間隔は、26.45mmであり、上下方向の各スリット中心の間隔(ピッチ)は、6mmである。各々、換気口の総面積は1.2mm2となっている。
図22の中の四角印(□)のマーカーの値は、図20に示す本実施の形態6による結露防止装置の値であり、丸印(○)のマーカーの値は、図21に示す結露防止装置の値である。四角印(□)のマーカーの値と、丸印(○)のマーカーの値を比較すると、換気能力比率の時間的変化は、ほぼ同様であることが分かる。つまり、換気能力比率は換気口の面積によって決まり、スリットのスリット高さhにより変化しないことが分かる。このことは、上述した各換気口での水蒸気の移動が抵抗支配よりも拡散支配が優位となっていることを裏付けるものと考えられる。また、250秒から500秒の換気能力比率の値で、四角印(□)のマーカーの方が、丸印(○)のマーカーの値より若干大きく、換気能力差が小さくなったのは、上述した気流の発生が影響しているものと考えられる。このため、防塵の問題を考える必要のない場合には、換気口を成形の困難なスリットとする必要は特になく、換気口の総換気口面積のみ考慮し、また各換気口の距離を行いように配置すればよいことが分かる。
実施の形態7.
実施の形態3の結露防止装置においては、スリット形状の換気口、及び換気口を備える面と防塵板の隙間により、換気方向に対して能力差を生じさせることを示したが、実施の形態7では、円形の換気口を備える面と防塵板の隙間と、換気口の総換気口面積の関係について検討した。
図23は、本実施の形態7における結露防止装置の構成を示す斜視図である。実施の形態3の結露防止装置と同様に、防塵板4を備えているが、換気口2は、直径14mmの略円形状のものを設けている。その他の構成に関しては、実施の形態3と同様であり、相当部分には図12と同一符号を付して説明を省略する。
図23に示すように、防塵板4は、ケース1の略円形状の換気口2を備える面に、厚さ0.03mmの粘着材6a、6bにより貼り付けられ、ケース1と0.03mmの隙間d1を設けて配設されている。この防塵板4は、アクリルの樹脂材料から成り、板厚は約3mmで形成されている。換気口2の直径D2は、約14mmで設けられている。換気能力は、換気口の形状に影響されず、換気口の総換気口面積に関係する。防塵板4を用いた場合の換気口の有効面積は、換気口2の外周である直径14mmの周長約44mmに隙間d1の0.03mmを乗じた値の約1.32mm2と考えられる。
図24は、本実施の形態7における結露防止装置での、高温・高湿環境を60℃・90%RH、低温・低湿環境を25℃・30%RHとしたときの、換気能力比率Hの時間による変化を示したグラフである。
図24の中の四角印(□)のマーカーの値は、図23に示すように、直径14mmの換気口2を設けた面に、アクリル樹脂からなる防塵板7を、隙間0.03mmを設けて配設した場合で、換気口面積が約1.32mm2と考えられるものである。図24の中の丸印(○)のマーカーの値は、直径1.24mmの換気口2を1個設けた場合であり、換気口面積は約1.2mm2である。
四角印(□)のマーカーの値と、丸印(○)のマーカーの値を比較すると、ほぼ同等の換気口面積を有する場合の換気能力比率は、750秒を経過すると多少違いが顕れるが、500秒以内では同一となり、ほぼ同様であることが分かる。つまり、換気能力比率は換気口の面積によって決まり、防塵板4を設けた場合は、換気口2の周長に隙間量を乗じた面積が、換気口面積に該当することが分かる。これにより、防塵機能を要求される場合、形成の困難なスリット構造を採用せず、防塵板4とケース1間の隙間と、換気口の周長から、換気口の有効面積を調整して結露防止機能を持たせ、併せて防塵機能を有することができる。
実施の形態8.
実施の形態1から実施の形態7までに、換気能力は換気口面積に依存することを示してきたが、実施の形態8では、ケース1の容積が変わった場合に関して検討する。
実施の形態1の図1で示したケース1に対して、相似的に1.5倍、2倍の寸法のケース1を作製する。つまり、ケース1の基準寸法は、幅が約71mm、高さが約34mm、奥行きは約18mmであり、換気口2の直径D1は、約1.24mmである。1.5倍の場合は、幅が約106.5mm、高さが約51mm、奥行きは約27mmとなり、換気口2の直径D1は、約1.86mmとなる。2倍の場合は、幅が約142mm、高さが約68mm、奥行きは約36mmとなり、換気口2の直径D1は、約2.48mmとなる。各々のケース1で、換気口2を備える面は、真鍮の金属部材から成り、板厚は各倍率とも約4mmで形成している。また、その他の5面は、アルミニウムの金属部材から成り、板厚は各倍率とも約1.5mmで形成している。実験に用いたケース1の内容積は、基準(1倍)のものが約15300mm3となり、1.5倍のものは、約51500mm3となり、2倍のものは、約120500mm3となる。
図25は、上記3種類の大きさのケース1を、60℃70%RHの環境から25℃30%RHの環境に移した時と、25℃30%RHの環境から60℃70%RHの環境に移した時の、試験開始から250秒後の換気能力比率とケースの容積との関係を示している。図25より、換気能力比率は、ケースの容積に直線近似され、容積が大きくなるほど小さくなり、換気能力差が大きくなることが分かる。このため、相似的にケースの大きさを変える場合は、直線近似により、換気能力比率を算出することができる。
実施の形態9.
実施の形態1から実施の形態8までは、温度と湿度が異なる環境にケースを移動させた場合について検討してきたが、実施の形態9では、温度が等しく、湿度のみ異なる環境にケースを移動させた場合について検討する。
図26は、実施の形態1の図1で示したケース1の換気口2の直径を1.24mmとしたものを、60℃で、相対湿度が95%RHの環境と同じ60℃で相対湿度が20%RHの環境間で移動させた結果をまとめたものである。つまり、温度差を持たせず、水蒸気圧差のみが異なる条件で換気を行った場合である。Y軸は絶対湿度比率で、試験開始時のケース1内の絶対湿度を0%とし、環境の絶対湿度を100%とした場合の各時間でのケース1内の絶対湿度を百分率で示したものである。絶対湿度比率は温度変化を伴う場合は、ケース1を高温・高湿環境から低温・低湿環境に移動した場合と、低温・低湿環境から高温・高湿環境に移動した場合に差が生じ、その比率を換気能力比率としている。しかし、本実施の形態のように、温度差がなく、水蒸気圧差のみの場合は、各時間での絶対湿度比率に大きな差は見られず、換気能力に差が生じないことが分かる。これは、ケース1と外気との温度差がないので、ケース1の換気口2の出口付近での外気の対流がほとんどなく、ケース1から水蒸気が流出する場合でも、拡散した水蒸気が換気口2の出口付近に滞留して水蒸気の濃度勾配が小さくなり、ケース1内に水蒸気が流入する場合と同様に換気量が抑制されるためと考えられる。
また、変化が安定するまでに、約30000秒(約8時間)かかっており、温度差を伴う変化の場合の約2500秒(約40分)に比べると、非常に長時間かかっていることがわかる。このことより、水蒸気の換気能力には、温度差が重要な役割を持つことがわかる。
図27は、図1で示したケース1の換気口2の直径を1.24mmとしたもので温度差と換気能力比率の関係をまとめた図である。Y軸の換気能力比率は、実験開始から250秒後の値で、X軸は、実験開始時のケース1内の温度と、移動した環境温度の温度差を示している。温度差が小さくなるに従い、換気能力差は小さくなり(つまり換気能力比率は大きくなり)、直線近似によると温度差約1.5℃以下で、換気能力差はなくなることを示している。
以上より、拡散が支配的な換気口で換気能力差を生じるためには、移動する環境間に温度差が必要であることがわかる。しかし、温度差がない場合には、外気が過飽和の水蒸気を含むことがない限り、ケース1内部の温度は露点より高く保たれることになるので、換気能力に差がなくても結露することはない。
実施の形態10.
実施の形態1から実施の形態7までに、換気能力は換気口面積に依存することを示してきたが、実施の形態10では、ケース1の換気口面積の上限と下限に関して検討する。
以下、主に60℃と25℃の間での結果を使用して、換気口の下限と上限に関して検討する。実施の形態1から7までは、ケース1の内壁温度とケース1内部の空気の露点の関係から結露の有無を検討してきたが、ここでは、ケース内部の部品の温度についても検討する。内部結露の可能性を考えると、換気口2の面積の上限は、ケース1が低温環境から高温高湿環境に移った場合に、ケース1の温度または、内部の部品の温度が高くなる前に、内部の部品が、内部の部品の温度よりも高い露点の空気に接する場合である。図28は、図1に示したケース1において、換気口2の直径を約1.7mmにした場合の、ケース1を―5℃から35℃85%RHの環境に移動した際のケース1(筐体)温度と内部部品、ケース1内の空気温度の関係を示している。温度変化を通して、ケース1内の空気の温度に対して、ケース1の温度は常に高い温度を示し、一方、内部部品は常に低い温度を示している。ケース1内部の空気の温度が結露状態にない場合は、ケース1の内壁での結露は発生しないが、内部部品は、空気の温度に対して、最大8℃程度低くなる状態があり、内部空気の湿度が高い(露点との差が小さい)場合、結露が発生する可能性がある。
図29は、実施の形態5における試験結果(図19)を、換気口面積と実験開始から250秒後のケース内の相対湿度との関係でまとめた図である。図より、換気口面積の値が45mm2以上となると相対湿度が90%RHを上回るものがあり、内部部品がケース内部の空気温度より低くなることを考慮すると、結露の可能性があると考えられる。逆に、総換気口面積の上限を45mm2以下とすることで、筐体内部の空気の相対湿度を抑えることができるので、結露を防止することができると考えられる。
一方、ケース1が高温高湿環境から低温環境に移った場合にも、ケース1内部の水蒸気が外部に流出して露点が低下する以上に、ケース1や、内部部品の温度が下がると結露が生ずる。図30は、図1に示したケース1において、換気口2の直径を約1.7mmにした場合の、ケース1を60℃90%RHから25℃30%RHの環境に移動した際のケース1(筐体)温度と内部部品、ケース1内の空気温度の関係を示している。温度変化を通して、ケース1内の空気温度に対して、ケース1は常に低い温度を示し、内部部品は常に高い温度を示している。ケース1内部の空気温度が結露状態にない場合は、内部部品での結露は発生しないが、ケースの内壁は、内部空気温度に対して最大3℃程度低くなる状態があり、内部空気の湿度が高い(露点との差が小さい)場合、結露が発生する可能性がある。
そこで、ケース1を高温高湿環境から低温低湿環境に移動させたときの内部空気の湿度の変化について検討を行った。図31は、実験開始から2500秒(約40分)までのケース1内部の空気の温度比率(実験開始時のケース内部の空気の温度を0%とし、環境温度を100%とした場合の、各時間でのケース内部の空気の温度の比率)を示した図である。菱形印(◇)のマーカーは、換気口径が直径1.24mmの略円形で、ケースを60℃70%RHの環境から5℃30%RHの環境に移した場合、四角形印(□)のマーカーは、換気口径が直径1.24mmの略円形で、ケースを60℃40%RHの環境から25℃30%RHの環境に移した場合、三角形印(△)のマーカーは、換気口径が直径1.24mmの略円形で、ケース1を60℃70%RHの環境から25℃30%RHの環境に移した場合、円形印(○)のマーカーは、換気口径が直径7.6mmの略円形で、ケース1を60℃70%RHの環境から25℃30%RHの環境に移した場合、バツ形印(×)のマーカーは、換気口径が直径2.48mmの略円形で、ケース1が2倍の大きさで、60℃70%RHの環境から25℃30%RHの環境に移した場合である。換気口径、温度差、筐体の大きさの違いはあっても、ほぼ2500秒後にはケース1内部の湿り空気の温度比率は約100%となり、環境温度と同じ温度になることがわかる。
図32は、ケース1内部の空気の絶対湿度比率を示した図である。図中の円形印(○)と菱形印(◇)のマーカーの値は、2500秒の時点でほぼ100%であるため、環境とほぼ同様の絶対湿度となっているが、他のマーカー(三角形印(△)、四角形印(□)、×形印(×))の値は、約85%で安定化しており、内部に水蒸気が残っていることを示している。この残った水蒸気は、長時間をかけて、水蒸気圧差によりケース外部に放出されることになる。
図33は、ケース1の大きさが先に示した(実施の形態8の図25)基準寸法のもので、また、換気口の形状と配列は、略円形穴1個、略円形穴の直線状配列4個、略円形穴の平面状配列4個のものを使用して、換気口の総面積を変えた場合の、実験開始から2500秒後のケース内部の相対湿度を示した図である。なお、X軸は換気口面積を10倍した値である。X軸を対数表示として直線で近似すると、60℃70%RH環境から25℃30%RH環境に移動した場合は、換気口面積が約0.55mm2でケース内部の相対湿度が100%となり、60℃70%RH環境から5℃30%RH環境に移動した場合は、換気口面積が約0.65mm2でケース内部の相対湿度が100%となる。
外部環境が5℃の場合の方が、25℃の場合より換気能力が高いことは、上述したように温度差が大きいことから説明できる。しかし、図33で、5℃環境の方が、換気口面積が大きくないと内部結露が発生する状態となるのは、5℃環境の方が25℃環境より飽和水蒸気圧が小さいため、25℃環境より多くの水蒸気をケースの外部に放出する必要があるためと考えられる。このことより、水蒸気量が少ない場合は、換気口面積が0.55mm2より小さい値でも、ケース内部が安定した状態でも相対湿度を100%RH以下とすることができる。
以上より、ケース内部の結露を避けるためには、図1で示したケース1の大きさの場合、換気口面積が、約0.6mm2以上、45mm2以下に調整することが望ましいと考えられる。
実施の形態11.
実施の形態11では、実施の形態1で示した換気口に、ねじを螺合し、ねじの隙間を換気口として使用して防塵機能を付加する実施の形態を示す。実施の形態1と同様であり、相当部分には図1と同一符号を付して説明を省略する。
図34は、本実施の形態を示すケースの斜視図である。図34(a)は、ねじをケースに装着する前の斜視図であり、図34(b)は、ねじをケースに装着した後の状態を示す斜視図である。図において、ケース1には、実施の形態1における図1に示す換気口2の代わりにねじ穴8が設けられている。このねじ穴8にねじ9を螺合し、固定すると、図34(b)の斜視図に示す形態となる。ねじ9が2級ねじでピッチ0.5の場合、ねじ穴8とねじ9の隙間は最大で88μm、中心値で49μmとなり、ねじ山の傾斜を考慮してcos60°を乗じると、実効上、最大で44μm、中心値で24μmの隙間を生ずることになる。ケース1の内部は、このねじ9とねじ穴8との隙間を通じて外部環境と連通することになる。つまり、ねじ穴8とねじ9間の隙間が拡散が支配的となる換気口の役目を果たし、また、ねじ山による屈曲形状が防塵機能を果たすこととなる。
以上により、ケース1にねじ穴8を設け、設けたねじ穴8にねじ9を螺合、固定することで、容易にケース1の内部の結露を防止し、塵の侵入を防止する結露防止装置を形成することができる。また、ねじ9は、同様の機能を有するボルト、セットビス等を使用することが可能である。
また、本実施の形態11では、ケース1にねじ穴8を1つ設けた場合について説明したが、実施の形態1の図7や、実施の形態5の図18に示す換気口2a〜2dの代わりに、複数のねじ穴8a〜8dをケース1の面内に配置する構成をとってもよい。
以上、上述の各実施の形態では、ケース1の形状には直方体を用いたが、これに限るものではない。
実施の形態12.
実施の形態1から実施の形態11までは、光学部品等を収納・保護するケースを模した直方体のケースに換気口を設けた実施の形態を示してきたが、実施の形態12では、実際のレンズ鏡筒に応用した実施の形態を示す。
図35は、本実施の形態10における拡散抵抗が支配的となる換気口を設けたレンズ鏡筒と防塵リングの斜視図、図36は、レンズ鏡筒の断面図、図37は、防塵リングを装着したレンズ鏡筒の斜視図、図38は、レンズ鏡筒を取付けたカメラモジュールの断面図である。
レンズ鏡筒10は、図35、図36に示すように、段つきの円筒形をしたレンズ枠11に、複数のレンズ14a、14bがレンズ枠11内に収められたものである。一端には、光を取り込む絞り孔13が設けられており、絞り孔13側が被写体側で、他方が撮像素子側となる。レンズ14aは、レンズ枠11の被写体側の内面に当接され、撮像素子側から、防湿用のゴム材等で作製された防湿リング18aとレンズ間リング15aにより付勢され、位置決めされている。レンズ14bは、レンズ枠11に形成されたレンズ突き当て面11aに当接して位置決めされている。したがって、レンズ14aのへの付勢力は、位置決めされたレンズ14aとレンズ14b間に存在する防湿リング18aの弾性により維持されることになる。レンズ14bの撮像素子側には防湿リング18bを介してレンズ固定リング15bが設けられ、レンズ固定リング15bによりレンズ14bは、レンズ突き当て面11aに押し付けられている。レンズ固定リング15bは、レンズ枠11にネジ嵌合または接着等で固定されている。これにより、レンズ鏡筒10は容積約16mm3の密閉空間を形成することになる。
そして、レンズ枠11の被写体側の外周面11bには、レンズ鏡筒10内部に貫通する直径0.1mmの換気口12が、レンズ14aとレンズ14bの中間に位置するように設けられ、レンズ間リング15aにも換気口12に対応する位置に穴を設けて、換気孔12を塞がないようにしている。さらに、内径がレンズ枠11の外周面11bの外径に合わせて設定されている防塵リング17を、図37に示すように換気口12を覆うようにレンズ枠11の被写体側から軽圧入する。レンズ枠11の外周面1bの内、防塵リング17が当接される部分11cの表面は、シボ加工などにより、高さ0.004mmの細かな凹凸形状をしており、その細かな凹凸により、換気口12の有効面積は0.0013mm2に調整される。
これにより、レンズ鏡筒10内の容積約16mm3の密閉空間は、有効面積0.0013mm2の換気口により外部と連通することになる。これは、実施の形態1におけるケース1の千分の1の容積に相当する。一方、換気口2の有効面積も実施の形態1における換気口2の千分の1の面積に相当する。
また、レンズ枠11の撮像素子側の外周面11dには、雄ねじ11eが形成され、この雄ねじ11eによって、図38に示すようにカメラ−モジュール20の鏡胴部16に取付けられる。鏡胴16には、レンズ鏡筒10を取付ける円筒形の筒部16aが設けられ、その内面には、レンズ鏡筒10の雄ねじ11bに螺合する雌ねじ16bが形成されている。鏡胴16の他端には、撮像素子19bが取付けられる。撮像素子19bは、電子基板19aに電気的に接続され、固定されている。電子基板19aは、鏡胴16に接着剤19cにより固定されている。これにより、カメラモジュール20は、雄ねじ11bと雌ねじ16bの隙間を除いて約15000mm3の密閉空間を有することとなる。
レンズ鏡筒10の外径が直径13mmである場合、ねじの隙間による有効面積は、約2mm2から3mm2となる。この有効面積を1.2mm2とするためには、レンズ鏡筒10を固定するための接着剤(図示せず)をねじの隙間に一部塗布し、接着剤を塗布しない長さ(換気口として機能するねじ隙間の長さ)を16mmから25mmとすることで実現できる。これにより、実施の形態1におけるケース1と同等の容積と換気口を有することとなる。なお、電子基板19aの鏡胴16への固定は、接着剤19cに限るわけではなく、ねじ等により固定することも可能である。ただし、水蒸気の通る箇所(換気口の役割を果たす部分)が複数箇所に散在する場合には、換気能力差が得られ難い。このため、電子基板19aには、スルーホール等の穴を塞ぐコーティング等を行い、電子基板19aの鏡胴16への固定はねじ等ではなく、接着剤19cを用い、鏡胴16の電子基板19aへの当接面16c全周に塗布して接着し、電子基板19aを鏡胴16に固定するとともに、電子基板19aと鏡胴16の間の隙間を塞ぐことが望ましい。
カメラモジュール20での撮影は、絞り口13を被写体に向けることで、レンズ鏡筒10の絞り孔13から入った光が、レンズ14a、レンズ14bにより、撮像素子19bの図示しない撮像面に結像することによって行われる。このとき、レンズ鏡筒10aを回転させて鏡胴16に対するレンズ鏡筒10aの位置を光軸方向に移動させることで、撮像素子19bの撮像面に対するレンズ14a、14bの距離を変え、焦点を調整することができる。
近年、カメラは小型化され、多方面で利用されるようになってきた。中には、車載用や、屋外で用いる監視用のカメラも多数用いられている。この場合、カメラモジュール20は、温度湿度が異なる環境間を移動する機会が増える。しかし、本実施の形態12では、カメラモジュール20やレンズ鏡筒10に拡散が支配的となる換気口を設けて、他の部分を密閉するようにしたので、温度、湿度の変化する環境間を移動しても内部に結露を生ずることがない。しかも、換気口12の前面に防塵リング17を設け、防塵リング17とレンズ枠11の外周面11cとの隙間を通して換気するようにしたので、カメラモジュール20の移動によってカメラモジュール20が受ける動圧が換気口12に直接当ることがなく、抵抗が支配的となる流動を抑制して、換気能力差を生じさせ、効果的に結露を防止することができる。また、塵や埃の侵入も有効に防止することができる。
さらに、最近のカメラは小型化によってレンズ間の容積が小さくなり、換気能力差を有するための換気口を小さく作製する必要がある。しかし、本実施の形態で示す防塵リング17を採用し、防塵リング17を凹凸のあるレンズ枠11の外周面11cに当接させて隙間を調節することで、換気口の有効面積を調整できるので、微小な有効面積の換気口を容易に形成できるとともに、防塵の効果も得られる。
防湿リング18a、18bは必ずしも必要ではないが、換気口12以外に空気が流通できる個所が発生すると、その個所と換気口12の間に流れが生じて換気能力差を確保することが困難となるので、換気口12以外の部分では密閉性を確保するように調整する必要がある。
また、レンズ鏡筒10内部のレンズ間リング15aを利用して、換気口の有効面積を調整することも可能である。例えば、レンズ間リング15aの表面にシボ等により細かな凹凸を形成し、レンズ枠11の内面に当接して換気口12を内側から覆うように挿入する。この場合、レンズ枠11に設けた換気口12の周長にレンズ間リング15aの表面に設けた凹凸の高さを乗じた値が、有効面積となる。レンズ間リング15aの被写体側には、防湿リング18aがあるため、レンズ間リング15aの被写体側を通して水蒸気が出入りすることはできない。このため、レンズ間リング15aの換気口12に対応しない部分で、レンズ14aとレンズ14bの中間位置に別途穴を設けて、水蒸気の通り道を確保する必要がある。
また、レンズ間リング15aのレンズ14bに当接する面に凹凸等を設けて水蒸気の通り道を確保することも考えられる。この場合、レンズ鏡筒10が低温環境から高温高湿環境に移動した際、外部の高温高湿の湿り空気が直接レンズ14bの第一面(被写体側の面)に到達することなく内部に流入するように流路を形成することが望ましい。なお、このようにレンズ鏡筒10の内部のリングを利用して換気口12の有効面積を調整する場合には、防塵リング17を使用する必要がなくなる。換気口12の有効面積を確保する手段として、レンズ間リング15aを利用する方法を示したが、近年、レンズの樹脂化にともない、レンズ間隔をレンズに一体成形されたフランジ部で行う場合が多くなっている。このような樹脂製のレンズの場合は、上述したレンズ間リング15aに代えて、レンズに一体成形されたフランジ部の外周を、シボ等により凹凸形状とすることで同等の効果を得ることができる。
実施の形態13.
実施の形態12では、レンズ鏡筒に換気口を設けて、防塵リングを装着することで、防塵とレンズ鏡筒内部の結露を防止することを示した。本実施の形態13では、防塵リングの代わりに、レンズ鏡筒の焦点調整用のねじ部を利用する実施の形態を示す。
図39は、本実施の形態13における換気口を設けたレンズ鏡筒の斜視図で、図40は、レンズ鏡筒を装着したカメラモジュールの断面図である。
図において、レンズ鏡筒30は、レンズ枠31の外周面に図40に示すカメラモジュール40の鏡胴36に装着する際に螺合するための雄ねじ31aを有し、側面に換気口32を有している。そして、図40に示すように内部にレンズ24aと24bが装着され、換気口32は、装着されたレンズ34a、34bの間の位置に貫通するように設けられている。他の部分について、実施の形態12と同様であるため、図示と説明は省略する。換気口32は、換気口32から流入する水蒸気が直接レンズ34aの第二面(撮像素子側)またはレンズ34bの第一面(被写体側)に当らないよう、両レンズの中間部分に設けられている。
レンズ34aと34bは、撮像素子39bの図示しない撮像面に被写体の画像を結像し、撮像素子39bはそれを電気信号に変換する。電子基板39aは、撮像素子39aと半田付け等で電気的に接合され、撮像素子39aは、電子基板39aに固定されている。電子基板39aは接着剤39cで鏡胴36に固定されている。電子基板39aの鏡胴36への固定は、特に接着剤39cに限定するわけではなく、ねじ等で固定することも可能である。鏡胴36は、レンズ鏡筒30を装着する筒部36aを有し、筒部36aの内面側には、レンズ枠31の外周に設けられた雄ねじ31aに対応する雌ねじ36bが形成されている。
レンズ鏡筒30は、鏡胴36の雌ねじ36bに螺合され、撮像素子29bとレンズ鏡筒30の距離を調整することにより、焦点を調整することができる。このとき、レンズ鏡筒30に設けられた換気口32は、鏡胴36の雌ねじ36bに覆われ、レンズ鏡筒30の密閉空間は、このねじ嵌合の隙間によって有効面積が調整された換気口32を通して、外気と連通することになる。
また、電子基板39aには、スルーホール等の穴を塞ぐコーティング等を行い、接着剤39cを用い、鏡胴36の電子基板39への当接面36c全周に塗布して接着し、電子基板39aを鏡胴36に固定して、密閉性を確保している。
そのため、カメラモジュール40内の撮像素子が設けられている空間も、雄ねじ31aと雌ねじ36bで規定される隙間によって外部と連通することになる。そして、実施の形態12で記載したように、雄ねじ31aと雌ねじ36bで規定される換気口の有効面積は、図41に示すように、レンズ鏡筒30と鏡胴36の筒部36aの上端面(被写体側の面)の隙間箇所にレンズ鏡筒30の固定用の接着剤50を塗布して固定し、その際、一部に塗布しない部分36dを設け、36dの周長によって調整することが可能となる。
これにより、カメラモジュール40は、拡散が支配的で、かつ有効面積を調整された換気口によって外部とつながることになり、温度、湿度の異なる環境間を移動しても、内部の結露を有効に防止し、併せて防塵効果も得ることができる。
1 ケース、 2、2a、2b、2c、2d、3a、3b、3c、5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5n、12、32 換気口、 7 防塵板、 8 雌ねじ、 9 雄ねじ、 10、30 レンズ鏡筒、 20、40 カメラモジュール、 11、31 レンズ枠、 36 鏡胴、 17 防塵リング、 19b、39b 撮像素子、