JP2007193047A - トナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 マスターバッチを用いることなく、着色剤および内添剤の分散性を向上させ、一定の性能を有するトナーを安定して製造することのできるトナーの製造方法を提供する。
【解決手段】 ステップs2において、ステップs1で作製した複合粒子たとえばワックス粒子が着色剤粒子で被覆された複合粒子と結着樹脂とを含有するトナー材料を、結着樹脂を溶融または軟化させた状態で混練することによって混練物を生成する。ステップs4において、ステップs3で作製した水性媒体中に、ステップs2で得られた混練物を溶融または軟化させた状態で分散させることによってトナー粒子を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子写真法による画像形成過程における静電潜像の現像などに用いられるトナーの製造方法に関する。
電子写真法では、たとえば電子写真感光体などの像担持体を帯電させた後露光することによって静電潜像を形成し、形成された静電潜像を、トナーを含有する現像剤で現像してトナー像を形成し、得られたトナー像を紙などの記録媒体に転写して定着させることによって画像が形成される。トナーは、摩擦帯電によって帯電され、現像ローラなどの現像剤担持体によって搬送され、現像剤担持体と像担持体との電位差を利用して像担持体の表面に供給される。
トナーを構成する各トナー粒子は、結着樹脂と呼ばれる結着性を有する樹脂、着色剤、ならびに離型剤および帯電制御剤などの内添剤を含有する。着色剤および内添剤は結着樹脂中に分散される。トナー粒子中における着色剤および内添剤の分散性は、トナーの性能を左右する。たとえば着色剤の分散性が低いと、分散性が高い場合に比べてトナーの着色力が低下するので、同じ画像濃度を有する画像を形成するのに要するトナーの量が増加し、トナーの消費量が増加するという問題が生じる。またカラートナーの場合、発色域が狭くなり、一定の色の画像を安定して形成することができないという問題も生じる。また帯電制御剤の分散性が低いと、分散性が高い場合に比べてトナーの帯電量の分布の幅が広がるので、トナーが不所望に飛散し、画像にかぶりが生じることがある。したがって、トナー粒子中における着色剤および内添剤の分散性の向上が求められる。
トナーの製造方法としては、たとえば、結着樹脂、着色剤および内添剤を含有するトナー材料を混練して結着樹脂中に着色剤および内添剤を分散させた後、得られた混練物を固化させた状態で粉砕して粒子化することによってトナーを製造する、いわゆる粉砕法がある。粉砕法において着色剤の分散性を向上させるための技術としては、着色剤を結着樹脂の一部と予め混練してマスターバッチを作製し、得られたマスターバッチを残余の結着樹脂および内添剤と混練することによって混練物を作製する方法がある。着色剤以外のトナー材料についてもマスターバッチを作製することによって着色剤同様、結着樹脂中における分散性を向上させることは可能であるけれども、マスターバッチの作製には時間を要し、また煩雑な操作が必要である。したがって、マスターバッチを作製する工程を設けると、マスターバッチ作製工程を設けない場合に比べて生産性が低くなり、製造原価の上昇を招く。
マスターバッチを作製することなく、着色剤および内添剤の分散性を向上させるための先行技術としては、たとえば、離型剤であるワックス粒子の分散性を向上させるための技術として、ワックス粒子を有機粒子もしくは無機粒子またはこれらの混合粒子で被覆する技術がある(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示の技術では、着色剤粒子で被覆されたワックス粒子(以後、「着色剤被覆ワックス粒子」と称する)を用い、懸濁重合法、凝集法または粉砕法によってトナーを製造している。たとえば懸濁重合法の場合、着色剤被覆ワックス粒子を結着樹脂のモノマーの分散液(以後、「モノマー分散液」と称する)中に分散させた後、モノマーを重合させることによってトナー粒子が製造される。また凝集法の場合、着色剤被覆ワックス粒子と結着樹脂粒子とを水中で凝集させて融着させることによってトナー粒子が製造される。また粉砕法の場合、着色剤被覆ワックス粒子を結着樹脂と混練して結着樹脂中に分散させた後、得られた混練物を固化させた状態で粉砕して粒子化することによってトナー粒子が製造される。
特開2004−361509(第6−7頁)
特許文献1に開示の技術において懸濁重合法または凝集法を用いてトナーを製造する場合、着色剤被覆ワックス粒子は、モノマー分散液または水とともに撹拌されることによってモノマー分散液または水中に分散される。着色剤被覆ワックス粒子はモノマー分散液または水中において露出した状態にあるので、撹拌によって生じる力が着色剤被覆ワックス粒子に直接加わりやすく、この力によってワックス粒子と着色剤粒子との解離が生じやすい。着色剤被覆ワックス粒子を分散させるとき、モノマー分散液または水中は着色剤被覆ワックス粒子および生成するトナー粒子が分散可能な状態に設定されており、ワックス粒子および着色剤粒子が別々に分散可能な状態にはなっていない。したがって、着色剤被覆ワックス粒子の解離が生じると、解離したワックス粒子および着色剤粒子は、モノマー分散液または水中で沈殿するので、生成される結着樹脂中またはトナー粒子中に含有されないことになる。これによって、トナー粒子中におけるワックス粒子および着色剤粒子の含有率が、着色剤被覆ワックス粒子の解離が生じない場合に比べて低くなるので、一定の性能を有するトナーを安定して得ることができない。たとえば着色剤粒子の含有率が低下すると、トナーの着色力が低下するので、同一の画像濃度の画像を形成するために必要なトナーの量が増加し、トナーの消費量が増加するという問題が生じる。
また粉砕法では、混練物を固化した状態で粉砕するので、結着樹脂と結着樹脂に分散される着色剤粒子などの各トナー材料(以後、被分散粒子とも称する)との界面で混練物が破断されやすく、破断面で露出した各被分散粒子が混練物から脱離しやすいという問題がある。各被分散粒子の脱離が生じると、一定の性能を有するトナーを安定して得ることができないという問題が生じる。
たとえば、粉砕法においてワックス粒子の脱離が生じると、トナー中に脱離したワックス粒子が含有されることになるので、脱離したワックス粒子が像担持体にフィルム状に融着するフィルミングと呼ばれる現象が発生し、画像を安定して形成することができなくなる。また混練物からのワックス粒子の脱離が生じない場合に比べて、トナーを構成する各トナー粒子中におけるワックス粒子の含有率が低下するので、高温オフセット現象が発生し始める温度(以後、高温オフセット開始温度とも称する)が低下する。ここで、高温オフセット現象とは、加熱ローラなどの定着部材で加熱および加圧してトナーを記録媒体に定着させるときに、トナーが過熱されて、トナー粒子の凝集力がトナーと定着部材との接着力を下回ってトナー層が分断され、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象のことである。
また粉砕法において帯電制御剤の脱離が生じると、トナー粒子中における帯電制御剤の含有率が一定にならず、帯電制御剤の脱離が生じない場合に比べてトナーの帯電量の分布の幅が広がるので、現像に使用されずに収容容器中に残留するトナーが生じやすくなる。収容容器内に残留するトナーが生じると、現像ローラなどの現像剤担持体へのトナーの融着が発生しやすくなる。現像剤担持体にトナーが融着すると、現像剤担持体による現像剤の搬送量が一定にならないので、像担持体にトナーを安定して供給することができず、一定の品質の画像を安定して形成することができない。また現像ができず、画像を形成することができなくなる場合もある。
本発明の目的は、マスターバッチを用いることなく、着色剤および内添剤の分散性を向上させ、一定の性能を有するトナーを安定して製造することのできるトナーの製造方法を提供することである。
本発明は、少なくとも、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子および結着樹脂を含有するトナー材料を、前記結着樹脂を溶融または軟化させた状態で混練することによって混練物を生成する混練工程と、
水を含有する水性媒体中に前記混練工程で得られた混練物を溶融または軟化させた状態で分散させることによってトナー粒子を得る造粒工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法である。
また本発明は、複合粒子は、内添剤粒子が着色剤粒子で被覆される着色剤被覆内添剤粒子を含むことを特徴とする。
また本発明は、内添剤粒子が離型剤粒子であることを特徴とする。
また本発明は、複合粒子は、着色剤粒子が内添剤粒子で被覆される内添剤被覆着色剤粒子を含むことを特徴とする。
また本発明は、内添剤粒子が流動性向上剤粒子であることを特徴とする。
また本発明は、混練工程における前記結着樹脂の温度(T1℃)は、
前記結着樹脂の軟化温度(Tm℃)以上、前記結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃高い第1温度(Tm+15℃)以下であることを特徴とする。
本発明によれば、混練工程において、少なくとも、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子および結着樹脂を含有するトナー材料を、結着樹脂を溶融または軟化させた状態で混練することによって、結着樹脂中に複合粒子が分散された混練物が得られる。複合粒子を構成する各粒子のうち、少なくとも相対的に凝集力の強い粒子は、複合粒子を形成することによって、複合粒子を形成しない場合に比べて凝集力が低下するので、混練物中における分散性が向上する。トナー材料は少なくとも、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子を含有するので、少なくとも着色剤粒子の混練物中における分散性を向上させることができる。またトナー材料が2種以上の内添剤粒子が複合した複合粒子を含有する場合には、複合粒子を構成する内添剤粒子の混練物中における分散性も向上させることができる。このように複合粒子を用いることによって、着色剤粒子または内添剤粒子が結着樹脂の一部に分散されたマスターバッチを用いることなく、着色剤粒子または内添剤粒子の混練物中における分散性を向上させることができる。これによって、マスターバッチを作製するマスターバッチ作製工程を省くことができるので、マスターバッチ作製工程を設ける場合に比べて製造工程を簡略化することができ、また製造原価を低減することができる。
また混練工程で得られた混練物は、造粒工程において溶融または軟化した状態で水性媒体中に分散されることによって粒子化され、トナー粒子となる。このように混練物を溶融または軟化させた状態で水性媒体中に分散させることによって粒子化するので、粉砕法のように混練物を固化した状態で粉砕することによって粒子化する場合に比べて、混練物を粒子化するときに結着樹脂と複合粒子との界面で混練物が破断される確率を小さくすることができる。これによって、複合粒子を用いて粉砕法によってトナーを製造する場合に比べて、混練物からの複合粒子の脱離をより確実に防ぐことができるので、複合粒子を構成する着色剤粒子および内添剤粒子の混練物からの脱離量を低減することができる。
また造粒工程では、複合粒子自体ではなく、複合粒子が結着樹脂に分散された混練物を水性媒体中に分散させるので、分散させるために与えられる力たとえば剪断力を、結着樹脂を介して複合粒子に与えることができる。これによって、複合粒子自体を水性媒体などの媒体中に分散させる場合に比べて、分散させるために与えられる力が複合粒子に直接加わる確率を小さくすることができるので、複合粒子の解離をより確実に防ぐことができる。また造粒工程において複合粒子は結着樹脂中に分散されているので、複合粒子が解離した場合であっても、解離した各粒子の間に結着樹脂を介在させ、解離した粒子の凝集を抑制することができる。これによって、複合粒子を構成する各粒子の分散性の低下を抑えることができる。このように造粒工程では、粉砕法に比べて混練物からの複合粒子の脱離をより確実に防ぐとともに、混練物中の複合粒子を構成する各粒子の分散性の低下を抑えることができる。したがって、マスターバッチを用いることなく、着色剤粒子および内添剤粒子の分散性を向上させ、一定の性能を有するトナーを安定して製造することができる。
ここで、「内添剤」とは、混練工程において結着樹脂および着色剤とともに混練され、造粒工程で造粒されるトナー粒子に含有される添加剤のことであり、造粒工程で造粒された後にトナー粒子に添加される添加剤は「外添剤」と称する。また「トナー粒子」とは、外添剤が添加されたトナー粒子を含む。また「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことである。
また本発明によれば、複合粒子として、内添剤粒子が着色剤粒子で被覆される着色剤被覆内添剤粒子が用いられるので、着色剤粒子自体を結着樹脂中に分散させて混練物を作製する場合に比べて、着色剤粒子の凝集力を低下させ、混練物中における分散性を向上させることができる。このように、着色剤粒子が結着樹脂の一部に分散された着色剤マスターバッチを用いなくとも、着色剤粒子の混練物中における分散性を向上させることができるので、着色剤マスターバッチを作製する工程を省き、製造工程を簡略化することができる。また粉砕法のように混練物を固化した状態で粉砕して粒子化する場合に比べて、結着樹脂と着色剤粒子との界面で混練物が破断される確率を小さくすることができるので、着色剤粒子の混練物からの脱離をより確実に防止することができる。したがって、一定の着色力を有するトナーを安定して製造することができる。また一定の発色域を有するカラートナーを安定して製造することができる。
また本発明によれば、着色剤被覆内添剤粒子において、着色剤粒子で被覆される内添剤粒子は離型剤粒子である。離型剤粒子は着色剤粒子に比べて凝集力が弱く、分散されやすいので、着色剤粒子を離型剤粒子に被覆させて着色剤被覆内添剤粒子として用いることによって、混練物中における着色剤粒子の分散性をより確実に向上させることができる。また着色剤粒子で被覆される内添剤粒子として離型剤粒子を用いたとしても、粉砕法のように混練物を固化した状態で粉砕して粒子化する場合に比べて、離型剤粒子の混練物からの脱離をより確実に防止することができるので、脱離した離型剤粒子による像担持体へのフィルミングの発生を抑えることができる。
また本発明によれば、複合粒子として、着色剤粒子が内添剤粒子で被覆される内添剤被覆着色剤粒子が用いられるので、着色剤粒子自体を結着樹脂中に分散させて混練物を作製する場合に比べて、着色剤粒子の凝集力を低下させ、混練物中における分散性を向上させることができる。このように、着色剤粒子が結着樹脂の一部に分散された着色剤マスターバッチを用いなくとも、着色剤粒子の混練物中における分散性を向上させることができるので、着色剤マスターバッチを作製する工程を省き、製造工程を簡略化することができる。また粉砕法のように混練物を固化した状態で粉砕して粒子化する場合に比べて、結着樹脂と着色剤粒子との界面で混練物が破断される確率を小さくすることができるので、着色剤粒子の混練物からの脱離をより確実に防止することができる。したがって、一定の着色力を有するトナーを安定して製造することができる。また一定の発色域を有するカラートナーを安定して製造することができる。
また本発明によれば、内添剤被覆着色剤粒子において着色剤粒子を被覆する内添剤粒子は流動性向上剤粒子であるので、より確実に、着色剤粒子の凝集力を低下させ、混練物中における分散性を向上させることができる。
また本発明によれば、混練工程における結着樹脂の温度(以後、「混練温度」とも称する)(T1℃)は、結着樹脂の軟化温度(Tm℃)以上、結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃高い第1温度(Tm+15℃)以下である。混練温度T1が結着樹脂の軟化温度(Tm℃)未満であると、混練温度(T1℃)が結着樹脂の軟化温度(Tm℃)以上である場合に比べて、結着樹脂が溶融または軟化しにくくなり、結着樹脂中に複合粒子を分散させることが困難になるので、混練物中における複合粒子の分散性、ひいては複合粒子を構成する各粒子の分散性が低下するおそれがある。また混練温度T1が第1温度(Tm+15℃)を超えると、混練温度T1が第1温度(Tm+15℃)以下である場合に比べて、せん断がかからず分散不良となるおそれがある。これに対し、前述のように混練温度T1を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)以上、第1温度(Tm+15℃)以下にすることによって、結着樹脂を複合粒子が容易に分散可能な程度に溶融または軟化させることができるので、結着樹脂中に複合粒子を容易に分散させることができる。これによって、複合粒子を構成する各粒子の混練物中における分散性をより確実に向上させることができる。
図1は、本発明の実施の一形態であるトナーの製造方法の手順を示すフローチャートである。本発明のトナーの製造方法は、少なくとも混練工程と造粒工程とを含む。本実施形態では、さらに複合粒子作製工程と水性媒体調製工程と冷却工程と分離工程と洗浄工程と乾燥工程と外添処理工程とが含まれる。すなわち本実施形態のトナーの製造方法は、複合粒子作製工程(ステップs1)と、混練工程(ステップs2)と、水性媒体調製工程(ステップs3)と、造粒工程(ステップs4)と、冷却工程(ステップs5)と、分離工程(ステップs6)と、洗浄工程(ステップs7)と、乾燥工程(ステップs8)と、外添処理工程(ステップs9)とを含む。
本実施形態によるトナーの製造は、ステップs0で開始され、ステップs1またはステップs3に進む。ステップs0からステップs1に進んだ場合、ステップs1の複合粒子作製工程およびステップs2の混練工程を順次行なった後、ステップs3の水性媒体調製工程を行ない、ステップs4に進む。ステップs0からステップs3に進んだ場合、ステップs3の水性媒体調製工程を行なった後、ステップs1の複合粒子作製工程およびステップs2の混練工程を順次行ない、ステップs4に進む。ステップs7の洗浄工程は、ステップs5の冷却工程の後であってステップs6の分離工程の前に行なわれてもよい。
[複合粒子作製工程]
ステップs1の複合粒子作製工程では、ステップs2の混練工程で用いられる複合粒子を作製する。複合粒子としては、少なくとも、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子が用いられる。着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子に加えて、2種以上の内添剤粒子が複合した複合粒子(以後、複合内添剤粒子とも称する)が用いられてもよい。
(a)着色剤粒子
着色剤としては、染料および顔料が挙げられる。その中でも、顔料を用いることが好ましい。顔料は染料に比べて耐光性および発色性に優れるので、顔料を用いることによって耐光性および発色性に優れるトナーを得ることができる。顔料としては、有機顔料および無機顔料のいずれを用いてもよく、有機顔料および無機顔料の混合物を用いてもよい。着色剤の具体例としては、以下の各色の着色剤が挙げられる。以下では、カラーインデックス(Color Index)を「C.I.」と略記する。
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、活性炭、マグネタイトなどの磁性フェライトおよび非磁性フェライトなどの無機顔料、ならびにアニリンブラックなどの有機顔料が挙げられる。
黄色の着色剤としては、たとえば、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180およびC.I.ピグメントイエロー185などの有機顔料が挙げられる。
橙色の着色剤としては、たとえば、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31およびC.I.ピグメントオレンジ43などの有機顔料が挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド150およびC.I.ピグメントレッド184などの有機顔料が挙げられる。
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫などの無機顔料、ならびにファストバイオレットBおよびメチルバイオレットレーキなどの有機顔料が挙げられる。
青色の着色剤としては、たとえば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16およびC.I.ピグメントブルー60などの有機顔料が挙げられる。
緑色の着色剤としては、たとえば、マイカライトグリーンレーキなどの無機顔料、ならびにピグメントグリーンB、ファイナルイエローグリーンGおよびC.I.ピグメントグリーン7などの有機顔料が挙げられる。
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白および硫化亜鉛などの無機顔料が挙げられる。
着色剤は、1種が単独で使用されてもよく、また色の異なる2種以上が併用されてもよい。また同色系の複数の着色剤を併用することもできる。
(b)内添剤粒子
内添剤としては、たとえば、離型剤、帯電制御剤および流動性向上剤が挙げられる。
離型剤をトナーに内添させることによって、トナーを記録媒体に定着させるときにトナーに離型性を付与することができるので、離型剤を内添させない場合に比べて、高温オフセット現象が発生し始める温度である高温オフセット開始温度を高め、耐高温オフセット性を向上させることができる。またトナーを定着させるときの加熱によって離型剤を溶融させ、トナーの溶融粘度を低下させることができるので、低温オフセット現象が発生し始める温度である低温オフセット開始温度を低下させ、耐低温オフセット性を向上させることができる。このように離型剤をトナーに内添させることによって、離型剤を内添させない場合に比べて、耐高温オフセット性および耐低温オフセット性(以後、耐オフセット性と総称することがある。)を向上させることができる。したがって、高温オフセット現象および低温オフセット現象(以後、オフセット現象と総称することがある。)を発生させることなく定着させることのできる加熱温度の範囲、すなわち定着可能温度範囲を広くすることができる。ここで、低温オフセット現象とは、加熱ローラなどの定着部材で加熱および加圧してトナーを記録媒体に定着させるときに、トナーが充分に溶融または軟化されず、トナーと記録媒体との接着力が、トナーと定着部材との接着力を下回り、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象のことである。
離型剤の融点は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。融点が50℃以上100℃以下である離型剤を用いることによって、融点が100℃を超える離型剤を用いる場合に比べて、定着性をより確実に向上させることができる。また融点が50℃未満である離型剤を用いる場合に比べて、保存安定性に優れるトナーを得ることができる。離型剤の融点が100℃を超えると、トナーを記録媒体に定着するときに離型剤が充分に溶出することができず、定着性の向上効果が充分に発揮されないおそれがある。また定着温度において離型剤が溶融することができず、耐低温オフセット性の向上効果が発揮されないおそれがある。離型剤の融点が50℃未満であると、現像装置内において離型剤が溶融してトナー粒子同士が凝集しやすくなり、トナーの保存安定性が低下するおそれがある。ここで、離型剤の融点とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:略称DSC)によって得られるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度のことである。
離型剤としては、たとえばワックスを使用する。ここで、ワックスとは、ワックス状の性質を有する化合物を含む。ワックスとしては、たとえば、カルナバワックスおよびライスワックスなどの天然ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックスおよびフィッシャートロプッシュワックスなどの合成ワックス、モンタンワックスなどの石炭系ワックス、パラフィンワックスなどの石油系ワックス、アルコールワックス、エステルワックスなどが挙げられる。
前述のワックスでも、エステルワックスを用いることが好ましい。エステルワックスを用いることによって、他のワックスを用いる場合に比べて、後述する混練工程で得られる混練物中におけるワックスの分散性を向上させることができる。特に結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、ワックスとしてはエステルワックスを用いることが好ましい。エステルワックスはポリエステル樹脂との相溶性に優れるので、エステルワックスを用いることによって、混練物中におけるワックスの分散性を一層向上させることができる。ここで、エステルワックスとは、脂肪酸とアルコールとのエステル化合物のことである。
エステルワックスとしては、たとえば日本油脂株式会社製のWEP−2、WEP−3、WEP−4、WEP−5、WEP−6およびWEP−8(以上、いずれも商品名)などが挙げられ、これらの中でもWEP−5およびWEP−8が好ましい。これらのエステルワックスの融点(℃)、酸価および水酸基価を表1に示す。
Figure 2007193047
離型剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
帯電制御剤は、トナーの帯電特性を制御することを目的としてトナーに内添される。帯電制御剤としては、たとえば、カリックスアレン類、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、有機金属錯体、キレート化合物、サリチル酸亜鉛などのサリチル酸の金属塩、およびスルホン酸基またはアミノ基などのイオン性基を有するモノマーを単独重合または共重合させた重合体などが挙げられる。帯電制御剤は、1種が単独で用いられてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
流動性向上剤は、トナーの粉体流動性を向上させることを目的として添加される。流動性向上剤は粒子として用いられる。流動性向上剤粒子としては、たとえば、コロイダルシリカなどのシリカおよび酸化チタンなどの金属酸化物粒子、ならびにシランカップリング剤などの表面改質剤によって疎水化処理などの表面改質処理が施された金属酸化物粒子などが挙げられる。金属酸化物粒子または表面改質処理が施された金属酸化物粒子を流動性向上剤として用いることによって、トナーの帯電性能を制御することもできる。流動性向上剤粒子の体積平均粒径は、たとえば0.01μm以上0.5μm以下である。流動性向上剤粒子の体積平均粒径は前記範囲に限定されるものではない。
以上に述べた着色剤粒子と内添剤粒子とを複合させ、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子として用いることによって、複合粒子として用いない場合に比べて、少なくとも着色剤粒子の凝集力を低下させ、後述する混練工程で得られる混練物中における分散性を向上させることができる。また2種以上の内添剤粒子を複合させて複合内添剤粒子として用いることによって、複合粒子を構成する各内添剤粒子の凝集力を低下させ、混練物中における分散性を向上させることができる。
着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子としては、たとえば、内添剤粒子が着色剤粒子で被覆される着色剤被覆内添剤粒子、および着色剤粒子が内添剤粒子で被覆される内添剤被覆着色剤粒子が挙げられる。2種以上の内添剤粒子が複合した複合粒子、すなわち複合内添剤粒子としては、たとえば、1種の内添剤粒子が他の種類の内添剤粒子で被覆される複合粒子が挙げられる。複合粒子を構成する各粒子は、他の粒子の表面に付着していてもよく、他の粒子の表面に一部分または全部が埋め込まれていてもよい。以下、着色剤粒子または他の内添剤粒子で被覆される内添剤粒子を「核内添剤粒子」と称し、着色剤粒子または他の内添剤粒子を被覆する内添剤粒子を「外殻内添剤粒子」と称する。
図2は、着色剤被覆内添剤粒子1の構成を模式的に示す断面図である。図2に示す着色剤被覆内添剤粒子1は、核内添剤粒子11と、核内添剤粒子11の表面を被覆する着色剤粒子12とを含む。図2では、理解を容易にするために、核内添剤粒子11を左下がりの太線のハッチングが施された円で表し、着色剤粒子12をハッチングが施されていない白抜きの円で表す。
着色剤被覆内添剤粒子1において着色剤粒子12は、1次粒子の状態で核内添剤粒子11の表面を被覆している。より詳細には、着色剤粒子12は核内添剤粒子11の表面に1次粒子として付着している。着色剤粒子12によって核内添剤粒子11の表面を被覆させ、着色剤被覆内添剤粒子1として着色剤粒子12を用いることによって、着色剤粒子12の1次凝集力を低下させることができるので、後述する混練工程で得られる混練物中における着色剤粒子12の分散性を向上させることができる。また混練工程において、核内添剤粒子11が可及的に均一に分散されるように混練の条件、たとえば混練温度およびスクリュを備える混練機を用いる場合のスクリュの外径寸法Dに対する回転軸線方向の長さ寸法Lの比(L/D)などを適宜選択することによって、着色剤粒子12の分散性をより確実に向上させることができる。
核内添剤粒子11には、着色剤粒子12よりも結着樹脂への分散性に優れる内添剤粒子が用いられる。これによって、着色剤粒子12をより均一に分散させることができる。核内添剤粒子11としては、離型剤粒子を用いることが好ましい。離型剤粒子は、着色剤粒子12に比べて結着樹脂への分散性に優れ、また帯電制御剤などの他の内添剤に比べても結着樹脂への分散性に優れる。したがって、離型剤粒子を核内添剤粒子11として用いることによって、離型剤粒子以外の粒子を核内添剤粒子11として用いる場合に比べて、混練物中における着色剤粒子12の分散性を向上させることができる。
着色剤被覆内添剤粒子1において、核内添剤粒子11の体積平均粒径R2に対する着色剤粒子12の体積平均粒径R1の比(R1/R2)は、0.005以上0.05以下であることが好ましい。核内添剤粒子11の体積平均粒径R2に対する着色剤粒子12の体積平均粒径R1の比(R1/R2)が0.005未満であると、核内添剤粒子11が着色剤粒子12で被覆され過ぎてしまい、着色剤被覆内添剤粒子1の分散性が低下するおそれがある。核内添剤粒子11の体積平均粒径R2に対する着色剤粒子12の体積平均粒径R1の比(R1/R2)が0.05を超えると、混練した段階で着色剤粒子12による被覆が取れてしまうおそれがあり、好ましくない。
着色剤被覆内添剤粒子1において、核内添剤粒子11の表面は、全体にわたって着色剤粒子12によって被覆されている必要はなく、着色剤粒子12によって部分的に被覆されていてもよい。また着色剤被覆内添剤粒子は、図2に示す着色剤被覆内添剤粒子1のように核内添剤粒子11の表面に着色剤粒子12が付着している構成に限定されず、たとえば核内添剤粒子11の表面に着色剤粒子12の一部分または全部が埋め込まれていてもよい。
図3は、内添剤被覆着色剤粒子2の構成を模式的に示す断面図である。図3に示す内添剤被覆着色剤粒子2は、着色剤粒子12と、着色剤粒子12の表面を被覆する外殻内添剤粒子13とを含む。図3では、理解を容易にするために、着色剤粒子12を右下がりの太線のハッチングが施された円で表し、外殻内添剤粒子13をハッチングが施されていない白抜きの円で表す。
内添剤被覆着色剤粒子2において着色剤粒子12は1次粒子の状態で存在し、着色剤粒子12の表面は外殻内添剤粒子13によって被覆されている。より詳細には、外殻内添剤粒子13は、着色剤粒子12の表面に付着している。着色剤粒子12の表面を外殻内添剤粒子13によって被覆し、内添剤被覆着色剤粒子2として着色剤粒子12を用いることによって、前述の着色剤被覆内添剤粒子1として用いる場合と同様に、着色剤粒子12の1次凝集力を低下させることができるので、後述する混練工程で得られる混練物中における着色剤粒子12の分散性を向上させることができる。
外殻内添剤粒子13には、たとえば、流動性向上剤粒子、具体的には金属酸化物粒子、表面改質処理が施された金属酸化物粒子またはこれらの混合物が用いられる。流動性向上剤粒子は、後述する着色剤粒子12の体積平均粒径R1に対する外殻内添剤粒子13の体積平均粒径R3の比(R3/R1)の好適な範囲である0.005以上0.05以下を満足する。したがって、外殻内添剤粒子13として流動性向上剤粒子を用いることによって、着色剤粒子12の1次凝集力をより確実に低下させることができるので、着色剤粒子12をより均一に混練物中に分散させることができる。
内添剤被覆着色剤粒子2において、着色剤粒子12の体積平均粒径R1に対する外殻内添剤粒子13の体積平均粒径R3の比(R3/R1)は、0.005以上0.05以下であることが好ましい。着色剤粒子12の体積平均粒径R1に対する外殻内添剤粒子13の体積平均粒径R3の比(R3/R1)が0.005未満であると、着色剤粒子12が被覆され過ぎてしまい、内添剤被覆着色剤粒子2の分散性が低下するおそれがある。着色剤粒子12の体積平均粒径R1に対する外殻内添剤粒子13の体積平均粒径R3の比(R3/R1)が0.05を超えると、混練した段階で外殻内添剤粒子13による被覆が取れてしまうおそれがあり、好ましくない。
内添剤被覆着色剤粒子2において、着色剤粒子12の表面は、全体にわたって外殻内添剤粒子13によって被覆されている必要はなく、外殻内添剤粒子13によって部分的に被覆されていてもよい。また内添剤被覆着色剤粒子は、図3に示す内添剤被覆着色剤粒子2のように着色剤粒子12の表面に外殻内添剤粒子13が付着している構成に限定されず、たとえば着色剤粒子12の表面に外殻内添剤粒子13の一部分または全部が埋め込まれていてもよい。また外殻内添剤粒子13としては、流動性向上剤以外の粒子、たとえば帯電制御剤粒子などを用いてもよい。
図4は、複合内添剤粒子3の構成を模式的に示す断面図である。図4に示す複合内添剤粒子3は、核内添剤粒子11と、核内添剤粒子11の表面を被覆する外殻内添剤粒子13とを含む。本実施形態では外殻内添剤粒子13は、1次粒子の状態で核内添剤粒子11の表面を被覆している。より詳細には外殻内添剤粒子13は、核内添剤粒子11の表面に付着している。図4では、理解を容易にするために、核内添剤粒子11を左下がりの太線のハッチングが施された円で表し、外殻内添剤粒子13をハッチングが施されていない白抜きの円で表す。
2種以上の内添剤粒子を用いる場合に複合内添剤粒子3として用いることによって、相対的に分散性に劣る内添剤粒子の凝集力を低下させることができるので、その内添剤粒子の分散性を別々に用いる場合に比べて向上させることができる。核内添剤粒子11には、外殻内添剤粒子13よりも結着樹脂への分散性に優れる内添剤粒子が用いられる。これによって、着色剤被覆内添剤粒子1の場合と同様に、核内添剤粒子11を被覆する外殻内添剤粒子13の凝集力をより確実に低下させることができるので、混練物中における外殻内添剤粒子13の分散性を一層確実に向上させることができる。また核内添剤粒子11が可及的に均一に分散されるように、後述する混練工程における混練の条件を選択することによって、外殻内添剤粒子13の分散性を一層確実に向上させることができる。
複合内添剤粒子3としては、核内添剤粒子11が離型剤粒子である被覆離型剤粒子が挙げられる。離型剤粒子は前述のように帯電制御剤粒子などの他の内添剤粒子に比べて結着樹脂への分散性に優れるので、核内添剤粒子11として離型剤粒子を用いることによって、離型剤粒子以外の粒子を核内添剤粒子11として用いる場合に比べて、混練物中における外殻内添剤粒子13の分散性を向上させることができる。
外殻内添剤粒子13としては、たとえば帯電制御剤粒子が用いられる。帯電制御剤粒子によって核内添剤粒子11の表面を被覆させ、複合内添剤粒子3として帯電制御剤粒子を用いることによって、帯電制御剤粒子の凝集力を低下させることができるので、帯電制御剤粒子単独で用いる場合に比べて、混練物中における帯電制御剤粒子の分散性を向上させることができる。特に核内添剤粒子11が離型剤粒子である場合、離型剤粒子以外の粒子を核内添剤粒子11として用いる場合に比べて、混練物中における帯電制御剤粒子の分散性をより確実に向上させることができる。
以上に述べた図2〜4は、複合粒子である着色剤被覆内添剤粒子1、内添剤被覆着色剤粒子2および複合内添剤粒子3の構成の一例を示すものであり、複合粒子の構成はこれに限定されるものではない。また図2〜4では、複合粒子を構成する各粒子が球形状であると仮定してその断面形状を円で表しているけれども、各粒子の形状は球形状に限定されるものではない。たとえば各粒子は、断面形状が楕円形状であるような形状を有していてもよい。
複合粒子は、以上に述べた図2〜4に示す着色剤被覆内添剤粒子1、内添剤被覆着色剤粒子2および複合内添剤粒子3のように、2種類の粒子によって形成される複合粒子に限定されない。複合粒子は、3種以上の粒子によって形成されてもよい。3種以上の粒子によって形成される複合粒子を用いることによって、2種類の粒子によって形成される複合粒子を用いる場合と同様に、相対的に分散性に劣る粒子の分散性を向上させ、混練物中における分散性を向上させることができる。3種以上の粒子によって形成される複合粒子としては、たとえば、図1に示す核内添剤粒子11の表面が着色剤粒子12および外殻内添剤粒子13によって被覆された複合粒子、具体的には核内添剤粒子11である離型剤粒子の表面が、着色剤粒子12および外殻内添剤粒子13である帯電制御剤粒子によって被覆された複合粒子などが挙げられる。
本発明では、このように核内添剤粒子が着色剤粒子および1種以上の外殻内添剤粒子で被覆される複合粒子も「着色剤被覆内添剤粒子」と称する。また着色剤粒子が2種以上の内添剤粒子で被覆される複合粒子も「内添剤被覆着色剤粒子」と称する。
複合粒子は、たとえば、複合粒子を構成する各粒子を溶媒とともに混合機で混合した後、溶媒を除去することによって作製することができる。混合機としては、たとえば、ディゾルバー、ヘンシェルミキサ、ニーダ、ビーズミルまたはボールミルが用いられる。
複合粒子を構成する各粒子の割合は、複合粒子を構成する各粒子を結着樹脂中に可及的に均一に分散させることができるように、各粒子の種類および結着樹脂に対する分散性などに応じて適宜選択される。
[混練工程]
ステップs2の混練工程では、ステップs1で作製した複合粒子と結着樹脂とを含有するトナー材料を、結着樹脂を溶融または軟化させた状態で混練することによって混練物を生成する。たとえば複合粒子として着色剤被覆内添剤粒子が用いられる場合、トナー材料は、結着樹脂および着色剤被覆内添剤粒子を含有する。また複合粒子として内添剤被覆着色剤粒子が用いられる場合、トナー材料は、結着樹脂および内添剤被覆着色剤粒子を含有する。着色剤被覆内添剤粒子と内添剤被覆着色剤粒子とは併用されてもよい。またトナー材料は、複合粒子として複合内添剤粒子を含有してもよい。またトナー材料は、本発明の効果を損なわない範囲内で、複合粒子を構成する粒子以外の内添剤粒子および着色剤粒子を含有してもよい。
結着樹脂としては、加熱によって溶融または軟化可能な樹脂であれば特に制限されず用いることができる。結着樹脂の軟化温度(以後、「Tm」と表記することがある)は、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上150℃以下である。結着樹脂の軟化温度Tmが150℃を超えると、トナー材料の混練が困難になり、複合粒子の分散性が低下するおそれがある。またトナーの記録媒体への定着強度が不足し、定着不良が発生するおそれがある。結着樹脂の軟化温度Tmが60℃未満であると、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が常温に近いものになりやすいので、トナーが現像装置の内部で熱凝集を起こし、トナーを安定して像担持体に供給することができなくなる可能性がある。
結着樹脂のガラス転移温度(以後、「Tg」と表記することがある)は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、得られるトナーの定着性および保存安定性などを考慮すると、30℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が30℃未満であると、保存安定性が不充分になり、現像装置内部におけるトナーの熱凝集が起こりやすくなり、現像不良が発生するおそれがある。結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が80℃を超えると、定着力が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
結着樹脂の重量平均分子量は、5000以上500000以下であることが好ましい。結着樹脂の重量平均分子量が5000未満であると、結着樹脂の機械的強度が不足し、得られるトナー粒子が現像装置内部での撹拌などによって変形し、帯電性能にばらつきが生じるおそれがある。結着樹脂の重量平均分子量が500000を超えると、複合粒子などとの混練が困難になり、複合粒子、ひいては着色剤粒子および内添剤粒子の分散性が低下するおそれがある。また結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が80℃を超えやすく、これによって定着力が低下し、定着不良が発生するおそれがある。ここで、結着樹脂の重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation chromatography;略称GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値である。
結着樹脂としては、たとえば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。また同一種の樹脂であっても、分子量および単量体組成などのいずれか1つまたは複数が異なる樹脂を複数種併用することができる。
前述の樹脂の中でも、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂は、アクリル樹脂などの他の樹脂に比べて、軟化温度が低いので、ポリエステル樹脂を用いることによって、より低い温度で定着することのできる低温定着性に優れるトナーを得ることができる。またポリエステル樹脂は透光性に優れるので、ポリエステル樹脂を用いることによって、発色性に優れ、また他の色のトナーとの重ね合わせによって形成される二次色の発色性に優れるカラートナーを得ることができる。
ポリエステル樹脂としては、特に制限されず公知のものを使用でき、たとえば、多塩基酸類と多価アルコール類との縮重合物が挙げられる。ここで、多塩基酸類とは、多塩基酸およびその誘導体、たとえば多塩基酸の酸無水物またはエステル化物などのことである。また多価アルコール類とは、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物のことであり、アルコール類およびフェノール類のいずれをも含む。
多塩基酸類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸およびナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸およびアジピン酸などの脂肪族カルボン酸類が挙げられる。多塩基酸類は、1種が単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
多価アルコール類としてもポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびグリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。ここで、ビスフェノールAとは、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンのことである。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。多価アルコール類は、1種が単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ポリエステル樹脂は、縮重合反応によって合成することができる。たとえば、有機溶媒中または無溶媒下で、触媒の存在下に多塩基酸類と多価アルコール類とを重縮合反応、具体的には脱水縮合反応させることによって合成することができる。このとき、多塩基酸類の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用い、脱メタノール重縮合反応を行なってもよい。多塩基酸類と多価アルコール類との重縮合反応は、生成するポリエステル樹脂の酸価および軟化温度が、合成しようとするポリエステル樹脂における値となったところで終了させればよい。この重縮合反応において、多塩基酸類と多価アルコール類との配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、たとえば、得られるポリエステル樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られるポリエステル樹脂の酸価を調整することができる。また軟化温度などの他の物性値を調整することもできる。
前述の結着樹脂と複合粒子とを含有するトナー材料は、より詳細には、混合機で混合された後、混練機で結着樹脂を溶融または軟化させた状態で混練される。これによって結着樹脂中に複合粒子が分散された混練物が得られる。複合粒子を形成することによって、複合粒子を形成しない場合に比べて、複合粒子を構成する各粒子のうち、少なくとも相対的に凝集力の強い粒子の凝集力を低下させ、混練物中における分散性を向上させることができる。換言すると、凝集しやすい粒子であっても、複合粒子として混練することによって、混練物中における分散性を向上させることができる。
したがって、着色剤粒子および内添剤粒子を、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子として用いることによって、少なくとも着色剤粒子の凝集力を低下させ、混練物中における分散性を向上させることができる。たとえば、着色剤として顔料を用いる場合、顔料粒子は他の材料に比べて1次凝集力が強いけれども、顔料粒子を着色剤被覆離型剤粒子などの着色剤被覆内添剤粒子または流動性向上剤被覆着色剤粒子などの内添剤被覆着色剤粒子として混練することによって、顔料粒子が結着樹脂の一部に分散された顔料マスターバッチを用いなくても、顔料粒子をそのまま混練する場合に比べて、混練物中における顔料粒子の分散性を向上させることができる。
このように本実施形態では、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子を用いることによって、マスターバッチを用いなくても、複合粒子を構成する着色剤粒子および内添剤粒子のうち、少なくとも着色剤粒子の混練物中における分散性を向上させることができる。したがって、混練工程の前に、着色剤粒子または内添剤粒子を結着樹脂の一部とともに混練してマスターバッチを作製するマスターバッチ作製工程を設ける必要はない。
本実施形態では、マスターバッチ作製工程に代えて、ステップs1の複合粒子作製工程が設けられる。製造工程の数としてはマスターバッチ作製工程と同じになるけれども、複合粒子は、たとえば複合粒子を構成する各粒子を溶媒とともに混合した後溶媒を除去するという簡便な方法で作製することができる。また複合粒子作製工程では、マスターバッチを作製するときのような厳密な温度管理も不要である。したがって、マスターバッチ作製工程に代えて複合粒子作製工程を設けて複合粒子を用いることによって、製造工程を簡略化することができる。また製造原価を低減することができる。
混練工程における結着樹脂の温度である混練温度(T1℃)は、トナー材料に含有される結着樹脂の軟化温度(Tm℃)以上、結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃高い第1温度(Tm+15℃)以下であることが好ましい。混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)以上第1温度(Tm+15℃)以下とすることによって、結着樹脂を複合粒子などの他のトナー材料が分散できる程度に充分に溶融または軟化させることができるので、結着樹脂への複合粒子の分散性を向上させることができる。これによって、複合粒子を構成する各粒子の分散性をより確実に向上させることができる。混練温度(T1℃)が結着樹脂の軟化温度(Tm℃)未満であると、結着樹脂が軟化しにくく、結着樹脂中に複合粒子を分散させることが困難になり、複合粒子を構成する各粒子の混練物中における分散性が低下するおそれがある。混練温度(T1℃)が第1温度(Tm+15℃)を超えると、分散性が悪化するおそれがある。
トナー材料の混合に用いられる混合機としては、公知の混合機を使用することができ、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)およびメカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合機、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、ならびにコスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
トナー材料の混練に用いられる混練機としては、たとえば、ニーダ、ロールニーダ、1軸押出混練機および2軸押出混練機などの押出混練機、ならびに2本ロールミルおよび3本ロールミルなどのロールミルなどが挙げられる。これらの混練機は市販されており、市販品としては、たとえば、浅田鉄工株式会社製のミラクルK.C.K(商品名)のKCK−L、KCK−26、KCK−32、KCK−42、KCK−52、KCK−62、KCK−72、KCK−82およびKCK−92(以上いずれも型番)、東芝機械株式会社製のTEM−100B(商品名)、株式会社池貝製のPCM−65/87およびPCM−30(以上いずれも商品名)、ならびに三井鉱山株式会社製のニーディックス(商品名)などが挙げられる。トナー材料の混練は、複数の混練機を用いて行なわれてもよい。
トナー材料に含有される着色剤粒子は、複合粒子として含有される量および着色剤粒子単独で含有される量の合計量(以後、単に着色剤粒子の配合量と称する)が、結着樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましい。着色剤粒子の配合量を結着樹脂100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下にすることによって、着色力に優れるトナーを得ることができるので、同じ画像濃度を有する画像を形成するために必要なトナーの量を低減し、トナーの消費量を削減することができる。また結着樹脂中に着色剤粒子を容易に分散させることができるので、混練物中における着色剤粒子の分散性を一層向上させることができる。着色剤粒子の配合量が結着樹脂100重量部に対して0.1重量部未満であると、充分な着色力が得られず、同じ画像濃度を有する画像を形成するのに要するトナー量が増加し、トナーの消費量が増大する可能性がある。着色剤粒子の配合量が結着樹脂100重量部に対して20重量部を超えると、全量を複合粒子として用いることができず、混練物中における着色剤粒子の分散性が低下するおそれがある。
また内添剤粒子として離型剤粒子を用いる場合、トナー材料中における離型剤粒子の配合量、すなわち複合粒子として含有される離型剤粒子の量および離型剤粒子単独で含有される量の合計量(以後、単に離型剤粒子の配合量と称する)は、結着樹脂100重量部に対して、5重量部以上10重量部以下であることが好ましい。離型剤粒子の配合量を結着樹脂100重量部に対して5重量部以上10重量部以下とすることによって、耐オフセット性をより確実に向上させることができる。また離型剤粒子を複合粒子の核内添剤粒子として用いる場合には、複合粒子を構成する他の粒子の分散性をより確実に向上させることができる。また保存安定性に優れたトナーを得ることができる。離型剤粒子の配合量が結着樹脂100重量部に対して5重量部未満であると、耐オフセット性の向上効果が充分に発揮されないおそれがある。また離型剤粒子を複合粒子の核内添剤粒子として用いる場合には、離型剤粒子とともに複合粒子を形成することのできる粒子の量が少なくなり、混練物中における着色剤粒子などの他の粒子の分散性を充分に向上させることができないおそれがある。離型剤粒子の配合量が結着樹脂100重量部に対して10重量部を超えると、保存安定性が低下するおそれがある。
また内添剤粒子として帯電制御剤粒子を用いる場合、トナー材料中における帯電制御剤粒子の配合量、すなわち複合粒子として含有される帯電制御剤粒子の量および帯電制御剤粒子単独で含有される量の合計量(以後、単に「帯電制御剤粒子の配合量」と称する)は、結着樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上5重量部以下であることが好ましい。帯電制御剤粒子の配合量を結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下とすることによって、一定の帯電性能を有するトナーをより確実に得ることができる。帯電制御剤粒子の配合量が結着樹脂100重量部に対して0.5重量部未満であると、トナーの帯電量が過少になり、トナーの飛散が生じるおそれがある。帯電制御剤粒子の配合量が結着樹脂100重量部に対して5重量部を超えると、トナーの導電性が高くなり、帯電量の制御が困難になるおそれがある。
また内添剤粒子として流動性向上剤粒子を用いる場合、流動性向上剤粒子の配合量、すなわち複合粒子として含有される量および流動性向上剤粒子単独で含有される量の合計量(以後、単に「流動性向上剤粒子の配合量」と称する)は、結着樹脂100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下であることが好ましい。流動性向上剤粒子の配合量が結着樹脂100重量部に対して0.1重量部未満であると、トナーの粉体流動性向上効果などの流動性向上剤粒子を添加させることによる効果が充分に発揮されないおそれがある。流動性向上剤粒子の配合量が結着樹脂100重量部に対して5重量部を超えると、トナーの耐久性が低下し好ましくない。
トナー材料は、混合機によって混合されることなく混練機にそのまま投入されて混練されてもよいけれども、本実施形態のように混合機によって混合された後に混練される方が好ましい。これによって、結着樹脂への複合粒子およびその他の成分の分散性を向上させることができる。
[水性媒体調製工程]
ステップs3の水性媒体調製工程では、ステップs4の造粒工程において混練物と混合される水性媒体を調製する。水性媒体は、少なくとも水を含有する。本実施形態では、水性媒体として、水および分散剤を含有する水性媒体(以後、「分散剤含有水性媒体」と称する)が用いられる。
分散剤含有水性媒体中において、分散剤は、水に溶解した状態であってもよく、水に分散された状態であってもよいけれども、ステップs4の造粒工程における混練物の造粒を効率的に行なうためには、水に溶解した状態であることが好ましい。したがって、分散剤としては、水に溶解する物質を用いることが好ましい。水に溶解しない物質を分散剤として用いた場合、混練物と混合される分散剤含有水性媒体中に分散剤が固体として存在するので、造粒工程において分散剤が沸騰石と同様に働き、分散剤表面に微小な気泡が発生する。この気泡が活性点になって発泡が起こり、撹拌装置による撹拌、ひいては混練物の解砕が阻害され、造粒できなくなるおそれがある。分散剤として水に溶解する物質を用いることによって、造粒工程において分散剤から気泡が発生することを防ぐことができるので、混練物の造粒を効率的に行なうことができる。また水に溶解する物質は、後述するステップs7の洗浄工程において水洗によって容易に除去することができるので、得られたトナーへの分散剤の残留をより確実に防ぐことができるという利点も有する。
水に溶解可能な分散剤としては、たとえば水溶性高分子化合物および界面活性剤などが挙げられる。ここで、「高分子化合物」とは、分子量が1000以上である化合物のことである。水溶性高分子化合物としては、たとえばスチレン−アクリル酸共重合体およびスチレン−マレイン酸共重合体などのスチレン−ビニルカルボン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩およびスチレン−α−スチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩などのスチレン−ビニルカルボン酸系共重合体塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ならびにヒドロキシセルロースなどが挙げられる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤のいずれを用いてもよく、具体例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムおよびオレイン酸カルシウムなどが挙げられる。分散剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
前述の水に溶解可能な分散剤の中でも、水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。界面活性剤を用いる場合、ステップs4の造粒工程において分散剤含有水性媒体に泡立ちが生じ、混練物の造粒が阻害されるおそれがある。分散剤として水溶性高分子化合物を用いることによって、界面活性剤を用いた場合のような泡立ちを防ぎ、ステップs4の造粒工程における混練物の造粒をより効率的に行なうことができる。
水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、5000以上50000以下であることが好ましく、5000以上20000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が5000以上50000以下である水溶性高分子化合物を分散剤として用いることによって、分散剤含有水性媒体中における混練物の分散性を向上させ、混練物の造粒をより容易に行なうことができる。水溶性高分子化合物の重量平均分子量が5000未満であると、水溶性高分子化合物中に未反応のモノマーが残存する場合があり、分散剤として充分に機能しないおそれがある。水溶性高分子化合物の重量平均分子量が50000を超えると、水に対する溶解性が低下し、分散剤含有水性媒体の粘度が上昇し、混練物の造粒が阻害されるおそれがある。ここで、水溶性高分子化合物の重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィ(略称GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値である。
分散剤含有水性媒体中における分散剤の含有量、すなわち分散剤の濃度は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択することができるけれども、混練物と分散剤含有水性媒体とを混合するときの操作の容易性、造粒されたトナー粒子の分散安定性などを考慮すると、温度25℃の分散剤含有水性媒体中において、分散剤含有水性媒体全量の5重量%以上40重量%以下であることが好ましい。分散剤の濃度が5重量%未満であると、後述するステップs4の造粒工程において混練物に対する分散剤の好適な使用割合を実現するために多量の分散剤含有水性媒体が必要になるので、混練物と分散剤含有水性媒体との混合操作が繁雑になるおそれがある。分散剤の濃度が40重量%を超えると、分散剤含有水性媒体の粘度が高くなり、気泡が発生しやすくなるので、生成されたトナー粒子を混合物中に安定に分散させることができなくなるおそれがある。
分散剤含有水性媒体は、たとえば、前述の分散剤の適量を、水に溶解または分散させることによって調製することができる。水としては、導電率が20μS/cm以下である水を用いることが好ましい。水の導電率は水中に含有されるイオン成分の量に依存し、導電率が小さいほど、水中に含有されるイオン成分の量は少ない。水中に含有されるイオン成分は、分散剤と結合することによって分散剤の働きを阻害し、混練物の分散安定性を低下させるおそれがある。導電率が20μS/cm以下である水を用いることによって、分散剤とイオン成分との結合を防ぎ、混練物を混合物中に安定に分散させることができる。導電率が20μS/cm以下である水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法または逆浸透法などによって調製することができる。また前述の方法のうち、2種以上を組合せて導電率が前記範囲内にある水を調製してもよい。また市販の純水製造装置、たとえば野村マイクロ・サイエンス株式会社製のミニピュアTW−300RU(商品名)などを用いて調製することもできる。
[造粒工程]
ステップs4の造粒工程では、ステップs2の混練工程で得た混練物と、ステップs3で調製した水性媒体とを混合した後、得られた混合物を加熱するとともに撹拌することによって、混練物を溶融または軟化させた状態で水性媒体中に分散させ、トナー粒子を生成する。本実施形態では、造粒工程で生成されたトナー粒子が、後述するステップs9の外添処理工程を経て、トナーを構成するトナー粒子となる。本実施形態とは異なるけれども、外添処理工程が設けられない場合には、造粒工程で生成されたトナー粒子がトナー粒子となる。
本実施形態では、少なくとも、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子が用いられるので、混練物中には複合粒子を構成する各粒子が分散されている。造粒工程において混練物を分散させるために混練物と水性媒体との混合物を加熱および撹拌するとき、水性媒体中の混練物には剪断力などの力が加わる。本実施形態では、複合粒子自体ではなく、複合粒子が結着樹脂に分散された混練物を水性媒体中に分散させるので、複合粒子には結着樹脂を介して力が加わる。これによって、複合粒子自体を水性媒体などの媒体中に分散させる場合に比べて、分散させるために与えられる力が複合粒子に直接加わる確率を小さくすることができるので、複合粒子の解離をより確実に防ぐことができる。また複合粒子の解離が生じたとしても、造粒工程において複合粒子は結着樹脂中に分散されているので、解離した各粒子の間には結着樹脂が介在することになる。解離した各粒子は結着樹脂によって移動が阻害されるので、解離した粒子の凝集を低減または抑制することができる。したがって、造粒工程における着色剤粒子などの複合粒子を構成する各粒子の分散性の低下を防ぐことができる。
また造粒工程では、混練物と水性媒体との混合物を加熱するとともに撹拌することによって、混練物を溶融または軟化させた状態で水性媒体中に分散させることによって粒子化する。このように混練物を溶融または軟化させた状態で分散させて粒子化することによって、粉砕法のように混練物を固化させた状態で粒子化してトナー粒子を製造する場合に比べて、結着樹脂と複合粒子との界面で混練物が破断される確率を小さくすることができる。これによって、粉砕法に比べて、複合粒子、ひいては着色剤粒子または内添剤粒子の混練物からの脱離をより確実に防ぐことができる。
また複合粒子として用いない場合に比べて、混練物中における着色剤粒子および内添剤粒子の分散性は高いので、着色剤粒子および内添剤粒子の分散された状態における粒径(以後、「分散粒径」と称する)は小さい。したがって、混練物から着色剤粒子または内添剤粒子が同数脱離したとしても、その脱離量は複合粒子として用いない場合に比べて小さい。
したがって、たとえば離型剤粒子の脱離量を低減し、造粒工程における脱離した離型剤粒子のトナー粒子表面への付着を低減または防止するができるので、トナーの凝集力の低下を抑え、高温オフセット発生開始温度の低下を防止することができる。また着色剤粒子および帯電制御剤粒子などの離型剤粒子以外の内添剤粒子の脱離量も低減することができるので、これらの粒子の造粒工程におけるトナー粒子表面への付着を低減または防止することができる。したがって、たとえば得られたトナーを2成分現像剤として用いる場合に、トナー表面の着色剤粒子などの付着によってキャリアが汚染されるスペントと呼ばれる現象が発生することを防止することができる。またこのように着色剤粒子の脱離量を低減できることによって、トナーの着色力および発色性をより確実に向上させることができる。また帯電制御剤粒子の脱離量を低減できることによって、トナーの帯電量の分布の幅を小さくすることができる。
また混練物からの複合粒子、着色剤粒子または内添剤粒子の脱離が生じたとしても、脱離した複合粒子、着色剤粒子および内添剤粒子は、後述するステップs7の洗浄工程においてトナー粒子を洗浄することによって容易に除去することができるので、粉砕法に比べて、脱離した複合粒子、着色剤粒子および内添剤粒子のトナーへの残留量を少なくすることができる。したがって、たとえば脱離した離型剤粒子による感光体などの像担持体へのフィルミングの発生を低減または抑制することができる。また脱離した流動性向上剤粒子による像担持体表面の損傷を防ぐことができる。
造粒工程における混合物の温度、すなわち造粒工程における混練物の温度である造粒温度T2は、混練物に含有される結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも20℃低い第2温度(Tm−20℃)以上、結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも30℃高い第3温度(Tm+30℃)以下であることが好ましい。造粒温度T2を第2温度(Tm−20℃)以上とすることによって、混練物の造粒を容易に行なうことができる。また造粒温度T2を第3温度(Tm+30℃)以下にすることによって、混練物の過度の溶融を防ぎ、混練物からの複合粒子の脱離、ひいては着色剤粒子および内添剤粒子の脱離をより確実に防ぐことができる。造粒温度T2が第2温度(Tm−20℃)未満であると、混練物が充分に軟化せず、造粒が困難になるおそれがある。また同じ粒径を有するトナー粒子を生成させるのに要する時間が増加し、生産性が低下するおそれがある。造粒温度T2が第3温度(Tm+30℃)を超えると、混練物が過度に溶融し、複合粒子の脱離量、ひいては着色剤粒子および内添剤粒子の脱離量が増加するおそれがある。
混練物と水性媒体との混合物の撹拌速度は、特に制限されず、混練物中の結着樹脂および複合粒子の種類および含有量などに応じて、撹拌操作を容易に実施でき、また混練物が速やかに造粒されるように適宜選択される。また混練物と水性媒体との混合物の撹拌時間は、特に制限されず、混練物中の結着樹脂および複合粒子の種類および含有量、水性媒体中の分散剤の種類および濃度、ならびに造粒温度T2などの各種条件に応じて選択され、たとえば10分間以上20分間以下である。
本実施形態では、混合物の加熱および撹拌は、混練物と水性媒体との混合物が収容される混合容器内を加圧状態にして行なわれる。混合容器内は必ずしも加圧状態にする必要はないけれども、混合容器内を加圧状態にして混合物の加熱および撹拌を行なうことによって、水性媒体中の水の沸点を下げることができるので、混合物を沸騰させることなく、100℃以上に加熱することができる。したがって、気泡の発生による剪断力の低下を防ぎ、混練物の造粒をより効率的に行なうことができる。
混合容器内の気体の圧力(以後、「混合容器内の圧力」と称する)は、特に制限されず、混練物中の結着樹脂および複合粒子の種類および含有量、水性媒体中の分散剤の種類および濃度、ならびに造粒温度T2などの各種条件に応じて、混合操作を容易に実施でき、また混練物の造粒を容易に行なうことができるように適宜選択される。混合容器内の圧力は、たとえば0.1MPa(約1atm)以上1MPa(約10atm)以下である。ここで、「加圧状態」とは、大気圧(1atm)よりも圧力が高い状態のことである。
混合容器内の圧力が高くなりすぎると、混合物中で発生した気泡が消失せずに圧力で微細化されて系内に封じ込められ、混練物の造粒が阻害されるおそれがあるので、混合容器内の圧力は、所望の造粒温度T2において混合物の沸騰を抑えることのできる最小限の圧力であることが好ましい。したがって、混合容器内の圧力は、特に造粒温度T2を考慮して選択される。たとえば造粒温度T2が150℃である場合、混合容器内の圧力は0.5MPa(約5atm)程度である。
混練物としては、結着樹脂と複合粒子とを含有するトナー材料を混練して得た溶融状態または軟化状態の混練物をそのまま用いてもよく、混練後に冷却して得た固化物をそのまま、または再度加熱して溶融状態または軟化状態に戻したものを用いてもよい。
混練物と水性媒体との混合割合は特に制限されず、混練物中の結着樹脂の含有量、ならびに水性媒体中の分散剤の種類および濃度などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、混練物100重量部に対して、水性媒体100重量部以上500重量部以下の割合であることが好ましい。混練物と水性媒体との混合割合を、混練物100重量部に対して水性媒体100重量部以上500重量部以下にすることによって、混練物と水性媒体との混合操作、および後述するステップs6の分離工程におけるトナー粒子の分離操作およびステップs7の洗浄工程におけるトナー粒子の洗浄操作などを容易に行なうことができる。水性媒体の割合が混練物100重量部に対して100重量部未満であると、水性媒体として分散剤含有水生媒体を用いる場合、混合物の粘度が高くなり、撹拌によって生じる剪断力が混練物に充分に加わらず、造粒が困難になるおそれがある。水性媒体の割合が混練物100重量部に対して500重量部を超えると、混練物と水性媒体との混合操作などが繁雑になり、生産性が低下するおそれがある。
混練物の造粒は、より詳細には、乳化機または分散機として市販されている装置(以後、「乳化機」と称する)を用いて行われる。本実施形態では、加熱手段および撹拌手段を有し、混練物と水性媒体との混合物を加熱するとともに撹拌することのできる乳化機が用いられる。混練物および水性媒体は、乳化機に備わる混合容器に収容される。乳化機は、前述の造粒温度T2である混練物と水性媒体との混合物の温度を調整する温度調整手段を有する装置であることが好ましい。乳化機は、所定量の混練物と水性媒体とを受入れ、生成されたトナー粒子を含む水性媒体を排出するバッチ式の乳化機であってもよく、混練物と水性媒体とを順次受入れ、生成されたトナー粒子を含む水性媒体を順次排出する連続式の乳化機であってもよい。これらの中でも、造粒温度T2を前述の好適な範囲に保持することが容易であることから、バッチ式の乳化機を用いることが好ましい。
混合容器内を加圧状態にして造粒を行なう場合、乳化機には、加圧手段およびメカニカルシールを備え、混合容器を密閉して加圧状態として混練物の造粒を行なうことのできる装置が用いられる。この場合、混合容器としては、耐圧性を有する容器、より詳細には、耐圧性を有しかつ圧力調整弁を備える容器が用いられる。このような混合容器を用いることによって、混合容器内の圧力を一定圧力に制御することができる。
乳化機としては、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ(KINEMATICA)社製)およびT.K.オートホモミクサー(商品名、特殊機化工業株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、T.K.パイプラインホモミクサー、T.K.ホモミックラインフロー、T.K.フィルミックス(以上いずれも商品名、特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(以上いずれも商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)およびファインフローミル(太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)、ならびにフィルミックス(商品名、特殊機化工業株式会社製)などが挙げられる。前述のクレアミックスおよびフィルミックスは、バッチ式乳化機および連続式乳化機のいずれとしても使用することができる。
以上のようにして混練物と水性媒体との混合物を加熱するとともに撹拌することによって、混練物が溶融または軟化するとともに剪断力などの力を受けて粉砕されて水性媒体中に分散され、トナー粒子となる。
[冷却工程]
ステップs5の冷却工程では、生成したトナー粒子が分散された水性媒体(以後、水性スラリーとも称する)を冷却する。水性スラリーの冷却は、たとえば、ステップs4の造粒工程においてトナー粒子を生成させた後に、乳化機の加熱手段による加熱を停止して、冷媒を用いて強制的に冷却する強制冷却またはそのまま放冷する自然冷却によって行なわれる。
造粒工程では、水性媒体中において混練物を加熱して溶融または軟化させた状態で粒子化するので、生成された直後のトナー粒子は、溶融状態または軟化状態にあり、粘着性を有する。この状態では、トナー粒子同士が融着して粗大化しやすいけれども、本実施形態では、水性媒体中には分散剤が含有されているので、トナー粒子は分散剤によって安定化されており、水性媒体中に分散された状態を保つ。したがって、冷却工程では、トナー粒子の粗大化は発生せず、トナー粒子は形状および大きさを保持したまま冷却することができる。このように本実施形態では、トナー粒子の粗大化および形状変化を抑えながら冷却することができるので、一定の粒径および形状を有し、かつ一定の粒径を有するトナーを容易に得ることができる。
混合物(水性スラリー)の冷却は、撹拌下に行なうことが好ましい。混合物を撹拌せずに冷却すると、混合物の温度がトナー粒子に含有される結着樹脂の軟化温度Tm以上の温度である場合に、分散剤によるトナー粒子の分散安定効果が充分に発揮されず、トナー粒子同士が融着して粗大化するおそれがある。したがって、冷却工程においても、混合物(水性スラリー)の撹拌を継続することが好ましい。
また造粒温度T2を100℃以上として加圧下で混練物の造粒を行なった場合には、冷却工程においても加圧を継続することが好ましい。混合物の温度が100℃以上である場合に、加圧を停止して混合容器内の圧力を大気圧に戻すと、水性スラリーが沸騰し、気泡が多数発生するので、後述する洗浄工程における洗浄操作および分離工程における分離操作などが困難になる。混合容器内の圧力は、混合容器内の混合物の温度が50℃以下になったときに大気圧に戻すことが好ましく、混合容器内の混合物が室温まで冷却された後に大気圧に戻すことがさらに好ましい。
[分離工程]
ステップs6の分離工程では、冷却後の水性媒体からトナー粒子を分離する。水性媒体からのトナー粒子の分離は、たとえば、濾過、吸引濾過または遠心分離などによって行なうことができる。
[洗浄工程]
ステップs7の洗浄工程では、水性媒体から分離されたトナー粒子を洗浄し、分散剤および分散剤に由来する不純物類などを除去する。分散剤および前記不純物類がトナー粒子に残留すると、得られるトナーの帯電性能が一定にならない可能性がある。また分散剤および前記不純物類が空気中の水分を吸着し、トナーの帯電量が周囲の湿度に依存して変化するおそれがある。
トナー粒子の洗浄は、たとえば、分取されたトナー粒子を水洗することによって行なうことができる。トナー粒子の水洗は、たとえば導電率計を用い、トナー粒子を洗浄した後の洗浄水の導電率が100μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下になるまで繰返し行なうことが好ましい。これによって、分散剤および不純物類の残留をより確実に防ぐことができるので、トナーの帯電性能をより均一にすることができる。
トナー粒子の洗浄に用いる水は、導電率20μS/cm以下の水であることが好ましい。これによって、水に含有されるイオン成分がトナー粒子に残留することを防ぐことができるので、トナーの帯電性を一層均一にすることができる。導電率が20μS/cm以下である水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法または逆浸透法などによって調製することができる。また前述の方法のうち、2種以上を組合せて導電率が前記範囲内にある水を調製してもよい。トナー粒子の水洗は、バッチ式および連続式のいずれで実施してもよい。また水洗に用いる水の温度は、特に制限されないけれども、10℃以上80℃以下であることが好ましい。温度10℃以上80℃以下の水を用いて洗浄を行なうことによって、分散剤および前記不純物類をより確実に除去することができる。
本実施形態とは異なるけれども、ステップs7の洗浄工程がステップs5の冷却工程とステップs6の分離工程との間に設けられる場合、トナー粒子の洗浄は、たとえば、冷却後の混合物に水を加えて撹拌することによって行なうことができる。トナー粒子の洗浄は、たとえば導電率計を用い、混合物から遠心分離などによって分離される上澄み液の導電率が100μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下になるまで繰返し行なうことが好ましい。これによって、分散剤および不純物類の残留をより確実に防ぎ、トナーの帯電性をさらに均一にすることができる。
[乾燥工程]
ステップs8の乾燥工程では、洗浄後のトナー粒子を乾燥させる。トナー粒子の乾燥は、たとえば凍結乾燥法または気流乾燥法などによって行なわれる。
乾燥後のトナー粒子は、そのままトナー粒子として用いることもできるけれども、本実施形態ではステップs9の外添処理工程において外添剤が外添される。
[外添処理工程]
ステップs9の外添処理工程では、乾燥されたトナー粒子に外添剤を外添し、トナー粒子を得る。外添剤は、トナー粒子の表面に付着していてもよく、トナー粒子の表面に一部分または全部が埋め込まれていてもよい。外添剤としては、たとえば流動性向上剤が挙げられる。流動性向上剤をトナー粒子に外添することによって、トナーの粉体流動性を向上させることができる。流動性向上剤としては、トナー粒子に内添される流動性向上剤と同様のものを用いることができ、たとえば、シリカおよび酸化チタンなどの金属酸化物粒子、ならびにシランカップリング剤などの表面改質剤によって疎水化処理などの表面改質処理が施された金属酸化物粒子などが挙げられる。流動性向上剤の体積平均粒径は、たとえば10nm以上500nm以下である。流動性向上剤の体積平均粒径は、前記範囲に限定されるものではない。
トナー粒子に対する外添剤の使用割合は、特に制限されないけれども、トナー粒子100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。外添剤の使用割合がトナー粒子100重量部に対して0.1重量部未満であると、流動性向上効果が充分に発揮されないおそれがある。外添剤の使用割合がトナー粒子100重量部に対して10重量部を超えると、トナー中に外添剤が遊離した状態で存在し、この遊離した外添剤によって感光体などの像担持体が損傷を受け、画像欠陥が生じるおそれがある。本実施形態では、内添剤粒子として流動性向上剤粒子を用いることによって、流動性向上剤をトナー粒子の表面に露出させることができるので、トナー粒子に外添する流動性向上剤の量を低減し、像担持体の損傷をより確実に防止することができる。
以上のようにしてトナー粒子からなるトナーが得られる。このようにしてトナーが作製されると、ステップs10に進み、本実施形態によるトナーの製造が終了する。本実施形態のトナーの製造方法によれば、少なくとも、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子、たとえば着色剤被覆内添剤粒子または内添剤被覆着色剤粒子などを用いるので、着色剤粒子自体を結着樹脂中に分散させて混練物を作製する場合に比べて、混練物中における着色剤粒子の分散性を向上させることができる。これによって、トナーの着色力および発色性を向上させることができるので、トナーの消費量を低減することができる。
また帯電制御剤粒子を含有する複合粒子を用いることによって、帯電剤粒子自体を結着樹脂中に分散させて混練物を作製する場合に比べて、混練物中における帯電制御剤粒子の分散性を向上させることができるので、トナーの帯電量の分布の幅を狭め、トナーの帯電量をより均一にすることができる。これによってトナーの飛散を抑えることができるので、画像へのかぶりの発生を防ぐことができる。また鮮明な画像を得ることができる。またトナーの帯電量の均一性が向上されることによって、現像装置においてトナーの一部が現像に使用されずに現像槽に残留することを防ぐことができるので、マグネットローラなどの現像剤担持体へのトナーの融着を防止することができる。これによって、たとえば2成分現像剤として使用する場合に、マグネットローラのキャリア搬送能力が低下することを防ぐことができるので、安定して現像を行なうことができる。
また本実施形態のトナーの製造方法によれば、マスターバッチを用いなくても着色剤粒子などの各材料の混練物中における分散性を向上させることができるので、マスターバッチ作製工程を省き、製造工程を簡略化することができる。また製造原価を低減することができる。
また本実施形態のトナーの製造方法によれば、混練物を溶融または軟化させた状態で水性媒体中に分散させることによって粒子化するので、混練物を固化させた状態で粒子化する粉砕法に比べて、粒度分布が狭く、粒径の均一性に優れるトナーを得ることができる。また水性媒体中において造粒されたトナー粒子は流動性を有する状態にあるので、表面張力が可及的に小さくなるように球形状に変形しようとする。またトナー粒子には水圧もかかっているので、得られるトナーの形状は球形状に近くなる。トナー粒子は、球形状に近いほど流動性に優れ、現像装置において帯電されやすくなる。したがって、一定の帯電性能を有するトナーをより確実に得ることができる。これによって、画像濃度の低下、画像かぶりの発生および転写性の低下などを防止することができる。また本実施態様によれば、体積平均粒子径がたとえば10μm以下と小さいトナー粒子を容易に生成させることができるので、粉砕法のように分級を行なう必要がなく、製造工程を簡略化することができる。
また本実施形態では、造粒工程において混練物と水性媒体との混合物を加熱するとともに撹拌することによって混練物を溶融または軟化させて水性媒体中に分散させるので、結着樹脂として、加熱によって溶融または軟化可能な樹脂であれば特に制限されず用いることができ、ラジカル重合によって合成可能な樹脂以外の樹脂、たとえばポリエステル樹脂を用いてトナーを製造することができる。また結着樹脂のモノマーがトナー中に残留することを防ぐことができる。また有機溶媒を用いることなく、トナー粒子を生成させることができるので、トナー中に有機溶媒が残留することを防ぐことができる。このように結着樹脂のモノマーおよび有機溶媒がトナー中に残留することを防ぐことができるので、トナーの帯電性能のばらつきを一層確実に抑えることができる。また有機溶媒を含む廃液を排出しない、または廃液の量を低減することができるので、廃液の処理に要する費用を低減することができる。
本実施形態のトナーの製造方法によって得られるトナーは、電子写真法もしくは静電記録法によって画像を形成するときの静電荷像の現像、または磁気記録法によって画像を形成するときの磁気潜像の現像などに使用することができる。本実施形態によって製造されるトナーは、1成分現像剤または2成分現像剤として使用することができる。
たとえば着色剤被覆内添剤粒子または内添剤被覆着色剤粒子などの着色剤粒子を含む複合粒子を用いて本実施形態によって製造されるトナーは、着色剤粒子をそのまま用いて製造されるトナーに比べて、着色剤粒子の分散性に優れるので、着色力および発色性に優れる。したがって、同一の画像濃度を有する画像を形成するのに要するトナーの量を低減することができるので、トナーの消費量を削減することができる。
また帯電制御剤粒子を含有する複合粒子を用いて本実施形態によって製造されるトナーは、帯電制御剤粒子をそのまま用いて製造されるトナーに比べて、帯電制御剤粒子の分散性に優れる。したがって、トナーの帯電量のばらつきを抑えることができるので、帯電量の不足による画像濃度の低下、画像かぶりの発生および転写性の低下などを抑え、画像欠陥のない高品質の画像を形成することができる。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するけれども、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。以下において、「部」および「%」は特に断らない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
[物性値測定方法]
〔ワックスの融点〕
以下の実施例および比較例で使用したワックスの融点は、以下のようにして測定した。示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で150℃まで昇温させ、次いで150℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度をワックスの融点として求めた。
〔樹脂の軟化温度(Tm)〕
以下の実施例および比較例で使用した樹脂の軟化温度(Tm)は以下のようにして測定した。流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−500C、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gをシリンダに挿入し、ダイから押出されるように荷重10kgf/cm(0.980665MPa)を与えながら、昇温速度毎分6℃(6℃/min)で加熱し、ダイから試料の半分が流出したときの温度を軟化温度として求めた。ダイには、口径1mm、長さ1mmのものを用いた。
〔樹脂のガラス転移温度(Tg)〕
以下の実施例および比較例で使用した樹脂のガラス転移温度(Tg)は以下のようにして測定した。示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
[実施例]
〔水の調製〕
以下の実施例および比較例において、分散剤含有水性媒体の調製およびトナー粒子の洗浄に用いた水は、超純水製造装置(商品名:ミニピュア TW−300RU、野村マイクロ・サイエンス株式会社製)を用いて水道水から調製した。水の導電率は、ラコムテスター EC−PHCON10(商品名、株式会社井内盛栄堂製)を用いて測定した。
(実施例1)
[複合粒子作製工程]
着色剤粒子であるカーボンブラック粒子(商品名:NIPX60、デグザ社製)50部と、離型剤粒子であるエステルワックス粒子(商品名:WEP−5、日本油脂株式会社製、融点82℃)50部とに、イソプロピルアルコール20部を加え、ハイスピードミルにて30分間混合した。得られた複合粒子を真空乾燥機にて温度60℃で10時間乾燥させ、着色剤被覆離型剤粒子を得た。得られた着色剤被覆離型剤粒子において、核内添剤粒子11である離型剤粒子の体積平均粒径R2に対する着色剤粒子12の体積平均粒径R1の比(R1/R2)は、0.02である。
[混練工程]
作製した着色剤被覆離型剤粒子10部と、結着樹脂としてポリエステル樹脂(花王株式会社製、軟化温度(Tm)125℃、ガラス転移温度(Tg)58℃)90部と、帯電制御剤(商品名:TRH、保土谷化学工業株式会社製)2部とを、混合機(商品名:ヘンシェルミキサー、三井鉱山株式会社製)にて混合し、原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、2軸押出混練機(商品名:PCM30、株式会社池貝製)にて、混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃高い温度(Tm+15℃)である140℃として混練し、混練物を得た。2軸押出混練機のスクリュとしては、外径寸法Dが30mmであり、回転軸線方向の長さ寸法Lが1mであり、外径寸法Dに対する長さ寸法Lの比(L/D)が33であるスクリュを用いた。
[水性媒体調製工程]
イオン交換水(導電率8μS/cm)に、分散剤としてスチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩(商品名:ジョンクリル52、ジョンソンポリマー株式会社製)を固形分濃度が20重量%(固形分濃度)になるように混合して溶解させ、水性媒体として分散剤水溶液(分散剤濃度20重量%)を調製した。
[造粒工程]
得られた混練物100部と分散剤水溶液(分散剤濃度20重量%)400部とを、圧力調整弁、加熱手段およびロータステータ式撹拌手段を備える金属製の混合容器に投入し、混合容器内の混合物の温度である造粒温度T2を150℃として10分間撹拌し、トナー粒子を生成させた。このときのロータステータ式撹拌手段のロータ(外径30mm)の回転速度は、10,000回転/分とした。
[冷却工程]
前述のようにしてトナー粒子を生成させた後、加熱を停止し、生成したトナー粒子を含む水性媒体を撹拌しながら温度20℃になるまで冷却した。冷却工程におけるロータステータ式撹拌手段のロータの回転速度は、10,000回転/分とした。
[分離工程]
冷却後、トナー粒子を含む水性媒体を濾過し、トナー粒子を分取した。
[洗浄工程]
分取したトナー粒子を温度20℃のイオン交換水(導電率0.5μS/cm)によって洗浄した。トナー粒子の洗浄は、トナー粒子を洗浄した後の洗浄水、すなわち濾液の導電率が10μS/cm以下になるまで繰返し行なった。
[乾燥工程]
洗浄後のトナー粒子を凍結乾燥させた。
[外添処理工程]
得られたトナー粒子100部に、シランカップリング剤で疎水化処理されたシリカ粒子(1次粒子の体積平均粒径20nm)0.7部および酸化チタン1部を混合して、トナーを得た。
(実施例2)
混練工程における混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)である125℃に変更する以外は実施例1と同様にして、トナーを作製した。
(実施例3)
混練工程における混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃低い温度(Tm−15℃)である110℃に変更する以外は実施例1と同様にして、トナーを作製した。
(比較例1)
複合粒子作製工程に代えて以下のマスターバッチ作製工程を設け、混練工程を以下のように変更する以外は実施例1と同様にして、トナーを作製した。
[マスターバッチ作製工程]
実施例1で用いたものと同じポリエステル樹脂(花王株式会社製、Tm125℃、Tg58℃)60部に、着色剤としてカーボンブラック(商品名:NIPX60、デグザ社製)40部を加え、温度140℃に設定されたニーダにて混練し、着色剤濃度40重量%の着色剤マスターバッチを作製した。
[混練工程]
作製した着色剤マスターバッチ(着色剤濃度40重量%)12.5部と、着色剤マスターバッチの作製に用いたものと同じポリエステル樹脂(花王株式会社製、Tm125℃、Tg58℃)82.5部と、離型剤としてエステルワックス(商品名:WEP−5、日本油脂株式会社製)5部と、帯電制御剤(商品名:TRH、保土谷化学工業株式会社製)2部とを、混合機(商品名:ヘンシェルミキサー、三井鉱山株式会社製)にて実施例1と同様にして3分間混合し、原料混合物を得た。
得られた原料混合物を用いる以外は実施例1と同様にして、混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃高い温度(Tm+15℃)である140℃として混練を行ない、混練物を得た。
(比較例2)
混練工程における混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)である125℃に変更する以外は比較例1と同様にして、トナーを作製した。
(比較例3)
混練工程における混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃低い温度(Tm−15℃)である110℃に変更する以外は比較例1と同様にして、トナーを作製した。
(比較例4)
複合粒子作製工程を行なわずに、混練工程を以下のように変更する以外は実施例1と同様にして、トナーを作製した。
[混練工程]
着色剤としてカーボンブラック(商品名:NIPX60、デグザ社製)5部と、実施例1で用いたものと同じポリエステル樹脂(花王株式会社製、Tm125℃、Tg58℃)90部と、離型剤としてエステルワックス(商品名:WEP−5、日本油脂株式会社製)5部と、帯電制御剤(商品名:TRH、保土谷化学工業株式会社製)2部とを、混合機(商品名:ヘンシェルミキサー、三井鉱山株式会社製)にて実施例1と同様にして3分間混合し、原料混合物を得た。
得られた原料混合物を用いる以外は実施例1と同様にして、混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃高い温度(Tm+15℃)である140℃として混練を行ない、混練物を得た。
(比較例5)
混練工程における混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)である125℃に変更する以外は比較例4と同様にして、トナーを作製した。
(比較例6)
混練工程における混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃低い温度(Tm−15℃)である110℃に変更する以外は比較例4と同様にして、トナーを作製した。
(比較例7)
実施例1と同様にして複合粒子作製工程を行なった後、実施例1と同様にして、混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃高い温度(Tm+15℃)である140℃として混練を行ない、混練物を得た。得られた混練物を冷却した後、ジェットミルで粉砕し、トナーを得た。
(比較例8)
混練工程における混練温度(T1℃)を結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃低い温度(Tm−15℃)である110℃に変更する以外は比較例7と同様にして、トナーを作製した。
[評価]
以上の実施例1〜3および比較例1〜8で作製したトナーについて、以下のようにして特性を評価した。
〔顔料の分散性〕
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:略称TEM)を用いてトナーを観察し、トナーのTEM画像を画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて解析し、観察領域内に含まれるすべての顔料の面積を合計した面積の観察領域の全面積に対する比率(以後、「全顔料の面積率」と称する)Dtotalおよび観察領域内に含まれる粒径0.1μm以下の顔料の面積を合計した面積の観察領域の全面積に対する比率(以後、「粒径0.1μm以下の顔料の面積率」と称する)D0.1を求めた。得られた全顔料の面積率Dtotalおよび粒径0.1μm以下の顔料の面積率D0.1から、下記式(1)に基づいて分散率D(%)を算出した。
D=D0.1/Dtotal×100 …(1)
算出された分散率Dを顔料の分散性の評価指標として用い、以下の基準に基づいて顔料の分散性を評価した。
◎:非常に優れている。分散率Dが95%以上である。
○:優れている。分散率Dが90%以上95%未満である。
△:実用可能である。分散率Dが85%以上90%未満である。
×:実用が困難である。分散率Dが75%以上85%未満である。
××:実用不可能である。分散率Dが75%未満である。
〔遊離ワックス指数〕
得られたトナーについて、以下のようにして遊離ワックス指数を測定した。
容量100mLのメスフラスコに水を入れた後、12重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液1mLを入れ、泡が立たないように静かに水を加えて100mLにし、界面活性剤溶液を調製した。容量50mLのガラス製スクリュー管にトナー15gを入れ、界面活性剤溶液30mLを静かに注ぎ、蓋をした後、1分間手で振盪してトナーを懸濁させ、トナー懸濁液を得た。
得られたトナー懸濁液を容量50mLの遠心管に入れ、回転半径70mmのアングルローターに設置し、アングルローターの回転速度を5000回転/分(5000rpm)として20分間遠心分離した。混練物から脱離した遊離ワックスはトナー粒子に比べて密度が小さいので、前述の遠心分離によって遊離ワックスは上澄み液に分離され、トナー粒子は沈殿する。遠心管の内壁に付着したワックスにピペットで上澄み液をかけてワックスを洗い落し、上澄み液を分離採取した。このとき、一度沈殿したトナーが上澄み液に混入した場合には、上澄み液だけを再度遠心分離する。
得られた上澄み液について、コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター株式会社製)を用いて上澄み液中に含まれる遊離ワックスの体積平均粒径Dw(μm)を測定した。アパーチャ径は100μmとした。また上澄み液を取除いた残渣について、上澄み液と同様にして残渣中に含まれるトナーの体積平均粒径Dt(μm)を測定した。
測定された遊離ワックスの体積平均粒径Dwおよびトナーの体積平均粒径Dtの値から、トナーの体積平均粒径Dtに対する遊離ワックスの体積平均粒Dwの比(Dw/Dt)を算出し、これを遊離ワックス指数とした。
測定された遊離ワックス指数を以下の基準に基づいて評価した。
○:優れている。遊離ワックス指数が0.5以上0.9以下である。
×:実用が困難である。遊離ワックス指数が0.5未満であるか、または0.9を超える。
〔粒径の均一性〕
容量100mLのメスフラスコに水を入れた後、12重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液1mLを入れ、泡が立たないように静かに水を加えて100mLにし、界面活性剤溶液を調製した。容量50mLのガラス製スクリュー管にトナー15gを入れ、界面活性剤溶液30mLを静かに注ぎ、蓋をした後、1分間手で振盪し、トナーを懸濁させた。得られたトナー懸濁液を用いて、コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター株式会社製)によってトナーの体積平均粒径を測定し、体積平均粒径の変動係数(以後、単に「変動係数」と称する)を求めた。アパーチャ径は100μmとした。変動係数は、その値が小さいほど、粒度分布が狭いことを意味する。求めた変動係数の値を粒径の均一性の評価指標として用い、以下の基準に基づいて粒径の均一性を評価した。
○:優れている。変動係数が35未満である。
△:実用可能である。変動係数が35以上40未満である。
×:実用が困難である。変動係数が40以上である。
〔トナー粒子の形状〕
フロー式粒子像分析装置(商品名:FPIA−2000、東亜医用電子株式会社製)を用い、得られたトナー粒子の円形度の平均値である平均円形度を測定した。円形度は、前述のフロー式粒子像分析装置によって検出される粒子の投影像において、下記式(2)によって定義され、1以下の値をとる。平均円形度は、その値が1に近いほど、トナー粒子の形状が真球形状に近いことを意味する。
Figure 2007193047
測定された平均円形度をトナー粒子の形状の評価指標として用い、以下の基準に基づいてトナー粒子の形状を評価した。
○:優れている。平均円形度が0.92を超える。
×:実用が困難である。平均円形度が0.92以下である。
〔画像濃度〕
得られたトナーを試験用画像形成装置の現像装置の現像槽に投入し、記録用紙(商品名:フルカラー専用紙PP106A4C、シャープ株式会社製)に、トナーの付着量が0.6mg/cmになるように調整して、べた画像部を含むテスト画像を未定着の状態で形成させた。試験用画像形成装置には、市販の画像形成装置(商品名:デジタルフルカラー複合機AR−150、シャープ株式会社製)を、現像装置を非磁性1成分現像剤用に改造し、定着装置を取外して用いた。
形成された未定着画像を、外部定着機を用いて定着させ、得られた画像を評価用画像とした。外部定着機には、市販の画像形成装置(商品名:デジタルフルカラー複合機AR−C260、シャープ株式会社製)から取出したオイルレス方式の定着装置を用いた。ここで、オイルレス方式の定着装置とは、加熱ローラに離型剤を塗布せずに定着を行なう定着装置のことである。
分光測色濃度計(商品名:X−Rite938、日本平版印刷機材株式会社製)を用いて、評価用画像のべた画像部の光学濃度を測定した。測定された光学濃度を画像濃度の評価指標として用い、以下の基準に基づいて画像濃度を評価した。
◎:非常に優れている。光学濃度が1.40以上である。
○:優れている。光学濃度が1.35以上1.40未満である。
△:実用可能である。光学濃度が1.30以上1.35未満である。
×:実用が困難である。光学濃度が1.30未満である。
〔かぶり度合〕
まず白色度計(商品名:Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS P0138に規定されるA4判の記録用紙(商品名:フルカラー専用紙PP106A4C、シャープ株式会社製)のJIS P8148に規定される白色度を測定し、この値を第1測定値W1とした。
前述のようにして得たトナーを市販の複写機(商品名:AR−620、シャープ株式会社製)の現像装置の現像槽に投入し、白色度を測定した記録用紙3枚に、直径55mmの白円部とそれを取囲む黒べた部とを含むサンプル画像を形成させ、得られた画像を評価用画像とした。前述の白色度計を用い、各評価用画像の白円部の白色度を測定し、これらの平均値を算出し、この平均値を第2測定値W2とした。第1測定値W1および第2測定値W2から下記式(3)に基づいてかぶり濃度W(%)を算出した。
W={(W1−W2)/W1}×100 …(3)
算出されたかぶり濃度Wをかぶり度合の評価指標として用い、以下の基準に基づいてかぶり度合を評価した。
◎:非常に優れている。かぶり濃度Wが0.8%未満である。
○:優れている。かぶり濃度Wが0.8%以上1.0%未満である。
△:実用可能である。かぶり濃度Wが1.0%以上1.5%未満である。
×:実用が困難である。かぶり濃度Wが1.5%以上である。
〔転写性〕
前述のようにして得たトナーを市販のデジタル複合機(商品名:AR−620、シャープ株式会社製)の現像装置の現像槽に投入し、記録用紙(商品名:フルカラー専用紙PP106A4C、シャープ株式会社製)に、べた画像部を含む所定のチャートを複写させ、べた画像部において記録用紙の単位面積あたりに転写されたトナーの重量(以後、「転写トナー量」と称する)Mp(mg/cm)を測定した。また複写に用いた感光体のべた画像部が形成されていた部分の単位面積あたりに残留したトナーの重量(以後、「残留トナー量」と称する)Md(mg/cm)を測定した。トナーの重量は、温度20℃、相対湿度50%RHの環境下にて測定した。
測定した転写トナー量Mpおよび残留トナー量Mdから、下記式(4)に基づいて転写率T(%)を算出した。
T={Mp/(Md+Mp)}×100 …(4)
算出された転写率Tを転写性の評価指標として用い、以下の基準に基づいて転写性を評価した。
○:優れている。転写率Tが90%以上である。
×:実用が困難である。転写率Tが90%未満である。
以上の評価結果を表2および表3に示す。表2には、混練物を溶融または軟化させた状態で水性媒体中に分散させることによってトナー粒子を得る方法(以後、「溶融乳化法」と称する)を用いた実施例1〜3および比較例1〜6の結果を示す。表3には、溶融乳化法を用いた実施例1および3の結果と、混練物を固化させた状態で粉砕することによってトナー粒子を得る粉砕法を用いた比較例7および8の結果を示す。
Figure 2007193047
Figure 2007193047
表2から、複合粒子として着色剤被覆離型剤粒子を用いて本発明の製造方法によって製造された実施例1〜3のトナーは、着色剤マスターバッチを用いて製造された比較例1〜3のトナーおよび着色剤をそのまま用いて製造された比較例4〜6のトナーに比べ、顔料であるカーボンブラックの分散性に優れ、画像濃度の高い画像を形成できることが判る。また実施例1〜3のトナーは、比較例1〜6のトナーに比べ、かぶり濃度Wが低いことが判る。このことから、実施例1〜3のトナーは、比較例1〜6のトナーに比べ、より均一な帯電性を有することが判る。
また実施例1および2と実施例3との比較から、実施例1および2のように混練温度T1を結着樹脂の軟化温度Tm以上とすることによって、混練温度T1が結着樹脂の軟化温度Tm未満である場合に比べ、顔料の分散性を向上させて画像濃度を高めることができ、また帯電性をより均一にして画像のかぶりを一層抑制することができることが判る。
また表3から、本発明の製造方法を用いて製造された実施例1および3のトナーは、粉砕法を用いて製造された比較例7および8のトナーに比べ、遊離ワックス指数が小さく、トナーに含まれる遊離ワックスの量が少ないことが判る。また実施例1および3のトナーは、比較例7および8のトナーに比べ、顔料の分散性に優れ、画像濃度の高い画像を形成できることが判る。また実施例1および3のトナーは、比較例7および8のトナーに比べ、かぶり濃度Wが小さく、また転写率Tが高いことが判る。これは、実施例1および3のトナーの方が、変動係数が小さく粒径の均一性に優れ、またトナー粒子がより球形状に近いので、帯電量がより均一になったためであると推察される。
以上のように、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子を用い、溶融乳化法によってトナーを製造することによって、マスターバッチを用いることなく、着色剤粒子などの各材料の混練物中における分散性を向上させることができた。また粉砕法に比べ、離型剤粒子などの各材料の脱離を抑えることができた。
本発明の実施の一形態であるトナーの製造方法の手順を示すフローチャートである。 着色剤被覆内添剤粒子1の構成を模式的に示す断面図である。 内添剤被覆着色剤粒子2の構成を模式的に示す断面図である。 複合内添剤粒子3の構成を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 着色剤被覆内添剤粒子
2 内添剤被覆着色剤粒子
3 複合内添剤粒子
11 核内添剤粒子
12 着色剤粒子
13 外殻内添剤粒子

Claims (6)

  1. 少なくとも、着色剤粒子と内添剤粒子とが複合した複合粒子および結着樹脂を含有するトナー材料を、前記結着樹脂を溶融または軟化させた状態で混練することによって混練物を生成する混練工程と、
    水を含有する水性媒体中に前記混練工程で得られた混練物を溶融または軟化させた状態で分散させることによってトナー粒子を得る造粒工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法。
  2. 複合粒子は、内添剤粒子が着色剤粒子で被覆される着色剤被覆内添剤粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 内添剤粒子が離型剤粒子であることを特徴とする請求項2に記載のトナーの製造方法。
  4. 複合粒子は、着色剤粒子が内添剤粒子で被覆される内添剤被覆着色剤粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のトナーの製造方法。
  5. 内添剤粒子が流動性向上剤粒子であることを特徴とする請求項4に記載のトナーの製造方法。
  6. 混練工程における前記結着樹脂の温度(T1℃)は、
    前記結着樹脂の軟化温度(Tm℃)以上、前記結着樹脂の軟化温度(Tm℃)よりも15℃高い第1温度(Tm+15℃)以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のトナーの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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