JP2007192214A - 航走制御装置およびそれを備えた船舶 - Google Patents

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Abstract

【課題】電動スロットルを有するエンジンを駆動源とする推進力発生手段を船舶に備え、操作手段の操作量とスロットル開度との関係を適切に設定することによって、操船特性を改善できる航走制御装置を提供する。
【解決手段】データ収集処理部64は、電動スロットル55の開度データとエンジン回転速度データとを収集し、学習データとして記憶部60に格納する。この学習データに基づいて、エンジン回転速度−スロットル開度特性(N−T特性)が算出される。さらに、スロットル操作部8が出力するリモコン開度とエンジン回転速度との目標特性(目標R−N特性)と、前記算出されたN−T特性とに基づき、目標R−N特性を実現するためのリモコン開度−目標スロットル開度特性(R−T特性)が求められる。このR−T特性に従って、電動スロットル55の目標スロットル開度が設定される。
【選択図】図3

Description

この発明は、電動スロットルを有するエンジンを駆動源とした推進力発生手段を備えた船舶、およびこのような船舶のための航走制御装置に関する。
クルーザやボートのようなレジャー用船舶に備えられる推進機の一例は、船尾(トランサム)に取り付けられる船外機である。船外機は、駆動源としてのエンジンおよび推進力発生部材としてのプロペラを含む推進ユニットを船外に有し、さらに、この推進ユニット全体を船体に対して水平方向に回動させる舵取り機構が付設されたものである。
船内には、操船のための操作卓が設けられている。この操作卓には、たとえば、舵取り操作のためのステアリング操作部と、船外機の出力を操作するためのスロットル操作部とが備えられている。スロットル操作部は、たとえば、操船者によって前後に操作されるスロットルレバー(リモコンレバー)を備えている。このスロットルレバーは、ワイヤーを介して、船外機のエンジンのスロットルに機械的に結合されている。したがって、スロットルレバーの操作によりエンジンの出力を調整することができるが、スロットルレバーの操作量(操作位置)とスロットル開度との関係は一定である。
一般的なエンジンでは、エンジン回転速度とスロットル開度との関係は非線形である。典型的なエンジンでは、図29に示すように、スロットル開度の小さい低開度域ではスロットル開度の増加に対してエンジン回転速度が急激に上昇し、スロットル開度の大きな高開度域では、スロットル開度の増加に対してエンジン回転速度はなだらかな変化を示す。このような傾向は、バタフライバルブを用いたスロットルの場合にとくに顕著である。ISC(Idle Speed Control)を適用したスロットルの場合にも、程度の差はあるが、同様の傾向が認められる。
特開2000−108995号公報
このような非線形特性は、変速機を持たない船外機を備えた小型船舶の操船にとくに大きな影響を与える。具体的には、図30に示すように、低速度域においては、水面から船艇の受ける抵抗は比較的小さく、摩擦抵抗および造波抵抗などにより複雑に変化する。そのうえ、わずかなスロットル操作に対応してエンジン回転速度が急変するため、船外機が発生する推進力も変動しやすい。そのため、たとえば離着岸や釣りポイント移動などの場合のように、推進力の微調整が必要な状況において、高い操船技術が要求されることになる。したがって、必ずしも操船に熟練していないレジャーボート等の操船者にとっては、離着岸時などのスロットルレバー操作が容易ではないという問題がある。
一方、ハンプ域(造波抵抗が最大となる速度域。2000rpm前後のエンジン回転速度に対応)以上の中高速域では、エンジンの高レスポンスが要求される。理由は、ハンプ域を速やかに超えて滑走状態(プレーニング状態)に移行すべきであること、および外洋でうねりを越えるために高レスポンスが必要であることである。したがって、中高速域では、スロットルレバーの操作に対して、エンジン回転速度が速やかに変化することが好ましい。しかし、図29に示すスロットル開度−エンジン回転速度特性では、このような要求を満足することができない。
近年では、自動車の分野において、アクセル操作量をポテーショメーターなどで検出し、検出された操作量に応じて、アクチュエータによってスロットルを駆動する電動スロットルが用いられるようになってきている。このような電動スロットルを船外機等の推進機のエンジン出力制御に用いることが考えられる。それにより、スロットルレバーとスロットルとを機械的に結合していた従来の構成では固定的な関係(一定の線形関係)であった操作量−スロットル開度特性を、自由に変更することができる。すなわち、操作量−スロットル開度特性を、たとえば、非線形特性に設定することができる。したがって、操作量−スロットル開度特性を適切に設定することによって、たとえば、低速走行時(低開度域)における操船特性を改善できると考えられる。
そこで、この発明の目的は、電動スロットルを有するエンジンを駆動源とする推進力発生手段を船舶に備え、操作手段の操作量とスロットル開度との関係を適切に設定することによって、操船特性を改善できる航走制御装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、このような航走制御装置を備えた船舶を提供することである。
上記の課題を解決するために、この発明の一実施形態は、電動スロットルを有するエンジンを駆動源として推進力を発生する推進力発生手段によって船体に推進力を与える船舶の航走制御装置であって、操船者が推進力を制御するための操作手段と、航走時に得られるデータに基づいて、前記操作手段の操作量に対応する前記電動スロットルの開度に関する制御情報を更新する制御手段とを含む、航走制御装置を提供する。
より具体的には、前記制御手段は、たとえば、前記エンジンの出力特性を測定するエンジン特性測定手段と、このエンジン特性測定手段によって測定されたエンジン出力特性に基づき、前記操作手段の操作量と前記電動スロットルの目標スロットル開度との関係を表す操作量−目標スロットル開度特性を設定するスロットル開度特性設定手段と、このスロットル開度特性設定手段によって設定された操作量−目標スロットル開度特性に従って、前記操作手段の操作量に対応する目標スロットル開度を設定する目標スロットル開度設定手段とを含む。
この構成によれば、実際のエンジン出力特性に基づいて、操作量−目標スロットル開度特性が定められる。目標スロットル開度設定手段は、前記操作量−目標スロットル開度特性に従って、操作手段の操作量に対応する目標スロットル開度を定める。この設定された目標スロットル開度に従って電動スロットルが駆動されることにより、操作量−エンジン出力特性を所望の特性とすることができる。つまり、推進力発生手段を船体に組み付けて実際に走行したときに得られたデータに基づいて、操作手段の操作量に対する目標スロットル開度が設定される。
エンジン特性測定手段は、エンジン回転速度を測定するエンジン回転速度測定手段を含んでいてもよい。これにより、エンジン出力特性を直接的に測定することができる。
エンジン出力特性は、また、間接的に測定することもできる。たとえば、船舶を航走させている状態で速度測定手段によって船舶の速度を測定し、これに基づいて船舶の加速度を求めることにより、エンジン出力特性を間接的に測定することができる。
前記航走制御装置は、前記操作手段の操作量とエンジン出力との関係である操作量−エンジン出力特性の目標特性を設定する目標特性設定手段をさらに含むことが好ましい。この場合に、前記スロットル開度特性設定手段は、前記目標特性設定手段によって設定される目標特性が得られるように、前記操作量−目標スロットル開度特性を設定するものであることが好ましい。
この構成によれば、操作量−エンジン出力特性の目標特性が目標特性設定手段によって設定され、その目標特性が得られるように、実際のエンジン出力特性に基づいて、操作量−目標スロットル開度特性が定められる。したがって、目標特性を適切に定めることにより、操作手段の操作量とエンジン出力との関係を操船者のフィーリングに適合させることができる。その結果、操船性能を著しく改善することができ、離着岸時やトローリング時などのスロットル操作を容易にすることができる。
具体的には、スロットル開度−エンジン出力特性が非線形特性である場合であっても、前記目標特性を操作手段の操作量に対してエンジン出力が線形変化を示す特性に設定しておけば、操作手段の操作に対してリニアにエンジン出力を変化させることができる。こうして、操作手段の操作量とエンジン出力との対応関係が操船者にとって直感的に分かり易い関係となるので、熟練していない操船者にとっても、操船(スロットル操作)が容易になる。
また、エンジン出力が比較的低い低速度域において操作手段の操作量に対するエンジン出力の変化量が少なく、エンジン出力が比較的高い高速度域において操作手段の操作量に対するエンジン出力の変化量が大きくなるように、操作量−エンジン出力特性を予め設定することもできる。これによって、低出力状態で微妙なスロットル操作が必要となる離着岸時およびトローリング時等の操船を容易にすることができる。また、高出力状態では、操作手段の操作に対するエンジン出力変化の応答性を上げることができる。
操作量−エンジン出力特性の目標特性は、予め定めた一定の特性(たとえば線形特性)であってもよいが、操作量−エンジン出力特性の目標特性を設定するための入力を受け付ける目標特性入力手段を設け、前記目標特性設定手段により、前記目標特性入力手段からの入力に応じて、前記目標特性を設定する構成とすることが好ましい。
この構成により、目標特性入力手段から所望の目標特性を設定することができるので、個々の操船者の好み等に応じて、目標特性を設定することができる。これにより、操船特性を操船者のフィーリングに一層近づけることができ、比較的習熟度の低い操船者にとっても船舶の操船が容易になる。
前記航走制御装置は、操作量−エンジン出力特性の目標特性を複数個記憶することができる目標特性記憶手段をさらに含んでいてもよい。この場合に、前記目標特性入力手段は、前記目標特性記憶手段に記憶されている複数の目標特性のうちの一つを選択する選択手段を含むことが好ましい。これにより、目標特性の設定が容易になる。
さらに、この場合には、前記スロットル開度特性設定手段は、前記目標特性記憶手段に記憶されている複数個の目標特性にそれぞれ対応する複数個の前記操作量−目標スロットル開度特性を記憶することができるスロットル開度特性記憶手段を含み、前記選択手段によって選択された目標特性に対応する操作量−目標スロットル開度特性を前記スロットル開度特性記憶手段から読み出して設定するものであることが好ましい。これにより、操作量−目標スロットル開度特性の算出を省くことができるので、演算装置の演算負荷を軽減できる。
前記エンジン特性測定手段は、前記電動スロットルの開度とエンジン出力との関係を表すスロットル開度−エンジン出力特性を測定する手段を含むものであってもよい。この場合に、前記スロットル開度特性設定手段は、前記エンジン特性測定手段によって測定されたスロットル開度−エンジン出力特性に基づいて、前記操作量−目標スロットル開度特性を設定するものであってもよい。
この構成によれば、電動スロットル開度とエンジン出力との関係を表すスロットル開度−エンジン出力特性が測定される。そして、この測定結果に基づき、操作量−目標スロットル開度特性が定められる。こうして、操作量−目標スロットル開度を、実際のスロットル開度−エンジン出力特性の測定結果に基づいて定めることができるので、より確実に所望の特性を実現できる。
エンジン特性測定手段は、スロットル開度の値が取りうる所定範囲(全範囲でもよいし一部の範囲でもよい。)を複数の区間に分割し、複数の測定値をスロットル開度に応じて当該複数の区間に分類する手段を含んでいてもよい。この場合に、スロットル開度−エンジン出力特性は、個々の区間毎に測定値の代表値(たとえば平均値)を演算するとともに、代表値間の特性を線形補間で補うことによって求められてもよい。
この場合に、エンジン特性測定手段は、全ての区間について代表値の算出が可能となるまで(たとえば、全ての区間について少なくとも1つの測定値が得られるまで)、スロットル開度およびエンジン出力の測定を行うものであることが好ましい。
ただし、必ずしも全区間で代表値が算出される必要はなく、一部の区間についての代表値算出が可能となるまでに限定して、スロットル開度およびエンジン出力の測定を行うこととしてもよい。具体的には、スロットル開度全閉およびスロットル開度全開についての代表値の算出が可能となるまで(たとえば、スロットル開度全閉およびスロットル開度全開について少なくとも1つの測定値が得られるまで)、スロットル開度およびエンジン出力の測定を行うようにしてもよい。これにより、所望の特性に近似した操船特性が速やかに得られる。そして、その後に測定されたスロットル開度およびエンジン出力に応じて操作量−目標スロットル開度特性が修正されることにより、操船特性を徐々に高精度で所望の特性に収束させていくことができる。とくに航走中にエンジン特性の測定を行う場合、前記所定範囲の全域で測定値が得られるかどうかは、どのような操船がされるかに依存するので、前記のような構成とすることにより、所望の特性を近似的に実現する操作量−目標スロットル開度特性を得やすくなる。
前記エンジン特性測定手段は、前記操作手段の操作量とエンジン出力との関係を表す操作量−エンジン出力特性を測定する手段を含んでいてもよい。この場合に、前記スロットル開度特性設定手段は、前記エンジン特性測定手段によって測定された操作量−エンジン出力特性に基づいて、前記操作量−目標スロットル開度特性を設定するものであることが好ましい。
この構成によれば、操作手段の操作量とエンジン出力との関係を表す操作量−エンジン出力特性が測定される。そして、この測定結果に基づき、操作量−目標スロットル開度特性が定められる。こうして、操作量−目標スロットル開度特性を、実際に測定された操作量−エンジン出力特性に基づいて定めることができるので、より確実に所望の特性を実現できる。
エンジン特性測定手段は、操作量の値が取りうる所定範囲(全範囲でもよいし一部の範囲でもよい。)を複数の区間に分割し、複数の測定値を操作量に応じて当該複数の区間に分類する手段を含んでいてもよい。この場合に、操作量−エンジン出力特性は、個々の区間毎に測定値の代表値(たとえば平均値)を演算するとともに、代表値間の特性を線形補間で補うことによって求められてもよい。
この場合に、エンジン特性測定手段は、全ての区間について代表値の算出が可能となるまで(たとえば、全ての区間について少なくとも1つの測定値が得られるまで)、操作量およびエンジン出力の測定を行うものであることが好ましい。
ただし、必ずしも全区間で代表値が算出される必要はなく、一部の区間についての代表値算出が可能となるまでに限定して、操作量およびエンジン出力の測定を行うこととしてもよい。具体的には、スロットル全閉に対応する操作量およびスロットル全開に対応する操作量についての代表値の算出が可能となるまで(たとえば、スロットル全閉およびスロットル全開に対応する操作量について少なくとも各1つの測定値が得られるまで)、操作量およびエンジン出力の測定を行うようにしてもよい。これにより、所望の特性に近似した操船特性が速やかに得られる。そして、その後に測定された操作量およびエンジン出力に応じて操作量−目標スロットル開度特性が修正されることにより、操船特性を徐々に高精度で所望の特性に収束させていくことができる。とくに航走中にエンジン特性の測定を行う場合、前記所定範囲の全部で測定値が得られるかどうかは、どのような操船がされるかに依存するので、前記のような構成とすることにより、所望の特性を近似的に実現する操作量−目標スロットル開度特性を得やすくなる。
前記航走制御装置は、前記エンジン特性測定手段によって測定されたエンジン出力特性を記憶するためのエンジン特性記憶手段と、前記エンジン特性測定手段によって新たに測定されたエンジン出力特性と、前記エンジン特性記憶手段に記憶されている従前のエンジン出力特性との差分を演算する差分演算手段と、この差分演算手段によって演算される差分が所定のしきい値以上のときに、そのことを操船者に通知する通知手段とをさらに含んでいてもよい。
この場合に、前記航走制御装置は、さらに、前記新たに測定されたエンジン出力特性と、前記従前のエンジン出力特性とのいずれを前記スロットル開度特性設定手段での演算に適用すべきかを選択するために操船者によって操作される特性更新指示手段と、この特性更新指示手段を介して前記新たなエンジン出力特性が選択されたときに、前記スロットル開度特性設定手段での演算に適用されるエンジン出力特性を前記新たなエンジン出力特性に更新する更新手段とをさらに含むことが好ましい。
このような構成によって、たとえば、船舶の乗船者数や積荷が一時的に増減したことに起因してエンジンの運転状態が変化したような場合に、操作量−目標スロットル開度特性が変化してしまうことを回避できる。
エンジン出力特性は、たとえば水槽試験によって計測してもよい。具体的には、推進力発生手段を船体に装備する前に、水槽試験用の推進力発生部材(たとえばプロペラ)を推進力発生手段に装着して、これを水槽内に浸漬させる。この状態でエンジンを運転し、エンジン出力特性を測定する。こうして得られたエンジン出力特性に基づき、所望の操作量−エンジン出力特性が得られるように、操作量−目標スロットル開度特性を定めればよい。
ただし、このような水槽試験では試験用のプロペラが用いられる。この試験用のプロペラは、実際の航走時に用いられるプロペラとは特性が異なっている。また、水槽試験では、推進力発生手段が船体に装備されていない状態で特性測定が行われることになる。そのため、個々の船艇に固有の抵抗特性をエンジンの出力特性に反映することができない。しかも、プロペラや艇体の組み合わせは、ボートビルダーや使用者が独自に選択するので、任意の組み合わせに最適な操作量−目標スロットル開度特性を事前に作り込むことは困難である。そのため、水槽試験によって特性測定を行うよりも、船舶の実際の航走状態で特性測定を行い、その測定結果に基づいて操作量−目標スロットル開度特性をチューニングする方が、より確実に、所望の操作量−エンジン出力特性を実現できる。
そこで、前記航走制御装置は、前記船舶が航走中かどうかを判定する航走判定手段をさらに含むことが好ましい。そして、前記エンジン特性測定手段は、前記航走判定手段によって前記船舶が航走中であると判定されていることを条件にエンジン出力特性の測定を行うものであることが好ましい。
この構成によれば、エンジン特性測定手段は、船舶の航走中にエンジン出力特性を測定する。そのため、水槽試験の場合のような問題がなく、推進力発生手段に実際に装備されている推進力発生部材の特性および実際の船艇の抵抗特性を反映したエンジン出力特性を測定することができる。したがって、このようにして測定されたエンジン出力特性に基づいて操作量−目標スロットル開度特性をチューニングすることにより、確実に所望の操作量−エンジン出力特性を得ることができる。
前記航走判定手段は、前記船舶が所定の直進航行状態かどうかを判定する直進航行判定手段を含むものであってもよい。そして、前記エンジン特性測定手段は、前記直進航行判定手段が、前記船舶が直進航行状態であると判定していることを条件にエンジン出力特性の測定を行うものであることが好ましい。
船舶が旋回しているときには、水上で船艇が受ける抵抗が動的に変化する。そのため、定常的なエンジン出力特性の測定を適正に行うことが困難である。そこで、この発明では、船舶が所定の直進航行状態であることを条件に、エンジン出力特性が測定される。これによって、より確実に所望の操作量−エンジン出力特性を達成することができる。
前記所定の直進航行状態とは、たとえば、船舶に備えられた舵取り機構の操舵角が所定の中立位置範囲(たとえば、中立位置に対して±5度の操舵角範囲)内の値をとっている状態で前記推進力発生手段が推進力を発生している状態をいう。
この発明の一実施形態は、また、船体と、この船体に取り付けられ、電動スロットルを有するエンジンを駆動源として推進力を発生する推進力発生手段と、前述の航走制御装置とを含む、船舶を提供する。この構成により、操船特性が改善された船舶を実現できる。
なお、船舶は、クルーザ、釣り船、ウォータージェット、水上滑走艇(watercraft)のような比較的小型のものであってもよい。
また、前記推進力発生手段は、船外機(アウトボードモータ)、船内外機(スターンドライブ。インボードモータ・アウトボードドライブ)、船内機(インボードモータ)、ウォータージェットドライブのいずれの形態であってもよい。船外機は、原動機(エンジン)および推進力発生部材(プロペラ)を含む推進ユニットを船外に有し、さらに、推進ユニット全体を船体に対して水平方向に回動させる舵取り機構が付設されたものである。船内外機は、原動機が船内に配置され、推進力発生部材および舵切り機構を含むドライブユニットが船外に配置されたものである。船内機は、原動機およびドライブユニットがいずれも船体に内蔵され、ドライブユニットからプロペラシャフトが船外に延び出た形態を有する。この場合、舵取り機構は別途設けられる。ウォータージェットドライブは、船底から吸い込んだ水をポンプで加速し、船尾の噴射ノズルから噴射することで推進力を得るものである。この場合、舵取り機構は、噴射ノズルと、この噴射ノズルを水平面に沿って回動させる機構とで構成される。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶1の構成を説明するための概念図である。この船舶1は、クルーザやボートのような比較的小型の船舶であり、船体2の船尾(トランサム)3に、推進力発生手段としての船外機10が取り付けられている。この船外機10は、船体2の船尾3および船首4を通る中心線5上に取り付けられている。船外機10には、電子制御ユニット11(以下、「船外機ECU11」という。)が内蔵されている。
船体2には、操船のための操作卓6が設けられている。操作卓6には、たとえば、舵取り操作のためのステアリング操作部7と、船外機10の出力を操作するためのスロットル操作部8と、目標特性入力部9(目標特性入力手段、目標特性変更入力手段)が備えられている。ステアリング操作部7は、舵取り操作部材としてのステアリングホイール7aを備える。また、スロットル操作部8は、スロットル操作部材(操作手段)としてのリモコンレバー(スロットルレバー)8aと、このリモコンレバー8aの位置を検出するポテンショメータ等のレバー位置検出部8bとを備えている。目標特性入力部9は、リモコンレバー8aの操作量(リモコン開度)と船外機10のエンジン回転速度との関係(リモコン開度−エンジン回転速度特性)に関する目標特性の設定入力を行うためのものである。
操作卓6に備えられた上記の操作部7,8の操作量を表す入力信号および目標特性入力部9からの入力信号は、たとえば、船体2内に配置されたLAN(ローカル・エリア・ネットワーク。以下「船内LAN」という。)を介して、電気信号として航走制御装置20に入力されるようになっている。この航走制御装置20は、マイクロコンピュータを含む電子制御ユニット(ECU)であり、推進力を制御する推進力制御装置としての機能と、舵取り制御のための操舵制御装置としての機能とを有している。
航走制御装置20は、さらに、船外機ECU11との間で前記船内LANを介して通信を行う。より具体的には、航走制御装置20は、船外機ECU11から、船外機10に備えられたエンジンの回転速度(回転数)と、船外機10の向きである操舵角と、エンジンのスロットル開度と、船外機10のシフト位置(前進、ニュートラル、後進)を取得する。また、航走制御装置20は、船外機ECU11に対して、目標操舵角、目標スロットル開度、目標シフト位置(前進、ニュートラル、後進)、目標トリム角などを表すデータを与えるようになっている。
航走制御装置20は、ステアリングホイール7aの操作に応じて、船外機10の操舵角を制御する。また、航走制御装置20は、リモコンレバー8aの操作量および操作方向(すなわち、レバー位置)に応じて、船外機10に対する目標スロットル開度および目標シフト位置を定める。リモコンレバー8aは、前方および後方へと傾倒させることができるようになっている。操船者がリモコンレバー8aを中立位置から前方へ一定量だけ倒すと、航走制御装置20は、船外機10の目標シフト位置を前進位置とする。操船者がリモコンレバー8aをさらに前方に倒していくと、航走制御装置20は、その操作量に応じて、船外機10の目標スロットル開度を設定する。一方、操船者がリモコンレバー8aを後方に一定量だけ倒すと、航走制御装置20は、船外機10の目標シフト位置を後進位置とする。操船者がリモコンレバー8aをさらに後方に倒していくと、航走制御装置20は、その操作量に応じて、船外機10の目標スロットル開度を設定する。
図2は、船外機10の構成を説明するための図解的な断面図である。船外機10は、推進機としての推進ユニット30と、この推進ユニット30を船体2に取り付ける取り付け機構31とを有している。取り付け機構31は、船体2の後尾板に着脱自在に固定されるクランプブラケット32と、このクランプブラケット32に水平回動軸としてのチルト軸33を中心に回動自在に結合されたスイベルブラケット34とを備えている。推進ユニット30は、スイベルブラケット34に、操舵軸35まわりに回動自在に取り付けられている。これにより、推進ユニット30を操舵軸35まわりに回動させることによって、操舵角(船体2の中心線5に対して推進力の方向がなす方位角)を変化させることができる。また、スイベルブラケット34をチルト軸33まわりに回動させることによって、推進ユニット30のトリム角(水平面に対して推進力の方向がなす角)を変化させることができる。
推進ユニット30のハウジングは、トップカウリング36とアッパケース37とロアケース38とで構成されている。トップカウリング36内には、駆動源となるエンジン39がそのクランク軸の軸線が上下方向となるように設置されている。エンジン39のクランク軸下端に連結される動力伝達用のドライブシャフト41は、上下方向にアッパケース37内を通ってロアケース38内にまで延びている。
ロアケース38の下部後側には、推進力発生部材となるプロペラ40が回転自在に装着されている。ロアケース38内には、プロペラ40の回転軸であるプロペラシャフト42が水平方向に通されている。このプロペラシャフト42には、ドライブシャフト41の回転が、クラッチ機構としてのシフト機構43を介して伝達されるようになっている。
シフト機構43は、ドライブシャフト41の下端に固定されたベベルギヤからなる駆動ギヤ43aと、プロペラシャフト42上に回動自在に配置されたベベルギヤからなる前進ギヤ43bと、同じくプロペラシャフト42上に回動自在に配置されたベベルギヤからなる後進ギヤ43cと、前進ギヤ43bおよび後進ギヤ43cの間に配置されたドッグクラッチ43dとを有している。
前進ギヤ43bは前方側から駆動ギヤ43aに噛合しており、後進ギヤ43cは後方側から駆動ギヤ43aに噛合している。そのため、前進ギヤ43bおよび後進ギヤ43cは互いに反対方向に回転されることになる。
一方、ドッグクラッチ43dは、プロペラシャフト42にスプライン結合されている。すなわち、ドッグクラッチ43dは、プロペラシャフト42に対してその軸方向に摺動自在であるが、プロペラシャフト42に対する相対回動はできず、このプロペラシャフト42とともに回転する。
ドッグクラッチ43dは、ドライブシャフト41と平行に上下方向に延びるシフトロッド44の軸周りの回動によって、プロペラシャフト42上で摺動される。これにより、ドッグクラッチ43dは、前進ギヤ43bと結合した前進位置と、後進ギヤ43cと結合した後進位置と、前進ギヤ43bおよび後進ギヤ43cのいずれとも結合されないニュートラル位置とのいずれかのシフト位置に制御される。
ドッグクラッチ43dが前進位置にあるとき、前進ギヤ43bの回転がドッグクラッチ43dを介して実質的に滑りのない状態でプロペラシャフト42に伝達される。これにより、プロペラ40は、一方向(前進方向)に回転し、船体2を前進させる方向の推進力を発生する。一方、ドッグクラッチ43dが後進位置にあるとき、後進ギヤ43cの回転がドッグクラッチ43dを介して実質的に滑りのない状態でプロペラシャフト42に伝達される。後進ギヤ43cは、前進ギヤ43bとは反対方向に回転するため、プロペラ40は、反対方向(後進方向)に回転し、船体2を後進させる方向の推進力を発生する。ドッグクラッチ43dがニュートラル位置にあるとき、ドライブシャフト41の回転はプロペラシャフト42に伝達されない。すなわち、エンジン39とプロペラ40との間の駆動力伝達経路が遮断されるので、いずれの方向の推進力も生じない。
船外機10に変速機は備えられておらず、ドッグクラッチ43dが前進位置または後進位置にあるときに、エンジン39の回転速度に応じてプロペラ40が回転する。
エンジン39に関連して、このエンジン39を始動させるためのスタータモータ45が配置されている。スタータモータ45は、船外機ECU11によって制御される。また、エンジン39のスロットルバルブ46を作動させてスロットル開度を変化させ、エンジン39の吸入空気量を変化させるためのスロットルアクチュエータ51が備えられている。このスロットルアクチュエータ51は、電動モータからなっていてもよい。このスロットルアクチュエータ51は、スロットルバルブ46とともに電動スロットル55を構成している。
スロットルアクチュエータ51の動作は、船外機ECU11によって制御される。また、スロットルバルブ46の開度(スロットル開度)は、スロットル開度センサ57によって検出されるようになっており、その出力は、船外機ECU11に与えられるようになっている。エンジン39には、さらに、クランク軸の回転を検出することによってエンジン39の回転速度Nを検出するためのエンジン回転検出部48が備えられている。
また、シフトロッド44に関連して、ドッグクラッチ43dのシフト位置を変化させるためのシフトアクチュエータ52(クラッチ作動装置)が設けられている。このシフトアクチュエータ52は、たとえば、電動モータからなり、船外機ECU11によって動作制御される。
さらに、推進ユニット30に固定された操舵ロッド47には、たとえば、液圧シリンダを含み、船外機ECU11によって制御される操舵アクチュエータ53が結合されている。この操舵アクチュエータ53を駆動することによって、推進ユニット30を操舵軸35まわりに回動させることができ、舵取り操作を行うことができる。このように、操舵アクチュエータ53、操舵ロッド47および操舵軸35を含む舵取り機構50が形成されている。この舵取り機構50には、操舵角を検出するための操舵角センサ49が備えられている。
また、クランプブラケット32とスイベルブラケット34との間には、たとえば液圧シリンダを含み、船外機ECU11によって制御されるトリムアクチュエータ(チルトトリムアクチュエータ)54が設けられている。このトリムアクチュエータ54は、チルト軸33まわりにスイベルブラケット34を回動させることにより、推進ユニット30をチルト軸33まわりに回動させる。これにより、推進ユニット30のトリム角が変化する。
図3は、電動スロットル55の制御に関連する構成を説明するためのブロック図である。航走制御装置20は、CPU(中央処理装置)およびメモリを含むマイクロコンピュータを備えていて、このマイクロコンピュータが所定のソフトウェア処理を実行することにより、実質的に複数の機能処理部として動作する。これらの複数の機能処理部には、スロットル操作部8のレバー位置検出部8bによって検出されるリモコンレバー8aの操作量(以下「リモコン開度」という。)に応じて、スロットルバルブ46の開度(スロットル開度)の目標値である目標スロットル開度を算出する目標スロットル開度算出モジュール61(目標スロットル開度設定手段)と、リモコン開度に対する目標スロットル開度の特性であるリモコン開度−目標スロットル開度特性(以下、「R−T特性」という。)を算出するR−T特性テーブル算出モジュール62(スロットル開度特性設定手段)と、エンジン回転速度とスロットル開度との実際の特性を算出するエンジン回転速度−スロットル開度特性(以下、「N−T特性」という。)を算出するN−T特性テーブル算出モジュール63と、N−T特性の算出のために、船外機ECU11からエンジン回転速度およびスロットル開度のデータを収集するデータ収集処理部64と、船外機ECU11から操舵角およびシフト位置のデータを得て、船舶1が直進航行状態であるかどうかを判定する直進航行判定部65(直進航行判定手段)と備えている。また、航走制御装置20に備えられたメモリ内には、データ収集処理部64によって収集されたエンジン回転速度およびスロットル開度のデータを学習データとして記憶する記憶部60が確保されている。上記複数の機能処理部は、さらに、記憶部60に記憶された学習データをリセットするリセット処理モジュール66と、リモコン開度に対するエンジン回転速度の特性(リモコン開度−エンジン回転速度特性。以下、「R−N特性」という。)の目標値である目標特性を設定するための目標特性設定モジュール67(目標特性設定手段、目標特性曲線更新手段)とを備えている。また、上記複数の機能処理部は、R−T特性が変更されたときにスロットル開度の急変に伴うエンジン出力の急変を抑制するための一次遅れフィルタ68を備えている。この実施形態では、前記データ収集処理部64およびN−T特性テーブル算出モジュール63などにより、エンジン特性測定手段が構成されている。
また、航走制御装置20に備えられたメモリには、上記の記憶部60の他に、R−T特性テーブル(電動スロットルの開度に関する制御情報)を記憶するR−T特性テーブル記憶部62M(スロットル開度特性記憶手段)と、N−T特性テーブルを記憶するN−T特性テーブル記憶部63M(エンジン特性記憶手段)と、目標R−N特性テーブルを記憶するR−N特性テーブル記憶部67M(目標特性記憶手段)とが確保されている。N−T特性テーブル算出モジュール63は、算出したN−T特性テーブルをN−T特性テーブル記憶部63Mに格納する。また、目標特性設定モジュール67は、目標R−N特性をR−N特性テーブル記憶部67Mに格納する。R−T特性テーブル算出モジュール62は、N−T特性テーブル記憶部63Mに格納されたN−T特性テーブルと、目標R−N特性テーブル記憶部67Mに格納された目標R−N特性テーブルとに基づき、R−T特性テーブルを算出して、R−T特性テーブル記憶部62Mに格納する。また、目標スロットル開度算出モジュール61は、R−T特性テーブル記憶部62Mに格納されたR−T特性テーブルに基づいて、リモコン開度に応じた目標スロットル開度を算出する。
たとえば、少なくとも、記憶部60、R−T特性テーブル記憶部62MおよびR−N特性テーブル記憶部67Mは、不揮発性の記憶媒体によって構成しておくことが好ましい。また、R−T特性テーブル記憶部62Mには、たとえば、リモコン開度に対して目標スロットル開度を線形に設定するR−T特性テーブルを初期値として格納しておいてもよい。さらに、R−N特性テーブル記憶部67Mには、たとえば、リモコン開度に対して目標エンジン回転速度を線形に対応付ける目標R−N特性を初期値として格納しておいてもよい。
図1では図示を省略してあるが、操作卓6には、リセット処理モジュール66に対してリセット信号を与えるためのリセットスイッチ13が設けられている。また、操作卓6に備えられた目標特性入力部9は、目標特性設定モジュール67に対するマンマシンインタフェースを提供するものであり、入力装置14および表示装置15を備えている。表示装置15は、液晶表示パネルやCRTのような2次元表示装置であることが好ましい。また、入力装置14は、たとえば、表示装置15に表示された目標特性曲線に対して操作入力を行うためのポインティングデバイス(マウス、トラックボールおよびタッチパネルなど)や、キー入力部等を有するものであってもよい。
船外機10を運転して船舶1を航行させている期間中において、直進航行判定部65は、船外機10のシフト位置が前進位置または後進位置であり、かつ、操舵角が所定の中立範囲内(たとえば中立位置から左右5度ずつの範囲内)の値である場合に、船舶1が直進航行状態であると判定する。この直進航行判定部65が船舶1の直進航行状態を判定している期間において、データ収集処理部64は、船外機ECU11からエンジン回転速度およびスロットル開度のデータを収集する。より具体的には、エンジン回転検出部48によって検出されるエンジン回転速度およびスロットル開度センサ57によって検出されるスロットル開度のデータの対を所定の周期ごとに船外機ECU11から収集し、学習データとして、記憶部60に格納する。
N−T特性テーブル算出モジュール63は、記憶部60に格納された学習データを用いて、N−T特性テーブルを算出する。R−T特性テーブル算出モジュール62は、N−T特性テーブル算出モジュール63によって算出されたN−T特性テーブルと、目標特性設定モジュール67によって設定される目標R−N特性とに基づき、R−T特性テーブルを算出する。このR−T特性テーブルに従って、目標スロットル開度算出モジュール61が目標スロットル開度を算出する。この目標スロットル開度で船外機10の電動スロットル55が動作することによって、リモコン開度に対するエンジン回転速度の関係は、目標R−N特性に従うことになる。
たとえば、データ収集処理部64によって収集されて記憶部60に格納される学習データから得られるN−T特性が非線形特性である場合に、目標特性設定モジュール67により、線形な目標R−N特性が設定されるとする。この場合、R−T特性テーブル算出モジュール62は、R−T特性を非線形に定める。すなわち、リモコン開度に対して目標スロットル開度は非線形に変化することになる。そして、スロットル開度に対してエンジン回転速度が非線形に変動することにより、結果的に、リモコン開度に対してエンジン回転速度を線形に変化させることができる。このようにして、リモコンレバー8aの操作量とエンジン出力との関係をリニアに設定することができるので、リモコンレバー8aの直感的な操作によってエンジン出力を容易に所望の値とすることができる。これにより、熟練していない操船者であっても、操船状況に応じてエンジン出力を適切に調整することができる。
リセット処理モジュール66は、標準のR−T特性テーブルを記憶した不揮発性メモリ66mを備えている。この標準のR−T特性テーブルは、たとえば、R−T特性を線形に定めるものである。リセット処理モジュール66は、リセットスイッチ13が操作されると、記憶部60の学習データをリセット(消去)するとともに、R−T特性テーブル記憶部62Mに対して、不揮発性メモリ66mに記憶されている標準のR−T特性テーブルを書き込む。これにより、R−T特性が前記標準のR−T特性にリセットされる。
リセット処理モジュール66には、たとえば、船外機ECU11から、エンジン39が運転中か否かに関するデータが与えられている。そして、リセット処理モジュール66は、エンジン39が停止状態である場合にのみ、リセットスイッチ13からのリセット入力を受け付けて、前述のリセット処理を行う。エンジン39が停止状態でなければ、スイッチ13からの入力を無効化し、前記リセット処理を行わない。
以下の説明では、リモコン開度の代替指標として、リモコンレバー8aの位置検出結果をA/D変換した値をさらに0〜100%に変換した値を用いる。また、スロットル開度についても同様に、0〜100%に変換した値を用いる。各数値の表し方が、これらに限らないことは言うまでもない。
図4は、航走制御装置20の動作を説明するためのフローチャートである。データ収集処理部64は、スロットル開度φの取り得る値の範囲をm(mは2以上の自然数)個の区間M1,M2,……,Mmに分割し、個々の区間Miごとに学習データの個数をカウントするカウンタci(i=1,……,m)と、スロットル開度φおよびエンジン回転速度Nの組からなる学習データ(φ,N)を保存する領域とを記憶部60内に確保し、これらを初期化する(ステップS1)。前記区間Miおよびカウンタciのイメージを図5に示す。スロットル開度φは、この例では、0%(全閉)ないし100%(全開)で表されている。このスロットル開度φの取り得る値の全範囲0〜100%は、この例では7つの区間M1〜M7に分割されている。第1の区間M1はφ≦0、第2の区間M2は0<φ≦20、第3の区間M3は20<φ≦40、第4の区間M4は40<φ≦60、第5の区間M5は60<φ≦80、第6の区間M6は80<φ<100、第7の区間M7はφ≧100である。これらの第1〜第7の区間M1〜M7にそれぞれ対応して、カウンタc1〜c7が設けられる。
データ収集処理部64は、直進航行判定部65によって船舶1が直進航行状態であると判定されていることを条件に(ステップS2)、船外機ECU11からスロットル開度φおよびエンジン回転速度Nのデータの組を取得する(ステップS3)。データ収集処理部64は、スロットル開度データに基づいて、取得したデータの組をいずれの区間Miに分類すべきかを判断する(ステップS4)。そして、データ収集処理部64は、その判断結果の区間Miに対応するカウンタciをインクリメントするとともに(ステップS5)、当該データを記憶部60に格納する(ステップS6)。
N−T特性テーブル算出モジュール63は、すべての区間のカウンタc1〜c7の値が所定の下限値(この実施形態では「1」)以上かどうかを判断する(ステップS7)。全区間のカウンタc1〜c7の値が前記下限値以上であれば、N−T特性テーブル算出モジュール63は、N−T特性テーブルの算出を行う(ステップS8)。もしも、いずれかの区間のカウンタciの値が前記下限値に達していないときには、学習データが不足しているものと判断して、N−T特性テーブルの算出は行わない。この場合、ステップS2からの処理が繰り返される。
より具体的には、カウンタciの値が全区間で下限値「1」以上になっているとき、N−T特性テーブル算出モジュール63は、個々の区間Miに分類された複数の学習データに対して、次式(1)による計算を行って、個々の区間毎のエンジン回転速度の平均値Niおよびスロットル開度の平均値φiを代表値データとして求める。なお、次式(1)において、φおよびNに付したオーバーラインは、それぞれの平均値を表すものとする。
これにより、m次元の平均エンジン回転速度ベクトルN=[N1,N2,……,Nm]と、同じくm次元の平均スロットル開度ベクトルφ=[φ1,φ2,……,φm]との組[N,φ]が得られる。これがN−T特性テーブルであり、図6に例示するように、エンジン回転速度とスロットル開度との関係を表す。この図6では、一般的なエンジンに見られるように、エンジン回転速度が、低スロットル開度域においてはスロットル開度の増加に対して比較的急激に増加し、高スロットル開度域においてはスロットル開度の増加に対して比較的緩慢に増加する特性の例が示されている。実データの間の特性は、必要に応じて、線形補間によって補われる。
一方、R−T特性テーブル算出モジュール62は、リモコン開度が0%(全閉)〜100%(全開)の範囲の値を取り得るものとしてl(l(エル)は2以上の自然数)次元のリモコン開度ベクトルθを次式(2)で算出する(ステップS9)。このリモコン開度ベクトルθのl(エル)個の要素θjは、0〜100の範囲(リモコン開度が取り得る全範囲)をl(エル)−1個に等分する値を有する。たとえば、l(エル)=101のとき、θj=0,1,2,……,100となる。
一方、目標特性設定モジュール67によって、線形な目標R−N特性が設定される場合、リモコン開度θに対して線形に変化するl(エル)次元の目標エンジン回転速度ベクトルNは、たとえば、次式(3)で与えられる。この式(3)は、平均エンジン回転速度の最小値N1と最大値Nmとの間をl(エル)−1個に等分するl(エル)個の目標エンジン回転速度Njを与える。なお、次式(3)において、Nおよびθに付した記号「^」は、それらの目標値を表す。以下同じ。
R−T特性テーブル算出モジュール62は、式(3)により得られる目標エンジン回転速度Njに対応するスロットル開度φjを、前記N−T特性テーブルに当てはめて求める。N−T特性テーブル中に該当するデータがない場合には、R−T特性テーブル算出モジュール62は、近傍のデータを用いた線形補間演算を行って、対応するスロットル開度を求める。これにより、l(エル)次元の目標スロットル開度ベクトルφが得られる(ステップS10)。目標エンジン回転速度Njに対する目標スロットル開度φjの関係は、図7に示されている。
こうして、l(エル)次元のリモコン開度ベクトルθおよびl(エル)次元の目標スロットル開度ベクトルφが得られ、これらの組(θ,φ)がR−T特性テーブルとして、R−T特性テーブル記憶部62Mに格納される(ステップS11)。こうして、R−T特性テーブルが更新される。このR−T特性テーブルの一例は、図8に示されている。この例では、リモコン開度の変化に対してスロットル開度が非線形変化を示すようになっており、低開度域ではスロットル開度の急激な変化が抑制され、高開度域ではリモコン開度に対するスロットル開度の応答が上がるようになっている。このように、リモコン開度に対して目標スロットル開度を非線形に設定することによって、図6に示すような非線形特性を有するエンジン39において、リモコン開度の変化に対してエンジン回転速度を線形に変化させることができる。
R−T特性テーブルを求めた後は、データ収集処理部64は、さらに学習を行うべきか否か、すなわち、収集済みの学習データが十分かどうかを判断する(ステップS12)。そして、さらに学習を行うべきであると判断されたときは、ステップS2からの処理が繰り返される。十分な学習データに基づいてR−T特性テーブルが求められた場合には、処理を終了する。
ステップS2において、船舶1が直進航行状態でないと判断されたときには、ステップS3〜S6の処理が省かれる。すなわち、学習データの収集が行われない。
全区間M1〜M7にて学習データを獲得してR−T特性テーブルを算出可能な状態になった場合であっても、航走中にR−T特性を変更すると、エンジン回転速度が突然に変動するので、乗員に不快感を与えるおそれがある。この問題は、たとえば、図9に示すように、シフト位置が中立位置、すなわちスロットル開度が全閉のときに限定して、N−T特性テーブル算出モジュール63およびR−T特性テーブル算出モジュール62による処理を行うことによって回避できる(ステップS15)。また、図10に示すように、N−T特性テーブル算出モジュール63およびR−T特性テーブル算出モジュール62による処理はスロットル開度が全閉か否かに関係なく行うこととして、目標スロットル開度算出モジュール61が参照するR−T特性テーブル記憶部62Mの書き換えを、スロットル開度が全閉のときに限定して行うようにしてもよい(ステップS16)。
目標R−N特性を表す式(3)は、関数f(θ)を用いて、次式(4)のように一般化することができる。
つまり、目標R−N特性は、線形特性に限らず、多様な特性に設定することができ、そのような目標R−N特性を適用して前述のステップS9〜S11の処理を行うことによって、当該目標R−N特性を実現するためのR−T特性テーブルが得られる。
よって、N−T特性テーブルが学習済み(測定済み)であれば、ステップS9〜S11の処理のみで、多様なR−N特性を実現可能である。
図11は、リモコン開度に対する目標エンジン回転速度の特性(目標R−N特性)を非線形に設定した例を示す。この例では、低開度域において目標エンジン回転速度が低く抑えられており、中開度域においてリモコン開度に対する目標エンジン回転速度の変化が急激になり、さらに、高開度域においてリモコン開度に対する目標エンジン回転速度の変化が緩慢になるように特性が設定されている。この目標R−T特性において、リモコン開度の全区間を前記式(2)に従って等間隔に区分して、リモコン開度ベクトルθを求める。そして、個々のθjに対応する目標エンジン回転速度Njを求め、目標エンジン回転速度ベクトルNとする。この目標エンジン回転速度ベクトルNの個々の要素Njを、図12に示すように、N−T特性テーブルに当てはめて、対応する目標スロットル開度φjを求める。これにより、リモコン開度ベクトルθに対応する目標スロットル開度ベクトルφが得られ、こうして、R−T特性テーブルが求められる。このR−T特性テーブルの一例が、図13に示されている。目標R−T特性が非線形であるため、図12において、目標エンジン回転速度ベクトルNの要素Njは、目標エンジン回転速度の座標軸上で不均等な間隔で並んでいる。
次に、目標特性設定モジュール67の働きについて説明する。
図14は、入力装置14および表示装置15を一体化した目標特性入力部9の一例を示す図である。表示装置15の画面には、リモコン開度に対する目標エンジン回転速度の特性(目標R−N特性)がグラフ表示される。目標R−N特性を表す曲線において、変曲点71が示されており、この変曲点71よりも高開度域(リモコン開度上限(全開)まで)の特性が高速特性であり、変曲点71よりも低開度域(リモコン開度下限(全閉)まで)の特性が低速特性である。操作者は、変曲点71の位置を変化させ、さらに、低速特性カーブ(低速特性曲線部分)および/または高速特性カーブ(高速特性曲線部分)の形状を変更することにより、目標特性を設定する。ただし、この実施形態では、変曲点71は、線形特性を表す直線上でのみ位置を変更できるようになっている。目標R−N特性曲線が直線である場合や、上または下に凸の部分のみを含み、実質的に変曲点を有しない場合には、変曲点71の初期位置は、たとえば、リモコン開度の中央値(50%)に対応する目標R−N特性曲線上に定めればよい。
入力装置14は、表示装置15の画面に配置されたタッチパネル75と、このタッチパネルの操作のためのタッチペン83と、表示装置15の画面の側方に設けられた十字ボタン76と、目標R−N特性の変更操作を確定するための特性変更ボタン84と、高速特性を変化させるときに操作される高速特性ボタン85(変更対象指定手段)とを含む。十字ボタン76、特性変更ボタン84および高速特性ボタン85は、キー入力手段を構成している。
十字ボタン76は、上下ボタン77,78(曲線形状変更入力手段)と、左右ボタン79,80(変曲点位置変更入力手段)とを備えている。この実施形態では、たとえば、十字ボタン76の左右ボタン79,80を操作することにより、図15に示すように、目標R−N特性曲線における変曲点71を左右に移動させることができる。この実施形態では、左右ボタン79,80の操作により、変曲点71は、リモコン開度に対するエンジン回転速度の線形特性を表す直線に沿って移動するようになっている。
また、十字ボタン76の上下ボタン77,78の操作により、目標R−N特性曲線の形状を変化させることができるようになっている。これにより、R−N特性曲線を所望の形状に変更することができ、たとえば、R−N特性曲線を、線形特性(図16中央図)を基準として、上に凸(図16左図)または下に凸の曲線形状とすることができる(図16右図)。このとき、高速特性ボタン85を操作している状態で上下ボタン77,78を操作すれば、高速特性カーブの形状を変化させることができる。また、高速特性ボタン85操作せずに、上下ボタン77,78を操作することにより、低速特性カーブの曲線形状を変化させることができる。
タッチパネル75およびタッチペン83を用いても、同様の操作を行うことができる。すなわち、タッチペン83で変曲点71をポイントし、タッチペン83に設けられたクリックボタン83Aを押しながら変曲点71を左右にドラッグする操作によって、線形特性を表す直線上で変曲点71の位置を変更することができる。また、高速特性領域側におけるドラッグ操作により高速特性カーブを変更することができ、低速特性領域側におけるドラッグ操作により低速特性カーブの形状を変更することができる。このように、タッチパネル75およびタッチペン83は、変曲点位置変更入力手段および曲線形状変更入力手段としての機能を有する。
線形特性は、図17に示すように、リモコン全閉(θ=0)のときアイドリング回転速度(N1)、リモコン全開(θ=100)のとき最大回転速度(Nm)となる直線で与えられる。変曲点71のリモコン開度θpが定まると、このリモコン開度θpに対応するエンジン回転速度Npは、次式(5)で与えられる。
変曲点(θp,Np)が決まると、低速特性は(0,N1)および(θp,Np)を両端とする曲線で表され、高速特性は(θp,Np)および(100,Nm)を両端とする曲線で表される。値N1,Nmには、上記式(1)式で求まる平均値N1,Nmを用いればよいが、予め定めた別の値を用いてもかまわない。
高速特性および低速特性の曲線は、たとえば、次式(6)のような関数で表される。
ここでkl,khは設定パラメータであり、たとえば、0.1≦kl,kh≦10の範囲を取るものとする。kl=kh=1のとき線形特性となる。
変曲点は一般にハンプ域(造波抵抗が最大となる速度域)を越えるときに用いるエンジン回転速度よりもやや低いエンジン回転速度付近(たとえば、2000rpm前後)に設定しておくとよい。このように設定しておくことで、ハンプ域よりも低速の操船(たとえば離着岸やトローリングなどに)適した低速特性と、ハンプ域から高速にかけての操船(たとえば長距離移動など)に適した高速特性とを両立させることが可能となる.
低速特性は離着岸やトローリングなどに多用されるエンジン回転速度領域の特性であり、操作性を重視して設定されるべきである。一般には、線形特性、または大きくリモコンレバー8aを操作してもエンジン回転速度が上昇しにくい特性に設定しておくとよい。このように設定しておくことにより、エンジン回転速度の急激な増加を回避でき、エンジン出力の微調整が容易になる。
高速特性は、高速で移動する場面や、波の高い状態での航行時のようにエンジンの高レスポンスが要求されるような場面で多用されるエンジン回転速度領域の特性である。一般には、線形特性、または僅かなリモコンレバー操作でエンジン回転速度が上昇しやすい高レスポンス特性に設定しておくとよい。このように設定しておくことで、リモコンレバー8aを奥まで倒し込むことなく、良好なレスポンスで必要な出力が得られる。したがって、たとえば、荒れている海面で波を乗り越えるときに有効である。また、変曲点がハンプ域よりも低エンジン回転速度側に設定してあるので、容易にプレーニング状態(造波抵抗が小さくなり摩擦抵抗が支配的になる状態)に達することができる。
すでに述べたように、目標特性曲線は、線形特性を中心に上に凸または下に凸のカーブとすることができるが、この実施形態では、変曲点の前後で次のような制約1〜3を与えている。
制約1 低速特性および高速特性のうちの一方の特性が上に凸に設定されているとき、他方の特性は線形または下に凸の特性しか設定できない。
制約2 低速特性および高速特性のうちの一方の特性が下に凸に設定されているとき、他方の特性は線形または上に凸の特性しか設定できない。
制約3 低速特性および高速特性のうちの一方の特性が線形に設定されているとき、他方の特性は上に凸、線形、下に凸の特性に設定できる。
これらは、変曲点の前後で、低速特性および高速特性の両方が上に凸または下に凸となり、特性の連続性が損なわれることを防ぐための制約である。全リモコン開度範囲で上に凸または下に凸の特性に設定したい場合は、変曲点をアイドリング回転速度、すなわちリモコン開度が0%の位置に設定し、高速特性のカーブを調整すればよい。むろん、逆に、変曲点を最大回転速度、すなわちリモコン開度が100%の位置に設定して、低速特性のカーブを調整してもよい。
目標R−N特性曲線の設定は、停船中に行うこともできるし、航行中に行うこともできる。
図18は、停船中(シフト位置が中立位置のとき)に目標R−N特性曲線の設定を行う際の処理を説明するためのフローチャートである。操作者は、表示装置15に表示された目標R−N特性曲線を確認し、タッチパネル75または十字ボタン76を用いて特性曲線の設定操作を行う。たとえば、タッチパネル75で変曲点71を指定して左右に動かすと、線形特性に拘束された状態で変曲点が移動する(図17参照)。さらに、高速特性または低速特性をタッチパネル75で指定し、上下に動かすと、上に凸または下に凸の特性カーブが得られる(ステップS21)。
操作者は、大まかな特性カーブを設定した後に、特性変更ボタン84を押す(ステップS22)。これに応答して、目標特性設定モジュール67は、設定された目標特性テーブルを生成し、目標R−N特性テーブル記憶部67Mに格納する。R−T特性テーブル算出モジュール62は、設定された目標特性テーブルに対してリモコン開度ベクトルθを入力し、目標エンジン回転速度ベクトルNを算出する(ステップS23)。さらに、R−T特性テーブル算出モジュール62は、N−T特性テーブルに対して目標エンジン回転速度ベクトルNを入力し、目標スロットル開度ベクトルφを算出する(ステップS24)。こうして得られたベクトルの組(θ,φ)は、更新されたR−T特性テーブルとして、R−T特性テーブル記憶部62Mに格納される(ステップS25)。
目標スロットル開度算出モジュール61は、その後にリモコンレバー8aが操作されてシフト位置が前進位置または後進位置とされたときに、R−T特性テーブル記憶部62Mに格納された新たなR−T特性テーブルに従って目標スロットル開度を設定する。これにより、操作者によって設定された目標R−N特性に従ってエンジン39の出力(エンジン回転速度)が制御されることになる。
図19は、航行中(シフト位置が中立位置以外のとき。より具体的にはシフト位置が前進位置または後進位置のとき)に目標R−N特性の設定を行う場合の処理を説明するためのフローチャートである。目標特性設定モジュール67は、スロットル操作部8からの出力と現在設定されている目標R−N特性(目標R−N特性テーブル)とに基づいて、現在のリモコン開度が高速特性側の開度領域にあるか低速特性側の開度領域にあるかを判定する(ステップS31)。操作者は、目標特性を上に凸方向に微調整したい場合は、図20に示すように、リモコンレバー8aを動かさずに、十字ボタン76の上ボタン77を押す(図20では、高速特性を変更する例を示す)。上ボタン77を一回押すごとに、ステップS31での判定結果に応じて低速特性または高速特性の新たな目標特性が設定されて、上に凸の度合いの強い目標特性が目標R−N特性テーブル記憶部67Mに格納される(ステップS32)。それに応じて、R−T特性テーブル算出モジュール62によりR−T特性テーブルが再計算される(ステップS33)。目標特性を下に凸方向に微調整したい場合は、リモコンレバー8aを動かさずに、十字ボタン76の下ボタン78を押す。下ボタン78を一回押すごとに、ステップS31での判定結果に応じて低速特性または高速特性の新たな目標特性が設定され、下に凸の度合いの強い目標特性が目標R−N特性テーブル記憶部67Mに格納される(ステップS32)。それに応じて、R−T特性テーブル算出モジュール62によりR−T特性テーブルが再計算される(ステップS33)。このように、航行中には、スロットル操作部8は、低速特性カーブまたは高速特性カーブのいずれかを形状変更対象の曲線部分として指定する変更対象指定手段として兼用される。
目標スロットル開度算出モジュール61は、微調整後のR−T特性テーブルに従って目標スロットル開度を算出する。この目標スロットル開度は、1次遅れフィルタ68を通して、船外機ECU11に与えられる(ステップS34)。
このようにして、操船者は、船舶1を航行させている状態で、リモコンレバー8aの操作に対するエンジン39の挙動を確認しながら、目標特性を微調整できる。
R−T特性テーブルが航行中に変化することによってスロットル開度が急変すると、エンジン出力が急変して、乗員に違和感を与えるおそれがある。そこで、この実施形態では、スロットル開度の急激な変化を防ぐために,目標スロットル開度のステップ状の変化を鈍らせる1 次遅れフィルタ68を設け、この1次フィルタ68を通過した目標スロットル開度を最終的な目標スロットル開度として船外機ECU11に向けて出力するようにしている。1次遅れフィルタ68は、航走中の再計算により目標特性のステップ状の変化が発生してからその影響が十分小さくなるまでの一定時間(たとえば、5秒間)だけ働くようになっている。
なお、この実施形態では1次遅れフィルタ68を用いているが、目標スロットル開度のステップ状変化を抑制する手段は他にも考えられる。たとえば、現在のスロットル開度と再計算後の目標スロットル開度とを線形補間して、スロットル開度を現在値から目標値まで漸次的に変化させることも可能である.
図21は、十字ボタン76を用いて目標R−N特性テーブルを変更する際に目標特性設定モジュール67が実行する処理の一例を説明するためのフローチャートである。目標特性設定モジュール67は、ボタン入力の有無を監視する(ステップS41)。いずれかのボタン入力が検出されると、さらに、目標特性設定モジュール67は、十字ボタン76の左右ボタン79,80が押されているか否かを判定する(ステップS42)。左右ボタン79,80が押されている場合は、変曲点のリモコン開度θpを次式(7)により更新して(ステップS43)、新たなリモコン開度θpNEWを求める。次式(7)において、Δθは左右ボタン79,80を一回押したときの変化量(この実施形態では一定値)である。たとえば、右ボタン80が押されたときのΔθの値を+5%とし、左ボタン79が押されたときのΔθの値の−5%に設定してもよい。
θpNEW = θp +Δθ …… (7)
目標特性設定モジュール67は、さらに、更新された変曲点リモコン開度θpに対応するエンジン回転数Npを前記式(5)によって求める(ステップS44)。これにより、更新後の変曲点が定まる。
一方、ステップS42において、左右ボタン79,80が押されていないときには、上下ボタン77,78が押されたことになる。この場合、目標特性設定モジュール67は、さらに、高速特性ボタン85が押されているかどうかを判断する(ステップS45)。
高速特性ボタン85が押されている場合には、前記式(6)の設定パラメータkhを次式(8)によって得られる新たなパラメータkhNEWに更新する。これによって、高速特性のカーブが更新される(ステップS46)。
hNEW=kh+Δkh …… (8)
ここでΔkhは、上下ボタン77,78を一回押したときの変化量(この実施形態では、一定値)である。たとえば、kh≦1の場合には、上ボタン77を押したときのΔkhを−0.1に定め、下ボタン78を押したときのΔkhを+0.1に定めてもよい。また、kh>1の場合には、上ボタン77を押したときのΔkhを−1に定め、下ボタン78を押したときのΔkhを+1に定めてもよい。
高速特性ボタン85が押されていない場合は、前記式(6)の設定パラメータklを次式(9)によって得られる新たなパラメータklNEWに更新する。これによって、低速特性のカーブが更新される(ステップS47)。
lNEW=kl+Δkl …… (9)
ここでΔklは上下ボタン77,78を一回押したときの変化量(この実施形態では、一定値)である。たとえば、kl≦1の場合には、上ボタン77を押したときのΔklを−0.1に定め、下ボタン78を押したときのΔklを+0.1に定めてもよい。また、kl>1の場合には、上ボタン77を押したときのΔklを−1に定め、下ボタン78を押したときのΔklを+1に定めてもよい。
さらに、目標特性設定モジュール67は、特性変更ボタン84が押されているかどうかを判断する(ステップS48)。特性変更ボタン84が押されていなければ、ステップS41からの処理を繰り返し、引き続き操作者の入力を受け付け、変曲点の位置変更および/または高速・低速特性のカーブの更新を行う。
特性変更ボタン84が押されると、目標特性設定モジュール67は、設定された特性を目標R−N特性テーブルとして確定し(ステップS49)、確定された目標R−N特性テーブルを目標R−N特性テーブル記憶部67Mに格納して、目標特性設定処理を終了する。
次に、タッチパネル75からの入力に対する目標特性設定モジュール67の処理を説明する。タッチパネル75への入力は、タッチペン83で表示装置15の画面に直接触れることで行えるが、同様の操作は、マウスなどのポインティングデバイスを用いても行うことができる。
表示装置15の表示画面は、図22に示すように、3つの領域に分割できる。すなわち、変曲点のリモコン開度θp を中心とした所定の範囲である変曲点操作領域、その左側の低速特性操作領域、および変曲点操作領域の右側の高速特性操作領域である。より具体的には、各領域は、次のように定められる。
低速特性操作領域 0≦θ<θp−5
変曲点操作領域 θp−5≦θ≦θp+5
高速特性操作領域 θp+5<θ≦100
図23は、目標特性設定モジュール67によるタッチパネル75からの入力に対する処理の一例を説明するためのフローチャートである。目標特性設定モジュール67は、まず、表示装置15の画面上に表示されたカーソル90(図22参照)の位置(タッチペン83で押さえている位置、または最後に押さえた位置)を検出する(ステップS51)。さらに、目標特性設定モジュール67は、タッチペン83に備えられたクリックボタン83Aが、ドラッグ操作のために押されているか否かを判定する(ステップS52)。クリックボタン83Aが押されていなければ、ステップS51に戻り、クリックボタン83Aが押されている場合には、カーソル90の画面上での現在位置をメモリ(図示せず)に記憶する(ステップS53)。
カーソル90の現在位置が記憶されると、目標特性設定モジュール67は、その位置が、上記3つの領域、すなわち、低速特性操作領域、変曲点操作領域および高速特性操作領域の何れの領域にあるかを判断する(ステップS54)。カーソル位置が変曲点操作領域にある場合は、変曲点位置更新処理(ステップS55)を行い、カーソル位置が低速特性操作領域にある場合には、低速特性カーブ更新処理(ステップS56)を行い、カーソル位置が高速特性操作領域にある場合には高速特性カーブ更新処理(ステップS57)を行う。
変曲点位置更新処理(ステップS55)では、目標特性設定モジュール67は、前記メモリに記憶されたカーソル位置からタッチペン83によるドラッグ操作(クリックボタン83Aを押したままタッチペン83の位置を画面上で変更する操作)によってカーソル90の移動がされた場合に、カーソル位置の上下方向の変位量は無視し、カーソル位置の左右方向の変位量のみを検出する。そして、目標特性設定モジュール67は、検出された変位量に応じて前記変曲点71のリモコン開度θpを更新し、対応するエンジン回転数Npを(5)式により求める。こうして変曲点71が変更される。
低速特性カーブ更新処理(ステップS56)では、目標特性設定モジュール67は、前記メモリに記憶されたカーソル位置からタッチペン83によるドラッグ操作によってカーソル90の移動がされた場合に、カーソル位置の左右方向の変位量は無視し、カーソル位置の上下方向の変位量のみを検出する。そして、目標特性設定モジュール67は、検出された変位量に応じて前記パラメータklを更新する。こうして、低速特性カーブが変更される。
高速特性カーブ更新処理(ステップS57)でも同様に、目標特性設定モジュール67は、前記メモリに記憶されたカーソル位置からタッチペン83によるドラッグ操作によってカーソル90の移動がされた場合に、カーソル位置の左右方向の変位量は無視し、カーソル位置の上下方向の変位量のみを検出する。そして、目標特性設定モジュール67は、検出された変位量に応じて前記パラメータkhを更新する。こうして、高速特性カーブが変更される。
目標特性設定モジュール67は、変曲点位置更新処理(ステップS55)、低速特性カーブ更新処理(ステップS56)または高速特性カーブ更新処理(ステップS57)の後、特性変更ボタン84が押されているかどうかを判定する(ステップS58)。特性変更ボタン84が押されていなければ、ステップS51からの処理を繰り返す。これにより、操作者は、引き続き目標R−N特性テーブルの変更を行うことができる。一方、特性変更ボタン84が押されると、目標特性設定モジュール67は、目標特性テーブルを確定し、これを目標R−N特性テーブル記憶部67Mに保存する(ステップS59)。これに応じて、R−T特性テーブル算出モジュール62によって、更新後の目標R−Nテーブルに応じたR−T特性テーブルが算出される。
このように、この実施形態によれば、タッチパネル75および/または十字ボタン76などを用いた直感的な操作によって、操作者が、リモコン開度に対するエンジン回転速度の目標特性を容易に設定することできる。また、同様の操作により、設定済みの目標特性の変更も容易に行うことができる。これにより、リモコンレバー8aの操作と、エンジン回転速度の変化とを個々の操船者のフィーリングに適合させることができる。その結果、船舶1の操船が容易になり、操船者の習熟度によらずに、適切な操船を行うことができる。
なお、目標特性設定モジュール67によって設定された目標R−N特性を目標R−N特性テーブル記憶部67Mに複数個登録可能としておき、船舶1が置かれた状況に応じて、または操船者の好みに応じて、予め登録された複数の目標特性からいずれか1つを選択して読み出し、この選択された目標特性を適用できるようにしてもよい。
すなわち、図24に示すように、入力装置14から所定の操作を行うことによって、目標R−N特性テーブル記憶部67Mに記憶されている複数の目標R−N特性が目標特性設定モジュール67によって読み出されて、表示装置15に表示される(ステップS81)。操船者は、選択手段としての入力装置14を操作することによって、いずれか一つの目標R−N特性を選択する(ステップS82)。この選択された目標R−N特性が、R−T特性テーブル算出モジュール62における演算に適用される(ステップS83)。
R−T特性テーブル記憶部62Mには、目標R−N特性テーブル記憶部67Mに記憶されている複数の目標R−N特性にそれぞれ対応して過去に算出されたR−T特性を格納しておくことが好ましい。この場合には、入力装置14の操作によっていずれか一つの目標R−N特性が選択されると、R−T特性テーブル算出モジュール62は、当該目標R−N特性に対応するR−T特性テーブルを選択する。この選択されたR−T特性テーブルに基づいて、目標スロットル開度算出モジュール61による演算が行われる。
図25は、この発明の第2の実施形態に係る構成を説明するためのブロック図である。データ収集部64によって必要量のデータが記憶部60に蓄積されると、N−T特性テーブル算出モジュール63は、新たなN−T特性テーブルを算出する。この新たなN−T特性テーブルは、前述の実施形態では、そのままN−T特性テーブル記憶部63Mに格納され、R−T特性テーブルの算出に適用されている。これに対して、この実施形態では、N−T特性テーブル更新モジュール100の働きによって、一定条件下で、R−T特性テーブルの算出に適用すべきN−T特性テーブルの更新が行われるようになっている。
図26は、N−T特性テーブル更新モジュール100の働きを説明するためのフローチャートである。N−T特性テーブル更新モジュール100は、N−T特性テーブル算出モジュール63によって新たなN−T特性が算出されると(ステップS60のYES)、N−T特性テーブル記憶部63Mに格納されている従前のN−T特性を読み出す(ステップS61)。N−T特性テーブル更新モジュール100は、さらに、従前のN−T特性に対する新たなN−T特性の差分を算出する(ステップS62。差分算出手段)。差分の算出は、たとえば、新旧のN−T特性に対応するエンジン回転速度ベクトルNの間の距離計算を行うことによって得られる。また、新旧のN−T特性に対応するエンジン回転速度ベクトルN間で、対応する要素間の差を求め、そのうち最大のものを差分として算出してもよい。
N−T特性テーブル更新モジュール100は、算出された差分が所定のしきい値未満かどうかを判断する(ステップS63)。差分がしきい値未満なら、N−T特性テーブル更新モジュール100は、その新たなN−T特性を、N−T特性テーブル記憶部63Mに無条件に書き込む(ステップS67)。これにより、R−T特性テーブルの算出のために適用されるN−T特性テーブルが最新のものに更新される。
一方、前記算出された差分がしきい値以上である場合には、このことが操船者に通知される(ステップS64。通知手段)。この通知は、たとえば、表示装置15に所定のメッセージを表示することによって行われてもよい。メッセージは、たとえば、「エンジンの運転状態が変わりました。最新の運転状態を反映させますか?」といったものでもよい。メッセージ表示の他にも、たとえば、スピーカーから警報音やメッセージ音声を発生させることによって、操船者に対する通知が行われてもよい。
通知が行われると、操船者は、特性更新指示手段として用いられる入力装置14を操作することによって、新たなN−T特性を適用するかどうかを選択する(ステップS65)。すなわち、たとえば、表示装置15に、新たなN−T特性に更新するか、従前のN−T特性を継続使用するかを選択するためのボタンが表示される。操船者は、これらのうちのいずれかを選択して操作することで、N−T特性を選択できる
新たなN−T特性を適用すべきことが選択された場合には(ステップS66のYES)、N−T特性テーブル更新モジュール100は当該新たなN−T特性をN−T特性テーブル記憶部63Mに書き込む(ステップS67。更新手段)。これにより、R−T特性の算出に適用されるN−T特性が更新される。
従前のN−T特性の継続使用が選択されたときには(ステップS64のNO)、N−T特性テーブル更新モジュール100は、当該新たなN−T特性を破棄する(ステップS68)。
たとえば、一時的に乗員数や積荷が増減したときのように、船舶が通常とは異なる状況で航走する場合がある。このような場合には、リモコン開度に対するエンジン回転速度の特性が従前の特性に比較して大きく変動するおそれがある。このような状況のときにまでN−T特性を自動更新すると、通常の航走状態に戻ったときに、所望の航走制御がなされなくなり、操船者に違和感を与えるおそれがある。
そこで、この実施形態では、新たに算出されたN−T特性が従前の特性から大きく変動した場合に、操船者の承認を待って、N−T特性を更新するようにしている。
図27は、N−T特性テーブル更新モジュール100の別の処理例を説明するためのフローチャートである。この図27において、図26の各ステップに対応するステップには同一参照符号を付して示す。この処理例は、N−T特性テーブル記憶部63Mに複数のN−T特性を格納することができる場合に適用可能である。
N−T特性テーブル更新モジュール100は、N−T特性テーブル算出モジュール63によって新たなN−T特性が算出されると(ステップS60のYES)、その新たなN−T特性をN−T特性テーブル記憶部63Mに格納する(ステップS70)。ただし、この時点では、その新たなN−T特性がR−T特性の算出に適用されるわけではない。
従前のN−T特性に対する新たなN−T特性の差分が少ないとき(ステップS63のYES)、または操船者によって新たなN−T特性の適用が選択されたときには(ステップS66のYES)、その新たなN−T特性が適用される(ステップS67のYES)。この処理は、N−T特性テーブル更新モジュール100が、N−T特性テーブル記憶部63Mに格納されている複数のN−T特性のなかから、当該新たなN−T特性を、R−T特性の算出に適用すべき特性として選択して設定することによって達成される。
新たなN−T特性が不適用とされる場合(ステップS67のNO)でも、その新たなN−T特性を破棄する必要はない。
図28は、この発明の第3の実施形態に係る航走制御装置の構成を説明するためのブロック図である。この図28において、前述の図3に示された各部に対応する部分には、図3の場合と同一の参照符号を付して示す。この実施形態では、データ収集処理部64は、直進航行判定部65によって直進航行状態であると判定されているときに、船外機ECU11からエンジン回転速度Nのデータを収集するとともに、スロットル操作部8の出力であるリモコン開度θのデータを収集し、これを学習データとして記憶部60に格納する。この記憶部60に格納されたエンジン回転速度Nおよびリモコン開度θのデータは、N−R特性テーブル算出モジュール95によって対応付けられ、エンジン回転速度−リモコン開度特性(N−R特性)テーブルが算出される。このN−R特性テーブルは、N−R特性の実測値を表すものであり、N−R特性テーブル記憶部96に格納される。
N−T特性テーブル算出モジュール63は、R−T特性テーブル記憶部62Mから現在のR−T特性テーブルを読み出し、これと前記実測されたN−R特性テーブルとに基づいてN−T特性テーブルを算出し、N−T特性テーブル記憶部63Mに格納する。
この他の構成および処理は前述の第1の実施形態の場合と同様である。
このように、この実施形態では、エンジン回転速度Nおよびリモコン開度θを学習データとして測定し、これに基づいて、所望の目標R−N特性を実現できる。この実施形態では、データ収集処理部64およびN−R特性テーブル算出モジュール95などにより、エンジン特性測定手段が構成されている。
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、船舶1に一つの船外機10が備えられた構成を例にとって説明したが、船舶1の船尾3に複数個(たとえば2個)の船外機を搭載した構成の船舶に対しても、この発明を同様に適用することができる。
また、前述の第1および第2の実施形態では、スロットル開度が取りうる全範囲を区分した複数の区間の全てについて測定値が得られることを条件に(図4のステップS7)R−T特性テーブルを求めるようにしているが、たとえば、スロットル全閉(0%)およびスロットル全開(100%)の区間M1,M7についての測定値が得られることを条件にR−T特性テーブルの算出を許容することとしてもよい。これにより、目標R−N特性に近似したR−T特性テーブルを速やかに得ることができる。そして、その後に他の区間についての測定データを加味してR−T特性が修正されていくことによって、操作量−エンジン回転速度特性を、目標R−N特性へと高精度に収束させていくことができる。
さらに、前述の第3の実施形態に関して、図24〜図27を参照して説明したのと同様な変形を施すことが可能である。ただし、第3の実施形態に対して前述の第2の実施形態と同様な変形を施す際に、N−T特性の更新を条件付きで行う代わりに、N−R特性の更新を条件付きで行うようにしてもよい。
また、前述の実施形態では、エンジンの回転速度特性をエンジン出力特性として測定しているが、エンジン出力特性の測定には、別の技術を適用することもできる。たとえば、船舶1の速度を測定する速度センサを用いてエンジンの出力特性を間接的に測定できる。より具体的には、速度センサによって測定される速度から船舶1の加速度を求め、この加速度の特性をエンジン出力特性とみなしてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この発明の一実施形態に係る船舶の構成を説明するための概念図である。 船外機の構成を説明するための図解的な断面図である。 電動スロットルの制御に関連する構成を説明するためのブロック図である。 航走制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。 エンジン回転速度−スロットル開度特性の測定を説明するための図である。 エンジン回転速度−スロットル開度特性の算出例を示す図である。 リモコン開度−エンジン回転速度特性の目標特性に対応したエンジン回転速度を、測定したエンジン回転速度−スロットル開度特性に当てはめて、目標スロットル開度を求める処理を説明するための図である。 リモコン開度−目標スロットル開度特性の一例を示す図である。 リモコン開度−目標スロットル開度の変更に伴う乗員の不快感を抑制するための処理の一例を示すフローチャートである。 リモコン開度−目標スロットル開度の変更に伴う乗員の不快感を抑制するための処理の他の例を示すフローチャートである。 リモコン開度に対する目標エンジン回転速度特性を非線形に設定した例を示す図である。 図11の目標エンジン回転速度を、測定したエンジン回転速度−スロットル開度特性に当てはめて、目標スロットル開度を求める処理を説明するための図である。 図12の処理によって求められたリモコン開度−目標スロットル開度特性の一例を示す図である。 入力装置および表示装置を一体化した目標特性入力部の一例を示す図である。 目標特性曲線における変曲点の操作を説明するための図である。 目標特性曲線における曲線形状の変形操作を説明するための図である。 線形特性を表す直線およびその上での変曲点の移動を説明するための図である。 停船中に目標特性曲線の設定を行う際の処理を説明するためのフローチャートである。 航行中に目標特性の設定を行う場合の処理を説明するためのフローチャートである。 リモコンレバーおよび十字ボタンを用いた目標特性微調整操作を説明するための図である。 十字ボタンを用いて目標特性テーブルを変更する際の処理例を説明するためのフローチャートである。 タッチパネルを用いて目標特性テーブルを変更する際における操作領域の分類を説明するための図である。 タッチパネルを用いて目標特性テーブルを変更する際の処理例を説明するためのフローチャートである。 目標特性の設定の一例を説明するためのフローチャートである。 この発明の第2の実施形態に係る構成を説明するためのブロック図である。 N−T特性テーブルの更新処理の一例を説明するためのフローチャートである。 N−T特性テーブルの更新処理の他の例を説明するためのフローチャートである。 この発明の第3の実施形態に係る航走制御装置の構成を説明するためのブロック図である。 エンジン回転速度とスロットル開度との非線形関係を説明するための特性図である。 船舶の速度と船艇の受ける抵抗との関係を説明するための特性図である。
符号の説明
1 船舶
2 船体
3 船尾
4 船首
5 中心線
6 操作卓
7 ステアリング操作部
7a ステアリングホイール
8 スロットル操作部
8a リモコンレバー
8b レバー位置検出部
9 目標特性入力部
10 船外機
11 船外機ECU
13 リセットスイッチ
14 入力装置
15 表示装置
20 航走制御装置
30 推進ユニット
31 取り付け機構
32 クランプブラケット
33 チルト軸
34 スイベルブラケット
35 操舵軸
36 トップカウリング
37 アッパケース
38 ロアケース
39 エンジン
40 プロペラ
41 ドライブシャフト
42 プロペラシャフト
43 シフト機構
43a 駆動ギヤ
43b 前進ギヤ
43c 後進ギヤ
43d ドッグクラッチ
44 シフトロッド
45 スタータモータ
46 スロットルバルブ
47 操舵ロッド
48 エンジン回転検出部
49 操舵角センサ
50 舵取り機構
51 スロットルアクチュエータ
52 シフトアクチュエータ
53 操舵アクチュエータ
54 トリムアクチュエータ
55 電動スロットル
57 スロットル開度センサ
60 記憶部
61 目標スロットル開度算出モジュール
62 R−T特性テーブル算出モジュール
62M R−T特性テーブル記憶部
63 N−T特性テーブル算出モジュール
63M N−T特性テーブル記憶部
64 データ収集処理部
65 直進航行判定部
66 リセット処理モジュール
66m 不揮発性メモリ
67 目標特性設定モジュール
67M 目標R−N特性テーブル記憶部
68 1次フィルタ
71 変曲点
75 タッチパネル
76 十字ボタン
77 上ボタン
78 下ボタン
79 左ボタン
80 右ボタン
83 タッチペン
83A クリックボタン
84 特性変更ボタン
85 高速特性ボタン
90 カーソル
95 N−R特性テーブル算出モジュール
96 N−R特性テーブル記憶部
100 N−T特性テーブル更新モジュール

Claims (13)

  1. 電動スロットルを有するエンジンを駆動源として推進力を発生する推進力発生手段によって船体に推進力を与える船舶の航走制御装置であって、
    操船者が推進力を制御するための操作手段と、
    航走時に得られるデータに基づいて、前記操作手段の操作量に対応する前記電動スロットルの開度に関する制御情報を更新する制御手段とを含む、航走制御装置。
  2. 前記制御手段が、
    前記エンジンの出力特性を測定するエンジン特性測定手段と、
    このエンジン特性測定手段によって測定されたエンジン出力特性に基づき、前記操作手段の操作量と前記電動スロットルの目標スロットル開度との関係を表す操作量−目標スロットル開度特性を設定するスロットル開度特性設定手段と、
    このスロットル開度特性設定手段によって設定された操作量−目標スロットル開度特性に従って、前記操作手段の操作量に対応する目標スロットル開度を設定する目標スロットル開度設定手段とを含む、請求項1記載の航走制御装置。
  3. 前記操作手段の操作量とエンジン出力との関係である操作量−エンジン出力特性の目標特性を設定する目標特性設定手段をさらに含み、
    前記スロットル開度特性設定手段は、前記目標特性設定手段によって設定される目標特性が得られるように、前記操作量−目標スロットル開度特性を設定するものである、請求項2記載の航走制御装置。
  4. 操作量−エンジン出力特性の目標特性を設定するための入力を受け付ける目標特性入力手段をさらに含み、
    前記目標特性設定手段は、前記目標特性入力手段からの入力に応じて、前記目標特性を設定するものである、請求項3記載の航走制御装置。
  5. 操作量−エンジン出力特性の目標特性を複数個記憶することができる目標特性記憶手段をさらに含み、
    前記目標特性入力手段は、前記目標特性記憶手段に記憶されている複数の目標特性のうちの一つを選択する選択手段を含む、請求項4記載の航走制御装置。
  6. 前記スロットル開度特性設定手段は、前記目標特性記憶手段に記憶されている複数個の目標特性にそれぞれ対応する複数個の前記操作量−目標スロットル開度特性を記憶することができるスロットル開度特性記憶手段を含み、前記選択手段によって選択された目標特性に対応する操作量−目標スロットル開度特性を前記スロットル開度特性記憶手段から読み出して設定するものである、請求項5記載の航走制御装置。
  7. 前記エンジン特性測定手段は、前記電動スロットルの開度とエンジン出力との関係を表すスロットル開度−エンジン出力特性を測定する手段を含み、
    前記スロットル開度特性設定手段は、前記エンジン特性測定手段によって測定されたスロットル開度−エンジン出力特性に基づいて、前記操作量−目標スロットル開度特性を設定するものである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の航走制御装置。
  8. 前記エンジン特性測定手段は、前記操作手段の操作量とエンジン出力との関係を表す操作量−エンジン出力特性を測定する手段を含み、
    前記スロットル開度特性設定手段は、前記エンジン特性測定手段によって測定された操作量−エンジン出力特性に基づいて、前記操作量−目標スロットル開度特性を設定するものである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の航走制御装置。
  9. 前記エンジン特性測定手段によって測定されたエンジン出力特性を記憶するためのエンジン特性記憶手段と、
    前記エンジン特性測定手段によって新たに測定されたエンジン出力特性と、前記エンジン特性記憶手段に記憶されている従前のエンジン出力特性との差分を演算する差分演算手段と、
    この差分演算手段によって演算される差分が所定のしきい値以上のときに、そのことを操船者に通知する通知手段とをさらに含む、請求項2〜8のいずれか一項に記載の航走制御装置。
  10. 前記新たに測定されたエンジン出力特性と、前記従前のエンジン出力特性とのいずれを前記スロットル開度特性設定手段での演算に適用すべきかを選択するために操船者によって操作される特性更新指示手段と、
    この特性更新指示手段を介して前記新たなエンジン出力特性が選択されたときに、前記スロットル開度特性設定手段での演算に適用されるエンジン出力特性を前記新たなエンジン出力特性に更新する更新手段とをさらに含む、請求項9記載の航走制御装置。
  11. 前記船舶が航走中かどうかを判定する航走判定手段をさらに含み、
    前記エンジン特性測定手段は、前記航走判定手段によって前記船舶が航走中であると判定されていることを条件にエンジン出力特性の測定を行うものである、請求項2〜10のいずれか一項に記載の航走制御装置。
  12. 前記航走判定手段は、前記船舶が所定の直進航行状態かどうかを判定する直進航行判定手段を含み、
    前記エンジン特性測定手段は、前記直進航行判定手段が、前記船舶が直進航行状態であると判定していることを条件にエンジン出力特性の測定を行うものである、請求項11記載の航走制御装置。
  13. 船体と、
    この船体に取り付けられ、電動スロットルを有するエンジンを駆動源として推進力を発生する推進力発生手段と、
    請求項1〜12のいずれか一項に記載の航走制御装置とを含む、船舶。
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