本発明は、新聞用紙に関するものである。さらに詳しくは、古紙から、新聞用紙の主要構成要素である原料パルプ、填料を回収して再生、再利用する資源循環型の新聞用紙に関するものである。
近年の環境問題から、環境保護、資源保護、ゴミ減少を目的として、最近ではオフィスから発生する廃事務用紙をビル全体で回収しようとする動きも見られ、古紙パルプを使用した再生紙の利用が益々増加すると共に、紙への古紙配合率も増加している。
また、省資源、輸送費の削減、原材料費の削減の観点から、各用紙の軽量化が年々進んでいる。さらに、製紙工場では古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と、紙への古紙配合率の増加が進むとともに、紙の生産効率向上のため、紙製造工程の生産スピードが益々高速化している。このような状況下、新聞用紙においても需要は軽量化と古紙の高配合化の方向に進んでいる。例えば、新聞配達時の重量負担を増やすことなく1部当りのページ数を増やすために新聞用紙の軽量化が進み、環境問題に対応するために古紙配合率の増加が進み、また、オフセット輪転印刷機の高速化、紙面のカラー化などが進んでいる。
そのため、新聞用紙には高速オフセット輪転印刷に耐え得る引張り強さなどの強度に対する要求だけでなく、紙面のカラー化や高精細な見栄えのよい印刷仕上り、見開き全面公告などに対応できる、新聞用紙の表面強度やインク吸収性、印刷輪郭や画像が反対面から透けて見える現象、いわゆる裏抜けや隠蔽性の要求レベルが高くなっており、更なる新聞用紙の軽量化、古紙の高配化の妨げとなっている。
従来、新聞用紙の不透明度を向上させる為には、原料パルプに機械パルプが多用されてきたが、古紙パルプの高配合が望まれる近年にあっては、新聞用紙を前記機械パルプを主原料に構成することも困難である。また、再生紙の普及に伴って、近年は再生紙である古紙をさらに再利用することになり、すなわちパルプ繊維を繰り返し再利用している状況にあることから、得られる古紙パルプは微細繊維が多く、強度も低下している。この古紙を高配合することは、新聞用紙の強度、不透明度の低下を招き、印刷時の裏抜けや隠蔽性が問題となっている。
前記のごとき新聞用紙の隠蔽性を高め、裏抜けを少なくするためには、ホワイトカーボンや炭酸カルシウムなどの填料を使用して、紙の不透明度、吸油度を向上させることが一般的である。填料の添加方法には、バインダ等と共に填料を表面塗工する外添と、填料をパルプ原料と混合して抄紙する内添とがある。
填料の中でも微細な填料粒子は光の散乱係数と吸収係数とが良好であり不透明度向上効果が高いが、内添填料として利用する場合は歩留が低く、主に外添により塗工される。
しかし、填料を外添塗工する場合は一定以上の塗工層を形成する必要があるため、新聞用紙に要求される軽量化を達成することができない。また、新聞用紙のオフセット印刷機は高速で乾燥設備を持たないため、填料を外添塗工する場合は、インキの乾燥性、表面強度、版汚れなどにおいて、新聞用紙に要求される品質を満足することができないという問題が生じる。
そこで、例えば、パルプと炭酸カルシウムとを含む紙料にホワイトカーボンを添加して抄造し、水和ケイ酸の吸油量、細孔容積、平均粒子径等を特定範囲内に設定した填料内添紙(特許文献1参照)や、ホワイトカーボン及び炭酸カルシウムを主体とし、灰分中のこれらの割合を特定範囲内に設定した新聞用紙(特許文献2参照)が提案されている。
前記填料内添紙や新聞用紙は、特にホワイトカーボンが填料として多用されていることから、確かに従来と比較して不透明度及び吸油性が向上している。
しかしながら、ホワイトカーボンはそもそも高価であり、コスト上昇を招いてしまう。しかもホワイトカーボンを多用した場合には、その粒子特性から紙粉発生や印刷設備汚れの大きな原因となり易いといった問題があるため、その内添量については紙質強度の維持も鑑み、添加量を増やすことにも限界が生じている。
炭酸カルシウムを填料として使用した場合には、カオリンやタルクなどの酸性新聞用填料に比べてその硬度が高いために、製紙用ワイヤーの摩耗が速いことが一般的に言われており、同様に印刷時のオフセト輪転印刷用の版摩耗が懸念されている。したがって、軽量でオフセット輪転印刷に適した新聞用紙は開発されていなかった。
この炭酸カルシウムを新聞用紙に利用しようとした特許文献3には、機械パルプ及び又は脱墨古紙パルプと炭酸カルシウムを含み、クリヤーサイズ剤が塗布された中性新聞用紙が記載されている。しかし、炭酸カルシウムを使用した中性領域での抄紙は、抄紙設備、特にワイヤーが磨耗劣化し易いといった問題と、古紙パルプや木材繊維由来の樹脂成分の溶出によるピッチトラブルや抄紙設備の汚損原因が問題として発現するため、中性またはアルカリ性で抄造するに際し、硫酸アルミニウムを添加して上記パルプ中に含有されている樹脂成分を繊維に定着させた後に、填料として炭酸カルシウムを特定し、抄紙工程の可及的後段に於いて添加し、硫酸アルミニウムのカチオン性が低下しない間に樹脂成分を紙に抄き込むと云う煩雑な操業方法を取らざるを得ない旨が記載されている。
一方、製紙工場においては、近年の微細繊維の多い古紙パルプの高配合化と用紙の軽量化、抄紙機の高速化に伴うワイヤーパートでの急激なそして強制的な脱水により、微細繊維の歩留まりや灰分の歩留まりが極めて低い状況下になっており、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジが増加している。
すなわち、古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と古紙パルプの高配合化により、多くの古紙パルプが必要となり、古紙の使用量が増大している。この新聞古紙や雑誌古紙をはじめとした古紙には、非塗工紙に使用された填料や塗工紙に使用された填料・顔料に由来する無機物が多く含まれているため、古紙処理工程からは、パルプ繊維と分離され、填料・顔料の無機物が多量に含まれた脱墨フロスの発生量が増大している。
これら填料・顔料の無機物を多量に含む古紙処理工程から排出される脱墨フロス、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジは、従来は燃焼し減容化を図った上で、多くは埋立処分されてきた。
しかしながら、前記背景技術により、環境保護、資源保護、ゴミ減少に貢献できる再生紙の品質を維持、向上しながら継続的に製造するためには、製紙工場にとって、この製紙スラッジの再資源化、有効利用が重大な課題となっている。
前記製紙スラッジは、多量の無機物を含有するため、燃焼しても多量の燃焼灰(無機物)が残り、減容化の効果は低い。そこで、この燃焼灰をセメント原料や土壌改良材として活用する等の努力もなされているが、これらの方法において燃焼灰は助剤として使用されており、多量に使用されるわけではないため、結局、大部分の燃焼灰は埋立処分されることになる。
燃焼灰を有効に活用する方法として、紙の内添填料として使用することも考えられるが、燃焼灰は白色度が低いため、そのままの状態では紙の内添填料として使用するのに適していない。
そこで、燃焼灰(焼却灰)を再燃焼し、スラリー化及び湿式分散を行って白色度を向上させ、白色顔料とする方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、この焼却灰を再燃焼する方法の場合、未燃焼カーボンを完全に燃焼させるためには、再燃焼温度を500〜900℃に設定する必要があり、しかも焼却灰の白色度は50%程度にまでしか向上せず、紙の填料としての使用に適したものではないことが知見された。また、再燃焼温度を900℃超に設定すると、燃焼灰(無機物)が焼結、溶融し、極めて硬くなることも知見された。さらに、再燃焼灰を紙の填料として使用した場合、この再燃焼灰は非常に硬い性質を有することから、抄紙ワイヤーの磨耗進行が早く、寿命が非常に短くなるため、実操業に使用することができなかった。
このような抄紙ワイヤーの磨耗については、再燃焼灰を粉砕し、その粒子径を小さくして磨耗の低減、平滑性の向上を図ることも考えられるが、紙の内添填料として使用する場合には、抄紙時における歩留まりが低くなり、また、再燃焼灰自体が極めて硬いことから、粉砕のためのエネルギーコストが極めて高くなるといった問題がある。
また、製紙スラッジの利用方法として、紙繊維からの有機物を含む含水の製紙工場廃棄スラッジを、酸素含有ガスを注入した反応器内に供給し、250〜300℃、3000psig(プサイグ)程度の加温加圧下で0.25〜5時間酸化して、該廃棄スラッジ中の無機物を製紙用の顔料(無機填料)として再生する方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかしながら、前記方法は、製紙スラッジの湿式空気酸化処理によるものであることから、有機物除去が充分ではなく、また得られた顔料の白色度が低く、粒子径も不揃いで、製紙用の填料として使用するには不適切であり、しかも反応操作が複雑でコストが高いとう問題がある。
これらのほかにも、製紙スラッジをいぶし焼きしてPS炭とした後、さらにこれをキルンで焼却して製紙用原料となる白土を生成させる方法が提案されている(特許文献6参照)。
しかしながら、この方法では製紙スラッジをいぶし焼きするため、製紙スラッジからエネルギーを有効に取り出すことができないばかりか、逆に投入エネルギーが必要になるという大きなデメリットがある。さらに、生成した白土も粒子径が不揃いで大きく、製紙用填料としては使用することができないという問題がある。
さらに、排水に凝集剤を添加して造粒し、得られる成形汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥、炭化、焼成して製紙用填料を製造する方法も提案されている(特許文献7参照)。この方法において、焼成に先立って造粒、成形するのは、焼成を均一に行うためである。
ところが、例えば固形分濃度が40〜60%(換言すれば水分率が60〜40%)の成形汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥、炭化、焼成した場合、乾燥状態、炭化状態の如何にかかわらず、キルンの回転によって汚泥粒子の処理は強制的に進行する。したがって、乾燥が不充分であると粒子内部に未燃分が多く残留し、その結果、焼成が不完全となって白色度の低下が生じる。逆に過乾燥になると、焼成は完全であるが過焼成を招き、得られる再生粒子の硬度が高くなる。この再生粒子を使用すると、抄紙機でのワイヤー磨耗や紙を断裁する場合のカッター刃磨耗が生じ易くなるという問題を惹き起こす。
前記特許文献4〜7に記載の、製紙スラッジを原料として紙の填料を製造する従来の方法の最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジには、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。
前記各種スラッジのうち、例えば抄紙工程でワイヤーを通過して流出したスラッジには、紙力剤等が混入しており、また抄紙工程における抄造物の変更によってスラッジの品質に変動が生じる。
また、排水から回収したスラッジには、凝集剤が混入しており、さらに工場全体の抄造物、生産量の変動や生産設備の工程内洗浄などにより、スラッジの品質に大きな変動が生じる。
パルプ化工程での洗浄過程から生じるスラッジには、紙用填料、顔料に適さない物質が混入していたり、チップ水分やパルプ製造条件の変動により品質に変動が生じたりする。
したがって、種々の製紙スラッジを無選別に用いて製紙用の填料、顔料を得ようとすると、その品質は低いものとなり、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
このように、従来の製紙スラッジを利用した方法は、いずれも単なる製紙用粒子の回収に終始し、これらの方法で得られる製紙スラッジからの再生粒子は、製紙用の顔料、填料としては品質が適さず、品質安定性に欠けるものであった。
したがって、新聞用紙の主要構成要素である原料パルプは、古紙パルプの多用が進むものの、填料としては従来のホワイトカーボンや炭酸カルシウムを多用せざるを得ず、例えば製紙工程での不要物を有効利用するなどして、コストダウンと抄紙設備の磨耗問題の改善とを図りながら、しかも不透明度及び紙力を向上させ得る技術の開発が待ち望まれている。
特開平09−176985号公報
特開2002−201590号公報
特開平09−78491号公報
特開平11−310732号公報
特公昭56−27638号公報
特開昭54−14367号公報
特開2004−176208号公報
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、古紙から、古紙(紙)の主要構成要素であるパルプ繊維、填料・顔料を共に回収して使用する、資源循環型の新聞用紙を提供することを課題とする。
より詳しくは、古紙(紙)の主要構成要素であるパルプ繊維と填料・顔料を共に回収し、資源を循環使用して低コストで製造され、さらに、中性又はアルカリ領域で抄紙することで、優れた紙力が維持されて断紙が少ないだけでなく、樹脂分や紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性にも優れ、不透明度に優れて裏抜けが少なく、高速オフセット輪転印刷における印刷に好適に使用し得る新聞用紙を提供することを課題とする。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
原料パルプと填料とを主構成原料とする新聞用紙であって、
前記原料パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
前記填料として、脱墨フロスを原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である、ことを特徴とする新聞用紙。
〔請求項2記載の発明〕
前記再生粒子は、その表面がシリカで被覆されたシリカ被覆再生粒子である、請求項1記載の新聞用紙。
〔請求項3記載の発明〕
JIS P 8251に準拠した灰分が、4〜15%で、JIS P 8133に準拠した熱水抽出pHが、6.0〜9.5である、請求項1又は請求項2記載の新聞用紙。
本発明の新聞用紙は、産業廃棄物として焼却や埋立処分されていた脱墨フロスを製紙用填料資源として活用すると共に、古紙からなる古紙パルプを主たる原料パルプとして使用することで、資源を循環使用して低コストで製造され、抄造時の灰分歩留まりが高く、ワイヤー磨耗等の抄紙設備の磨耗劣化や樹脂成分の溶出による印刷設備汚れを殆ど起こすことなく、優れた紙力が維持されて断紙が少ないだけでなく、紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性にも優れ、不透明度に優れて裏抜けが少ない新聞用紙として、高速オフセット輪転印刷、オフセット輪転カラー印刷・高精細印刷に好適に使用し得るものとなる。
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態の新聞用紙は、前記したように、前記原料パルプと填料とを主構成原料とし、前記原料パルプが古紙パルプ50〜100質量%からなり、前記填料として、脱墨フロスを原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である。
なお、紙の主要構成要素であるパルプ繊維、填料が、いずれも回収、再生、再利用されたものであることから、本発明よって提供することができる紙を、従来の新聞用紙に対し、完全再生新聞用紙または100%再生新聞用紙と定義する。また、本明細書において、主構成要素とは、構成割合が50質量%以上であることを意味する。
まず、本実施形態に用いられる原料パルプについて説明する。係る原料パルプは、例えば新聞古紙、雑誌古紙、模造・色上古紙、OA古紙等の古紙を原料とする古紙パルプ50〜100質量%から構成される。このように本実施形態においては古紙パルプが50質量%以上も用いられるので、資源の有効利用に大きく寄与し、低コスト化を図ることができる。特に新聞用紙は古紙としての回収率が高く、再資源化の優等生といわれるものであり、その用途に本発明に基づく完全再生紙からなる新聞用紙を用いることで、新聞用紙の循環使用をより進めることが可能となる。
古紙パルプの種類には特に限定がなく、例えばディインキングパルプ(DIP)、ウェストパルプ(WP)などがあげられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。
原料パルプとして、前記古紙パルプ以外にも通常の紙に用いられるパルプを適宜使用することができる。古紙パルプ以外のほかの原料パルプとしては、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)などの機械パルプ;針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)などの化学パルプや、これらを漂白したパルプなどがあげられ、これらの中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
原料パルプ中の古紙パルプの割合は、前記したように、50〜100質量%であるが、より省資源化及び低コスト化が実現される点から、さらには60〜100質量%、特に70〜100質量%とすることができる。
次に本実施形態に用いられる填料について説明する。係る填料としては、脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを特定量含有する再生粒子が少なくとも用いられる。
少なくとも前記再生粒子を少なくとも填料として用い、前記のごとき古紙パルプを50〜100質量%も含んだ原料パルプに特定量内添することが本実施形態の大きな特徴の1つである。この再生粒子は、脱墨フロスを焼成して得られる循環使用が可能なものであるので、廃棄物としての埋立等の処分が不要であり、環境負荷の低減と、省資源化に大きく貢献するものである。また、原料が古紙処理工程で生じる脱墨フロスであるので、安価であり、新たな無機粒子の使用量を抑えることができ、製造コストが充分に削減されるという利点がある。さらに係る再生粒子を用いることで、抄造時の灰分歩留まりが高く、例えば炭酸カルシウムと異なり、ワイヤー磨耗等の抄紙設備の磨耗劣化を来たすことが無く、更に樹脂成分が微細な状態下で再生粒子に吸着することで、樹脂分の凝集によるピッチトラブルを防ぎ印刷設備汚れを殆ど起こすことがなく、低コストで高い操業性で紙を製造することができ、しかも従来と同等以上の優れた不透明度や紙力が紙に付与され、裏抜け、断紙も少なくなる。
本実施形態に用いられる再生粒子は、脱墨フロスを原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるものである。なおさらに、後述するように、脱墨フロスの凝集工程、造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を経てもよい。また再生粒子の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。
さらに本実施形態においては、原料パルプに内添する再生粒子として、前記のごとき工程を経て得られた粒子の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子を特に好適に用いることができる。
前記再生粒子の表面にさらにシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子とすることで、循環使用における古紙処理工程において、水酸化ナトリウムと反応させて緩衝剤や漂白助剤として製紙用原料、無機粒子の循環使用にも寄与させることができる。またかかるシリカ被覆再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、シリカで被覆していない再生粒子を用いた場合よりもさらに、紙の白色度、不透明度、表面強度、インク乾燥性、インク吸収ムラ、嵩高といった各効果を向上することができる。
なお、本実施形態に用いられる古紙処理工程にて生じる脱墨フロスは、近年の中性抄紙化に伴い、炭酸カルシウムの含有量が増加傾向にあり、得られる再生粒子中のカルシウムの割合も高くなる傾向がある。このようにカルシウムの割合が高い再生粒子を原料パルプに内添すると、紙の不透明度がやや低下する場合があるが、表面にシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子は、製紙用途の再生粒子としての機能が非常に高く、該シリカ被覆再生粒子を原料パルプに内添して得られる紙の不透明度は、著しく向上する。
再生粒子の表面を被覆するシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用することが可能である。具体的には、例えばコロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカなどがあげられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力の大きさ、付着性の高さ、高吸油性などの優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。これらのうち、コロイダルシリカは、ケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカである。シリカゲルは、ケイ酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸である。また無水シリカは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものである。
再生粒子の表面にシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子を得る方法には特に限定がないが、例えば以下の方法を好適に採用することができる。まず、再生粒子をケイ酸アルカリ溶液に添加、分散させ、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃程度に保持して酸を添加し、シリカゾルを生成させる。次いで最終反応液のpHを8〜11の範囲に調整することにより、再生粒子の表面にシリカを析出させることができる。このようにして再生粒子の表面に析出されるシリカは、ケイ酸アルカリ(例えばケイ酸ナトリウム:水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸の希釈液と高温下で反応し、加水分解反応とケイ酸の重合化により得られる、粒子径が10〜20nm程度のシリカゾル粒子である。
また、ケイ酸ナトリウム溶液等のケイ酸アルカリ溶液に希硫酸等の酸を添加することによって生成する、粒子径が数nm程度のシリカゾル微粒子を、再生粒子の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、このシリカゾル微粒子の結晶成長に伴う、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で生じる結合により、再生粒子の表面にシリカを析出させることもできる。この場合、ケイ酸アルカリ溶液に酸を添加する際のpHは、中性〜弱アルカリ性の範囲とし、好ましくはpHを8〜11の範囲に調整する。これは、pHが7未満の酸性条件になるまで酸を添加してしまうと、シリカゾル粒子ではなくホワイトカーボンが生成する恐れが生じるからである。
なお、前記ケイ酸アルカリ溶液の種類には特に限定がないが、入手が容易である点からケイ酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が特に望ましい。このケイ酸アルカリ溶液の濃度としては、再生粒子中のシリカ成分が低下し、再生粒子の表面にシリカが析出し難くならないようにするには、溶液中のケイ酸分(SiO2換算)が3質量%以上であることが好ましく、再生粒子の表面に析出されるシリカが、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子の多孔性が阻害され、不透明度やトナー定着性の向上効果が不充分になる恐れをなくすには、係るケイ酸分(SiO2換算)が10質量%以下であることが好ましい。
再生粒子の粒度を各工程で均一に揃えるためには、分級を行うことが好ましく、粗大粒子や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。なお造粒においては、通常の造粒設備を使用することができ、回転式、攪拌式、押出式等の設備が好適である。
製造設備において、再生粒子以外の異物を除去することが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック、金属等の異物を除去することが、除去効率の点で好ましい。特に鉄分は、酸化により再生粒子の白色度低下の起因物質を生成するため、鉄分の混入を避け、選択的に除去することが好ましい。したがって、各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止すると共に、さらに乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し、選択的に鉄分を除去することが好ましい。
なお本実施形態においては、前記乾燥工程や焼成工程、及び必要に応じて分級工程において、粉砕工程前にあらかじめ、粒子径が40μm以下の粒子が90質量%以上となるように処理しておくことが好ましい。これにより、通常行われている乾式粉砕による粗大粒子の粉砕及び湿式粉砕による微粒子化といった複数段の粉砕処理を行うことなく、湿式粉砕による一段粉砕処理も可能となる。またこれにより、コールターカウンター法による粒度分布の微分曲線における平均粒子径のピーク高さを30%以上とすることができる。さらには原料である脱墨フロス中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、あらかじめ、例えば後述する質量割合に調整することで、再生粒子の細孔容積を0.15〜0.60cc/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を30〜100nmとすることもできる。
かくして得られる再生粒子は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを含有している。再生粒子中のこれらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析を行い、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜82:9〜35:9〜35、さらには40〜82:9〜30:9〜30、特に60〜82:9〜20:9〜20の質量割合であることが好ましい。なお、特に再生粒子がシリカ被覆再生粒子である場合には、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜62:29〜55:9〜35であることが好ましい。また同時に、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの元素分析における酸化物換算の合計含有割合は、90質量%以上、好ましくは93質量%以上である。
このように、例えばカルシウムが酸化物換算で30質量割合以上含有された再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、特に得られる紙の白色度を向上させることができる。
再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合を、例えば酸化物換算で前記範囲内に調整するには、本来、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが好ましいが、乾燥工程や焼成工程、さらには必要に応じて分級工程において、由来が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法を採用することも可能である。
例えば、再生粒子中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを、ケイ素の調整には不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用された抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程の排水スラッジを適宜用いることができる。
またカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合を、酸化物換算で90質量%以上に調整するには、例えば排水スラッジの凝集処理に鉄分を含有しない凝集剤を使用する手段、製造設備工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入するのを防止したり、さらには乾燥・分級設備内に磁石等の高い磁性体を設置して鉄分を除去する手段等を採用することが可能である。特に鉄分は、酸化により白色度を低下させる起因物質になるため、選択的に除去することが好ましい。
ところで、炭酸カルシウムには、六方結晶系のカルサイト結晶(方解石)や、斜方結晶系のアラゴナイト結晶(あられ石)などの同質異像が存在する。天然に産する石灰石はその殆どがカルサイト結晶であり、貝殻類にはカルサイト結晶のほか、アラゴナイト結晶も存在する。さらに炭酸カルシウムには、天然ではないが、バテライト結晶も存在する。前記脱墨フロスから得られるカルシウムは多種多様であるが、焼成凝集化することでほぼ均一の炭酸カルシウム性状となる。したがって、係るカルシウムは再生粒子そのものの品質安定性に寄与し、該再生粒子は、カルシウム、ケイ素、アルミニウムといった異なる成分で構成される凝集体でありながら、安定した性状を示す。
また再生粒子にはケイ素が含まれるが、該ケイ素からなるシリカの一次粒子は微細であるので、光学的屈折率が高い。したがって、例えばケイ素が酸化物換算で9質量割合以上含有された再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、特に得られる紙の不透明度を向上させることができる。
さらに本実施形態に用いられる再生粒子は、微細な粒子が二次凝集した柔軟かつポーラスな性状を有するので、嵩高な紙層形成に寄与し、該再生粒子を填料として原料パルプに内添して得られる新聞用紙は、密度が低く、取りまわしが良好な剛度を有する。
本実施形態に用いられる再生粒子の粒子径は、例えば一次粒子が凝集した二次粒子として、原料パルプ中への歩留まりや再生粒子の白水中への流失防止という点から、そのメタノール分散溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(TA−II型、COULTER ELECTRONICS社製)にて測定して、平均粒子径が0.05μm以上、さらには0.1μm以上であることが好ましく、また印刷適正の維持と剣先詰まりの防止という点から、平均粒子径が16μm以下、さらには15μm以下であることが好ましい。
前記再生粒子の含有量があまりにも少ない場合には、例えば抄紙機でのカレンダー処理において、平滑化の効果が発現されにくくなり、紙の不透明性が低下して印刷後の不透明度が低下したり、新聞用紙の剛直度が高くなり、輪転機上での走行性が低下したりする恐れがあるので、原料パルプに対して2質量%以上、さらには5質量%以上であることが好ましい。逆に再生粒子の含有量があまりにも多い場合には、表面性や剛度の点では望ましいものの、印刷機内での搬送に伴って灰分が脱落し易くなり、表面強度の低下や、剥け・ケバ立ち、印刷白抜け、紙粉が発生する恐れがあるので、原料パルプに対して15質量%以下、さらには20質量%以下であることが好ましい。
本実施形態において、填料として前記再生粒子を単独で用いることもできるが、このほかに、内添用填料として通常使用される、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、デラミネーテッドクレー等のクレー、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれた少なくとも1種の填料を併用することもできる。
なお再生粒子を含む填料の添加率があまりにも少ない場合には、填料を用いる効果が充分に発現されず、逆にあまりにも多い場合には、紙力が低下する恐れがあるので、該填料は、紙中に紙灰分として4〜15質量%、さらには5〜10質量%含まれることが好ましい。
また原料パルプ及び填料から得られた紙料スラリーに添加する添加剤としては、通常の紙に配合されるものを用いることができ、例えば澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等の紙力増強剤;ロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等の内添サイズ剤;ポリアクリルアミドやその共重合体、ケイ酸ナトリウム等の歩留まり向上剤などがあげられる。
さらに本実施形態においては、原料パルプから紙料スラリーを調製して抄紙した後、表面に例えば澱粉、変性澱粉、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリルアミド等の高分子材料を成分とする表面処理剤を塗布したり、紙料スラリーに染料、顔料等の色料を添加したりしてもよい。
前記変性澱粉としては、特に限定されるものではなく、通常の澱粉原料が用いられ、例えばトウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米等に酸化処理、酵素処理等が施された澱粉があげられる。この変性澱粉を用いる場合、表面処理剤中の量は、所望の効果を得るためには、全固形分中40質量%以上となるように調整することが好ましい。
表面処理剤には、適宜他の接着剤、例えばスチレン−ブタジエン共重合体等のラテックス類、ポリビニルアルコールやポリアクリルアミド、さらにはカオリンや炭酸カルシウム等の顔料、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等の各種助剤を添加することもできる。また表面処理剤の固形分濃度は特に限定されるものではなく、塗布装置や塗布量に応じて、例えば2〜25質量%程度に調整することが好ましい。
なお、表面処理剤をあまりにも多量に使用すると、コスト高となるだけでなく、紙表面が湿った状態でネッパリ性と呼ばれる紙表面の粘着性が発現される傾向がある。このネッパリ性が大きくなると、特に非画線部におけるブランケットパイリングを逆に増大させたり、また印刷時に紙面がブランケットに貼り付き、結果的にシワや断紙といった走行性トラブルを誘発したりする恐れがあるので、好ましくない。また、表面処理剤の使用量が増加すると、目的とする紙の透明性が上昇、すなわち不透明度が低下したり、インクの乾燥性が悪化したりする場合もある。これらの表面処理剤のうち、澱粉やポリアクリルアミドは比較的ネッパリ性が低いので広く使用されているが、いずれも水への溶解性が高いため、印刷時に湿し水中に容易に溶出して填料と共にブランケットに堆積し、ブランケットパイリングが発生し易い。また溶出した表面処理剤がブランケットを介して刷版に転移、蓄積することで刷版の非画線部が感脂化し、非画線部のインク汚れ、すなわち地汚れと呼ばれる紙面の汚れを誘発し易くなることから、多量に用いることは好ましくない。
前記表面処理剤は、製紙分野で一般に使用されている塗布装置、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いて塗布すればよい。
表面処理剤の塗布量は、紙の表面強度を充分に向上させるには、乾燥重量で0.4g/m2以上となるように調整することが好ましく、またコスト高となったり、不透明度やインク乾燥性の低下を招いたりしないようにするには、乾燥重質量で3.0g/m2以下となるように、より好ましくは、0.7〜2.5g/m2以下に調整することが好ましい。
かくして紙料スラリー及び必要に応じて添加剤から調製された紙料は、公知の抄紙機によって抄造することができ、さらに必要に応じてカレンダー装置に通紙し、加圧、平滑化処理を施して新聞用紙に仕上げることができる。該カレンダー装置としては、通常の金属ロールと金属ロールとの組み合わせによるマシンカレンダーよりも、金属ロールと樹脂ロールとの組み合わせによるソフトカレンダーを使用するほうが、紙層を強く加圧せずに平滑化することができ、さらに紙層強度の低下を充分に抑制することができるのでより好ましい。
ソフトカレンダーの使用においては、新聞用紙の粗面側に当たる裏面側がソフトカレンダーの金属ロール面に先に接触するように通紙することで、より平坦性及び嵩高性の向上をより図ることができ、1500m/分以上の高速抄紙において高い平坦性と表裏差の少ない新聞用紙を得ることができる。
さらに好ましくは、表裏面に設ける表面処理剤の塗布量を表面側より裏面側を多くすることにより、より良好な平坦性と嵩高性とが得られ、腰のある新聞用紙を得ることができる。
なお前記抄造の際の新聞用紙のpHは、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)を添加し、アルミニウムを介して樹脂成分を繊維に定着させるか、あるいは樹脂成分の凝集体を形成させることにより、樹脂成分を紙支持体に取り込むことによって製造工程での樹脂成分の付着を防ぐため、アルミニウムイオン種のカチオン性が最も活性なpH4〜6未満の範囲内で新聞用紙を抄造するのが一般的であるが、本発明にて使用する古紙パルプは、古紙から脱インクして製造されるためpHが6以上と高く、高pH化による安定性やpH調整という点、補助的な使用が考えられる炭酸カルシウムの使用に際しては、該炭酸カルシウムが溶解して歩留まりが低下したり、抄紙工程の汚れの原因になったりする恐れをなくすほか、理由は不明確ながらpH6未満で抄紙するよりも、6以上で抄紙することによって紙力の向上が図られる事由から、6〜9.5程度となるように調整することが好ましい。
また再生粒子の添加は、従来のいずれの段階でも行うことが可能であるが、原料配合チェストからインレットの間で行うことが好ましい。この間に添加することにより、再生粒子が分散し易くなり、パルプ繊維への定着性が向上し、その結果、填料の歩留まりが向上する。また再生粒子がパルプ繊維間の結合を阻害しないので、紙の剛度が低下することもない。再生粒子をより均一に分散させ、パルプ繊維への定着性を向上させるためには、できる限りインレットの近傍工程で該再生粒子を添加することが特に好ましい。
かくして得られる新聞用紙は、JIS P 8251に準拠した灰分が4〜14%で、JIS P 8133に記載の「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に準拠して測定した熱水抽出pHが、6.0以上、さらには6.1以上であることが好ましく、また9.5以下、さらには8.5以下であることが好ましい。熱水抽出pHがこのような範囲の場合には、補助的な使用が考えられる炭酸カルシウムや、僅かとは考えられるが、再生粒子中に内在する炭酸カルシウムの溶出が防止されて再生粒子の形状が安定し、また水酸化カルシウムの生成が防止され、抄紙工程系内の汚れやスケールの発生を抑制し、紙の劣化抑制や資源循環を図ることができる。また、紙のインク乾燥性を向上させ、インク吸収ムラを少なくしたり、劣化を充分に抑制し、保存性や助剤の定着性をさらに向上させることもできる。
さらに本実施形態に係る紙の坪量は、軽量化、例えば高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明度の確保という点から、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定して、37g/m2以上、さらには40g/m2以上であることが好ましく、またその軽量化の点から、係る坪量は48g/m2以下、さらには46g/m2以下であることが好ましい。37g/m2未満では、例えば高速オフセット輪転印刷機における強度確保が困難であり、48g/m2を超えると、近年の軽量化、省資源に逆行することとなる。
紙の白色度は、その用途に応じて異なるが、新聞用紙においては購読者の眼精疲労をきたさないように、JIS P 8123に記載の「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」に準拠して測定して、少なくとも50%以上が好ましく、白色度は52〜56%、さらには53〜55%であることが好ましい。
新聞用紙の白紙不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から不透明度は高いものが求められるが、JIS P 8138に記載の「紙の不透明度試験方法」に準拠して測定して、91〜95%、さらには92〜94%であることが好ましい。
また新聞用紙の密度は、近年の軽量化や軽量化に伴う強度維持の点から、JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定して、0.55〜0.60g/cm3、さらには0.56〜0.59g/cm3であることが好ましい。
また紙のMD方向の剛度は、例えば高速輪転印刷に適した腰を付与するという点から、JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して測定して、30〜55cm3/100、さらには32〜50cm3/100であることが好ましい。
新聞用紙において用いられるオフセト輪転印刷は、刷版に湿し水と印刷インキとを供給し、次いでブランケットと呼ばれるゴム版にインキを転移させた後、紙に転移させて印刷を行う方法であり、従来の凸版印刷方式に比べて、比較的粘度の高いインキを使用するため、インキの紙層内部への浸透が少なく、インキの着肉性が良好となると共に、印刷後のインキ裏抜けの少ない(不透明度の大きい)利点を有している。
さらに近年では、新聞用紙のカラー化や軽量化に伴い、良好なインキの着肉性や印刷後の高い不透明性が一層求められている。このうち、インキ着肉性を高める手段としては、先に述べたソフトカレンダー等による平坦化処理により新聞用紙を平滑化することが広く行われている。しかし、カレンダー処理のニップ圧力を高くしたり、ニップ数を増やすことで平滑化すれば、インキ着肉性は高まるが、紙の嵩高さが損なわれるために、印刷後の不透明度が低下や、剛度が低くなるため、印刷時の皺発生など走行性不良トラブルの原因となる恐れがある。
一方で、カレンダー処理を軽減すれば嵩高な紙を得ることはできるが、紙面の着肉性の表裏差が増大し、特に平滑度が低い側の紙面で着肉性が悪くなるため、表と裏とで画像の濃度が著しく異なるという問題が発生する。これは、抄紙工程中、ワイヤーパート、プレスパートでの脱水条件が表面と裏面とで微妙に異なるため、用紙の平滑性に表裏差ができたり、厚さ方向での填料、微細繊維の分布状態が異成ったりするために、インキの転移性に表裏差がでるためと考えられている。
本発明者らは、本発明に基づく古紙パルプ50〜100質量%からなり、少なくとも前記填料として、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である新聞用紙における湿し水と印刷インキの転写において、該新聞用紙のJIS P 8140に基づく10秒コブサイズ度が30〜300g/m2であり、かつJIS P 3001に基づく吸油度が50〜150秒である関係を有することが好ましいことを知見している。いわゆる親水性と親油性の関係を所定の範囲内に抑えることで、平坦化処理と相俟ってよりオフセット輪転印刷適正を向上させることが可能となる。
さらに紙の表面強度は、やはり高速輪転印刷における紙質強度を考慮すると、後述するRIテスター((株)明製作所製)による測定において最低限度グレード3以上であることが好ましい。
このように、本実施形態に係る新聞用紙は、古紙パルプを50質量%以上も含有した原料パルプに、古紙処理工程にて生じる脱墨フロスを主原料とし、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを合計90質量%以上も含有した再生粒子を填料として内添して抄造したものである。したがって、本実施形態に係る新聞用紙は、抄造時の灰分歩留まりが高く、ワイヤー磨耗等の抄紙設備の磨耗劣化や印刷設備汚れを殆ど起こすことなく、資源を循環使用して低コストで製造され、優れた紙力が維持されて断紙がないだけでなく、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり、色ズレ等もなく、不透明度に優れて裏抜けが少ない。しかも本実施形態に係る新聞用紙は、印刷時、特にカラー印刷時の各種特性にも優れ、例えば12〜17万部/時程度といった高速オフセット輪転カラー印刷等に好適に使用することができる。
次に本発明の新聞用紙を、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
〔再生粒子の製造(製造例(実施例)1〜22及び比較例1〜4)〕
原料として、表1に示すように、脱墨フロス(古紙パルプを製造する古紙処理工程より得られた脱墨フロス、製造例1〜22)又は製紙スラッジ(主に製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ、比較(製造)例1〜4)を用い、表1に示す条件の脱水工程、乾燥工程及び焼成工程を経た後、湿式粉砕処理を施して再生粒子を得た。
さらに製造例15〜17においては、再生粒子をケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)に添加、分散させてスラリーを調製した後、加熱攪拌しながら、液温を約85℃に保持して希硫酸を添加し、シリカゾルを生成させた。次いで反応液のpHを8〜11に調整し、再生粒子の表面にシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子を得た。
得られた再生粒子及びシリカ被覆再生粒子について、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量をそれぞれ酸化物換算で求め、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合を算出した。その結果を表2に示す。また平均粒子径も併せて表2に示す。さらにワイヤー磨耗度、生産性、品質安定性及び外観についても調べた。これらの結果も併せて表2に示す。
なお、表1及び2に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(ア)乾燥工程後(焼成工程入口)の乾燥物の平均粒子径
X線マイクロアナライザー(型番:EMAX2770、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)を加速電圧15kVで用い、白黒ポラロイドフィルム(ポラロイド社製、8.5cm×10.8cm)にて、X線マイクロアナライザーディスプレーのX線像を20枚撮影して実測した。
(イ)乾燥工程後(焼成工程入口)の粒子径355〜2000μmの粒子の割合
4.7メッシュの篩にて、粒子径が2000μmを超える乾燥物粒子の質量割合を、42メッシュの篩にて、粒子径が355μm未満の乾燥物粒子の質量割合を、それぞれ測定し、質量割合を算出した。
(ウ)再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)
X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析を行った。
(エ)再生粒子の平均粒子径
再生粒子サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。この溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(TA−II型、COULTER ELECTRONICS社製)にて、50μmのアパチャーを用いて測定した。ただし、50μmのアパチャーで測定不可能なものについては、200μmのアパチャーを使用した。また電解液として、ISOTON II(商品名、COULTER ELECTRONICS社製、0.7%の高純度NaCl水溶液)を用いた。
(オ)ワイヤー磨耗度
磨耗度試験装置(日本フィルコン(株)製)を用い、スラリー濃度2質量%にて3時間、プラスチックワイヤー磨耗度を測定した。
(カ)生産性
原料の脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力を各々5段階評価し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれも高い評価でバランスが最もよかった。
○:平均してよい評価であった。
△:脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力のいずれかに問題があった。
×:実操業が困難であった。
(キ)品質安定性
白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:上位10位まで
○:11〜22位
△:23〜25位
×:26位以下
(ク)外観
目視にて再生粒子の色を観察し、白色と灰色とに区分した。
表2に示された結果から、製造例1〜22の再生粒子は、いずれもワイヤー磨耗度が低く、生産性及び品質安定性にも優れたものであることがわかる。これに対して比較例1〜4の再生粒子は、いずれもワイヤー磨耗度が高く、生産性及び品質安定性にも劣るものであることがわかる。
〔新聞用紙の作製(製造例1〜22及び比較例1〜7)〕
表3に示す割合でディンキングパルプ(DIP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)及び針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を配合し、レファイナーでフリーネスを120mL C.S.F(JIS P 8121に準拠)に調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに対し、絶乾パルプ100質量部あたりカチオン化澱粉を0.5質量部添加し、さらに、填料として前述した製造例1〜22及び比較製造例1〜4で得られた再生粒子を表3に示す割合で添加し、硫酸バンドでpHを調整後、ツインワイヤー抄紙機で表4に示す坪量の新聞用紙を抄造した。また表面サイズ剤として酸化澱粉を両面で1g/m2塗布した。
得られた新聞用紙について、各種物性を調べた。これらの結果を表4に示す。また、市販の新聞用紙を試験紙A〜Cとして準備し、実施例1〜22及び比較例1〜4の新聞用紙と同様に各種物性を調べた。その結果を、比較例5〜7として併せて表4に示す。
なお、表3及び4に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(a)原料パルプ中の各パルプの割合
JIS P 8120に記載の「繊維組成試験方法」に準拠して測定した。
(b)坪量
JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
(c)密度
JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
(d)熱水抽出pH
JIS P 8133に記載の「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に準拠して測定した。
(e)灰分
JIS P 8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法」に準拠して測定した。
(f)コッブ吸収度(サイズ度)
JIS P 8140に記載の「紙及び板紙―吸水度試験方法−コッブ法」に準拠し、測定時間10秒にて測定した。
(g)吸油量
JIS P 3001−1976に記載の、「吸油度試験方法」に準拠し、軽油1号にて測定した。
(h)白色度
JIS P 8123に記載の「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」に準拠して測定した。
(i)白紙不透明度
JIS P 8138に記載の「紙の不透明度試験方法」に準拠して測定した。
(j)剛度(MD方向)
JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して測定した。
(k)表面強度
紙試料を、実験室の金属ロールからなるカレンダーに、線圧40kg/cmで2回通した後、この紙試料の表面に、RIテスター((株)明製作所製)で、インキタック6(東洋インキ製造(株)製)を用いて印刷した。10cm2あたりの繊維が剥がれた状態を目視にて観察し、以下の評価基準(グレード)に基づいて評価した。
(評価基準)
1:繊維の剥がれかなりあり
2:繊維の剥がれあり
3:繊維の剥がれややあり
4:繊維の剥がれ僅かあり
5:繊維の剥がれ殆どなし
なお実用上は、最低限度グレード3である。
次に、実施例1〜22及び比較例1〜7の新聞用紙について、以下の試験例1〜9に基づいて各特性を調べた。その結果を表5に示す。
〔試験例1(ケバ立ち)〕
RI印刷適正試験機((株)明製作所製)にて、試験インクを付与しないゴムロールのままで新聞用紙表面を繰り返し5回印刷した。ルーペを用い、100mm×100mmの範囲で紙ウェブ表面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ケバ立ちが非常に少ない。
○:ケバ立ちが少ない。
△:ケバ立ちがやや多い。
×:ケバ立ちが非常に多い。
〔試験例2(インク吸収ムラ)〕
オフセットカラー印刷機(型番:SYSTEM C−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、16万部/時の印刷速度で、藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。藍/赤の重色部分のインク濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インク濃度ムラが全く認められず、均一で鮮明な画像である。
○:インク濃度ムラが殆ど認められず、均一な画像である。
△:インク濃度ムラが認められ、やや不均一な画像である。
×:インク濃度ムラが明らかであり、不均一な画像である。
〔試験例3(ブランケットへの紙粉堆積)〕
(1)前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。10000部の印刷を行った後、ブランケット非画線部への紙粉の堆積度合いを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、実用上問題がない。
△:紙粉の発生が明確に認められる。
×:ブランケット上に紙粉が多く堆積し、ブランケットが白くなっている。
(2)オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、ブランケット上に堆積している紙粉をかき取り、その質量を測定して100cm2あたりの質量で表した。なお湿し水の膜厚は0.9μmとした。
〔試験例4(印刷後不透明度)〕
前記試験例1と同じRI印刷適正試験機を使用し、墨色インクのインク量を変えて印刷を行った。印刷面の反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率(印刷面の反対面)に対する印刷後の裏面反射率を求めた。なお反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を使用した。
〔試験例5(印刷白抜け)〕
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、網点面積率30〜100%でオフセット輪転印刷用インク(墨)の単色印刷を行った。網点面積率100%ベタ部について、印刷面の白抜けの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:白抜けが殆ど認められない。
○:白抜けが少ししか認められない。
△:白抜けが認められる。
×:白抜けが著しい。
〔試験例6(ネッパリ性)〕
新聞用紙サンプル2枚を適当な大きさに切断して水に10秒間浸漬した後、2枚を素早く密着させ、線圧100kg/cmでカレンダーに通紙した。24時間室温乾燥した後、引張り試験機(型番:オートグラフAGS−500NG、(株)島津製作所製)を用いて2枚の剥離強度を測定した。なお、数値が大きい程ネッパリ性(粘着性)が高い。
〔試験例7(インク乾燥性)〕
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で、植物油含有量が45%の新聞印刷用インクにて藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。印刷面と白紙面とが重なるように印刷物500部を重ね合わせ、5kgf(約49N)の荷重で1日間放置した後、白紙面の汚れの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:汚れが殆ど認められない。
○:汚れが少ししか認められない。
△:汚れが認められる。
×:汚れが著しい。
〔試験例8(断紙回数)〕
オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行い、6万部の印刷の間に、断紙が発生する回数を測定した。
〔試験例9(裏抜け)〕
前記試験例8と同じオフセット輪転機を使用し、同じ印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、墨ベタ面を裏面から目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:裏抜けが殆ど認められない。
○:裏抜けが少ししか認められない。
△:裏抜けが認められる。
×:裏抜けが著しい。
以上の結果から、実施例1〜22の新聞用紙は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを90質量%以上も含む、脱墨フロスが原料の再生粒子を填料として、古紙パルプを50質量%以上も含む原料パルプに内添して抄造したものであるので、資源を循環使用して低コストで得られるだけでなく、適度の坪量、密度及び熱水抽出pH、白色度、剛度及び表面強度を有し、また、優れた不透明度と紙力とを兼備したものであることがわかる。しかもこれら実施例1〜22の新聞用紙は、ケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積及び断紙が全く又は殆どなく、さらに印刷後不透明度も高く、印刷白抜けや裏抜けも全く又は殆どないので、例えば高速オフセット輪転印刷に非常に適した特性を具備していることがわかる。
これに対して比較例1〜4の新聞用紙は、脱墨フロスではなく、製紙スラッジを原料とした再生粒子が填料として用いられており、しかも原料パルプとして古紙パルプの使用量が少ないものであるので、省資源化や低コスト化が図られず、しかもケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、断紙に加え、印刷後不透明度、印刷白抜けや裏抜けの殆どが悪い結果で、高速オフセット印刷に適した特性を具備していないことがわかる。
また比較例5〜7の市販の新聞用紙も、実施例1〜22と比較し、ケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、断紙に加え、印刷後不透明度、印刷白抜けや裏抜けの殆どが悪い結果で、本発明が高速、カラー、高精細オフセット輪転印刷により適した特性を具備していることがわかる。
本発明の新聞用紙は、例えばサテライト型やタワープレス型のオフセットカラー印刷機等における高速オフセットカラー印刷に特に好適な新聞用紙として使用することができる。
本発明は、新聞用紙に関するものである。さらに詳しくは、古紙から、新聞用紙の主要構成要素である原料パルプ、填料を回収して再生、再利用する資源循環型の新聞用紙に関するものである。
近年の環境問題から、環境保護、資源保護、ゴミ減少を目的として、最近ではオフィスから発生する廃事務用紙をビル全体で回収しようとする動きも見られ、古紙パルプを使用した再生紙の利用が益々増加すると共に、紙への古紙配合率も増加している。
また、省資源、輸送費の削減、原材料費の削減の観点から、各用紙の軽量化が年々進んでいる。さらに、製紙工場では古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と、紙への古紙配合率の増加が進むとともに、紙の生産効率向上のため、紙製造工程の生産スピードが益々高速化している。このような状況下、新聞用紙においても需要は軽量化と古紙の高配合化の方向に進んでいる。例えば、新聞配達時の重量負担を増やすことなく1部当りのページ数を増やすために新聞用紙の軽量化が進み、環境問題に対応するために古紙配合率の増加が進み、また、オフセット輪転印刷機の高速化、紙面のカラー化などが進んでいる。
そのため、新聞用紙には高速オフセット輪転印刷に耐え得る引張り強さなどの強度に対する要求だけでなく、紙面のカラー化や高精細な見栄えのよい印刷仕上り、見開き全面広告などに対応できる、新聞用紙の表面強度やインク吸収性、印刷輪郭や画像が反対面から透けて見える現象、いわゆる裏抜けや隠蔽性の要求レベルが高くなっており、更なる新聞用紙の軽量化、古紙の高配化の妨げとなっている。
従来、新聞用紙の不透明度を向上させる為には、原料パルプに機械パルプが多用されてきたが、古紙パルプの高配合が望まれる近年にあっては、新聞用紙を前記機械パルプを主原料に構成することも困難である。また、再生紙の普及に伴って、近年は再生紙である古紙をさらに再利用することになり、すなわちパルプ繊維を繰り返し再利用している状況にあることから、得られる古紙パルプは微細繊維が多く、強度も低下している。この古紙を高配合することは、新聞用紙の強度、不透明度の低下を招き、印刷時の裏抜けや隠蔽性が問題となっている。
前記のごとき新聞用紙の隠蔽性を高め、裏抜けを少なくするためには、ホワイトカーボンや炭酸カルシウムなどの填料を使用して、紙の不透明度、吸油度を向上させることが一般的である。填料の添加方法には、バインダ等と共に填料を表面塗工する外添と、填料をパルプ原料と混合して抄紙する内添とがある。
填料の中でも微細な填料粒子は光の散乱係数と吸収係数とが良好であり不透明度向上効果が高いが、内添填料として利用する場合は歩留が低く、主に外添により塗工される。
しかし、填料を外添塗工する場合は一定以上の塗工層を形成する必要があるため、新聞用紙に要求される軽量化を達成することができない。また、新聞用紙のオフセット印刷機は高速で乾燥設備を持たないため、填料を外添塗工する場合は、インキの乾燥性、表面強度、版汚れなどにおいて、新聞用紙に要求される品質を満足することができないという問題が生じる。
そこで、例えば、パルプと炭酸カルシウムとを含む紙料にホワイトカーボンを添加して抄造し、水和ケイ酸の吸油量、細孔容積、平均粒子径等を特定範囲内に設定した填料内添紙(特許文献1参照)や、ホワイトカーボン及び炭酸カルシウムを主体とし、灰分中のこれらの割合を特定範囲内に設定した新聞用紙(特許文献2参照)が提案されている。
前記填料内添紙や新聞用紙は、特にホワイトカーボンが填料として多用されていることから、確かに従来と比較して不透明度及び吸油性が向上している。
しかしながら、ホワイトカーボンはそもそも高価であり、コスト上昇を招いてしまう。しかもホワイトカーボンを多用した場合には、その粒子特性から紙粉発生や印刷設備汚れの大きな原因となり易いといった問題があるため、その内添量については紙質強度の維持も鑑み、添加量を増やすことにも限界が生じている。
炭酸カルシウムを填料として使用した場合には、カオリンやタルクなどの酸性新聞用填料に比べてその硬度が高いために、製紙用ワイヤーの摩耗が速いことが一般的に言われており、同様に印刷時のオフセット輪転印刷用の版摩耗が懸念されている。したがって、軽量でオフセット輪転印刷に適した新聞用紙は開発されていなかった。
この炭酸カルシウムを新聞用紙に利用しようとした特許文献3には、機械パルプ及び又は脱墨古紙パルプと炭酸カルシウムを含み、クリヤーサイズ剤が塗布された中性新聞用紙が記載されている。しかし、炭酸カルシウムを使用した中性領域での抄紙は、抄紙設備、特にワイヤーが磨耗劣化し易いといった問題と、古紙パルプや木材繊維由来の樹脂成分の溶出によるピッチトラブルや抄紙設備の汚損原因が問題として発現するため、中性またはアルカリ性で抄造するに際し、硫酸アルミニウムを添加して上記パルプ中に含有されている樹脂成分を繊維に定着させた後に、填料として炭酸カルシウムを特定し、抄紙工程の可及的後段に於いて添加し、硫酸アルミニウムのカチオン性が低下しない間に樹脂成分を紙に抄き込むと云う煩雑な操業方法を取らざるを得ない旨が記載されている。
一方、製紙工場においては、近年の微細繊維の多い古紙パルプの高配合化と用紙の軽量化、抄紙機の高速化に伴うワイヤーパートでの急激なそして強制的な脱水により、微細繊維の歩留まりや灰分の歩留まりが極めて低い状況下になっており、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジが増加している。
すなわち、古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と古紙パルプの高配合化により、多くの古紙パルプが必要となり、古紙の使用量が増大している。この新聞古紙や雑誌古紙をはじめとした古紙には、非塗工紙に使用された填料や塗工紙に使用された填料・顔料に由来する無機物が多く含まれているため、古紙処理工程からは、パルプ繊維と分離され、填料・顔料の無機物が多量に含まれた脱墨フロスの発生量が増大している。
これら填料・顔料の無機物を多量に含む古紙処理工程から排出される脱墨フロス、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジは、従来は燃焼し減容化を図った上で、多くは埋立処分されてきた。
しかしながら、前記背景技術により、環境保護、資源保護、ゴミ減少に貢献できる再生紙の品質を維持、向上しながら継続的に製造するためには、製紙工場にとって、この製紙スラッジの再資源化、有効利用が重大な課題となっている。
前記製紙スラッジは、多量の無機物を含有するため、燃焼しても多量の燃焼灰(無機物)が残り、減容化の効果は低い。そこで、この燃焼灰をセメント原料や土壌改良材として活用する等の努力もなされているが、これらの方法において燃焼灰は助剤として使用されており、多量に使用されるわけではないため、結局、大部分の燃焼灰は埋立処分されることになる。
燃焼灰を有効に活用する方法として、紙の内添填料として使用することも考えられるが、燃焼灰は白色度が低いため、そのままの状態では紙の内添填料として使用するのに適していない。
そこで、燃焼灰(焼却灰)を再燃焼し、スラリー化及び湿式分散を行って白色度を向上させ、白色顔料とする方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、この焼却灰を再燃焼する方法の場合、未燃焼カーボンを完全に燃焼させるためには、再燃焼温度を500〜900℃に設定する必要があり、しかも焼却灰の白色度は50%程度にまでしか向上せず、紙の填料としての使用に適したものではないことが知見された。また、再燃焼温度を900℃超に設定すると、燃焼灰(無機物)が焼結、溶融し、極めて硬くなることも知見された。さらに、再燃焼灰を紙の填料として使用した場合、この再燃焼灰は非常に硬い性質を有することから、抄紙ワイヤーの磨耗進行が早く、寿命が非常に短くなるため、実操業に使用することができなかった。
このような抄紙ワイヤーの磨耗については、再燃焼灰を粉砕し、その粒子径を小さくして磨耗の低減、平滑性の向上を図ることも考えられるが、紙の内添填料として使用する場合には、抄紙時における歩留まりが低くなり、また、再燃焼灰自体が極めて硬いことから、粉砕のためのエネルギーコストが極めて高くなるといった問題がある。
また、製紙スラッジの利用方法として、紙繊維からの有機物を含む含水の製紙工場廃棄スラッジを、酸素含有ガスを注入した反応器内に供給し、250〜300℃、3000psig(プサイグ)程度の加温加圧下で0.25〜5時間酸化して、該廃棄スラッジ中の無機物を製紙用の顔料(無機填料)として再生する方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかしながら、前記方法は、製紙スラッジの湿式空気酸化処理によるものであることから、有機物除去が充分ではなく、また得られた顔料の白色度が低く、粒子径も不揃いで、製紙用の填料として使用するには不適切であり、しかも反応操作が複雑でコストが高いとう問題がある。
これらのほかにも、製紙スラッジをいぶし焼きしてPS炭とした後、さらにこれをキルンで焼却して製紙用原料となる白土を生成させる方法が提案されている(特許文献6参照)。
しかしながら、この方法では製紙スラッジをいぶし焼きするため、製紙スラッジからエネルギーを有効に取り出すことができないばかりか、逆に投入エネルギーが必要になるという大きなデメリットがある。さらに、生成した白土も粒子径が不揃いで大きく、製紙用填料としては使用することができないという問題がある。
さらに、排水に凝集剤を添加して造粒し、得られる成形汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥、炭化、焼成して製紙用填料を製造する方法も提案されている(特許文献7参照)。この方法において、焼成に先立って造粒、成形するのは、焼成を均一に行うためである。
ところが、例えば固形分濃度が40〜60%(換言すれば水分率が60〜40%)の成形汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥、炭化、焼成した場合、乾燥状態、炭化状態の如何にかかわらず、キルンの回転によって汚泥粒子の処理は強制的に進行する。したがって、乾燥が不充分であると粒子内部に未燃分が多く残留し、その結果、焼成が不完全となって白色度の低下が生じる。逆に過乾燥になると、焼成は完全であるが過焼成を招き、得られる再生粒子の硬度が高くなる。この再生粒子を使用すると、抄紙機でのワイヤー磨耗や紙を断裁する場合のカッター刃磨耗が生じ易くなるという問題を惹き起こす。
前記特許文献4〜7に記載の、製紙スラッジを原料として紙の填料を製造する従来の方法の最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジには、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。
前記各種スラッジのうち、例えば抄紙工程でワイヤーを通過して流出したスラッジには、紙力剤等が混入しており、また抄紙工程における抄造物の変更によってスラッジの品質に変動が生じる。
また、排水から回収したスラッジには、凝集剤が混入しており、さらに工場全体の抄造物、生産量の変動や生産設備の工程内洗浄などにより、スラッジの品質に大きな変動が生じる。
パルプ化工程での洗浄過程から生じるスラッジには、紙用填料、顔料に適さない物質が混入していたり、チップ水分やパルプ製造条件の変動により品質に変動が生じたりする。
したがって、種々の製紙スラッジを無選別に用いて製紙用の填料、顔料を得ようとすると、その品質は低いものとなり、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
このように、従来の製紙スラッジを利用した方法は、いずれも単なる製紙用粒子の回収に終始し、これらの方法で得られる製紙スラッジからの再生粒子は、製紙用の顔料、填料としては品質が適さず、品質安定性に欠けるものであった。
したがって、新聞用紙の主要構成要素である原料パルプは、古紙パルプの多用が進むものの、填料としては従来のホワイトカーボンや炭酸カルシウムを多用せざるを得ず、例えば製紙工程での不要物を有効利用するなどして、コストダウンと抄紙設備の磨耗問題の改善とを図りながら、しかも不透明度及び紙力を向上させ得る技術の開発が待ち望まれている。
特開平09−176985号公報
特開2002−201590号公報
特開平09−78491号公報
特開平11−310732号公報
特公昭56−27638号公報
特開昭54−14367号公報
特開2004−176208号公報
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、古紙から、古紙(紙)の主要構成要素であるパルプ繊維、填料・顔料を共に回収して使用する、資源循環型の新聞用紙を提供することを課題とする。
より詳しくは、古紙(紙)の主要構成要素であるパルプ繊維と填料・顔料を共に回収し、資源を循環使用して低コストで製造され、さらに、中性又はアルカリ領域で抄紙することで、優れた紙力が維持されて断紙が少ないだけでなく、樹脂分や紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性にも優れ、不透明度に優れて裏抜けが少なく、高速オフセット輪転印刷における印刷に好適に使用し得る新聞用紙を提供することを課題とする。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
原料パルプと填料とを主構成原料とする新聞用紙であって、
前記原料パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
前記填料として、脱墨フロスを原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である、ことを特徴とする新聞用紙。
〔請求項2記載の発明〕
前記再生粒子は、その表面がシリカで被覆されたシリカ被覆再生粒子である、請求項1記載の新聞用紙。
〔請求項3記載の発明〕
JIS P 8251に準拠した灰分が、4〜15%で、JIS P 8133に準拠した熱水抽出pHが、6.0〜9.5である、請求項1又は請求項2記載の新聞用紙。
本発明の新聞用紙は、産業廃棄物として焼却や埋立処分されていた脱墨フロスを製紙用填料資源として活用すると共に、古紙からなる古紙パルプを主たる原料パルプとして使用することで、資源を循環使用して低コストで製造され、抄造時の灰分歩留まりが高く、ワイヤー磨耗等の抄紙設備の磨耗劣化や樹脂成分の溶出による印刷設備汚れを殆ど起こすことなく、優れた紙力が維持されて断紙が少ないだけでなく、紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性にも優れ、不透明度に優れて裏抜けが少ない新聞用紙として、高速オフセット輪転印刷、オフセット輪転カラー印刷・高精細印刷に好適に使用し得るものとなる。
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態の新聞用紙は、前記したように、前記原料パルプと填料とを主構成原料とし、前記原料パルプが古紙パルプ50〜100質量%からなり、前記填料として、脱墨フロスを原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である。
なお、紙の主要構成要素であるパルプ繊維、填料が、いずれも回収、再生、再利用されたものであることから、本発明によって提供することができる紙を、従来の新聞用紙に対し、完全再生新聞用紙または100%再生新聞用紙と定義する。また、本明細書において、主構成要素とは、構成割合が50質量%以上であることを意味する。
まず、本実施形態に用いられる原料パルプについて説明する。係る原料パルプは、例えば新聞古紙、雑誌古紙、模造・色上古紙、OA古紙等の古紙を原料とする古紙パルプ50〜100質量%から構成される。このように本実施形態においては古紙パルプが50質量%以上も用いられるので、資源の有効利用に大きく寄与し、低コスト化を図ることができる。特に新聞用紙は古紙としての回収率が高く、再資源化の優等生といわれるものであり、その用途に本発明に基づく完全再生紙からなる新聞用紙を用いることで、新聞用紙の循環使用をより進めることが可能となる。
古紙パルプの種類には特に限定がなく、例えばディインキングパルプ(DIP)、ウェストパルプ(WP)などがあげられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。
原料パルプとして、前記古紙パルプ以外にも通常の紙に用いられるパルプを適宜使用することができる。古紙パルプ以外のほかの原料パルプとしては、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)などの機械パルプ;針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)などの化学パルプや、これらを漂白したパルプなどがあげられ、これらの中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
原料パルプ中の古紙パルプの割合は、前記したように、50〜100質量%であるが、より省資源化及び低コスト化が実現される点から、さらには60〜100質量%、特に70〜100質量%とすることができる。
次に本実施形態に用いられる填料について説明する。係る填料としては、脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを特定量含有する再生粒子が少なくとも用いられる。
少なくとも前記再生粒子を少なくとも填料として用い、前記のごとき古紙パルプを50〜100質量%も含んだ原料パルプに特定量内添することが本実施形態の大きな特徴の1つである。この再生粒子は、脱墨フロスを焼成して得られる循環使用が可能なものであるので、廃棄物としての埋立等の処分が不要であり、環境負荷の低減と、省資源化に大きく貢献するものである。また、原料が古紙処理工程で生じる脱墨フロスであるので、安価であり、新たな無機粒子の使用量を抑えることができ、製造コストが充分に削減されるという利点がある。さらに係る再生粒子を用いることで、抄造時の灰分歩留まりが高く、例えば炭酸カルシウムと異なり、ワイヤー磨耗等の抄紙設備の磨耗劣化を来たすことが無く、更に樹脂成分が微細な状態下で再生粒子に吸着することで、樹脂分の凝集によるピッチトラブルを防ぎ印刷設備汚れを殆ど起こすことがなく、低コストで高い操業性で紙を製造することができ、しかも従来と同等以上の優れた不透明度や紙力が紙に付与され、裏抜け、断紙も少なくなる。
本実施形態に用いられる再生粒子は、脱墨フロスを原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるものである。なおさらに、後述するように、脱墨フロスの凝集工程、造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を経てもよい。また再生粒子の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。
さらに本実施形態においては、原料パルプに内添する再生粒子として、前記のごとき工程を経て得られた粒子の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子を特に好適に用いることができる。
前記再生粒子の表面にさらにシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子とすることで、循環使用における古紙処理工程において、水酸化ナトリウムと反応させて緩衝剤や漂白助剤として製紙用原料、無機粒子の循環使用にも寄与させることができる。またかかるシリカ被覆再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、シリカで被覆していない再生粒子を用いた場合よりもさらに、紙の白色度、不透明度、表面強度、インク乾燥性、インク吸収ムラ、嵩高といった各効果を向上することができる。
なお、本実施形態に用いられる古紙処理工程にて生じる脱墨フロスは、近年の中性抄紙化に伴い、炭酸カルシウムの含有量が増加傾向にあり、得られる再生粒子中のカルシウムの割合も高くなる傾向がある。このようにカルシウムの割合が高い再生粒子を原料パルプに内添すると、紙の不透明度がやや低下する場合があるが、表面にシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子は、製紙用途の再生粒子としての機能が非常に高く、該シリカ被覆再生粒子を原料パルプに内添して得られる紙の不透明度は、著しく向上する。
再生粒子の表面を被覆するシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用することが可能である。具体的には、例えばコロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカなどがあげられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力の大きさ、付着性の高さ、高吸油性などの優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。これらのうち、コロイダルシリカは、ケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカである。シリカゲルは、ケイ酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸である。また無水シリカは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものである。
再生粒子の表面にシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子を得る方法には特に限定がないが、例えば以下の方法を好適に採用することができる。まず、再生粒子をケイ酸アルカリ溶液に添加、分散させ、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃程度に保持して酸を添加し、シリカゾルを生成させる。次いで最終反応液のpHを8〜11の範囲に調整することにより、再生粒子の表面にシリカを析出させることができる。このようにして再生粒子の表面に析出されるシリカは、ケイ酸アルカリ(例えばケイ酸ナトリウム:水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸の希釈液と高温下で反応し、加水分解反応とケイ酸の重合化により得られる、粒子径が10〜20nm程度のシリカゾル粒子である。
また、ケイ酸ナトリウム溶液等のケイ酸アルカリ溶液に希硫酸等の酸を添加することによって生成する、粒子径が数nm程度のシリカゾル微粒子を、再生粒子の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、このシリカゾル微粒子の結晶成長に伴う、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で生じる結合により、再生粒子の表面にシリカを析出させることもできる。この場合、ケイ酸アルカリ溶液に酸を添加する際のpHは、中性〜弱アルカリ性の範囲とし、好ましくはpHを8〜11の範囲に調整する。これは、pHが7未満の酸性条件になるまで酸を添加してしまうと、シリカゾル粒子ではなくホワイトカーボンが生成する恐れが生じるからである。
なお、前記ケイ酸アルカリ溶液の種類には特に限定がないが、入手が容易である点からケイ酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が特に望ましい。このケイ酸アルカリ溶液の濃度としては、再生粒子中のシリカ成分が低下し、再生粒子の表面にシリカが析出し難くならないようにするには、溶液中のケイ酸分(SiO2換算)が3質量%以上であることが好ましく、再生粒子の表面に析出されるシリカが、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子の多孔性が阻害され、不透明度やトナー定着性の向上効果が不充分になる恐れをなくすには、係るケイ酸分(SiO2換算)が10質量%以下であることが好ましい。
再生粒子の粒度を各工程で均一に揃えるためには、分級を行うことが好ましく、粗大粒子や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。なお造粒においては、通常の造粒設備を使用することができ、回転式、攪拌式、押出式等の設備が好適である。
製造設備において、再生粒子以外の異物を除去することが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック、金属等の異物を除去することが、除去効率の点で好ましい。特に鉄分は、酸化により再生粒子の白色度低下の起因物質を生成するため、鉄分の混入を避け、選択的に除去することが好ましい。したがって、各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止すると共に、さらに乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し、選択的に鉄分を除去することが好ましい。
なお本実施形態においては、前記乾燥工程や焼成工程、及び必要に応じて分級工程において、粉砕工程前にあらかじめ、粒子径が40μm以下の粒子が90質量%以上となるように処理しておくことが好ましい。これにより、通常行われている乾式粉砕による粗大粒子の粉砕及び湿式粉砕による微粒子化といった複数段の粉砕処理を行うことなく、湿式粉砕による一段粉砕処理も可能となる。またこれにより、コールターカウンター法による粒度分布の微分曲線における平均粒子径のピーク高さを30%以上とすることができる。さらには原料である脱墨フロス中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、あらかじめ、例えば後述する質量割合に調整することで、再生粒子の細孔容積を0.15〜0.60cc/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を30〜100nmとすることもできる。
かくして得られる再生粒子は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを含有している。再生粒子中のこれらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析を行い、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜82:9〜35:9〜35、さらには40〜82:9〜30:9〜30、特に60〜82:9〜20:9〜20の質量割合であることが好ましい。なお、特に再生粒子がシリカ被覆再生粒子である場合には、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜62:29〜55:9〜35であることが好ましい。また同時に、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの元素分析における酸化物換算の合計含有割合は、90質量%以上、好ましくは93質量%以上である。
このように、例えばカルシウムが酸化物換算で30質量割合以上含有された再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、特に得られる紙の白色度を向上させることができる。
再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合を、例えば酸化物換算で前記範囲内に調整するには、本来、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが好ましいが、乾燥工程や焼成工程、さらには必要に応じて分級工程において、由来が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法を採用することも可能である。
例えば、再生粒子中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを、ケイ素の調整には不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用された抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程の排水スラッジを適宜用いることができる。
またカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合を、酸化物換算で90質量%以上に調整するには、例えば排水スラッジの凝集処理に鉄分を含有しない凝集剤を使用する手段、製造設備工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入するのを防止したり、さらには乾燥・分級設備内に磁石等の高い磁性体を設置して鉄分を除去する手段等を採用することが可能である。特に鉄分は、酸化により白色度を低下させる起因物質になるため、選択的に除去することが好ましい。
ところで、炭酸カルシウムには、六方結晶系のカルサイト結晶(方解石)や、斜方結晶系のアラゴナイト結晶(あられ石)などの同質異像が存在する。天然に産する石灰石はその殆どがカルサイト結晶であり、貝殻類にはカルサイト結晶のほか、アラゴナイト結晶も存在する。さらに炭酸カルシウムには、天然ではないが、バテライト結晶も存在する。前記脱墨フロスから得られるカルシウムは多種多様であるが、焼成凝集化することでほぼ均一の炭酸カルシウム性状となる。したがって、係るカルシウムは再生粒子そのものの品質安定性に寄与し、該再生粒子は、カルシウム、ケイ素、アルミニウムといった異なる成分で構成される凝集体でありながら、安定した性状を示す。
また再生粒子にはケイ素が含まれるが、該ケイ素からなるシリカの一次粒子は微細であるので、光学的屈折率が高い。したがって、例えばケイ素が酸化物換算で9質量割合以上含有された再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、特に得られる紙の不透明度を向上させることができる。
さらに本実施形態に用いられる再生粒子は、微細な粒子が二次凝集した柔軟かつポーラスな性状を有するので、嵩高な紙層形成に寄与し、該再生粒子を填料として原料パルプに内添して得られる新聞用紙は、密度が低く、取りまわしが良好な剛度を有する。
本実施形態に用いられる再生粒子の粒子径は、例えば一次粒子が凝集した二次粒子として、原料パルプ中への歩留まりや再生粒子の白水中への流失防止という点から、そのメタノール分散溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(TA−II型、COULTER ELECTRONICS社製)にて測定して、平均粒子径が0.05μm以上、さらには0.1μm以上であることが好ましく、また印刷適正の維持と剣先詰まりの防止という点から、平均粒子径が16μm以下、さらには15μm以下であることが好ましい。
前記再生粒子の含有量があまりにも少ない場合には、例えば抄紙機でのカレンダー処理において、平滑化の効果が発現されにくくなり、紙の不透明性が低下して印刷後の不透明度が低下したり、新聞用紙の剛直度が高くなり、輪転機上での走行性が低下したりする恐れがあるので、原料パルプに対して2質量%以上、さらには5質量%以上であることが好ましい。逆に再生粒子の含有量があまりにも多い場合には、表面性や剛度の点では望ましいものの、印刷機内での搬送に伴って灰分が脱落し易くなり、表面強度の低下や、剥け・ケバ立ち、印刷白抜け、紙粉が発生する恐れがあるので、原料パルプに対して15質量%以下、さらには20質量%以下であることが好ましい。
本実施形態において、填料として前記再生粒子を単独で用いることもできるが、このほかに、内添用填料として通常使用される、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、デラミネーテッドクレー等のクレー、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれた少なくとも1種の填料を併用することもできる。
なお再生粒子を含む填料の添加率があまりにも少ない場合には、填料を用いる効果が充分に発現されず、逆にあまりにも多い場合には、紙力が低下する恐れがあるので、該填料は、紙中に紙灰分として4〜15質量%、さらには5〜10質量%含まれることが好ましい。
また原料パルプ及び填料から得られた紙料スラリーに添加する添加剤としては、通常の紙に配合されるものを用いることができ、例えば澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等の紙力増強剤;ロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等の内添サイズ剤;ポリアクリルアミドやその共重合体、ケイ酸ナトリウム等の歩留まり向上剤などがあげられる。
さらに本実施形態においては、原料パルプから紙料スラリーを調製して抄紙した後、表面に例えば澱粉、変性澱粉、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリルアミド等の高分子材料を成分とする表面処理剤を塗布したり、紙料スラリーに染料、顔料等の色料を添加したりしてもよい。
前記変性澱粉としては、特に限定されるものではなく、通常の澱粉原料が用いられ、例えばトウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米等に酸化処理、酵素処理等が施された澱粉があげられる。この変性澱粉を用いる場合、表面処理剤中の量は、所望の効果を得るためには、全固形分中40質量%以上となるように調整することが好ましい。
表面処理剤には、適宜他の接着剤、例えばスチレン−ブタジエン共重合体等のラテックス類、ポリビニルアルコールやポリアクリルアミド、さらにはカオリンや炭酸カルシウム等の顔料、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等の各種助剤を添加することもできる。また表面処理剤の固形分濃度は特に限定されるものではなく、塗布装置や塗布量に応じて、例えば2〜25質量%程度に調整することが好ましい。
なお、表面処理剤をあまりにも多量に使用すると、コスト高となるだけでなく、紙表面が湿った状態でネッパリ性と呼ばれる紙表面の粘着性が発現される傾向がある。このネッパリ性が大きくなると、特に非画線部におけるブランケットパイリングを逆に増大させたり、また印刷時に紙面がブランケットに貼り付き、結果的にシワや断紙といった走行性トラブルを誘発したりする恐れがあるので、好ましくない。また、表面処理剤の使用量が増加すると、目的とする紙の透明性が上昇、すなわち不透明度が低下したり、インクの乾燥性が悪化したりする場合もある。これらの表面処理剤のうち、澱粉やポリアクリルアミドは比較的ネッパリ性が低いので広く使用されているが、いずれも水への溶解性が高いため、印刷時に湿し水中に容易に溶出して填料と共にブランケットに堆積し、ブランケットパイリングが発生し易い。また溶出した表面処理剤がブランケットを介して刷版に転移、蓄積することで刷版の非画線部が感脂化し、非画線部のインク汚れ、すなわち地汚れと呼ばれる紙面の汚れを誘発し易くなることから、多量に用いることは好ましくない。
前記表面処理剤は、製紙分野で一般に使用されている塗布装置、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いて塗布すればよい。
表面処理剤の塗布量は、紙の表面強度を充分に向上させるには、乾燥重量で0.4g/m2以上となるように調整することが好ましく、またコスト高となったり、不透明度やインク乾燥性の低下を招いたりしないようにするには、乾燥重質量で3.0g/m2以下となるように、より好ましくは、0.7〜2.5g/m2以下に調整することが好ましい。
かくして紙料スラリー及び必要に応じて添加剤から調製された紙料は、公知の抄紙機によって抄造することができ、さらに必要に応じてカレンダー装置に通紙し、加圧、平滑化処理を施して新聞用紙に仕上げることができる。該カレンダー装置としては、通常の金属ロールと金属ロールとの組み合わせによるマシンカレンダーよりも、金属ロールと樹脂ロールとの組み合わせによるソフトカレンダーを使用するほうが、紙層を強く加圧せずに平滑化することができ、さらに紙層強度の低下を充分に抑制することができるのでより好ましい。
ソフトカレンダーの使用においては、新聞用紙の粗面側に当たる裏面側がソフトカレンダーの金属ロール面に先に接触するように通紙することで、より平坦性及び嵩高性の向上をより図ることができ、1500m/分以上の高速抄紙において高い平坦性と表裏差の少ない新聞用紙を得ることができる。
さらに好ましくは、表裏面に設ける表面処理剤の塗布量を表面側より裏面側を多くすることにより、より良好な平坦性と嵩高性とが得られ、腰のある新聞用紙を得ることができる。
なお前記抄造の際の新聞用紙のpHは、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)を添加し、アルミニウムを介して樹脂成分を繊維に定着させるか、あるいは樹脂成分の凝集体を形成させることにより、樹脂成分を紙支持体に取り込むことによって製造工程での樹脂成分の付着を防ぐため、アルミニウムイオン種のカチオン性が最も活性なpH4〜6未満の範囲内で新聞用紙を抄造するのが一般的であるが、本発明にて使用する古紙パルプは、古紙から脱インクして製造されるためpHが6以上と高く、高pH化による安定性やpH調整という点、補助的な使用が考えられる炭酸カルシウムの使用に際しては、該炭酸カルシウムが溶解して歩留まりが低下したり、抄紙工程の汚れの原因になったりする恐れをなくすほか、理由は不明確ながらpH6未満で抄紙するよりも、6以上で抄紙することによって紙力の向上が図られる事由から、6〜9.5程度となるように調整することが好ましい。
また再生粒子の添加は、従来のいずれの段階でも行うことが可能であるが、原料配合チェストからインレットの間で行うことが好ましい。この間に添加することにより、再生粒子が分散し易くなり、パルプ繊維への定着性が向上し、その結果、填料の歩留まりが向上する。また再生粒子がパルプ繊維間の結合を阻害しないので、紙の剛度が低下することもない。再生粒子をより均一に分散させ、パルプ繊維への定着性を向上させるためには、できる限りインレットの近傍工程で該再生粒子を添加することが特に好ましい。
かくして得られる新聞用紙は、JIS P 8251に準拠した灰分が4〜14%で、JIS P 8133に記載の「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に準拠して測定した熱水抽出pHが、6.0以上、さらには6.1以上であることが好ましく、また9.5以下、さらには8.5以下であることが好ましい。熱水抽出pHがこのような範囲の場合には、補助的な使用が考えられる炭酸カルシウムや、僅かとは考えられるが、再生粒子中に内在する炭酸カルシウムの溶出が防止されて再生粒子の形状が安定し、また水酸化カルシウムの生成が防止され、抄紙工程系内の汚れやスケールの発生を抑制し、紙の劣化抑制や資源循環を図ることができる。また、紙のインク乾燥性を向上させ、インク吸収ムラを少なくしたり、劣化を充分に抑制し、保存性や助剤の定着性をさらに向上させることもできる。
さらに本実施形態に係る紙の坪量は、軽量化、例えば高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明度の確保という点から、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定して、37g/m2以上、さらには40g/m2以上であることが好ましく、またその軽量化の点から、係る坪量は48g/m2以下、さらには46g/m2以下であることが好ましい。37g/m2未満では、例えば高速オフセット輪転印刷機における強度確保が困難であり、48g/m2を超えると、近年の軽量化、省資源に逆行することとなる。
紙の白色度は、その用途に応じて異なるが、新聞用紙においては購読者の眼精疲労をきたさないように、JIS P 8123に記載の「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」に準拠して測定して、少なくとも50%以上が好ましく、白色度は52〜56%、さらには53〜55%であることが好ましい。
新聞用紙の白紙不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から不透明度は高いものが求められるが、JIS P 8138に記載の「紙の不透明度試験方法」に準拠して測定して、91〜95%、さらには92〜94%であることが好ましい。
また新聞用紙の密度は、近年の軽量化や軽量化に伴う強度維持の点から、JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定して、0.55〜0.60g/cm3、さらには0.56〜0.59g/cm3であることが好ましい。
また紙のMD方向の剛度は、例えば高速輪転印刷に適した腰を付与するという点から、JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して測定して、30〜55cm 3 /100、さらには32〜50cm 3 /100であることが好ましい。
新聞用紙において用いられるオフセト輪転印刷は、刷版に湿し水と印刷インキとを供給し、次いでブランケットと呼ばれるゴム版にインキを転移させた後、紙に転移させて印刷を行う方法であり、従来の凸版印刷方式に比べて、比較的粘度の高いインキを使用するため、インキの紙層内部への浸透が少なく、インキの着肉性が良好となると共に、印刷後のインキ裏抜けの少ない(不透明度の大きい)利点を有している。
さらに近年では、新聞用紙のカラー化や軽量化に伴い、良好なインキの着肉性や印刷後の高い不透明性が一層求められている。このうち、インキ着肉性を高める手段としては、先に述べたソフトカレンダー等による平坦化処理により新聞用紙を平滑化することが広く行われている。しかし、カレンダー処理のニップ圧力を高くしたり、ニップ数を増やすことで平滑化すれば、インキ着肉性は高まるが、紙の嵩高さが損なわれるために、印刷後の不透明度が低下や、剛度が低くなるため、印刷時の皺発生など走行性不良トラブルの原因となる恐れがある。
一方で、カレンダー処理を軽減すれば嵩高な紙を得ることはできるが、紙面の着肉性の表裏差が増大し、特に平滑度が低い側の紙面で着肉性が悪くなるため、表と裏とで画像の濃度が著しく異なるという問題が発生する。これは、抄紙工程中、ワイヤーパート、プレスパートでの脱水条件が表面と裏面とで微妙に異なるため、用紙の平滑性に表裏差ができたり、厚さ方向での填料、微細繊維の分布状態が異なったりするために、インキの転移性に表裏差がでるためと考えられている。
本発明者らは、本発明に基づく古紙パルプ50〜100質量%からなり、少なくとも前記填料として、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である新聞用紙における湿し水と印刷インキの転写において、該新聞用紙のJIS P 8140に基づく10秒コブサイズ度が30〜300g/m2であり、かつJIS P 3001に基づく吸油度が50〜150秒である関係を有することが好ましいことを知見している。いわゆる親水性と親油性の関係を所定の範囲内に抑えることで、平坦化処理と相俟ってよりオフセット輪転印刷適正を向上させることが可能となる。
さらに紙の表面強度は、やはり高速輪転印刷における紙質強度を考慮すると、後述するRIテスター((株)明製作所製)による測定において最低限度グレード3以上であることが好ましい。
このように、本実施形態に係る新聞用紙は、古紙パルプを50質量%以上も含有した原料パルプに、古紙処理工程にて生じる脱墨フロスを主原料とし、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを合計90質量%以上も含有した再生粒子を填料として内添して抄造したものである。したがって、本実施形態に係る新聞用紙は、抄造時の灰分歩留まりが高く、ワイヤー磨耗等の抄紙設備の磨耗劣化や印刷設備汚れを殆ど起こすことなく、資源を循環使用して低コストで製造され、優れた紙力が維持されて断紙がないだけでなく、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり、色ズレ等もなく、不透明度に優れて裏抜けが少ない。しかも本実施形態に係る新聞用紙は、印刷時、特にカラー印刷時の各種特性にも優れ、例えば12〜17万部/時程度といった高速オフセット輪転カラー印刷等に好適に使用することができる。
次に本発明の新聞用紙を、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
〔再生粒子の製造(製造例(実施例)1〜22及び比較例1〜4)〕
原料として、表1に示すように、脱墨フロス(古紙パルプを製造する古紙処理工程より得られた脱墨フロス、製造例1〜22)又は製紙スラッジ(主に製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ、比較(製造)例1〜4)を用い、表1に示す条件の脱水工程、乾燥工程及び焼成工程を経た後、湿式粉砕処理を施して再生粒子を得た。
さらに製造例15〜17においては、再生粒子をケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)に添加、分散させてスラリーを調製した後、加熱攪拌しながら、液温を約85℃に保持して希硫酸を添加し、シリカゾルを生成させた。次いで反応液のpHを8〜11に調整し、再生粒子の表面にシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子を得た。
得られた再生粒子及びシリカ被覆再生粒子について、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量をそれぞれ酸化物換算で求め、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合を算出した。その結果を表2に示す。また平均粒子径も併せて表2に示す。さらにワイヤー磨耗度、生産性、品質安定性及び外観についても調べた。これらの結果も併せて表2に示す。
なお、表1及び2に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(ア)乾燥工程後(焼成工程入口)の乾燥物の平均粒子径
X線マイクロアナライザー(型番:EMAX2770、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)を加速電圧15kVで用い、白黒ポラロイドフィルム(ポラロイド社製、8.5cm×10.8cm)にて、X線マイクロアナライザーディスプレーのX線像を20枚撮影して実測した。
(イ)乾燥工程後(焼成工程入口)の粒子径355〜2000μmの粒子の割合
4.7メッシュの篩にて、粒子径が2000μmを超える乾燥物粒子の質量割合を、42メッシュの篩にて、粒子径が355μm未満の乾燥物粒子の質量割合を、それぞれ測定し、質量割合を算出した。
(ウ)再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)
X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析を行った。
(エ)再生粒子の平均粒子径
再生粒子サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。この溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(TA−II型、COULTER ELECTRONICS社製)にて、50μmのアパチャーを用いて測定した。ただし、50μmのアパチャーで測定不可能なものについては、200μmのアパチャーを使用した。また電解液として、ISOTON II(商品名、COULTER ELECTRONICS社製、0.7%の高純度NaCl水溶液)を用いた。
(オ)ワイヤー磨耗度
磨耗度試験装置(日本フィルコン(株)製)を用い、スラリー濃度2質量%にて3時間、プラスチックワイヤー磨耗度を測定した。
(カ)生産性
原料の脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力を各々4段階評価し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれも高い評価でバランスが最もよかった。
○:平均してよい評価であった。
△:脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力のいずれかに問題があった。
×:実操業が困難であった。
(キ)品質安定性
白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:上位10位まで
○:11〜22位
△:23〜25位
×:26位以下
(ク)外観
目視にて再生粒子の色を観察し、白色と灰色とに区分した。
表2に示された結果から、製造例1〜22の再生粒子は、いずれもワイヤー磨耗度が低く、生産性及び品質安定性にも優れたものであることがわかる。これに対して比較例1〜4の再生粒子は、いずれもワイヤー磨耗度が高く、生産性及び品質安定性にも劣るものであることがわかる。
〔新聞用紙の作製(製造例1〜22及び比較例1〜7)〕
表3に示す割合でディンキングパルプ(DIP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)及び針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を配合し、レファイナーでフリーネスを120mL C.S.F(JIS P 8121に準拠)に調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに対し、絶乾パルプ100質量部あたりカチオン化澱粉を0.5質量部添加し、さらに、填料として前述した製造例1〜22及び比較製造例1〜4で得られた再生粒子を表3に示す割合で添加し、硫酸バンドでpHを調整後、ツインワイヤー抄紙機で表4に示す坪量の新聞用紙を抄造した。また表面サイズ剤として酸化澱粉を両面で1g/m2塗布した。
得られた新聞用紙について、各種物性を調べた。これらの結果を表4に示す。また、市販の新聞用紙を試験紙A〜Cとして準備し、実施例1〜22及び比較例1〜4の新聞用紙と同様に各種物性を調べた。その結果を、比較例5〜7として併せて表4に示す。
なお、表3及び4に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(a)原料パルプ中の各パルプの割合
JIS P 8120に記載の「繊維組成試験方法」に準拠して測定した。
(b)坪量
JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
(c)密度
JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
(d)熱水抽出pH
JIS P 8133に記載の「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に準拠して測定した。
(e)灰分
JIS P 8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法」に準拠して測定した。
(f)コッブ吸水度(サイズ度)
JIS P 8140に記載の「紙及び板紙―吸水度試験方法−コッブ法」に準拠し、測定時間10秒にて測定した。
(g)吸油度
JIS P 3001−1976に記載の、「吸油度試験方法」に準拠し、軽油1号にて測定した。
(h)白色度
JIS P 8123に記載の「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」に準拠して測定した。
(i)白紙不透明度
JIS P 8138に記載の「紙の不透明度試験方法」に準拠して測定した。
(j)剛度(MD方向)
JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して測定した。
(k)表面強度
紙試料を、実験室の金属ロールからなるカレンダーに、線圧40kg/cmで2回通した後、この紙試料の表面に、RIテスター((株)明製作所製)で、インキタック6(東洋インキ製造(株)製)を用いて印刷した。10cm2あたりの繊維が剥がれた状態を目視にて観察し、以下の評価基準(グレード)に基づいて評価した。
(評価基準)
1:繊維の剥がれかなりあり
2:繊維の剥がれあり
3:繊維の剥がれややあり
4:繊維の剥がれ僅かあり
5:繊維の剥がれ殆どなし
なお実用上は、最低限度グレード3である。
次に、実施例1〜22及び比較例1〜7の新聞用紙について、以下の試験例1〜9に基づいて各特性を調べた。その結果を表5に示す。
〔試験例1(ケバ立ち)〕
RI印刷適正試験機((株)明製作所製)にて、試験インクを付与しないゴムロールのままで新聞用紙表面を繰り返し5回印刷した。ルーペを用い、100mm×100mmの範囲で紙ウェブ表面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ケバ立ちが非常に少ない。
○:ケバ立ちが少ない。
△:ケバ立ちがやや多い。
×:ケバ立ちが非常に多い。
〔試験例2(インク吸収ムラ)〕
オフセットカラー印刷機(型番:SYSTEM C−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、16万部/時の印刷速度で、藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。藍/赤の重色部分のインク濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インク濃度ムラが全く認められず、均一で鮮明な画像である。
○:インク濃度ムラが殆ど認められず、均一な画像である。
△:インク濃度ムラが認められ、やや不均一な画像である。
×:インク濃度ムラが明らかであり、不均一な画像である。
〔試験例3(ブランケットへの紙粉堆積)〕
(1)前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。10000部の印刷を行った後、ブランケット非画線部への紙粉の堆積度合いを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、実用上問題がない。
△:紙粉の発生が明確に認められる。
×:ブランケット上に紙粉が多く堆積し、ブランケットが白くなっている。
(2)オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、ブランケット上に堆積している紙粉をかき取り、その質量を測定して100cm2あたりの質量で表した。なお湿し水の膜厚は0.9μmとした。
〔試験例4(印刷後不透明度)〕
前記試験例1と同じRI印刷適正試験機を使用し、墨色インクのインク量を変えて印刷を行った。印刷面の反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率(印刷面の反対面)に対する印刷後の裏面反射率を求めた。なお反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を使用した。
〔試験例5(印刷白抜け)〕
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、網点面積率30〜100%でオフセット輪転印刷用インク(墨)の単色印刷を行った。網点面積率100%ベタ部について、印刷面の白抜けの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:白抜けが殆ど認められない。
○:白抜けが少ししか認められない。
△:白抜けが認められる。
×:白抜けが著しい。
〔試験例6(ネッパリ性)〕
新聞用紙サンプル2枚を適当な大きさに切断して水に10秒間浸漬した後、2枚を素早く密着させ、線圧100kg/cmでカレンダーに通紙した。24時間室温乾燥した後、引張り試験機(型番:オートグラフAGS−500NG、(株)島津製作所製)を用いて2枚の剥離強度を測定した。なお、数値が大きい程ネッパリ性(粘着性)が高い。
〔試験例7(インク乾燥性)〕
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で、植物油含有量が45%の新聞印刷用インクにて藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。印刷面と白紙面とが重なるように印刷物500部を重ね合わせ、5kgf(約49N)の荷重で1日間放置した後、白紙面の汚れの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:汚れが殆ど認められない。
○:汚れが少ししか認められない。
△:汚れが認められる。
×:汚れが著しい。
〔試験例8(断紙回数)〕
オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行い、6万部の印刷の間に、断紙が発生する回数を測定した。
〔試験例9(裏抜け)〕
前記試験例8と同じオフセット輪転機を使用し、同じ印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、墨ベタ面を裏面から目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:裏抜けが殆ど認められない。
○:裏抜けが少ししか認められない。
△:裏抜けが認められる。
×:裏抜けが著しい。
以上の結果から、実施例1〜22の新聞用紙は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを90質量%以上も含む、脱墨フロスが原料の再生粒子を填料として、古紙パルプを50質量%以上も含む原料パルプに内添して抄造したものであるので、資源を循環使用して低コストで得られるだけでなく、適度の坪量、密度及び熱水抽出pH、白色度、剛度及び表面強度を有し、また、優れた不透明度と紙力とを兼備したものであることがわかる。しかもこれら実施例1〜22の新聞用紙は、ケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積及び断紙が全く又は殆どなく、さらに印刷後不透明度も高く、印刷白抜けや裏抜けも全く又は殆どないので、例えば高速オフセット輪転印刷に非常に適した特性を具備していることがわかる。
これに対して比較例1〜4の新聞用紙は、脱墨フロスではなく、製紙スラッジを原料とした再生粒子が填料として用いられており、しかも原料パルプとして古紙パルプの使用量が少ないものであるので、省資源化や低コスト化が図られず、しかもケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、断紙に加え、印刷後不透明度、印刷白抜けや裏抜けの殆どが悪い結果で、高速オフセット印刷に適した特性を具備していないことがわかる。
また比較例5〜7の市販の新聞用紙も、実施例1〜22と比較し、ケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、断紙に加え、印刷後不透明度、印刷白抜けや裏抜けの殆どが悪い結果で、本発明が高速、カラー、高精細オフセット輪転印刷により適した特性を具備していることがわかる。
本発明の新聞用紙は、例えばサテライト型やタワープレス型のオフセットカラー印刷機等における高速オフセットカラー印刷に特に好適な新聞用紙として使用することができる。
本発明は、新聞用紙に関するものである。さらに詳しくは、古紙から、新聞用紙の主要構成要素である原料パルプ、填料を回収して再生、再利用する資源循環型の再生粒子内添新聞用紙に関するものである。
近年の環境問題から、環境保護、資源保護、ゴミ減少を目的として、最近ではオフィスから発生する廃事務用紙をビル全体で回収しようとする動きも見られ、古紙パルプを使用した再生紙の利用が益々増加すると共に、紙への古紙配合率も増加している。
また、省資源、輸送費の削減、原材料費の削減の観点から、各用紙の軽量化が年々進んでいる。さらに、製紙工場では古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と、紙への古紙配合率の増加が進むとともに、紙の生産効率向上のため、紙製造工程の生産スピードが益々高速化している。このような状況下、新聞用紙においても需要は軽量化と古紙の高配合化の方向に進んでいる。例えば、新聞配達時の重量負担を増やすことなく1部当りのページ数を増やすために新聞用紙の軽量化が進み、環境問題に対応するために古紙配合率の増加が進み、また、オフセット輪転印刷機の高速化、紙面のカラー化などが進んでいる。
そのため、新聞用紙には高速オフセット輪転印刷に耐え得る引張り強さなどの強度に対する要求だけでなく、紙面のカラー化や高精細な見栄えのよい印刷仕上り、見開き全面広告などに対応できる、新聞用紙の表面強度やインク吸収性、印刷輪郭や画像が反対面から透けて見える現象、いわゆる裏抜けや隠蔽性の要求レベルが高くなっており、更なる新聞用紙の軽量化、古紙の高配化の妨げとなっている。
従来、新聞用紙の不透明度を向上させる為には、原料パルプに機械パルプが多用されてきたが、古紙パルプの高配合が望まれる近年にあっては、新聞用紙を前記機械パルプを主原料に構成することも困難である。また、再生紙の普及に伴って、近年は再生紙である古紙をさらに再利用することになり、すなわちパルプ繊維を繰り返し再利用している状況にあることから、得られる古紙パルプは微細繊維が多く、強度も低下している。この古紙を高配合することは、新聞用紙の強度、不透明度の低下を招き、印刷時の裏抜けや隠蔽性が問題となっている。
前記のごとき新聞用紙の隠蔽性を高め、裏抜けを少なくするためには、ホワイトカーボンや炭酸カルシウムなどの填料を使用して、紙の不透明度、吸油度を向上させることが一般的である。填料の添加方法には、バインダ等と共に填料を表面塗工する外添と、填料をパルプ原料と混合して抄紙する内添とがある。
填料の中でも微細な填料粒子は光の散乱係数と吸収係数とが良好であり不透明度向上効果が高いが、内添填料として利用する場合は歩留が低く、主に外添により塗工される。
しかし、填料を外添塗工する場合は一定以上の塗工層を形成する必要があるため、新聞用紙に要求される軽量化を達成することができない。また、新聞用紙のオフセット印刷機は高速で乾燥設備を持たないため、填料を外添塗工する場合は、インキの乾燥性、表面強度、版汚れなどにおいて、新聞用紙に要求される品質を満足することができないという問題が生じる。
そこで、例えば、パルプと炭酸カルシウムとを含む紙料にホワイトカーボンを添加して抄造し、水和ケイ酸の吸油量、細孔容積、平均粒子径等を特定範囲内に設定した填料内添紙(特許文献1参照)や、ホワイトカーボン及び炭酸カルシウムを主体とし、灰分中のこれらの割合を特定範囲内に設定した新聞用紙(特許文献2参照)が提案されている。
前記填料内添紙や新聞用紙は、特にホワイトカーボンが填料として多用されていることから、確かに従来と比較して不透明度及び吸油性が向上している。
しかしながら、ホワイトカーボンはそもそも高価であり、コスト上昇を招いてしまう。しかもホワイトカーボンを多用した場合には、その粒子特性から紙粉発生や印刷設備汚れの大きな原因となり易いといった問題があるため、その内添量については紙質強度の維持も鑑み、添加量を増やすことにも限界が生じている。
炭酸カルシウムを填料として使用した場合には、カオリンやタルクなどの酸性新聞用填料に比べてその硬度が高いために、製紙用ワイヤーの摩耗が速いことが一般的に言われており、同様に印刷時のオフセット輪転印刷用の版摩耗が懸念されている。したがって、軽量でオフセット輪転印刷に適した新聞用紙は開発されていなかった。
この炭酸カルシウムを新聞用紙に利用しようとした特許文献3には、機械パルプ及び又は脱墨古紙パルプと炭酸カルシウムを含み、クリヤーサイズ剤が塗布された中性新聞用紙が記載されている。しかし、炭酸カルシウムを使用した中性領域での抄紙は、抄紙設備、特にワイヤーが摩耗劣化し易いといった問題と、古紙パルプや木材繊維由来の樹脂成分の溶出によるピッチトラブルや抄紙設備の汚損原因が問題として発現するため、中性またはアルカリ性で抄造するに際し、硫酸アルミニウムを添加して上記パルプ中に含有されている樹脂成分を繊維に定着させた後に、填料として炭酸カルシウムを特定し、抄紙工程の可及的後段に於いて添加し、硫酸アルミニウムのカチオン性が低下しない間に樹脂成分を紙に抄き込むと云う煩雑な操業方法を取らざるを得ない旨が記載されている。
一方、製紙工場においては、近年の微細繊維の多い古紙パルプの高配合化と用紙の軽量化、抄紙機の高速化に伴うワイヤーパートでの急激なそして強制的な脱水により、微細繊維の歩留まりや灰分の歩留まりが極めて低い状況下になっており、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジが増加している。
すなわち、古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と古紙パルプの高配合化により、多くの古紙パルプが必要となり、古紙の使用量が増大している。この新聞古紙や雑誌古紙をはじめとした古紙には、非塗工紙に使用された填料や塗工紙に使用された填料・顔料に由来する無機物が多く含まれているため、古紙処理工程からは、パルプ繊維と分離され、填料・顔料の無機物が多量に含まれた脱墨フロスの発生量が増大している。
これら填料・顔料の無機物を多量に含む古紙処理工程から排出される脱墨フロス、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジは、従来は燃焼し減容化を図った上で、多くは埋立処分されてきた。
しかしながら、前記背景技術により、環境保護、資源保護、ゴミ減少に貢献できる再生紙の品質を維持、向上しながら継続的に製造するためには、製紙工場にとって、この製紙スラッジの再資源化、有効利用が重大な課題となっている。
前記製紙スラッジは、多量の無機物を含有するため、燃焼しても多量の燃焼灰(無機物)が残り、減容化の効果は低い。そこで、この燃焼灰をセメント原料や土壌改良材として活用する等の努力もなされているが、これらの方法において燃焼灰は助剤として使用されており、多量に使用されるわけではないため、結局、大部分の燃焼灰は埋立処分されることになる。
燃焼灰を有効に活用する方法として、紙の内添填料として使用することも考えられるが、燃焼灰は白色度が低いため、そのままの状態では紙の内添填料として使用するのに適していない。
そこで、燃焼灰(焼却灰)を再燃焼し、スラリー化及び湿式分散を行って白色度を向上させ、白色顔料とする方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、この焼却灰を再燃焼する方法の場合、未燃焼カーボンを完全に燃焼させるためには、再燃焼温度を500〜900℃に設定する必要があり、しかも焼却灰の白色度は50%程度にまでしか向上せず、紙の填料としての使用に適したものではないことが知見された。また、再燃焼温度を900℃超に設定すると、燃焼灰(無機物)が焼結、溶融し、極めて硬くなることも知見された。さらに、再燃焼灰を紙の填料として使用した場合、この再燃焼灰は非常に硬い性質を有することから、抄紙ワイヤーの摩耗進行が早く、寿命が非常に短くなるため、実操業に使用することができなかった。
このような抄紙ワイヤーの摩耗については、再燃焼灰を粉砕し、その粒子径を小さくして摩耗の低減、平滑性の向上を図ることも考えられるが、紙の内添填料として使用する場合には、抄紙時における歩留まりが低くなり、また、再燃焼灰自体が極めて硬いことから、粉砕のためのエネルギーコストが極めて高くなるといった問題がある。
また、製紙スラッジの利用方法として、紙繊維からの有機物を含む含水の製紙工場廃棄スラッジを、酸素含有ガスを注入した反応器内に供給し、250〜300℃、3000psig(プサイグ)程度の加温加圧下で0.25〜5時間酸化して、該廃棄スラッジ中の無機物を製紙用の顔料(無機填料)として再生する方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかしながら、前記方法は、製紙スラッジの湿式空気酸化処理によるものであることから、有機物除去が充分ではなく、また得られた顔料の白色度が低く、粒子径も不揃いで、製紙用の填料として使用するには不適切であり、しかも反応操作が複雑でコストが高いとう問題がある。
これらのほかにも、製紙スラッジをいぶし焼きしてPS炭とした後、さらにこれをキルンで焼却して製紙用原料となる白土を生成させる方法が提案されている(特許文献6参照)。
しかしながら、この方法では製紙スラッジをいぶし焼きするため、製紙スラッジからエネルギーを有効に取り出すことができないばかりか、逆に投入エネルギーが必要になるという大きなデメリットがある。さらに、生成した白土も粒子径が不揃いで大きく、製紙用填料としては使用することができないという問題がある。
さらに、排水に凝集剤を添加して造粒し、得られる成形汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥、炭化、焼成して製紙用填料を製造する方法も提案されている(特許文献7参照)。この方法において、焼成に先立って造粒、成形するのは、焼成を均一に行うためである。
ところが、例えば固形分濃度が40〜60%(換言すれば水分率が60〜40%)の成形汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥、炭化、焼成した場合、乾燥状態、炭化状態の如何にかかわらず、キルンの回転によって汚泥粒子の処理は強制的に進行する。したがって、乾燥が不充分であると粒子内部に未燃分が多く残留し、その結果、焼成が不完全となって白色度の低下が生じる。逆に過乾燥になると、焼成は完全であるが過焼成を招き、得られる再生粒子の硬度が高くなる。この再生粒子を使用すると、抄紙機でのワイヤー摩耗や紙を断裁する場合のカッター刃摩耗が生じ易くなるという問題を惹き起こす。
前記特許文献4〜7に記載の、製紙スラッジを原料として紙の填料を製造する従来の方法の最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジには、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。
前記各種スラッジのうち、例えば抄紙工程でワイヤーを通過して流出したスラッジには、紙力剤等が混入しており、また抄紙工程における抄造物の変更によってスラッジの品質に変動が生じる。
また、排水から回収したスラッジには、凝集剤が混入しており、さらに工場全体の抄造物、生産量の変動や生産設備の工程内洗浄などにより、スラッジの品質に大きな変動が生じる。
パルプ化工程での洗浄過程から生じるスラッジには、紙用填料、顔料に適さない物質が混入していたり、チップ水分やパルプ製造条件の変動により品質に変動が生じたりする。
したがって、種々の製紙スラッジを無選別に用いて製紙用の填料、顔料を得ようとすると、その品質は低いものとなり、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
このように、従来の製紙スラッジを利用した方法は、いずれも単なる製紙用粒子の回収に終始し、これらの方法で得られる製紙スラッジからの再生粒子は、製紙用の顔料、填料としては品質が適さず、品質安定性に欠けるものであった。
したがって、新聞用紙の主要構成要素である原料パルプは、古紙パルプの多用が進むものの、填料としては従来のホワイトカーボンや炭酸カルシウムを多用せざるを得ず、例えば製紙工程での不要物を有効利用するなどして、コストダウンと抄紙設備の摩耗問題の改善とを図りながら、しかも不透明度及び紙力を向上させ得る技術の開発が待ち望まれている。
特開平09−176985号公報
特開2002−201590号公報
特開平09−78491号公報
特開平11−310732号公報
特公昭56−27638号公報
特開昭54−14367号公報
特開2004−176208号公報
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、古紙から、古紙(紙)の主要構成要素であるパルプ繊維、填料・顔料を共に回収して使用する、資源循環型の再生粒子内添新聞用紙を提供することを課題とする。
より詳しくは、古紙(紙)の主要構成要素であるパルプ繊維と填料・顔料を共に回収し、資源を循環使用して低コストで製造され、さらに、中性又はアルカリ領域で抄紙することで、優れた紙力が維持されて断紙が少ないだけでなく、樹脂分や紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性にも優れ、不透明度に優れて裏抜けが少なく、高速オフセット輪転印刷における印刷に好適に使用し得る再生粒子内添新聞用紙を提供することを課題とする。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
原料として、パルプと填料とを主構成原料とする填料を内添した新聞用紙であって、
前記填料として古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、
前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経ることにより得られた、 下記組成とする再生粒子凝集体が内添用填料として少なくとも用いられ、
前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、
紙中にJIS P 8251に準拠して測定した紙灰分が4〜15質量%含有され、
JIS P 8143に準拠して測定したクラークこわさが30〜55cm3/100である、
ことを特徴とする再生粒子内添新聞用紙。
(組成)
前記再生粒子は、再生粒子の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子構成成分中の93質量%以上である再生粒子。
〔請求項2記載の発明〕
前記請求項1の再生粒子の表面がシリカで被覆され、下記組成とするシリカ被覆再生粒子凝集体であり、
前記シリカ被覆再生粒子凝集体が内添用填料として用いられた、
請求項1に記載の再生粒子内添新聞用紙。
(組成)
前記再生粒子凝集体は、再生粒子の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜62:29〜55:9〜35の質量割合で含有した再生粒子凝集体。
〔請求項3記載の発明〕
JIS P 8133に準拠した熱水抽出pHが、6.0〜9.5であり、
JIS P 8140に基づく10秒コブサイズ度が30〜300g/m2である、
請求項1または請求項2記載の再生粒子内添新聞用紙。
〔請求項4記載の発明〕
JIS P 3001に基づく吸油度が50〜150秒である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の再生粒子内添新聞用紙。
〔請求項5記載の発明〕
JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、91〜95%である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の再生粒子内添新聞用紙。
本発明の再生粒子内添新聞用紙は、産業廃棄物として焼却や埋立処分されていた脱墨フロスを製紙用填料資源として活用すると共に、古紙からなる古紙パルプを主たる原料パルプとして使用することで、資源を循環使用して低コストで製造され、抄造時の灰分歩留まりが高く、ワイヤー摩耗等の抄紙設備の摩耗劣化や樹脂成分の溶出による印刷設備汚れを殆ど起こすことなく、優れた紙力が維持されて断紙が少ないだけでなく、紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性にも優れ、不透明度に優れて裏抜けが少ない再生粒子内添新聞用紙として、高速オフセット輪転印刷、オフセット輪転カラー印刷・高精細印刷に好適に使用し得るものとなる。
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態の再生粒子内添新聞用紙は、前記したように、前記原料パルプと填料とを主構成原料とし、前記原料パルプが古紙パルプ50〜100質量%からなり、前記填料として、脱墨フロスを原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である。
なお、紙の主要構成要素であるパルプ繊維、填料が、いずれも回収、再生、再利用されたものであることから、本発明によって提供することができる紙を、従来の新聞用紙に対し、完全再生新聞用紙または100%再生新聞用紙と定義する。また、本明細書において、主構成要素とは、構成割合が50質量%以上であることを意味する。
まず、本実施形態に用いられる原料パルプについて説明する。係る原料パルプは、例えば新聞古紙、雑誌古紙、模造・色上古紙、OA古紙等の古紙を原料とする古紙パルプ50〜100質量%から構成される。このように本実施形態においては古紙パルプが50質量%以上も用いられるので、資源の有効利用に大きく寄与し、低コスト化を図ることができる。特に新聞用紙は古紙としての回収率が高く、再資源化の優等生といわれるものであり、その用途に本発明に基づく完全再生紙からなる新聞用紙を用いることで、新聞用紙の循環使用をより進めることが可能となる。
古紙パルプの種類には特に限定がなく、例えばディインキングパルプ(DIP)、ウェストパルプ(WP)などがあげられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。
原料パルプとして、前記古紙パルプ以外にも通常の紙に用いられるパルプを適宜使用することができる。古紙パルプ以外のほかの原料パルプとしては、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)などの機械パルプ;針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)などの化学パルプや、これらを漂白したパルプなどがあげられ、これらの中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
原料パルプ中の古紙パルプの割合は、前記したように、50〜100質量%であるが、より省資源化及び低コスト化が実現される点から、さらには60〜100質量%、特に70〜100質量%とすることができる。
次に本実施形態に用いられる填料について説明する。係る填料としては、脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを特定量含有する再生粒子が少なくとも用いられる。
少なくとも前記再生粒子を少なくとも填料として用い、前記のごとき古紙パルプを50〜100質量%も含んだ原料パルプに特定量内添することが本実施形態の大きな特徴の1つである。この再生粒子は、脱墨フロスを焼成して得られる循環使用が可能なものであるので、廃棄物としての埋立等の処分が不要であり、環境負荷の低減と、省資源化に大きく貢献するものである。また、原料が古紙処理工程で生じる脱墨フロスであるので、安価であり、新たな無機粒子の使用量を抑えることができ、製造コストが充分に削減されるという利点がある。さらに係る再生粒子を用いることで、抄造時の灰分歩留まりが高く、例えば炭酸カルシウムと異なり、ワイヤー摩耗等の抄紙設備の摩耗劣化を来たすことが無く、更に樹脂成分が微細な状態下で再生粒子に吸着することで、樹脂分の凝集によるピッチトラブルを防ぎ印刷設備汚れを殆ど起こすことがなく、低コストで高い操業性で紙を製造することができ、しかも従来と同等以上の優れた不透明度や紙力が紙に付与され、裏抜け、断紙も少なくなる。
本実施形態に用いられる再生粒子は、脱墨フロスを原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるものである。なおさらに、後述するように、脱墨フロスの凝集工程、造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を経てもよい。また再生粒子の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。
さらに本実施形態においては、原料パルプに内添する再生粒子として、前記のごとき工程を経て得られた粒子の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子を特に好適に用いることができる。
前記再生粒子の表面にさらにシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子とすることで、循環使用における古紙処理工程において、水酸化ナトリウムと反応させて緩衝剤や漂白助剤として製紙用原料、無機粒子の循環使用にも寄与させることができる。またかかるシリカ被覆再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、シリカで被覆していない再生粒子を用いた場合よりもさらに、紙の白色度、不透明度、表面強度、インク乾燥性、インク吸収ムラ、嵩高といった各効果を向上することができる。
なお、本実施形態に用いられる古紙処理工程にて生じる脱墨フロスは、近年の中性抄紙化に伴い、炭酸カルシウムの含有量が増加傾向にあり、得られる再生粒子中のカルシウムの割合も高くなる傾向がある。このようにカルシウムの割合が高い再生粒子を原料パルプに内添すると、紙の不透明度がやや低下する場合があるが、表面にシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子は、製紙用途の再生粒子としての機能が非常に高く、該シリカ被覆再生粒子を原料パルプに内添して得られる紙の不透明度は、著しく向上する。
再生粒子の表面を被覆するシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用することが可能である。具体的には、例えばコロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカなどがあげられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力の大きさ、付着性の高さ、高吸油性などの優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。これらのうち、コロイダルシリカは、ケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカである。シリカゲルは、ケイ酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸である。また無水シリカは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものである。
再生粒子の表面にシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子を得る方法には特に限定がないが、例えば以下の方法を好適に採用することができる。まず、再生粒子をケイ酸アルカリ溶液に添加、分散させ、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃程度に保持して酸を添加し、シリカゾルを生成させる。次いで最終反応液のpHを8〜11の範囲に調整することにより、再生粒子の表面にシリカを析出させることができる。このようにして再生粒子の表面に析出されるシリカは、ケイ酸アルカリ(例えばケイ酸ナトリウム:水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸の希釈液と高温下で反応し、加水分解反応とケイ酸の重合化により得られる、粒子径が10〜20nm程度のシリカゾル粒子である。
また、ケイ酸ナトリウム溶液等のケイ酸アルカリ溶液に希硫酸等の酸を添加することによって生成する、粒子径が数nm程度のシリカゾル微粒子を、再生粒子の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、このシリカゾル微粒子の結晶成長に伴う、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で生じる結合により、再生粒子の表面にシリカを析出させることもできる。この場合、ケイ酸アルカリ溶液に酸を添加する際のpHは、中性〜弱アルカリ性の範囲とし、好ましくはpHを8〜11の範囲に調整する。これは、pHが7未満の酸性条件になるまで酸を添加してしまうと、シリカゾル粒子ではなくホワイトカーボンが生成する恐れが生じるからである。
なお、前記ケイ酸アルカリ溶液の種類には特に限定がないが、入手が容易である点からケイ酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が特に望ましい。このケイ酸アルカリ溶液の濃度としては、再生粒子中のシリカ成分が低下し、再生粒子の表面にシリカが析出し難くならないようにするには、溶液中のケイ酸分(SiO2換算)が3質量%以上であることが好ましく、再生粒子の表面に析出されるシリカが、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子の多孔性が阻害され、不透明度やトナー定着性の向上効果が不充分になる恐れをなくすには、係るケイ酸分(SiO2換算)が10質量%以下であることが好ましい。
再生粒子の粒度を各工程で均一に揃えるためには、分級を行うことが好ましく、粗大粒子や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。なお造粒においては、通常の造粒設備を使用することができ、回転式、攪拌式、押出式等の設備が好適である。
製造設備において、再生粒子以外の異物を除去することが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック、金属等の異物を除去することが、除去効率の点で好ましい。特に鉄分は、酸化により再生粒子の白色度低下の起因物質を生成するため、鉄分の混入を避け、選択的に除去することが好ましい。したがって、各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止すると共に、さらに乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し、選択的に鉄分を除去することが好ましい。
なお本実施形態においては、前記乾燥工程や焼成工程、及び必要に応じて分級工程において、粉砕工程前にあらかじめ、粒子径が40μm以下の粒子が90質量%以上となるように処理しておくことが好ましい。これにより、通常行われている乾式粉砕による粗大粒子の粉砕及び湿式粉砕による微粒子化といった複数段の粉砕処理を行うことなく、湿式粉砕による一段粉砕処理も可能となる。またこれにより、コールターカウンター法による粒度分布の微分曲線における平均粒子径のピーク高さを30%以上とすることができる。さらには原料である脱墨フロス中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、あらかじめ、例えば後述する質量割合に調整することで、再生粒子の細孔容積を0.15〜0.60cc/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を30〜100nmとすることもできる。
かくして得られる再生粒子は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを含有している。再生粒子中のこれらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析を行い、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜82:9〜35:9〜35、さらには40〜82:9〜30:9〜30、特に60〜82:9〜20:9〜20の質量割合であることが好ましい。なお、特に再生粒子がシリカ被覆再生粒子である場合には、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜62:29〜55:9〜35であることが好ましい。また同時に、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの元素分析における酸化物換算の合計含有割合は、90質量%以上、好ましくは93質量%以上である。
このように、例えばカルシウムが酸化物換算で30質量割合以上含有された再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、特に得られる紙の白色度を向上させることができる。
再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合を、例えば酸化物換算で前記範囲内に調整するには、本来、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが好ましいが、乾燥工程や焼成工程、さらには必要に応じて分級工程において、由来が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法を採用することも可能である。
例えば、再生粒子中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを、ケイ素の調整には不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用された抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程の排水スラッジを適宜用いることができる。
またカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合を、酸化物換算で90質量%以上に調整するには、例えば排水スラッジの凝集処理に鉄分を含有しない凝集剤を使用する手段、製造設備工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入するのを防止したり、さらには乾燥・分級設備内に磁石等の高い磁性体を設置して鉄分を除去する手段等を採用することが可能である。特に鉄分は、酸化により白色度を低下させる起因物質になるため、選択的に除去することが好ましい。
ところで、炭酸カルシウムには、六方結晶系のカルサイト結晶(方解石)や、斜方結晶系のアラゴナイト結晶(あられ石)などの同質異像が存在する。天然に産する石灰石はその殆どがカルサイト結晶であり、貝殻類にはカルサイト結晶のほか、アラゴナイト結晶も存在する。さらに炭酸カルシウムには、天然ではないが、バテライト結晶も存在する。前記脱墨フロスから得られるカルシウムは多種多様であるが、焼成凝集化することでほぼ均一の炭酸カルシウム性状となる。したがって、係るカルシウムは再生粒子そのものの品質安定性に寄与し、該再生粒子は、カルシウム、ケイ素、アルミニウムといった異なる成分で構成される凝集体でありながら、安定した性状を示す。
また再生粒子にはケイ素が含まれるが、該ケイ素からなるシリカの一次粒子は微細であるので、光学的屈折率が高い。したがって、例えばケイ素が酸化物換算で9質量割合以上含有された再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、特に得られる紙の不透明度を向上させることができる。
さらに本実施形態に用いられる再生粒子は、微細な粒子が二次凝集した柔軟かつポーラスな性状を有するので、嵩高な紙層形成に寄与し、該再生粒子を填料として原料パルプに内添して得られる新聞用紙は、密度が低く、取りまわしが良好な剛度を有する。
本実施形態に用いられる再生粒子の粒子径は、例えば一次粒子が凝集した二次粒子として、原料パルプ中への歩留まりや再生粒子の白水中への流失防止という点から、そのメタノール分散溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(TA−II型、COULTER ELECTRONICS社製)にて測定して、平均粒子径が0.05μm以上、さらには0.1μm以上であることが好ましく、また印刷適正の維持と剣先詰まりの防止という点から、平均粒子径が16μm以下、さらには15μm以下であることが好ましい。
前記再生粒子の含有量があまりにも少ない場合には、例えば抄紙機でのカレンダー処理において、平滑化の効果が発現されにくくなり、紙の不透明性が低下して印刷後の不透明度が低下したり、新聞用紙の剛直度が高くなり、輪転機上での走行性が低下したりする恐れがあるので、原料パルプに対して2質量%以上、さらには5質量%以上であることが好ましい。逆に再生粒子の含有量があまりにも多い場合には、表面性や剛度の点では望ましいものの、印刷機内での搬送に伴って灰分が脱落し易くなり、表面強度の低下や、剥け・ケバ立ち、印刷白抜け、紙粉が発生する恐れがあるので、原料パルプに対して20質量%以下、さらには15質量%以下であることが好ましい。
本実施形態において、填料として前記再生粒子を単独で用いることもできるが、このほかに、内添用填料として通常使用される、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、デラミネーテッドクレー等のクレー、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれた少なくとも1種の填料を併用することもできる。
なお再生粒子を含む填料の添加率があまりにも少ない場合には、填料を用いる効果が充分に発現されず、逆にあまりにも多い場合には、紙力が低下する恐れがあるので、該填料は、紙中に紙灰分として4〜15質量%、さらには5〜10質量%含まれることが好ましい。
また原料パルプ及び填料から得られた紙料スラリーに添加する添加剤としては、通常の紙に配合されるものを用いることができ、例えば澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等の紙力増強剤;ロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等の内添サイズ剤;ポリアクリルアミドやその共重合体、ケイ酸ナトリウム等の歩留まり向上剤などがあげられる。
さらに本実施形態においては、原料パルプから紙料スラリーを調製して抄紙した後、表面に例えば澱粉、変性澱粉、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリルアミド等の高分子材料を成分とする表面処理剤を塗布したり、紙料スラリーに染料、顔料等の色料を添加したりしてもよい。
前記変性澱粉としては、特に限定されるものではなく、通常の澱粉原料が用いられ、例えばトウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米等に酸化処理、酵素処理等が施された澱粉があげられる。この変性澱粉を用いる場合、表面処理剤中の量は、所望の効果を得るためには、全固形分中40質量%以上となるように調整することが好ましい。
表面処理剤には、適宜他の接着剤、例えばスチレン−ブタジエン共重合体等のラテックス類、ポリビニルアルコールやポリアクリルアミド、さらにはカオリンや炭酸カルシウム等の顔料、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等の各種助剤を添加することもできる。また表面処理剤の固形分濃度は特に限定されるものではなく、塗布装置や塗布量に応じて、例えば2〜25質量%程度に調整することが好ましい。
なお、表面処理剤をあまりにも多量に使用すると、コスト高となるだけでなく、紙表面が湿った状態でネッパリ性と呼ばれる紙表面の粘着性が発現される傾向がある。このネッパリ性が大きくなると、特に非画線部におけるブランケットパイリングを逆に増大させたり、また印刷時に紙面がブランケットに貼り付き、結果的にシワや断紙といった走行性トラブルを誘発したりする恐れがあるので、好ましくない。また、表面処理剤の使用量が増加すると、目的とする紙の透明性が上昇、すなわち不透明度が低下したり、インクの乾燥性が悪化したりする場合もある。これらの表面処理剤のうち、澱粉やポリアクリルアミドは比較的ネッパリ性が低いので広く使用されているが、いずれも水への溶解性が高いため、印刷時に湿し水中に容易に溶出して填料と共にブランケットに堆積し、ブランケットパイリングが発生し易い。また溶出した表面処理剤がブランケットを介して刷版に転移、蓄積することで刷版の非画線部が感脂化し、非画線部のインク汚れ、すなわち地汚れと呼ばれる紙面の汚れを誘発し易くなることから、多量に用いることは好ましくない。
前記表面処理剤は、製紙分野で一般に使用されている塗布装置、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いて塗布すればよい。
表面処理剤の塗布量は、紙の表面強度を充分に向上させるには、乾燥重量で0.4g/m2以上となるように調整することが好ましく、またコスト高となったり、不透明度やインク乾燥性の低下を招いたりしないようにするには、乾燥重質量で3.0g/m2以下となるように、より好ましくは、0.7〜2.5g/m2以下に調整することが好ましい。
かくして紙料スラリー及び必要に応じて添加剤から調製された紙料は、公知の抄紙機によって抄造することができ、さらに必要に応じてカレンダー装置に通紙し、加圧、平滑化処理を施して新聞用紙に仕上げることができる。該カレンダー装置としては、通常の金属ロールと金属ロールとの組み合わせによるマシンカレンダーよりも、金属ロールと樹脂ロールとの組み合わせによるソフトカレンダーを使用するほうが、紙層を強く加圧せずに平滑化することができ、さらに紙層強度の低下を充分に抑制することができるのでより好ましい。
ソフトカレンダーの使用においては、新聞用紙の粗面側に当たる裏面側がソフトカレンダーの金属ロール面に先に接触するように通紙することで、より平坦性及び嵩高性の向上をより図ることができ、1500m/分以上の高速抄紙において高い平坦性と表裏差の少ない新聞用紙を得ることができる。
さらに好ましくは、表裏面に設ける表面処理剤の塗布量を表面側より裏面側を多くすることにより、より良好な平坦性と嵩高性とが得られ、腰のある新聞用紙を得ることができる。
なお前記抄造の際の新聞用紙のpHは、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)を添加し、アルミニウムを介して樹脂成分を繊維に定着させるか、あるいは樹脂成分の凝集体を形成させることにより、樹脂成分を紙支持体に取り込むことによって製造工程での樹脂成分の付着を防ぐため、アルミニウムイオン種のカチオン性が最も活性なpH4〜6未満の範囲内で新聞用紙を抄造するのが一般的であるが、本発明にて使用する古紙パルプは、古紙から脱インクして製造されるためpHが6以上と高く、高pH化による安定性やpH調整という点、補助的な使用が考えられる炭酸カルシウムの使用に際しては、該炭酸カルシウムが溶解して歩留まりが低下したり、抄紙工程の汚れの原因になったりする恐れをなくすほか、理由は不明確ながらpH6未満で抄紙するよりも、6以上で抄紙することによって紙力の向上が図られる事由から、6〜9.5程度となるように調整することが好ましい。
また再生粒子の添加は、従来のいずれの段階でも行うことが可能であるが、原料配合チェストからインレットの間で行うことが好ましい。この間に添加することにより、再生粒子が分散し易くなり、パルプ繊維への定着性が向上し、その結果、填料の歩留まりが向上する。また再生粒子がパルプ繊維間の結合を阻害しないので、紙の剛度が低下することもない。再生粒子をより均一に分散させ、パルプ繊維への定着性を向上させるためには、できる限りインレットの近傍工程で該再生粒子を添加することが特に好ましい。
かくして得られる新聞用紙は、JIS P 8251に準拠した灰分が4〜15%で、JIS P 8133に記載の「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に準拠して測定した熱水抽出pHが、6.0以上、さらには6.1以上であることが好ましく、また9.5以下、さらには8.5以下であることが好ましい。熱水抽出pHがこのような範囲の場合には、補助的な使用が考えられる炭酸カルシウムや、僅かとは考えられるが、再生粒子中に内在する炭酸カルシウムの溶出が防止されて再生粒子の形状が安定し、また水酸化カルシウムの生成が防止され、抄紙工程系内の汚れやスケールの発生を抑制し、紙の劣化抑制や資源循環を図ることができる。また、紙のインク乾燥性を向上させ、インク吸収ムラを少なくしたり、劣化を充分に抑制し、保存性や助剤の定着性をさらに向上させることもできる。
さらに本実施形態に係る紙の坪量は、軽量化、例えば高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明度の確保という点から、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定して、37g/m2以上、さらには40g/m2以上であることが好ましく、またその軽量化の点から、係る坪量は48g/m2以下、さらには46g/m2以下であることが好ましい。37g/m2未満では、例えば高速オフセット輪転印刷機における強度確保が困難であり、48g/m2を超えると、近年の軽量化、省資源に逆行することとなる。
紙の白色度は、その用途に応じて異なるが、新聞用紙においては購読者の眼精疲労をきたさないように、JIS P 8123に記載の「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」に準拠して測定して、少なくとも50%以上が好ましく、白色度は52〜56%、さらには53〜55%であることが好ましい。
新聞用紙の白紙不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から不透明度は高いものが求められるが、JIS P 8138に記載の「紙の不透明度試験方法」に準拠して測定して、91〜95%、さらには92〜94%であることが好ましい。
また新聞用紙の密度は、近年の軽量化や軽量化に伴う強度維持の点から、JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定して、0.55〜0.60g/cm3、さらには0.56〜0.59g/cm3であることが好ましい。
また紙のMD方向の剛度は、例えば高速輪転印刷に適した腰を付与するという点から、JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して測定して、30〜55cm3/100、さらには32〜50cm3/100であることが好ましい。
新聞用紙において用いられるオフセト輪転印刷は、刷版に湿し水と印刷インキとを供給し、次いでブランケットと呼ばれるゴム版にインキを転移させた後、紙に転移させて印刷を行う方法であり、従来の凸版印刷方式に比べて、比較的粘度の高いインキを使用するため、インキの紙層内部への浸透が少なく、インキの着肉性が良好となると共に、印刷後のインキ裏抜けの少ない(不透明度の大きい)利点を有している。
さらに近年では、新聞用紙のカラー化や軽量化に伴い、良好なインキの着肉性や印刷後の高い不透明性が一層求められている。このうち、インキ着肉性を高める手段としては、先に述べたソフトカレンダー等による平坦化処理により新聞用紙を平滑化することが広く行われている。しかし、カレンダー処理のニップ圧力を高くしたり、ニップ数を増やすことで平滑化すれば、インキ着肉性は高まるが、紙の嵩高さが損なわれるために、印刷後の不透明度が低下や、剛度が低くなるため、印刷時の皺発生など走行性不良トラブルの原因となる恐れがある。
一方で、カレンダー処理を軽減すれば嵩高な紙を得ることはできるが、紙面の着肉性の表裏差が増大し、特に平滑度が低い側の紙面で着肉性が悪くなるため、表と裏とで画像の濃度が著しく異なるという問題が発生する。これは、抄紙工程中、ワイヤーパート、プレスパートでの脱水条件が表面と裏面とで微妙に異なるため、用紙の平滑性に表裏差ができたり、厚さ方向での填料、微細繊維の分布状態が異なったりするために、インキの転移性に表裏差がでるためと考えられている。
本発明者らは、本発明に基づく古紙パルプ50〜100質量%からなり、少なくとも前記填料として、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である新聞用紙における湿し水と印刷インキの転写において、該新聞用紙のJIS P 8140に基づく10秒コブサイズ度が30〜300g/m2であり、かつJIS P 3001に基づく吸油度が50〜150秒である関係を有することが好ましいことを知見している。いわゆる親水性と親油性の関係を所定の範囲内に抑えることで、平坦化処理と相俟ってよりオフセット輪転印刷適正を向上させることが可能となる。
さらに紙の表面強度は、やはり高速輪転印刷における紙質強度を考慮すると、後述するRIテスター((株)明製作所製)による測定において最低限度グレード3以上であることが好ましい。
このように、本実施形態に係る新聞用紙は、古紙パルプを50質量%以上も含有した原料パルプに、古紙処理工程にて生じる脱墨フロスを主原料とし、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを合計90質量%以上も含有した再生粒子を填料として内添して抄造したものである。したがって、本実施形態に係る新聞用紙は、抄造時の灰分歩留まりが高く、ワイヤー摩耗等の抄紙設備の摩耗劣化や印刷設備汚れを殆ど起こすことなく、資源を循環使用して低コストで製造され、優れた紙力が維持されて断紙がないだけでなく、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり、色ズレ等もなく、不透明度に優れて裏抜けが少ない。しかも本実施形態に係る新聞用紙は、印刷時、特にカラー印刷時の各種特性にも優れ、例えば12〜17万部/時程度といった高速オフセット輪転カラー印刷等に好適に使用することができる。
次に本発明の新聞用紙を、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
〔再生粒子の製造(製造例(実施例)1〜19及び比較例1〜4)〕
原料として、表1に示すように、脱墨フロス(古紙パルプを製造する古紙処理工程より得られた脱墨フロス、製造例1〜19)又は製紙スラッジ(主に製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ、比較(製造)例1〜4)を用い、表1に示す条件の脱水工程、乾燥工程及び焼成工程を経た後、湿式粉砕処理を施して再生粒子を得た。
さらに製造例15〜17においては、再生粒子をケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)に添加、分散させてスラリーを調製した後、加熱攪拌しながら、液温を約85℃に保持して希硫酸を添加し、シリカゾルを生成させた。次いで反応液のpHを8〜11に調整し、再生粒子の表面にシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子を得た。
得られた再生粒子及びシリカ被覆再生粒子について、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量をそれぞれ酸化物換算で求め、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合を算出した。その結果を表2に示す。また平均粒子径も併せて表2に示す。さらにワイヤー摩耗度、生産性、品質安定性及び外観についても調べた。これらの結果も併せて表2に示す。
なお、表1及び2に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(ア)乾燥工程後(焼成工程入口)の乾燥物の平均粒子径
X線マイクロアナライザー(型番:EMAX2770、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)を加速電圧15kVで用い、白黒ポラロイドフィルム(ポラロイド社製、8.5cm×10.8cm)にて、X線マイクロアナライザーディスプレーのX線像を20枚撮影して実測した。
(イ)乾燥工程後(焼成工程入口)の粒子径355〜2000μmの粒子の割合
4.7メッシュの篩にて、粒子径が2000μmを超える乾燥物粒子の質量割合を、42メッシュの篩にて、粒子径が355μm未満の乾燥物粒子の質量割合を、それぞれ測定し、質量割合を算出した。
(ウ)再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)
X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析を行った。
(エ)再生粒子の平均粒子径
再生粒子サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。この溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(TA−II型、COULTER ELECTRONICS社製)にて、50μmのアパチャーを用いて測定した。ただし、50μmのアパチャーで測定不可能なものについては、200μmのアパチャーを使用した。また電解液として、ISOTON II(商品名、COULTER ELECTRONICS社製、0.7%の高純度NaCl水溶液)を用いた。
(オ)ワイヤー摩耗度
摩耗度試験装置(日本フィルコン(株)製)を用い、スラリー濃度2質量%にて3時間、プラスチックワイヤー摩耗度を測定した。
(カ)生産性
原料の脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力を各々4段階評価し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれも高い評価でバランスが最もよかった。
○:平均してよい評価であった。
△:脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力のいずれかに問題があった。
×:実操業が困難であった。
(キ)品質安定性
白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:上位10位まで
○:11〜22位
△:23〜25位
×:26位以下
(ク)外観
目視にて再生粒子の色を観察し、白色と灰色とに区分した。
表2中のCaO、SiO2、Al2O3は、粒子構成成分中の酸化物換算における3成分の含有比率を、表2中の「合計含有割合」は、粒子中の3成分の合計含有割合を示す。
表2に示された結果から、製造例1〜19の再生粒子は、いずれもワイヤー摩耗度が低く、生産性及び品質安定性にも優れたものであることがわかる。これに対して比較例1〜4の再生粒子は、いずれもワイヤー摩耗度が高く、生産性及び品質安定性にも劣るものであることがわかる。
〔新聞用紙の作製(製造例1〜19及び比較例1〜7)〕
表3に示す割合でディンキングパルプ(DIP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)及び針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を配合し、レファイナーでフリーネスを120mL C.S.F(JIS P 8121に準拠)に調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに対し、絶乾パルプ100質量部あたりカチオン化澱粉を0.5質量部添加し、さらに、填料として前述した製造例1〜19及び比較製造例1〜4で得られた再生粒子を表3に示す割合で添加し、硫酸バンドでpHを調整後、ツインワイヤー抄紙機で表4に示す坪量の新聞用紙を抄造した。また表面サイズ剤として酸化澱粉を両面で1g/m2塗布した。
得られた新聞用紙について、各種物性を調べた。これらの結果を表4に示す。また、市販の新聞用紙を試験紙A〜Cとして準備し、実施例1〜19及び比較例1〜4の新聞用紙と同様に各種物性を調べた。その結果を、比較例5〜7として併せて表4に示す。
なお、表3及び4に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(a)原料パルプ中の各パルプの割合
JIS P 8120に記載の「繊維組成試験方法」に準拠して測定した。
(b)坪量
JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
(c)密度
JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
(d)熱水抽出pH
JIS P 8133に記載の「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に準拠して測定した。
(e)灰分
JIS P 8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法」に準拠して測定した。
(f)コッブ吸水度(サイズ度)
JIS P 8140に記載の「紙及び板紙―吸水度試験方法−コッブ法」に準拠し、測定時間10秒にて測定した。
(g)吸油度
JIS P 3001−1976に記載の、「吸油度試験方法」に準拠し、軽油1号にて測定した。
(h)白色度
JIS P 8123に記載の「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」に準拠して測定した。
(i)白紙不透明度
JIS P 8138に記載の「紙の不透明度試験方法」に準拠して測定した。
(j)剛度(MD方向)
JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して測定した。
(k)表面強度
紙試料を、実験室の金属ロールからなるカレンダーに、線圧40kg/cmで2回通した後、この紙試料の表面に、RIテスター((株)明製作所製)で、インキタック6(東洋インキ製造(株)製)を用いて印刷した。10cm2あたりの繊維が剥がれた状態を目視にて観察し、以下の評価基準(グレード)に基づいて評価した。
(評価基準)
1:繊維の剥がれかなりあり
2:繊維の剥がれあり
3:繊維の剥がれややあり
4:繊維の剥がれ僅かあり
5:繊維の剥がれ殆どなし
なお実用上は、最低限度グレード3である。
次に、実施例1〜19及び比較例1〜7の新聞用紙について、以下の試験例1〜9に基づいて各特性を調べた。その結果を表5に示す。
〔試験例1(ケバ立ち)〕
RI印刷適正試験機((株)明製作所製)にて、試験インクを付与しないゴムロールのままで新聞用紙表面を繰り返し5回印刷した。ルーペを用い、100mm×100mmの範囲で紙ウェブ表面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ケバ立ちが非常に少ない。
○:ケバ立ちが少ない。
△:ケバ立ちがやや多い。
×:ケバ立ちが非常に多い。
〔試験例2(インク吸収ムラ)〕
オフセットカラー印刷機(型番:SYSTEM C−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、16万部/時の印刷速度で、藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。藍/赤の重色部分のインク濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インク濃度ムラが全く認められず、均一で鮮明な画像である。
○:インク濃度ムラが殆ど認められず、均一な画像である。
△:インク濃度ムラが認められ、やや不均一な画像である。
×:インク濃度ムラが明らかであり、不均一な画像である。
〔試験例3(ブランケットへの紙粉堆積)〕
(1)前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。10000部の印刷を行った後、ブランケット非画線部への紙粉の堆積度合いを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、実用上問題がない。
△:紙粉の発生が明確に認められる。
×:ブランケット上に紙粉が多く堆積し、ブランケットが白くなっている。
(2)オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、ブランケット上に堆積している紙粉をかき取り、その質量を測定して100cm2あたりの質量で表した。なお湿し水の膜厚は0.9μmとした。
〔試験例4(印刷後不透明度)〕
前記試験例1と同じRI印刷適正試験機を使用し、墨色インクのインク量を変えて印刷を行った。印刷面の反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率(印刷面の反対面)に対する印刷後の裏面反射率を求めた。なお反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を使用した。
〔試験例5(印刷白抜け)〕
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、網点面積率30〜100%でオフセット輪転印刷用インク(墨)の単色印刷を行った。網点面積率100%ベタ部について、印刷面の白抜けの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:白抜けが殆ど認められない。
○:白抜けが少ししか認められない。
△:白抜けが認められる。
×:白抜けが著しい。
〔試験例6(ネッパリ性)〕
新聞用紙サンプル2枚を適当な大きさに切断して水に10秒間浸漬した後、2枚を素早く密着させ、線圧100kg/cmでカレンダーに通紙した。24時間室温乾燥した後、引張り試験機(型番:オートグラフAGS−500NG、(株)島津製作所製)を用いて2枚の剥離強度を測定した。なお、数値が大きい程ネッパリ性(粘着性)が高い。
〔試験例7(インク乾燥性)〕
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で、植物油含有量が45%の新聞印刷用インクにて藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。印刷面と白紙面とが重なるように印刷物500部を重ね合わせ、5kgf(約49N)の荷重で1日間放置した後、白紙面の汚れの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:汚れが殆ど認められない。
○:汚れが少ししか認められない。
△:汚れが認められる。
×:汚れが著しい。
〔試験例8(断紙回数)〕
オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行い、6万部の印刷の間に、断紙が発生する回数を測定した。
〔試験例9(裏抜け)〕
前記試験例8と同じオフセット輪転機を使用し、同じ印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、墨ベタ面を裏面から目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:裏抜けが殆ど認められない。
○:裏抜けが少ししか認められない。
△:裏抜けが認められる。
×:裏抜けが著しい。
以上の結果から、実施例1〜20の新聞用紙は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを90質量%以上も含む、脱墨フロスが原料の再生粒子を填料として、古紙パルプを50質量%以上も含む原料パルプに内添して抄造したものであるので、資源を循環使用して低コストで得られるだけでなく、適度の坪量、密度及び熱水抽出pH、白色度、剛度及び表面強度を有し、また、優れた不透明度と紙力とを兼備したものであることがわかる。しかもこれら実施例1〜19の新聞用紙は、ケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積及び断紙が全く又は殆どなく、さらに印刷後不透明度も高く、印刷白抜けや裏抜けも全く又は殆どないので、例えば高速オフセット輪転印刷に非常に適した特性を具備していることがわかる。
これに対して比較例1〜4の新聞用紙は、脱墨フロスではなく、製紙スラッジを原料とした再生粒子が填料として用いられており、しかも原料パルプとして古紙パルプの使用量が少ないものであるので、省資源化や低コスト化が図られず、しかもケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、断紙に加え、印刷後不透明度、印刷白抜けや裏抜けの殆どが悪い結果で、高速オフセット印刷に適した特性を具備していないことがわかる。
また比較例5〜7の市販の新聞用紙も、実施例1〜20と比較し、ケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、断紙に加え、印刷後不透明度、印刷白抜けや裏抜けの殆どが悪い結果で、本発明が高速、カラー、高精細オフセット輪転印刷により適した特性を具備していることがわかる。
本発明の新聞用紙は、例えばサテライト型やタワープレス型のオフセットカラー印刷機等における高速オフセットカラー印刷に特に好適な新聞用紙として使用することができる。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
パルプに填料を内添した新聞用紙であって、
前記填料として古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、
前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経ることにより得られ、粉砕工程後に粒子を凝集させる工程を付加することなく下記組成となるように調整した再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、
前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、
紙中にJIS P 8251に準拠して測定した紙灰分が4〜15質量%含有され、
JIS P 8143に準拠して測定したクラークこわさが30〜55cm3/100であり、
JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、91〜95%である、
ことを特徴とする再生粒子内添新聞用紙。
(組成)
前記再生粒子凝集体は、再生粒子凝集体の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の93質量%以上である再生粒子凝集体。
〔請求項2記載の発明〕
JIS P 8140に基づく10秒コブサイズ度が30〜300g/m 2 である、
請求項1記載の再生粒子内添新聞用紙。
〔請求項3記載の発明〕
JIS P 3001に基づく吸油度が50〜150秒である、
請求項1または2記載の再生粒子内添新聞用紙。