JP4020946B1 - 新聞用紙及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】古紙からパルプ繊維、填料・顔料を共に回収して使用した資源循環型の新聞用紙を提供する。
【解決手段】前記填料として古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、前記主原料を脱水、乾燥、焼成及び粉砕工程を経ることにより得られ、粉砕工程後に粒子を凝集させる工程を付加することなく特定組成となるように調整した再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、85%〜91%未満であり、用紙表面には、澱粉を主成分とする表面処理剤が設けられている再生粒子内添新聞用紙である。
【選択図】なし

Description

本発明は、新聞用紙に関するものである。さらに詳しくは、古紙から、新聞用紙の主要構成要素である原料パルプ、填料を回収して再生、再利用する資源循環型の新聞用紙に関するものである。
近年の環境問題から、環境保護、資源保護、ゴミ減少を目的として、最近ではオフィスから発生する廃事務用紙をビル全体で回収しようとする動きも見られ、古紙パルプを使用した再生紙の利用が益々増加すると共に、紙への古紙配合率も増加している。
また、省資源、輸送費の削減、原材料費の削減の観点から、各用紙の軽量化が年々進んでいる。さらに、製紙工場では古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と、紙への古紙配合率の増加が進むとともに、紙の生産効率向上のため、紙製造工程の生産スピードが益々高速化している。このような状況下、新聞用紙においても需要は軽量化と古紙の高配合化の方向に進んでいる。例えば、新聞配達時の重量負担を増やすことなく新聞1部当りのページ数を増やすために新聞用紙の軽量化が進み、環境問題に対応するために古紙配合率の増加が進み、また、オフセット輪転印刷機の高速化、紙面のカラー化などが進んでいる。
そのため、新聞用紙には高速オフセット輪転印刷に耐え得る引張り強さなどの強度に対する要求だけでなく、紙面のカラー化や高精細な見栄えのよい印刷仕上り、見開き全面公告などに対応できる、新聞用紙の表面強度やインク吸収性、印刷輪郭や画像が反対面から透けて見える現象、いわゆる裏抜けや隠蔽性の要求レベルが高くなっており、更なる新聞用紙の軽量化、古紙の高配合化の妨げとなっている。
従来、新聞用紙の不透明度を向上させる為には、原料パルプに機械パルプが多用されてきたが、古紙パルプの高配合が望まれる近年にあっては、新聞用紙を前記機械パルプを主原料に構成することも困難である。また、再生紙の普及に伴って、近年は再生紙である古紙をさらに再利用することになり、すなわちパルプ繊維を繰り返し再利用している状況にあることから、得られる古紙パルプは微細繊維が多く、強度も低下している。この古紙を高配合することは、新聞用紙の強度、不透明度の低下を招き、印刷時の裏抜けや隠蔽性を低下させるとともに、印面のカスレや網点の欠落等、見栄えが低下する問題が発現している。
前記のごとき新聞用紙の隠蔽性を高め、裏抜けを少なくするためには、ホワイトカーボンや炭酸カルシウムなどの填料を使用して、紙の不透明度、吸油度を向上させることが一般的である。填料の添加方法には、バインダ等と共に填料を表面塗工する外添と、填料をパルプ原料と混合して抄紙する内添とがある。
填料の中でも微細な填料粒子は光の散乱係数と吸収係数とが良好であり不透明度向上効果が高いが、内添填料として利用する場合は歩留が低く、主に外添により塗工される。
しかし、填料を外添塗工する場合は一定以上の塗工層を形成する必要があるため、新聞用紙に要求される軽量化を達成することができない。また、新聞用紙のオフセット輪転印刷機は高速で乾燥設備を持たないため、填料を外添塗工する場合は、インキの乾燥性、表面強度、版汚れなどにおいて、新聞用紙に要求される品質を満足することができないという問題が生じる。
そこで、例えば、パルプと炭酸カルシウムとを含む紙料に特定の吸油量、細孔容積、平均粒子径等に水和珪酸を内添した填料内添紙(特許文献1参照)や、ホワイトカーボン及び炭酸カルシウムを主体とし、灰分中のこれらの割合を特定範囲内に設定した新聞用紙(特許文献2参照)が提案されている。
前記填料内添紙や新聞用紙は、特にホワイトカーボンが填料として多用されていることから、確かに従来と比較して不透明度及び吸油性が向上している。
しかしながら、ホワイトカーボンを多用した場合には、その粒子特性から紙粉発生や印刷設備汚れの大きな原因となり易いといった問題があるため、その添加量については紙質強度の維持も鑑み、添加量を増やすことにも限界が生じている。
炭酸カルシウムを填料として使用した場合には、カオリンやタルクなどの主として酸性抄紙に用いる新聞用填料に比べてその硬度が高いために、製紙用ワイヤーの摩耗が速いことが一般的に言われており、同様に印刷時のオフセト輪転印刷用の版摩耗が懸念されている。したがって、軽量でオフセット輪転印刷に適した新聞用紙は開発されていなかった。
この炭酸カルシウムを新聞用紙に利用しようとした特許文献3には、機械パルプ及び又は脱墨古紙パルプと炭酸カルシウムを含み、クリヤーサイズ剤が塗布された中性新聞用紙が記載されている。しかし、炭酸カルシウムを使用した中性領域での抄紙は、抄紙設備、特にワイヤーが摩耗劣化し易いといった問題と、古紙パルプや木材繊維由来の樹脂成分の溶出によるピッチトラブルや抄紙設備の汚損原因が問題として発現するため、中性またはアルカリ性で抄造するに際し、硫酸アルミニウムを添加して上記パルプ中に含有されている樹脂成分を繊維に定着させた後に、填料として炭酸カルシウムを特定し、抄紙工程の可及的後段に於いて添加し、硫酸アルミニウムのカチオン性が低下しない間に樹脂成分を紙に抄き込むと云う煩雑な操業方法を取らざるを得ない旨が記載されている。
一方、製紙工場においては、近年の微細繊維の多い古紙パルプの高配合化と用紙の軽量化、抄紙機の高速化に伴うワイヤーパートでの急激なそして強制的な脱水により、微細繊維の歩留まりや灰分の歩留まりが極めて低い状況下になっており、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジが増加している。
すなわち、古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と古紙パルプの高配合化により、多くの古紙パルプが必要となり、古紙の使用量が増大している。この新聞古紙や雑誌古紙をはじめとした古紙には、非塗工紙に使用された填料や塗工紙に使用された填料・顔料に由来する無機物が多く含まれているため、古紙処理工程からは、パルプ繊維と分離され、填料・顔料の無機物を多く含有した脱墨フロスが多量に発生している。
これら填料・顔料の無機物を多量に含む古紙処理工程から排出される脱墨フロス、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジは、従来は燃焼し減容化を図った上で、多くは埋立処分されてきた。
しかしながら、前記背景技術により、環境保護、資源保護、ゴミ減少に貢献できる再生紙の品質を維持、向上しながら継続的に製造するためには、製紙工場にとって、この製紙スラッジの再資源化、有効利用が重大な課題となっている。
前記製紙スラッジは、多量の無機物を含有するため、燃焼しても多量の燃焼灰(無機物)が残り、減容化の効果は低い。そこで、この燃焼灰をセメント原料や土壌改良材として活用する等の努力もなされているが、これらの方法において燃焼灰は助剤として使用されており、多量に使用されるわけではないため、結局、大部分の燃焼灰は埋立処分されることになる。
燃焼灰を有効に活用する方法として、紙の内添填料として使用することも考えられるが、燃焼灰は白色度が低いため、そのままの状態では紙の内添填料として使用するのに適していない。
そこで、燃焼灰(焼却灰)を再燃焼し、スラリー化及び湿式分散を行って白色度を向上させ、白色顔料とする方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、この焼却灰を再燃焼する方法の場合、未燃焼カーボンを完全に燃焼させるためには、再燃焼温度を500〜900℃に設定する必要があり、しかも焼却灰の白色度は50%程度にまでしか向上せず、紙の填料としての使用に適したものではないことが知見された。また、再燃焼温度を900℃超に設定すると、燃焼灰(無機物)が焼結、溶融し、極めて硬くなることも知見された。さらに、再燃焼灰を紙の填料として使用した場合、この再燃焼灰は非常に硬い性質を有することから、抄紙ワイヤーの摩耗進行が早く、抄紙ワイヤーの寿命が非常に短くなるため、実操業に使用することができなかった。
このような抄紙ワイヤーの摩耗については、再燃焼灰を粉砕し、その粒子径を小さくして摩耗の低減、平滑性の向上を図ることも考えられるが、紙の内添填料として使用する場合には、抄紙時における歩留まりが低くなり、また、再燃焼灰自体が極めて硬いことから、粉砕のためのエネルギーコストが極めて高くなるといった問題がある。
また、製紙スラッジの利用方法として、紙繊維からの有機物を含む含水の製紙工場廃棄スラッジを、酸素含有ガスを注入した反応器内に供給し、250〜300℃、3000psig(プサイグ)程度の加温加圧下で0.25〜5時間酸化して、該廃棄スラッジ中の無機物を製紙用の顔料(無機填料)として再生する方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかしながら、前記方法は、製紙スラッジの湿式空気酸化処理によるものであることから、有機物除去が充分ではなく、また得られた顔料の白色度が低く、粒子径も不揃いで、製紙用の顔料(無機填料)として使用するには不適切であり、しかも反応操作が複雑でコストが高いという問題がある。
これらのほかにも、製紙スラッジをいぶし焼きしてPS炭とした後、さらにこれをキルンで焼却して製紙用原料となる白土を生成させる方法が提案されている(特許文献6参照)。
しかしながら、この方法では製紙スラッジをいぶし焼きするため、製紙スラッジからエネルギーを有効に取り出すことができないばかりか、逆に投入エネルギーが必要になるという大きなデメリットがある。さらに、生成した白土も粒子径が不揃いで大きく、製紙用填料としては使用することができないという問題がある。
さらに、排水に凝集剤を添加して造粒し、得られる成形汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥、炭化、焼成して製紙用填料を製造する方法も提案されている(特許文献7参照)。この方法において、焼成に先立って造粒、成形するのは、焼成を均一に行うためである。
ところが、例えば固形分濃度が40〜60%(換言すれば水分率が60〜40%)の成形汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥、炭化、焼成した場合、乾燥状態、炭化状態の如何にかかわらず、キルンの回転によって汚泥粒子の処理は強制的に進行する。したがって、乾燥が不充分であると粒子内部に未燃分が多く残留し、その結果、焼成が不完全となって白色度の低下が生じる。逆に過乾燥になると、焼成は完全であるが過焼成を招き、得られる再生粒子の硬度が高くなる。この再生粒子を使用すると、抄紙機でのワイヤー摩耗や紙を断裁する場合のカッター刃摩耗が生じ易くなるという問題を惹き起こす。
前記特許文献4〜7に記載の、製紙スラッジを原料として紙の填料・顔料を製造する従来の方法の最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジには、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物を除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。
前記各種スラッジのうち、例えば抄紙工程でワイヤーを通過して流出したスラッジには、紙力剤等が混入しており、また抄紙工程における抄造物の変更によってスラッジの品質に変動が生じる。
また、排水から回収したスラッジには、凝集剤が混入しており、さらに工場全体の抄造物、生産量の変動や生産設備の工程内洗浄などにより、スラッジの品質に大きな変動が生じる。
パルプ化工程での洗浄過程から生じるスラッジには、紙用填料、顔料に適さない物質が混入していたり、チップ水分やパルプ製造条件の変動により品質に変動が生じたりする。
したがって、種々の製紙スラッジを無選別に用いて製紙用の填料、顔料を得ようとすると、その品質は低いものとなり、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
このように、従来の製紙スラッジを利用した方法は、いずれも単なる製紙用粒子の回収に終始し、これらの方法で得られる製紙スラッジからの再生粒子は、製紙用の顔料、填料としては品質が適さず、品質安定性に欠けるものであった。
したがって、新聞用紙の主要構成要素である原料パルプは、古紙パルプの多用が進むものの、填料としては従来のホワイトカーボンや炭酸カルシウムを多用せざるを得ず、例えば製紙工程での不要物を有効利用するなどして、環境保護、省資源と抄紙設備の摩耗問題の改善とを図りながら、しかもカラー印刷、高精細印刷を行っても、裏抜けせず隠蔽性にすぐれ、また、インキ乾燥性、網点再現性等にすぐれる新聞用紙を得る技術の開発が待ち望まれている。
特開平09−176985号公報 特開2002−201590号公報 特開平09−78491号公報 特開平11−310732号公報 特公昭56−27638号公報 特開昭54−14367号公報 特開2004−176208号公報
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、古紙から、古紙(紙)の主要構成要素であるパルプ繊維、填料・顔料を共に回収して使用する、資源循環型の新聞用紙を提供することを課題とする。
より詳しくは、古紙(紙)の主要構成要素であるパルプ繊維と填料・顔料を共に回収し、資源を循環使用して低コストで製造され、さらに、中性又はアルカリ領域で抄紙することで、優れた紙力が維持されて断紙が少ないだけでなく、カラー印刷、ベタ印刷、高精細印刷を行っても裏抜けせず隠蔽性に優れ、しかもインキ吸収性にも優れ、インキ乾燥性、網点再現性が良好であり、また、樹脂分や紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、高速オフセット輪転印刷における印刷に好適に使用し得る新聞用紙を提供することを課題とする。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
パルプに填料を内添した新聞用紙であって、
前記填料として古紙から古紙パルプを製造する脱墨処理工程で発生する脱墨フロスを主原料とし、
前記主原料を脱水、乾燥、焼成及び粉砕工程を経ることにより得られ、下記組成となるように調整した再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、
前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、
JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、85%〜91%未満であり、
用紙表面には、澱粉を主成分とする表面処理剤が設けられている、
ことを特徴とする再生粒子内添新聞用紙。
(組成)
前記再生粒子凝集体は、再生粒子凝集体の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
〔請求項2記載の発明〕
JIS P 8140に基づく10秒コブサイズ度が30〜300g/m2である、
請求項1記載の再生粒子内添新聞用紙。
〔請求項3記載の発明〕
JIS P 3001に基づく吸油度が50〜150秒である、
請求項1または2記載の再生粒子内添新聞用紙。
〔請求項4記載の発明〕
パルプに填料を内添した新聞用紙を製造するに際し
前記填料として古紙から古紙パルプを製造する脱墨処理工程で発生する脱墨フロスを主原料とし、
前記主原料を脱水、乾燥、焼成及び粉砕工程を経ることにより得られ、下記組成となるように調整した再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、
前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、
JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、85%〜91%未満であり、
弾性ロールと金属ロールからなるソフトカレンダーにて平坦化処理する、ことを特徴とする再生粒子内添新聞用紙の製造方法。
(組成)
前記再生粒子凝集体は、再生粒子凝集体の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニ
ウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記
再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合
計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
〔請求項5記載の発明〕
パルプに填料を内添した新聞用紙であって、
前記填料として古紙から古紙パルプを製造する脱墨処理工程で発生する脱墨フロスを主原料とし、
前記主原料を脱水、乾燥、焼成及び粉砕工程、シリカ被覆工程を経ることにより得られ、下記組成となるように調整したシリカ被覆再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、
前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、
JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、85%〜91%未満であり、
用紙表面には、澱粉を主成分とする表面処理剤が設けられている、
ことを特徴とするシリカ被覆再生粒子を内添した新聞用紙。
(組成)
前記シリカ被覆の再生粒子凝集体は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で10〜80:10〜80:5〜29の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
本発明の新聞用紙は、産業廃棄物として焼却や埋立処分されていた脱墨フロスを製紙用填料資源として活用すると共に、古紙からなる古紙パルプを主たる原料パルプとして使用することで、資源を循環使用して低コストで製造されしかも、抄造時の灰分歩留まりが高く、ワイヤー摩耗等の抄紙設備の摩耗劣化や樹脂成分の溶出による印刷設備汚れを殆ど起こすことなく、優れた紙力が維持されて断紙が少ないだけでなく、紙粉による刷版の汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性にも優れ、不透明度に優れて裏抜けが少ない新聞用紙として、高速オフセット輪転印刷、オフセット輪転カラー印刷・高精細印刷に好適に使用し得るものとなる。
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態の新聞用紙は、前記したように、パルプに填料を内添した新聞用紙であって、前記填料として古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、前記主原料を脱水、乾燥、焼成及び粉砕工程を経ることにより得られ、粉砕工程後に粒子を凝集させる工程を付加することなく下記組成となるように調整した再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、85%〜91%未満であり、用紙表面には、澱粉を主成分とする表面処理剤が設けられる。
(組成)
前記再生粒子凝集体は、再生粒子凝集体の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
まず、本実施形態に用いられる原料パルプについて説明する。係る原料パルプは、例えば新聞古紙、雑誌古紙、模造・色上古紙、OA古紙等の古紙を原料とする古紙パルプ50〜100質量%から構成される。このように本実施形態においては古紙パルプが50質量%以上も用いられるので、資源の有効利用に大きく寄与し、低コスト化を図ることができる。
古紙パルプの種類には特に限定がなく、例えばディインキングパルプ(DIP)、ウェストパルプ(WP)などがあげられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。
原料パルプとして、前記古紙パルプ以外にも通常の紙に用いられるパルプを適宜使用することができる。古紙パルプ以外のほかの原料パルプとしては、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)などの機械パルプ;針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)などの化学パルプや、これらを漂白したパルプなどがあげられ、これらの中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
原料パルプ中の古紙パルプの割合は、前記したように、50〜100質量%であるが、より省資源化及び低コスト化が実現される点から、さらには60〜100質量%、特に70〜100質量%とすることができる。
次に本実施形態に用いられる填料について説明する。係る填料としては、脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られものである。なおさらに、後述するように、脱墨フロスの凝集工程、造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を経てもよい。また再生粒子の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。
前記工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを特定量含有する再生粒子が少なくとも用いられる。
本形態の新聞用紙に使用する脱墨フロスを主原料とする再生粒子は、古紙から古紙パルプを製造する脱墨処理工程で発生する脱墨フロスを主原料とする。特に古紙のリサイクル工程で排出される脱墨フロスが、製紙原料由来の材料からなり、鉄分やその他重金属等の不純物の混入が少ないため好適である。そして、古紙再生工程では、予め古紙自体の選別を行うので、脱墨フロスは、その無機物の組成が経時的に安定したものであり、もって、得られる再生粒子凝集体の組成も安定したものとなる。これら脱墨フロスには、無機物として炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等が含有される。
通常脱墨フロスは、水分率95〜98質量%程度であり、凝集剤を加えてフロックを形成させ、脱水処理を行う。脱水処理は、1段でも複数段でも実施可能ではあるが、フロックを固化させると、後工程の炭化工程において炭化ムラが生じる原因になるため、複数段で水分率を25〜45質量%、好適には30〜40質量%程度まで脱水することが好ましい。水分率が40質量%未満では脱水エネルギーコストが大きくなり、70質量%を超える水分率では、次工程の乾燥手段での乾燥エネルギーコストが大きくなるし、乾燥後の粒度がバラツク原因になり、結果として均一な焼成が困難になる。
脱水物は、予め乾燥される。乾燥手段は、熱風乾燥等公知の乾燥手段を使用可能であるが、脱墨フロスを乾燥させながらほぐす事が可能であり、更に比重分級をも可能な熱風乾燥手段が最も好適に使用できる。
好適に使用できる熱風乾燥手段を具体的に例示すると、脱水脱墨フロスをインペラ等のほぐし設備にて、355〜2000μm程度の体積平均粒子径になるようにほぐしながら、インペラ設備下方に設けた熱風吹きだし手段にて熱風を吹き込み熱風乾燥を行う。ほぐされ、乾燥された脱墨フロスのうち、比重の軽い脱墨フロスを熱風乾燥手段の上部に設けた取出し口から排出させることで、乾燥と分級とを行うことができる。
乾燥させた脱墨フロスの分級には、好適な手段として、サイクロンによる分級を採用することもできる。乾燥・分級された脱墨フロスは、既に最終的に得られる再生粒子凝集体の類似形状を呈している。
乾燥・分級された脱墨フロスは、焼成工程に送られる。
焼成は、例えば、ロータリーキルン、流動床炉、浮遊炉、ストーカ炉等通常用いられている焼却炉を用いることができ、特に好適には、熱風炉や電気炉による間接加熱による燃焼方法が焼成温度コントロール、焼成度合いの微調整が容易である。焼成温度は、スラッジ中のカーボンブラック等のインク顔料や繊維及びポリマー等の有機系化合物を燃焼するのに十分また安定した温度であれば、特に限定されない。
脱墨フロス中にシリカが含まれる場合には、シリカがカルシウム及びアルミニウムと反応し、硬度の高いケイ酸アルミニウムカルシウム等が生成する恐れがある。硬度の高い物質の生成を防止するため、例えば、500℃以下の温度で焼成することが検討されるが、このような条件では、有機化合物を完全燃焼させることが難しく、製紙用として有用に利用できるレベルの白色度を有するシリカ被覆の再生粒子を得ることができない。
一方、焼成温度が1000℃を超えると脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等無機物の分解および焼結が進み高硬度化するため、焼成して得られた脱墨フロスを主原料とする再生粒子を本発明において所望される粒子径まで粉砕するのに多大のエネルギーや時間を要するおそれがあるため好ましくない。したがって、焼成条件としては、一次焼成が510〜750℃で、二次焼成が500〜700℃で行われるのが好ましく、一次焼成が520〜650℃で、二次焼成が500〜600℃で行われるのがより好ましい。
焼成工程は、一段階とすることもできるが、少なくとも二段階とするのが好ましく、連続する設備により少なくとも二段階焼成とするのがより好ましい。焼成工程が、少なくとも二段階の焼成工程からなると、有機物の燃焼による焼成において焼成ムラが生じにくく、満遍なく焼成を進めることが可能になる。特に焼成工程における物理的手段を異ならせることで、偏った焼成を避け焼成速度の向上を図ることが可能である。
焼成温度は、製造される再生粒子の白色度、硬度に大きな影響力を有し、一次焼成温度が510℃未満では、未燃物の残量が多く、得られる再生粒子の白色度が70%以上に達しない。他方、一次焼成温度が750℃を超えると、脱墨フロスに含まれる炭酸カルシウムの多くが熱分解し、再資源としての使用が難しい、酸化カルシウム、珪酸カルシウム等の高pH化要因物質が多く生じるおそれがあり、また、得られる再生粒子に熱溶融が生じて、極めて硬くワイヤー摩耗性が悪くなるおそれがある。一方、二次焼成温度が500℃未満であると、有機物の燃焼が不十分になったり、燃焼にムラが生じ、製造された再生粒子の白色度が高くならなくなったりする。他方、二次焼成が700℃を超えると、炭化され焼成された再生粒子の表面が高温に晒されることによる溶融が生じ極めて硬い溶融物を形成する問題や、再生粒子表面の高温化による燃焼のため酸素が再生粒子芯部まで行き届きにくく、燃焼ムラ・未燃焼部位の発生が懸念される。また、二次焼成の温度を一次焼成の温度より10〜50℃低くすることで、再生粒子表面の過焼を防止しながら、未燃物を燃焼させることができる。もちろん、二次焼成の温度を一次焼成の温度と同温度とすることもでき、同温度とする場合は、520〜600℃とすると、緩慢に焼成し未燃物を減少させることができ、白色度が少なくとも70%以上、好適には80%を超える再生粒子を得ることができる。なお、本形態において、一次焼成温度と二次焼成温度との温度差は、焼成炉内上端部の温度を基準とする。
焼成工程は、この工程内に空気を送風する手段及びこの工程内から空気を排気する手段の少なくともいずれか一方によって、工程内酸素濃度が、0.05%以上に、好ましくは、0.05〜20%に、更に好ましくは一次焼成炉内上端部で5〜15%、より好ましくは7〜13%、二次焼成炉のバーナー近傍で10〜20%より好ましくは12〜18%に調節される。一次焼成炉内酸素濃度が0.05%未満であると、焼成が進まず、ムラのある焼成が進むだけでなく、焼成に膨大な時間とエネルギーコストとが必要になる。他方、二次焼成炉酸素濃度が20%を超えると、過焼しやすく、過焼ムラにより再生粒子が黄変化するととともに、再生粒子の溶融が多発し、再生粒子の分解や酸化が進み、製紙用填料としての活用が困難になる場合がある。また、本形態においては、焼成工程に供給される、乾燥・分級された脱墨フロス(乾燥物)の水分率が少なくとも2〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%に調節されているため、焼成工程内酸素濃度を0.05〜20%とすると、極めて効率よく焼成を進ませることができ、焼成を90分以内で行うことが可能になり、極めて高い生産性を得ることができる。例えば、乾燥物の水分率を10質量%とすることで、焼成を約60分で行うことができる。
この点、焼成工程内の酸素は、焼成させるためのバーナー等によって消費され酸素濃度が低下するが、空気などの酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、焼成工程内の温度を細かく調節可能になり、再生粒子をムラなく万遍に焼成することができる。
一次焼成炉での焼成は、未燃率が5〜30質量%となるように行なっている。8〜25質量%となるように行うのがより好ましく、10〜20質量%となるように行うのが特に好ましい。一次焼成での、未燃率が5質量パーセント未満では、焼成における粒子表面の過焼が生じ表面が硬くなるとともに、内部の酸素不足が生じ、再生粒子の白色度が低下する問題が生じる。他方、一次焼成での未燃率が30質量%を超えると、後行する燃焼焼成後においても未燃分が残る問題、未燃分が自燃による過焼成により粒子が硬化する問題、未燃分が残るのを防止するためとして粒子表面が過焼するまで燃焼焼成してしまい、再生粒子表面が硬くなる問題が生じる。
再生粒子製造設備において、再生粒子の原料と成り得る以外の異物は、予め除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック、金属等の異物を除去することが、除去効率の点で好ましい。特に鉄分は、酸化により再生粒子の白色度低下の起因物質を生成するため、鉄分の混入を避け、選択的に除去することが好ましい。したがって、各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止すると共に、さらに乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し、選択的に鉄分を除去することが好ましい。
なお本実施形態においては、前記乾燥工程や焼成工程、及び必要に応じて分級工程において、粉砕工程前にあらかじめ、粒子径が40μm以下の粒子が80質量%以上、より好ましくは90%以上となるように処理しておくことが好ましい。これにより、通常行われている乾式粉砕による粗大粒子の粉砕及び湿式粉砕による微粒子化といった複数段の粉砕処理を行うことなく、湿式粉砕による一段粉砕処理も可能となる。
本実施形態に用いられる再生粒子の粒子径は、原料パルプ中への歩留まりや再生粒子の白水中への流失防止という点から、平均粒子径が0.1μm以上、さらには0.3μm以上であることが好ましく、また印刷敵性の維持と剣先詰まりの防止という点から、平均粒子径が10μm以下、さらには8μm以下であることが好ましい。
さらには原料である脱墨フロス中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、あらかじめ、例えば後述する質量割合に調整することで、再生粒子の細孔容積を0.15〜0.60cc/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を30〜100nmとすることもでき、吸油性、不透明性に優れる再生粒子とすることができる。
再生粒子の粒度を各工程で均一に揃えるためには、分級を行うことが好ましく、粗大粒子や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。なお造粒においては、通常の造粒設備を使用することができ、回転式、攪拌式、押出式等の設備が好適である。
本発明の新聞用紙は、少なくとも前記再生粒子を少なくとも填料として用い、古紙パルプを50〜100質量%も含んだ原料パルプに特定量内添することが大きな特徴の1つである。
この再生粒子は、脱墨フロスを焼成して得られる循環使用が可能なものであるので、廃棄物としての埋立等の処分が不要であり、環境負荷の低減と、省資源化に大きく貢献するものである。また、原料が古紙処理工程で生じる脱墨フロスであるので、安価であり、新たな再生粒子の使用量を抑えることができ、製造コストが充分に削減されるという利点がある。さらに係る再生粒子を用いることで、抄造時の灰分歩留まりが高く、例えば炭酸カルシウムと異なり、ワイヤー摩耗等の抄紙設備の摩耗劣化を来たすことが無く、更に樹脂成分が微細な状態下で再生粒子に吸着することで、樹脂分の凝集によるピッチトラブルを防ぎ印刷設備汚れを殆ど起こすことがなく、低コストで高い操業性で紙を製造することができ、しかも従来と同等以上の優れた不透明度や紙力が紙に付与され、裏抜け、断紙も少なくなる。
さらに本実施形態における、原料パルプに内添する好適な再生粒子として、前記のごとき工程を経て得られた粒子の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子が特に好適に用いることができる。
再生粒子の表面を被覆するシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用することが可能である。具体的には、例えばコロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカなどがあげられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力の大きさ、付着性の高さ、高吸油性などの優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。これらのうち、コロイダルシリカは、ケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカである。シリカゲルは、ケイ酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸である。また無水シリカは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものである。
再生粒子の表面にシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子を得る方法には特に限定がないが、例えば以下の方法を好適に採用することができる。
まず、再生粒子をケイ酸アルカリ溶液に添加、分散させ、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃程度に保持して酸を添加し、シリカゾルを生成させる。次いで最終反応液のpHを8〜13の範囲に調整することにより、再生粒子の表面にシリカを析出させることができる。このようにして再生粒子の表面に析出されるシリカは、ケイ酸アルカリ(例えばケイ酸ナトリウム:水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸の希釈液と高温下で反応し、加水分解反応とケイ酸の重合化により得られる、粒子径が10〜20nm程度のシリカゾル粒子である。
また、ケイ酸ナトリウム溶液等のケイ酸アルカリ溶液に希硫酸等の酸を添加することによって生成する、粒子径が数nm程度のシリカゾル微粒子を、再生粒子の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、このシリカゾル微粒子の結晶成長に伴う、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で生じる結合により、再生粒子の表面にシリカを析出させることもできる。この場合、ケイ酸アルカリ溶液に酸を添加する際のpHは、中性〜弱アルカリ性の範囲とし、好ましくはpHを8〜13の範囲に調整する。これは、pHが7未満の酸性条件になるまで酸を添加してしまうと、シリカゾル粒子ではなくホワイトカーボンが生成する恐れが生じるからである。
なお、前記ケイ酸アルカリ溶液の種類には特に限定がないが、入手が容易である点からケイ酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が特に望ましい。このケイ酸アルカリ溶液の濃度としては、再生粒子中のシリカ成分が低下し、再生粒子の表面にシリカが析出し難くならないようにするには、溶液中のケイ酸分(SiO2換算)が3質量%以上であることが好ましく、再生粒子の表面に析出されるシリカが、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子の多孔性が阻害され、不透明度やトナー定着性の向上効果が不充分になる恐れをなくすには、係るケイ酸分(SiO2換算)が10質量%以下であることが好ましい。
再生粒子表面にシリカを被覆させたシリカ被覆の再生粒子は、粒径分布測定装置(マイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社)を用いて測定して得られる体積分布平均粒子径を、湿式粉砕機等公知の粉砕機で0.1〜10μmに調整することが好ましく、平均粒子径が0.1〜10μmの割合を少なくとも80%以上、かつ20μm以上の割合を0.5%以下にすることがより好ましい。また、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で10〜80:10〜80:5〜29の質量割合とすることで、シリカ被覆効果による吸油性、不透明性を向上させることができる。
シリカ被覆の再生粒子とすることで、循環使用における古紙処理工程において、水酸化ナトリウムと反応させて緩衝剤や漂白助剤として製紙用原料、再生粒子の循環使用にも寄与させることができる。またかかるシリカ被覆再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、シリカで被覆していない再生粒子を用いた場合よりもさらに、紙の白色度、不透明度、表面強度、インク乾燥性、インク吸収ムラ、嵩高といった効果をより向上させることができる。
なお、本実施形態に用いられる古紙処理工程にて生じる脱墨フロスは、近年の中性抄紙化に伴い、炭酸カルシウムの含有量が増加傾向にあり、得られる再生粒子中のカルシウムの割合も高くなる傾向がある。このようにカルシウムの割合が高い再生粒子を原料パルプに内添すると、紙の不透明度がやや低下する場合があるが、表面にシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子は、製紙用途の再生粒子としての機能が非常に高く、該シリカ被覆再生粒子を原料パルプに内添して得られる紙の不透明度は、著しく向上する。
かくして得られる再生粒子は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを含有している。再生粒子中のこれらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析を行い、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜82:9〜35:9〜35、さらには40〜82:9〜30:9〜30、特に60〜82:9〜20:9〜20の質量割合であることが好ましい。
なお、特に再生粒子がシリカ被覆再生粒子である場合には、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、酸化物換算で、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で10〜80:10〜80:5〜29の質量割合であることが好ましい。また同時に、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの元素分析における酸化物換算の合計含有割合は、90質量%以上、好ましくは93質量%以上である。
このように、例えば再生粒子においてカルシウムが酸化物換算で30質量割合以上含有、シリカ被覆の再生粒子においては、酸化物換算で10質量割合以上された再生粒子を填料として原料パルプに内添した場合には、特に得られる紙の白色度を向上させることができる。
再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合を、例えば酸化物換算で前記範囲内に調整するには、本来、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが好ましいが、乾燥工程や焼成工程、さらには必要に応じて分級工程において、由来が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法を採用することも可能である。
例えば、再生粒子中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを、ケイ素の調整には不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用された抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程の排水スラッジを適宜用いることができる。
さらに本実施形態に用いられる再生粒子は、微細な粒子が凝集した柔軟かつポーラスな性状を有するので、嵩高な紙層形成に寄与し、該再生粒子を填料として原料パルプに内添して得られる新聞用紙は、填料歩留りが高く、密度が低く、取りまわしが良好な剛度を有する。
前記再生粒子の含有量があまりにも少ない場合には、例えば抄紙機でのカレンダー処理において、平滑化の効果が発現されにくくなり、紙の不透明性が低下して印刷後の不透明度が低下したり、新聞用紙の剛直度が高くなり、輪転機上での走行性が低下したりする恐れがあるので、原料パルプに対して2質量%以上、さらには5質量%以上であることが好ましい。逆に再生粒子の含有量があまりにも多い場合には、表面性や剛度の点では望ましいものの、印刷機内での搬送に伴って灰分が脱落し易くなり、表面強度の低下や、剥け・ケバ立ち、印刷白抜け、紙粉が発生する恐れがあるので、原料パルプに対して20質量%以下、さらには15質量%以下であることが好ましい。
本実施形態において、填料として前記再生粒子を単独で用いることもできるが、このほかに、内添用填料として通常使用される、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、デラミネーテッドクレー等のクレー、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれた少なくとも1種の填料を併用することもできる。
なお再生粒子を含む填料の添加率があまりにも少ない場合には、填料を用いる効果が充分に発現されず、逆にあまりにも多い場合には、紙力が低下する恐れがあるので、該填料は、紙中にJIS P 8251に準拠して測定した紙灰分として2〜20質量%、さらには4〜15質量%含まれることが好ましい。
また原料パルプ及び填料から得られた紙料スラリーに添加する添加剤としては、通常の紙に配合されるものを用いることができ、例えば澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等の紙力増強剤;ロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等の内添サイズ剤;ポリアクリルアミドやその共重合体、ケイ酸ナトリウム等の歩留まり向上剤などがあげられる。
さらに、原料パルプから紙料スラリーを調製して抄紙した後、表面に少なくとも澱粉を主成分とする表面処理剤が設けられる。澱粉の例としては変性澱粉が使用でき、その他にPVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリルアミド等の高分子材料を成分とする表面処理剤を併用塗布することができる。
前記表面処理剤において好適使用できる澱粉としては、特に限定されないが、カルボキシメチルデンプン(アニオン性)、ヒドロキシアルキルデンプン(ノニオン性)、リン酸デンプン(アニオン性)等の変性澱粉は、紙中に浸透しながら、引張り強度や表面強度を向上させる効果を有するものの、中性又はアニオン性を示すため、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性に劣り、被膜性が低い。したがって、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性が高いカチオン性の澱粉であることが好ましい。
カチオン性の澱粉は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4アンモニウム塩基、及び第3級アミノ基とハロゲン化アルキル基等のカチオン基が付加された澱粉で、カチオン基以外にアニオン基も導入された両性澱粉であっても良い。カチオン基の置換度は、0.005〜0.05程度が望ましい。置換度が0.005未満の場合には吸水抵抗性が低下し、0.05を超えるような多量のカチオン基の導入は非常に困難である。原料澱粉の種類は特に限定するものではないが、タピオカ、コーン、ポテト、ワキシーメイズなどの一般的な工業用澱粉を使用することができ、特にタピオカが好ましい。カチオン性の澱粉であると、パルプ繊維に対する定着性が向上し、被膜性に優れ、また、表面強度も向上する。
さらに、本形態における澱粉は、エステル化澱粉であるのがより好ましい。エステル化澱粉であると、インキ濃度及びインキセット性が飛躍的に向上する。エステル化用の原料澱粉としては、未処理澱粉、処理澱粉の他、各種の澱粉含有物が包含される。このようなものとしては、例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチトウモロコシ粉、高アミロース含量トウモロコシ澱粉などの未処理澱粉、小麦粉、タピオカ澱粉、コーンフラワー、米粉等の澱粉含有物及びこれらの澱粉及び澱粉含有物の酸化、酸処理化等を行ったもの等が挙げられる。中でもタピオカ澱粉は、エステル変性物が、粘性、被膜性、弾力性、伸展性の面で他の穀物澱粉類より秀でており好ましい。エステル化澱粉において、そのエステル化の度合は特に制約されないが、導入されるエステル結合の平均数で、グルコース単位当り、1〜3、好ましくは1〜2である。エステル化澱粉の中でも、ヒドロキシエステル化澱粉が好ましい。このものは原料澱粉に酸化処理を施し、カルボキシメチル基をヒドロキシエチル基へ還元反応させることにより容易にかつ安価に得ることができる。最も好適には、エステル変性された澱粉の末端基に疎水性基を導入した、疎水性基含有エステル変性タピオカ澱粉を使用することできる。
更に好適に使用するエステル化澱粉としては、末端基にカルボン酸(−COOH)構造を有し、中性領域において、−COO-のようにイオン化することで水素結合による繋がりを確保できず、反発性を示すことによるチキソトロピカルな挙動を示すエステル変性澱粉が、塗工において流動性を示しながら、基紙表面に塗布後は基紙中に浸透しにくく、基紙表面に高い被膜性を呈するため好ましく、加えて被膜性の高いポリビニルアルコールの用なバインダ樹脂を含有させることが好ましい。このエステル化澱粉の種類は、特には、タピオカ澱粉を主原料にエステル化変性させた1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉が好ましい。1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉は、粘性、被膜弾力性、被覆性の点で特に優れており、ポリビニルアルコールとの組合せで、更に顕著な被覆性と、インキ濃度、インキセット性向上とを図ることができる。
表面処理剤には、適宜他の接着剤、例えばスチレン−ブタジエン共重合体等のラテックス類、ポリビニルアルコールやポリアクリルアミド、さらにはカオリンや炭酸カルシウム等の顔料、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等の各種助剤を添加することもできる。また表面処理剤の固形分濃度は特に限定されるものではなく、塗布装置や塗布量に応じて、例えば2〜25質量%程度に調整することが好ましい。
澱粉と併用使用される特に好適な表面処理剤としては、ポリビニルアルコールが挙げられる。
表面処理剤としてポリビニルアルコール単独で塗工した場合には、澱粉単独で塗工した場合に比べて、ほぼ3倍の表面強度を示し、被膜性に優れる反面、被膜性が高いために、コールドセット型インキのように、用紙中に溶媒が浸透して乾燥する印刷インキの場合、印刷インキの溶媒の吸収性が悪く、インキのインキセット性速度が劣る。また、ポリビニルアルコールを単独で一定量塗工する場合には、塗工液の粘性が高く、フィルム転写方式では、断紙、抄紙設備の汚れ、粕、紙面の汚れなどの問題が生じるため使用できない。したがって、澱粉と併用することで、適度なインキ溶媒の用紙中への浸透を促しながら、インキ顔料成分を用紙表面に留め被膜性が向上するとともに、インキセット性の低下も抑えられる。ポリビニルアルコールの種類は、特に限定されない。ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
ポリビニルアルコールとしては、平均重合度が500〜3500のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1000〜2400、更には、1700〜2400の範囲のものが澱粉との相溶性に優れるため、均質な被膜性を得やすくなるため、好ましく用いられる。また、ケン化度が80以上、100に近いポリビニルアルコールであるのが好ましく、ケン化度が90以上、100の完全ケン化ポリビニルアルコールであることが好ましい。完全ケン化ポリビニルアルコールであると、部分ケン化ポリビニルアルコールである場合よりも用紙表面に耐水性・耐熱性を有する被膜性を得やすくなる。
また、このようなポリビニルアルコールを用いることで、澱粉との親和性が良く短時間で澱粉とポリビニルアルコールとがブレンド可能であり、操業性を向上させることができるとともに、塗工設備においてミストの発生を低減させることができる。ケン化度が高く、重合度も高い性質を有するポリビニルアルコールを用いることにより、高いインキ濃度を得ながら、高いオフセットインキのインキセット性を実現することができる。また、用紙に印刷した後、用紙を積層しても、裏面へのインキ転写を防止することができ好ましい。
なお、表面処理剤をあまりにも多量に使用すると、コスト高となるだけでなく、紙表面が湿った状態でネッパリ性と呼ばれる紙表面の粘着性が発現される傾向がある。このネッパリ性が大きくなると、特に非画線部におけるブランケットパイリングを逆に増大させたり、また印刷時に紙面がブランケットに貼り付き、結果的にシワや断紙といった走行性トラブルを誘発したりする恐れがあるので、好ましくない。また、表面処理剤の使用量が増加すると、目的とする紙の透明性が上昇、すなわち不透明度が低下したり、インクの乾燥性が悪化したりする場合もある。これらの表面処理剤のうち、澱粉やポリアクリルアミドは比較的ネッパリ性が低いので広く使用されているが、いずれも水への溶解性が高いため、印刷時に湿し水中に容易に溶出して填料と共にブランケットに堆積し、ブランケットパイリングが発生し易い。また溶出した表面処理剤がブランケットを介して刷版に転移、蓄積することで刷版の非画線部が感脂化し、非画線部のインク汚れ、すなわち地汚れと呼ばれる紙面の汚れを誘発し易くなることから、多量に用いることは好ましくない。
再生粒子を内添した新聞用紙に前記表面処理剤を設けることによる相乗効果によって、古紙パルプを原料パルプとする事による紙粉の発生やインキ吸収ムラの抑制を図ることができるとともに、インキセット性の改善、網点再現性等の印刷適性をより向上させることができる。
前記表面処理剤は、製紙分野で一般に使用されている塗布装置、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いて塗布すればよい。
表面処理剤の塗布量は、紙の表面強度を充分に向上させるには、乾燥重量で0.4g/m2以上となるように調整することが好ましく、またコスト高となったり、不透明度やインク乾燥性の低下を招いたりしないようにするには、乾燥重質量で3.0g/m2以下となるように、より好ましくは、0.7〜2.5g/m2以下に調整することが好ましい。
かくして紙料スラリー及び必要に応じて添加剤から調製された紙料は、公知の抄紙機によって抄造することができ、さらに必要に応じてカレンダー装置に通紙し、加圧、平滑化処理を施して新聞用紙に仕上げることができる。
該カレンダー装置としては、金属ロール同士の組合せによるマシンカレンダーや、金属ロールと、ウールーンペーパーロールやポリアミド系樹脂等の耐久性の高い樹脂素材でカバーしたロールのように弾性を付与したロールとから構成されるいわゆるソフトカレンダーなどが知られ、金属ロールと金属ロールとの組み合わせによるマシンカレンダーの使用が一般的である。
然しながら、カレンダー処理のニップ圧力を高くしたり、ニップ数を増やすことで平滑化すれば、インキ着肉性は高まるが紙の嵩高さが損なわれるために印刷時の皺発生など走行性不良トラブルの原因となる恐れがあるとともに、印刷後の不透明度が低下や剛度が低くなる。
一方で、カレンダー処理を軽減すれば嵩高な紙を得ることはできるが、紙面の着肉性の表裏差が増大し、特に平滑度が低い側の紙面で着肉性が悪くなるため、表と裏とで画像の濃度が著しく異なるという問題が発生する。これは、抄紙工程中、ワイヤーパート、プレスパートでの脱水条件が表面と裏面とで微妙に異なるため、用紙の平滑性に表裏差ができたり、厚さ方向での填料、微細繊維の分布状態が異成ったりするために、インキの転移性に表裏差がでるためと考えられている。
特に近年では、新聞用紙のカラー化や軽量化に伴い、良好なインキの着肉性や印刷後の高い不透明性が一層求められており、本発明においては、ソフトカレンダーを好適に使用する。
再生粒子を填料として内添した新聞用紙との好適な組合せにおいて、マシンカレンダーを使用すると、表面処理剤塗布前の乾燥までの工程で生じた平滑性の表裏差を助長してしまう傾向がある一方、ソフトカレンダーとの組合せにおいては、紙層の地合ムラに起因するカレンダー処理後の密度ムラが軽減でき、その結果オフセット印刷時にカラー刷りした場合にインキ吸収ムラのない均一な濃度の印刷面を得ることができ、特に再生粒子との併用においては、元来クッション性を有する再生粒子と密度を上げずに用紙表面を高温のアイロンで平坦化するように凹凸を軽減するソフトカレンダーにより、再生粒子が原料パルプのフィブリル繊維と絡み易く、密度を上げず用紙表面の平坦性と緻密性を向上させるともに、紙力低下を来たしにくい。また、インキ着肉性を高める手段としては、先に述べたソフトカレンダー等による平坦化処理により新聞用紙を平滑化することが、紙層を強く加圧せずに平滑化することができ、さらに紙層強度の低下を充分に抑制することができるのでソフトカレンダーを使用することがより好ましい。
他方、ソフトカレンダーの弾性ロールの硬度は、JIS Z 2246によるショア硬さが87〜95°であることが望ましい。87°未満であると弾性ロールの耐久性が悪く、十分な平滑性が得られない一方、95°を超えると均一なプロファイルが得にくい問題がある。前記弾性ロールの粗さは、JIS B 6001による表面粗さの最大値が0.5μm未満であることが紙面のインキ着肉ムラを少なくするために特に望ましい。
また、前記ソフトカレンダーの金属ロールに接する面を平滑化するために、前記金属ロールの表面温度は、40〜150℃、好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは90〜120℃とする。表面温度をこの範囲内とすることにより、僅かな密度ムラが影響するような多色刷りにおいても、均一な濃度の印刷面を表裏差なくことができる。
ソフトカレンダーの使用においては、新聞用紙のワイヤー面側に当たる裏面側がソフトカレンダーの金属ロール面に先に接触するように通紙することで、より平坦性及び嵩高性の向上をより図ることができ、1500m/分以上の高速抄紙において、高い平坦性とカラー印刷における表裏差の少ない新聞用紙を得ることができる。
さらに好ましくは、表裏面に設ける表面処理剤の塗布量を表面側より裏面側を多くすることにより、より良好な平坦性と嵩高性とが得られ、腰のある新聞用紙を得ることができる。
かくして得られる新聞用紙は、JIS P 8251に準拠した灰分が2〜20%で、JIS P 8133に記載の「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に準拠して測定した熱水抽出pHが、6.0以上、さらには6.1以上であることが好ましく、また9.5以下、さらには8.5以下であることが好ましい。熱水抽出pHがこのような範囲の場合には、補助的な使用が考えられる炭酸カルシウムや、僅かとは考えられるが、再生粒子中に内在する炭酸カルシウムの溶出が防止されて再生粒子の形状が安定し、また水酸化カルシウムの生成が防止され、抄紙工程系内の汚れやスケールの発生を抑制し、紙の劣化抑制や資源循環を図ることができる。また、紙のインク乾燥性を向上させ、インク吸収ムラを少なくしたり、劣化を充分に抑制し、保存性や助剤の定着性をさらに向上させることもできる。
なお前記抄造の際の新聞用紙のpHは、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)を添加し、アルミニウムを介して樹脂成分を繊維に定着させるか、あるいは樹脂成分の凝集体を形成させることにより、樹脂成分を紙支持体に取り込むことによって製造工程での樹脂成分の付着を防ぐため、アルミニウムイオン種のカチオン性が最も活性なpH4〜6未満の範囲内で新聞用紙を抄造するのが一般的であるが、本発明にて使用する古紙パルプは、古紙から脱インクして製造されるためpHが6以上と高く、高pH化による安定性やpH調整という点、補助的な使用が考えられる炭酸カルシウムの使用に際しては、該炭酸カルシウムが溶解して歩留まりが低下したり、抄紙工程の汚れの原因になったりする恐れをなくすほか、理由は不明確ながらpH6未満で抄紙するよりも、6以上で抄紙することによって紙力の向上が図られる理由から、6〜9.5程度となるように調整することが好ましい。
また再生粒子の添加は、従来のいずれの段階でも行うことが可能であるが、原料配合チェストからインレットの間で行うことが好ましい。この間に添加することにより、再生粒子が分散し易くなり、パルプ繊維への定着性が向上し、その結果、填料の歩留まりが向上する。また再生粒子がパルプ繊維間の結合を阻害しないので、紙の剛度が低下することもない。再生粒子をより均一に分散させ、パルプ繊維への定着性を向上させるためには、できる限りインレットの近傍工程で該再生粒子を添加することが特に好ましい。
さらに本実施形態に係る紙の坪量は、軽量化、例えば高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明度の確保という点から、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定して、37g/m2以上、さらには40g/m2以上であることが好ましく、またその軽量化の点から、係る坪量は48g/m2以下、さらには46g/m2以下であることが好ましい。37g/m2未満では、例えば高速オフセット輪転印刷機における強度確保が困難であり、48g/m2を超えると、近年の軽量化、省資源に逆行することとなる。
紙の白色度は、その用途に応じて異なるが、新聞用紙においては購読者の眼精疲労をきたさないように、JIS P 8123に記載の「紙及びパルプのハンター白色度試験方法」に準拠して測定して、少なくとも50%以上が好ましく、白色度は52〜56%、さらには53〜55%であることが好ましい。
新聞用紙の白紙不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から不透明度は高いものが求められるが、JIS P 8138に記載の「紙の不透明度試験方法」に準拠して測定して、85.0%〜91.0%未満、さらには87.0〜90.5%であることが好ましい。
また新聞用紙の密度は、近年の軽量化や軽量化に伴う強度維持の点から、JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定して、0.50〜0.80g/cm3、さらには0.55〜0.75g/cm3であることが好ましい。
また紙のMD方向の剛度は、例えば高速輪転印刷に適した腰を付与するという点から、JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して測定して、30〜55cm3/100、さらには32〜50cm3/100であることが好ましい。
新聞用紙において用いられるオフセト輪転印刷は、刷版に湿し水と印刷インキとを供給し、次いでブランケットと呼ばれるゴム版にインキを転移させた後、紙に転移させて印刷を行う方法であり、従来の凸版印刷方式に比べて、比較的粘度の高いインキを使用するため、インキの紙層内部への浸透が少なく、インキの着肉性が良好となると共に、印刷後のインキ裏抜けの少ない(不透明度の大きい)利点を有している。
本発明者らは、本発明に基づく古紙パルプ50〜100質量%からなり、少なくとも前記填料として、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が90質量%以上である再生粒子が少なくとも用いられ、JIS P 8124に準拠した坪量が、37〜48g/m2である新聞用紙における湿し水と印刷インキの転写において、該新聞用紙のJIS P 8140に基づく10秒コブサイズ度が30〜300g/m2であり、かつJIS P 3001に基づく吸油度が50〜150秒である関係を有することが好ましいことを知見している。いわゆる親水性と親油性の関係を所定の範囲内に抑えることで、平坦化処理と相俟ってよりオフセット輪転印刷適性を向上させることが可能となる。
さらに紙の表面強度は、やはり高速輪転印刷における紙質強度を考慮すると、後述するRIテスター((株)明製作所製)による測定において最低限度グレード3以上であることが好ましい。
このように、本実施形態に係る新聞用紙は、古紙パルプを50質量%以上も含有した原料パルプに、古紙処理工程にて生じる脱墨フロスを主原料とし、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを合計90質量%以上も含有した再生粒子を填料として内添して抄造したものである。したがって、本実施形態に係る新聞用紙は、抄造時の灰分歩留まりが高く、ワイヤー摩耗等の抄紙設備の摩耗劣化や印刷設備汚れを殆ど起こすことなく、資源を循環使用して低コストで製造され、優れた紙力が維持されて断紙がないだけでなく、紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり、色ズレ等もなく、不透明度に優れて裏抜けが少ない。しかも本実施形態に係る新聞用紙は、印刷時、特にカラー印刷時の各種特性にも優れ、例えば12〜17万部/時程度といった高速オフセット輪転カラー印刷等に好適に使用することができる。
次に本発明の新聞用紙を、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
〔再生粒子の製造(製造例(実施例)1〜20及び比較製造例1〜10)、市販の新聞用紙1〜2〕
原料として、表1に示すように、脱墨フロス(古紙パルプを製造する古紙処理工程より得られた脱墨フロス、製造例1〜20、比較製造例1〜4)又は製紙スラッジ(主に製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ、比較製造例5)を用い、表1に示す条件の脱水工程、乾燥工程及び焼成工程を経た後、湿式粉砕処理を施して再生粒子を得た。
さらに製造例3、5、19、20においては、再生粒子をケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)に添加、分散させてスラリーを調製した後、加熱攪拌しながら、表に示す条件の液温に保持して希硫酸を添加し、シリカゾルを生成させた。次いで反応液のpHを表に示す条件に調整し、再生粒子の表面にシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子を得た。
得られたシリカ被覆の再生粒子について、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量をそれぞれ酸化物換算で求め、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合を算出した。その結果を表に示す。また平均粒子径も併せて表に示す。さらにワイヤー摩耗度、生産性、品質安定性及び外観についても調べた。これらの結果も併せて表2に示す。
なお、表1及び表2に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(ア)脱水工程及び乾燥物の水分
試料を採取し、JIS P 8127に記載の水分試験方法に準拠し、乾燥器を用いて水分測定を行った。
(イ)乾燥工程後(焼成工程入口)の粒子径355〜2000μmの粒子の割合は、4.7メッシュの篩にて、粒子径が2000μmを超える乾燥物粒子の質量割合を、42メッシュの篩にて、粒子径が355μm未満の乾燥物粒子の質量割合を、それぞれ測定し、質量割合を算出した。
(ウ)乾燥工程後(焼成工程入口)の40μmアンダーの粒径の割合
X線マイクロアナライザー(型番:EMAX2770、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)を加速電圧15kVで用い、白黒ポラロイドフィルム(ポラロイド社製、8.5cm×10.8cm)にて、X線マイクロアナライザーディスプレーのX線像を20枚撮影し、40μmアンダーの粒径の割合を算出した。
(エ)焼成工程内酸素濃度
堀場製作所製、ガス分析装置(形式:PG250型)にて測定した。
(オ)再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて酸化物換算における元素分析、元素の質量割合測定を行った。
(カ)再生粒子の平均粒子径
再生粒子サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。この溶液を粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装(株)製)により、平均粒子径を測定した。
(キ)ワイヤー摩耗度
摩耗度試験装置(日本フィルコン(株)製)を用い、スラリー濃度2質量%にて3時間、プラスチックワイヤー摩耗度を測定した。
(ク)生産性
原料の脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力を各々5段階評価し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれも高い評価でバランスが最もよかった。
○:平均してよい評価であった。
△:脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力のいずれかに問題があった。
×:実操業が困難であった。
(ケ)品質安定性
白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:上位10位まで
○:11〜22位
△:23〜25位
×:26位以下
(コ)外観
目視にて再生粒子の色を観察し、白色と灰色とに区分した。
Figure 0004020946
Figure 0004020946
表2に示された結果から、製造例1〜20の再生粒子は、いずれもワイヤー摩耗度が低く、生産性及び品質安定性にも優れたものであることがわかる。これに対して比較製造例1〜4の再生粒子は、いずれもワイヤー摩耗度が高く、生産性及び品質安定性にも劣るものであることがわかる。
〔新聞用紙の製造(製造例1〜22及び比較例1〜7)〕
表3に示す割合でデインキングパルプ(DIP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)及び針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を配合し、レファイナーでフリーネスを120mL C.S.F(JIS P 8121に準拠)に調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに対し、絶乾パルプ100質量部あたりカチオン化澱粉を0.5質量部添加し、さらに、填料として前述した製造例1〜20及び比較製造例1〜5で得られた再生粒子を表に示す割合で添加し、硫酸バンドでpHを調整後、ツインワイヤー抄紙機で表に示す坪量の新聞用紙を抄造した。更に、表3に示す条件の表面処理剤を設けた。
得られた新聞用紙について、各種物性を調べた。これらの結果を表3及び表4に示す。また、市販の新聞用紙を市販品1、2として準備し、実施例1〜20及び比較例1〜10の新聞用紙と同様に各種物性を調べた。その結果を、比較例11〜12として併せて表3及び表4に示す。
なお、表3及び表4に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(a)坪量
JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
(b)紙厚、密度
JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
(c)表面処理剤の定量(澱粉及びポリビニルアルコールを用いた表面処理剤処理紙における澱粉及びポリビニルアルコールの定量方法)
(1)測定用紙の一定量(A4版1〜2枚程度:試料面積又は重量を精秤しておく)をとり、約1cm2に切り出す。これを水にて攪拌下、加熱・溶解し、紙の繊維を完全にほぐす。
(2)No.1の濾紙にて濾別する。抽出液は濃縮する。濾過残渣物は、水を加え再び加熱溶解を行い、濾過する。標準作業では、この操作を6〜7回繰り返す。実際は、1回の操作で約90%が溶出し、3回繰り返すことで約99%が抽出されていると見なし、3回程度で終える事が多い。全抽出液を、約100mlまで濃縮する。
(3)上記全抽出液に濃塩酸約10mlを添加し、2〜3時間加熱(80〜90℃)を行い一夜放置する。ここで、沈殿を生成すれば濾過除去(No.5Aの濾紙)する。沈殿洗浄に蒸留水を約100ml用いるため、最終的には約200mlの濾液となる(ここでの液量を精秤しておく。)。
(4)(3)で得られた濾液を2分割し各々以下の方法に従い、澱粉の定量、PVAの定量を実施する。
PVAの定量法(ホルマール化法) 300mlのビーカー中で実施。
(5)抽出液に市販ホルマリン水溶液約10〜15mlを添加し、80〜90℃以上で1〜2時間の加熱により沈殿を完全に生成させる。
(6)あらかじめ乾燥し、精秤している濾紙(No.5A)にて濾別し、酸性反応を示さなくなるまで水、又は温水にて洗浄を繰り返す(通常、熱水500〜800mlを使い洗浄する)。
(7)沈殿の付着した濾紙を乾燥秤量し、求めた沈殿物の重量から次式にてPVA量を算出する。
PVA(g)=沈殿物重量(g)×0.95(0.95はホルマール化における重量増加分補正係数)
澱粉定量法(レイエイノン法) 300mlの三角フラスコ中で実施。
−試薬の調整−
A液 結晶硫酸銅34.62gを水に溶解し全量500mlとする。
B液 酒石酸カリウムナトリウム:173g、NaOH:50gを水に溶解し全量500mlとする。
C液 メチレンブルー1gを水に溶解し100mlとする。
(8)抽出液にフェノールフタレイン指示薬を3〜4滴入れ、NaOH粒、濃塩酸、1N NaOHで微赤色になるよう調製する(試料液)。
(9)A液とB液を等量混合(フェーリング液の調整)しておき、この液の1〜5cc(1ccとする場合が多い)にC液の1滴を滴下する。そこに、(8)で中和した試料液の一定量(例えば5cc)と蒸留水20ccと混合する。直火にて加熱する。
(10)加熱発泡後15秒にて、青色が消え微赤色となれば終点とする。終点とならない場合には、(8)の試料量を追加して加熱発泡後15秒にて、青色が消え微赤色となる様な試料量を探す(加熱は発泡開始後、3分間以内を限度とする。終点が確認しにくくなるため。)。
(11)供試料と全試料液、フェーリング液量から下記計算式にて澱粉(転化糖)の量を算出する。
澱粉量(g)=フェーリング液力価×フェーリング液消費料(ml)
例)フェーリング液力価:0.0046、フェーリング液消費量:1ml、供試料量:5+5+1=11ml、全試料量:262×2=524ml(ここで、抽出液を2分割する場合を考えて、2倍している)。この場合、抽出液中の澱粉量(g)=0.22(g)。ここで、最初のサイズ紙面積が、0.12m2の場合は、澱粉塗布量=1.8g/m2となる。なお、フェーリング液力価は、別途測定しておく。
(参考)フェーリング液力価の測定法。
[1]酸化澱粉0.7gを蒸留水200mlに溶解。
[2]濃塩酸10ml添加。
[3]これに蒸留水300ml添加。
[4][3]で得た液を5ml用い、上記(8)〜(11)に従い滴定する。上記計算式を用いて、フェーリング液力価を決定する。
(d)算術平均表面粗さ(Ra)
算術平均表面粗さは、JIS B 0601に定義される算術表面粗さに準拠して測定した。
(e)白紙不透明度
JIS P 8149によって測定した値である。
(f)白色度
JIS P 8212によって測定した値である。
(g)コッブサイズ度
JIS P 8140に準拠した測定時間10秒における、サイズ度である。
(h)剛度(MD方向)
JIS P 8143によって測定した値である。
(i)表面強度
紙試料を、実験室の弾性ロールと金属ロールからなるラボソフトカレンダーに、線圧40kg/cmで2回通した後、この紙試料の表面に、RIテスター((株)明製作所製)で、インキタック6(東洋インキ製造(株)製)を用いて印刷した。10cm2あたりの繊維が剥がれた状態を目視にて観察し、以下の評価基準(グレード)に基づいて評価した。
(評価基準)
1:繊維の剥がれかなりあり
2:繊維の剥がれあり
3:繊維の剥がれややあり
4:繊維の剥がれ僅かあり
5:繊維の剥がれ殆どなし表面強度
(j)ケバ立ち
RI印刷適性試験機((株)明製作所製)にて、試験インクを付与しないゴムロールのままで新聞用紙表面を繰り返し5回表面処理した。ルーペを用い、100mm×100mmの範囲で紙ウェブ表面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ケバ立ちが非常に少ない。
○:ケバ立ちが少ない。
△:ケバ立ちがやや多い。
×:ケバ立ちが非常に多い。
(k)インキ吸収ムラ
オフセットカラー印刷機(型番:SYSTEM C−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。藍/赤の重色部分のインク濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インク濃度ムラが全く認められず、均一で鮮明な画像である。
○:インク濃度ムラが殆ど認められず、均一な画像である。
△:インク濃度ムラが認められ、やや不均一な画像である。
×:インク濃度ムラが明らかであり、不均一な画像である。
(l)ブランケットへの紙粉堆積
(1)オフセットカラー印刷機(型番:SYSTEM C−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、同じ印刷速度で藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。10000部の印刷を行った後、ブランケット非画線部への紙粉の堆積度合いを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、実用上問題がない。
△:紙粉の発生が明確に認められる。
×:ブランケット上に紙粉が多く堆積し、ブランケットが白くなっている。
(2)オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、ブランケット上に堆積している紙粉をかき取り、その質量を測定して用紙100cm2あたりの質量で表した。なお湿し水の膜厚は0.9μmとした。
(m)吸油度
JIS P 3001−1976に記載の、「吸油度試験方法」に準拠し、軽油1号にて測定した。
(n)灰分
JIS P 8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法」に準拠して測定した。
(o)熱水抽出pH
JIS P 8133に記載の「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に準拠して測定した。
(p)印刷後不透明度
オフセット輪転印刷機で、オフセット輪転印刷用インキ(墨)のインキ量を変えて印刷し、印刷面反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率に対する印刷後の裏面反射率の比率を求めた。なお、反射率の測定には分光白色度測色機(スガ試験機社製)によって測定した値である。
(q)印刷白抜け
オフセットカラー印刷機(型番:SYSTEM C−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、網点面積率30〜100%でオフセット輪転印刷用インク(墨)の単色印刷を行った。網点面積率100%ベタ部について、印刷面の白抜けの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:白抜けが殆ど認められない。
○:白抜けが少ししか認められない。
△:白抜けが認められる。
×:白抜けが著しい。
(q)ネッパリ性
新聞用紙サンプル2枚を適当な大きさに切断して水に10秒間浸漬した後、2枚を素早く密着させ、線圧100kg/cmでカレンダーに通紙した。24時間室温乾燥した後、引張り試験機(型番:オートグラフAGS−500NG、(株)島津製作所製)を用いて2枚の剥離強度を測定した。なお、数値が大きい程ネッパリ性(粘着性)が高い。
(r)インク乾燥性
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で、植物油含有量が45%の新聞印刷用インクにて藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。印刷面と白紙面とが重なるように印刷物500部を重ね合わせ、24.5kPaの荷重で1日間放置した後、白紙面の汚れの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:汚れが殆ど認められない。
○:汚れが少ししか認められない。
△:汚れが認められる。
×:汚れが著しい。
(s)断紙回数
オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行い、6万部の印刷の間に、断紙が発生する回数を測定した。
(t)裏抜け
前記試験例8と同じオフセット輪転機を使用し、同じ印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、墨ベタ面を裏面から目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:裏抜けが殆ど認められない。
○:裏抜けが少ししか認められない。
△:裏抜けが認められる。
×:裏抜けが著しい。
Figure 0004020946
Figure 0004020946
以上の結果から、製造例1〜20の新聞用紙は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを90質量%以上も含む、脱墨フロスが原料の再生粒子を填料として、古紙パルプを50質量%以上も含む原料パルプに内添して抄造したものであるので、資源を循環使用して低コストで得られるだけでなく、適度の坪量、密度及び熱水抽出pH、白色度、剛度及び表面強度を有し、また、優れた不透明度と紙力とを兼備したものであることがわかる。しかもこれら製造例1〜20の新聞用紙は、ケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積及び断紙が全く又は殆どなく、さらに印刷後不透明度も高く、印刷白抜けや裏抜けも全く又は殆どないので、例えば高速オフセット輪転印刷に非常に適した特性を具備していることがわかる。
これに対して比較製造例5の新聞用紙は、脱墨フロスではなく、製紙スラッジを原料とした再生粒子が填料として用いられており、しかも原料パルプとして古紙パルプの使用量が少ないものであるので、省資源化や低コスト化が図られず、しかもケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、断紙に加え、印刷後不透明度、印刷白抜けや裏抜けの殆どが悪い結果で、高速オフセット印刷に適した特性を具備していないことがわかる。
また比較製造例1〜4の市販の新聞用紙も、製造例1〜20と比較し、ケバ立ち、インク吸収ムラ、ブランケットへの紙粉の堆積、断紙に加え、印刷後不透明度、印刷白抜けや裏抜けの殆どが悪い結果で、本発明が高速、カラー、高精細オフセット輪転印刷により適した特性を具備していることがわかる。
本発明の新聞用紙は、例えばサテライト型やタワープレス型のオフセットカラー印刷機等における高速オフセットカラー印刷に特に好適な新聞用紙として使用することができる。

Claims (5)

  1. パルプに填料を内添した新聞用紙であって、
    前記填料として古紙から古紙パルプを製造する脱墨処理工程で発生する脱墨フロスを主原料とし、
    前記主原料を脱水、乾燥、焼成及び粉砕工程を経ることにより得られ、下記組成となるように調整した再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、
    前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
    JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、
    JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、85%〜91%未満であり、
    用紙表面には、澱粉を主成分とする表面処理剤が設けられている、
    ことを特徴とする再生粒子内添新聞用紙。
    (組成)
    前記再生粒子凝集体は、再生粒子凝集体の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
  2. JIS P 8140に基づく10秒コブサイズ度が30〜300g/m2である、請求項1記載の再生粒子内添新聞用紙。
  3. JIS P 3001に基づく吸油度が50〜150秒である、請求項1または2記載の再生粒子内添新聞用紙。
  4. パルプに填料を内添した新聞用紙を製造するに際し
    前記填料として古紙から古紙パルプを製造する脱墨処理工程で発生する脱墨フロスを主原料とし、
    前記主原料を脱水、乾燥、焼成及び粉砕工程を経ることにより得られ、下記組成となるように調整した再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、
    前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
    JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、
    JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、85%〜91%未満であり、
    弾性ロールと金属ロールからなるソフトカレンダーにて平坦化処理する、ことを特徴とする再生粒子内添新聞用紙の製造方法。
    (組成)
    前記再生粒子凝集体は、再生粒子凝集体の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニ
    ウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記
    再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合
    計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
  5. パルプに填料を内添した新聞用紙であって、
    前記填料として古紙から古紙パルプを製造する脱墨処理工程で発生する脱墨フロスを主原料とし、
    前記主原料を脱水、乾燥、焼成及び粉砕工程、シリカ被覆工程を経ることにより得られ、下記組成となるように調整したシリカ被覆再生粒子凝集体が、内添用填料として少なくとも用いられ、
    前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
    JIS P 8124に準拠した坪量が37〜48g/m2であり、
    JIS P 8138に準拠して測定した白紙不透明度が、85%〜91%未満であり、
    用紙表面には、澱粉を主成分とする表面処理剤が設けられている、
    ことを特徴とするシリカ被覆再生粒子を内添した新聞用紙。
    (組成)
    前記シリカ被覆の再生粒子凝集体は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で10〜80:10〜80:5〜29の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
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