しかしながら、特許文献1などの従来技術による軸受装置の場合には、軸部品の外形と軸受部品の軸孔(軸受スリーブの内形)を異なった所望形状に変えることができできず、特にラジアル軸受部やスラスト軸受部に対して軸と軸受部品間の接触面積を軽減して摩擦抵抗を少なくする構造にする場合や、軸と軸受部品間に油又は空気による作動用流体の動圧溝を各種形状で形成する場合に、望ましいラジアル軸受部やスラスト軸受部を採ることが困難であった。
また、特許文献2などの従来技術による軸受装置の場合には、軸部品の外形と軸受部品の軸孔を所望形状に変えることは可能であるが、加工専用の軸部品と製品用の軸部品は別々に造られるので、軸心度や外径寸法精度が微妙に異なり、特に小型で高精密な軸と軸受部品の場合には性能に重大な影響を与え、マスター軸を加工専用工具として繰り返し再使用すると、引き抜き傷その他による面粗度の低下などによって、初期の軸心度や外径寸法精度を維持できなくなる恐れがあり、しかも新たに別の軸部品の製造することになるので、製造コストがアップする。
また、特許文献1,2や先行技術1,2による軸受装置の場合はスラスト軸受部を別に設ける必要があること、先行技術3のように軸部品の端部を用いて有底筒状の軸受部品を造るようにしても、軸受部品の軸孔は軸部品の外形と同形になって全域で接触する構成であるから、スラスト軸受部及びラジアル軸受部における接触面積を減少させて回転時における摩擦抵抗を軽減するためには、軸部品に対して後加工を施す必要があるから製造コストがアップする。
また、起動時や停止時などの過渡期に軸と軸受が接触して摩耗を増大させたり焼き付けが生じ、性能及び耐久寿命を低下させる恐れがあるので、起動時や停止時の性能を安定化させ且つ長期間の高速回転に適合させるためには、起動時や停止時に回転軸を軸心位置で軸支する心出し構造が必要となるが、特に軸受部品を有底筒状に形成した軸回転型で且つ、軸孔に対して軸部品を非接触状態で回転駆動させる流体軸受の場合には、有底筒状をした軸孔の内底部に対して上記心出し構造を加工することが容易でなかった。
そこで本発明では、これら従来技術の課題を解決し得る一対の軸と軸受部品による軸受装置及びその製造方法を提供を目的とするものであって、無潤滑による接触状態で使用する軸受装置及び、流体潤滑による非接触状態で使用する軸受装置を実施対象とし、各種形状による一対の軸と軸受部品による軸受装置を容易且つ安価に造ることを可能にすると共に、起動時の性能を安定化させ且つ長期間の高速回転に適合させた小型で高精密な一対の軸と軸受部品による軸受装置を提供することが可能である。
特に、無潤滑(ドライ)の接触状態で使用する無潤滑軸受装置の場合には、回転時におけるラジアル軸受部やスラスト軸受部に対し、摺動性能や耐摩耗性能などが優れていることを要求されるので、例えば軽量化や量産化を図るために樹脂成形したハウジングの内側面に対し、摺動性及び耐摩耗性に優れた硬質材による軸受スリーブを設けて軸孔を形成した軸受部品としたり、回転時における摩擦抵抗を軽減するために、軸と軸部品の接触面積を減少させた断面又は端面形状に形成し、常に多点接触状態で境界潤滑が行われるようにすることが望ましいが、これらを容易に達成できるようにした。
また、流体潤滑による非接触状態で使用する流体軸受装置の場合には、ラジアル軸受部側に対する動圧発生手段として、軸受部品の軸孔又は軸孔を形成する軸受スリーブの内側面と軸の外側面の間に微少隙間を設けると共に、軸側又は軸受側のいずれかの一方面にヘリングホーン形状やスパイラル形状などによる周方向の動圧溝を設けたり、いずれか一方面が円形で他方面に凹凸形状で形成した軸方向軸溝又は軸方向突起を設けるか、いずれか一方が円形で他方が角丸多角形状や波形などによる非円形の断面形状にし、これら周方向に沿ったくさび状隙間によるくさび効果で動圧を発生させることが望ましいが、これらを容易に達成できるようにした。
また、スラスト軸受部側である無底筒状に形成した軸受部品の他端側の開口部に配備したスラスト板と軸部品の端面又は、有底筒状に形成した軸受部品の底部スラスト面と軸部品の端面に対し、軸側または軸受側のいずれか一方面にヘリングボーン形状などで形成した動圧溝を設けたり、軸側または軸受側のいずれか一方面を凹凸形状で形成し、接触面積の減少で摩擦抵抗を軽減して耐久性を向上させたり、一方面と他方面に形成した凹凸形状を相互に嵌合させ、軸の振れを防止して振動を抑制することが望ましいが、これらを容易に達成できるようにした。
本発明の一対の軸と軸受部品による軸受装置は、一方側に軸孔の反転形状で形成した軸受加工部を設けると共に、他方側には軸孔に対して所望の外形及び外径寸法差によるラジアル軸受隙間を形成する形状の軸受装着部を設けた軸部品と、無底筒状又は有底筒状のハウジングを設けると共に、ハウジングの内側面に軸孔を形成する軸受スリーブを一体に装着した軸受部品を備え、軸受部品は軸部品の軸受加工部をインサート成形した樹脂成形部で形成すると共に、軸受スリーブはインサート成形時に軸受加工部側から転写したメッキ皮膜で形成し、軸受部品の加工後に軸受スリーブから取り外した軸部品の向きを反転し、軸受装着部を軸受スリーブに装着した。(請求項1)
請求項1に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸部品はステンレス鋼などの硬質金属材で形成し、軸受部品の軸受スリーブはニッケルを主材とするメッキ皮膜で形成すると共に、潤滑性材料を分散させた肉薄状をした内側の無電解メッキ層と、肉厚状をした外側の電鋳層による二層にした形態を採ることができる。(請求項2)
請求項1又は2に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸部品は軸受加工部を断面円形状に形成し、軸受装着部は軸受加工部より僅かに小径で断面円形状に形成すると共に、軸受スリーブと軸受装着部間には円環状の一定隙間でラジアル軸受隙間を形成した無潤滑軸受又は真円軸受とした形態を採ることができる。(請求項3)
請求項1又は2に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸部品は軸受加工部を断面円形状に形成し、軸受装着部は軸受加工部より僅かに小径で断面円形状に形成すると共に、軸受装着部の外周面にはヘリングボーンなどによる動圧溝を設け、軸受スリーブと軸受装着部間には円環状の一定隙間でラジアル軸受隙間を形成した動圧溝軸受とした形態を採ることができる。(請求項4)
請求項1又は2に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸部品は軸受加工部を断面円形状に形成し、軸受装着部は軸受加工部より僅かに小径で断面円形状に形成すると共に、軸受加工部の外周に対して周方向の3個所以上に軸方向溝を設けるか、軸受装着部の外周に対して周方向の3個所以上に軸方向突起を設け、軸受スリーブの内側面に対して軸受装着部の外側面を周方向の3個所以上で接触又は非接触状態にし、その他の周面に円弧状の一定隙間でラジアル軸受隙間を形成した無潤滑軸受又はステップ軸受とした形態を採ることができる。(請求項5)
請求項1又は2に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸部品は軸受加工部を断面円形状又は等辺の角丸多角形状に形成し、軸受装着部は軸受加工部より僅かに小径で断面が等辺の角丸多角形状又は円形状に形成すると共に、角丸多角形状の線分に円形状の外面を内接する態様又は、角丸多角形状の頂点に円形状の内面を外接するる態様で、軸受スリーブの内側面に対して軸受装着部の外側面を周方向の3個所以上で接触又は非接触状態にし、線分の外側又は頂点の内側には周方向にくさび形状となる蒲鉾状又は三角状のラジアル軸受隙間を形成した多角軸受とした形態を採ることができる。(請求項6)
請求項1又は2に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸部品は軸受加工部を断面円形状又は等径の多円弧形状に形成し、軸受装着部は軸受加工部より僅かに小径で断面多円弧形状又は円形状に形成すると共に、多円弧形状の頂面に円形状の内面が外接するか、多円弧形状の線分に円形状の外面が内接する態様で、軸受スリーブの内側面に対して軸受装着部の外側面を周方向の3個所以上で接触又は非接触状態にし、線分の外側又は頂面の内側には周方向にくさび形状となる蒲鉾状又は三日月状のラジアル軸受隙間を形成した多円弧軸受とした形態を採ることができる。(請求項7)
請求項1〜7のいずれかに記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸部品は軸受装着部の端面と軸受加工部の端面を平坦面に形成し、軸受部品は有底筒状で軸孔を形成する軸受スリーブの内底面を平坦面にすると共に、軸受装着部の端面にはヘリングボーン又はスパイラル形状などによる動圧溝を設け、動圧発生用のスラスト軸受面にする形態を採ることができる。(請求項8)
請求項1〜7のいずれかに記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸部品は軸受装着部の端面と軸受加工部の端面の一方を平坦面か凹面又は凸面のいずれかで形成すると共に、他方を凹面又は凸面のいずれかで形成し、摩擦軽減用のスラスト隙間を設けたスラスト軸受面にする形態を採ることができる。(請求項9)
請求項9に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置において、軸受装着部の端面と軸受加工部の端面を共に凹面又は凸面で形成し、軸受加工部の端面で軸受スリーブの内底面を凸面又は凹面のいずれかで形成すると共に、軸受スリーブの内底面と軸受装着部の端面に形成した凹凸を嵌合させたスラスト軸受面にする形態を採ることができる。(請求項10)
本発明の一対の軸と軸受部品による軸受装置の製造方法は、一方側に軸孔の反転形状で形成した軸受加工部を設けると共に、他方側には軸孔に対して所望の外形及び寸法差によるラジアル軸受隙間を形成する形状の軸受装着部を設けた軸部品を造り、軸受加工部の外側面にメッキ皮膜を施したマスター軸を用いて、射出成形金型内でインサート成形を行って無底筒状又は有底筒状の樹脂成形部によるハウジングを形成すると共に、樹脂成形部の内側面にメッキ皮膜を転写した軸受スリーブを固着し、軸受加工部の反転形状による軸孔を形成した軸受部品を造り、軸部品と軸受部品を射出成形金型から取り出した後に軸受スリーブから軸部品を取り外し、軸部品の向きを反転して軸受装着部を軸受スリーブによる軸孔に装着して一対の軸と軸受部品による軸受装置にする。(請求項11)
請求項11に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置の製造方法において、軸部品はステンレス鋼などの硬質金属材で形成し、メッキ皮膜は肉薄状をした内側の無電解メッキ層と肉厚状をした外側の電鋳層を二層にし、ニッケル又はニッケル合金で形成すると共に、無電解メッキ層にはポリ四フッ化エチレン(PTFE)などの自己潤滑性をした微粒子又は粉体を分散させた形態を採ることができる。(請求項12)
請求項11又は12に記載した一対の軸と軸受部品による軸受装置の製造方法において、軸部品はNC旋盤などの金属加工機械の主軸の軸線上に設けた貫通孔に長尺材を供給し、数値制御で軸長分の所定寸法で順次送り出しながら基部側をチャッキングし、刃物台に設けた切削工具で軸受加工部と軸受装着部の外形面及び、先端側の端面に対する切削加工を行った後に、切断工具で軸受加工部の後端を切断して切り離す作業を繰り返しながら造る形態を採ることができる。(請求項13)
請求項1による軸受装置では、反転形状を軸受部品の軸孔に適合させた軸部品の軸受加工部と、軸孔に装着して使用する軸部品の軸受装着部を、所望の外形及び外形寸法差に設定することによって、所望のラジアル軸受隙間を形成した接触状態で摺動回転する無潤滑軸受装置及び、非接触状態で流体潤滑によって回転する各種の流体軸受装置に適合させることが可能であって、例えば摺動回転するラジアル軸受面に対して、ミクロンオーダーの微少な軸受隙間を所望に設定したり、回転時における摩擦抵抗を軽減するために、ラジアル軸受面の接触面積を減少させた断面形状に形成し、常に多点接触状態で境界潤滑を行う無潤滑軸受装置を得ることができる。
また、ラジアル軸受部側に対する動圧発生手段として、軸受スリーブと軸受装着部間に円環状の軸受隙間を設けた真円軸受、軸側又は軸受側のいずれかの一方面にヘリングホーン形状やスパイラル形状などによる周方向の動圧溝を設けた動圧溝軸受、いずれか一方面が円形で他方面に凹凸形状で形成した軸方向軸溝又は軸方向突起を設けるたステップ軸受、いずれか一方が円形で他方が角丸多角形状などによる非円形の多角軸受、周方向に沿ったくさび状の軸受隙間を設けた多円弧軸受、などの各種形態による流体軸受装置を容易に得ることができる。
特に、軸孔を加工する軸受加工部と軸孔に装着して使用する軸受装着部を一本の軸部品で形成することにより、高精密な軸心度や外径寸法精度にすることが可能であるから、無潤滑軸受装置及び流体軸受装置における軸受隙間を高精密に保持して高速回転性能を向上させることができると共に、メッキ被膜による摺動性と相俟って耐摩耗性能及び耐久寿命の向上を図ることが可能である。
さらに、一方側に軸受加工部を他方側に軸受装着部を形成した軸部品の構造は、NC旋盤などの金属加工機械などを用いて高精密で大量に製造することが可能であり、樹脂成形部で形成したハウジングの内側面にメッキ皮膜による軸受スリーブを一体に装着した軸受部品の構造は、射出成形金型を用いて高精密で大量に製造することが可能であるから、容易且つ安価に製造することができると共に、特に軸固定型の軸受装置で使用する場合には、軸受部品を軽量化して回転性能を向上することができる。
請求項2による軸受装置では、軸部品はステンレス鋼などの硬質金属材で形成し、軸受部品の軸受スリーブはニッケルを主材とするメッキ皮膜で形成すると共に、潤滑性材料を分散させた肉薄状をした内側の無電解メッキ層と、肉厚状をした外側の電鋳層による二層にした形態を採ることによって、摺動性及び耐摩耗性の向上を図ると共に、樹脂成形部によって軽量化したハウジングをメッキ皮膜で補強し且つ、熱収縮などにって軸孔が変形しないように保形することができる。
請求項3による軸受装置では、軸部品における軸受加工部と軸受装着部との外径寸法差によって、所望の軸受隙間によるラジアル軸受面を形成した無潤滑軸受又は真円軸受にすることができると共に、この軸受隙間は一体に形成した軸部品の高精密な軸心度や外径寸法精度によって、境界潤滑状態による起動時や停止時(過渡期)及び、接触又は非接触による高速の定常回転時には、潤滑性材料を分散させたメッキ被膜による摺動性と相俟って、摩擦抵抗を軽減した焼き付きのない安定した起動性能と高速回転性能及び耐久性能を得ることができる。
請求項4による軸受装置では、請求項3の真円軸受における軸受装着部の外周面に対して、動圧発生手段としてヘリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝を形成した動圧溝軸受であるから、請求項3の真円軸受と同様の効果を奏することに加え、動圧溝に作用する流体潤滑(油又は空気)のポンピングによる動圧発生によって、軸受中心に向かう支持力が軸部品に作用するので、円環状の一定隙間によるラジアル軸受隙間を形成した非接触状態で安定した回転を保持することができる。
請求項5による軸受装置では、軸受側の内周面に設けた軸方向突起又は軸側の外周面に設けた軸方向突起を介して、周方向の3個所以上で接触又は非接触状態にすると共に、その他の周面に円弧状の一定隙間でラジアル軸受隙間を形成することにより、接触状態にした無潤滑軸受の場合は、逃がし面を形成した多点支持構造にして摩擦抵抗を軽減することができ、非接触状態にしたステップ軸受の場合は、逃がし面の円弧状のラジアル軸受隙間が動圧発生手段として作用させることができる。
請求項6による軸受装置では、角丸多角形状の軸受側に円形状の軸側を内接又は、角丸多角形状の軸側に円形状の軸受側を外接させ、周方向の3個所以上で接触又は非接触状態にすると共に、その他の周面には周方向にくさび形状となる蒲鉾状のラジアル軸受隙間を形成することにより、接触状態にした無潤滑軸受の場合は、逃がし面を形成した多点支持構造にして摩擦抵抗を軽減することができ、非接触状態にした多角軸受の場合は、逃がし面の蒲鉾状のラジアル軸受隙間を動圧発生手段として作用させることができる。
請求項7による軸受装置では、多円弧形状の軸側に円形状の軸受側を外接又は、多円弧形状の軸受側に円形状の軸側を内接させ、周方向の3個所以上で接触又は非接触状態にすると共に、その他の周面には周方向にくさび形状となる蒲鉾状又は三日月状のラジアル軸受隙間を形成することにより、接触状態にした無潤滑軸受の場合は、逃がし面を形成した多点支持構造にして摩擦抵抗を軽減することができ、非接触状態にした多円弧軸受の場合は、逃がし面の蒲鉾状又は三日月状のラジアル軸受隙間を動圧発生手段として作用させることができる。
請求項8による軸受装置では、軸部品の軸受装着部の平端面で形成したスラスト軸受面に対して、動圧発生手段としてヘリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝を形成した動圧溝軸受であって、動圧溝に作用する流体潤滑(油又は空気)のポンピングによる動圧発生によって、軸受加工部の端面側で形成した軸受スリーブの底面から浮上させ、流体軸受に適用した際にスラスト軸受面を非接触状態にし、摩擦抵抗のない安定した回転を保持することができる。
請求項9による軸受装置では、軸部品の軸受装着部と軸受部品の軸受スリーブの底面に対し、少なくともいずれか一方面を凹凸形状にして摩擦軽減用のスラスト隙間を設けることによって、無潤滑軸受又は流体軸受に適用した際にスラスト軸受面を点接触状態にし、安定した回転を保持することができる。
請求項10による軸受装置では、請求項9における軸受装置のスラスト軸受面に形成した凹凸を嵌合させることによって、無潤滑軸受に適用した際に又は流体軸受に適用した過渡期に、スラスト軸受面における軸部品の振れを防止することができる。
請求項11による軸受装置の製造方法では、軸部品の一方側に形成した軸受加工部をインサート成形用のマスター軸として、所望形状による無底筒状又は有底筒状の樹脂製ハウジングと、樹脂製ハウジングの内側面に転写したメッキ皮膜による軸受スリーブを容易に造ることができると共に、軸孔となるスラスト軸受部やラジアル軸受部を含む軸受スリーブの内側面を各種形状と外径寸法差で造ることができるので、この軸受加工部に対する軸受装着部の形状と外径寸法を予め所望の軸受構造に適合させておけば良い。
これにより、ラジアル軸受部に対して、軸部品(軸受装着部)と軸受部品(軸受加工部)を共に断面円形状にして接触又は非接触状態にした軸受構造(無潤滑軸受、真円軸受)、軸部品にヘリングボーンやスパイラル形状の動圧溝を設けた軸受構造(動圧溝軸受)、軸部品と軸受部品の一方に軸方向溝又は軸方向突起を設けた軸受構造(無潤滑軸受、ステップ軸受)、軸部品と軸受部品の一方が断面円形状で他方が断面多角形状にした軸受構造(無潤滑軸受、多角軸受)、軸部品と軸受部品の一方が断面円形状で他方が断面多円弧形状にした軸受構造(無潤滑軸受、多円弧軸受)、を容易に造ることができる。
また、軸受部品を有底筒状に形成したスラスト軸受部に対して、軸部品(軸受装着部)の端面と軸受部品(軸受加工部)の内底面を共に平坦面で形成すると共に、軸部品の端面にヘリングボーン又はスパイラル形状などによる動圧溝を設けけた軸受構造、軸部品の端面と軸受部品の内底面の一方を平坦面か凹面又は凸面のいずれかで形成すると共に、他方を凹面又は凸面のいずれかで形成し、摩擦軽減用のスラスト隙間を設けた軸部品の端面と軸受部品の内底面を凹面又は凸面で形成すると共に、当該凹凸面を嵌合させたスラスト軸軸受構造、を容易に造ることができる。
特に、軸孔を加工する軸受加工部と軸孔に装着して使用する軸受装着部を一本の軸部品で形成し、軸部品の一方側(軸受加工部)を軸受部品の加工用工具として利用しているので、高精密な軸心度や外径寸法精度に加工することが可能であると共に、別途に加工用工具を必要としないこと及び、軸受部品の内側面を切削などによらずに容易に加工できること、樹脂成形部で形成したハウジングの内側面にメッキ皮膜による軸受スリーブを一体に装着した軸受部品の構造は、射出成形金型を用いて高精密で大量に製造することが可能であることなどによって、製造コストの低減を図ることができる。
請求項12による一対の軸と軸受部品による軸受装置の製造方法では、樹脂成形部に対するメッキ皮膜の転写を容易にすると共に、転写したメッキ皮膜の外側層である電鋳層が樹脂成形部の熱収縮による軸孔の変形を防止するように保形することができ、メッキ皮膜の内側層である無電解メッキ層は自己潤滑性によって、軸部品の引き抜き及び装着を容易にすることができる。
請求項13による一対の軸と軸受部品による軸受装置の製造方法では、NC旋盤などの金属加工機械(例えば、WO2002/034439再公表特許公報などを参照)を用いて長尺の軸素材を繰り出しながら製造することができるので、多数の軸部品を能率良く容易且つ安価に造ることができる。
本発明の一対の軸と軸受部品による軸受装置及びその製造方法について、本発明を適用した好適な実施形態を示す添付図面に基づいて詳細に説明すると、図1で示すように、予め所定寸法の軸長Lに形成するか、長尺材を切断して所定寸法の軸長Lに形成した硬質金属製で棒状の軸素材1に対し、必要な加工を施して図2で示すように、境界線3の一方側に軸受加工部2Aを他方側に軸受装着部2Bを設けた軸部品2を造る。(軸部品加工工程)
軸部品2は、図示の実施形態では軸長Lの略半分前後の長さ(1/2L±α)を境界線3として、軸受加工部2Aには端面の外周縁部に面取りを施すと共に、軸受装着部2Bには円弧状球面による凸状端面4の端面加工が施され、また軸受装着部2Bは軸受加工部2Aの外径に対して、所望のラジアル軸受隙間に適合する外径寸法差を確保できるように、軸受加工部2Aより僅か小径(5〜10μ程度で最大でも20μ以下)にし、境界線3に段差tが設けられている。
軸素材1は、例えばステンレス鋼(SUS420Jなど)やアルミニウム合金(AL-Mgなど)の硬質金属材による円柱材を用い、NC旋盤などの金属加工機械の主軸の軸線上に設けた貫通孔に長尺材を供給し、数値制御で軸長L分の所定寸法で順次送り出しながら基部側をチャッキングし、刃物台に設けた切削工具で軸受装着部2Bの外周を切削して段差3aを設けると共に、端面を円弧状球面をした凸状端面4に加工した後に、軸受加工部2Aの端面は突っ切りバイトなどで切断しながら面取りを行って切り離し、これを繰り返しながら長尺材から多数の軸部品2を能率良く造ることができる。
軸部品2には、図3で示すように、非メッキ部にする軸受装着部2Bに対してマスキング処理5を施した後に、メッキ槽に浸漬させて軸受加工部2Aにメッキ皮膜6を設けるが、メッキ皮膜6は肉薄状をした内側の無電解メッキ層6Aと、肉厚状をした外側の電鋳層6Bによる二層のメッキ皮膜6とし、無電解メッキ層6Aには潤滑性材料を分散させると共に、必要に応じて導電性を備えた微粒子を分散状に析出させ、その後に軸部品2の軸受装着部2Bからマスキング処理5を除去してマスター軸7を造る。(マスター軸加工工程)
メッキ皮膜6は、無電解メッキ層6Aを例えばニッケル又はニッケルを主成分とした合金に、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)などのフッ素樹脂や窒化ボロンなどの自己潤滑性の微粒子又は粉体を分散状に析出させ、また必要に応じてカーボンブラックやカーボンナノチューブなどの導電性微粒子を分散状に析出させ、例えば直径4mm(ψ4)のマスター軸2に対して、無電解メッキ層6Aは2.5〜5μ程度(最大でも10μ以下)にし、電鋳層6Bは100〜200μ程度(最小で50μ以上で最大で500μ以下)に設定することができる。
マスター軸7は、金型分割面P.Lの両側に対峙した上型と下型を備えた射出成形金型(図示を省略)に対し、コアロッドに代えてキャビティ内にインサートして成形樹脂材を注入すると、図4で示すように、軸部品2の軸受加工部2Aに樹脂成形部8を形成した射出成形品9となり、凸状端面4を含む外側面に施したメッキ皮膜6の電鋳層6Bと一体に樹脂成形部8が形成されるが、成形樹脂材には機械的強度や寸法安定性などに優れている例えば液晶ポリマー(LCP)やポリフェニレンサルファイド(PPS)或いはポリサルフォン(PSF)などによる高機能樹脂材の使用が可能である。(樹脂成形・被膜転写工程)
射出成形品9は、成形樹脂材が硬化して樹脂成形部8が熱収縮すると、メッキ皮膜6の電鋳層6Bは樹脂成形部8の内側面に反転形状を転写されると共に、メッキ皮膜6の無電解メッキ層6Aは軸部品2の軸受加工部2Aから分離可能な状態になるので、図5で示すように、メッキ皮膜6と分離させた軸部品2を引き抜くと、樹脂成形部8の内面側にメッキ皮膜6を一体化した軸受部品10が残余されるが、その際に樹脂成形部8の開口側端面にリング状の係止部材11を介在させると、引き抜きを容易且つ確実に行うことができる。(軸分離工程)
また、引き抜いた軸部品2は逆向き状態で凸状端面4を先端にし、図6で示すように軸受装着部2Bを軸受部品10内に挿入すると(軸装着工程)、図7で示すように一対の軸部品2と軸受部品10が構成され(軸・軸受完成工程)、軸受部品10は合成樹脂部で有底の筒状に形成した樹脂成形部8によってハウジングを形成すると共に、ハウジングの内側面には設けた無電解メッキ層6Aと電鋳層6Bの内外二層によるメッキ被膜6が、軸受スリーブとして一体に固着されている。
この軸部品2と軸受部品10は、軸受部品10の内側面に軸受スリーブとして設けたメッキ被膜6に対し、軸受装着部2Bの外側面が摺接する状態で軸部品2が装着されるが、特にメッキ被膜6の内側に設けた無電解メッキ層6Aには、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)などの潤滑性材料が分散されているので、長期の高速回転にも耐えられると共に、円弧状球面で形成した軸部品2の凸状端面4は、平坦面で形成した軸受部品10の底面との接触面積を減少させているので、回転時における摩擦抵抗を軽減して起動性能の安定化を図り且つ長時間の高速回転に適合させることができる。
次に、図8は軸部品2の軸受加工部2Aと軸受装着部2Bの外径寸法関係及び、段差双方の境界線3の関係を示す要部拡大図であって、(a)は前記した実施形態の場合を示が、境界線3aは軸受加工部2Aと軸受装着部2Bの長さを等しくした軸部品2の全長を2分する位置に設定し、境界線3aが軸受部品10の開口縁部と一致するようにしていると共に、軸受加工部2Aより小径にした軸受装着部2Bの外径(誇張して図示している)は、軸部品2の回転に支障がない範囲内で段差t分だけ僅かに小径にしている。
また、図8(b)は軸部品2の全長に対して軸受装着部2Bを軸受加工部2Aより短く形成し、境界線3bが軸受部品10の開口縁部より−α分だけ奥側に位置するように設定した場合を示すが、この場合には開口縁部より奥側に挿入した軸受加工部2Aを介して、軸受部品10が軸部品2を回転可能に支持するようにし、軸部品2の軸受装着部2Bは軸受部品10の内径との間に、段差t以上の十分な空隙G(t+β)を確保する形態を採っている。
さらに、図8(c)は軸部品2の全長に対して軸受装着部2Bを軸受加工部2Aより長く形成し、境界線3cが軸受部品10の開口縁部より+α分だけ手前側に位置するように設定した場合を示すが、境界線3cと開口縁部の間にα分だけ間隙があるので、間隙に対して摺動性部材による環状のスペーサ12を装着し、段差tの部分で軸部品2を回転可能に支持する形態を採ることが可能であり、スペーサ12として例えばステンレス素材に自己潤滑性微粒子を析出させた無電解ニッケルメッキなどを施して使用する。
スペーサ12は、図示の実施形態の場合にはメッキ皮膜6に設けたテーパ面に摺接するテーパ面付きのものを使用するようにしており、図8(b)の場合と同様に軸部品2の軸受装着部2Bは軸受部品10の内径との間に、段差t以上の十分な空隙G(t+β)を確保する形態を採り、図8の各種変形例を含む凸状端面4と協働して、回転時における外側面の摩擦抵抗を一段と軽減して高速回転に適合させることができる。
軸受部品10の開口縁部に対してメッキ皮膜6にテーパ面を形成する方法としては、例えば図3のように軸部品2の軸受装着部2Bにメッキ皮膜6を施す際に、マスキング処理5を施した軸受加工部2Aとの境界線3の近傍外周にメッキの膨出部を造り、図4のように樹脂成形部8を射出成形する際に、射出成形金型内にメッキ皮膜6の膨出部を端面側から加圧する加圧部材を設け、この加圧部材にテーパ面を形成して加圧時に膨出部をテーパ状に変形させることで加工が可能である。
また、図8(c)で図示したスペーサ12に代えて厚みがα分に相当する環状の平板スペーサを使用する形態を採ったり、この平板スペーサをフランジ部として空隙Gに相当する厚みの筒状体を一体にしたフランジ付きスペーサを使用する形態を採ることも可能であると共に、図8(a)で図示した実施形態におけるメッキ皮膜6の開口縁部に対して、射出成形時にテーパ面の加工を施し、軸受装着部2Bの挿入を案内して容易に装着できるようにする形態を採ることも可能である。
なお、以上の実施例では軸受部品10を有底筒状に形成し、軸受スリーブで形成した軸孔の底面と軸受装着部の端面との間でスラスト軸受面を形成する形態を採っているが、軸受部品10が両端側を開口させた無底筒状に形成する形態を採ることも可能であり、この場合には底面側となる他方側の開口に別部材で形成したスラスト板を配備し、軸受装着部の端面とスラスト板との間でスラスト軸受面を形成する形態で使用する。
以上の実施例では、軸部品2と軸受部品10を断面円形状にし、軸部品2の全周面又は軸方向の一部外周面が軸受部品10の内周面と摺動回転するように、所望のラジアル軸受隙間を設けた無潤滑軸受の形態を採っているが、ラジアル軸受面を先の実施例の場合と同様の製造方法によって、例えば図9〜13で示すような接触または非接触による各種の形状にし、無潤滑軸受又は流体軸受に適合させることができるが、以下の説明では樹脂成形部によるハウジングの図示を省略する。
図9は、軸部品側と軸受部品側を共に断面円形状に形成した実施形態であって、図9(a)は動圧溝がない真円軸受構造に適合させたものであって、この真円軸受構造ではスラスト軸受面を非接触状態にして回転させるために、接触状態で摺動回転する無潤滑軸受構造の場合より軸受隙間が大きく設定する必要があるので、軸受加工部20Aと軸受装着部20Bとの外径寸法差を大きく設定して軸部品20が造られている。
これにより、軸受加工部20Aの外形によって造られた軸受スリーブ21の軸孔22と軸受装着部20Bの間には、円環状で予め外径寸法差によって設定された一定隙間でラジアル軸受隙間23が形成されるが、このラジアル軸受隙間23は軸孔22に対する軸受装着部20Bの偏心によって形状がくさび状に変化し、動圧溝がなくてもスラスト軸受面が流体潤滑して非接触状態で回転する真円軸受構造の形態を採ることができ、この真円軸受構造では外径寸法差を任意に設定して所望の軸受隙間を容易に形成することができる。
図9(b)は、動圧溝がある動圧溝軸受構造に適合させたものであって、軸部品24の軸受加工部20Aの外形によって造られた軸受スリーブ25の軸孔26と軸受装着部24Bの間には、円環状で予め外径寸法差によって設定された一定隙間でラジアル軸受隙間27が形成されるが、このラジアル軸受隙間27は外径寸法差によって真円軸受構造の場合より大きく設定して非接触状態のスラスト軸受面を形成し、軸受装着部24Bの外周面には動圧発生手段として、ヘリングボーン形状やスパイラル形状などの動圧溝28を形成する形態を採り、動圧溝28に作用する流体潤滑(油又は空気)のポンピングによる動圧発生によって、軸受中心に向かう支持力が軸部品に作用させ、非接触状態で安定した回転を保持することができる。
図10は、図9の場合と同様に軸部品側と軸受部品側を共に断面円形状に形成した実施形態であるが、特に軸部品側の内周面又は軸受部品側の外周面に周方向の3個所以上に軸方向突起を設け、この軸方向突起に対して断面円形状をした軸部品の外周面又は断面円形状をした軸受部品の内周面を、接触状態で用いる無潤滑軸受構造又は非接触状態で用いるステップ軸受構造に適用させたものである。
図10(a)では、軸部品29は軸受加工部29Aと軸受装着部29Bを断面円形状に形成し、軸受装着部29Bの外周面には周方向の3個所以上に軸方向突起30を設け、軸受加工部29Aの外形によって造られた軸受スリーブ31の軸孔32に軸受装着部29Bを装着すると、予め設定された外径寸法差によって軸受スリーブ31の内周面と軸受装着部29Bとの間は、軸方向突起30が接触状態又は近接した非接触状態になると共に、その他の周面には円弧状の一定隙間でラジアル軸受隙間33が形成される。
図10(b)では、軸部品34は軸受加工部34Aと軸受装着部34Bを断面円形状に形成し、軸受加工部34Aの外周面には周方向の3個所以上に軸方向凹溝35を設け、軸受加工部34Aの外形によって造った軸受スリーブ36の内周面に軸方向突起37を形成し、軸孔38に軸受装着部34Bを装着すると、予め設定された外径寸法差によって軸受スリーブ36の内周面と軸受装着部34Bとの間は、軸方向突起37が接触状態又は近接した非接触状態になると共に、その他の周面には円弧状の一定隙間でラジアル軸受隙間39が形成される。
これにより、図10のラジアル軸受構造では軸方向突起30と軸受スリーブ31の内周面の間又は、軸方向突起37と軸受装着部34Bの外周面の間を、接触状態にした場合には、軸方向突起30,37による多点支持状態で摺動回転し且つ、ラジアル軸受隙間33,39を逃がし面として摩擦抵抗を軽減することができる無潤滑軸受構造に適用することができ、軸方向突起30,37を近接した非接触状態にした場合には、ラジアル軸受隙間33,39を動圧発生手段としたステップ軸受構造に適用することができる。
図11及び図12は、軸部品側と軸受部品側のいずれか一方が断面円形状で、他方が等辺の多角形状による断面非円形状に形成した実施形態であって、特に図11では円形状の軸部品に対して角丸多角形状の軸受部品を外接させた実施形態を示し、図12では円形状の軸受部品に対して角丸多角形状の軸部品を内接させた実施形態を示すが、外接又は内接させた軸部品側と軸受部品側のラジアル軸受面に対する接触状態を、内外径寸法差の設定によって接触または非接触状態にし、摺動回転する無潤滑軸受構造又は流体で作動する多角軸受構造に適用させたものである。
図11(a)の実施形態では、軸受加工部40Aの外形が断面角丸三角形状で軸受装着部40Bの外形が断面円形状に形成した軸部品40を用い、軸受加工部40Aの外形によって造った軸受スリーブ41の軸孔42に軸受装着部40Bを装着すると、断面円形状に形成した軸受装着部40Bの外周面に断面角丸三角形状で形成した軸受スリーブ41の各線分が外接し、予め設定された外径寸法差によって軸受スリーブ41と軸受装着部40Bとの間は、各線分の中間部で接触状態又は近接した非接触状態になると共に、頂点に近い各線分の両側では三角状のラジアル軸受隙間43が形成される。
図11(b)の実施形態では、軸受加工部44Aの外形が断面角丸五角形状で軸受装着部44Bの外形が断面円形状に形成した軸部品44を用い、軸受加工部44Aの外形によって造った軸受スリーブ45の軸孔46に軸受装着部44Bを装着すると、断面円形状に形成した軸受スリーブ45の外周面に断面角丸五角形状で形成した軸受スリーブ45の各線分が外接し、予め設定された外径寸法差によって軸受スリーブ45と軸受装着部44Bとの間は、各線分の中間部で接触状態又は近接した非接触状態になると共に、頂点に近い各線分の両側では三角状のラジアル軸受隙間47が形成される。
これにより、図11のラジアル軸受構造では、円形状の軸受装着部40B,44Bの外周面に角丸多角形状の軸受スリーブ41,45を外接させ、周方向の3個所以上で角丸多角形状の各線分に対して接触又は非接触状態にすると共に、その他の周面には周方向にくさび形状となる三角状のラジアル軸受隙間43,47を形成することにより、接触状態にした無潤滑軸受の場合は、逃がし面を形成した多点支持構造にして摩擦抵抗を軽減することができ、非接触状態にした多角軸受の場合は、逃がし面の三角状のラジアル軸受隙間43,47を動圧発生手段として作用させることができる。
図12(a)の実施形態では、軸受加工部48Aの外形が断面円形状で軸受装着部40Bの外形が断面角丸三角形状に形成した軸部品48を用い、軸受加工部48Aの外形によって造った軸受スリーブ49の軸孔50に軸受装着部48Bを装着すると、断面円形状に形成した軸受スリーブ49の内周面に断面角丸三角形状で形成した軸受装着部48Bの各頂点が内接し、予め設定された外径寸法差によって軸受スリーブ49と軸受装着部48Bとの間は、各頂点で接触状態又は近接した非接触状態になると共に、各頂点を結ぶ各線分の間には蒲鉾状のラジアル軸受隙間51が形成される。
図12(b)の実施形態では、軸受加工部52Aの外形が断面円形状で軸受装着部52Bの外形が断面角丸五角形状に形成した軸部品52を用い、軸受加工部52Aの外形によって造った軸受スリーブ53の軸孔54に軸受装着部52Bを装着すると、断面円形状に形成した軸受スリーブ53の内周面に断面角丸五角形状で形成した軸受装着部52Bの各頂点が内接し、予め設定された外径寸法差によって軸受スリーブ53と軸受装着部52Bとの間は、各頂点で接触状態又は近接した非接触状態になると共に、各頂点を結ぶ各線分の間には蒲鉾状のラジアル軸受隙間55が形成される。
これにより、図12のラジアル軸受構造では、円形状の軸受スリーブ49,53の内周面に角丸多角形状の軸受装着部48B,52Bを内接させ、周方向の3個所以上で角丸多角形状の各頂点に対して接触又は非接触状態にすると共に、その他の周面には周方向にくさび形状となる蒲鉾状のラジアル軸受隙間43,47を形成することにより、接触状態にした無潤滑軸受の場合は、逃がし面を形成した多点支持構造にして摩擦抵抗を軽減することができ、非接触状態にした多角軸受の場合は、逃がし面の三角状のラジアル軸受隙間51,55を動圧発生手段として作用させることができる。
図13は、軸部品側と軸受部品側のいずれか一方が断面円形状で、他方が等辺の多円弧形状による断面非円形状に形成した実施形態であって、特に図13(a)では円形状の軸受部品に対して等辺の多円弧形状による軸部品を内接させた実施形態を示し、図13(b)では円形状の軸部品に対して等辺の多円弧形状による軸受部品を外接させた実施形態を示すが、内接又は外接させた軸部品側と軸受部品側のラジアル軸受面に対する接触状態を、内外径寸法差の設定によって接触または非接触状態にし、摺動回転する無潤滑軸受構造又は流体で作動する多円弧軸受構造に適用させたものである。
図13(a)の実施形態では、軸受加工部56Aの外形が断面円形状で軸受装着部56Bの外形が断面多円弧形状に形成した軸部品56を用い、軸受加工部56Aの外形によって造った軸受スリーブ57の軸孔58に軸受装着部56Bを装着すると、断面円形状に形成した軸受スリーブ57の内周面に断面多円弧形状で形成した軸受装着部56Bの各頂面が内接し、予め設定された外径寸法差によって軸受スリーブ57と軸受装着部56Bとの間は、各頂面で接触状態又は近接した非接触状態になると共に、各頂面を結ぶ各線分の間には蒲鉾状のラジアル軸受隙間59が形成される。
図13(b)の実施形態では、軸受加工部60Aの外形が断面多円弧形状で軸受装着部56Bの外形が断面円形状に形成した軸部品60を用い、軸受加工部60Aの外形によって造った軸受スリーブ61の軸孔61に軸受装着部60Bを装着すると、断面円形状に形成した軸受装着部60Bの外周面に断面多円弧形状で形成した軸受スリーブ61の各線分が外接し、予め設定された外径寸法差によって軸受スリーブ61と軸受装着部60Bとの間は、各線分の中間部で接触状態又は近接した非接触状態になると共に、各頂面の内側との間には三日月状のラジアル軸受隙間63が形成される。
これにより、図13のラジアル軸受構造では、円形状の軸受スリーブ57の内周面に多円弧形状の軸受装着部56Bを内接させるか、円形状の軸受装着部60Bの外周面に多円弧形状の軸受スリーブ61を外接させ、周方向の3個所以上で多円弧形状の各頂面又は角線分に対して接触又は非接触状態にすると共に、その他の周面には周方向にくさび形状となる蒲鉾状又は三日月状のラジアル軸受隙間59,63を形成することにより、接触状態にした無潤滑軸受の場合は、逃がし面を形成した多点支持構造にして摩擦抵抗を軽減することができ、非接触状態にした多円弧軸受の場合は、逃がし面の蒲鉾状又は三日月状のラジアル軸受隙間59,63を動圧発生手段として作用させることができる。
次に、軸部品の端部と有底筒状の軸受部品の底部間に形成した各種のスラスト軸受構造について、図14〜16で説明すると、図14は軸部品における軸受装着部の端部を平坦面で形成した実施形態を示し、図15は軸部品における軸受装着部の端部を凹面で形成した実施形態を示し、図16は軸部品における軸受装着部の端部を凸面で形成した実施形態を示すが、ラジアル軸受面は上記した図9〜13による各種形状と組み合わせて使用するので、ラジアル軸受面についての図示及び説明は省略する。
図14のスラスト軸受構造では、図14(a)のように軸部品64の軸受加工部64Aと軸受装着部64Bの端面を共に平坦面で形成し、軸受加工部64Aの端面側で形成した軸受スリーブ65の平坦面による内底面と、軸孔66内に装着した軸受装着部64Bの端面が全面で接触する形態や、軸受装着部64Bの端面に動圧発生手段としてヘリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝(図示を省略)を形成した形態を採ることができる。
また、図14(b)のように軸部品67の軸受加工部67Aには端面に凹面部68を設け、軸受加工部67Aの端面側で造った軸受スリーブ69の内底面に凸面部70を形成し、軸孔71内に装着した軸受装着部67Bの平坦な端面を凸面部70と局部的に接触させると共に、凸面部70の外周には逃げ面となる円環状のスラスト軸受隙間72を設け、接触面積の減少によって摩擦抵抗を軽減する形態を採ることができる。
さらに、図14(c)のように軸部品73の軸受加工部73Aには端面に凸面部74を設け、軸受加工部73Aの端面側で造った軸受スリーブ75の内底面に凹面部76を形成し、軸孔77内に装着した軸受装着部73Bの平坦な端面を凹面部76を含む軸受スリーブ75の内底面と局部的に接触させ、凹面部76で形成された半球状のスラスト軸受隙間による逃げ面で接触面積を減少し、摩擦抵抗を軽減する形態を採ることができる。
図15のスラスト軸受構造では、図15(a)のように軸部品78は軸受加工部78Aの端面が平坦で軸受装着部78Bの端面に凹面部79を設け、軸受加工部78Aの端面側で造った軸受スリーブ80の内底面を平坦面に形成し、軸孔81内に装着した軸受装着部78Bは凹面部79を逃げ面として、スラスト軸受隙間となる凹面部79を除く円環状の外周面を局部的に接触させ、接触面積の減少によって摩擦抵抗を軽減する形態を採ることができる。
また、図15(b)のように軸部品82の軸受加工部82Aには端面に凹面部83を設けると共に、軸受装着部82Bの端面には凹面部83より溝の浅い凹面部84を設け、軸受加工部82Aの端面側で造った軸受スリーブ85の内底面に凸面部86を形成し、軸孔87内に装着した軸受装着部82Bの凹面部84を凸面部86と嵌合して局部的に接触させ、凸面部86の外周には逃げ面となる円環状のスラスト軸受隙間88を設け、接触面積の減少によって摩擦抵抗を軽減し且つ、凹面部84と凸面部86との嵌合による係止で軸部品82の振れを防止する形態を採ることができる。
さらに、図15(c)のように軸部品89の軸受加工部89Aには端面に凸面部90を設けると共に、軸受装着部89Bの端面には凹面部91を設け、軸受加工部89Aの端面側で造った軸受スリーブ92の内底面に凹面部93を形成し、軸孔94内に装着した軸受装着部89Bの凹面部91を含む端面を、凹面部93を含む軸受スリーブ92の内底面と局部的に接触させ、凹面部91と凹面部93で形成された球状のスラスト軸受隙間95による逃げ面で接触面積を減少し、摩擦抵抗を軽減する形態を採ることができる。
図16のスラスト軸受構造では、図16(a)のように軸部品96は軸受加工部96Aの端面が平坦で軸受装着部96Bの端面に半円弧状の凸面部97を設け、軸受加工部96Aの端面側で造った軸受スリーブ98の内底面を平坦面に形成し、軸孔99内に装着した軸受装着部96Bに対して凸面部97の外周に逃げ面となるスラスト軸受隙間100を形成し、凸面部97の先端を軸受スリーブ98の内底面と局部的に接触させ、接触面積の減少によって摩擦抵抗を軽減する形態を採ることができる。
また、図16(b)のように軸部品101の軸受加工部101Aには端面に凹面部102を設けると共に、軸受装着部101Bの端面には凸面部103を設け、軸受加工部101Aの端面側で造った軸受スリーブ104の内底面に凸面部105を形成し、軸孔106内に装着した軸受装着部101Bの凸面部103を凸面部105と局部的に接触させ、凸面部103,105の外周には逃げ面となる円環状のスラスト軸受隙間107を設け、接触面積の減少によって摩擦抵抗を軽減する形態を採ることができる。
さらに、図16(c)のように軸部品108の軸受加工部108Aには端面に凸面部109を設けると共に、軸受装着部108Bの端面には凸面部110を設け、軸受加工部108Aの端面側で造った軸受スリーブ111の内底面に凹面部112を形成し、軸孔113内に装着した軸受装着部108Bは凸面部110の先端側を凹面部112の開口縁部と局部的に嵌合させ、凸面部110の外周には逃げ面となる円環状のスラスト軸受隙間114を設け、接触面積の減少によって摩擦抵抗を軽減し且つ、凹面部112と凸面部109との嵌合による係止で軸部品108の振れを防止する形態を採ることができる。