JP2007186787A - 蒸着坩堝並びにこれを備えた薄膜形成装置、及び表示装置の製造方法 - Google Patents

蒸着坩堝並びにこれを備えた薄膜形成装置、及び表示装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
簡単な構成で安定した蒸着を継続することができ、蒸着終了後のメンテナンスが容易に実施できる坩堝構造、及び蒸着方法を提供する。
【解決手段】
本発明による蒸着坩堝は、材料を充填する部分並びに当該材料の蒸発による蒸気圧を制御するオリフィス板で形成された蒸発室と、前記オリフィス板と蒸発された前記材料を蒸着坩堝の外側へ吐出する吐出板との間の空間に形成される圧力制御室とを備える。また、前記吐出板上に前記圧力制御室の外側に突き出る突起の上端に前記第2開口部を形成し、この突起部の側面にヒータを対向させ、且つこのヒータの上部で当該第2開口部よりも低い位置に断熱機構を設けてもよい。更に、前記蒸着坩堝には、前記圧力制御室の温度を、前記蒸発室の温度より高く保つように、互いに独立して温度設定が可能な蒸発室用ヒータと圧力制御室用ヒータとを設けた。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機材料を真空蒸着する工程を含む表示装置等の電子装置の製造に係り、これに好適な蒸着坩堝及びこれを用いた薄膜形成装置(有機薄膜形成装置)に関する。
有機材料の薄膜形成技術には、各種方法が提案されているが、有機材料に特有なプロセス上の制約があり、安定的に蒸着するのが困難な材料も見受けられる。近年、この有機材料の蒸着技術を用いて製造したパネルによって画像を表示するいわゆる有機ELパネルの開発が行われてきている。以下にその概要を記す。
有機ELパネル(有機エレクトロルミネッセンスパネル,Organic Electroluminescent Panel)は、電流駆動される有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を2次元に配置して画像を表示するものである。有機EL素子は、通常、ガラス板等の透明基板上に正孔輸送層、正孔注入層、発光層、電子注入層、電子輸送層などの有機材料膜を順次積層して形成された積層構造を有し、この積層構造を挟持して形成された一対の電極により当該積層方向に電流が流される。当該一対の電極の少なくとも一方は透明な(可視光を通し易い)電極で構成される。より具体的には、透明基板上に画素毎に形成された第1電極(通常は陽極)の上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送注入層、電子注入層を積層し、電子注入層(上記積層構造の最上層)の上を第2電極(通常は陰極)で覆って、当該第1電極と第2電極の間に電流を流す。これにより当該積層構造(発光層)に注入されたキャリア(電子と正孔)が再結合し、光が発せられる。この発光輝度は上記積層構造に流れる電流密度で制御されるため、有機EL素子は容量性の表示素子とも見なされ、ダイオードとして表示されることもある。このような有機EL素子(以下、単に素子とも称する)が基板やフィルム等の基材の主面内に2次元のパターンをなすように配置されて、表示装置すなわち有機ELパネルは構成される。
この有機ELパネルに駆動回路等の機能部品を組み合わせて画像表示装置が構成される。これらの機能部品は、有機ELパネルの基材に直接形成されることもある。有機ELパネルには、複数の第1電極と複数の第2電極を交差させて各交差部に画素を形成するパッシブ・マトリクス型と、画素毎に薄膜トランジスタ等のアクティブ素子を設け、このアクティブ素子で駆動される第1電極を持つアクティブ・マトリクス型がある。昨今の有機ELパネルでは、高解像度や高速表示が可能なアクティブ・マトリクス型が主流となっている。以下ではアクティブ・マトリクス型の有機ELパネルを例として説明する。
透明基板上に形成される上記積層構造をなす有機材料層の各々は、真空チャンバ内に設置された蒸着坩堝内の有機材料を材料の蒸発温度付近まで加熱して蒸発させ、これを当該真空チャンバ内に導入された透明基板の主面上に蒸着させて、形成される。詳細には、真空チャンバ内に導入された透明基板の主面上に、当該主面における画素配置に対応したパターンで開口された所謂メタルマスクと呼ばれる金属材料で構成したマスクが配置される。前記蒸発した有機材料は、このマスクの開口を通して、当該透明基板の主面における指定された領域(例えば、個々の画素に対応する)に当該有機材料の薄膜として蒸着される。なお、前記した発光層を蒸着する場合には、主材料となる有機材料と添加材料(例えば、他の有機材料)とを、基板主面の前記指定された領域に同時に蒸着することもある。従来、有機ELパネル形成に用いられていた蒸着坩堝は、例えば特許文献1に記載され、以下に記すように構成されている。
当該蒸着坩堝は、有機材料を収容する蒸発用容器を備え、その蒸発用容器に収容された有機蒸発材料を蒸発させて、真空槽内に置かれた基板上に有機化合物の蒸着膜を形成する。この蒸発用容器には、その内部で蒸発された有機材料が真空槽内へ蒸散する量を規制するオリフィス部が設けられる。さらに、前記蒸発坩堝は、これで蒸発される有機材料を収納する底部を備えた中空の筒形状の坩堝本体(Hollow Tubular Pot Body)と前記坩堝本体より径の小さい底部を備えた中空の筒形状の蓋部とを有し、前記蓋部の底部にはオリフィス(開口)が設けられる。この蓋部を坩堝本体内に挿入して、双方の底部の間に蒸発室を形成する構造も提案されている。
また、特許文献2には、有機ELパネルの画素に対応した複数の孔が主面に形成された金属薄板を備えた蒸着マスクで基板の主面を覆い、基板の所定位置のみに有機材料を成膜する蒸着プロセス(マスク蒸着(Mask Vapor Deposition))が記載されている。この蒸着プロセスでは、高温の坩堝からの輻射熱の影響により基板や蒸着マスクが熱膨張し、有機材料を成膜すべき基板の位置に対してマスクの孔がずれ、有機ELパネル製造における精度劣化を引き起こす。この問題を防ぐために、蒸発材料を収納し、かつ蒸発させる坩堝の上部に基板に向けて突出た突出部を設け、この突出部に蒸発した当該材料を通過させる孔を形成し、さらに当該突出部の周囲でかつ当該坩堝外部に開いた当該孔の開口部(蒸発材料の射出端)と同じ若しくはこれより低い位置に放射阻止体を設けることが、特許文献2で提案されている。放射阻止体は、坩堝の基板側の上面と間隔をおいて設けられ、坩堝と熱的に絶縁される。
特開平10−195639号公報 特開2004−214185号公報
図2(a)は、上述した有機ELパネル等の製造に用いられる薄膜形成装置(有機薄膜形成装置)100の一例を模式的に示す。薄膜形成装置100は、図示されない排気装置でその内部が大気圧より低い圧力(以下、便宜的に「真空」と記す)に保たれた真空槽2、有機材料を蒸発させ且つこれを真空槽2内に蒸散させる蒸着坩堝1a,1b、真空槽2内に不活性ガスを導入するパージ系(Purge System)13を備える。真空槽2内には、被加工物たる基板(基材)103が搭載される台101が設けられ、当該台101には基板103を加熱する加熱装置102が組み込まれる。2つの蒸着坩堝1a,1bは、これに蓄えられる有機材料の種類が異なる以外、概ね同じ構造を有する。有機材料の薄膜が形成される基板103の主面、換言すれば台101の被加工物を搭載する面は、シャッタ11を介して2つの蒸着坩堝1a,1b(これに設けられた後述のオリフィス32a)と向き合う。上述したメタルマスクは、基板103の主面とシャッタ11との間に配置される。シャッタ11と2つの蒸着坩堝1a,1bの夫々の間に設けられたヒータ5を備えた補助シャッタ(Auxiliary Shutter)50a,50bは、シャッタ11とともに基板103の主面への有機材料の蒸着を制御する。蒸着坩堝1aからの有機材料の蒸散量は膜厚モニタ6aで、蒸着坩堝1bからの有機材料の蒸散量は膜厚モニタ6bで、夫々測定される。真空槽2内に蒸散した有機材料の余剰分は、冷却された隔壁(Shroud)12,17に吸着される。蒸着坩堝1a,1bは、真空槽2に設けられた導入部11a,11bに夫々装着され、夫々のオリフィスからの有機材料の蒸散方向は仕切板15により調整される。
図2(b)は、上述の蒸着坩堝1a,1bとして、従来用いられてきた有機材料蒸着用容器33、即ち坩堝1の構成を示す断面図である。坩堝1は、これにより蒸発される有機材料36を収納する底部31Aを備えた中空の筒形状の坩堝本体31と、この坩堝本体31より径の小さい底部32Aを備えた中空の筒形状の蓋部32とを有し、前記蓋部の底部にはオリフィス32aが設けられる。一端に底部31A,32Aが夫々形成される筒状の坩堝本体31と蓋部32の他端には、フランジ(Flange)31B,32Bが夫々形成される。前記蓋部32は前記坩堝本体31内に前記蓋部32に挿入され、坩堝本体31のフランジ部31Bの上に蓋部32のフランジ部32Bが重ねられて固着される。これにより、坩堝本体31の底部31Aに蓄えられた有機材料36と蓋部32の底部32Aとの間に蒸発室33Aが形成される。蓋部32が挿入された坩堝本体31は中空の筒状に形成された収納容器30に挿入され、当該収納容器30の外周に設けられたヒータ34により加熱される。ヒータ34の出力は、収納容器30に埋設された熱電対35による測定温度に応じて調節される。
坩堝1により上記有機材料36を基板103に蒸着させる工程の準備段階(開始段階)において、ターン・オン(Turn-On)されたヒータ34から放たれる熱により、まず、坩堝本体31の温度が上昇し、これに追従するように蓋部32の温度が上昇し始める。また、蒸着終了後においては、ヒータ34のターン・オフ(Turn-Off)により、まず蓋部32が冷却され、その後ヒータの余熱が残る坩堝本体31が冷却される。したがって、ヒータ34をターン・オフした直後は、坩堝本体31内において有機材料36は、当該坩堝本体31の余熱で蒸発し続ける。これに対し、蓋部32の冷却の進行により、当該蓋部32の温度が有機材料36の蒸発温度より低下すると、坩堝本体31から蒸発した材料が蓋部32の内壁32Cや外壁(坩堝本体に対向する面)に付着して凝固する。さらに、蒸発した有機材料36は、オリフィス32aの内部で凝固して、これを塞ぐ。このような問題は、坩堝本体31に蓄えられた有機材料36が枯渇するまで上記蒸着工程を続け、その後、ヒータをターン・オフすれば、殆ど生じない。ただし、坩堝本体31の底部31Aに供給された有機材料36が完全に枯渇したように見えても、実際には、例えば坩堝本体31のフランジ31Bと蓋部32のフランジ32Bとの間の僅かな隙間に有機材料36が残留し、一方のフランジ31Bを他方のフランジ32Bに接着してしまう。その結果、坩堝本体31と蓋部32との分離が困難となる、若しくは分離するのに非常な手間を要することになり、坩堝本体31に有機材料36を追加することや、当該坩堝本体31の洗浄などのメンテナンスが非常に煩雑となる。
また、上記従来の有機材料蒸着用容器33(坩堝1)の構成は、蓋部32の底部32Aに設けられたオリフィス32aから蒸散する有機材料36を、当該蓋部32の内壁32Cに沿わせて上述した薄膜形成装置100の真空槽2に導入するため、上記蒸着工程の終了時に、蓋部32内に拡散された有機材料36の蒸気が冷却され、その内壁32Cに付着する。蓋部32の内壁32Cに付着した有機材料36(例えば、その薄片(Flake))は、次の蒸着工程にて蓋部32の内壁32Cからその底部32Aに脱落し、当該底部32Aに設けられたオリフィス32aに付着する。これによりオリフィス32aの孔径が狭められると、坩堝本体31で新たに蒸発される有機材料36の基板103の主面における蒸着レートが不安定になる。
さらに、上記従来の有機材料蒸着用容器33(坩堝1)は、蓋部32の底部32Aに形成されたオリフィス32aから放出される有機材料36の蒸気の流れを蓋部32の内壁32Cに沿って形成するように構成されているが、筒状に延びる蓋部32の延伸方向に交差する断面積(蓋部32の内壁径)が大きいため、蓋部32内における有機材料36の蒸気圧は高まらない。このため、オリフィス32aから放出された有機材料36の蒸気は、蓋部32内において、自由状態で拡散する。
従来の蒸着マスクを使用した表示装置(例えば、有機ELパネル)の画素のパターンニングの例を図12に示す。いわゆるマスク蒸着に用いられる蒸着マスク161は、基板103の主面上にパターンニングされた複数の画素の夫々に対応した孔164が開けられたメタルシート162をフレーム163に保持して成る。当該フレーム163は、メタルシート162に張力を与え、これを基板主面内で水平に弛みなく保持する。この蒸着マスク161を基板103の主面に密着させ、蒸着マスク161の下方に配置した坩堝1からの蒸発粒子360を吹き付けることにより、メタルシート162に形成された孔164で露出される基板103の主面の各部分に蒸発粒子360の材料を成膜する。これにより蒸着マスク161の孔164を通して基板103の主面に蒸発材料の結晶がパターンニングされる。この成膜工程において、坩堝1からの輻射熱により、蒸着マスク161と基板103とが熱膨張する。一般的に、蒸着マスク161は金属で、基板103はガラスで夫々形成されるため、夫々の熱膨張率は相違し、しかも基板103はその成膜工程が終わると新規のものに入れ代わる。このため、基板103と蒸着マスク161との熱膨張に差が生じ、当該基板103において成膜パターンの位置ずれが生じてしまう。
従来の蒸着の位置ずれ防止方法を図10に示す。図10(A)に示す如く、蒸着源200には、これに対して走査される基板103の移動方向に交差する方向に複数の坩堝1が並設されている。坩堝1からの輻射熱の蒸着マスク161及び基板103への伝達を低減するために、放射阻止体(Radiation Blocking Body)165が坩堝1の各々の上面に設置されている。図10(B)は、蒸着源200に設けられた複数の坩堝1の一つを基板103の移動方向(走査方向)沿いに切断して描かれる断面図である。放射阻止体165はステンレス、アルミニウム合金等の金属材料からなる板状の部材で、その主面には熱反射効率を高めるために鏡面加工が施され、その複数枚が間隔を開けて配置されることもある。さらに輻射熱の蒸着マスク161や基板103への伝達を防ぐため、放射阻止体165を冷却することもある。そして、坩堝1上部の開口部から蒸散した蒸発粒子が放射阻止体165に付着し、そこで結晶化し、後続粒子の飛行の妨げになることや放射阻止体165の性能低下を避けるために、坩堝1の上部に突起169が形成され、突起169の上部に吐出口(Discharge Aperture)81が設けられ、吐出口81が放射阻止体165よりも基板103側に突出されていた。
特許文献2によれば、図10に示される蒸着源200の薄膜形成装置への適用により、放射阻止体165への蒸発材料の付着による蒸発粒子の飛行の妨げや基板103における当該蒸発材料の成膜性能低下が防がれ、蒸着マスク161や基板103に対する坩堝1からの輻射熱の伝達が低減される。しかし、実際には、吐出口81を有する突起部169に冷却を施した放射阻止体165が近接していることや、当該突起部169と坩堝1を加熱するヒータ22とを隔てる距離により、坩堝1の内部から突起部169の先端に向けて温度勾配が生じ、吐出口81周辺の温度は低下する。これにより、坩堝1内部で、蒸発温度に到達した材料36が蒸発するものの、坩堝1の上部の吐出口81で蒸発材料360の温度が下がる。その結果、蒸発材料360は吐出口81付近で結晶化して吐出口81を塞ぐため、坩堝1からの蒸発材料360の蒸散が妨げられる。
以上に述べた問題を解決すべく、本発明は、薄膜形成装置(Thin-film Forming Apparatus)の蒸着源(Vapor Deposition Source)として用いられる新規な蒸着坩堝(Vapor Deposition Pot/Crucible)を提供する。その代表的な構造は、以下のとおりである。
構造1:蒸着坩堝で蒸発される材料が収容される収容部分(Container Portion)、前記収容部分と第1空間で離間されて配置され且つ第1開口を有するオリフィス板(Orifice Plate)、及び前記第1空間の外側に前記オリフィス板と第2空間で離間されて配置され且つ前記蒸着坩堝で蒸発された前記材料を蒸着坩堝の外側に吐出する第2開口を有する吐出板(Discharge Plate)を備える蒸着坩堝であって、
前記第1空間内の前記収容部分と前記オリフィス板との間には、前記材料の蒸発室が形成され、
前記第2空間は、その圧力が前記蒸発室の圧力に対して制御される圧力制御室となる。
構造2:蒸着坩堝で蒸発される材料が充填される部分を有する容器(Vessel)、前記容器に設けられ且つ第1開口を有するオリフィス板、及び前記容器の外側に前記オリフィス板と対向して配置され且つ前記蒸着坩堝で蒸発された前記材料を蒸着坩堝の外側に吐出する第2開口を有する吐出板を備える蒸着坩堝であって、
前記容器内において前記材料の充填部分と前記オリフィス板との間には、該材料の蒸発室が形成され、
前記オリフィス板と前記吐出板との間の空間は、その圧力が前記蒸発室の圧力に対して制御される圧力制御室となる。
構造3:前記構造1または2に規定される蒸着坩堝であって、
前記第2の開口は前記吐出板から前記圧力制御室の外側に延在する突起の延在端に形成され、
前記吐出板から隔てられた少なくとも1つの反射板と、該反射板から隔てられた冷却板とが前記吐出板から前記突起の延在方向沿いに順次配置され、
前記反射板の前記吐出板側の主面は鏡面を有し、
前記冷却板は冷却装置に接続され、且つその主面の一方は前記反射板の前記主面より広く、且つその主面の他方と前記吐出板とを隔てる距離は前記突起の延在端と該吐出板とを隔てる距離と同じ又は短い。
吐出板のオリフィス板に対向する主面を第1主面、この第1主面の反対側の主面を第2主面と夫々定義するとき、蒸着坩堝の上面ともなる吐出板の第2主面から突起は上側に突出する。即ち、オリフィス板からこれに対向する吐出板の第1主面に到る空間として圧力制御室が形成されるとき、突起は圧力制御室の外側に延在し、その先端(延在端)に第2の開口が形成されている。構造3において、反射板、冷却板、及び冷却装置は、「蒸着坩堝」とその内部で蒸発又は昇華し且つその開口(第2の開口)から蒸散する材料が成膜される「基板」とを熱的に分離する「断熱機構」を構成する。
構造4:前記構造3に規定される蒸着坩堝であって、
前記突起、前記蒸発室、及び前記圧力制御室の夫々の側方にはヒータが設けられ、
前記吐出板に隣接する前記反射板の前記鏡面を有する主面は前記ヒータと間隙を介して対向し、
前記冷却板の前記一方の主面は、前記反射板により前記ヒータから遮られている。
構造5:前記構造3に規定される蒸着坩堝であって、
前記吐出板と前記冷却板の前記一方の主面との間には、複数の前記反射板が互いに隔てられながら前記突起の延在方向に並べて設けられている。
構造6:前記構造2または3に規定される蒸着坩堝であって、
前記オリフィス板は前記容器の一端の内部に挿入され、
前記容器の前記一端には前記オリフィス板を支持する支持部が設けられ、
前記吐出板には前記第2開口が形成された面から前記容器の前記一端の外周へ延びる側壁(Side Wall)が形成され、
前記圧力制御室は、前記容器の前記一端の外周とこれを覆う前記吐出板の前記面と前記側壁との間に形成される。
構造7:前記構造6に規定される蒸着坩堝であって、
前記突起、前記蒸発室、及び前記圧力制御室の夫々の側方にはヒータが設けられ、
前記ヒータは前記吐出板の前記表面、該表面から前記圧力制御室の外周沿いに延びる前記側壁、及び前記第2開口を有し且つ該表面から延在する前記突起の各々に直接接してられている。
構造8:前記構造6に規定される蒸着坩堝であって、
前記突起、前記蒸発室、及び前記圧力制御室の夫々の側方に設けられたヒータと該ヒータが収納されるヒータケースとを備え、
前記ヒータケースは、前記吐出板の前記表面、前記側壁、及び前記突起の機能の各々を備える。
構造9:前記構造2または3に規定される蒸着坩堝であって、
前記第1の開口は前記オリフィス板とこれに対向する前記容器の側面とを隔てる隙間として形成されている。
構造10:前記構造1〜3のいずれかに規定される蒸着坩堝であって、
前記圧力制御室における前記材料の蒸気圧は、この材料を蒸発させる前記蒸発室のそれ以下に保たれている。
構造11:前記構造1〜3のいずれかに規定される蒸着坩堝であって、
前記蒸発室を加熱する第1のヒータと前記圧力制御室を加熱する第2のヒータとを備え、
第1のヒータと第2のヒータは独立に制御される。
構造12:前記構造1〜3のいずれかに規定される蒸着坩堝であって、
前記蒸発室の温度は前記圧力制御室の温度より低く保たれている。
構造13:前記構造1〜3のいずれかに規定される蒸着坩堝を蒸着源として備えた薄膜形成装置であって、
前記蒸発室で蒸発された前記材料が蒸着される基板が導入される筐体と、
前記筐体に前記第2開口を介して接続される少なくとも一つの前記蒸着坩堝とを備え、
前記筐体内は前記蒸発室及び前記圧力制御室のいずれよりも低い圧力に保たれている。
構造14:構造3に規定される蒸着坩堝を蒸着源として備えた薄膜形成装置であって、
前記蒸発室で蒸発された前記材料が蒸着される基板が導入される筐体と、
前記基板の主面に形成される画素パターンに対応した複数の孔が形成された面(plane)を有し且つ該基板の該主面に該面で密着される蒸着マスクと、
前記筐体に前記第2開口を介して接続される少なくとも一つの前記蒸着坩堝とを備え、
前記筐体において、前記蒸着マスクは、前記面が密着された前記基板の前記主面が前記蒸着坩堝の前記第2開口に対向するように配置され、
前記筐体内は前記蒸発室及び前記圧力制御室のいずれよりも低い圧力に保たれている。
また、本発明は、上述の蒸着坩堝による有機材料薄膜の蒸着現象を考察し、新規な蒸着手法を「表示装置の製造方法」として提供する。その代表的な「製造方法」は、以下のとおりである。
製造方法1:基板の主面に有機材料を蒸着して表示装置を製造する方法であって、
前記有機材料を第1空間で蒸発させる工程と、
前記蒸発された有機材料を前記第1空間から当該有機材料の蒸気圧が第1空間と同等又はそれより低く保たれた第2空間に導入する工程と、
前記第2空間に導入された前記蒸発された有機材料を前記第1空間及び第2空間より低い圧力に保たれた第3空間に導入し、第3空間に載置された前記基板の主面に蒸着させる工程とを含む。
製造方法2:前記製造方法1において、
前記第2空間の温度は前記第1空間のそれより高く保たれている。
製造方法3:前記製造方法2において、
前記第2空間と前記第3空間とを、これらを隔てる部材に形成された開口で接続し、
前記蒸発された有機材料を、前記開口の温度が前記第2空間と同じかそれよりも高く保たれた状態で、該第2空間から該開口を通して前記第3空間に導入する。
製造方法4:前記製造方法3において、
前記第3空間における前記開口を囲む空間を、その温度が該開口の温度より低くなるように冷却する。
製造方法5:前記製造方法2又は3において、
前記蒸発された有機材料を前記基板の主面に蒸着させる工程は、前記第1空間の加熱を止めた後に前記第2空間の加熱を止めることで終了される。
本発明によれば、蒸着終了後に、坩堝本体(蒸発室)を仕切るオリフィス板の孔部から坩堝本体の外へ蒸発する材料(有機材料)の蒸気は、当該オリフィス板がヒータから直接受熱する蓋部に覆われているために冷やされ難い。このため、坩堝本体から蒸発した材料が、蓋部の坩堝本体に対向する面に凝固したり、オリフィス部としての孔部内部に材料が凝固したりすることがなくなる。従って、坩堝本体と蓋部の分離が容易となり、坩堝本体への材料の投入が簡単に行える。
また、蒸着後の材料がオリフィス板周辺(その上面より坩堝上部側)に付着することがなく、当該付着材料の脱落によるオリフィス部の孔への付着を防止できるために、蒸着レートの安定化が図れる。
オリフィス板の側面と坩堝本体の内壁とを隔てる隙間をオリフィス孔として使用すれば、オリフィス孔の温度はヒータ通電時には更に上昇するため、その近傍での蒸着材料の付着が発生しにくくなる。
さらに、蓋部をヒータから直接熱を受ける構造にすることで、蓋部の孔部(吐出口)の径を小さく、孔の長さを長くしても、当該孔部の温度が高いために、気化した材料が孔部に詰まって、当該材料の孔部における流出抵抗が大きくなることがなくなる。また、気化した材料が、坩堝本体と、蓋部の隙間から流出することがない。したがって、蓋部の孔部の径を小さく、孔の長さを長くしても、前記不具合が生じないために、気化した材料を蒸着坩堝から吐出させて、最終的に基板に蒸着させる際に、当該基板主面における材料の蒸着分布を大きな自由度で制御できる。
蒸着マスクを用いたマスク蒸着に用いられる上記坩堝には、上述した断熱機構が設けられる。これにより、この坩堝からの輻射熱の蒸着マスク及び基板への伝達を低減でき、長期間に亘る坩堝の使用においても、これと蒸着マスク及び基板との間の断熱効率が維持される。このため、マスク蒸着での基板主面における蒸着位置ずれを低減でき、高精細な表示装置の製造が可能となる。また、蒸着マスク及び基板の周囲の冷却に伴う坩堝の吐出口の温度低下、及びこれに起因する吐出口の詰まりが防止されるため、坩堝からの蒸発材料の吐出量は長期間に亘り安定化される。
以下に本発明の実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の坩堝の構成を示す断面図である。蒸着坩堝1は、加熱するための上部ヒータ21及び下部ヒータ22が設置された筒状のヒータケース3に挿入される。上部及び下部の各ヒータ21,22は、シース型のヒータを用い、それぞれ独立に制御可能となっている。
筒状に延伸するヒータケース3の一端には底面が設けられ、当該延伸方向にて当該一端の反対側に位置するヒータケース3の他端は一端に比べて開放された形状を呈する。このヒータケース3の一端を下部、他端を上部として、当該蒸着坩堝1の構成を記すと、坩堝本体4はヒータケース3内の下側に配置され、その底面は上記ヒータケース3の底面で支えられる。坩堝本体4内の当該坩堝本体4の底面を含む空間は、これにより蒸発される材料(有機材料36)が充填される蒸着坩堝の一部分として利用される。坩堝本体4の内壁(Inner Wall)は、その底面からその上部に向けて、例えば筒状に延伸する。坩堝本体4の内側には、これの一部として規定される上記有機材料36の充填空間(又はこれに蓄えられた有機材料36)と空間9を介して対向するオリフィス板7が設けられる。坩堝本体4内において、これに蓄えられ又は残留した有機材料36とオリフィス板7とを隔てる当該空間9を、以降、蒸発室(Evaporation Chamber)、又は材料蒸発室と記す。オリフィス板7には、当該蒸発室9で蒸発される有機材料36の蒸気圧を制御する孔部(Opening Portion)71が形成される。孔部71は、オリフィス板7自体に設けられる必要は無く、図15を参照して後述するように、坩堝本体4とオリフィス板7とを隔てる一定の隙間として設けてもよい。坩堝本体4の底面並びに内壁、及びオリフィス板7で囲まれた空間は、坩堝本体4の内壁とオリフィス板7との間に不測の「漏れ(Leak)」が生じない限り、当該孔部71(即ち、オリフィス)のみを通して、その外側に開放される。
このため、オリフィス板7は開放部オリフィス板とも記される。蒸発室9の容積は、坩堝本体4に蓄えられ又は残留する有機材料36の量に応じて変動する。しかし、本発明による蒸着坩堝の機能は、蒸発室9における有機材料36の蒸気圧と後述する圧力制御室10におけるそれとの相対的な関係を以って決められるため、蒸発室9の容積の変動自体は無視できる。オリフィス板7は、例えば、坩堝本体4の内壁に形成した段差や凸部として設けられ、又は、坩堝本体4の延伸方向に交差する断面を狭めて形成される支持部(図1には示されず)により、坩堝本体4内の所望の位置に保持されるとよい。
ヒータケース3内には、吐出孔(Discharge Aperture)81が形成された面を有する蓋8が、坩堝本体4の上方に配置される。この吐出孔81は、蒸着坩堝1で生じた有機材料36の蒸気を蒸着坩堝1の外側に放出する開口であるため、これが形成された蓋8の面を以降、吐出板(Discharge Plate)82とも記す。ヒータケース3内において、吐出板82はオリフィス板7の上方に、これと離間されて配置される。吐出孔81は、オリフィス板7の孔部71と対向して配置されるとよい。図1に示される蓋8は、吐出板82の周縁から坩堝本体4の外周に向けて延伸する側壁(Side Wall)83を備え、坩堝本体4のオリフィス板7が挿入される開口と、当該開口からその底面に向けて延びる坩堝本体4の外壁の一部分(当該開口側,上側)は、吐出板82と側壁83とを備えた蓋8で覆われる。換言すれば、蓋8は、オリフィス板7が嵌められた坩堝本体4の上部を、その外側から覆っている。
吐出板82とオリフィス板7とを隔てる空間10は、この空間10における有機材料36の蒸気圧(換言すれば、オリフィス板7の孔部71から放出された有機材料36の蒸気圧)を、上述の蒸発室9における有機材料36の蒸気圧に対して調整する機能を備えるため、以降、圧力制御室(Pressure-Controlling Chamber)とも記す。図1に示す蒸着坩堝1において、この圧力制御室10は蓋8の側壁83の内面と、これに覆われる坩堝本体4の外周とによっても囲まれる。上述した有機材料36の蒸気圧は、本発明による蒸着坩堝1の機能及び表示装置の製造方法を特徴付ける一つの因子であり、圧力制御室10においては所謂飽和蒸気圧(温度に対して増加する)とは別の値として論じられる。一方、蒸発室9における有機材料36の蒸気圧は、坩堝本体4とオリフィス板7とで囲まれた空間から有機材料36(固体又は液体として存在する)に占有される空間を除いた領域にて論じられる。
上述した坩堝本体4、オリフィス板7、蓋8は、坩堝材料として一般的に用いられるグラファイト、モリブデンやタングステンに代表される高融点金属(Refractory Metal)又はその合金などで形成される。
斯様に構成される蒸着坩堝1内には、材料を充填する部分(蒸発又は昇華される前の有機材料36で占有される空間)と、有機材料36の蒸気圧を制御するオリフィス板7によって形成された蒸発室9と、前記オリフィス板7と吐出板82(蓋8)との間の空間に形成される圧力制御室10とが配置される。蓋8の上面(吐出板82)は、蒸着坩堝1の外側に露出されるため、放熱により温度が低下し易い。しかし、蓋8の側壁83をヒータケース3の内壁に接触させることにより、ヒータケース3からの熱の供給によって、蓋8(吐出孔81)の温度低下は抑制される。さらに、本実施例では、ヒータケース3に独立に温度設定できる上部ヒータ21と下部ヒータ22とが取り付けられている。上部ヒータ21は、ヒータケース3の蓋8の側壁83に対向する内壁に沿って配置されて、圧力制御室10の温度を支配的に決める。下部ヒータ22は、ヒータケース3の坩堝本体4に接する部分に沿って配置されて、蒸発室9の温度を決める。本実施例では、言わば圧力制御室用の上部ヒータ21の設定温度を、言わば蒸発室9用の下部ヒータ22の設定温度より高くしている。斯様に構成され且つ動作する蒸着坩堝1を、図2(a)に示すような薄膜形成装置の真空槽2に接続して、有機材料36を蒸着坩堝1で気化し、真空槽2に配置された基板103の主面に蒸着した。
図3(a)に示すように、有機材料36は蒸発室9で蒸発(昇華)し、気化する。気化した有機材料360は、オリフィス板7の孔部71を通過し、蒸発温度が保たれた前記吐出口孔81に付着することなく、圧力制御室10から真空槽(減圧された筐体)に入り、当該真空槽に配置された基板の主面に蒸着する。一方、上部ヒータ21の設定温度を、下部ヒータ22の設定温度より低くすると、図3(b)に示すように、高い温度に保たれた蒸発室9で有機材料36の蒸発が継続しているにもかかわらず、その上記基板主面への蒸着は捗らない。これは、吐出口孔81の温度が下がっているために、気化した有機材料360の一部が圧力制御室10にて凝縮して、前記吐出口孔81に付着することに因る。気化した有機材料360は、蓋8の内壁に付着して材料層70を形成し、吐出口孔81を塞ぐことや、凝縮に伴う分解で不純物を形成することもある。
本発明者らは、上述の実施例による蒸着坩堝1とその比較例とにおける薄膜形成能力の相違を、図4及び図5を以って、以下に考察する。
図4は、前述したオリフィス板7の孔部71と吐出口孔81の温度差と、蒸着終了後の吐出口孔81への材料70の付着量との関係を示す。材料蒸発室9の温度が吐出口81の温度より低い場合は、吐出口81への材料付着は発生しない。逆に材料蒸発室9の温度が吐出口81の温度より高い場合は、吐出口81への材料付着が発生し、その温度差が大きくなるほど付着量が増えている。
また、オリフィス板7を含めた圧力制御室10の内壁への材料70の付着は、蒸着中にも徐々に発生し、付着した材料70がオリフィス板7の孔部71を覆うような状態となると、孔部71からの蒸発材料の噴出が妨げられる。これにより、圧力制御室10に到達する蒸発材料の量が変化し、蒸着坩堝1の最終的な吐出口81から出る蒸発量、即ち蒸着レートが不安定となってしまう。
本発明者らは、この図4で示した関係に、蒸発室9と、圧力制御室10の圧力が関与していると分析した。つまり、前述した蒸発室9の温度が高いほど、その内部における材料の蒸発量が増加して蒸発室9の圧力が高くなり、逆に蒸発室9の温度が低いほど、圧力が低くなる。一方、蒸発した材料(気化した有機材料360)は、オリフィス板7の孔部71を通過するが、この孔部71によって蒸発室9の圧力が規制されている。蒸発材料が蒸発室9から圧力制御室10に入り込むにつれて、圧力制御室10における当該蒸発材料の蒸気圧は上がる。即ち、圧力制御室10の単位体積あたりに存在する気化分子の量が増える。この状況で、圧力制御室10が蒸発室9よりも温度が低いと、圧力制御室10の内部に気化した有機材料360が結露し、とりわけ温度が低くなり易い吐出口81周辺には、当該気化した有機材料360又はその分解物の材料層70が付着してしまう。この現象は、気化した有機材料360が過剰に蒸発室9から圧力制御室10へ流入することにより、圧力制御室10における気化した有機材料360の蒸気圧がその飽和蒸気圧に近付くこと、圧力制御室10の温度が低いと当該飽和蒸気圧も低くなること、に起因すると考えられる。
このような分析により、前述の通り、蒸発室9の温度よりも圧力制御室の吐出口81の温度が下回らないように構成され、また動作される本実施例の蒸着坩堝1及びこれを用いた有機材料薄膜の形成方法の優位性が確かめられた。上述した温度と圧力の関係は、蒸発室9と圧力制御室10との容積の比、及びオリフィス板7の孔部71と吐出口81との流路抵抗の比率に拠るものと本発明者らは考察した。
本発明者らは、次に、蒸着坩堝1のオリフィス板7の孔部71と吐出口81との流路抵抗の比率と、圧力制御室10の内部における気化した有機材料360の結露との関係を検討した。図5は、蒸発室9と圧力制御室10との容積を等しくした条件で、オリフィス板7の孔部71の流路抵抗値を圧力制御室10の吐出口81の流路抵抗値で除した値と、吐出口81の温度との組合せに対する有機材料360の結露の有無を示す。図5から明らかなように、オリフィス板7の孔部71の流路抵抗を圧力制御室10の吐出口81の流路抵抗よりも小さくすることで、圧力制御室10の圧力を十分に低くすれば、圧力制御室の吐出口81の温度が低くても、結露現象は抑制できる。
このことから、本発明による蒸着坩堝1は、上部ヒータ21と下部ヒータ22との温度が独立に設定できない従来の蒸着坩堝においても、その内部にオリフィス板7が装着された坩堝本体4と、オリフィス板7(孔部71)に対向する吐出口81を有する蓋8とを本実施例で述べた如く配置し、且つオリフィス板7の孔部71より蓋8の吐出口81を大きくすることで実現できる。斯様に構成される蒸着坩堝1は、図2(a)に示す薄膜形成装置の真空槽2に、その蓋8の吐出板82を当該真空槽2内の減圧空間に曝して接続される。従って、蒸着坩堝1の蒸発室9(第1空間)で蒸発された有機材料36は、その蒸気圧が蒸発室9と同等又はそれより低く保たれた圧力制御室10(第2空間)に導入され、さらに蒸発室9及び圧力制御室10より低い圧力に保たれた真空槽2(第3空間)に導入されて、真空槽2内に配置された基板103に蒸着される。
この工程で、圧力制御室10における有機材料36の蒸気圧を、蒸発室9におけるそれと同等又はそれより低くするために、吐出口81の大きさを或る程度制限することが望ましい。これにより、圧力制御室10が蒸発室9より著しく減圧されて、例えば孔部71より吐出される気化した有機材料360の断熱膨張で圧力制御室10の内部の温度が下がり、気化した有機材料360が圧力制御室10の内壁に付着することが回避される。例えば、吐出口81の開口面積を、オリフィス板7の孔部71のそれの5倍以下、さらには2倍以下にするとよい。オリフィス板7の孔部71に対する吐出口81の大きさは、圧力制御室10を蒸発室9より高い温度に設定する本発明による他の蒸着坩堝1において、基本的に考慮する必要はない。しかし、圧力制御室10の温度が有機材料36の分解を避けるように設定される視点に立てば、その設定温度に応じて吐出口81をオリフィス板7の孔部71より大きくすることが望ましい。
本実施例による蒸着坩堝1では、これら様々な流路抵抗に適した蒸発室9及び圧力制御室10の温度設定が、上部ヒータ21及び下部ヒータ22によって制御できる。さらに、以上述べてきた坩堝構造及び蒸着方法は、固体から気体に昇華するタイプの有機材料、及び固体から液体を経て気体となる溶融タイプの有機材料のいずれの真空蒸着にも適用できる。そして、これら本発明の坩堝構造及び温度制御により、蒸着工程の終了後において、オリフィス板7の孔部71、吐出口81への材料の付着が抑制されているので、蓋8やオリフィス板7等の各部材の着脱が容易で、蒸着坩堝1(坩堝本体4)への材料補充などの段取りを短時間で行うことができる。
上述した本実施例の蒸着坩堝1は、図1に示した断面構造又はそれに準ずる断面構造を有する限り、図6に示す円筒形状の蒸着坩堝90や図7に示す直方体形状の蒸着坩堝91の如く、多種多様な形態で実施可能である。蒸着坩堝91は、上述した蒸発室9と圧力制御室10とを各々組合せて成る複数の構造体を一次元的に並べて構成した線状蒸着源(ラインソース,Line Source)である。本実施例の蒸着坩堝1は、有機EL表示装置(Organic Electroluminescent Display Device)に代表される基板主面上に有機材料膜を形成して成る電子デバイスの製造において、当該有機材料を効率的に且つその分解や劣化を起こすことなく当該基板主面に蒸着させる。とりわけ、上述の蒸着坩堝(ラインソース)91は、上記電子デバイスの基板に吐出口81を対向させて、これを構成する上記構造体の配列方向と交差する方向に走査することで、電子デバイスの生産効率を上げる。
本発明による蒸着坩堝、又は薄膜形成方法を用いて形成される表示装置の一例として、アクティブ・マトリクス駆動型の有機EL表示装置を以下に論じる。図8は、当該有機EL表示装置の概略的な構成を示す等価回路図であり、図9は、当該有機EL表示装置を成す複数の画素の一つを示す断面図である。この有機EL表示装置を、図2(a)に示す薄膜形成装置で作製するとき、基板103の主面上には少なくとも図8に示す表示領域(画素アレイ,一点鎖線で囲まれた領域)110が形成される。表示領域110(基板103の主面)には、複数の画素領域111(破線で囲まれた領域)が二次元的に形成される。また、表示領域110には、画素領域111の各々に設けられた有機EL素子112の駆動(発光動作)を制御する複数の走査線113が第1方向(図8の縦方向)に沿って並設され、当該表示領域110で表示する画像データを画素領域111に夫々供給する複数のデータ線114が上記第1方向に交差する第2方向(図8の横方向)に沿って並設される。
データ線114の各々は、上記第1方向沿いに延在して、これに対応する複数の画素領域111の一群(第1方向沿いに並ぶ)に画像データを順次供給する。走査線113の各々は、上記第2方向沿いに延在して、これに対応する複数の画素領域111の一群(第2方向沿いに並ぶ)に夫々設けられたスイッチング素子(Switching Element)115をターン・オンする。画素領域111の各々は、そのスイッチング素子115が、これに対応する走査線113の一つでターン・オンされた期間に、これに対応するデータ線114の一つから画像データを取り込み、これをその容量116に記憶させる。画素領域111に設けられた駆動素子(Drive Element)117は、当該画素領域111の容量116に記憶された画像データに基づき、有機EL素子112の発光動作を制御する。表示領域110には、複数の画素領域111に設けられた有機EL素子112に駆動電流(Operation Current)を供給する電力供給線118と、有機EL素子112に対して基準電位(Reference Potential)を与え、又は有機EL素子112を通過した上記駆動電流を受ける基準電位線(陰極電流線)119も形成される。
複数の走査線113に走査信号(制御信号)を出力する走査信号駆動回路(Scanning Signal Driver Circuit)、複数のデータ線114に画像データ(データ信号)を出力するデータ信号駆動回路(Data Signal Driver Circuit)、及び電力供給線118に有機EL素子112の駆動電流を出力する発光電源回路(Light Emission Power Source Circuit)の少なくとも一つを基板103の主面内に形成してもよい。
図9は、図8に示す画素領域111の一つにおける駆動素子(薄膜トランジスタ)117並びに有機EL素子112が配置される部分の断面を示す。石英や無アルカリガラス等の絶縁性材料からなる基板120の主面には、駆動素子117のチャネル(活性領域)となる半導体層121、半導体層121を覆う第1絶縁膜(ゲート絶縁膜)122、第1絶縁膜122を介して半導体層121と対向する制御電極(ゲート電極)123、第1絶縁膜122及び制御電極123を覆う第2絶縁膜(層間絶縁膜)124、第2絶縁膜124上に配置され且つ第1絶縁膜122並びに第2絶縁膜124を貫通するスルーホールを通して半導体層(チャネル)121の一端に電気的に接続される出力電極(ドレイン電極)125が、この順に形成される。なお、半導体層121の他端に上記駆動電流を供給する配線は、断面の位置からして図示されない。駆動素子117は、半導体層121、第1絶縁膜122、制御電極123、及び出力電極125により構成される。
基板120の主面には、さらに第2絶縁膜124並びに出力電極125を覆う平坦化層(Leveling Layer)126が絶縁性材料により形成され、次いで、有機EL素子112の第1電極127が導電性材料により形成される。第1電極127は、平坦化層126を貫通するスルーホールを通して駆動素子117の出力電極125に接し、駆動電流を受ける。平坦化層126上に第1電極127を囲むように形成された絶縁隔壁(Insulating Partition Wall)128は、バンク(Bank)とも呼ばれ、隣り合う画素領域111に夫々形成される有機EL素子112を電気的に分離する。この有機EL表示装置を、本発明による蒸着坩堝1が装着された図2(a)に示す薄膜形成装置で製造するとき、真空槽2に導入され、より有機材料36が蒸着される基板103は、上記基板120の主面に半導体層121から絶縁隔壁128に到る構造物が形成されたものである。換言すれば、当該基板103は、図9に示される構造物から有機EL素子112の有機材料層136及び第2電極129を除いたものである。
本発明による蒸着坩堝1は、絶縁隔壁128から露出された有機EL素子112の第1電極127の上面に有機材料36を蒸着させて、有機EL素子112の有機材料層136を形成する。被加工物(Workpiece Material)としての基板103の主面には、絶縁隔壁128の開口から露出される第1電極127の夫々に対応したパターンを有するマスクが配置され、有機材料36の絶縁隔壁128の上面への蒸着が制限される。これにより、有機材料層136が絶縁隔壁128を越えて、隣り合う第1電極127に夫々接して、夫々の有機EL素子112の短絡させることは無くなる。有機材料層136は、発光層のみならず、当該発光層への電子及び正孔の注入を促す電子輸送層、正孔輸送層等も含む。従って、分子構造又は組成の異なる有機材料を順次蒸発又は昇華させて、基板103の主面(第1電極127の上面)に供給することが求められる。
例えば、第1電極127をITO(Indium Tin Oxide)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、SnO(酸化スズ)、In(酸化インジウム)、Au、又はNi等で、陽極として形成するとき、第1電極上にはTPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)4,4’−ジアミノビフェニル)より成る正孔輸送層が真空蒸着により形成される。この正孔輸送層上には、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)等のアルミニウム−キノリン錯体であるホスト材料に4−ジシアノメチレン−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−2−メチル−4H−ピラン(DCM)等の色素であるゲスト材料(ホスト材料よりも昇華温度が低い)を添加した材料が昇華されて蒸着されて、発光層が形成される。さらに発光層上には、上記ホスト材料のみの昇華及び蒸着により、電子輸送層が形成される。有機材料層136は、上述の正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層の順次積層してなる、複数の有機材料膜を有する積層構造として形成される。当該積層構造には、さらに他の有機材料膜を加えてもよい。有機材料層136の上面には、第2電極129が、Al、Li、Mg、Au、Ag又はこれらの合金からなる陰極として形成される。
図2(a)に示す薄膜形成装置において、基板103主面(第1電極127の上面)に複数の有機材料膜を順次蒸着するとき、蒸着坩堝1(吐出口81)からの気化された有機材料360の吐出を、その蒸着工程の終了後、速やかに止める手法も重要である。この手法は、例えば、基板103主面への正孔輸送層の蒸着に続いて、発光層の蒸着を行う場合、発光層の内部に正孔輸送層となる有機分子の混入を防ぐものである。基板103主面に発光層が蒸着される期間に於いて、真空槽2に設けられたシャッタ11又は補助シャッタ50a,50bで、正孔輸送層となる有機分子の基板103主面への飛来は遮られるが、蒸着坩堝1が冷めない限り、当該有機分子のシャッタ11や補助シャッタ50a,50bへの結露で真空槽2は汚染される。しかし、本発明による蒸着坩堝1は、蒸発室9で蒸発又は昇華した有機材料360を、圧力制御室10を通して真空槽2に導入する。気化した有機材料360は、圧力制御室10で凝縮することなく真空槽2に導入されるため、蒸発室9における有機材料36の蒸発又は昇華の量を抑えても、基板103主面には所望の有機材料膜136が形成される。また、有機材料36の蒸発量又は昇華量が抑えられているため、当該有機材料による蒸着工程の終了時において、蒸発室9における有機材料36の蒸発又は昇華を、当該工程に続く別の有機材料による蒸着工程の開始までに止めることができる。勿論、有機材料による蒸着工程の開始において、本発明による蒸着坩堝1では、蒸発室9における有機材料36の蒸発量又は昇華量を、従来の蒸着坩堝の如く、加速的に高める必要もなくなる。従って、基板103主面内に均質な有機材料膜が、汚染の憂い無く、且つ高いスループットで形成できる。このため、本発明による有機材料の蒸着方法を有機EL表示装置の製造に適用すれば、画像品質の高い製品が高い歩留まりで生産される。
本実施例では、マスク蒸着による表示装置(例えば、有機ELパネル)の製造に好適な坩堝構造が論じられる。本発明者らは、基板103にパターンニングされた特定の画素領域に蒸着膜を形成させるマスク蒸着への本発明の適用を検討した。図12にマスク蒸着方式の基本構成(概念)を示す。マスク蒸着による基板103の主面への蒸着膜の形成工程は、その主面に配置される画素に対応した複数の孔164のパターンを持つ蒸着マスク161を当該基板103の主面に密着させて行われる。マスク蒸着が施される前の基板103の主面には、例えば実施例1で論じた絶縁隔壁(バンク)128で区画された複数の画素が形成され、その各々において、第1電極127が絶縁隔壁128の開口から露出されている。このような基板103に密着される蒸着マスク161の一例には、絶縁隔壁128の開口毎に孔164が形成されている。
特許文献2を参照して先述したように、蒸着マスク161は一般的に上述の孔164が主面に形成された金属性のシート162を金属性のフレーム163に貼り付けて形成する。このような蒸着マスク161の主面の一方を基板103に密着させ、その他方を坩堝1(その吐出孔81)に向き合わせた状態で、当該基板103へのマスク蒸着を行うと、坩堝1やそれに設けられたヒータ22から放射される熱により、基板103と蒸着マスク161の温度は上昇する。ガラスから成る基板103と金属や合金から成る蒸着マスク161の熱膨張率には差があり、しかも基板103は処理が終わる毎に入れ替わる。従って、坩堝1やヒータ22からの輻射熱は、蒸着マスク161(孔164のパターン)に対する基板103(例えば、画素領域111のパターン)の位置を、夫々の熱膨張の差に応じてずらすのみならず、マスク蒸着が複数の基板103に順次繰り返されるにつれて、輻射熱を受け続ける蒸着マスク161とこれに逐次載せ替えられる基板103との熱膨張の差を拡大させる。換言すれば、マスク蒸着の回数の増加に対して、蒸着マスク161に対する基板103の位置ずれは一定とならない故、この「位置ずれ」を見越して孔164のパターンが設計された蒸着マスク161を以っても、基板103の主面に形成される蒸着膜の所望の位置からのずれは低減されない。このような蒸着膜の位置ずれを低減するためには、坩堝1からの輻射熱の蒸着マスク161や基板103への伝達を最小限に抑える構造が必要である。
図10(B)には、特許文献2で教示される従来のマスク蒸着用坩堝が示される。この坩堝1の上部には突起部169が設けられ、当該突起部169の上端に吐出口81が形成されている。先述した放射阻止体165は、突起部169の上端よりも低い位置に配置され、その上面は吐出口81と略同じ高さに位置する。特許文献2は、坩堝の吐出口より基板(蒸着マスク)側に放射阻止体を配置する背景技術の問題を、放射阻止体を坩堝の吐出口に近づけて解決する技術を開示する。また、特許文献2は、放射阻止体165として、坩堝1側の主面が鏡面加工された金属プレート(a metal plate having a specular finished main surface at a side of the crucible 1)を用い、当該金属プレートに冷却体を接触させることを教示する。このように放射阻止体165を上記背景技術に比べて基板103より遠ざけて配置しても、基板103や蒸着マスク161への坩堝1からの熱放射による影響は放射阻止体165により軽減された。しかし、特許文献2に開示される坩堝1では、その上面と放射阻止体165とを隔てる距離dが狭められるため、ヒータ22から離れた当該上面やこれより上側に突き出た吐出口81の温度は更に低くなる。本発明者らは、材料が蒸発し又は昇華する坩堝1の内部に比べて、その上面及び吐出口81の温度低下が大きくなることに因る、予想以上に当該材料が吐出口81で析出し、当該吐出口81が詰まり易くなる弊害に着眼した。
上記の弊害を解決するために、本発明者らは、実施例1で論じた坩堝1に基づき、図11に示すマスク蒸着に適した坩堝構造を提供する。坩堝1とヒータケース3からの輻射熱の蒸着マスク161及び基板103への伝達を抑えるために、坩堝1の上部に断熱機能を備えた放射阻止体(以下、断熱機構)165を設ける。本実施例の坩堝1は、実施例1で述べた坩堝1に対して、次の特徴を有する。(1)吐出板82(坩堝1の上面を構成)には、その主面から圧力制御室10の外側に突き出た突起部169が設けられる。(2)吐出孔81は、突起部169の吐出板82から離れた端部に形成される。望ましくは、(3)ヒータ170が、突起部169の外面に対向して配置される。
実施例1で述べたものも含む本発明による坩堝1を重力場に置かれた薄膜形成装置に搭載するとき、坩堝1の下部に坩堝本体4が、その上部に吐出板82が夫々配置される。このように坩堝1の天地方向(Vertical Direction)が規定されたとき、突起部169は吐出板82からその上側に突出し、吐出孔81は突起部169の上端に形成され、ヒータ170は突起部169の側面に対向する。図11に示された吐出板82の下面(オリフィス板7に対向する)を第1主面、上面(第1主面の反対側の主面)を第2主面と夫々定義するとき、突起部169は吐出板82の第2主面から上側に突出する。即ち、突起部169は、オリフィス板7からこれに対向する吐出板82の第1主面に到る空間として形成された圧力制御室10の外側に延在し、その先端(延在端)に第2の開口81が形成されている。突起部169の内部には、吐出板82の下面側(圧力制御室10の内部)から吐出口81に到る蒸発材料の通路(Passage)が形成される。換言すれば、突起部169は蒸発材料を吐出するノズルとも記される。突起部169は、吐出板82又はこれを含む蓋8と一体に形成されてもよい。なお、坩堝1で蒸発される材料36が収容される収容部分(Container Portion)は、坩堝本体4の底部と記される。また、図11にて、ヒータ170は吐出板82の上面(外表面)にも対向する。ヒータケース3は、「坩堝1の側面及び下面に対向して配置される下部ヒータ22(蒸発室9を加熱する)」と「坩堝1の側面に対向して配置される上部ヒータ21(圧力制御室10を加熱する)」とを収納する第1ヒータケース3aと、「坩堝1の上面に対向して配置されるヒータ170(突起部169を加熱する)」を収納する第2ヒータケース3bとで構成される。第1ヒータケース3aは、坩堝本体4及び蓋8をその内部に収容する容器として成形されてもよい。図10(A)に示す従来構造に倣い、図11に示す坩堝1(坩堝本体4及び蓋8)を横方向に拡大し、広げられた坩堝1の上面(吐出板82)に吐出口81が形成された突起部169の複数個を一次元的又は二次元的に設けてもよい。
本発明による断熱機構(断熱機能を備えた放射阻止体)165は、上述した本実施例の坩堝1の上面(吐出板82)の上に、突起部169の延在方向に沿って順次配置された少なくとも1枚の反射板166、及び冷却板167と、この冷却板167に接続された冷却装置168とを備える。反射板166として、少なくとも一方の主面が鏡面加工された金属板や合金板(以下、金属板と総称する)が用いられ、この金属板は、当該主面が坩堝1の上面に対向するように配置される。双方の主面が鏡面加工された金属板を反射板166として用いてもよい。坩堝1の上面、反射板166、及び冷却板167は、所定の間隔で隔てられて、互いに熱的に分離される(thermally isolated)。図11に示されるように、断熱機構165は、坩堝1の上面と冷却板167との間に複数の反射板166を所定の間隔で隔てて配置して構成されてもよい。複数の反射板166の各々は、その主面の少なくとも一方に形成された「鏡面」を坩堝1の上面に向けて配置される。冷却板167は、その主面がこれに隣接する反射板166の主面に対向するように配置され、熱伝導率の良好な材料により形成される。例えば、冷却板167の熱伝導率を反射板166のそれより低くするとよい。冷却板167は水冷機構やペルチェ素子(Peltier Device)を備えた冷却装置168に接続される。以上により、本発明による断熱機構165は構成される。反射板166は、ステンレスやアルミニウムなどの材料(板状部材)を研磨して製作してもよく、また、金属材料にクロム等のめっきを施して鏡面を形成してもよい。冷却板167は、銅,アルミニウムなどの熱伝導率の良い材料で形成すればよい。
この断熱機構165が坩堝1の吐出口81よりも上側、つまり基板103側に位置すると、吐出口81から蒸散する材料36の蒸気が反射板166や冷却板167に付着、析出し、長時間に亘って基板103への材料36の成膜を繰り返すと、断熱機構165の断熱能力(thermal insulation performance)の低下や、吐出口81の閉塞が発生する。このような問題を解決するために、本実施例の坩堝1では、図11に示すように、蓋8の上部に突起169が設けられ、その上端に吐出口81が形成される。この突起169の先端が断熱機構165よりも上側、つまり基板103側に位置することにより、吐出口81から蒸散された材料36は、断熱機構165に付着することはない。また、突起部169の側面を加熱するヒータ170が設けられることにより、冷却板167が突起部169に近接して配置されても、吐出口81の温度低下を抑えられた。吐出口81の温度低下は、ヒータ170を収納する第2ヒータケース3bを熱容量の大きい金属や合金(ステンレス等)、または熱伝導率の高い金属や合金(アルミニウムやその合金等)で形成し、且つその一部を突起部169と冷却板167との間に挿入することで概ね解消される。また、ヒータ170と冷却板167との間に挿入された反射板166は、ヒータ170と冷却板167とを熱的に絶縁するため、ヒータ170による突起部169の加熱効率と、冷却板167による基板103及びマスク161の冷却効率との双方を高める。上述の如く、坩堝1の内部(特に圧力制御室10)に対する吐出口81の温度低下が抑えられることにより、材料36の析出による吐出口81の閉塞を防止できる。なお、坩堝1の内部には、前述した2室構造(蒸発室9と圧力制御室10から成る)が設けられているため、坩堝1は、安定的に材料を蒸散させ続けられる。なお、ヒータ170は、坩堝1の「蒸発材料の吐出ノズル」となる突起部169の温度を調整するため、「吐出ノズルヒータ」とも記される。
断熱機構165は、反射板166としての少なくとも1枚の板状部材と、冷却板167として板状部材とを突起部169の吐出板82からの突出方向沿いに並べられる。図11にて中空に浮くが如く描かれた反射板166、冷却板167、冷却装置168は、例えば薄膜形成装置の真空槽(筐体)2の内部に固定されてもよく、坩堝1の構成部材(例えば、ヒータケース3b)に固定されてもよいが、反射板166と冷却板167、その各々と坩堝1(特に突起部169と吐出板82)とは夫々熱的に分離される。冷却板167と冷却装置168とは、コールドフィンガ(Cold Finger)のような熱伝導性の高い部材で接続してもよい。反射板166は、その主面の一方(鏡面を有する)が少なくとも上部ヒータ21(及び、吐出ノズルヒータ170…これが設けられている場合…)に対向するように配置され、望ましくは当該反射板166の他方の主面全域が冷却板167の主面に対向している。基板103(蒸着マスク161)から坩堝1をその天地方向に見たとき、上部ヒータ21(や、吐出ノズルヒータ170)は反射板166で覆われ、望ましくは反射板166も冷却板167で覆われる。上部ヒータ21よりも基板103から遠く隔てられ且つ坩堝1の側面に配置された下部ヒータ22も、反射板166で覆われているとよい。反射板166や冷却板167に用いられる板状部材の主面の形状(平面的形状)は特に限定されないが、反射板166の主面は、上部ヒータ21(及び吐出ノズルヒータ170)の平面形状に応じて成形されるとよい。また、図10(A)に示された従来の放射阻止体165に倣い、反射板166や冷却板167として、突起部169が挿入される開口が形成された板状部材を用いてもよい。図11に示す蓋8を上記坩堝1の天地方向に交差する方向に延ばし、その上面(吐出板82)に複数の突起169を一次元的又は二次元的に並設したとき、複数の突起部169に対応した複数の上記開口が主面に形成された板状部材を反射板166や冷却板167として用いるとよい。
図11に示した坩堝1において、蓋8を構成する吐出板82、側壁83の外周、及び突起部169は、ヒータ21,22,170により、ヒータケース(3)を介して加熱される。しかし、吐出板82、側壁83、及び突起部169として例示される部材の少なくとも一つは、ヒータケース3と一体化されてもよい。このため、図11に示す坩堝1の構造は、図16に示される如く簡素化できる。図16に示される坩堝1において、蓋8の側壁83は上述の第1ヒータケース3aと一体化され、吐出板82とこれに形成された突起部169は上述の第2ヒータケース3bと一体化されている。即ち、図16に示される坩堝1では、蓋8の機能(吐出板82、側壁83、及び突起部169の機能の各々)をヒータケース3(第1及び第2ヒータケース3a,3b)に持たせている。図16において、第1ヒータケース3aを蓋8の側壁83と見なすと、この側壁83には先述した上部ヒータ21及び下部ヒータ22の各々がこれと直接接するように設けられている。図16において、同様に、第2ヒータケース3bを吐出板82及び突起部169の一体化物と見なすと、吐出板82及び突起部169の各々には先述した吐出ノズルヒータ170がこれと直接接するように設けられている。図16に示した坩堝1では、図11に示した坩堝1に比べて、その組立に要する部品数が減るため、ヒータ21,22,170からこれらにより加熱される部材82,83,169に到る熱伝達経路上の界面の数が減らせる。図16において、ヒータ21,170で発生した熱は、ヒータケース3のみを通して圧力調整室10に伝達されるため、その加熱効率は改善される。
図11に示した坩堝1,ヒータケース3,及び断熱機構165を備えた蒸着源200が据え付けられた蒸着装置(薄膜形成装置)の概略構成を図13と14に夫々例示する。真空槽2の上部に基板103を、その主面(材料36が成膜される)を下に向け、且つその主面に蒸着マスク161を密着させた状態で配置する。真空槽2の下部には、本発明による蒸着源200が配置される。坩堝1の吐出口81と蒸着マスク161(基板103)とは、先述した坩堝1の天地方向沿いに隔てられている。模式的に描かれた図11に対し、実際に吐出口81と蒸着マスク161とを隔てる距離は、坩堝1の天地方向の寸法(ヒータケース3aから吐出口81の上端に到る坩堝1の高さ)より短いこともある。図13に示された蒸着装置では、上記基板103の主面に材料36が成膜される成膜期間(Deposition Period)に、この主面内での蒸着源200の位置が往復移動される(図面において左右方向に動かされる)。図13の蒸着装置では、その待機期間(例えば、成膜期間の間における基板103の交換期間)において、蒸着源200を図面の左右のどちらかの端部に移動させて、基板103への余剰な蒸散材料の付着を防ぐに十分な距離で蒸着源200を基板103から隔てることが望ましい。一方、この成膜期間に基板103の主面に対する蒸着源200の位置が固定される場合、図14に示すように、基板103を蒸着マスク161に密着させた状態で回転させるとよい。この時、基板103の回転軸173に対して蒸着源200の位置をずらすことにより、その主面に成膜される材料36の膜厚均一性が向上される。また、図14に示すように、真空槽2の外部から夫々の位置が調整される板として、メインシャッター11と補助シャッタ50とが設けられる。上述した待機期間において、補助シャッタ50は坩堝1の吐出口81の上部に位置して、基板103への蒸着材料の付着を防止する。一方、基板103に材料36を成膜する時にはメインシャッター11を基板103の主面から、補助シャッタ50を坩堝1の吐出口81から、夫々ずらして、坩堝1から吐出される蒸散材料(例えば、材料36の蒸気)を基板103側に供給する。メインシャッター11は、図13の蒸着装置にも搭載可能であり、且つ上述された基板103への余剰な蒸散材料の付着を防ぐ。
図13及び図14に示される蒸着装置の各々には、坩堝1から基板103に供給される蒸散材料の単位時間当たりの供給量を測定するセンサ6が設置されている。これにより、坩堝1の蒸散材料360の供給状態をモニタリングでき、これを参照して、ヒータ21,22,170の設定温度や、蒸着源200の移動速度あるいは基板103の回転速度および、基板103毎の処理時間が適切に決定される。図13及び図14に示される蒸着装置の各々には図11に示された坩堝1が装着されているが、これを図16に示された坩堝1に置き換えてもよい。
本実施例では、実施例1及び実施例2で述べた坩堝1の夫々におけるオリフィス板7とその開口71の他の形態が記される。図1、図3、図11、図13、及び図14に示されたオリフィス板7は、それ自体に坩堝1の天地方向に延在する開口71が形成されている。
本実施例では、オリフィス板7が有する開口71を、これ自体に形成せず、これと坩堝本体4(オリフィス板7が保持される部分)の内壁とを隔てる間隙として形成する。図15には、開口が形成されていないブロック状部材がオリフィス板7として示される。このオリフィス板7は、坩堝本体4の上部にて、中空に浮く如く描かれるが、実際には少なくとも一本(望ましくは複数本)の図示されない保持部材により坩堝本体4に保持されている。即ち、開口71はオリフィス板7の外壁と、保持部材と、坩堝本体4(内壁)とにより囲まれた領域として形成される。先述したオリフィス板7では、開口71(蒸散材料の通路)は下部ヒータ22からヒータケース3、坩堝本体4、及びオリフィス板7を通して加熱されるため、下部ヒータ22で発生した熱は3つの界面を通して開口71に伝導される。本実施例では、開口71が、下部ヒータ22からヒータケース3、及び坩堝本体4を通して加熱されるため、下部ヒータ22で発生した熱の伝導路に存在する界面は2つに減る。従って、下部ヒータ22の設定温度(ヒータ通電)に対して開口71(オリフィス孔)の温度は更に上昇するため、この開口71及びその周辺に蒸着材料は付着し難くなる。これにより、蒸発室9(坩堝本体4の内部)で蒸発又は気化した材料36の圧力制御室10(坩堝本体4及びオリフィス板7の外壁と蓋8の内壁とに囲まれた空間)への供給量が安定化される。
本発明は、有機材料を蒸着する蒸着装置に用いる蒸着坩堝として利用することができる。また、本発明による有機材料の蒸着方法は、有機EL表示装置に代表される表示装置の製造に利用できる。
本発明の実施例1による坩堝の構成を示す断面図。 従来の有機蒸着用容器すなわち坩堝の構成を示す断面図。 本発明の実施例1による坩堝の吐出口付近における蒸散材料の付着状態を示す断面図。 本発明の実施例1による坩堝1のオリフィス板7の孔部71と吐出口孔81の温度差と、蒸着終了後の吐出口孔81への材料付着量の関係を示す概念図。 本発明の実施例1による坩堝1におけるオリフィス板7の孔部71の流路抵抗値を上部圧力制御室の吐出口81の流路抵抗値で除した値と吐出口の温度の関係および結露の発生有無の関係を示す概念図。 本発明の実施例1による円筒形状を有する坩堝構造を示す斜視図。 本発明の実施例1による直方体形状を有する坩堝構造を示す斜視図。 本発明による蒸着坩堝及び有機材料の蒸着方法の適用で生産される表示装置の構成を示す等価回路図。 図8に示した表示装置の画素の断面図。 マスク蒸着を目的とした従来の(A)薄膜形成装置の概略斜視図、及びこれに備えられた(B)有機蒸着用容器(坩堝)の概略断面図。 本発明の実施例2によるマスク蒸着用坩堝の構成を示す断面図。 マスク蒸着法の概要。 本発明の実施例2による蒸着坩堝1のマスク蒸着への適用例。 本発明の実施例2による蒸着坩堝1のマスク蒸着への別の適用例。 孔部71がオリフィス板7と坩堝本体4との隙間として設けられた本発明の実施例3による蒸着坩堝1。 本発明の実施例2によるマスク蒸着用坩堝の別の構造を示す断面図。
符号の説明
1…坩堝、1a,1b…蒸着坩堝、2…真空槽、3…ヒータケース、4…坩堝本体、5…ヒータ、7…オリフィス板、8…蓋、9…空間(蒸発室)、10…圧力制御室、21…上部ヒータ、22…下部ヒータ、36…有機材料、71…孔部(オリフィス)、81…吐出孔、82…吐出板、83…側壁。

Claims (19)

  1. 薄膜形成装置の蒸着源として用いられる蒸着坩堝であって、
    前記蒸着坩堝で蒸発される材料が収容される収容部分、
    前記収容部分と第1空間で離間されて配置され且つ第1開口を有するオリフィス板、及び
    前記第1空間の外側に前記オリフィス板と第2空間で離間されて配置され且つ前記蒸着坩堝で蒸発された前記材料を該蒸着坩堝の外側に吐出する第2開口を有する吐出板を備え、
    前記第1空間内の前記収容部分と前記オリフィス板との間には、前記材料の蒸発室が形成され、
    前記第2空間は、その圧力が前記蒸発室の圧力に対して制御される圧力制御室となる蒸着坩堝。
  2. 薄膜形成装置の蒸着源として用いられる蒸着坩堝であって、
    前記蒸着坩堝で蒸発される材料が充填される部分を有する容器、
    前記容器に設けられ且つ第1開口を有するオリフィス板、及び
    前記容器の外側に前記オリフィス板と対向して配置され且つ前記蒸着坩堝で蒸発された前記材料を該蒸着坩堝の外側に吐出する第2開口を有する吐出板を備え、
    前記容器内において前記材料の充填部分と前記オリフィス板との間には、該材料の蒸発室が形成され、
    前記オリフィス板と前記吐出板との間の空間は、その圧力が前記蒸発室の圧力に対して制御される圧力制御室となる蒸着坩堝。
  3. 前記第2の開口は前記吐出板から前記圧力制御室の外側に延在する突起の延在端に形成され、
    前記吐出板から隔てられた少なくとも1つの反射板と、該反射板から隔てられた冷却板とが前記吐出板から前記突起の延在方向沿いに順次配置され、
    前記反射板の前記吐出板側の主面は鏡面を有し、
    前記冷却板は冷却装置に接続され、且つその主面の一方は前記反射板の前記主面より広く、且つその主面の他方と前記吐出板とを隔てる距離は前記突起の延在端と該吐出板とを隔てる距離と同じ又は短いことを特徴とする請求項2に記載の蒸着坩堝。
  4. 前記突起、前記蒸発室、及び前記圧力制御室の夫々の側方にはヒータが設けられ、
    前記吐出板に隣接する前記反射板の前記鏡面を有する主面は前記ヒータと間隙を介して対向し、
    前記冷却板の前記一方の主面は、前記反射板により前記ヒータから遮られていることを特徴とする請求項3に記載の蒸着坩堝。
  5. 前記吐出板と前記冷却板の前記一方の主面との間には複数の前記反射板が互いに隔てられながら前記突起の延在方向に並べて設けられていることを特徴とする請求項3に記載の蒸着坩堝。
  6. 前記オリフィス板は前記容器の一端の内部に挿入され、
    前記容器の前記一端には前記オリフィス板を支持する支持部が設けられ、
    前記吐出板には前記第2開口が形成された面から前記容器の前記一端の外周へ延びる側壁が形成され、
    前記圧力制御室は、前記容器の前記一端の外周とこれを覆う前記吐出板の前記面と前記側壁との間に形成される請求項2又は請求項3に記載の蒸着坩堝。
  7. 前記突起、前記蒸発室、及び前記圧力制御室の夫々の側方にはヒータが設けられ、
    前記ヒータは前記吐出板の前記表面、該表面から前記圧力制御室の外周沿いに延びる前記側壁、及び前記第2開口を有し且つ該表面から延在する前記突起の各々に直接接して設けられていることを特徴とした請求項6に記載の蒸着坩堝。
  8. 前記突起、前記蒸発室、及び前記圧力制御室の夫々の側方に設けられたヒータと該ヒータが収納されるヒータケースとを備え、
    前記ヒータケースは、前記吐出板の前記表面、前記側壁、及び前記突起の機能の各々を備えることを特徴とした請求項6に記載の蒸着坩堝。
  9. 前記第1の開口は前記オリフィス板とこれに対向する前記容器の側面とを隔てる隙間として形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の蒸着坩堝。
  10. 前記圧力制御室における前記材料の蒸気圧は、当該材料を蒸発させる前記蒸発室のそれ以下に保たれている請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の蒸着坩堝。
  11. 前記蒸発室を加熱する第1のヒータと前記圧力制御室を加熱する第2のヒータとを備え、
    該第1のヒータと該第2のヒータは独立に制御される請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の蒸着坩堝。
  12. 前記蒸発室の温度は前記圧力制御室の温度より低く保たれている請求項1又は請求項2に記載の蒸着坩堝。
  13. 請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の蒸着坩堝を蒸着源として備えた薄膜形成装置であって、
    前記蒸発室で蒸発された前記材料が蒸着される基板が導入される筐体と、
    前記筐体に前記第2開口を介して接続される少なくとも一つの前記蒸着坩堝とを備え、
    前記筐体内は前記蒸発室及び前記圧力制御室のいずれよりも低い圧力に保たれている薄膜形成装置。
  14. 請求項3に記載の蒸着坩堝を蒸着源として備えた薄膜形成装置であって、
    前記蒸発室で蒸発された前記材料が蒸着される基板が導入される筐体と、
    前記基板の主面に形成される画素パターンに対応した複数の孔が形成された面を有し且つ該基板の該主面に該面で密着される蒸着マスクと、
    前記筐体に前記第2開口を介して接続される少なくとも一つの前記蒸着坩堝とを備え、
    前記筐体において、前記蒸着マスクは、前記面が密着された前記基板の前記主面が前記蒸着坩堝の前記第2開口に対向するように配置され、
    前記筐体内は前記蒸発室及び前記圧力制御室のいずれよりも低い圧力に保たれている薄膜形成装置。
  15. 基板の主面に有機材料を蒸着して表示装置を製造する方法であって、
    前記有機材料を第1空間で蒸発させる工程と、
    前記蒸発された有機材料を前記第1空間から該有機材料の蒸気圧が該第1空間と同等又はそれより低く保たれた第2空間に導入する工程と、
    前記第2空間に導入された前記蒸発された有機材料を前記第1空間及び該第2空間より低い圧力に保たれた第3空間に導入し、該第3空間に載置された前記基板の主面に蒸着させる工程とを含む表示装置の製造方法。
  16. 前記第2空間の温度は前記第1空間のそれより高く保たれている請求項15に記載の表示装置の製造方法。
  17. 前記第2空間と前記第3空間とを、これらを隔てる部材に形成された開口で接続し、
    前記蒸発された有機材料を、前記開口の温度が前記第2空間と同じかそれよりも高く保たれた状態で、該第2空間から該開口を通して前記第3空間に導入すること
    を特徴とした請求項16に記載の表示装置の製造方法。
  18. 前記第3空間における前記開口を囲む空間を、その温度が該開口の温度より低くなるように冷却すること
    を特徴とした請求項17に記載の表示装置の製造方法。
  19. 前記蒸発された有機材料を前記基板の主面に蒸着させる工程は、前記第1空間の加熱を止めた後に前記第2空間の加熱を止めることで終了される請求項16又は請求項17に記載の表示装置の製造方法。
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