[0020]本開示の様々な実施形態をこれより詳細に参照する。これらの実施形態の1つ又は複数の実施例が図に示されている。図面についての以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を表す。概して、個々の実施形態に関しての相違のみが説明される。各実施例は、説明のために提供され、本開示の限定を意味しない。一実施形態の一部として図示且つ記載されている特徴を、他の実施形態において用いたり、又は他の実施形態と共に用いたりしてもよく、それにより、さらに別の実施形態が生じる。本記載にこのような修正例及び変形例が含まれることが意図されている。
[0021]本明細書で使用される「蒸発材料」という用語は、蒸発して基板の表面上に堆積される材料であると理解してよい。例えば、蒸発材料は、基板上に堆積され、OLEDデバイスの光学活性層を形成する有機材料であってもよい。例えば、複数の開口を有する精細な金属マスクなどのマスクを使用することによって、材料が所定のパターンで堆積され得る。複数のピクセルが基板上に堆積され得る。蒸発材料の他の例には、ITO、NPD、Alq3、及び金属(例えば、銀又はマグネシウム)のうちの1つ又は複数が含まれる。
[0022]本明細書で使用される「蒸気源」又は「蒸発源」という用語は、基板上に堆積されるべき蒸発材料を供給する装置であると理解してよい。具体的には、蒸気源は、基板上に堆積されるべき蒸発材料を真空チャンバ内の堆積領域内へと方向付けるように構成され得る。蒸発材料は、蒸気源の複数のノズルを介して、基板に向けて方向付けられ得る。ノズルは、それぞれノズル排出口を有し得る。ノズル排出口は、堆積領域、特にコーティングされる基板に向けて方向付けられ得る。
[0023]蒸気源は、基板上に堆積される材料を蒸発させる蒸発器(又は「るつぼ」)、及びるつぼと流体接続された分配管を含み得る。分配管は、真空チャンバ内の堆積領域に蒸発材料のプルームを放出するために、蒸発材料を複数のノズルに誘導するように構成されている。
[0024]幾つかの実施態様では、蒸気源は、2つ以上の分配管を含み、各分配管は、複数のノズルを含む。例えば、各分配管は、2つ以上のノズル、具体的には、10個以上のノズル、より具体的には、30個以上のノズルを含む。ある分配管のノズルは、線源が設けられるように、線形のアレイ又は列に配置され得る。幾つかの実施形態では、蒸気源は、互いに隣接して配置された2つ以上の分配管を含み、2つ以上の分配管はそれぞれ、一列に配置された10個以上のノズルを含む。
[0025]「分配管」という用語は、蒸発材料を誘導し分配するためのチューブ又は管であると理解してよい。具体的には、分配管は、蒸発材料を、るつぼから、分配管の側壁を通って延在し得る複数のノズルへと誘導し得る。複数のノズルは、典型的に、少なくとも2つ以上のノズルを含み、各ノズルは、蒸発材料を主放出方向に沿って基板に向けて真空チャンバ内に放出するためのノズル排出口を含む。主放出方向は、基板の表面に対して実質的に垂直なノズル軸に対応し得る。本明細書に記載された実施形態によれば、分配管は、長手方向、特に実質的に垂直方向に延在する線形分配管であってもよい。幾つかの実施態様では、分配管は、円筒の断面形状を有する管を含んでもよい。円筒は、円形底面形状、又は任意の他の適切な底面形状(例えば、実質的に三角形の底面形状)を有してもよい。具体的には、分配管は、実質的に三角形の断面形状を有してもよい。
[0026]幾つかの実施態様では、蒸気源は、それぞれ実質的に垂直方向に延在する2つ又は3つの分配管を含み得る。各分配管は、それぞれのるつぼと流体接続することができ、それにより、種々の材料を基板上に共堆積させることができる。第1の分配管のノズル及び隣接する第2の分配管のノズルは、互いに近接して配置(例えば、5cm以下の距離)され得る。
[0027]図1は、本明細書に記載された実施形態に係る、基板10上に蒸発材料を堆積させるための蒸気源100の一部の概略断面図である。蒸気源100は、実質的に垂直方向に延在し得る分配管110を含む。代替的に、分配管は、別の方向、例えば、実質的に水平方向に延在してもよい。図1に示す実施形態では、分配管110は、実質的に垂直な線源を設ける。実質的に垂直に延在する分配管110は、システムの設置面積を縮小することができ、コンパクトで省スペースな堆積システムを設けることができるので、有益であり得る。幾つかの実施形態では、蒸気源100は、可動であり得る源支持体上に支持された2つ以上の分配管を含む。2つ以上の分配管は、それぞれ、実質的に垂直方向に延在してもよい。
[0028]分流管110は、複数のノズルを含む。複数のノズルは、蒸発材料を、分配管110の内部空間から、基板10が配置された真空チャンバ内の堆積領域50へと方向付けることを可能にする。幾つかの実施形態では、10個以上のノズル、具体的には、30個以上のノズルを分配管110に設けることができる。複数のノズルは、線形構成で分流管110の長手方向に沿って配置され得る。
[0029]本明細書に記載された実施形態によれば、複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズル120は、ノズル軸Aに沿って延在し、蒸発材料のプルーム115を基板10に向けて放出するように構成された蒸気放出開口123を有する第1のノズルセクション121を含む。少なくとも1つのノズル120は、第1のノズルセクション121の下流の第2のノズルセクション122を含み、第2のノズルセクション122は、蒸発材料のプルーム115を成形するための成形通路125を含む。成形通路125は、少なくともセクション内でノズル排出口126に向かって減少する寸法を有する。具体的には、実質的に垂直方向Vにおける成形通路125の寸法は、第1のノズルセクション121からノズル排出口126に向かう方向において減少し得る。
[0030]蒸気放出開口123は、蒸発材料のプルーム115を第1のノズルセクション121から第2のノズルセクション122内へと放出するように構成され得、ノズルチャネル124における開口部、例えば狭窄部として構成され得る。したがって、第1のノズルセクション121は、内部で第1の蒸気圧を維持するように構成された第1の圧力領域を設け得、第2のノズルセクション122は、蒸発中に内部で第2の蒸気圧を維持するように構成された第2の圧力領域を設け得、第1のノズルセクション121と第2のノズルセクション122は、第1のノズルセクションの下流端に設けられた開口部によって分離される。第2の蒸気圧は、第1の蒸気圧よりも、例えば、2倍以上、又はさらには1桁以上低い場合がある。
[0031]ノズル排出口126は、蒸発材料が基板10に向かって伝播できるように、蒸発材料を真空チャンバの内部空間内に放出するように構成され得る。真空チャンバは、内部に第3の圧力を維持するように構成され得、第3の圧力は、第2のノズルセクション内の第2の蒸気圧よりも、典型的に、2倍以上、又はさらには1桁以上低い。ノズル排出口126は、第2のノズルセクション122の下流端に設けられ得、第3の圧力を内部に有する真空チャンバの内部容積と、第2のノズルセクション122の内部の第2の蒸気圧領域とを分離し得る。
[0032]少なくとも1つのノズル120は、蒸気流を、ノズルから排出される前に方向付け且つ成形するように構成され、その結果、ノズル排出口126を通って少なくとも1つのノズル120から排出されるほぼすべての蒸気分子軌道が、少なくとも1つの断面平面(例えば、図1に示された垂直に延在する断面平面)、具体的には、ノズル軸Aを含むすべての断面平面における円錐角α(円錐頂角α)内に含まれる。具体的には、少なくとも1つのノズルから排出されるほぼ全ての蒸気分子(例えば、蒸気分子の70%超、80%超、又は90%超)が、20°から90°の間であり得る円錐角α(10°から45°の間の円錐半角α/2に対応する)内に含まれ得る。例えば、第2ノズルセクションの成形通路125の内側形状を適宜適合させることによって、円錐角(α)が選択可能となり得る。
[0033]少なくとも1つのノズル120によって放出されるほぼ全ての蒸気分子を含む円錐角(α)は、典型的に、20°から90°、具体的には、30°から70°の範囲であり得、ノズル軸Aは、図1に概略的に示されるように、円錐の中心軸を画定する。
[0034]本明細書に記載された実施形態に係る蒸気源100は、典型的に、第2のノズルセクション122に入る、蒸気放出開口123によって放出された蒸発材料のプルーム115が、自由分子流(「分子流レジーム」)を形成するような圧力で動作する。言い換えれば、プルーム115の分子の平均自由行程は十分に大きく、個々の分子が第2のノズルセクション122内で直線状に移動すると見なしてもよく、分子間の衝突は実質的に無視してよい。具体的には、蒸気源は、典型的に、第2のノズルセクション122及び真空チャンバの内部容積において分子流レジームをもたらす圧力で動作する。具体的には、第2のノズルセクション内の第2蒸気圧は、1Pa未満、具体的には、0.1Pa以下、より具体的には、0.01Pa以下であってもよい。真空チャンバ内の第3の圧力は、第2のノズルセクション122内の第2の蒸気圧未満、例えば、0.1Pa以下、具体的には、0.001Pa以下であってもよい。
[0035]一方、分配管110の内部及び/又は第1のノズルセクション121の内部の第1の圧力は、1Pa以上であってもよい。この圧力では、十分な分子間衝突が存在しており、分子流レジームよりも粘性流モデルが、蒸気分子の運動をより正確に説明する。特に、第1のノズルセクション内では、分子間の衝突を通常無視することができない。
[0036]以下では、少なくとも1つのノズル120の動作の基礎となる物理的性質について、図4を参照して簡単に説明する。
[0037]表面温度が凝縮の防止に十分なほど高いとき、表面301に当たる蒸気分子は、表面301に衝突し、表面301に一時的にしか残らない。分子流レジームでは、分子は、(コサインθ)N形状に近い確率関数を有する方向に表面を離れる。ここで、Nの値は、典型的には、1から3であり、θは、分子が表面を離れる角度である。したがって、離脱方向は、到来方向とは完全に無関係である。
[0038]したがって、分子流レジームでは、分子は、任意の方向で加熱された表面から離れることができる。分子の軌跡の確率は、図4に示すベクトル302の長さに比例する。ベクトル終点の位置は、前記(コサインθ)N関数によって記載される。ここで、Nは、典型的には、1と3との間であり、θは、表面からの角度である。しかし、この確率モデルは、圧力が遷移流又は粘性流レジームに上昇するときの分子挙動を正確に反映しない。
[0039]図4に示される軌道確率モデルを図1に示された少なくとも1つのノズル120の幾何学形状に適用することにより、蒸気放出開口123によって放出されるプルーム115を成形する成形通路125を設ける第2のノズルセクション122が、蒸気軌道制御の実質的な改善を可能にすることが示される。特に、成形通路125の寸法がノズル排出口126に向かって減少するので、ノズル空洞の壁上の分子が所望の最大円錐角以外の角度でノズルから脱出する確率が遙かに低い幾何学的形状が生じる。特に、成形通路125の寸法は、ノズル排出口に向かって漸進的に且つ連続的に減少し得る。特に、側壁127が最終的にノズル軸Aに対して実質的に垂直となり得るまで、成形通路125の側壁127の傾斜は、例えば、図1に概略的に示されているように、ノズル軸Aに対して漸進的により傾斜し得る。蒸気放出開口123からノズル排出口126へと直接移動しない分子は、成形通路125の内側側壁に接触し、図4に示される確率モデルに従って、軌道に沿って空洞内を移動する。分子は、あらかじめ規定された最大円錐角よりも大きい角度でノズルを脱出することができるが、確率は実質的に低くなる(図1の点線を参照)。ノズル空洞内には分子は残らない。むしろ、高確率軌道が許容脱出円錐角に対応する場合、主にノズルから脱出するまで、分子は、成形通路125の一方の側面から成形通路125の他方の側面へと移動する。図1では、蒸気分子の大部分(70%超、80%超、又は90%超)が、ノズル軸Aに対する±10°から±40°の範囲に対応し得る円錐角α内でノズルから離脱する。
[0040]成形通路125の放物線形状輪郭によって、表面を離れる分子、特にノズル排出口付近の位置から成形通路125を直接離れる分子の低角度分子軌道の確率がさらに低くなり得る。例えば、±10°の角度を超えて50%の低角度放出を有し得る直線壁ノズル形状と比較して、放物線状ノズル形状は、ノズル軸に対する±10°の角度を超えて33%以下の低角度放出をもたらすことができる。
[0041]図1に戻ると、第2のノズルセクション122は、蒸気放出開口123によって放出される蒸発材料のプルーム115を成形するように構成された、対向して配置された複数の側壁127を有し得る。側壁127間の距離は、少なくともセクション内で第1のノズルセクション121から離れてノズル排出口126に向かう方向に、特にノズル排出口まで、連続的に且つ漸進的に減少し得る。特に、側壁127の間の距離は、第1のノズルセクションからノズル排出口まで連続的に減少し得、その結果、第2のノズルセクションは、ノズル排出口126の位置において最小寸法を有する。特に、成形通路125の側壁127の傾斜は、漸進的により傾き、最終的にはノズル軸Aに対して実質的に垂直になり得る。ノズル軸に対して大きな角度でノズルを離れる分子の確率を低くすることができる。特に、側壁127間の距離は、第1の距離D1から第2の距離D2まで減少し得る。第2の距離D2は、第1の距離D1の半分未満、具体的には、第1の距離の4分の1未満であり得る。
[0042]成形通路125の寸法D1/D2は、ノズル軸Aを含む断面箇所、具体的には、ノズル軸Aを含む垂直断面内で測定される。幾つかの実施態様では、成形通路125の寸法は、ノズル軸を含むすべての断面において、ノズル排出口126に向かって減少し得る。例えば、成形通路125は、図1に概略的に示されているように、正味の直径(clear diameter)がノズル排出口126に向かって減少する状態で、具体的には、正味の直径が第2のノズルセクション122の入口からノズル排出口126まで連続的に減少する状態で、ノズル軸Aに対して回転対称であり得る。
[0043]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、成形通路125の寸法は、第1の寸法D1、特に、15mm以上から、第2の寸法D2、特に、6mm以下まで連続的に減少する。上述のように、成形通路125の寸法は、ノズル軸を含む少なくとも1つの断面平面(例えば垂直断面)において測定される。幾つかの実施形態では、成形通路の寸法は、ノズル軸Aを含むすべての断面において、ノズル排出口126に向かって減少する。成形通路の最小寸法は、ノズル排出口126の位置に設けられ得、例えば、6mm以下、特に、幾つかの実施形態では2mm以下である。
[0044]幾つかの実施形態では、図1の断面図に示されるように、ノズル排出口付近の位置において、ノズル軸Aに対する成形通路の側壁127の傾斜は、例えば、10°から40°の間の第1の角度から、60°から90°の間の第2の角度まで、ノズル排出口126に向かって増大する。例えば、側壁127は、ノズル排出口126に隣接する位置において、ノズル軸に対して実質的に垂直に延在し得る。
[0045]幾つかの実施形態では、成形通路125は、ノズル空洞を設ける。ノズル空洞は、ノズル軸Aに対する、蒸気放出開口123によって放出される蒸発材料の方向性を改善するように構成された形状を有する。本明細書で使用される「ノズル空洞」という用語は、(蒸気放出開口123によって設けられた)蒸気入口、及び(ノズル排出口126によって設けられた)蒸気出口を有する内部ノズル空間であると理解することができ、蒸気入口及び蒸気出口は、ノズル軸Aに対して垂直な面積を有しており、ノズル空洞の中心領域の面積よりも小さい、ノズル軸Aに対して所定の最大角度(α/2)よりも大きな角度でノズル空洞に入る分子は、所定の最大角度(α/2)よりも典型的に狭い異なる角度(すなわち、円錐角度α)でノズル空洞から排出され得るまで、側壁127間においてノズル空洞内部を数回伝播し得る。
[0046]本明細書で使用される「ノズル軸Aに対する、蒸発材料の方向性を改善する」という表現は、蒸気放出開口123を通って第2のノズルセクション122へと入る分子に比べて、より多くの蒸気分子が、ノズル軸Aに対する所定の最大円錐角(α/2)よりも小さい角度(すなわち、円錐角α内)で第2のノズルセクション122から排出されることを意味すると理解することができる。言い換えると、第2のノズルセクションから排出されるプルーム115の方向性は、蒸気放出開口123を通って第2のノズルセクション122に入るプルーム115の方向性と比べて良好である。
[0047]特に、ノズル空洞の幾何学的形状は、蒸気分子軌道が成形且つ整列されるように適合されており、ノズルは、そこから排出される蒸気フラックスのうちの高割合のフラックスを、ノズル軸Aに対して明確に画定された、制御可能な、且つ/又は典型的には狭い円錐角に集中させるように作用する。例えば、ノズル空洞は、以下の1つ以上の条件が当てはまるような内側形状を有し得る。(1)プルームフラックス(すなわち、蒸気分子のプルームフラックス)の70%超が、ノズル軸を含む少なくとも1つの断面平面(例えば、垂直平面)、具体的には、ノズル軸を含むすべての断面平面において、ノズル軸Aに対して±12.5°以下の角度でノズルから排出される。この場合、ノズルから排出される蒸気円錐の所定の円錐角αは25°である。(2)プルームフラックス(すなわち、蒸気分子のプルームフラックス)の90%超が、ノズル軸を含む少なくとも1つの断面平面(例えば、垂直平面)、具体的には、ノズル軸を含むすべての断面平面において、ノズル軸Aに対して±25°以下の角度でノズルから排出される。この場合、ノズルから排出される蒸気円錐の円錐角αは50°である。(3)プルームフラックスの95%超が、ノズル軸を含む少なくとも1つの断面平面(例えば、垂直平面)、具体的には、ノズル軸を含むすべての断面平面において、ノズル軸Aに対して±30°以下の角度でノズルから排出される。この場合、ノズルから排出される蒸気円錐の円錐角αは60°である。
[0048]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、成形通路125の側壁127は、少なくとも部分的に実質的に放物線形状を有し得、特に、放物線の頂点が、実質的にノズル排出口126の位置に位置する。成形通路125の側壁127の放物線形状は、ノズルから排出される分子の方向性を改善し、高割合のプルームフラックスを所定の円錐角内により良好に閉じ込めるのに役立つ。特に、分子が、ノズル軸に対する高角度で第2のノズルセクションから排出される確率が減少し得る。
[0049]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、ノズルは、1つより多くの直列の成形通路を含み得る。例えば、第2のノズルセクションは、第1の成形通路、及び第1の成形通路の下流の第2の成形通路を含み得る。特に、成形通路のカスケードが設けられ得る。各成形通路は、ノズル軸に対する蒸発材料の方向性をさらに改善することができる。
[0050]例えば、幾つかの実施形態では、第1の成形通路は、少なくともセクション内で第2の成形通路に向かって減少する寸法を有してもよく、第2の成形通路は、少なくともセクション内でノズル排出口に向かって減少する寸法を有してもよい。第1の成形通路が蒸発材料のプルームを第2の成形通路内に放出することができ、そこでプルームがさらに成形され得るように、蒸気経路の狭窄部を第1の成形通路から第2の成形通路への移行部に設けてもよい。
[0051]諸実装形態では、ノズルは、直列の(少なくとも2つの)放物線形状の成形通路のカスケードを含んでもよく、各成形通路の寸法は、第1のノズルセクションから離れる方向に減少する。連続的な成形通路は、それぞれが分子流レジームにおいて作動するように構成されており、ノズルから排出されるほとんどの蒸気分子を規定された円錐角内にさらに閉じ込めるために、それぞれの先行する成形通路の形状を改善し得る。
[0052]本明細書に記載された他の実装形態と組み合わせることができる幾つかの実施態様では、第1のノズルセクション121は、ノズル軸Aに沿って延在するノズルチャネル124を含み、蒸気放出開口123は、蒸発材料のプルーム115を第2のノズルセクション122内に放出するための開口部として構成される。開口部は、ノズルチャネル124の下流端に設けられてもよく、ノズルチャネル124の狭窄部として構成される。ノズル軸Aに対して垂直な断面平面における開口部のサイズは、ノズルチャネルのサイズよりも小さくてよく、例えば、2倍以上、具体的には、10倍以上小さくてもよい。代替的に又は追加的に、ノズル軸Aに対して垂直な断面平面における開口部のサイズは、ノズル軸Aに対して垂直な断面平面におけるノズル排出口126のサイズよりも、例えば2倍以上、具体的には、10倍以上小さくてもよい。
[0053]幾つかの実施形態では、ノズル排出口126は、蒸気放出開口123の中心に対して20°以上及び90°以下の円錐角α、具体的には、30°以上及び70°以下の円錐角αを設け得る。言い換えれば、ノズル軸に対する、ノズル排出口によって設けられる円錐半角α/2は、±10°以上及び±45°以下、具体的には、±15°以上及び±35°以下であってもよい。したがって、分子流レジームにおいて作動する場合、ノズル軸Aに対してα/2よりも小さい角度で第2のノズルセクション122に入る蒸気分子は、典型的に、成形通路の側壁に衝突することなく、妨げられることなくノズルから排出される。ノズル軸Aに対してα/2より大きい角度で第2のノズルセクション122に入る分子は、成形通路の少なくとも1つの側壁に衝突し、ノズル軸Aに対してα/2より小さい角度で(すなわち円錐角α内)で第2のノズルセクションを離れる確率が高い。ノズルから排出されるプルーム115の方向性を改善することができる。
[0054]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、第1のノズルセクション121及び第2のノズルセクション122は、熱的に接触しているか、又は一体型構成要素として一体的に設けられている。具体的には、第1のノズルセクション121及び第2のノズルセクション122は、一体型であるか、又は一体型金属構成要素であってもよい。したがって、第1のノズルセクション及び第2のノズルセクションを、蒸発材料の蒸発温度よりも高い温度と実質的に同じ温度で保持することができ、その結果、第1のノズルセクション121及び第2のノズルセクション122の内壁上で蒸気が凝縮することを回避することができる。したがって、分子流領域における成形通路125の側壁127に衝突する分子は、図4に示す確率関数に従って、ある角度で高温の側壁から離れる。
[0055]図1に概略的に示されるように、成形通路125によって形成されるノズル空洞は、少なくとも成形領域128を有し得る。成形領域128は、第1のノズルセクション121の下流部分としての、ノズル軸Aに対して垂直な同一断面平面内に、すなわち、第1のノズルセクション121と重なるようにして配置される。例えば、成形通路125の側壁127は、第1の放物線セクションを形成することができ、第1の放物線セクションの頂点が、実質的にノズル排出口126において配置され、成形通路125の側壁127が、第2の放物線セクションを形成することができ、第2の放物線セクションの頂点が、実質的に蒸気放出開口123において配置され、第2の放物線セクションの傾斜は、第1の放物線セクションの傾斜よりも小さい。蒸気放出開口123から分配管110に向かう方向に少なくとも部分的に延在する成形領域128を含む、成形通路125の側壁127の異なる形状も同様に可能である。大きな角度で第2のノズルセクション122を離れる蒸気分子の確率がさらに減少し得る。
[0056]図2は、図1の蒸気源の概略斜視図であり、蒸気源100を断面図で部分的に示す。特に、内部ノズル壁の形状を例示するために、少なくとも1つのノズル120の一部が切り取られている。
[0057]図2に概略的に示されるように、本明細書に記載された実施形態に係る蒸気源100は、蒸発材料を分配管110から基板10に向けて方向付けるための少なくとも1つのノズル120を有する。少なくとも1つのノズル120は、ノズル軸Aに沿って延在するノズルチャネル124と、蒸発材料のプルーム115を放出するための開口部として構成された蒸気放出開口123とを有する第1のノズルセクション121を有する。少なくとも1つのノズルは、第1のノズルセクションの下流の第2のノズルセクション122をさらに有する。第2のノズルセクション122は、成形通路125、及びノズル排出口126を有し、成形通路125は、ノズル軸Aに対する、開口部で放出される蒸発材料の方向性を改善するように適合された形状を有する。
[0058]幾つかの実施態様では、成形通路125の寸法(すなわち、垂直方向Vにおける寸法)は、ノズル排出口126に向かって減少し得る。これにより、ノズル軸Aに対して大きな角度で蒸気分子が第2ノズルセクションから排出される確率を下げることができ、改善された形状と、より急勾配のピクセル壁とを有するピクセルが堆積され得る。表示品質が改善され得る。
[0059]図2に示された実施形態では、蒸気放出開口123及び/又はノズル排出口126は、非円形の形状を有する。具体的には、蒸気放出開口123とノズル排出口126の両方がスリット開口であってもよい。図2に示された実施形態では、スリット開口の開口長が実質的に水平方向Hに延び、スリット開口の開口幅が実質的に垂直方向に延びている。諸実施形態では、蒸気放出開口及び/又はノズル排出口の開口長と開口幅との比は、5以上である。
[0060]別の実施形態では、蒸気放出開口123及び/又はノズル排出口126は、ノズル軸Aに対して回転対称であり得る。例えば、蒸気放出開口123及びノズル排出口126は、ノズル軸Aの周りで円筒又は環状の形状を有してもよい。具体的には、蒸気放出開口123及び/又はノズル排出口126は、球形又は円形であってもよい。
[0061]幾つかの実施形態では、ノズルチャネル124及び/又は成形通路125は、ノズル軸Aに対して回転対称である。例えば、成形通路125の側壁127は、ノズル軸を含む各断面内で放物線形状を有し得る。具体的には、成形通路125は、ノズル軸Aの周囲で回転する放物線の形状を(少なくとも部分的に)有し、頂点がノズル排出口に位置し得る。したがって、蒸発材料のプルーム115は、ノズル軸Aに対して垂直な、垂直方向及び水平方向の両方において成形され得る。具体的には、プルームは、ノズル軸Aに対して明確に画定された小さな円錐角を有する円錐としてのノズルから排出されるように成形することができる。
[0062]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、蒸気放出開口123は、ノズル軸Aに沿った第1の寸法、及びノズル軸に対して垂直な(例えば、垂直方向Vにおける)第2の寸法を有し、第1の寸法と第2の寸法との間の比は、1以上、具体的には、5以上である。例えば、蒸気放出開口123は、ノズル軸Aに沿って、1mm以上、具体的には、5mm以上にわたって延在し、1mm以下の開口幅を有する開口部として構成され得る。第1の寸法と第2の寸法との比が大きい場合、成形通路が行う必要のある成形がより少なくなるので、第2のノズルセクション122に入るプルーム115のノズル軸に対する方向性を改善することができる。
[0063]幾つかの実施態様では、蒸気放出開口123は、ノズル軸Aに沿った円形開口部の延長部よりも小さい直径を有する円形開口部である。したがって、ノズル軸に対して大きな角度で第2のノズルセクション122に入る分の分子を減少させることができ、第2のノズルセクション122の成形通路122が行う必要のある成形がより少なくなる。
[0064]本明細書に記載された少なくとも1つのノズル120は、以下の利点を提供する。例えば、冷却された遮蔽板上で凝縮するために典型的に高価な蒸発材料(例えば、有機材料)が浪費される部分が少なくなる。所与の供給源温度での有効堆積速度を増大させることができる。例えば、一定間隔でノズルを洗浄する必要がない場合があるので、蒸気源の作動時間を増大させることができる。より低い有効堆積速度を補うために、蒸発温度を上昇させる必要がない場合がある。時間の経過と共に処理結果を変化させ得る凝縮が生じる冷却バッフルが存在しない。洗浄に要する処理時間が短くなるため、スループットを向上させることができる。粒子汚染のリスクを低減することができる。例えば、遮蔽板又はバッフル板が減少するか、又は必要でなくなるので、機械のコストを削減することができる。システムの信頼性を高めることができる。
[0065]本明細書に記載された実施形態では、成形通路125の側壁127は、表面上の凹凸からの望ましくない散乱を低減又は防止するために、滑らかであり得る。例えば、成形通路の表面の平均粗さは、1.5μm以下であってもよい。
[0066]図3は、本明細書に記載された実施形態に係る、複数のノズル116を有する蒸気源100の概略断面図である。複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズル120は、本明細書に記載された実施形態のいずれかに従って構成することができる。具体的には、蒸気源100の分配管110に設けられた2つ、5つ、又はそれ以上のノズルを、本明細書に記載された実施形態に従って構成することができる。
[0067]複数のノズル116は、それぞれノズルチャネルを有し得る。ノズルチャネルは、堆積領域50に向かってそれぞれノズルのノズル軸Aに沿って延在し、それぞれのノズルの主蒸発方向を規定する。幾つかの実施形態では、ノズル軸は、基板10に向かって実質的に水平方向に延在し得る。蒸発材料の複数のプルームが、分配管110の内部空間から、複数のノズル116を通って基板10に向けて方向付けられ得る。
[0068]諸実装形態では、マスクが、蒸気源100と基板10との間に配置されてもよい。該マスクは、基板に堆積されるピクセルパターンを画定する開口パターンを備えたFMMであってもよい。例えば、マスクは、100,000個以上の開口、又は具体的には、1,000,000以上の開口を有してもよい。
[0069]本明細書に記載された実施形態によれば、複数のノズル116のうちの少なくとも1つのノズル120は、蒸発材料のプルーム115を放出するように構成された第1のノズルセクション121、及び蒸発材料のプルーム115を成形するように構成された第2のノズルセクション122を有し、第2のノズルセクション122の成形通路125は、ノズル軸Aに対するプルーム115の方向性を改善するように成形された側壁127を有する。言い換えると、成形通路によって、ノズル軸に対する所定の角度よりも大きい角度で伝播する蒸気分子を有するプルームがノズルから排出される確率を下げることができる。
[0070]具体的には、成形通路125の寸法は、ノズル排出口に向かって、特に、ノズル軸を含む全ての断面平面において減少し得る。
[0071]複数のノズル116の各ノズルは、対応する設定配置を有してもよく、すなわち、蒸発材料のプルームを放出するように構成されたそれぞれの第1のノズルセクション、及び第1のノズルセクションの下流のそれぞれの第2のノズルセクションを含み、第2のノズルセクションは、1つの関連するノズルの蒸発材料のプルームを個別に成形するための成形通路を有する。具体的には、複数のノズル116は、少なくとも1つのノズル120と同じ構成を有してもよい。幾つかの実施形態では、蒸気源は、共通の供給源支持体上に互いに隣接して配置された2つ、3つ、又はそれ以上の分配管を含んでもよい。
[0072]これにより、少なくとも1つの方向においてプルームの広がりを制限することが可能となり、マスクのシャドーイング効果が低減し、ピクセル品質が向上する。例えば、堆積されるピクセルのピクセルエッジのシャドウは、第2のノズルセクションによってプルームが成形される方向(例えば、垂直方向)において、3μm、具体的には、2.5μm以下の寸法を有し得る。しかしながら、高いノズル温度に起因して材料が少なくとも1つのノズル上で凝縮しないので、材料の比較的高い利用率を達成することができる。
[0073]図3に示されるように、第1のノズルセクション121及び第2のノズルセクション122は、熱的に接触するか、及び/又は、一体的に形成されてもよい(例えば、一体型構成要素として設けられてもよい)。蒸気源の複数のノズルは、典型的には、加熱デバイスによって直接的又は間接的に加熱可能であり、且つ/又は分配管110と熱的に接触する。堆積中、ノズル表面上での蒸発材料の凝縮を防止するために、ノズルの温度は、典型的に、高温であり、すなわち、蒸発材料の蒸発温度に等しいか、又はそれより高い。ノズル表面に蒸発材料が凝縮すると、材料の蓄積によりノズル径の幅の縮小を招き、最終的にノズルの目詰まりを招くことがある。
[0074]第2のノズルセクション122を第1のノズルセクション121と熱的に接触するよう配置することによって、両方のノズルセクションを、ノズル表面上への蒸発材料の凝縮を回避するのに適した同様の(高温の)温度に維持することができる。例えば、第1のノズルセクション及び第2のノズルセクションは、金属などの熱伝導性材料で構成されて、互いに直接接触してもよい。図3に示される実施形態では、第1のノズルセクション及び第2のノズルセクションは、一体的に形成される。例えば、第1のノズルセクション121及び第2のノズルセクション122を含むノズルは、例えば金属製の一体型構成要素として設けられてもよい。堆積中、第1のノズルセクションと第2ノズルセクションで同様の温度を確保することができる。
[0075]幾つかの実装形態では、第1のノズルセクション121は、分配管110の加熱された部分(例えば、分配管の壁)と熱的に接触する。分配管の加熱された部分は、加熱デバイスによって、例えば、100℃以上、具体的には、300℃以上、より具体的には、500℃以上の温度まで加熱可能である。第2のノズルセクション122は、第1のノズルセクション121と熱的に接触し得る。したがって、第2のノズルセクション122は、分流管110及び第1のノズルセクション121を介して間接的に加熱され得る。第1のノズルセクション121及び第2のノズルセクション122への蒸発材料の凝縮を低減又は回避することができる。
[0076]図3に示すように、蒸気源100は、供給源支持体105、るつぼ102、及び供給源支持体105に支持された分配管110を含む。供給源支持体105は、蒸発中に供給源搬送経路に沿って移動可能であり得る。代替的に、蒸気源は、移動する基板をコーティングするように構成された静止型供給源であってもよい。
[0077]図5Aは、本明細書に記載された実施形態に係る、蒸気源100を含む真空堆積システム400の概略上面図を示す。真空堆積システム400は、蒸気源100が設けられた真空チャンバ101を含む。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、蒸気源100は、コーティングされる基板10が配置される堆積領域50を通過する並進運動のために構成される。代替的に又は追加的に、蒸気源100は、回転軸の周りを回転するように構成されてもよい。具体的には、蒸気源100は、供給源搬送経路に沿って水平方向Hに並進運動するように構成されてもよい。
[0078]幾つかの実施形態では、真空堆積システム400は、真空チャンバ101内の蒸気源100を供給源搬送経路に沿って移動させるための第1の駆動部401、及び蒸気源100の分配管110を回転させるための第2の駆動部403のうちの少なくとも1つを含み得る。分配管110は、基板10及びマスク11が配置された第1の堆積領域50から、第2の基板20及び第2のマスク21が配置され得る、蒸気源100の反対側の第2の堆積領域51へと回転することができる。
[0079]蒸気源100は、本明細書に記載された実施形態のいずれかに従って構成してもよく、したがって、上記の説明を参照することが可能であり、かかる説明をここでは繰り返さない。さらに、蒸気源100は、本明細書に記載された実施形態のいずれかに係るノズルを有する分配管を含んでもよく、したがって、上記の説明を参照することが可能であり、かかる説明をここでは繰り返さない。
[0080]実施形態によれば、蒸気源100は、1つのるつぼ102又は2つ以上のるつぼ、及び1つの分配管110又は2つ以上の分配管を有し得る。例えば、図5Aに示す蒸気源100は、互いに隣接して配置された2つのるつぼ及び2つの分配管を含む。図5Aに示されるように、基板10及び第2の基板20は、蒸発材料を受け入れるために真空チャンバ101内に設けられ得る。
[0081]実施形態によれば、基板10をマスキングするためのマスク11が、基板10と蒸気源100との間に設けられてもよい。マスク11は、所定の配向、具体的には、実質的に垂直な配向でマスクフレームによって保持され得る。実施形態では、マスク11を支持し移動させるための1つ又は複数のトラックが設けられ得る。例えば、図5Aに示す実施形態は、蒸気源100と基板10との間に配置されたマスクフレームによって支持されたマスク11、及び蒸気源100と第2の基板20との間に配置された第2のマスクフレームによって支持された第2のマスク21を有する。基板10及び第2の基板20は、真空チャンバ101内のそれぞれの移送トラック上で支持され得る。
[0082]諸実施形態では、マスクが、例えば、OLED製造システムにおいて、基板上に材料を堆積させるために使用される場合、そのマスクは、約50μm×50μm以下のサイズを有するピクセル開口を有するピクセルマスクであってもよい。一例では、ピクセルマスクは、約40μmの厚さを有してもよい。堆積中、マスク11と基板10は、典型的には接触している。それでも、マスクの厚さとピクセル開口の大きさを考えると、ピクセル開口を囲む壁がピクセル開口の外側部分をシャドウイングするところでシャドウイング効果が現れることがある。本明細書に記載されたノズルは、マスク及び基板に対する蒸発材料の衝撃の最大角度を制限し、シャドウイング効果を低減することができる。例えば、シャドウの寸法は、本明細書に記載された堆積方法により、3μm以下となり得る。
[0083]本明細書に記載された実施形態によれば、基板は、実質的に垂直方向に材料でコーティングされ得る。典型的には、分配管は、実質的に垂直に延在する線源として構成される。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる、本明細書に記載された実施形態では、「垂直」という用語は、特に、基板の配向又は分配管の延在方向について言及する場合、垂直方向から20°以下(例えば、10°以下)の偏差を許容すると理解される。例えば、垂直配向から多少の偏差を有するように配置された基板は、より安定した堆積プロセスをもたらす場合があるので、このような偏差を設けてもよい。材料の堆積中の実質的に垂直な基板配向は、水平な基板配向とは実質的に異なる。基板の表面は、一方の基板寸法に対応する一方の方向に延在する線源によって、且つ、他方の基板寸法に対応する他方の方向に沿った蒸発源の並進運動によって、コーティングされる。
[0084]幾つかの実施態様では、蒸気源100は、トラック上の真空堆積システム400の真空チャンバ101内に設けられ得る。トラックは、蒸気源100の並進運動のために構成される。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、蒸気源100の並進運動のための第1の駆動部401が、トラック又は供給源支持体105に設けられ得る。したがって、堆積中、蒸気源が、特に直線経路に沿って、コーティングされる基板の表面を通り過ぎることができる。基板上の堆積材料の均一性を改善することができる。
[0085]図5Bに概略的に示されているように、蒸発源は、供給源搬送経路に沿って、特に水平方向に、コーティングされる基板を通り過ぎる。図5Aに示す供給源位置から図5Bに示す供給源位置への供給源の移動中、薄いパターンの材料が基板上に蒸着し得る。蒸発材料のプルームの膨張は、分配管に設けられたノズルの幾何学的形状によって、垂直方向及び/又は水平方向に制限され得る。具体的には、蒸発材料のプルームは、第1のノズルセクションによって放出され得る。プルームは、方向性を改善するために、且つそれぞれの成形通路を有する第2のノズルセクションによって大きな角度の軌道で伝播する分の分子を低減するために、成形され得る。
[0086]図5Cに概略的に示されているように、蒸気源100の分配管は、例えば、約180°の回転角度だけ、垂直回転軸の周りで回転し、第2の基板20が配置される第2の堆積領域51へと方向付けられ得る。蒸発源を、供給源搬送経路に沿って、図5Aに示す供給源位置に戻すことによって、コーティングが、真空チャンバ101の第2の堆積領域51内の第2の基板20上で継続することができる。
[0087]真空堆積システム400は、様々な用途に使用され得る。様々な用途には、例えば、OLEDデバイス製造の用途が含まれ、OLEDデバイス製造には、2つ以上の有機材料などの2つ以上の源材料が同時に蒸発される処理方法が含まれる。図5Aから図5Cに示される実施例では、2つ以上の分配管及び対応するるつぼが、移動可能な供給源支持体105上に互いに隣接するように設けられる。例えば、幾つかの実施形態では、3つの分配管が互いに隣接して設けられ得、各分配管は、蒸発材料をそれぞれの分配管の内部から真空チャンバの堆積領域内へと放出するためのそれぞれのノズル排出口を備えた複数のノズルを含む。ノズルは、例えば、等間隔で、それぞれの分配管の長手方向に沿って設けられ得る。少なくとも幾つかの分配管は、真空チャンバの堆積領域内に種々の蒸発材料を導入するように構成され得る。
[0088]本明細書に記載された実施形態は、特に、例えば、大面積基板上のOLEDディスプレイ製造のための有機材料の堆積に関する。幾つかの実施形態によれば、大面積基板又は1つ若しくは複数の基板を支持するキャリアは、0.5m2以上、具体的には、1m2以上のサイズを有し得る。例えば、堆積システムは、約1.4m2の基板(1.1m×1.3m)に対応するGEN5、約4.29m2の基板(1.95m×2.2m)に対応するGEN7.5、約5.7m2の基板(2.2m×2.5m)に対応するGEN8.5、又はさらに約8.7m2の基板(2.85m×3.05m)に対応するGEN10の基板などの大面積基板を処理するように適合され得る。GEN11及びGEN12などのさらに次の世代及びそれに相当する基板領域を同様に実装することができる。
[0089]図6は、真空チャンバ内で基板上に蒸発材料を堆積させるための蒸気源を動作させる方法を示すフロー図である。蒸気源は、本明細書に記載された実施形態のいずれかに係る蒸気源であってもよい。
[0090]材料をるつぼ内で加熱且つ蒸発することができ、蒸発した材料は、分配管110内に設けられた複数のノズルを通して、分配管110を介して、堆積領域内に伝播し得る。
[0091]ボックス610では、蒸発材料は、複数のノズルによって基板に向けて方向付けられる。蒸発材料のプルームは、複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズル120の第1のノズルセクション121によって放出される。少なくとも1つのノズル120は、ノズル軸Aに沿って延在する第1のノズルセクション121、及び第1のノズルセクション121の下流の第2のノズルセクション122を有する。
[0092]ボックス620では、第2のノズルセクション122によって、ノズル軸Aに対するプルームの蒸発材料の方向性が改善され、第2のノズルセクションは、少なくともセクション内でノズル排出口126に向かって減少する寸法を有する成形通路を含む。具体的には、ノズル排出口126に向かう方向で互いに接近し得る、成形通路の側壁127は、側壁に衝突する分子がノズル軸に対して大きな角度でノズルから排出される確率を下げることができる。
[0093]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、成形通路125は、ノズル空洞を形成し、第1のノズルセクション121内の第1の圧力は、ノズル空洞内の第2の圧力よりも大きく、且つ/又はノズル空洞内の第2の圧力は、真空チャンバ内の第3の圧力よりも大きい。第1の圧力は、第2の圧力の10倍超であってもよく、且つ/又は第2の圧力は、第3の圧力の10倍超であってもよい。
[0094]例えば、第1のノズルセクション内の第1の圧力は、第1のノズルセクションを通って伝播する蒸気分子に対して粘性又は遷移流レジームをもたらすようなものであり得、第2のノズルセクション内の第2の圧力は、第2のノズルセクションを通って伝播する蒸気分子に対して分子流レジームをもたらすようなものであり得る。真空チャンバ内の第3の圧力は、真空チャンバを通って伝播する蒸気分子に対して分子流レジームをもたらすようなものであり得る。
[0095]例えば、分配管及び/又は第1のノズルセクション内の第1の圧力は、1Pa以上であってもよい。第2のノズルセクション内の第2の圧力及び/又は真空チャンバ内の第3の圧力は、1Pa未満、具体的には、0.1Pa以下、より具体的には、0.01Pa以下であってもよい。真空チャンバ内の第3の圧力は、第2のノズルセクション内の第2の圧力よりも、例えば、1桁以上低くてもよい。
[0096]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態では、少なくとも1つのノズルは、第1のノズルセクション121の内壁及び第2のノズルセクション122の内壁が、蒸発材料の蒸発温度を超える温度を有するように加熱される。ノズル内部の蒸発材料の凝縮は、低減されるか、又は回避され得る。
[0097]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態では、成形通路125は、第1のノズルセクション121の開口部によって放出されるプルームを成形し、それにより、プルームフラックスの70%超が、ノズル軸Aに対して±12.5°以下の角度でノズルから排出され、且つ/又はプルームフラックスの90%超が、ノズル軸Aに対して±25°以下の角度でノズルから排出される。
[0098]図7は、ノズル軸を含む少なくとも1つの断面平面、特に垂直断面平面において、本明細書に記載された実施形態に係る種々のノズルの成形効果を示すグラフである。図示されたグラフは、内部の蒸気分子の分子流を確実なものとする、第2のノズルセクションにおける圧力レジームを仮定している。
[0099]図7のグラフは、3つの異なるノズル形状710、720、730について、ノズル軸Aを中心とする円錐角内の蒸気分子のフラックスと、ノズルから排出される蒸気分子の総フラックスとの比(702:垂直方向に沿った総フラックスからの集積フラックスの割合(%))を前記円錐角(701:垂直断面平面における開き角)の関数として示す。
[00100]破線710は、従来のノズルを示す。このノズルのノズル直径は、ノズル排出口に向かって連続的に増大する。ノズルから排出される蒸気分子の総フラックスの約60%のみが20°の角度内に含まれ、ノズルから排出される蒸気分子の総フラックスの約80%のみがノズル軸Aに対して30°の角度内に含まれることが分かる。
[00101]実線720は、本明細書に記載された実施形態に係るノズル、すなわち、図1に示すノズルを示す。ノズルから排出される蒸気分子の総フラックスの85%超が20%の角度内に含まれ、ノズルから排出される蒸気分子の総フラックスの90%以上がノズル軸Aに対して30°の角度内に含まれることが分かる。
[00102]一点鎖線730は、本明細書に記載された幾つかの実施形態に係る別のノズルを示す。このノズルの内部形状は、図1に示され且つ720によって示されるノズルの内部形状と比較して、わずかに修正されている。特に、成形通路は、ノズルから排出される総分子フラックスのうちのより多くがノズル軸に対して30°の角度内に含まれるように適合されている。他方、20°の角度内に含まれる、ノズルから排出される分の総分子フラックスは、図1のノズルと比較してわずかに減少する。一点鎖線730によって示されるノズルでは、ノズル排出口126は、蒸気放出開口126の中心に対してより大きな円錐角(すなわち、ノズル排出口によって設けられる円錐角は、約α=60°、すなわち、α/2=±30°である)を設け、ノズル軸に沿った蒸気放出開口126の長さと蒸気放出開口126の幅と比がわずかに増加している。これにより、ノズルから排出される分子フラックスのうちのさらに高い割合が、ノズル軸に対して30°の角度内に含まれることが可能になる。
[00103]本明細書に記載された実施形態は、特に、例えば、ディスプレイ製造のための大面積基板上への材料の蒸着に関する。例えば、基板は、ガラス基板であってもよい。さらに、本明細書に記載された実施形態は、例えば、金属又はOLED材料などの材料を半導体ウェハ上に堆積させるための半導体処理に関するものであってよい。半導体ウェハは、堆積中、水平方向又は垂直方向に配置されてもよい。
[00104]本明細書では、実施例を用いてベストモードを含む本開示を開示しており、あらゆる当業者が記載の主題を実施することを、任意の装置又はシステムを作製及び使用すること、並びに組み込まれているあらゆる方法を実施することを含めて、可能にしている。前述において様々な特定の実施形態を開示してきたが、上述した実施形態の相互に非排他的な特徴は、互いに組み合わせることが可能である。特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定される。その他の実施例は、それが特許請求の範囲の文字通りの言葉と相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文字通りの言葉とは実質的ではない相違を有する等価の構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。