JP2007185671A - 連続鋳造用モールドパウダー及び普通鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

連続鋳造用モールドパウダー及び普通鋼の連続鋳造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2007185671A
JP2007185671A JP2006003944A JP2006003944A JP2007185671A JP 2007185671 A JP2007185671 A JP 2007185671A JP 2006003944 A JP2006003944 A JP 2006003944A JP 2006003944 A JP2006003944 A JP 2006003944A JP 2007185671 A JP2007185671 A JP 2007185671A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mold
mold powder
content
powder
continuous casting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006003944A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4626522B2 (ja
Inventor
Yuichi Tsukaguchi
友一 塚口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2006003944A priority Critical patent/JP4626522B2/ja
Publication of JP2007185671A publication Critical patent/JP2007185671A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4626522B2 publication Critical patent/JP4626522B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)

Abstract

【課題】ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトを晶出もしくは析出するモールドパウダーの、粘度の安定化を図って凝固温度を下げる。
【解決手段】質量%で、CaO/SiO2の値が1.1〜1.6、F−0.613×Na2O−1.27×Li2Oで表される、F,Na2O及びLi2Oの含有量が0〜3.5%、Al23含有量が10〜25%、Al23及びMgOの合計の含有量が15〜30%、TiO2含有量が7%未満であって、一旦溶融した後に徐冷した場合に晶出もしくは析出する分子量が500未満の主たる結晶が、ゲーレナイトまたはアケルマナイト、もしくはこれらの全率固溶体であるメリライトに加えて、カスピダインであり、凝固温度が1030〜1160℃である連続鋳造用モールドパウダーである。
【効果】溶鋼中に巻き込まれにくい特性のモールドパウダーを、幅広い鋼種に適用できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、化学組成において塩基度およびAl23濃度が比較的高く、溶鋼中に巻き込まれにくい特性を備えた連続鋳造用モールドパウダー、及びこのモールドパウダーを用いた普通鋼の連続鋳造方法に関するものである。
従来、溶鋼中に巻き込まれにくい特性を備えた高塩基度かつ高粘度のモールドパウダーとして、一旦溶融した後に徐冷した場合に析出もしくは晶出する結晶が、ゲーレナイト(gehlenite)またはアケルマナイト(Akermanite)もしくは両者の全率固溶体であるメリライト(melilite)であるモールドパウダーが、特許文献1や特許文献2に開示されている。
特開2003−225744号公報 特開2005−40835号公報
しかしながら、Al23濃度が10質量%以上と比較的高い前記のモールドパウダーにおいて、Na2Oなどのアルカリ金属酸化物濃度を高めて凝固温度あるいは粘度を下げようとする際に、F濃度が低いと粘度測定値が安定しないことを、発明者は知見した。
そして、前記粘度測定値の不安定さは、溶融スラグ構造、具体的には両性酸化物であるAl23のネットワーク構造の不安定さに起因すると考えられた。
粘度はモールドパウダーの消費量を規定する重要な要素のひとつであり、粘度が安定しないことは、消費量の不安定さにつながり、潤滑不良などの操業トラブルを引き起こす原因となりうる。一方で、F濃度を高めることは、カスピダインの晶出もしくは析出を促進し、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトの晶出あるいは析出を阻害するおそれがあった。
本発明が解決しようとする問題点は、特許文献1及び2で開示されたモールドパウダーにおいて、Na2Oなどのアルカリ金属酸化物濃度を高めて凝固温度あるいは粘度を下げようとする際に、F濃度が低いと粘度測定値が安定しないという点である。
本発明は、前記の問題を解消し、粘度の安定化と結晶の晶出もしくは析出の安定化を両立すべく、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトを晶出もしくは析出するモールドパウダーにおいて、アルカリ金属酸化物濃度とF濃度との関係を規定しようと調査・研究した結果成されたものである。
すなわち、本発明の連続鋳造用モールドパウダーは、
質量%で、
CaO%をSiO2%で除した比(CaO/SiO2)が1.1〜1.6、
F−0.613×Na2O−1.27×Li2
の式で表される、F,Na2OおよびLi2Oの含有量が0〜3.5%、
Al23の含有量が10〜25%で、かつAl23およびMgOの合計の含有量が15〜30%、
TiO2の含有量が7%未満であって、
一旦溶融した後に徐冷した場合に晶出もしくは析出する分子量が500未満の主たる結晶が、ゲーレナイトまたはアケルマナイト、もしくはこれらの全率固溶体であるメリライトに加えて、カスピダイン(Cuspidine)であり、
凝固温度が1030〜1160℃であることを最も主要な特徴としている。
冷却速度の大きな条件下では、本発明の連続鋳造用モールドパウダーは、鋳型内の溶鋼表面で溶融したモールドパウダーが、鋳型内壁と凝固シェルの間隙に流入して凝固したパウダーフィルム中に生成する主たる結晶が、ゲーレナイトまたはアケルマナイト、もしくはこれらの全率固溶体であるメリライト1種が優先的に晶出もしくは析出する。
また、本発明の連続鋳造方法は、
前記の本発明の連続鋳造用モールドパウダーを用いて、
質量%で、
炭素含有量が0.08%以下の普通鋼、または炭素含有量が0.18〜1.2%の普通鋼を鋳造することを最も主要な特徴としている。
本発明によれば、溶鋼中に巻き込まれにくい特性を備えた高塩基度かつ高粘度のモールドパウダーである、パウダーフィルム中にゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトを晶出もしくは析出するモールドパウダーにおいて、粘度の安定化を図って凝固温度を低下させることが可能になる。その結果、溶鋼中に巻き込まれにくい優れた特性を有したモールドパウダーを、幅広い鋼種に適用することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態と共に最良の形態について、詳細に説明する。
本発明の連続鋳造用モールドパウダーは、前述の通り、粘度の安定化と結晶の晶出もしくは析出の安定化を両立すべく、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトを晶出もしくは析出するモールドパウダーにおいて、アルカリ金属酸化物濃度とF濃度との関係を規定したものである。
すなわち、本発明の連続鋳造用モールドパウダーは、
質量%で、
CaO%をSiO2%で除した比(CaO/SiO2)の値が1.1〜1.6、
F−0.613×Na2O−1.27×Li2
の式で表される、F,Na2OおよびLi2Oの含有量が0〜3.5%、
Al23の含有量が10〜25%で、かつAl23およびMgOの合計の含有量が15〜30%、
TiO2の含有量が7%未満であって、
一旦溶融した後に徐冷した場合に晶出もしくは析出する分子量が500未満の主たる結晶が、ゲーレナイトまたはアケルマナイト、もしくはこれらの全率固溶体であるメリライトに加えて、カスピダインであり、
凝固温度が1030〜1160℃であることを最も主要な特徴としている。
本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、CaO/SiO2の値を1.1〜1.6としたのは、CaO/SiO2の値が1.1未満であると溶鋼中への巻き込みが多くなるからである。反対に、1.6を超えると、凝固温度が高くなりすぎて鋼の連続鋳造には適さなくなるからである。
また、本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、F−0.613×Na2O−1.27×Li2Oの式(以下、(1)式という。)で表される、F,Na2OおよびLi2Oの含有量を0〜3.5質量%としたのは、(1)式の値が3.5質量%を超えるとカスピダインの晶出量もしくは析出量が増大し、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトの晶出もしくは析出が不安定となるからである。反対に、(1)式の値が負の値となる場合には、粘度測定値が不安定となるからである。
ここで、(1)式の値は、FがCaよりもNaあるいはLiと優先的に結合するとの仮定に立って、Caと結合できるF濃度を計算した式である。実際には、Fが100%優先的にNaやLiと結合するものではないと考えられるが、発明者の経験上、この(1)式の値が大きくなるにつれ、カスピダインの晶出もしくは析出が促進され、(1)式の値が負の場合には、粘度の不安定さが顕著となった。(1)式の値が負であるとは、単にNaイオンとLiイオンの総数がFイオンの総数よりも多いことを示しており、実際のF濃度が負であることを示しているのではない。
また、本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、Al23の含有量を10〜25質量%としたのは、Al23の含有量が10質量%未満の場合は粘度測定値が不安定になる現象が生じないので本発明の適用範囲外となるからである。反対に25質量%を超えると、粘度が高くなりすぎて普通鋼の連続鋳造に適さないからである。
また、本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、Al23およびMgOの合計の含有量を15〜30質量%としたのは、この範囲を外れた場合には、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトの析出もしくは晶出が不安定になるからである。
また、本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、TiO2の含有量を7質量%未満としたのは、TiO2を7質量%以上添加すると、高融点のペロブスカイト(CaO・TiO2)の析出量が増え、潤滑性に悪影響を及ぼすからである。TiO2濃度のより好ましい範囲は5質量%未満である。なお、TiO2は添加しなくても良いが、規定濃度範囲内で添加すると凝固温度の低下に有用である。
また、本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、一旦溶融した後に徐冷した場合に析出もしくは晶出する分子量が500未満の主たる結晶が、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトに加えてカスピダインであるとは、以下の現象を指す。
一旦溶融した後に徐冷するとは、具体的には、例えば一旦1400℃で溶融した後に100〜200℃/hrの冷却速度で冷却することを言う。
ここで、分子量が500未満の結晶のみを対象とするのは、たとえば3Na2O・2Al23・4SiO2のような、分子量が500以上の結晶は、上記のような徐冷条件下では晶出もしくは析出しても、冷却速度が大きな実際の鋳造時における鋳型と凝固シェル間隙のパウダーフィルム中では晶出もしくは析出することが難しいからである。
次に、主たる結晶とは、X線回折ピーク強度の最大値が他の結晶のX線回折ピーク強度の1.5倍以上あることを指す。本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいては、この主結晶が、大きく分けて2種、すなわち、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトという1種と、カスピダインの2種である。
ゲーレナイトとアケルマナイトは結晶構造が酷似しており、互いに全率で固溶してメリライトを形成するので、これらを区別するのは難しく、これらを1種の結晶と定義する。
本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、これら2種の結晶が主たる結晶であるとは、これらのX線回折ピーク強度が近い値であり、その最大値に1.5倍以上の開きがないことを指す。
本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて発明者が知見したところによると、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトという1種と、カスピダインの2種が徐冷試料に見られる主たる結晶であるとき、冷却速度が大きな実際の鋳造時における鋳型と凝固シェル間隙のパウダーフィルム中ではゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライト1種が優先的に晶出もしくは析出し、カスピダイン構成成分の多くは結晶化せずガラス相のままとどまる。
このガラス相は潤滑性を高める作用があるので、鋳型サイズや鋳造する鋼種等の鋳造条件によっては、このようにしてガラス相を確保したモールドパウダーでなければ鋳造が難しい場合がある。
このように、比較的高い潤滑性が要求される鋳造条件において、巻き込まれにくい高塩基度かつ高粘度のモールドパウダーを用いる場合に、本発明の技術が必要となるのである。
本発明の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、凝固温度が1030〜1160℃であるのは、凝固温度が1030℃未満に低下すると、モールドパウダーの鋳型と凝固シェル間隙への流入が過多となり、縦割れ等の鋳片表面欠陥を生じやすくなるからである。加えて、本発明のモールドパウダーの凝固温度を1030℃未満に低下させるのは難しいからである。
また、凝固温度が1160℃を超えると、鋳型内における潤滑性が悪化し、本発明が必要とされる比較的高い潤滑性が要求される鋳造条件に適さなくなるからである。凝固温度が1160℃を超えるものは、前述の特許文献1によっても得ることができる。凝固温度を1160℃以下に低下させる場合に、本発明が必要となるのである。
先に説明した本発明の連続鋳造用モールドパウダーで規定したような2種の結晶が競合して晶出もしくは析出するモールドパウダーは、通常、結晶化が不安定となり鋳型内冷却が安定しない。
しかしながら、本発明のモールドパウダーは、前述のように、冷却速度の大きな条件下では、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライト1種が優先的に晶出もしくは析出し、カスピダイン構成成分の多くは結晶化せずガラス相のままとどまる。
従って、実際の鋳造時におけるパウダーフィルム中においては、主たる結晶がゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライト1種となるのである。これが請求項2に係る本発明の連続鋳造用モールドパウダーである。
ここで、鋳型壁と凝固シェルの間隙に存在するパウダーフィルム中の結晶を確認するには、鋳型出口においてパウダーフィルムを回収して、X線回折に供すると良い。もしくは、鋳型壁と凝固シェルの間隙に存在するパウダーフィルムが受ける平均的な冷却速度を模した溶融スラグ冷却装置を用いて、一旦溶融したモールドパウダーを冷却し、得られた試料をX線回折に供しても良い。
鋳型壁と凝固シェルの間隙に存在するパウダーフィルムが受ける平均的な冷却速度を求めるには、例えば、冷却速度が大きいほど試料はガラス化し結晶のX線回折ピークが小さくなることを利用して、鋳型出口で回収したパウダーフィルムのX線回折結果(回折ピーク)と同等の結果が得られる冷却速度を実験的に求めると良い。
前記の本発明の連続鋳造用モールドパウダーを用いて、
質量%で、
炭素含有量が0.08%以下の普通鋼、または炭素含有量が0.18〜1.2%の普通鋼を鋳造する。これが本発明の連続鋳造方法である。
本発明は、前述のように、比較的高い潤滑性が要求される場合に、必要な技術である。
普通鋼の連続鋳造においては、炭素含有量が0.09質量%〜0.17質量%のいわゆる亜包晶鋼は、凝固直後のδ→γ変態により凝固シェルが大きく収縮するので、鋳型と凝固シェルの間隙が大きくなり、潤滑性が良好となる。
それに対し、炭素含有量が0.08質量%以下の低炭素鋼もしくは極低炭素鋼といった普通鋼、あるいは炭素含有量が0.18質量%以上の過包晶鋼もしくは高炭素鋼といった普通鋼は、凝固シェルの収縮が小さく、比較的高い潤滑性が要求されるので、本発明のモールドパウダーを用いるのに適している。
特に、スラブの連続鋳造においては、鋳型の矩形比が大きいので、凝固シェルがバルジングしやすく、鋳型と凝固シェルの間隙が小さくなりやすいことに加え、鋳造速度が大きいので、本発明のモールドパウダー使用にさらに好適である。
なお、本発明において規定される結晶の組成は、ゲーレナイトが2CaO・Al23・SiO2、アケルマナイトが2CaO・MgO・2SiO2、メリライトはゲーレナイトとアケルマナイトとの全率固溶体であり、両組成間の任意の組成をとることができる。また、カスピダインは3CaO・2SiO2・CaF2である。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施結果について説明する。
本発明の実施例および比較例の組成を下記表1に、凝固温度等の性質や徐冷時やパウダーフィルム中の主たる結晶を表2に示す。
Figure 2007185671
Figure 2007185671
表1及び表2のA〜Cは、本発明の請求項1および2を満たすモールドパウダーの実施例である。
A〜Cは、塩基度(CaO/SiO2)が比較的高く、SiO2等の低級酸化物活量が低く抑えられている。加えて、1300℃における粘度が0.2〜0.3Pa・Sと、高塩基度かつ低凝固温度の割には高粘度であるので、溶鋼中への巻き込みが生じ難い特質を有する。
また、A〜Cは、F−0.613×Na2O−1.27×Li2Oで示す(1)式の値およびAl23含有量、MgO含有量が適正な範囲内にあるので、一旦溶融した後に徐冷した場合に晶出もしくは析出する主たる結晶が、分子量が500未満のメリライトおよびカスピダインの2種であり、かつ鋳型壁と凝固シェルの間隙に存在するパウダーフィルム中の主たる結晶が、メリライト1種である。このことは、連続鋳造時においては、メリライト1種が安定して晶出もしくは析出することを示している。
ここで、ゲーレナイトとアケルマナイトとは結晶構造が酷似しておりX線回折ピークパターンが近いことから、表2においては、ゲーレナイトあるいはアケルマナイトと見なされる結晶は、全てメリライトと記述している。
また、A〜Cは、TiO2濃度が7質量%未満であり、かつ凝固温度が1160℃以下であるので、潤滑性に優れている。また凝固温度が1030℃以上であるので、パウダーの鋳型と凝固シェルの間隙への過剰流入が防止できる。
一方、表1及び表2のD〜Fは、本発明の比較例である。
D〜Fにおいては、(1)式の値が負の領域にあるので、粘度測定値が不安定であった。表2における粘度の記述、例えば0.3〜0.7は、粘度測定条件の違いによって0.3Pa・S〜0.7Pa・Sの粘度測定値の変動が生じたことを示す。
ここで言う粘度測定条件の違いとは、粘度測定時に、1350℃で溶融した後速やかに2℃/minの速度で冷却しつつ凝固温度に到るまでの粘度を連続的に測定した通常の測定条件と、1350℃で溶融した後、その温度で90分間保持した後、2℃/minの速度で冷却しつつ凝固温度に到るまでの粘度を連続的に測定した溶融状態でスラグを長時間保持した条件との違いである。
一般には、溶融状態でスラグを長時間保持すると、化学組成の内、FやNa2Oが揮発して減少し、粘度が上昇する場合が多いのであるが、D〜Fにおいては、溶融状態でスラグを長時間保持した場合の方が、粘度が低下した。
すなわち、表2における粘度の記述、例えば0.3〜0.7は、通常の測定条件では0.7Pa・S、溶融状態でスラグを長時間保持した測定条件で0.3Pa・Sであったことを示す。なお、表2において粘度が単一の値のみ記述されているのは、両条件での測定値に有意差が無かったことを示している。
表1及び表2のGも、本発明の比較例である。
GはF濃度が比較的低いのでカスピダインの晶出もしくは析出が抑えられ、一旦溶融した後に徐冷した場合に晶出もしくは析出する分子量が500未満の主たる結晶、鋳型壁と凝固シェルの間隙に存在するパウダーフィルム中の主たる結晶が、ともにメリライト1種である。このことは、結晶析出の安定性においては好ましいのであるが、GはF濃度を抑えた結果、凝固温度が本発明の請求範囲を外れて高く、潤滑性に難が生じた。また、F濃度が低いことは、本発明の実施例A〜Cに比べてパウダーフィルム中においてガラス相を形成する成分が少ないことを示し、その点においても潤滑性に劣る。
表1及び表2のHも、本発明の比較例である。
Hは(1)式の値が本発明の範囲を超えて大きいのでカスピダインの晶出もしくは析出が促進され、かつAl23およびMgOの合計の含有量が本発明の範囲の下限値未満であるので、ゲーレナイトまたはアケルマナイトもしくは両者の全率固溶体であるメリライトの晶出もしくは析出が阻害された結果、一旦溶融した後に徐冷した場合に晶出もしくは析出する分子量が500未満の主たる結晶、鋳型壁と凝固シェルの間隙に存在するパウダーフィルム中の主たる結晶が、ともにカスピダインである点において、本発明の範囲外である。
発明者の経験上、主たる結晶がカスピダインである場合に、このようにAl23濃度が高いと、カスピダインの晶出もしくは析出が不安定であり、鋳型内冷却の均一さや安定性に悪影響が生じる。
また、Hにおいては、TiO2濃度が7質量%と高いので、高融点のペロブスカイト(CaO・TiO2)が、低いピークではあるが析出する。ゆえに、鋳型内における潤滑性が悪化するおそれがある。
次に、表1及び表2のパウダーB(実施例)およびG(比較例)を用いて、スラブ連続鋳造機において極低炭素鋼を鋳造した結果を以下に示す。
鋳造条件は、鋳型サイズが厚み270mm×幅1600mm、鋳造速度が1.6m/min、タンディッシュ内の溶鋼過熱度が平均25℃、鋳型のオシレーションストロークが5.4mm、鋳型のオシレーション振動数が193cpmであった。
鋳型内潤滑性の指標として、鋳型内湯面から100mm下方の稼働面から5mmの深さにおける鋳型銅板の温度を熱電対により測定し、鋳造定常部において、鋳型銅板の温度変動の大きさを標準偏差/平均値という指標を用いて評価した。
その結果、パウダーB(実施例)では0.011に対し、G(比較例)では0.017と、凝固温度の高い比較例では潤滑性の悪化が認められた。ここで、発明者の経験上、上記指標の値は、極低炭素鋼では通常0.007〜0.013であり、0.015以下であれば潤滑性に問題はない。
両パウダーは、塩基度(CaO/SiO2)や粘度、パウダーフィルム中に晶出もしくは析出する結晶が同じであるにもかかわらず、このように潤滑性に差が生じたのは、本発明によってパウダーBの凝固温度を下げることができたことが主な要因と考えられる。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範囲内で、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    CaO%をSiO2%で除した比(CaO/SiO2)が1.1〜1.6、
    F−0.613×Na2O−1.27×Li2
    の式で表される、F,Na2OおよびLi2Oの含有量が0〜3.5%、
    Al23の含有量が10〜25%で、かつAl23およびMgOの合計の含有量が15〜30%、
    TiO2の含有量が7%未満であって、
    一旦溶融した後に徐冷した場合に晶出もしくは析出する分子量が500未満の主たる結晶が、ゲーレナイトまたはアケルマナイト、もしくはこれらの全率固溶体であるメリライトに加えて、カスピダインであり、
    凝固温度が1030〜1160℃であることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー。
  2. 鋳型内の溶鋼表面で溶融したモールドパウダーが鋳型内壁と凝固シェルの間隙に流入して凝固したパウダーフィルム中に生成する主たる結晶が、ゲーレナイトまたはアケルマナイト、もしくはこれらの全率固溶体であるメリライトであることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造用モールドパウダー。
  3. 請求項1または2に記載のモールドパウダーを用いて、
    質量%で、
    炭素含有量が0.08%以下の普通鋼、または炭素含有量が0.18〜1.2%の普通鋼を鋳造することを特徴とする連続鋳造方法。
JP2006003944A 2006-01-11 2006-01-11 連続鋳造用モールドパウダー及び普通鋼の連続鋳造方法 Active JP4626522B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006003944A JP4626522B2 (ja) 2006-01-11 2006-01-11 連続鋳造用モールドパウダー及び普通鋼の連続鋳造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006003944A JP4626522B2 (ja) 2006-01-11 2006-01-11 連続鋳造用モールドパウダー及び普通鋼の連続鋳造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007185671A true JP2007185671A (ja) 2007-07-26
JP4626522B2 JP4626522B2 (ja) 2011-02-09

Family

ID=38341197

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006003944A Active JP4626522B2 (ja) 2006-01-11 2006-01-11 連続鋳造用モールドパウダー及び普通鋼の連続鋳造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4626522B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009090317A (ja) * 2007-10-09 2009-04-30 Kobe Steel Ltd 湯面レベルの昇降に特徴を有する鋼の連続鋳造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07241655A (ja) * 1994-03-02 1995-09-19 Nippon Steel Corp Ti含有鋼用連続鋳造パウダー
JP2000158107A (ja) * 1998-11-30 2000-06-13 Shinagawa Refract Co Ltd オープン鋳造用モールドパウダー
JP2003225744A (ja) * 2002-02-05 2003-08-12 Sumitomo Metal Ind Ltd 連続鋳造用パウダーとそれを使用した連続鋳造方法
JP2004098092A (ja) * 2002-09-06 2004-04-02 Sumitomo Metal Ind Ltd 過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法
JP2004148376A (ja) * 2002-10-31 2004-05-27 Nippon Steel Corp 鋼の連続鋳造用パウダー

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07241655A (ja) * 1994-03-02 1995-09-19 Nippon Steel Corp Ti含有鋼用連続鋳造パウダー
JP2000158107A (ja) * 1998-11-30 2000-06-13 Shinagawa Refract Co Ltd オープン鋳造用モールドパウダー
JP2003225744A (ja) * 2002-02-05 2003-08-12 Sumitomo Metal Ind Ltd 連続鋳造用パウダーとそれを使用した連続鋳造方法
JP2004098092A (ja) * 2002-09-06 2004-04-02 Sumitomo Metal Ind Ltd 過包晶中炭素鋼溶鋼の連続鋳造方法
JP2004148376A (ja) * 2002-10-31 2004-05-27 Nippon Steel Corp 鋼の連続鋳造用パウダー

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009090317A (ja) * 2007-10-09 2009-04-30 Kobe Steel Ltd 湯面レベルの昇降に特徴を有する鋼の連続鋳造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4626522B2 (ja) 2011-02-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4646849B2 (ja) 高アルミニウム鋼の連続鋳造用モールドパウダー
JP5370929B2 (ja) 鋼の連続鋳造用モールドフラックス
JP6269831B2 (ja) Ti含有亜包晶鋼の連続鋳造用モールドフラックスおよび連続鋳造方法
JP2006289383A (ja) 鋼の連続鋳造用モールドフラックス。
JP3649153B2 (ja) 連続鋳造用モールドパウダ
JP4932635B2 (ja) 連続鋳造用パウダー及び鋼の連続鋳造方法
JP6674093B2 (ja) 鋼の連続鋳造用モールドパウダーおよび連続鋳造方法
JP2017087273A (ja) Ti含有鋼の連続鋳造用モールドパウダー及び連続鋳造方法
JP4665785B2 (ja) 鋼の連続鋳造用モールドパウダー
JP6169648B2 (ja) 鋼の連続鋳造用モールドパウダーおよび鋼の連続鋳造方法
JP4430638B2 (ja) 高アルミニウム鋼の連続鋳造用モールドパウダー
JP4881203B2 (ja) 連続鋳造用パウダー
JP3780966B2 (ja) 連続鋳造用パウダーとそれを使用した連続鋳造法
JP2010214387A (ja) 連続鋳造用モールドフラックス及び連続鋳造方法
JP2003225744A (ja) 連続鋳造用パウダーとそれを使用した連続鋳造方法
JP6354411B2 (ja) 連続鋳造用モールドフラックス
JP4626522B2 (ja) 連続鋳造用モールドパウダー及び普通鋼の連続鋳造方法
JP3656615B2 (ja) 鋼の連続鋳造用モールドパウダ
JP2002239693A (ja) 連続鋳造用モールドパウダ
JP4014001B2 (ja) 高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス
JP6510342B2 (ja) Al含有鋼用連続鋳造パウダーおよび連続鋳造方法
JP5316879B2 (ja) 合金鋼の連続鋳造方法
JP3610885B2 (ja) モールドパウダおよび連続鋳造方法
JP6769344B2 (ja) 連続鋳造用モールドパウダー及び鋼の連続鋳造方法
JP2006247744A (ja) 鋼の連続鋳造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080122

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100427

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100511

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100630

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100817

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100827

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101012

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101025

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131119

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4626522

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131119

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131119

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350