JP2007178168A - 水素ガス検知センサ製造方法及び水素ガス検知センサ - Google Patents

水素ガス検知センサ製造方法及び水素ガス検知センサ Download PDF

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健 畑山
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Abstract

【課題】導電率のバラツキの低減し、安定した水素ガスの漏洩検知が可能である水素ガス検知センサを提供する。
【解決手段】金属酸化物粒子に触媒粒子を分散担持して構成される検知膜を有する水素ガス検知センサの製造方法であって、金属酸化物を形成するための前駆体となる金属酸塩水溶液のイオン交換を行い、含水酸化物ゾルを得る工程S2と、当該含水酸化物ゾルに触媒を混合するために触媒前駆体である触媒金属の溶液及びアルコール(Cnn+1OH)系の有機溶媒を加えて均一に分散混合する工程S3と、該触媒混合された含水酸化物ゾルの混合溶液を絶縁性の基板に所定の膜厚に塗布する工程S4と、該含水酸化物ゾルの混合溶液が塗布された膜を焼結して検知膜を形成する焼結工程S5と、を具備する。
【選択図】図1

Description

本発明は、触媒を金属酸化物に分散担持した検知膜を用いた水素ガス検知センサ及び水素ガス検知センサ製造方法に関し、特に、安全上水素ガスを含むガス漏洩の監視が必要な容器,配管、自動車、燃料電池、水素燃料改質器等に好適に利用できるものである。
近年、地球環境保護や化石燃料の枯渇防止の観点から、クリーンかつ循環可能なエネルギーの活用が望まれており、その代用として、水素ガスが注目を浴びている。水素ガスにおいては、潜在的に豊富な燃料であり、環境負荷が少ないといった利点がある反面、爆発性が高い(爆発限界濃度が4%から75%と広い)、危険なガスであることが知られている。将来的に水素ガスをエネルギー源として普及させるには、システムを安心して利用するための安全対策が必要不可欠である。そのため、高速応答性を有し、高感度で、且つ信頼性に優れた水素ガス検知センサが望まれている。
現在、水素ガス検知センサとしては接触燃焼方式、半導体方式、固体電解質方式、光検知方式などがあり、特に、金属酸化物を用いた半導体方式が代表的である。
従来の半導体方式の水素ガス検知センサの中には、基板上に2つの電極を設け、前記電極にまたがって検知層である三酸化タングステン(WO3)を設け、さらにその上に触媒層である白金(Pt)もしくはパラジウム(Pd)を形成した水素ガス検知センサ(例えば特許文献1参照。)や、三酸化タングステン(WO3)を主成分とする検知膜と、この検知層の表面に配置された電極と、前記検知膜の表面に設けた水素ガスを解離する触媒層とを備え、さらに前記検知層を加熱し、雰囲気の温度の低下における感度低下を防ぐためにヒータを設けた検知層と触媒層が積層された積層型水素ガス検知センサ(例えば、特許文献2参照。)が知れており、これらの検知膜は真空蒸着法にて形成されている。
また、絶縁基板上にゾルゲル法を用いて白金(Pt)触媒を三酸化タングステン(WO3)に分散担持した検知膜を形成し、前記三酸化タングステン(WO3)上に白金(Pt)により電極を作製した白金分散型酸化タングステンの水素ガス検知センサの研究もなされている。(例えば、非特許文献1参照。)
これらの水素ガス検知センサは、触媒で水素ガスをプロトン(H+)と電子(e)に解
離し、前記触媒で発生したプロトン(H+)、電子(e)と三酸化タングステン(WO3)との反応でタングステンブロンズが形成され、これに伴って検知膜の導電率が変化し、前記導電率を検出することで、水素ガスの検知を行うものである。
特開昭60−211348号公報 特開2003−240746号公報 山本奈々子、外3名、「Pt/WO3膜を用いた常温型水素センサの検知特性と最適化」、Chemical Sensors、電気化学会 化学センサ研究会、2002、Vol.18,Supplement A、p.1−3
しかしながら、上記の水素ガス検知センサでは以下のような問題がある。
まず、検知膜と触媒膜が積層されたセンサにおいては、触媒膜にパラジウム(Pd)を用いた場合、水素曝露を繰り返すとパラジウム(Pd)膜にクラックが入るなど不可逆的に変化しセンサ特性が劣化するという問題がある。また、触媒膜に白金(Pt)を用いた場合、白金(Pt)が一酸化炭素(CO)と強く結合する性質があるため、雰囲気ガス中に一酸化炭素(CO)が存在すると、白金(Pt)の表面が一酸化炭素(CO)によって被毒されてしまい、水素ガスをプロトン(H+)と電子(e)に解離出来なくなり、水素ガスの検出が出来なくなるという問題がある。また、これらの方法においては検知膜を形成する際、真空蒸着法を用いて三酸化タングステン(WO3)を形成するため、ある程度の膜厚を得ようとすると、成膜時間が長くなるためコストが高くなるという問題がある。

次に検知膜を形成するのにゾルゲル法を用いて、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)水溶液を出発液として、ナトリウムイオン(Na+)をプロトン(H+)にイオン交換しタングステン酸(H2WO4)含水酸化物ゾルを作製し、その含水酸化物ゾルに、触媒前駆体である金属錯塩を純水に溶解させた溶液を加えて均一に分散混合し、この混合した含水酸化物ゾルの混合溶液を、スピンコート法により塗布し、その後、塗布した膜を焼成して検知膜を形成している。上記のようにゾルゲル法などの湿式合成法を用いて検知膜を形成する場合、基板上に酸化タングステンは粒子状に形成され、タングステン粒子同士が密着し、その粒子の連結部分が電流パスとなって水素ガスの検知を行う。ゾルゲル法など湿式合成法を行う場合、ゾル化の反応時間が速く、塗布工程の途中でゲル化の反応が進み検知膜の金属酸化物の粒子が不均一になり、作製する際、同じ溶液、手法、手順で作製したにもかかわらず、検知膜の酸化タングステン粒子同士の粒径や粒子密度にバラツキが発生し、粒子同士の連結部分である電流パスが、連結したり、破断したりしているため、電流パスにバラツキが発生し、導電率のバラツキが発生するという問題がる。
従来の課題を解決するために、本発明の水素ガス検知センサ製造方法は、金属酸化物粒子に触媒粒子を分散担持して構成される検知膜を有する水素ガス検知センサの製造方法であって、金属酸化物を形成するための前駆体となる金属酸塩水溶液のイオン交換を行い、含水酸化物ゾルを得る工程と、前記含水酸化物ゾルに触媒を混合するために触媒前駆体である触媒金属の溶液及びアルコール(Cnn+1OH)系の有機溶媒を加えて均一に分散混合する工程と、前記触媒混合された含水酸化物ゾルの混合溶液を絶縁性の基板に所定の膜厚に塗布する工程と、前記含水酸化物ゾルの混合溶液が塗布された膜を焼結して検知膜を形成する焼結工程と、を具備することを特徴としたものである。
また、本発明の請求項1に記載の水素ガス検知センサ製造方法にて製造される水素ガス検知センサは、基板上に形成される検知膜表面積と、前記検知膜が形成されずに露出される部分の基板の面積との面積比(膜欠陥)が0.05から1.5パーセントであることを特徴としたものである。
本発明にかかる水素ガス検知センサは、検知膜欠陥が少なく導電率のバラツキを低減し、高感度で、安定した水素ガスの漏洩検知が可能である水素ガス検知センサを実現することができる。
以下に、本発明の水素ガス検知センサの製造方法及び当該製造方法により製造される水素ガス検知センサの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
実施例1においては、本発明における水素ガス検知センサの構造、材料、動作原理、作製方法について述べるとともに、本発明の水素ガス検知センサを用いて検知膜3の焼結温度による金属酸化物の平均粒子径や検知膜3を形成する基板1の面積と、検知膜3を形成した時に露出された基板1の面積との面積比(膜欠陥)のバラツキおよび導電率について評価した結果を述べる。
水素ガス検知センサの構造について図6から図11を用いて説明する。
本発明の水素ガス検知センサの主な構成要素としては、電気的に絶縁性を有する基板1と、電気的に導電性を有する電極2と、水素ガスを吸着して最終的にプロトン(H+)と電子(e)に解離する作用を有する触媒と前記作用で生じたプロトン(H+)と電子(e)とに反応することによって導電率が増加する金属酸化物よりなる検知膜3から構成されている。実際には、図6に示すように、電気的に絶縁性を有する基板1と、前記同一基板1上に設けられた一対の電極2と、前記電極2を覆うように形成された検知膜3とで構成され、図8から図11では、更に加熱手段4とを有して構成される。
図6と電極構造が異なる例として、図7に示すように、電気的に絶縁性を有する基板1上に検知膜3を設け、その検知膜上に一対の電極2を設けても良い。
加熱手段4を有する場合については、図8及び図9に示すように、図6及び図7の構造の水素ガス検知センサにおいて電極2と検知膜3が形成されていない基板1の面に、加熱手段4を形成させている。また、図10に示すように、電気的に絶縁性を有する基板1上に加熱手段4を設け、加熱手段4を覆うように、絶縁膜5を形成し、前記絶縁膜5上に一対の電極を設け、前記電極2を覆うように検知膜3を形成しても良い。また、加熱手段4であるヒータを図10と類似の構成で、電極2を検知膜3の上に形成する構成でもよい。即ち、図10と同様に電気的に絶縁性を有する基材1上に加熱手段4を設け、加熱手段4を覆うように、絶縁膜5を形成し、絶縁膜5上に検知膜3を形成し、検知膜3上に一対の電極2を形成しても良い(図示せず)。更に、図10に類似であるが、図11に示すように、加熱手段4を検知膜3が形成されていない側の絶縁性基板1上に形成し、更に加熱手段4を絶縁層5で覆う構造でもよい。構造としては、以上の構造に限られるものではない。
次に水素ガス検知センサが構成される材料について説明する。
基板1は、絶縁性を有するものであれば如何なる材質でも良いが、検知膜3の焼結時の加熱温度が400℃以上であるため、耐熱性の高い材料である必要がある。好ましくは、石英(SiO2)、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si34)、窒化アルミ(AlN)、アルミナ(Al23)またはこれらの複合膜が形成されたシリコン基板(SiO2)、窒化アルミ(AlN)、アルミナ(Al23)を用いることができる。また、表面に絶縁処理された(例えば、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si34)、窒化アルミ(AlN)、アルミナ(Al23)またはこれらの複合膜が形成されたシリコン基板(SiO2)、窒化アルミ(AlN)、アルミナ(Al23))基板などを用いることができる。
次に電極2は、図6、図8、図10、図11に示すように、基板1上または絶縁膜5と検知膜3の間に電極2が形成されている構造であれば電極2は雰囲気ガスに暴露されないので、電気的な導電性があり、検知膜3の焼結温度である約400℃以上で安定である材料を用いることができる。好ましくは、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)白金(Pt)、金(Au)などの金属及び合金や炭素(C)などを用いることが可能である。
また、図7、図9に示すように、電極2が検知膜3上に形成され、雰囲気ガスに曝される場合、電気的な導電性があり、検知膜5の焼結温度である約400℃以上で安定し、且つ、電極2自体が酸化しにくく、雰囲気ガス中の水素ガスに不活性な金属であれば用いることが出来る。好ましくは、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)が用いられる。
次に検知膜3は、水素ガスを吸着して最終的にプロトン(H+)と電子(e)に解離する作用を有する触媒19と前記作用で生じたプロトン(H+)と電子(e)とに反応することによって導電率が増加する金属酸化物18に分散担持してなるものであって、検知膜3中の触媒材料としては、水素ガスを吸着しプロトン(H+)と電子(e)に解離するものであればよく、好ましくは、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)を用いることができる。また、検知膜3中の金属酸化物材料としては、触媒によって解離されたプロトン(H+)と電子(e)によって導電率が増加する材料であればよく、好ましくは、プロトン(H+)と電子(e)が注入されることにより、不定比化合物を形成し、導電率が増加する金属酸化物である三酸化モリブデン(MnO3)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化チタン(TiO2)、五酸化バナジウム(V25)、酸化ニッケル(NiO2)、水酸化イリジウム(Ir(OH)n)などを用いることが可能である。
即ち、検知膜3中の金属酸化物18は、触媒19によって水素ガスがプロトンと電子に解離されるが、その解離されたプロトンと電子とに反応することによって、導電率が増加するのである。
加熱手段4としては、直接加熱を行う方法や外部から間接的に加熱を行う方法などを用いることが可能であり、加熱することによって水素ガス検知センサの設置雰囲気における湿度依存性の影響を受けなくなり、且つ、高速応答性を可能とすることができる。加熱温度としては50℃から300℃以下に加熱できればよく、好ましくは50℃から150℃であることが好ましい。
図8から図11に記した加熱方法は、直接加熱を行う方法の実施例であり、具体的には薄膜を用いたヒータである。
図8から図9に示すように、加熱手段4としてヒータを用いた場合、検知膜3を50℃から300℃以下に加熱できればよく、図8及び図9に示すように、加熱手段4であるヒータが雰囲気ガスに暴露される場合、酸化されにくい材料を用いることが好ましい。具体的には、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属及びこれらを含む合金を用いることが出来る。また、上記とは別に、図10及び図11に示すように、ヒータを絶縁膜5で覆うことによって、ヒータの酸化防止を行い、酸化しやすいヒータ材料も使用可能となる。絶縁膜5の材料としては、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化珪素(Si34)、窒化アルミ(AlN)、アルミナ(Al23)などを用いることが出来る。
本発明はこれに限られるものではなく、市販されているセラミックヒータなどを検知膜が形成されていない側の前記絶縁性基板の上に固定して用いても良い(図示せず)。
本発明の水素ガス検知センサの動作原理について説明する。
動作原理としては、雰囲気ガス中に水素ガスが存在すると、はじめに、触媒粒子上に水素ガスが解離吸着し、次式に示すように、吸着水素原子(Had)となる。
2 → 2Had
この吸着水素原子は、次式に示すように、スピルオーバーによって触媒粒子から検知膜3の主成分である金属酸化物上に拡散するとともに、最終的にプロトン(H+)と電子(e)となって酸化物内に注入される。
ad → H+ + e-
XH+ + Xe- + Myz → Hxyz (M:金属)
前記検知膜3の主成分である金属酸化物(Myz)はほぼ絶縁体であり、水素が存在しない雰囲気では、検知膜3は電気的に低い導電率を有する。一方、水素存在下で上記反応が起こり、良導体である不定比化合物(Hxyz)が生成すると、検知膜3の導電率は高くなる。
一方、水素が存在しない大気雰囲気に戻れば、次式に示すように、大気中の酸素ガスによって不定比化合物(Hxyz)が酸化され、金属酸化物(Myz)が再生する。これに伴って検知膜3の導電率は低くなり、もとの絶縁性の状態に復帰する。
xyz + (X/4) Oz → Myz + (X/2)H2
以上のような動作原理によって、雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度に応じて変化する検知膜3の導電率を測定することによって水素ガスの検出が可能となる。
次に、上記形成方法について説明する。
電極2の形成方法としては、印刷法、蒸着法等を用いることが可能である。今回は、スパッタ蒸着法を用いて電極の形成を行った。電極2の形状は、成膜後にフォトリソグラフィーによってパターン形成後、イオンミリングや乾式エッチングなどの物理エッチングや、また化学エッチングで形成できる。あるいは、成膜前に所望のパターン形成するリフトオフを用いることもできる。あるいは、成膜時にメタルマスクを装着し、メタルマスクを介して形成することもできる。あるいは、上記金属を含む金属ペーストを用いて印刷法やインクジェット法でパターン形成後、所定の加熱処理によりパターン形成することができる。今回は、任意の電極形状のメタルマスクを用いて、任意の形状を得ている。電極2の膜厚は、スパッタ時間とスパッタ電力で調整を行い、100nmから1000nmとした。
次に、検知膜3の形成方法としては、触媒を金属酸化物に分散担持してなるものであって、この様な構造が形成できる形成方法であれば如何なる方法でも良い。好ましくは湿式合成法であるゾルゲル法、脱水法、加水分解法、沈殿法、水熱法等が良い。
今回はゾルゲル法を用いて行った。ゾルゲル法とは、一般に、含水酸化物ゾルを脱水または加水分解処理してゲルとし、このゲルを加熱、乾燥して無機酸化物等をある一定形状又は基板上の薄膜または厚膜として調製する方法である。今回は金属酸化物を形成させるための前駆体となる金属酸塩水溶液である金属酸ナトリウム水溶液(NaMOx)を用いて、その水溶液を陽イオン交換樹脂に通すことにより、ナトリウムイオン(Na+)とプロトン(H+)をイオン交換させ含水酸化物ゾル(HMOx)を作製する。そこに、触媒前駆体及びアルコール(Cnn+1OH)を加えて均一に分散混合し、この混合した含水酸化物ゾルの混合溶液を、基板1に塗布し、任意の温度にて焼結させることで検知膜3を形成することが出来る。
アルコール(Cnn+1OH)は、水酸化ゾルの加水重合を抑制し、凝集防止剤として作用する。所定の反応速度でゲル化を行うことが均一な金属酸化物の粒子からなる検知膜を実現できる。
塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート法、ディスペンス法、印刷法などを用いることが可能である。また、検知膜3の膜厚制御は、検知膜3の材料溶液の塗布工程を複数回繰返す多重塗布や検知膜3の材料溶液の粘性制御によって膜厚を任意の値に制御することが出来る。また、スピンコート法においては、回転速度及び回転時間の制御することにより任意の膜厚を得ることが出来る。また、印刷法においては、マスクの厚さを制御することにより任意の膜厚を得ることが出来る。
次に、加熱手段4であるヒータの形成方法としては、印刷法、蒸着法等を用いることが可能である。加熱手段4の形状は、成膜後にフォトリソグラフィーによってパターン形成後、イオンミリングや乾式エッチングなどの物理エッチングや、また化学エッチングで形成できる。あるいは、成膜前に所望のパターン形成するリフトオフを用いることもできる。あるいは、成膜時にメタルマスクを装着し、メタルマスクを介して形成することもできる。あるいは、上記金属を含む金属ペーストを用いて印刷法やインクジェット法でパターン形成後、所定の加熱処理によりパターン形成することができる。今回はスクリーン印刷法を用いて基板1上に加熱手段4のヒータパターンを形成し、その後、前記基板1に形成した加熱手段4のヒータ4パターンを室温で十分乾燥させた後、電気炉にて高温で焼成を行った。膜厚としては、0.5μmから500μmであれば良い。
次に検知膜の構造について図12を用いて説明する。
検知膜3は金属酸化物18粒子の集合体で構成され、隙間を有する。金属酸化物18の粒子としては、粒径は小さければ小さいほど大気と接する金属酸化物18の表面積が増加するため好ましい。好ましくは、金属酸化物18の平均粒子径は15nmから30nmであることが好ましい。隙間は、検知膜3作製時において熱処理する際に、後述の金属酸化物18の合成材料である含水酸化物ゾルの混合溶液に含まれる水やアルコールの溶媒成分が蒸発することで形成される。
金属酸化物18の集合体の隙間は、ガスの吸着に関係し、隙間が多いほど水素ガスの吸着面積が多くなり、応答性が向上する。金属酸化物18の表面には、触媒19粒子が分散担持されている。触媒19の粒子としては、粒径は小さければ小さいほど大気と接する触媒19の表面積が増加するため好ましい。好ましくは、触媒19の平均粒子径は1nmから20nmであることが好ましい。
分散担持とは、図12に示すように金属酸化物18中に触媒19が粒子となって散らばって存在し、その中の金属酸化物18と触媒19が吸着された状態を示している。金属酸化物18粒子に吸着している、触媒19粒子は、金属酸化物18粒子径より、触媒19粒子径が小さい方が好ましく、触媒19は金属酸化物18の粒子の表面に吸着し、触媒19の露出する面積が広いほど、水素ガスの吸着解離作用が大きくなり、プロトン(H+)生成量が多くなる。図12では、金属酸化物18の粒子表面に複数の触媒19が存在するように示されているが、金属酸化物18の粒子表面の触媒19の個数を限定するものではない。
以下に本発明における水素ガス検知センサの製造方法を用いた検知膜3の焼結温度による金属酸化物の平均粒子径や検知膜3を形成する基板1の面積と、検知膜3を形成した時に露出された基板1の面積との面積比(膜欠陥)のバラツキおよび、導電率のバラツキの実験結果を示す。
今回、実験に使用した水素ガス検知センサを図8に示す。水素ガス検知センサについては以下のよう作製した。
基板1として合成石英(SiO2)基板1を用いた。基板1のサイズとしては、縦10mm、横30mm、厚さ1mmの基板1を使用した。
次に、基板1の一方の面に、スパッタ蒸着法を用いて一対の金(Au)電極2を形成した。電極2は、電極間距離が0.5mm、電極長さが39mmの櫛型電極をメタルマスクにて作製した。電極2の膜厚は100nmとした。
次に、検知膜3については、一対の電極2を覆うように、触媒を白金(Pt)とし、金属酸化物を酸化タングステン(WO3)として、白金分散型酸化タングステンである検知膜3を形成した。形成方法は図1を用いて説明する。形成方法としてはゾルゲル法を用いた。
具体的には、まず、ステップS1において、金属酸化物の前駆体となる金属酸塩水溶液を得るために、タングステン酸ナトリウム二水和物(Na2WO4・2H2O:純正科学株式会社)164.9gをメスフラスコに取り、純水を加えて1Lに調製し、0.5mol/Lの無色透明のタングステン酸ナトリウム(Na2WO4)水溶液を作成する。
次に、ステップS2において、含水酸化物ゾルを得るために、陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR120B Na:オルガノ株式会社)をカラム塔に充填し、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)水溶液を通過させ、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)水溶液のナトリウムイオン(Na+)をプロトン(H+)に交換し、薄黄色のタングステン酸(H2WO4)含水酸化物ゾルを作成する。
次にステップS3に示すように触媒を含み安定した含水酸化物ゾル混合溶液を得るために、上記で得られたタングステン酸(H2WO4)水溶液6.5mLに触媒金属であるヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6・6H2O:和光純薬工業株式会社)を純水に、0.2mol/L溶解させた水溶液を2mLと、エタノール(C2H5OH:和光純薬工業株式会社)を4mL加えて均一に分散混合し、白金分散型酸化タングステンの含水酸化物ゾルの混合溶液を作成する。このときのエタノールを混合した理由としては、含水酸化物ゾルは放置しておくとゲル化が進みゲルとなり薄膜の形成が出来なくなる。そこでゲル化速度の緩和を目的としてエタノールを入れることでゲル化速度を遅くし均一な金属酸化物粒子からなる検知膜を実現するために混合している。
次に、ステップS4において、水酸化物ゾルの混合溶液を基板に塗布するために、上記含水酸化物ゾルの混合溶液を一対の電極2を設けた基板1の一面を覆うように一様に滴下し、スピンコータを用いて所定の膜厚の含水酸化物ゾルの混合溶液の塗布を行う。所定の膜厚としては、膜が縞状のならない50nm以上から、応答性が低下しにくい300nm以下(応答性は膜厚が厚くなると遅くなる傾向を示す)であることが好ましい。
その後、ステップS5において、室温にて2時間乾燥させた後、電気炉を用いて200℃で1時間仮焼成した後、さらに、所定の焼結温度で1時間焼成してから室温に冷却し検知膜3を得る。今回は、焼結時間を1時間としたが、焼結時間は長ければ長いほど良い。また、昇温や冷却時間についても同様に長くすることで酸化タングステンの粒子の均一性は高くなる。
今回の実験に使用した検知膜3の膜厚は150nm程度とした。
次に、電極2及び、検知膜3を形成した基板1の裏面に加熱手段4として、市販されているセラミックヒータを接着した。今回は水素ガス検知センサの加熱温度として80℃で加熱することにした。
以上のようにして水素ガス検知センサの作製を行った。検知膜3の導電率測定方法としては、電極2から導電率測定用リード線6を接続させ、LCRメータ(Agilent Technologies 製品番号:4263B)8を接続し計測を行った。今回はLCRメータ8によって、電圧1V、周波数1kHzの高周波を与えて検知膜3の導電率の測定を行った。
次に、実験設備としては図13に示す設備を用いて実験をおこなった。実験設備は以下の通りである。水素ガス検知センサを密閉された容器11に設置位置20に設置する。この容器11にはガス導入口12とガス排出口13を有しており、ガス導入口12から、水素ガスボン15と圧縮空気ボンベ16が接続されており、任意の流量に設定出来るようになっている。また、各ボンベから導入されるガスは加湿器14により任意の湿度に調整を行ってから容器内に流入するように配管されている。測定条件として、水素ガスボンベとして10%窒素希釈のものを300ml/min流し、圧縮空気ボンベとして乾燥空気を2700ml/minを共に流すことで水素ガス濃度1vol.%の空気希釈ガスを用いて実験を行った。
今回、水素ガス検知センサとしては検知膜3の焼結温度を400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、700℃にして金属酸化物18である酸化タングステンの平均粒子径や検知膜3を形成する基板1の面積と、検知膜3を形成した時に露出された基板1の面積との面積比(膜欠陥)のバラツキの測定を行い、それらの導電率の測定を行った。
実験結果の前に平均粒子径の定義としては、走査型電子顕微鏡(略称:SEM、HITACHI製、型番:S-4300)により、検知膜3の表面を同じ倍率にて画像を取り、その視野上にあるすべての金属酸化物18の粒子径を測定し、平均化することで平均粒子径としている。(今回、SEM画像としては、加速電圧を10kVとし、倍率を100k倍にて撮影した。)
また、検知膜3を形成する基板1の面積と、検知膜3を形成した時に露出された基板1の面積との面積比(膜欠陥)の定義としては、平均粒子径と同様に走査型電子顕微鏡(略称:SEM、HITACHI製、型番:S-4300)によって同じ倍率で画像を取り、その全体の画素数をカウントし、検知膜3を形成する基板1の面積A0とした。(今回、SEM画像としては、加速電圧を10kVとし、倍率を100k倍にて撮影した。)また、検知膜3を形成した時に露出された基板1の面積A1としては、上記と同様に走査型電子顕微鏡によって同じ倍率で画像を取り、その画像より、金属酸化物18の隙間から見える基板1である画素を30箇所抽出し、それらの画素の輝度値を平均化して閾値とし、その輝度値以下の輝度値の画素数をカウントし、検知膜3を形成した時に露出された基板1の面積A1とした。このときのA1/A0(%)の値を基板1の面積と、露出された基板1の面積との面積比(膜欠陥)としている。
即ち、A1/A0の値が大きいと、検知膜の存在しない露出される基板の面積割合が大きく、検知膜の膜欠陥が大きいことを示す。
上記実験結果を図2に示す。
図2(a)に焼結温度を400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、700℃に変化させたときの金属酸化物18である酸化タングステンの平均粒子径の測定結果を示す。図2(a)より、酸化タングステンの平均粒子径は、焼結温度が低いほど酸化タングステンの平均粒子径が小さくなり、粒子径のバラツキが小さくなっている。また、焼結温度が高くなると酸化タングステンの平均粒子径が大きくなり、粒子径のバラツキが大きくなっている。
図2(b)に焼結温度を400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、700℃に変化させたときの検知膜3を形成する基板1の面積と、検知膜3を形成した時に露出された基板1の面積との面積比(膜欠陥)を示す。図2(b)より、検知膜3を形成する基板1の面積と、検知膜3を形成した時に露出された基板1の面積との面積比(膜欠陥)は、焼結温度が低いほど面積比(膜欠陥)が小さくなり、面積比(膜欠陥)のバラツキが小さくなっている。また、焼結温度が高くなると面積比(膜欠陥)が大きくなり、面積比(膜欠陥)のバラツキが大きくなっている。
図3に図2の評価した水素ガス検知センサについて導電率の測定を行った結果を示す。図3(a)より、焼結温度を600℃から700℃と高くすると酸化タングステンの平均粒子径が30nmから65nmとなり、図3(b)より、面積比(膜欠陥)が1%から15%と大きくなり導電率は1μSから3μSと低下傾向を示す。これは焼結温度を高くすることで酸化タングステンの粒子や面積比(膜欠陥)が大きくなるため、粒子同士の連結部分が少なくなったり、又は粒子同士の密着度にバラツキが大きくなったりするため、電流パスが少なくなり導電率が低くなると考えられる。
また、図3(a)より、焼結温度を550℃から450℃と低くすると酸化タングステンの平均粒子径が15nmから30nmとなり、図3(b)より、面積比(膜欠陥)が0.05%から1.5%と小さくなり導電率は3μS以上を示す。これは粒子同士の連結部分が多くなったり、又は粒子同士の密着度にバラツキが小さくなったりするため、電流パスが多くなり導電率が高くなると考えられる。
さらに、図3(a)より、焼結温度を450℃以下にすると図2では、酸化タングステンの平均粒子径が10nm以下/面積比(膜欠陥)が0.05%以下とさらに小さくなる傾向を示しているが、焼結温度が450℃以下では検知膜3全体が焼結されておらず酸化タングステンの粒子の数が少なくなり、水素ガスを検知する酸化タングステン粒子が少なくなるため導電率が低くなると考えられる。
好ましくは水素検知センサとして感度を3μS以上にする焼結温度として450℃から550℃であることが好ましく。そのときの平均粒子径としては15nmから30nmで、面積比(膜欠陥)としては、0.05%から1.5%であることが好ましい。
さらに好ましくは、水素検知センサとして感度を4μS以上にする焼結温度として450℃から500℃であることが好ましく。そのときの平均粒子径としては15nmから25nmで、面積比(膜欠陥)としては、0.05%から1%であることが好ましい。
実施例2においては、図1に示す検知膜形成方法の中で含水酸化物ゾルに触媒前駆体とアルコール系を添加しているが、そのアルコールの添加による金属酸化物の粒度分布を評価した結果を述べる。
水素ガス検知センサの構造、構成される材料および作製方法については実施例1と同様である。
今回、実験に使用した水素ガス検知センサは実施例1と同様に図8の水素検知センサを用いた。水素ガス検知センサの検知膜3の形成方法については以下のようにした。
検知膜3については、一対の電極2を覆うように、触媒を白金(Pt)とし、金属酸化物を酸化タングステン(WO3)として、白金分散型酸化タングステンである検知膜3を形成した。形成方法は図1を用いて説明する。形成方法としてはゾルゲル法を用いた。具体的には、まず、1)に示すように金属酸化物の前駆体となる金属酸塩水溶液を得るために、タングステン酸ナトリウム二水和物(Na2WO4・2H2O:純正科学株式会社)164.9gをメスフラスコに取り、純水を加えて1Lに調製し、0.5mol/Lの無色透明のタングステン酸ナトリウム(Na2WO4)水溶液を得た。次に、2)に示すように含水酸化物ゾルを得るために、陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR120B Na:オルガノ株式会社)をカラム塔に充填し、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)水溶液を通過させ、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)水溶液のナトリウムイオン(Na+)をプロトン(H+)に交換し、薄黄色のタングステン酸(H2WO4)含水酸化物ゾルを得た。次に3)示すように触媒を含み安定した含水酸化物ゾル混合溶液を得るために、上記で得られたタングステン酸(H2WO4)水溶液6.5mLに触媒金属であるヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6・6H2O:和光純薬工業株式会社)を純水に、0.2mol/L溶解させた水溶液を2mLと、アルコールを添加し4mL加えて均一に分散混合し、白金分散型酸化タングステンの含水酸化物ゾルの混合溶液を作成した。このときのアルコールを混合した理由としては、含水酸化物ゾルは放置しておくとゲル化が進みゲルとなってしまう。そこでゲル化速度の緩和を目的としてアルコールを入れることでゲル化速度を遅くし均一な金属酸化物粒子からなる検知膜を実現するために混合している。
次に、4)に示すように水酸化物ゾルの混合溶液を基板に塗布するために、上記含水酸化物ゾルの混合溶液を一対の電極2を設けた基板1の一面を覆うように一様に滴下し、スピンコータを用いて任意の膜厚の含水酸化物ゾルの混合溶液の塗布を行った。その後、5)に示すように室温にて2時間乾燥させた後、電気炉を用いて200℃で1時間仮焼成した後、さらに、任意の焼結温度500℃で1時間焼成してから室温に冷却し検知膜3を得た。今回は、焼結時間を1時間としたが、焼結時間は長ければ長いほど良い。また、昇温や冷却時間についても同様に長くすることで酸化タングステンの粒子の均一性が高くなる。
今回、検知膜3形成の際のアルコールとしてメタノール(CH3OH:和光純薬工業株式会社)、エタノール(C25OH:和光純薬工業株式会社)、1−プロパノール(CH3CH2CH2OH:和光純薬工業株式会社)、1−ブタノール(CH3(CH2)2CH2OH:和光純薬工業株式会社)、1−ペンタノール(CH3(CH2)3CH2OH:和光純薬工業株式会社)をタングステン酸(H2WO4)水溶液に添加し焼結を行い、そのときの酸化タングステンの粒度分布の評価を行った。
粒子分布は走査型電子顕微鏡(略称:SEM、HITACHI製、型番:S-4300)により、検知膜3の表面を同じ倍率にて画像を取り、その中の予め決めておいた面積中にあるすべての金属酸化物18の粒子径を測定し、粒度分布の評価を行った。(今回、SEM画像としては、加速電圧を10kVとし、倍率を100k倍にて撮影した。)
各アルコールをタングステン酸(H2WO4)水溶液に添加した場合の粒度分布の実験結果を図4に示す。図4(a)は各アルコールをタングステン酸(H2WO4)水溶液に添加して焼結した場合に酸化タングステン粒子がある粒子径の範囲内に何個存在しているかを示している。また、図4(b)は、図4(a)より抽出された酸化タングステン粒子を標準偏差にて示している。
図4(a)より、メタノールをタングステン酸(H2WO4)水溶液に添加し焼結した場合、酸化タングステンの粒子は10nmから100nmに広域に分散した。また、添加するアルコールをエタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノールのように炭素(C)数を増やしていくと0nmから30nmの酸化タングステン粒子は徐々に増加しているのに対し、30nm以上の酸化タングステン粒子は徐々に減少している。図4(b)では各アルコールを添加して焼結することによっての酸化タングステン粒子の粒度分布を示しており、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノールのように炭素(C)数を増やしていくことで粒度分布は減少していく。
実際に添加するアルコールをエタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノールとして水素検知センサを複数作製して導電率の測定を行った結果を図5に示す。粒度分布と同様に、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノールのように炭素(C)数を増やしていくことで導電率のバラツキを低減することができる。
これらの粒度分布は粒子同士の連結部分である電流パスが粒子径のばらつきによって粒子同士が連結する数が異なるため、電流パスにバラツキが発生して水素検知センサの導電率に影響を及ぼすと考えられる。
検知膜としては、粒度分布は小さければ小さいほど良い。好ましくは粒度分布が20nm以下であることが好ましく、そのときのアルコールとしてはCnn+1OHにおいてnが2以上であることが好ましい。また、さらに好ましくはアルコールとしてはCnn+1OHにおいてnが3以上であればよい。
本発明にかかる水素ガス検知センサ製造方法は、電気的に絶縁性を有する基板と、前記基板上両端に形成される一対の電極と、前記電極の一部が重なるように形成され水素ガスを検知する検知膜とを備えた水素ガス検知センサにおいて、前記検知膜は水素ガスを吸着してプロトン(H+)と電子(e)に解離する作用を有する触媒粒子と、当該触媒作用で生じたプロトン(H+)と電子(e)とに反応することによって導電率が増加する金属酸化物粒子とから構成され、前記金属酸化物粒子より径の小さい触媒粒子を分散担持する構造を有する検知膜の水素ガス検知センサの製造方法であって、金属酸化物を形成させるための前駆体となる金属酸塩水溶液のイオン交換を行い、含水酸化物ゾルを得る工程と、前記含水酸化物ゾルに触媒前駆体及びアルコール(Cnn+1OH)系の有機溶媒を加えて均一に分散混合する工程と、当該触媒混合した含水酸化物ゾルの混合溶液を絶縁性の基板に塗布する工程と、前記含水酸化物ゾルの混合溶液を塗布された膜を焼結する工程と、温度450〜550℃で焼結する工程を含む製造方法にて水素ガス検知センサを製造することで、金属酸化物の粒子径を15nmから30nmとし、且つ導電率のバラツキを低減し、安定した水素ガスの漏洩検知が可能である水素ガス検知センサとして有用である。
本発明の実施例1および実施例2における水素ガス検知センサの検知膜製造方法を示す図 本発明の実施例1における水素ガス検知センサの検知膜の焼結温度と粒子密度及び平均粒子径との関係を説明するための図 本発明の実施例1における水素ガス検知センサの検知膜の焼結温度に対する膜欠陥と平均粒子径及び導電率との関係を説明するための図 本発明の実施例2における水素ガス検知センサの検知膜のアルコールに対する粒度分布を説明するための図 本発明の実施例2における水素ガス検知センサの検知膜のアルコールに対する導電率のバラツキを説明するための図 本発明の実施例1における水素ガス検知センサの構造の一例を示す図 本発明の実施例1における水素ガス検知センサの他の構造の一例を示す図 本発明の実施例1における加熱手段を有する水素ガス検知センサの構造の一例を示す図 本発明の実施例1における加熱手段を有する他の水素ガス検知センサの構造の一例を示す図 本発明の実施例1における加熱手段を有する他の水素ガス検知センサの構造の一例を示す図 本発明の実施例1における加熱手段を有する更に他の水素ガス検知センサの構造の一例を示す図 本発明の実施例1における水素ガス検知センサの検知膜の構造を模式的に示す図 本発明の実施例1における水素ガス検知センサの実験設備を模式的に示す図
符号の説明
1 基板
2 電極
3 検知膜
4 加熱手段
5 絶縁膜
6 導電率測定用リード線
7 加熱手段用リード線
8 LCRメータ
10 直流電源
11 容器
12 ガス導入口
13 ガス排出口
14 加湿器
15 水素ガスボンベ
16 圧縮空気ボンベ
17 一酸化炭素ボンベ
18 金属酸化物
19 触媒
20 水素ガス検知センサ

Claims (9)

  1. 金属酸化物粒子に触媒粒子を分散担持して構成される検知膜を有する水素ガス検知センサの製造方法であって、
    金属酸化物を形成するための前駆体となる金属酸塩水溶液のイオン交換を行い、含水酸化物ゾルを得る工程と、
    前記含水酸化物ゾルに触媒を混合するために触媒前駆体である触媒金属の溶液及びアルコール(Cnn+1OH)系の有機溶媒を加えて均一に分散混合する工程と、
    前記触媒混合された含水酸化物ゾルの混合溶液を絶縁性の基板に所定の膜厚に塗布する工程と、
    前記含水酸化物ゾルの混合溶液が塗布された膜を焼結して検知膜を形成する焼結工程と、
    を具備することを特徴とする水素ガス検知センサ製造方法。
  2. 前記焼結工程における焼結温度が450から550℃であることを特徴とする水素ガス検知センサ製造方法。
  3. 前記アルコールは、化学式Cnn+1OHにおいてnが2以上であることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス検知センサ製造方法。
  4. 前記金属酸化物の平均粒子径が15nmから30nmであることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス検知センサ製造方法。
  5. 前記触媒の平均粒子径が1nmから20nmであることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス検知センサ製造方法。
  6. 請求項1に記載の水素ガス検知センサ製造方法にて製造される水素ガス検知センサは、基板上に形成される検知膜表面積と、前記検知膜が形成されずに露出される部分の基板の面積との面積比(膜欠陥)が0.05から1.5パーセントであることを特徴とする水素ガス検知センサ。
  7. 前記水素ガス検知センサは、金属酸化物粒子に触媒粒子を分散担持して構成され、前記金属酸化物の主たる成分は、三酸化モリブデン(MoO3)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化チタン(TiO2)、水酸化イリジウム(Ir(OH)n)、五酸化バナジウム(V25)、酸化ニッケル(NiO2)のいずれかの一つよりなることを特徴とする請求項6に記載の水素ガス検知センサ。
  8. 前記水素ガス検知センサは、前記金属酸化物より粒子径の小さい触媒粒子を分散担持する構造を有し、前記触媒は、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)若しくは白金(Pt)のいずれかの一つ又はこれらの少なくもいずれかの一つを含む混合物であることを特徴とする請求項7に記載の水素ガス検知センサ。
  9. 前記水素ガス検知センサは、検知膜を80℃以上の温度に加熱する加熱機構を有することを特徴する請求項6に記載の水素ガス検知センサ。
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