JP2007177347A - セルロースブレンド繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】
セルロースを熱可塑性樹脂にブレンドした繊維または一部に前記ブレンド繊維を含む繊維製品、またはそれらの機能加工品によって、熱可塑性樹脂の特徴である強度、タフネス、靭性、耐摩耗性、発色性など優れた力学特性と、セルロースの優れた易加工性を併せ持った機能性繊維を提供せんとするものである。
【解決手段】
グルコース単位あたりの平均置換度が0.5以下のセルロースと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂からなり、セルロースと熱可塑性樹脂の重量比が5:95〜50:50であることを特徴とするセルロースブレンド繊維。
【選択図】なし
セルロースを熱可塑性樹脂にブレンドした繊維または一部に前記ブレンド繊維を含む繊維製品、またはそれらの機能加工品によって、熱可塑性樹脂の特徴である強度、タフネス、靭性、耐摩耗性、発色性など優れた力学特性と、セルロースの優れた易加工性を併せ持った機能性繊維を提供せんとするものである。
【解決手段】
グルコース単位あたりの平均置換度が0.5以下のセルロースと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂からなり、セルロースと熱可塑性樹脂の重量比が5:95〜50:50であることを特徴とするセルロースブレンド繊維。
【選択図】なし
Description
本発明は、セルロースと熱可塑性樹脂からなる新規なブレンド繊維に関するものである。
熱可塑性樹脂からなる繊維の中でも、ナイロン6やナイロン66に代表されるポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートやポリ乳酸に代表されるポリエステル繊維といった、重縮合系ポリマーからなる繊維は、適度な強度、タフネス、靭性、耐熱性、染色堅牢性、発色性や寸法安定性に優れるため、衣料用途のみならずインテリアや車輛内装、産業用途等幅広く用いられてきた。また、ポリエチレンやポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン繊維などの付加重合系ポリマーからなる繊維は、力学特性や耐薬品性、軽量性に優れるため、産業用途に幅広く用いられてきた。
これら熱可塑性樹脂は幅広く利用されており、その用途にあわせて、様々な機能性が要求されている。これに対応するために、繊維化前のポリマー改質による機能加工方法や、繊維化後に化合物を付与する後加工の方法で、吸湿、抗菌、消臭、制電、導電などの様々な機能性を付与する方法が提案されてきた。
しかしながら、ポリマー改質による機能加工方法では、ポリマーの主鎖に他のポリマーフラグメントを導入する方法であり、熱可塑性樹脂が本来有している強度や耐熱性が低下するといった問題があった。
また、繊維化後に化合物を付与する後加工の方法では、機能性物質を繊維構造物に吸着させたり、機能性物質をバインダーに混合した後に、繊維構造物に含浸、固着させる機能加工方法が知られている。しかしながら、これらの方法では、布帛表層部分への固着であるために耐久性に劣り、使用時の物理的な接触による摩擦等によって機能性物質が脱落するといった問題があり、機能性物質が剥離しやすく耐久性に劣るといった問題があった。
これに対して、熱可塑性樹脂と機能性ポリマーを組み合わせて繊維化することで、繊維に機能性を付与しようという試みが検討されてきた。特許文献1では、低吸湿性のポリアミドを鞘部に、高吸湿性のポリアミドを芯部にした芯鞘型複合紡糸が提案されている。また、特許文献2では、ポリアミドに対して親水性ポリマーとしてポリビニルピロリドンをブレンドして紡糸することで、吸湿性能を向上させる方法が提案されている。しかしながらこれらの方法では、繊維表面の物理的な耐久性改善には一定の効果があるものの、熱可塑性樹脂に対して機能性ポリマーの有している特徴を付与しているのみであり、多用な機能性付与に応用できる加工方法ではなかった。
一方、セルロースは、分子中にグルコース単位あたり3つの水酸基を有しているため、それ自体で吸湿性が高いという機能性を有している他、その水酸基を利用した機能加工が知られている。特許文献3には、セルロースに金属キレート形成能を持たせて金属イオンを捕捉する方法が示されている他、非特許文献1には、水酸基に対する様々な機能加工が示されている。つまり、セルロースには多用な機能加工によって、様々な機能性を保持させることができるものである。ここで示したセルロースへの機能加工は化学結合を利用した改質であり、物理的な摩擦に対して 耐久性が高いといった利点がある。
このことから、熱可塑性樹脂とセルロースからなる繊維を得ることができれば、繊維の力学特性および易成型性を熱可塑性樹脂に持たせ、易機能加工性および機能加工の耐久性をセルロースに持たせることができるため、非常に有用な機能性繊維が得られるようになるものである。
上記のように、セルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維および繊維製品が求められていたが、これまでには特許文献4にあるように、単に熱可塑性樹脂からなる繊維とセルロース繊維を混用した繊維製品は知られているものの、熱可塑性の乏しいセルロースと熱可塑性樹脂を混合または複合して繊維化するといった発想は無かった。
このため、熱可塑性樹脂の力学特性と耐熱性を兼ね備え、かつセルロースの機能と易機能加工性を両立させた機能性繊維が求められていた。
特開平3−213519号公報(特許請求の範囲)
特開平9−188917号公報(請求項1)
特開平10−183470号公報(請求項1)
特開2000−303357号公報(請求項1)
セルロース学会、「セルロースの辞典」、P132、139、(株)朝倉書店、(2000)
本発明は、かかる従来の課題に鑑み、機能性に優れた、セルロースと熱可塑性樹脂からなる機能性繊維を提供せんとするものである。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
(1)セルロースと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂からなり、セルロースと熱可塑性樹脂の重量比が5:95〜50:50であることを特徴とするセルロースブレンド繊維。
(2)繊維がポリマーアロイ紡糸法による海島構造であることを特徴とする(1)記載のセルロースブレンド繊維。
(3)熱可塑性樹脂がポリアミドであることを特徴とする(1)または(2)記載のセルロースブレンド繊維。
(4)熱可塑性樹脂がポリエステルであることを特徴とする(1)または(2)記載のセルロースブレンド繊維。
(5)熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする(1)または(2)記載のセルロースブレンド繊維。
(6)(1)から(5)のいずれか1項記載のセルロースブレンド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
(1)セルロースと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂からなり、セルロースと熱可塑性樹脂の重量比が5:95〜50:50であることを特徴とするセルロースブレンド繊維。
(2)繊維がポリマーアロイ紡糸法による海島構造であることを特徴とする(1)記載のセルロースブレンド繊維。
(3)熱可塑性樹脂がポリアミドであることを特徴とする(1)または(2)記載のセルロースブレンド繊維。
(4)熱可塑性樹脂がポリエステルであることを特徴とする(1)または(2)記載のセルロースブレンド繊維。
(5)熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする(1)または(2)記載のセルロースブレンド繊維。
(6)(1)から(5)のいずれか1項記載のセルロースブレンド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
本発明のセルロースを熱可塑性樹脂にブレンドした繊維または一部に前記ブレンド繊維を含む繊維製品、またはそれらの機能加工品によって、熱可塑性樹脂単独からなる繊維では実現できなかった後加工が可能になり、熱可塑性樹脂の特徴である強度、タフネス、靭性、耐摩耗性、発色性など優れた力学特性と、セルロースの優れた易加工性を併せ持った機能性繊維を得ることができる。
本発明で言うセルロースとは、グルコース単位あたりの平均置換度が0.5以下のセルロースのことを言う。ここで言う平均置換度とは、セルロースのグルコース単位あたりに存在する3つの水酸基に、水酸基以外の官能基が化学的に結合した数を指す。グルコース単位あたりの平均置換度が0.5以下のセルロースは、グルコース単位あたり2.5個以上の水酸基を有しており、繊維の吸湿性能が高いという特徴を有している。また、平均置換度が0.5以下のセルロースでは、後加工で反応可能な水酸基量が多いため、セルロースへの機能加工を効率的に行なうことができる。グルコース単位あたりの平均置換度が0.3以下のセルロースであれば水酸基量が多く、さらに好ましい。
また、水酸基量が多い方が好ましいという観点から、本発明のセルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維中には、水酸基量が0.8mmol/1g以上含まれることが好ましい。水酸基量が0.8mmol/1g以上であれば、水酸基により繊維の吸湿性能向上の効果があり、水酸基を利用した機能加工も効率的に行なうことができるためである。繊維中の水酸基量が2.0mmol/1g以上であればさらに好ましい。
本発明におけるセルロースの平均重合度に制限は無いが、機械的特性に優れた繊維を得るために50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。
また、水酸基量が多い方が好ましいという観点から、本発明のセルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維中には、水酸基量が0.8mmol/1g以上含まれることが好ましい。水酸基量が0.8mmol/1g以上であれば、水酸基により繊維の吸湿性能向上の効果があり、水酸基を利用した機能加工も効率的に行なうことができるためである。繊維中の水酸基量が2.0mmol/1g以上であればさらに好ましい。
本発明におけるセルロースの平均重合度に制限は無いが、機械的特性に優れた繊維を得るために50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。
本発明で言う熱可塑性樹脂とは、溶融成型可能な樹脂のことを言い、ポリアミドやポリエステル、ポリオレフィンなどを例示することができる。この中で、吸湿性能を重視するならばポリアミド、耐熱性を重視するならポリエステル、耐薬品性を重視するならポリオレフィンを選択することがそれぞれ好ましい。これらを1種類のみでもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で言うポリアミドとは、主鎖にアミド結合を有する樹脂であり、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612、6Tナイロン等、あるいはそれらとアミド形成官能基を有する化合物、例えば、ラウロラクタム、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の共重合成分を含有する共重合ポリアミドが挙げられる。これらのうち、汎用性の点からナイロン6とナイロン66が好ましい。
また、本発明で用いるポリアミドには、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ、ポリアクリル酸ソーダ、ポリNビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリメタクリル酸およびその共重合体、ポリアクリルアミドおよびその共重合体、ポリビニルアルコールおよびその共重合体、架橋ポリエチレンオキサイド系ポリマーなどが含有されていてもよい。また、酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料のほか、従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。
また、本発明で用いるポリアミドは、必要に応じてカルボン酸化合物またはアミン化合物で末端封鎖されていてもよく、ポリアミドの末端が封鎖されている方が、耐熱性を向上させやすいため好ましい。ここで用いられるカルボン酸化合物としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。アミン化合物としては、脂肪族モノアミン、脂環式モノアミン、芳香族モノアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンなどが挙げられる。
また、本発明で用いるポリアミドは、必要に応じてカルボン酸化合物またはアミン化合物で末端封鎖されていてもよく、ポリアミドの末端が封鎖されている方が、耐熱性を向上させやすいため好ましい。ここで用いられるカルボン酸化合物としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。アミン化合物としては、脂肪族モノアミン、脂環式モノアミン、芳香族モノアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンなどが挙げられる。
本発明で言うポリエステルとは、アルコールとカルボン酸の重縮合より合成されてなるものであり、2種類以上の分子から合成されていてもよいし、分子内にカルボン酸とアルコールの両方を有した分子から合成されていてもよい。また、それらの分子から直接重合されてもよいし、一旦オリゴマーを生成し、重合を行ってもよい。カルボン酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。アルコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。ポリエステルの中では、汎用性の点からポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、本発明のポリエステルには、従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。
本発明で言うポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィンを主成分とする重合体あるいは共重合体であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また変性ポリオレフィンであってもよく、上記ポリオレフィンをアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、あるいは無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性したもの(共重合又はグラフト重合)が挙げられる。これらのうち、汎用性の点からポリエチレンとポリプロピレンが好ましい。また、本発明で用いるポリオレフィンには、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ帯電防止剤、二酸化チタンのような艶消剤、カーボンブラックのような着色剤及び熱安定性の酸化防止剤等を添加混合することもできる。
本発明においては熱可塑性樹脂の融点が100℃以上であることが重要である。融点が100℃以上であれば、繊維の耐熱性が良好で、高温状態での樹脂の劣化や製品の変形が抑制され、高温条件下での繊維の使用に耐えられるためである。また、熱可塑性樹脂の融点が165℃以上であれば、より好ましい。なお、非晶性ポリマーのように融点が観測されないものについては、ガラス転移温度、ビカット軟化温度、熱変形温度などで代用することができる。また、成型時の熱可塑性樹脂の劣化を抑制するといった観点から、融点が200℃以上であればさらに好ましい。
また、本発明の繊維は、セルロースの平均置換度を下げるためにアルカリ性溶液を用いてけん化処理を行なうことがあるため、熱可塑性樹脂はアルカリ性溶液に侵されにくいものが好ましく、ポリアミドやポリオレフィンであることが好ましい。耐アルカリ性の指標としては、熱可塑性樹脂を通常の方法で繊維化したものを、3%水酸化ナトリウム水溶液中、98℃、浴比1:100で2時間処理したときの重量減少率が3%以下であることが好ましく、ナイロン6、ポリプロピレンでは重量減少率が1%以下である。また、セルロースへの機能加工時に樹脂の強度低下や重量低下が小さくなるよう、アルカリ性溶液だけでなく、一般的な薬品にも侵されにくい耐薬品性の高い樹脂であることも好ましく、この観点からポリオレフィンであることが好ましい。
本発明においては熱可塑性樹脂の融点が100℃以上であることが重要である。融点が100℃以上であれば、繊維の耐熱性が良好で、高温状態での樹脂の劣化や製品の変形が抑制され、高温条件下での繊維の使用に耐えられるためである。また、熱可塑性樹脂の融点が165℃以上であれば、より好ましい。なお、非晶性ポリマーのように融点が観測されないものについては、ガラス転移温度、ビカット軟化温度、熱変形温度などで代用することができる。また、成型時の熱可塑性樹脂の劣化を抑制するといった観点から、融点が200℃以上であればさらに好ましい。
また、本発明の繊維は、セルロースの平均置換度を下げるためにアルカリ性溶液を用いてけん化処理を行なうことがあるため、熱可塑性樹脂はアルカリ性溶液に侵されにくいものが好ましく、ポリアミドやポリオレフィンであることが好ましい。耐アルカリ性の指標としては、熱可塑性樹脂を通常の方法で繊維化したものを、3%水酸化ナトリウム水溶液中、98℃、浴比1:100で2時間処理したときの重量減少率が3%以下であることが好ましく、ナイロン6、ポリプロピレンでは重量減少率が1%以下である。また、セルロースへの機能加工時に樹脂の強度低下や重量低下が小さくなるよう、アルカリ性溶液だけでなく、一般的な薬品にも侵されにくい耐薬品性の高い樹脂であることも好ましく、この観点からポリオレフィンであることが好ましい。
本発明のセルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維では、セルロースが繊維重量の5重量%以上であれば、繊維に含有される水酸基量が多くなるため、繊維の吸湿性能が発現しやすいばかりか、セルロースへの機能加工を施した時の効果が高くなるため好ましい。繊維重量に対してセルロースが10重量%以上であれば、繊維に含有される水酸基量が増えるほか、セルロースの染色鮮明性効果が現れやすく、より好ましい。一方、繊維重量に対して、熱可塑性樹脂が50重量%以上であれば熱可塑性樹脂の特徴である靭性や強度などの優れた物性が繊維に反映されやすいため好ましい。熱可塑性樹脂が60重量%以上であれば、さらに好ましい。このことから、セルロースと熱可塑性樹脂の重量比が5:95〜50:50であることが必要であり、10:90〜40:60が好ましい。
本発明におけるセルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維の複合構造としては、芯鞘構造や海島構造など任意の構造をとることができるが、セルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維が海島構造を取っていることが好ましい。単なる樹脂の貼り合わせの状態ではない海島構造である場合には、樹脂間の界面が増大するため、樹脂間で剥離し難く、繊維やそれからなる繊維製品の物理的な耐久性を向上させることができるためであり、異種の樹脂の機能を複合化する観点から好ましいものである。さらに、海島構造は、複合紡糸法によるものでも、ポリマーアロイ紡糸法によるものでも良いが、ポリマーアロイ紡糸法によるものの方が、島成分を微分散化し、セルロースと熱可塑性樹脂からなる界面を増加させやすいためより好ましい。
本発明で言う海島構造とは、2種以上の樹脂が相分離構造を取るものであり、メジャー成分あるいは低粘度成分がマトリックス、マイナー成分あるいは高粘度成分がドメインとなる構造を言うものである。なお、相溶性の比較的良いポリマーアロイ系では、はっきりした海/島とならずに島成分が層構造となり見かけ上、海/島を判別しがたい場合もあるが、相分離しているという点で本発明では海島構造に含めるものとする。
本発明で言うポリマーアロイ紡糸法とは、2種類以上の樹脂を繊維化工程でブレンドしてなるものであり、通常の複合紡糸法と比べて、島成分が微分散し、島成分の数が多くなるものである。
また、本発明の繊維表面が熱可塑性樹脂で覆われていることがより好ましい。繊維表面が熱可塑性樹脂で覆われることで、熱可塑性樹脂の特性である靭性や耐摩耗性に優れた繊維表面が形成されるために、繊維の耐衝撃性、柔軟性、耐摩耗性が向上する他、繊維の寸法安定性が向上するためである。つまり、本発明の繊維が海島構造をとっている場合には、島成分がセルロース、海成分が熱可塑性樹脂となる構造が好ましい。
本発明における複合構造については、繊維横断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで評価することができる。また、セルロースまたは熱可塑性樹脂のどちらか一方を溶出すると、観察しやすくなり好ましい。
また、本発明において、セルロースの水酸基量が多いと繊維の吸湿性能が向上し、快適な機能性繊維を得ることができる。繊維の吸湿性能としては、組み合せとなる熱可塑性樹脂にもよるが、セルロースを含むことによる機能性付与という面で、本発明の繊維では、吸湿パラメーター(以下ΔMRと記す)が、熱可塑性樹脂がポリアミドであれば3.0以上、熱可塑制樹脂がポリエステルであれば1.0以上、熱可塑制樹脂がポリオレフィンであれば0.5以上であることが好ましい。
ここで言う吸湿パラメーターのΔMRとは、30℃×90%RHでの吸湿率(MR2)から20℃×65%RHでの吸湿率(MR1)を引いた差である(ΔMR(%)=MR2−MR1)。ここでΔMRは衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るための指標であり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の30℃×90%RHに代表される衣服内温度と20℃×65%RHに代表される外気温湿度との吸湿率の差である。本発明では、吸湿性能評価の尺度としてこのΔMRをパラメーターとして用いている。ΔMRは大きければ大きいほど吸湿能力が高く、着用時の快適性が良好であることに対応する。
ここで言う吸湿パラメーターのΔMRとは、30℃×90%RHでの吸湿率(MR2)から20℃×65%RHでの吸湿率(MR1)を引いた差である(ΔMR(%)=MR2−MR1)。ここでΔMRは衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るための指標であり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の30℃×90%RHに代表される衣服内温度と20℃×65%RHに代表される外気温湿度との吸湿率の差である。本発明では、吸湿性能評価の尺度としてこのΔMRをパラメーターとして用いている。ΔMRは大きければ大きいほど吸湿能力が高く、着用時の快適性が良好であることに対応する。
本発明のセルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維には、従来公知のセルロースに対する化学処理を用いて後加工することにより、機能性を向上させた繊維を得ることができるものである。ここでいう従来既知のセルロースに対する化学処理方法の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、硫酸とクロロスルホン酸によってC6位をスルホン化し、両性イオン交換性を持たせる方法、グリシジルトリアルキルアンモニウム塩などで活性水素部を4級アンモニウム塩化して、抗菌性を持たせる方法、カルボキシメチル化して両性イオン交換能を持たせる方法、カルボキシメチル化した後にナトリウムなどのアルカリ金属を保持させて高い吸湿、吸水性能を持たせる方法、カルボキシメチル化した後に、亜鉛や銅イオンを保持させて消臭性能を持たせる方法などが挙げられる。ここでいう吸水性能とは、繊維の水の含みやすさを吸水量で示し、吸水性能が高い繊維は、衛生材料、農業資材、土木・建築材料等広い分野で使用される。また、消臭性能とは、悪臭成分を吸着して放出を妨げる性能であり、衣料、衣料資材、インテリア用品等の分野で使用される。
熱可塑性樹脂に含有されたセルロースにこれら機能加工を行なうことで、熱可塑性樹脂の強度、タフネス、耐熱性、染色堅牢度、靭性、耐磨耗性などを保持しつつ、セルロースの機能性を持った有用な繊維が得られるものである。
また、この機能加工をする際には、セルロース、熱可塑性樹脂、加工剤以外の不純物を含有しないことが好ましい。そういった不純物を含有する場合には、セルロースに対する加工剤が失活してしまうことがあるためで、例えば、セルロースが金属イオンを発生させるような不純物を含んでいる場合には、加工時のpH調整が阻害されるといった可能性があるためである。
本発明のセルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば以下のような方法を採用することができる。
すなわち、特開昭44−18369号公報の第一図に示されているような多数の芯鞘複合流を形成し、これらの芯鞘複合流を一つの吐出孔に導入して海島型の複合繊維を紡糸した後に冷却固化する複合紡糸法。また、二種類以上の樹脂をエクストルーダーやニーダーにより溶融混合してポリマーアロイ溶融体とし、これを紡糸した後に冷却固化して繊維化するポリマーアロイ紡糸法が挙げられる。ここで、複合紡糸法では複雑な複合紡糸機が必要になるのに対して、ポリマーアロイ紡糸法では、単成分紡糸機を使用できるといった利点があるため好ましい。
本発明の繊維は、必要に応じて異形断面糸とすることができ、繊維製品とした時の吸水性能、遮光性、発色性、保温性が向上するものである。通常用いられる丸断面の以外のものとしては、3葉断面、6葉断面、8葉断面のような多葉断面、W字型、X字型、H字型、C字方、中空などが挙げられる。
本発明の紡糸においては、熱可塑性の改良されたセルロース前駆体と熱可塑性樹脂を別途溶融してパック内へ導入し、海島複合口金を用いて海島型に合流させて紡糸してもよいし、セルロース前駆体と熱可塑性樹脂を同時に溶融混合して紡糸してもよい。得られたセルロース前駆体と熱可塑性樹脂からなる繊維を、必要に応じて延伸・熱処理を施す。その後、セルロース前駆体をけん化処理などして、セルロースとすることで本発明の繊維を得ることができる。
本発明で言うセルロース前駆体とは、けん化処理を行なうことで本発明のセルロースが得られるものを言い、例えば、熱可塑性が改良されたセルロースエステルなどを挙げることができる。より具体的には、グルコース単位あたりの平均置換度が1.0〜2.9であるセルロースエステルであることが好ましく、良好な熱流動性を得るためにはセルロースエステルのグルコース単位あたりの平均置換度が2.2〜2.9であることがさらに好ましい。
本発明で言うセルロース前駆体とは、けん化処理を行なうことで本発明のセルロースが得られるものを言い、例えば、熱可塑性が改良されたセルロースエステルなどを挙げることができる。より具体的には、グルコース単位あたりの平均置換度が1.0〜2.9であるセルロースエステルであることが好ましく、良好な熱流動性を得るためにはセルロースエステルのグルコース単位あたりの平均置換度が2.2〜2.9であることがさらに好ましい。
本発明でセルロースエステルとは、セルロースの水酸基がアシル基によって置換されているものを言い、具体的なアシル化剤としては、酸塩化物、酸無水物、カルボン酸化合物、カルボン酸化合物誘導体、環状エステルなどが挙げられるが、特に限定されない。
具体的なセルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースヘキサノエート、セルロースラウレート、セルロースフタレートなどの単一種の化合物によってアシル化されたセルロース単独エステル類の他、セルロースアセテートプロピオネートや、セルロースアセテートブチレートなどの複数種のアシル化剤によってアシル化されたセルロース混合エステル類を挙げることができる。これら単独でもよいし、2種以上が混合されていてもよい。これらの中では、紡糸における耐熱性が高い方が好ましいという観点から、セルロースアセテートプロピオネートや、セルロースアセテートブチレートが好ましい例として挙げられる。
また、本発明で言うセルロース前駆体は、セルロースエステルの熱流動性を上げるために用いられる公知の可塑剤を含有することができる。可塑剤としては、比較的低分子量のものとして、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジへキシルフタレート、ジメトキシフタレート、エチルフタリルエチルグルコレートなどのフタル酸エステル類、テトラオクチルピロメリテート、などの芳香族多価カルボン酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペートなどの脂肪族多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、グリセリンジアセトモノラウリレートなどの多価アルコールの脂肪酸エステル、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類、フェニルグリシジルエーテルなどの芳香族エポキシ化合物、などを挙げることができる。
具体的なセルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースヘキサノエート、セルロースラウレート、セルロースフタレートなどの単一種の化合物によってアシル化されたセルロース単独エステル類の他、セルロースアセテートプロピオネートや、セルロースアセテートブチレートなどの複数種のアシル化剤によってアシル化されたセルロース混合エステル類を挙げることができる。これら単独でもよいし、2種以上が混合されていてもよい。これらの中では、紡糸における耐熱性が高い方が好ましいという観点から、セルロースアセテートプロピオネートや、セルロースアセテートブチレートが好ましい例として挙げられる。
また、本発明で言うセルロース前駆体は、セルロースエステルの熱流動性を上げるために用いられる公知の可塑剤を含有することができる。可塑剤としては、比較的低分子量のものとして、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジへキシルフタレート、ジメトキシフタレート、エチルフタリルエチルグルコレートなどのフタル酸エステル類、テトラオクチルピロメリテート、などの芳香族多価カルボン酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペートなどの脂肪族多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、グリセリンジアセトモノラウリレートなどの多価アルコールの脂肪酸エステル、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類、フェニルグリシジルエーテルなどの芳香族エポキシ化合物、などを挙げることができる。
可塑剤として比較的高分子量のものとしては、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類が挙げられる。可塑剤は、これらを単独、もしくは併用して含有していても良い。
可塑剤の含有量としては、セルロース前駆体重量の1重量%以上であれば、セルロース前駆体の熱流動性が良好となるため好ましく、3%以上であればさらに好ましい。また、セルロース前駆体重量の30重量%以下であれば、可塑剤の発煙に伴う紡糸性の悪化が無く、紡糸後に本発明で言うセルロースとしやすいため好ましく、15重量%以下であればさらに好ましい。このことから、可塑剤の含有量としては、セルロース前駆体重量の1〜30重量%であることが好ましく、3〜15重量%であることが更に好ましい。また、本発明の効果を損なうことの無い範囲において、本発明のセルロースにも可塑剤が含まれていても良い。
本発明で得られるセルロースと熱可塑性樹脂からなる繊維、または少なくとも一部に含む繊維製品、またはそれらの加工品は、その易成型性を活用して、糸、わた、パッケージ、織物、編物、フェルト、不織布、人工皮革などの中間製品とすることができる。また、セルロースの易加工性と熱可塑性樹脂それぞれの特徴を活用して、例えば以下のような繊維製品とすることが可能になる。セルロースとポリアミドからなる繊維では、ポリアミドの耐久性、靭性、親水性とセルロースの易加工性を活用して、衣料、衣料資材、インテリア製品として用いることができ、セルロースに抗菌、消臭加工を行なうことで、快適で高度な機能性衣料などとすることができる。また、セルロースとポリエステルからなる繊維においても、衣料、衣料資材に好適に用いることができ、優れた耐光性を活用して、車輛内装製品等に用いることができる。セルロースとポリオレフィンからなる繊維では、耐薬品性が高いことなどから産業資材等に好適に用いることができ、セルロースへ機能加工することで、イオン交換樹脂や、汚染除去繊維などとして幅広く利用することができるようになる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
A.グルコース単位あたりの平均置換度
セルロースまたはセルロース前駆体のグルコース単位あたりの平均置換度の算出方法については下記の通りである。セルロースまたはセルロース前駆体のアシル基の組成により、下式を応用して置換度を見積もるものとする。本発明で言うセルロースの平均置換度とは、ここではアシル基の平均置換度のことを示す。
A.グルコース単位あたりの平均置換度
セルロースまたはセルロース前駆体のグルコース単位あたりの平均置換度の算出方法については下記の通りである。セルロースまたはセルロース前駆体のアシル基の組成により、下式を応用して置換度を見積もるものとする。本発明で言うセルロースの平均置換度とは、ここではアシル基の平均置換度のことを示す。
80℃で8時間の乾燥したセロロースまたはセルロース前駆体0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
繊維がセルロースまたはセルロース前駆体と熱可塑性樹脂とのポリマーアロイとなっている場合で上記方法が困難な場合には、クロロホルムでセルロースまたはセルロース前駆体を抽出し、1H−NMRおよび13C−NMRを測定し、グルコース骨格の水酸基と、アシル基末端のメチル基の積分比などで置換度を見積もるものとした。
B.セルロースまたはセルロース前駆体と熱可塑性樹脂の重量比率導出方法
含有されている樹脂のうち、一方のみを溶出する溶媒を用意し、残存重量から樹脂重量を測定した。溶媒は従来公知の適当な溶媒を用いた。
C.水酸基量の測定
本発明における水酸基量は、セルロースの平均置換度および重量比率から導出するものである。下記式を用いて計算した。
DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
繊維がセルロースまたはセルロース前駆体と熱可塑性樹脂とのポリマーアロイとなっている場合で上記方法が困難な場合には、クロロホルムでセルロースまたはセルロース前駆体を抽出し、1H−NMRおよび13C−NMRを測定し、グルコース骨格の水酸基と、アシル基末端のメチル基の積分比などで置換度を見積もるものとした。
B.セルロースまたはセルロース前駆体と熱可塑性樹脂の重量比率導出方法
含有されている樹脂のうち、一方のみを溶出する溶媒を用意し、残存重量から樹脂重量を測定した。溶媒は従来公知の適当な溶媒を用いた。
C.水酸基量の測定
本発明における水酸基量は、セルロースの平均置換度および重量比率から導出するものである。下記式を用いて計算した。
(水酸基量)[mol/1kg]=(平均置換度)×(セルロースの重量比率)×1000/{162.14×(繊維総重量[g])}
D.繊維の複合構造の確認
セルロースまたは熱可塑性樹脂が溶出する溶媒に浸して一方を溶出させたのち、走査型電子顕微鏡で繊維断面を観察した。
走査型電子顕微鏡装置 : 日立社製S−4000型
E.融点測定
Perkin Elmaer社製DSC−7を用いて2nd runで比熱が階段状の変化を示す領域の中点をガラス転移温度とし、樹脂の融解を示すピークトップ温度を樹脂の融点とした。この時の昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。なお、ガラス転移温度についてはDSC−7では不明瞭な場合は、温度変調DSCを用いる等して測定することもできる。
F.溶融粘度測定
乾燥した樹脂を用い、東洋精機キャピログラフ1Bにより溶融粘度を測定した。窒素雰囲気下、サンプル投入から測定開始までの樹脂の貯留時間を4分間とした。
G.力学特性
吸湿性繊維の重量を測定して繊維の繊度を求めた後、引っ張り速度=200mm/分とし、JIS L1013に示される条件で5回測定し、荷重−伸長曲線を求めた。次に破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り伸度として強伸度曲線を求めた。
H.吸湿性繊維のウースター斑(U%)
ツェルベガーウスター株式会社製USTER TESTER 4を用いて給糸速度200m/分、ノーマルモードで測定を行った。
I.吸湿パラメーター(ΔMR)測定
サンプルを秤量瓶に1〜2g程度はかり取り、110℃に2時間保ち乾燥させ重量を測定し(W0)、次に対象物質を20℃、相対湿度65%に24時間保持した後重量を測定する(W65)。そして、これを30℃、相対湿度90%に24時間保持した後重量を測定する(W90)。そして、以下の式にしたがい計算を行う。
D.繊維の複合構造の確認
セルロースまたは熱可塑性樹脂が溶出する溶媒に浸して一方を溶出させたのち、走査型電子顕微鏡で繊維断面を観察した。
走査型電子顕微鏡装置 : 日立社製S−4000型
E.融点測定
Perkin Elmaer社製DSC−7を用いて2nd runで比熱が階段状の変化を示す領域の中点をガラス転移温度とし、樹脂の融解を示すピークトップ温度を樹脂の融点とした。この時の昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。なお、ガラス転移温度についてはDSC−7では不明瞭な場合は、温度変調DSCを用いる等して測定することもできる。
F.溶融粘度測定
乾燥した樹脂を用い、東洋精機キャピログラフ1Bにより溶融粘度を測定した。窒素雰囲気下、サンプル投入から測定開始までの樹脂の貯留時間を4分間とした。
G.力学特性
吸湿性繊維の重量を測定して繊維の繊度を求めた後、引っ張り速度=200mm/分とし、JIS L1013に示される条件で5回測定し、荷重−伸長曲線を求めた。次に破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り伸度として強伸度曲線を求めた。
H.吸湿性繊維のウースター斑(U%)
ツェルベガーウスター株式会社製USTER TESTER 4を用いて給糸速度200m/分、ノーマルモードで測定を行った。
I.吸湿パラメーター(ΔMR)測定
サンプルを秤量瓶に1〜2g程度はかり取り、110℃に2時間保ち乾燥させ重量を測定し(W0)、次に対象物質を20℃、相対湿度65%に24時間保持した後重量を測定する(W65)。そして、これを30℃、相対湿度90%に24時間保持した後重量を測定する(W90)。そして、以下の式にしたがい計算を行う。
MR1=[(W65−W0)/W0]×100% ・・・・・ (1)
MR2=[(W90−W0)/W0]×100% ・・・・・ (2)
ΔMR=MR90−MR65 ・・・・・・・・・・・・ (3)
J.吸水量
1gの供試試料を10cm×10cmの大きさの250メッシュナイロン製網袋に封入し、これをイオン交換樹脂を通して脱イオンした水を蒸留して得た純水中に10分間浸漬して吸水させ、次いで、これを引き上げて吊り下げ、10分間水切りを行った後、供試試料の重量を測定し、絶乾供試試料1gあたりに吸収された純水の重量(g)をもって吸水量を表示した。
MR2=[(W90−W0)/W0]×100% ・・・・・ (2)
ΔMR=MR90−MR65 ・・・・・・・・・・・・ (3)
J.吸水量
1gの供試試料を10cm×10cmの大きさの250メッシュナイロン製網袋に封入し、これをイオン交換樹脂を通して脱イオンした水を蒸留して得た純水中に10分間浸漬して吸水させ、次いで、これを引き上げて吊り下げ、10分間水切りを行った後、供試試料の重量を測定し、絶乾供試試料1gあたりに吸収された純水の重量(g)をもって吸水量を表示した。
実施例1
セルロースアセテートプロピオネートに対して9wt%のアジピン酸オクチルを可塑剤として含有する組成物(イーストマンケミカル社製テナイトプロピオネート)をセルロース前駆体として用い、溶融粘度160Pa・s(240℃、剪断速度1216sec−1)、融点220℃のナイロン6(N6)を使用して、50/50の重量比で230℃にした2軸押し出し混練機で混練して、ポリマーアロイチップを得た。
セルロースアセテートプロピオネートに対して9wt%のアジピン酸オクチルを可塑剤として含有する組成物(イーストマンケミカル社製テナイトプロピオネート)をセルロース前駆体として用い、溶融粘度160Pa・s(240℃、剪断速度1216sec−1)、融点220℃のナイロン6(N6)を使用して、50/50の重量比で230℃にした2軸押し出し混練機で混練して、ポリマーアロイチップを得た。
このポリマーアロイチップを通常の溶融紡糸方法により240℃で溶融し、12ホールの口金より吐出し、紡糸速度750m/分で巻取りしたところ、紡糸性は良好で、56dtex、12フィラメント、強度1.2cN/dtex、U%=1.6%のポリマーアロイ繊維を得た。このフィラメント糸を丸編とした後、濃度1.5%の水酸化ナトリウム水溶液で、98℃、60分、浴比1:100でけん化処理を行ない、セルロースとN6からなる繊維を得た。このとき繊維はセルロースが島成分、N6が海成分の海島構造をとっており、セルロースの平均置換度は検出限界以下であり、ほぼ0であった。また、繊維の吸湿性能が高いものであった。
実施例2、3、比較例1
実施例1と同じ組み合せのポリマーを使用して、表1に示した重量比で混練を行なった。実施例1と同様にして、溶融紡糸、けん化処理を行ない。セルロースとN6からなる繊維を得た。実施例2、3で得られた繊維は、実施例1と同様に吸湿性能が高く、優れた物性を有する繊維であった。比較例1では、セルロースの平均置換度は検出限界以下であったものの、セルロースの含有率が低く、十分な吸湿性能が得られなかった。
実施例1と同じ組み合せのポリマーを使用して、表1に示した重量比で混練を行なった。実施例1と同様にして、溶融紡糸、けん化処理を行ない。セルロースとN6からなる繊維を得た。実施例2、3で得られた繊維は、実施例1と同様に吸湿性能が高く、優れた物性を有する繊維であった。比較例1では、セルロースの平均置換度は検出限界以下であったものの、セルロースの含有率が低く、十分な吸湿性能が得られなかった。
実施例4
実施例1と同じナイロン6とセルロース前駆体を用いて、ポリマーを別々に溶融し、セルロース前駆体を芯成分、ナイロン6を鞘成分とした芯鞘複合紡糸を行った。実施例1と同様に、このフィラメント糸を丸編とした後、けん化処理を行ない、セルロースとN6からなる繊維を得た。セルロースの平均置換度は検出限界以下であり、繊維の吸湿性能が高いものであった。しかし、繊維内部に芯と鞘の剥離が生じたため、実施例1と比較して僅かに風合いが劣るものであった。
実施例1と同じナイロン6とセルロース前駆体を用いて、ポリマーを別々に溶融し、セルロース前駆体を芯成分、ナイロン6を鞘成分とした芯鞘複合紡糸を行った。実施例1と同様に、このフィラメント糸を丸編とした後、けん化処理を行ない、セルロースとN6からなる繊維を得た。セルロースの平均置換度は検出限界以下であり、繊維の吸湿性能が高いものであった。しかし、繊維内部に芯と鞘の剥離が生じたため、実施例1と比較して僅かに風合いが劣るものであった。
比較例2
実施例1と同じポリマー、重量比で混練、紡糸を行ない、ポリマーアロイ繊維の丸編を得た。この繊維をけん化処理をせずに吸湿性能を測定した結果、十分な性能が得られなかった。
実施例1と同じポリマー、重量比で混練、紡糸を行ない、ポリマーアロイ繊維の丸編を得た。この繊維をけん化処理をせずに吸湿性能を測定した結果、十分な性能が得られなかった。
実施例5
実施例1で得られたセルロースとN6からなる丸編に対し、特開平08−60542に示されている、セルロースの吸水加工であるカルボキシメチル化反応を行なった。得られた丸編は、吸水性能の高いものであった。
実施例1で得られたセルロースとN6からなる丸編に対し、特開平08−60542に示されている、セルロースの吸水加工であるカルボキシメチル化反応を行なった。得られた丸編は、吸水性能の高いものであった。
実施例6〜8、比較例3,4
実施例5と同様に、それぞれ得られた丸編を処理し、吸水性能を測定した。結果は表1の通りであり、水酸基量の多かった実施例6〜8ではそれぞれ吸水性能が高い繊維が得られたが、比較例3,4では、反応できる水酸基量が少なかったため、得られた繊維の吸水性能が低いものであった。
実施例5と同様に、それぞれ得られた丸編を処理し、吸水性能を測定した。結果は表1の通りであり、水酸基量の多かった実施例6〜8ではそれぞれ吸水性能が高い繊維が得られたが、比較例3,4では、反応できる水酸基量が少なかったため、得られた繊維の吸水性能が低いものであった。
実施例9
実施例1で使用したセルロース前駆体と、溶融粘度300Pa・s(220℃、121.6sec−1)、融点162℃のポリプロピレン(PP)を使用して、50/50の重量比で2軸押し出し混練機で240℃で混練して、ポリマーアロイチップを得た。これを実施例1と同様にして、溶融紡糸、けん化処理を行ない、セルロースとPPからなる繊維を得た。このとき繊維はセルロースが島成分、PPが海成分の海島構造をとっていた。また、セルロースの平均置換度は検出限界以下であり、PPとしては吸湿性能が高い繊維であった。
実施例1で使用したセルロース前駆体と、溶融粘度300Pa・s(220℃、121.6sec−1)、融点162℃のポリプロピレン(PP)を使用して、50/50の重量比で2軸押し出し混練機で240℃で混練して、ポリマーアロイチップを得た。これを実施例1と同様にして、溶融紡糸、けん化処理を行ない、セルロースとPPからなる繊維を得た。このとき繊維はセルロースが島成分、PPが海成分の海島構造をとっていた。また、セルロースの平均置換度は検出限界以下であり、PPとしては吸湿性能が高い繊維であった。
実施例10
実施例1で使用したセルロース前駆体と、溶融粘度120Pa・s(262℃、121.6sec−1)、融点225℃のポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用して、実施例5と同様の操作を行ない、ポリマーアロイチップを得た。これを実施例1と同様の操作を行ない、セルロースとPBTからなる繊維を得た。このとき繊維はセルロースが島成分、PBTが海成分の海島構造をとっていた。また、セルロースの平均置換度は検出限界以下であり、吸湿性能が高い繊維であった。
実施例1で使用したセルロース前駆体と、溶融粘度120Pa・s(262℃、121.6sec−1)、融点225℃のポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用して、実施例5と同様の操作を行ない、ポリマーアロイチップを得た。これを実施例1と同様の操作を行ない、セルロースとPBTからなる繊維を得た。このとき繊維はセルロースが島成分、PBTが海成分の海島構造をとっていた。また、セルロースの平均置換度は検出限界以下であり、吸湿性能が高い繊維であった。
比較例5
実施例10と同じポリマー、重量比で混練、紡糸を行ない、ポリマーアロイ繊維の丸編を得た。この繊維をけん化処理をせずに吸湿性能を測定した結果、十分な性能が得られなかった。
実施例10と同じポリマー、重量比で混練、紡糸を行ない、ポリマーアロイ繊維の丸編を得た。この繊維をけん化処理をせずに吸湿性能を測定した結果、十分な性能が得られなかった。
実施例11,12、比較例6
実施例5と同様に、それぞれ得られた丸編を処理し、吸水性能を測定した。結果は表2の通りであり、水酸基量の多かった実施例11,12ではそれぞれ吸水性能が高い繊維が得られたが、比較例6では、反応できる水酸基量が少なかったため、得られた繊維の吸水性能が低いものであった。
実施例5と同様に、それぞれ得られた丸編を処理し、吸水性能を測定した。結果は表2の通りであり、水酸基量の多かった実施例11,12ではそれぞれ吸水性能が高い繊維が得られたが、比較例6では、反応できる水酸基量が少なかったため、得られた繊維の吸水性能が低いものであった。
Claims (6)
- セルロースと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂からなり、セルロースと熱可塑性樹脂の重量比が5:95〜50:50であることを特徴とするセルロースブレンド繊維。
- 繊維がポリマーアロイ紡糸法による海島構造であることを特徴とする請求項1記載のセルロースブレンド繊維。
- 熱可塑性樹脂がポリアミドであることを特徴とする請求項1または2記載のセルロースブレンド繊維。
- 熱可塑性樹脂がポリエステルであることを特徴とする請求項1または2記載のセルロースブレンド繊維。
- 熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする請求項1または2記載のセルロースブレンド繊維。
- 請求項1から5のいずれか1項記載のセルロースブレンド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005374087A JP2007177347A (ja) | 2005-12-27 | 2005-12-27 | セルロースブレンド繊維 |
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JP2005374087A JP2007177347A (ja) | 2005-12-27 | 2005-12-27 | セルロースブレンド繊維 |
Publications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012014713A1 (ja) | 2010-07-29 | 2012-02-02 | 株式会社クラレ | 非晶性熱融着性繊維、繊維構造体および耐熱性成形体 |
-
2005
- 2005-12-27 JP JP2005374087A patent/JP2007177347A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012014713A1 (ja) | 2010-07-29 | 2012-02-02 | 株式会社クラレ | 非晶性熱融着性繊維、繊維構造体および耐熱性成形体 |
US9422643B2 (en) | 2010-07-29 | 2016-08-23 | Kuraray Co., Ltd. | Method for producing article |
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