JP2007176725A - 中性子照射シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】窒素が添加された高抵抗のシリコン単結晶インゴットを原料として用いた場合においても、本来必要とされる中性子照射量を正確に把握し、目標抵抗率を正確に得るための中性子照射シリコン単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、フローティングゾーン法(FZ法)により窒素を添加しながら平均抵抗率が1000Ω・cm以上であるシリコン単結晶インゴットを育成する工程と、該シリコン単結晶インゴットに中性子照射する工程と、該中性子照射によって受けた損傷を回復する熱処理を行う工程とを有する中性子照射シリコン単結晶の製造方法において、少なくとも前記シリコン単結晶インゴットに中性子照射する工程の前に、シリコン単結晶にドナー消去熱処理を行い、該ドナー消去熱処理を行ったシリコン単結晶の抵抗率から中性子照射量を算出して中性子照射を行う。
【選択図】図1
【解決手段】少なくとも、フローティングゾーン法(FZ法)により窒素を添加しながら平均抵抗率が1000Ω・cm以上であるシリコン単結晶インゴットを育成する工程と、該シリコン単結晶インゴットに中性子照射する工程と、該中性子照射によって受けた損傷を回復する熱処理を行う工程とを有する中性子照射シリコン単結晶の製造方法において、少なくとも前記シリコン単結晶インゴットに中性子照射する工程の前に、シリコン単結晶にドナー消去熱処理を行い、該ドナー消去熱処理を行ったシリコン単結晶の抵抗率から中性子照射量を算出して中性子照射を行う。
【選択図】図1
Description
本発明は、シリコン単結晶インゴットに中性子照射して中性子照射シリコン単結晶を製造する方法に関する。
N型ドーパントであるリンをシリコン単結晶内に添加する方法として、以下に説明する中性子照射ドーピング(Neutron Transmutation Doping、NTD)が特許文献1に開示されている。
シリコン単結晶は28Si(92.1%)とその同位体である29Si(4.7%)と30Si(3.0%)で構成されている。シリコン単結晶に中性子線を照射すると30Siが中性子を捕獲吸収してγ線を放出して不安定な同位体31Siに移行し、2.62時間の半減期でβ−線を放出して安定な同位体31Pへ核変換する。形成された31Pはシリコン単結晶の中でn型ドーパントとして働く。30Siはもともとシリコン単結晶中に均一に分布しているので、中性子線をシリコン単結晶に一様に照射すれば、中性子照射によって生ずる31Pの分布も均一にできる。すなわち、シリコン単結晶の電気抵抗率分布を均一にできる。
従来の中性子照射シリコン単結晶の製造工程は図2に示す通りである。
まず、原料となるシリコン単結晶インゴットをFZ法で育成し(a)、その後、原料の抵抗率R1を評価する(b)。次に、目標とする抵抗率RTargetを得るために必要な中性子照射量Nを、原料抵抗率R1を基に下記に示す(1)式により算出する(c)。次に、この中性子照射量Nを用いて原料となるシリコン単結晶インゴットに中性子照射する(d)。
まず、原料となるシリコン単結晶インゴットをFZ法で育成し(a)、その後、原料の抵抗率R1を評価する(b)。次に、目標とする抵抗率RTargetを得るために必要な中性子照射量Nを、原料抵抗率R1を基に下記に示す(1)式により算出する(c)。次に、この中性子照射量Nを用いて原料となるシリコン単結晶インゴットに中性子照射する(d)。
中性子照射後には目標とする抵抗率が得られたかどうかを確認するため、照射後抵抗率R2を評価する。しかし、中性子照射によってシリコン単結晶インゴットには照射損傷が導入されており、R2を正しく評価するためには、この照射損傷を回復する必要がある。そのため、シリコン単結晶に損傷回復熱処理を行った後に(e)、照射後抵抗率R2を評価する(f)。
しかし、前述のように中性子照射量Nは原料抵抗率とR1と目標抵抗率RTargetを基に算出されるが、この中性子照射量Nを用いて中性子照射された後の照射後抵抗率R2は目標とした目標抵抗率RTargetと大きく乖離する場合があり、このようなシリコン単結晶インゴットは転位や結晶欠陥の発生を抑制するために、育成中に窒素が添加されたものであった。特に、最近の高周波デバイスやセンサーデバイスに使用されるような1000Ω・cm以上の目標抵抗率を要求される中性子照射シリコン結晶においては、両者の乖離が特に顕著なものになるという問題があった。
本発明はこのような問題に鑑みなされたもので、窒素が添加された高抵抗のシリコン単結晶インゴットを原料として用いた場合においても、本来必要とされる中性子照射量を正確に把握し、目標抵抗率を正確に得るための中性子照射シリコン単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、少なくとも、フローティングゾーン法(FZ法)により窒素を添加しながら平均抵抗率が1000Ω・cm以上であるシリコン単結晶インゴットを育成する工程と、該シリコン単結晶インゴットに中性子照射する工程と、該中性子照射によって受けた損傷を回復する熱処理を行う工程とを有する中性子照射シリコン単結晶の製造方法であって、少なくとも前記シリコン単結晶インゴットに中性子照射する工程の前に、シリコン単結晶にドナー消去熱処理を行い、該ドナー消去熱処理を行ったシリコン単結晶の抵抗率から中性子照射量を算出して中性子照射工程を行うことを特徴とする中性子照射シリコン単結晶の製造方法を提供する(請求項1)。
このように、窒素に基づくドナーを消去する熱処理を行なった後に評価された原料シリコン単結晶の抵抗率評価値を用いて、目標とする抵抗率を得るために必要な中性子照射量を予め中性子照射工程の前に算出すれば、窒素添加による複合体ドナーの影響を抑え、より正確な値を得ることができる。こうして得られた中性子照射量を用いて中性子照射すれば、目標とする抵抗率を有する中性子照射シリコン単結晶を効率良く製造することができる。
また、本発明の中性子照射シリコン単結晶の製造方法は、添加する前記窒素の濃度を3×1014atoms/cm3以上とする場合に特に好ましい(請求項2)。
このように、シリコン単結晶中の窒素の濃度が3×1014atoms/cm3以上であれば、窒素のドナーとしての抵抗率に対する寄与が十分に大きいため、その作用を消去するドナー消去熱処理を行って原料単結晶の抵抗率評価値を算出することによるドナー消去熱処理の効果はより高いものになる。
また、本発明の中性子照射シリコン単結晶の製造方法では、前記ドナー消去熱処理はウェット酸素雰囲気、ドライ酸素雰囲気または窒素雰囲気のいずれか1つの雰囲気下で900〜1250℃の温度で10〜60分間熱処理を行うことが好ましい(請求項3)。
このように、前記ドナー消去熱処理をウェット酸素雰囲気、ドライ酸素雰囲気または窒素雰囲気のいずれか1つの雰囲気下で900〜1250℃の温度で10〜60分間熱処理を行うことにより、窒素のドナーとしての作用の消去を効果的に行うことができる。
また、本発明の中性子照射シリコン単結晶の製造方法では、前記ドナー消去熱処理されるシリコン単結晶は、前記シリコン単結晶インゴットまたは前記シリコン単結晶インゴットから切り出されたウェーハとすることができる(請求項4)。
このように、ドナー消去熱処理をシリコン単結晶インゴットに対して行えば、効率的に抵抗率を評価することができる。また、ドナー消去熱処理をシリコン単結晶インゴットから切り出されたウェーハに対して行えば、ウェーハに均一に熱処理を行なうことができ、より正確な抵抗率測定を行うことができ、また、面内抵抗率分布を確認することができる。
以上説明したように、本発明によれば、窒素が添加された平均抵抗率が1000Ω・cm以上である原料シリコン単結晶を評価して得られる抵抗率を、シリコン単結晶インゴット育成直後の値にほぼ一致させることができる。従って、評価された原料シリコン単結晶の抵抗率評価値を用いて目標とする抵抗率を得るために必要な中性子照射量を計算することにより、窒素添加による複合体ドナーの影響を受けることなく、正確な値を得ることができる。その結果、正確に所望の抵抗率を有する中性子照射シリコン単結晶を製造することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明者は、中性子照射シリコン単結晶において照射後抵抗率R2と目標抵抗率RTargetとが乖離する原因を、中性子照射量Nを算出する基となる原料抵抗率R1において、実際に評価され算出に用いられる値と、本来の値とが異なっているためではないかと考えた。すなわち、前述のように中性子照射量Nは原料の抵抗率と目標とする抵抗率を基に算出するが、原料の抵抗率が見かけ上変化した抵抗率を呈している場合、算出された中性子照射量は本来必要な量とはかけ離れたものとなり、ゆえに照射後の抵抗率R2は目標とする目標抵抗率RTargetとかけ離れたものとなると考えた。すなわち、例えば特許第2742247号公報に開示されているように、窒素を添加したシリコン単結晶においては、窒素由来の複合体がドナーとして挙動するため、見かけの抵抗率は単結晶育成直後の状態と異なっている可能性がある。
本発明者は、中性子照射シリコン単結晶において照射後抵抗率R2と目標抵抗率RTargetとが乖離する原因を、中性子照射量Nを算出する基となる原料抵抗率R1において、実際に評価され算出に用いられる値と、本来の値とが異なっているためではないかと考えた。すなわち、前述のように中性子照射量Nは原料の抵抗率と目標とする抵抗率を基に算出するが、原料の抵抗率が見かけ上変化した抵抗率を呈している場合、算出された中性子照射量は本来必要な量とはかけ離れたものとなり、ゆえに照射後の抵抗率R2は目標とする目標抵抗率RTargetとかけ離れたものとなると考えた。すなわち、例えば特許第2742247号公報に開示されているように、窒素を添加したシリコン単結晶においては、窒素由来の複合体がドナーとして挙動するため、見かけの抵抗率は単結晶育成直後の状態と異なっている可能性がある。
ドナーとして挙動する窒素複合体の量は実験から5ppta程度と推測されている(国際公開第WO2005/010243号パンフレット参照)。図3は5pptaのドナーがシリコン単結晶基板の抵抗率に与える影響を示すものである。横軸は複合体ドナーの影響を受けている状態での抵抗率を示し、縦軸は熱処理を行って複合体ドナーを消去した後に評価した抵抗率、すなわち、単結晶育成直後の状態を示している。抵抗率が高いほど複合体ドナーの影響を受けている状態の抵抗率と単結晶育成直後の抵抗率との乖離が大きくなり、例えば、N型で見かけの抵抗率がたとえ10000Ω・cmであったとしても、単結晶育成直後の抵抗率は2倍の20000Ω・cmであったという状況が発生することになる。
典型的な中性子照射結晶製造法で原料として用いられるシリコン単結晶の抵抗率は1000〜20000Ω・cm程度の範囲の高抵抗率を呈することが多く、育成時に窒素を添加した場合は複合体ドナーによる抵抗率変化の影響を大きく受けることになる。
そこで、本発明者は、中性子照射前に、目標とする抵抗率を得るために必要な中性子照射量を正確に把握し、該中性子照射量を用いてシリコン単結晶インゴットに照射することで目標とした抵抗率を有する中性子照射シリコン単結晶を効率良く製造する方法を見出すべく、以下のような実験を行った。
(実験)
図2に従って、育成中に窒素を添加しながら中性子照射シリコン単結晶を以下のように製造し、原料抵抗率R1と照射後抵抗率R2、目標抵抗率RTarget、中性子照射量Nの関係を考察した。
図2に従って、育成中に窒素を添加しながら中性子照射シリコン単結晶を以下のように製造し、原料抵抗率R1と照射後抵抗率R2、目標抵抗率RTarget、中性子照射量Nの関係を考察した。
図4(a)のように平均抵抗率R1がN型8400Ω・cm程度の原料に対して、目標抵抗率RTargetをN型5000Ω・cmとして中性子照射量Nを下記に示す(2)式より求めた。結果として0.023×1017N/cm2の中性子照射量を得、この値を用いて中性子照射した。しかしながら実際に得られた照射後抵抗率R2は予測値である目標抵抗率5000Ω・cmより50%程度高い7400Ω・cm程度であった。
そこで、原料抵抗率を評価したインゴットから切り出した評価試料に対してドライ酸素雰囲気下1000℃において30分間程度の熱処理を行なってから抵抗率を再度評価したところ平均抵抗率17400Ω・cm程度の値RWHTが得られた(図4(b)参照)。これは熱処理前の抵抗率の倍以上の値を示しており、窒素添加による複合体ドナーの影響を大きく受けていることに由来する現象と考えられる。
抵抗率が17400Ω・cmである原料に0.023×1017N/cm2の中性子照射を行なった場合、計算上は7300Ω・cm程度になり、目標抵抗率より2300Ω・cm高い値となる(図4(c)参照)。そのため、本実験では7400Ω・cmという抵抗率が結果として得られたと考えられる。このとき、中性子照射後の抵抗率R2の評価の際には、中性子照射後に評価試料に対してドライ酸素雰囲気下1100℃で60分程度の照射損傷回復熱処理を行なっており、そのために複合体ドナーは消去されてしまっていると考えられる。
本発明者は、以上のことより、原料シリコン単結晶の評価試料にドナー消去熱処理を行った後に抵抗率評価を行い、得られた抵抗率評価値RWHTを用いて、(2)式に示されるように本来必要な中性子照射量NWHTを算出し、この値を用いてシリコン単結晶インゴットに中性子照射すれば、回復熱処理後のR2とRTargetとの乖離は小さく抑えられることを見出し、本発明を完成させた。
例えば、上記の実験の場合、(2)式に従って予測した中性子照射量NWHTは0.042×1017N/cm2程度となった。この中性子照射量の値NWHTを用いて中性子照射することで、5000Ω・cmという目標抵抗率RTargetを得ることができるようになる。
以上のことを考慮に入れた本発明の中性子照射シリコン単結晶の製造工程を図1に示した。
まず、通常のFZ法による単結晶製造装置により、抵抗率を1000Ω・cm以上の所望の値に設定して原料となるシリコン単結晶インゴットを育成する(図1(a))。
抵抗率を所望の値とするためにN型またはP型のドーパントを育成中に添加することもできる。例えばPH3、SbH3、AsH3等の原料ガスをアルゴンガス等のキャリアガスで希釈して溶融帯に吹き付けることによりN型不純物であるP、Sb、Asを添加することができる。P型不純物であるBを添加するにはB2H6等を原料ガスとすればよい。
まず、通常のFZ法による単結晶製造装置により、抵抗率を1000Ω・cm以上の所望の値に設定して原料となるシリコン単結晶インゴットを育成する(図1(a))。
抵抗率を所望の値とするためにN型またはP型のドーパントを育成中に添加することもできる。例えばPH3、SbH3、AsH3等の原料ガスをアルゴンガス等のキャリアガスで希釈して溶融帯に吹き付けることによりN型不純物であるP、Sb、Asを添加することができる。P型不純物であるBを添加するにはB2H6等を原料ガスとすればよい。
そして、シリコン単結晶インゴットの育成中に、単結晶製造装置の炉内をアルゴンガスまたはアルゴンと水素の混合ガスからなる雰囲気ガスで満たし、そこに窒素ガスまたは窒素を含む化合物ガスを混合することにより、シリコン単結晶インゴットに窒素を添加する。窒素を含む化合物ガスとしてはアンモニア、ヒドラジン、三フッ化窒素等のガスを用いることができる。このとき添加される窒素は、シリコン単結晶インゴット育成時にスワールやD欠陥等の結晶欠陥が発生するのを防止し、またシリコン単結晶基板に熱処理を加えた際に熱応力により発生する転位を抑制する作用がある。特に添加する窒素濃度が3×1014atoms/cm3以上であれば、上記の結晶欠陥や転位の抑制に十分な濃度であり、かつ後述する本発明の効果を十分なものとすることができる。
次に、原料抵抗率を評価する前に、評価試料に対しドナー消去熱処理を行う(図1(b))。このときドナー消去熱処理を行う評価試料は、後に中性子照射するシリコン単結晶インゴットそのものでもよいし、シリコン単結晶インゴットから切り出したウェーハ等であってもよい。また、ドナー消去熱処理をして抵抗率の測定ができるのであれば、シリコン単結晶インゴットから切り出す評価試料の形状はどのような形状でもよい。
このとき、ドナー消去する評価試料をシリコン単結晶インゴットそのものとすれば、シリコン単結晶インゴットからウェーハ等を切り出す工程を必要としないため、生産性および歩留りが向上する。一方、抵抗率評価する評価試料をシリコン単結晶インゴットから切り出したウェーハとすれば、評価試料全体に熱が伝わりやすく、均一に熱処理を行うことができるのでより正確な抵抗率を得やすい。また、次の原料抵抗率評価工程においてウェーハの面内抵抗率分布が評価でき、最終的に製造される中性子照射シリコン単結晶から製造されたシリコン単結晶基板の面内抵抗率分布と比較しやすい。
また、このドナー消去熱処理は900〜1250℃の温度で10〜60分間行うことが好ましい。このような温度であれば、熱処理時間が長時間に及ぶことがなく、また加熱冷却時に熱応力により結晶欠陥が発生する可能性を小さくすることができるので特に好適である。熱処理の際の昇温速度については、例えば毎分1℃〜10℃とすることができるが、熱処理を受けるシリコン単結晶が急激な昇温により発生する熱応力によりスリップが発生したり、あるいは結晶性が劣化したりしない限り自由に選ぶことができる。
また、このドナー消去熱処理を行う際には、ウェット酸素雰囲気、ドライ酸素雰囲気または窒素雰囲気のいずれか1つの雰囲気下で行うことが好ましい。これらの雰囲気下であれば、ドナー消去を効果的に行うことができる。窒素を添加したシリコン単結晶基板内では、窒素分子が原子空孔と複合体を形成してドナーとして作用していると考えられるが、酸素雰囲気下で熱処理すると、シリコン単結晶基板の表面にSiO2膜が形成されることにより格子間Siが内方拡散され、原子空孔が消滅し、ドナー作用が消去される。ウェット酸素雰囲気とドライ酸素雰囲気では、ウェット酸素雰囲気の方がSiO2膜の形成速度が速いので、熱処理がより効果的となる。窒素雰囲気の場合は、ドナー作用の消去に関して、格子間Siの内方拡散のみならず原子空孔の外方拡散による効果が大きいものと推測される。
図3からわかるように、シリコン単結晶基板がN型の場合、このドナー消去熱処理により抵抗率が上昇する。すなわち、N型シリコン単結晶基板の場合は、添加された窒素が添加されたN型ドーパントと同様にドナーとして作用するため、本来シリコン単結晶基板にN型ドーパントにより与えられる抵抗率と比較して見かけの抵抗率が低いことに由来すると推測される。この場合、熱処理を行うことにより窒素のドナーとしての作用が消去され、シリコン単結晶基板本来の抵抗率に回復した結果、抵抗率が上昇したように見える。
一方、シリコン単結晶基板がP型の場合、このドナー熱処理により抵抗率が低下する。すなわち、P型シリコン単結晶基板の場合は、アクセプターとしてのP型ドーパントの方が優勢であることから、添加された窒素がドナーとして抵抗率にP型ドーパントとは逆の寄与をするために、本来シリコン単結晶基板にP型ドーパントにより与えられる抵抗率と比較して見かけの抵抗率が上昇していることになる。従って、熱処理を行うことにより窒素のドナーとしての作用が消去され、シリコン単結晶基板本来の抵抗率に回復した結果、抵抗率が低下したように見える。
いずれの場合でも、抵抗率が1000Ω・cm以上のような高抵抗率の場合は、N型またはP型ドーパントの濃度が比較的小さいため、転位や結晶欠陥の発生を抑制するために添加された窒素がドナーとして見かけの抵抗率に寄与する割合が大きい。従ってこのような熱処理によりシリコン単結晶基板の抵抗率を本来の抵抗率に回復させて窒素のドナーとしての作用を消去しておく効果が著しく高いことになる。特に窒素濃度が3×1014atoms/cm3以上であれば、窒素のドナーとしての見かけの抵抗率に対する寄与が十分に大きいため、熱処理の効果はより高いものになる。
次に、このドナー消去熱処理を行った評価試料について、四探針法等を用いて原料抵抗率RWHTを評価する(図1(c))。
次に、目標とする抵抗率RTargetを得るために必要な中性子照射量NWHTを、上記の工程によって評価された原料抵抗率RWHTを基に(2)式により算出する(図1(d))。
以降の中性子照射シリコン単結晶の製造工程は、ほぼ従来の方法と同様に進めることができる。
まず、原料となるシリコン単結晶インゴットを中性子照射に適するように規定の長さに切断し、円筒研削と表面不純物除去のためのエッチングとを行う。
まず、原料となるシリコン単結晶インゴットを中性子照射に適するように規定の長さに切断し、円筒研削と表面不純物除去のためのエッチングとを行う。
次に、このように加工した原料となるシリコン単結晶インゴットに図1(d)で算出した中性子照射量NWHTを用いて中性子照射する(図1(e))。この中性子照射は限定設備である軽水炉や重水炉等の原子炉内で行われる。シリコン単結晶インゴットに均一に中性子照射されるように、照射中は結晶を回転させ、また途中で上下反転させるなどする。照射を追えたシリコン単結晶インゴットは、照射中に生じた32Pなどの核種の放射能が規定の濃度に減衰するまで放射能冷却する。
次に、中性子照射により生じる点欠陥や格子変位などのさまざまな照射損傷を回復するためにシリコン単結晶に損傷回復熱処理を行う(図1(f))。
この損傷回復熱処理の条件は特に限定されるものではないが、例えば1100℃、60分間とすることができる。
この損傷回復熱処理の条件は特に限定されるものではないが、例えば1100℃、60分間とすることができる。
次に、目標とする抵抗率が得られたかどうかを確認するため、照射後抵抗率R2を評価する(図1(g))。照射後抵抗率R2は原料抵抗率評価と同様に四探針法等により評価できる。
このようにして製造された中性子照射シリコン単結晶インゴットをいずれも従来知られた方法で切断、研削、エッチング等の加工を行ない、鏡面研磨をして中性子照射シリコン単結晶ウェーハを製造する。また、これらの加工は、中性子照射後の損傷回復熱処理工程前に行ってもよい。
また、特に、原料抵抗率の評価をシリコン単結晶インゴットから切り出したウェーハで行った場合は、上記加工後のウェーハの面内抵抗率分布を評価することで、ドナー消去熱処理後の原料抵抗率RWHTと照射後抵抗率R2との間で詳細な比較を行なうことができる。
また、特に、原料抵抗率の評価をシリコン単結晶インゴットから切り出したウェーハで行った場合は、上記加工後のウェーハの面内抵抗率分布を評価することで、ドナー消去熱処理後の原料抵抗率RWHTと照射後抵抗率R2との間で詳細な比較を行なうことができる。
以下、本発明の実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
図1に従って、中性子照射シリコン単結晶を以下のように製造した。
(実施例)
図1に従って、中性子照射シリコン単結晶を以下のように製造した。
直径125mmのN型シリコン単結晶インゴットをFZ法により育成し、育成中に窒素ガスにより窒素を添加し、単結晶中の窒素濃度を3×1014atoms/cm3とした。このときの添加された窒素の全てがドナーとして作用するわけではないが、少なくともドナーとして作用する窒素の濃度は約5ppta(=2.5×1011atoms/cm3)と見積もられる。次に、該育成したシリコン単結晶インゴットからウェーハ状の評価試料を切り出し、面方位{111}のシリコン単結晶ウェーハを作製した。該作製したシリコン単結晶ウェーハの面内の抵抗率を評価したところ、平均抵抗率R1は図5(a)のようにN型7100Ω・cm程度であった。
この原料に対して、ドライ酸素雰囲気下1000℃にて30分間程度の熱処理を行ってから抵抗率を評価したところ、図5(a)のように平均抵抗率11200Ω・cm程度の値が得られた。これをドナー消去熱処理後の原料抵抗率RWHTとした。
目標抵抗率RTargetをN型5000Ω・cmとし、このRTargetと上記RWHTとを基にして、中性子照射量NWHTを(2)式により算出し、結果として0.033×1017N/cm2が得られた。この値を用いて中性子照射し、損傷回復熱処理後、抵抗率R2を評価した。実際に得られた照射後抵抗率R2は予測値である目標抵抗率RTargetとほぼ同じ平均4950Ω・cm程度であった(図5(b))。
以上のように、本発明によれば、平均抵抗率が1000Ω・cm以上である窒素を添加したシリコン単結晶インゴットを原料として用いて中性子照射シリコン結晶を製造する際に、正確な中性子照射量を把握して製造することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、上記実施形態では、ウェーハ状の評価試料を切り出してドナー消去熱処理後に原料抵抗率評価を行ったが、シリコン単結晶インゴットそのものに対してドナー消去熱処理後に原料抵抗率評価を行ってもよい。
また、基板の直径は125mm未満であってもよいし、125mmより大きくてもよい。また、実施例のシリコン単結晶中の窒素濃度は3×1014atoms/cm3であったが、窒素濃度が3×1014atoms/cm3以下となる場合であっても、1000Ω・cm以上という、熱処理前後で抵抗率が大きく変化するような高い抵抗率のシリコン単結晶であれば、本発明の効果は高いものとなる。またこれ以上の窒素ドナー濃度になるような場合であれば熱処理前後の抵抗率の乖離がさらに大きくなるので、本発明の効果はさらに高いものとなる。
Claims (4)
- 少なくとも、フローティングゾーン法(FZ法)により窒素を添加しながら平均抵抗率が1000Ω・cm以上であるシリコン単結晶インゴットを育成する工程と、該シリコン単結晶インゴットに中性子照射する工程と、該中性子照射によって受けた損傷を回復する熱処理を行う工程とを有する中性子照射シリコン単結晶の製造方法であって、少なくとも前記シリコン単結晶インゴットに中性子照射する工程の前に、シリコン単結晶にドナー消去熱処理を行い、該ドナー消去熱処理を行ったシリコン単結晶の抵抗率から中性子照射量を算出して中性子照射工程を行うことを特徴とする中性子照射シリコン単結晶の製造方法。
- 添加する前記窒素の濃度を3×1014atoms/cm3以上とすることを特徴とする請求項1に記載の中性子照射シリコン単結晶の製造方法。
- 前記ドナー消去熱処理はウェット酸素雰囲気、ドライ酸素雰囲気または窒素雰囲気のいずれか1つの雰囲気下で900〜1250℃の温度で10〜60分間熱処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中性子照射シリコン単結晶の製造方法。
- 前記ドナー消去熱処理されるシリコン単結晶は、前記シリコン単結晶インゴットまたは前記シリコン単結晶インゴットから切り出されたウェーハであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の中性子照射シリコン単結晶の製造方法。
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JP2005375406A JP2007176725A (ja) | 2005-12-27 | 2005-12-27 | 中性子照射シリコン単結晶の製造方法 |
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