JP2007167554A - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

Abstract

【課題】重心設計の自由度を高めて打球の飛距離や方向性を高めつつ打球感をも向上させる。
【解決手段】少なくとも２つの孔部４が設けられたヘッド本体２と、互いの位置交換が可能に前記孔部４に脱着自在に装着された少なくとも２つの軸状部材３とを含むゴルフクラブヘッド１である。軸状部材３は、ヘッド本体２よりも比重が大きい材料からなる第１の軸状部材３ａと、ヘッド本体２の振動を吸収する弾性材料を有する第２の軸状部材３ｂとを含むことを特徴とする。
【選択図】図１

Description

本発明は、重心設計の自由度を高めて打球の飛距離や方向性を高めつつ打球感をも向上しうるゴルフクラブヘッドに関する。

従来、比重が大きい錘部材を複合することにより、重心位置が最適化されたゴルフクラブヘッドが種々提案されている（例えば下記特許文献１ないし２参照）。

他方、打球時の衝撃力を吸収するために、フェース部の背面などに弾性部材が接着されたゴルフクラブヘッドが提案されている（下記特許文献３ないし４参照）。

特開平８−１６４２２９号公報 特開平９−３２２９５２号公報 特開２００３−４７６７８号公報 特開平１０−２６３１２２号公報

ところで、ヘッドの重心位置は、ゴルファーの技量に応じて適宜変えることができれば、非常に便利である。また、同時に打球感をも改善できることが望ましい。さらに前記特許文献３ないし４では、クラブヘッドの使用によって弾性部材が離脱しやすいというおそれがある。

本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ヘッド本体に少なくとも２つの孔部を設けるとともに、該孔部には、位置交換可能かつ脱着自在に少なくとも２つの軸状部材を装着するとともに、軸状部材に、ヘッド本体よりも比重が大きい第１の軸状部材と、ヘッド本体の振動を吸収する第２の軸状部材とを含ませることを基本として、クラブヘッドの重心位置を調節可能とししかも打球感をも向上させ得るゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。

本発明のうち請求項１記載の発明は、少なくとも２つの孔部が設けられたヘッド本体と、互いの位置交換が可能に前記孔部に脱着自在に装着された少なくとも２つの軸状部材とを含み、かつ前記軸状部材は、前記ヘッド本体よりも比重が大きい材料からなる第１の軸状部材と、前記第１の軸状部材とは比重が異なりかつ前記ヘッド本体の振動を吸収する弾性材料を含む第２の軸状部材とを含むことを特徴とする。

また請求項２記載の発明は、ヘッドを規定のライ角及びロフト角で水平面に置いた基準状態において、前記各軸状部材の重心の前記水平面からの高さは１５．０mm以下である請求項１記載のゴルフクラブヘッドである。

また請求項３記載の発明は、前記軸状部材は、外周面にネジ溝が設けられたネジ軸部とを含むとともに、前記孔部は、前記ネジ軸部と螺合するネジ孔部とを含む請求項１又は２記載のゴルフクラブヘッドである。

また請求項４記載の発明は、前記ヘッド本体は、ボールを打球するフェース部と、その下部に連なってバックフェース側にのびるソール壁部と、該ソール壁部の後端側から前記フェース部と離間して上にのびることにより該フェース部との間に隙間を形成する背壁部とを含み、かつ前記孔部が前記背壁部及び／又は前記ソール壁部に設けられる請求項１乃至３のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。

また請求項５記載の発明は、前記孔部は、前記背壁部及び／又は前記ソール壁部を貫通する貫通孔からなるとともに、少なくとも前記第２の軸状部材は、前記孔部から前記隙間に向かってはみ出すはみ出し部を有する請求項４記載のゴルフクラブヘッドである。

また請求項６記載の発明は、前記孔部は、最もトウ側に設けられたトウ側の孔部、最もヒール側に設けられたヒール側の孔部及びそれらの間に設けられた少なくとも一つの間の孔部を含み、かつ前記間の孔部には前記第１の軸状部材が装着されるとともに、最もトウ側の孔部及び最もヒール側の孔部に前記第２の軸状部材が装着される請求項４又は５に記載のゴルフクラブヘッドである。

また請求項７記載の発明は、前記第１の軸状部材の比重が５．０〜２２．０であり、かつ前記第２の軸状部材の比重が０．５〜２．２である請求項１乃至６のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。

本発明のゴルフクラブヘッドは、少なくとも２つの孔部が設けられたヘッド本体と、互いの位置交換が可能に前記孔部に脱着自在に装着された少なくとも２つの軸状部材とを含む。また、軸状部材は、ヘッド本体よりも比重が大きい材料からなる第１の軸状部材と、ヘッド本体の振動を吸収する弾性材料を有する第２の軸状部材とを含むため、これらの位置を交換することによって、クラブヘッドの重心位置が調節される。また、第２の軸状部材によって、打球時のヘッド本体の振動が吸収され、ひいては良好な打球感が得られる。

以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図１は本発明の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの分解斜視図、図２は該ヘッドの正面図、図３はその背面図、図４は図３のＡ−Ａ位置に相当する断面図、図５は図３のＢ−Ｂ位置の相当する断面図をそれぞれ示す。ここで、図４ないし５は、クラブヘッド１を規定のライ角及びロフト角αで水平面ＨＰに置いた基準状態であるが、図２及び図３は、その状態からフェース面Ｆが垂直となるようにヘッドを前傾させた状態をそれぞれ示す。

本実施形態のゴルフクラブヘッド（以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」という場合がある。）１は、ヘッド本体２と、該ヘッド本体２に脱着自在に装着された少なくとも２つ、本実施形態では３つの軸状部材３とから構成される。

本実施形態において、ヘッド本体２は、ボールを打球するフェース面Ｆを有するフェース部２ａと、その下部に連なってバックフェース側にのびるソール壁部２ｂと、該ソール壁部２ｂの後端側で前記フェース部２ａとは離間して上にのびる背壁部２ｃと、ヒールＨ側に斜め上方に設けられかつ図示しないシャフトが装着されるホーゼル部２ｄとを含むアイアン型として構成される。

前記ヘッド本体２は、金属材料により形成されるのが望ましい。前記金属材料としては、例えばステンレス（比重７．８）、チタン合金（比重４．５）、アルミニウム合金（比重２．７）、軟鉄（比重７．９）又はマグネシウム（比重１．８）などを含むことができ、とりわけ、ステンレス、チタン合金又は軟鉄が好適である。また、ヘッド本体２の軽量化を図るために、例えば一部に炭素繊維強化樹脂（比重１．４）などを用いることも可能である。なお、上記各比重は代表的な値が示されている。

ここで、ヘッド本体２の比重ρｍが小さすぎる場合、スイングバランス等を確保するためにヘッドを過度に大型化する必要があり、逆に前記比重ρｍが大きすぎる場合、ヘッド１を小型化せざるを得なくなる。このような観点より、ヘッド本体２の比重ρｍは、好ましくは２．０以上、より好ましくは３．０以上、さらに好ましくは４．０以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは１０．０以下、より好ましくは９．０以下、さらに好ましくは８．０以下が望ましい。なお、ヘッド本体２が単一の材料ではない場合、前記比重には、ヘッド本体２を構成する個々の材料の体積で重み付けされた平均比重が用いられる。

本実施形態のヘッド本体２は、チタン合金からなり前記フェース部２ａの主要部を構成する板状のフェース部材２Ａと、ステンレスからなりかつ前記フェース部材２Ａが前面に取り付けられる受け枠部２Ｂとから構成される。また、受け枠部２Ｂは、少なくとも前記ソール壁部２ｂ及び背壁部３ｃとを形成する。このようなヘッド本体２は、ヘッドの重量をフェース面Ｆの周辺部分により多く配分することができるので、スイートエリアを増大し、打球の方向性を高めるのに役立つ。なお両部材２Ａ、２Ｂは、例えば接着、一部を塑性変形させて係合させるいわゆる「かしめ」、弾性変形を利用した圧入、ネジ止め、溶接又はこれらの２以上の接合手段を用いて固着することができる。なお 前記ヘッド本体２が単一の材料で構成されても良いのは言うまでもない。

前記フェース部２ａは、繰り返しの打球に対する十分な耐久性と、打球時に適度に撓むことによって飛距離を増大させる反発性とを有することが望ましい。このような観点より、前記フェース部２ａの厚さｔ１、とりわけスイートスポットＳでの厚さは、例えば２．０mm以上、より好ましくは２．５mm以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは４．０mm以下、より好ましくは３．５mm以下が望ましい。なおスイートスポットＳは、図１１（Ａ）に示されるように、クラブヘッドの重心Ｇからフェース面Ｆに垂直に引いた法線Ｎと該フェース面Ｆとの交点とする。

図４に示されるように、本実施形態のソール壁部２ｂは、垂直方向に測定される厚さｔ２が、ヘッドの後方に向かって漸増するものが例示される。このように、ソール壁部２ｂの厚さｔ２をヘッド後方に向かって漸増させることにより、クラブヘッドの重心をヘッド後方に位置させることができる。これにより、重心深度を大とし、打球の方向性を向上させ得る。

前記背壁部２ｃは、図１、図４及び図５に示されるように、前記ソール壁部２ｂの後端側でほぼ垂直に上に向かってのびている。本実施形態では、背壁部２ｃの上端２ｃｔは、フェース部２ａの背面側に接することなく途切れる。このような背壁部２ｃは、ヘッド後方かつ底部側により多くの重量を効率良く配分する。このような効果を十分に発揮させるために、水平面ＨＰから背壁部２ｃの上端２ｃｔまでの高さｈ２は、基準状態でのクラブヘッドの最大高さの好ましくは３０％以上、より好ましくは３５％以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは６５％以下、より好ましくは６０％以下が望ましい。

また、ヘッド本体２は、該背壁部２ｃとフェース部２ａとの間に、隙間ｉが形成される。該隙間ｉは、トウ・ヒール方向にのびかつ状部が開放されたいわゆるポケット状のキャビティとして形成される。このようなポケット状のキャビティは、打球時にフェース部２ａがヘッド後方に十分に撓みうる空間を広く提供するので、ヘッド反発性を向上させ、ひいては打球の飛距離を向上させ得る。

また、ヘッド本体２には、少なくとも２つの孔部４が設けられる。第１の実施形態において、前記孔部４は、背壁部２ｃに３個設けられる。

前記孔部４は、最もトウＴ側に設けられたトウ側の孔部４ｔと、最もヒールＨ側に設けられたヒール側の孔部４ｈと、それらの間に設けられた少なくとも一つ、本実施形態では一つの間の孔部４ｃとを含む。各孔部４の軸中心線は、図４ないし図５に示されるように、背壁部２ｃに対してほぼ垂直をなし、前記水平面ＨＰとほぼ平行である。また、各孔部４は、背壁部２ｃを前後に貫通する貫通孔である。ただし、背壁部２ｃ側のみに開口を有する有底孔でも良いのは言うまでもない。

本実施形態において、前記軸状部材３は、頭部３Ａと、該頭部３Ａよりも小さい外径を有しかつ外周面にネジ溝が設けられたネジ軸部３Ｂとを含む。従って、このような軸状部材３を脱着自在にヘッド本体２に装着するために、前記孔部４は、軸状部材３の頭部３Ａを収容する主孔部４Ａと、該主孔部４Ａからのび軸状部材３のネジ軸部３Ｂと螺合するネジ孔部４Ｂとを含んでいる。

従って、各軸状部材３は、ヘッド本体２の外方からネジ軸部３Ｂを孔部４のネジ孔部４Ｂに螺着することにより、孔部４に固着できる。この際、軸状部材３の頭部３Ｂは、背壁部２ｃの外表面から突出することなく孔部４の主孔部４Ａに収容される。また頭部３Ａが主孔部４Ａに密着することで軸状部材３の軸方向の位置決めが強固になされる。

また、本実施形態において、軸状部材３及び孔部４の形状を実質的に同じとすることにより、軸状部材３は、複数の孔部４に対して位置交換可能かつ脱着自在に装着できる。ただし、軸状部材３のネジ軸部等の長さについては適宜変更することができるのは言うまでもない。

本実施形態において、軸状部材３の頭部３Ａは円盤状に形成される。また、主孔部４Ａもこれに合致するように円形の孔で形成される。また頭部３Ａには、工具によって軸状部材３を回転させるための工具差込部６が設けられる。頭部３Ａは、外部から視認されるので、工具差込部６は、プラスネジやマイナスネジのようなものではなく、円周方向に均等かつ間欠的に設けられた複数個、本実施形態では５つの凹部５が表面に設けられる。このような工具差込部６は、外観の意匠性を向上させるのに役立つ。また、軸状部材３は、前記凹部５に対応した凸部７を有する専用の工具ＴＬを用いて孔部４への締めつけ又は孔部４からの取り外しが可能になる。従って、ゴルファー自らが容易に軸状部材３の装着、取り外し及び交換ができる。

また、軸状部材３は、ヘッド本体２よりも比重が大きい材料からなる第１の軸状部材３ａと、該第１の軸状部材３ａとは異なる比重を有しかつヘッド本体２の振動を吸収する弾性材料を有する第２の軸状部材３ｂとを含む。本実施形態では、一つの第１の軸状部材３ａと、二つの第２の軸状部材３ｂとの合計３つの軸状部材３が用いられる。

このようなゴルフクラブヘッド１は、第１の軸状部材３ａを装着する孔部４の位置を変えることにより、ゴルファーのプレースタイルや技量に応じて、クラブヘッド１の重心位置が調整できる。また、第２の軸状部材３ｂ、３ｂは、打球時の振動を吸収することができるので、ひいてはプレーヤの手に伝わる振動を軽減し、良好な打球感を提供する。

例えば、第１の軸状部材３ａをトウ側の孔部４ｔに装着することにより、クラブヘッドの重心をトウ側に寄せ、ひいては重心距離の大きいクラブヘッドを提供しうる。なお、「重心距離」は、図１１（Ｂ）に示されるように、ホーゼル部のシャフト差込孔の軸中心線ＣＬからクラブヘッドの重心Ｇまでの最短距離である。このようなクラブヘッド１は、スイング時にクラブヘッド１がアドレスした状態に戻りにくくなるため、打球がスライスしやすい（フックしづらい）。このため、このようなクラブヘッド１は、フックに悩むゴルファーに適する。

逆に、第１の軸状部材３ａをヒール側の孔部４ｈに装着することにより、クラブヘッドの重心をヒール側に寄せることができる。従って、前記重心距離の小さいクラブヘッドを提供しうる。このようなクラブヘッド１は、スイング時にクラブヘッド１がアドレスした状態に戻りやすくなるため、打球がスライスしづらい。このため、このようなクラブヘッド１は、スライスに悩むゴルファーに適する。

さらに、第１の軸状部材３ａを間の孔部４ｃに装着することにより、クラブヘッドの重心をトウ・ヒール方向の中心寄りかつ後方に寄せることができ、ひいては重心深度が大きくなってスウィートエリアが拡大する。従って、ボールの打点がバラついても方向安定性の良いクラブが提供される。なお「重心深度」は、図１１（Ａ）に示されるように、クラブヘッドの重心Ｇと、前記スイートスポットＳとの間の距離を前記法線Ｎに沿って測定した長さである。

第１の軸状部材３ａの比重ρ１は、ヘッド本体２の比重ρｍよりも大きければ特に限定されないが、好ましくは５．０以上、より好ましくは７．０以上が望ましい。前記比重ρ１が５．０未満の場合、クラブヘッドの重心の調整代を十分に確保するためには大きな体積を必要とする傾向がある。また、前記比重ρ１の上限も特に定めないが、大きすぎると重心位置が著しく変化し、また材料調達性が困難になるので、好ましくは２２．０以下、より好ましくは２１．０以下、さらに好ましくは２０．０以下が望ましい。

また、第１の軸状部材３ａの比重ρ１と、ヘッド本体２の比重ρｍとの差（ρ１−ρｍ）が小さすぎても、クラブヘッドの重心を移動させる効果が低下しやすく、逆に大きすぎても第１の軸状部材３ａの配設位置によっては重心位置が好ましくない位置に偏るおそれがある。このような観点より、前記差（ρ１−ρｍ）は、好ましくは３．０以上、より好ましくは４．０以上、さらに好ましくは５．０以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは１２．０以下、より好ましくは１１．０以下、さらに好ましくは１０．０以下が望ましい。

第１の軸状部材３ａを錘部材１１の具体的材料としては、例えば、銅（比重８．９）、銅合金、タングステン（比重１９．１）、タングステンニッケル（比重１４．０）、ステンレス（比重７．８）、ニッケル合金、真鍮又は鉛が望ましく、これらの１種又は２種以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記には代表的な比重の値が示した。

また、図４に示されるように、前記基準状態において、水平面ＨＰから第１の軸状部材３ａの重心Ｇ１までの高さｈｇは、好ましくは２０．０mm以下、より好ましくは１８．０mm以下、さらに好ましくは１５．０mm以下が望ましい。これにより、クラブヘッド１の重心が高くなるのを防止できる。他方、前記高さｈｇが小さすぎると、第１の軸状部材３ａを小型化する必要があり、ひいては該第１の軸状部材３ａに十分な重量を与えることができなくなるおそれがある。このような観点より、前記高さｈｇは、好ましくは４．０mm以上、より好ましくは５．０mm以上、さらに好ましくは６．０mm以上が望ましい。

前記第２の軸状部材３ｂは、背壁部２ｃの外側から前記隙間ｉに向かって前記孔部４に差し込まれかつ螺着されることによってヘッド本体２に装着される。このようなネジ締結は、第２の軸状部材３ｂのネジ軸部３Ｂが、ネジ孔部４Ｂと密に噛み合うとともに、応力を受けた状態でヘッド本体２と接触する。従って、打球時に生じるヘッド本体２の振動が、孔部４を介して第２の軸状部材３ｂに効率良く伝達される。また、第２の軸状部材３ｂは、ヘッド本体２から伝えられた振動を自らの内部摩擦等によって熱エネルギー等に変換し、ひいてはクラブヘッド１の振動を早期に減衰させる。これにより、本実施形態のクラブヘッド１は、プレーヤの手に伝わる衝撃ないし振動が軽減される。

第２の軸状部材３ｂに用いられる材料は、ヘッド本体２の振動を吸収する弾性材料であれば特に限定されないが、好ましくは非金属材料であって、例えば加硫ゴム（比重１．３）、エラストマー（比重１．２）又は樹脂（比重１．１など）などが望ましい。なお、上記には代表的な比重の値が示した。とりわけ、振動ないし衝撃吸収性が高くかつネジ溝等に十分な強度を与えるために、ソフトセグメントとハードセグメントとを有する熱可塑性エラストマーが第２の軸状部材３ｂの弾性材料として好適である。

前記熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとしてポリスチレンを、ソフトセグメントとしてポリブタジエン又はポリイソプレンを含むスチレン系熱可塑性エラストマー（ＴＰＳ）、ハードセグメントとしてポリウレタンを、ソフトセグメントとしてポリエステル又はエーテルを含むウレタン系熱可塑性エラストマー（ＴＰＵ）、ハードセグメントとしてポリエステルを、ソフトセグメントとしてポリエーテル又はエステルを含むエステル熱可塑性エラストマー（ＴＰＥＥ）又はハードセグメントとしてナイロン１２を、ソフトセグメントとして可塑剤又はポリエーテルを含むアミド系熱可塑性エラストマー（ＴＰＡ）などが好ましく採用でき、とりわけ生産性の観点より、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好適である。

第２の軸状部材３ｂは、例えば図６（Ａ）に示されるように、全てが弾性材料Ｍ１で構成されることが望ましいが、例えば同図（Ｂ）のように、ヘッド本体２と接触する外側部を前記弾性材料Ｍ１で形成し、その内部には例えば強度を高めるための金属材料Ｍ２からなる芯材等を複合することができる。これによれば、第２の軸状部材３ｂの耐久性がより一層向上する。また、弾性材料Ｍ１が十分な強度を有していれば、第２の軸状部材３ｂを中空に構成することもできる。

第２の軸状部材３ｂの比重ρ２は、第１の軸状部材３ａの比重ρ１と異なっていれば良いが、大きすぎるとヘッド本体２の重量増加を招くおそれがあるので、前記比重ρ１よりも小であるのが望ましい。他方、第２の軸状部材３ｂの比重ρ２が小さすぎると、剛性が低下して打球時の衝撃により破損するおそれがある。このような観点より、第２の軸状部材３ｂの比重ρ２は、好ましくは０．５以上、より好ましくは０．７以上、さらに好ましくは０．９以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは２．２以下より好ましくは２．０以下、さらに好ましくは１．８以下が望ましい。

また、第１の軸状部材３ａの比重ρ１と第２の軸状部材３ｂの比重ρ２との差（ρ１−ρ２）は、小さすぎると、該第１及び第２の軸状部材３ａ、３ｂの相互の位置を交換した際のクラブヘッドの重心の移動量が小さくなる傾向があり、逆に大きすぎると、第１の軸状部材３ａと第２の軸状部材３ｂとの位置交換によって、重心位置が著しく変化し重心位置の適正化が難しくなるおそれがある。このような観点より、前記比重の差（ρ１−ρ２）は、好ましくは３．０以上、より好ましくは４．０以上、さらに好ましくは５．０以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは２０．０以下、より好ましくは１９．０以下、さらに好ましくは１８．０以下が望ましい。

また、図５に示されるように、基準状態において、第２の軸状部材３ｂの重心Ｇ２の水平面ＨＰからの高さｈｇは、第１の軸状部材３ａと同様、好ましくは２０．０mm以下、より好ましくは１８．０mm以下、さらに好ましくは１５．０mm以下が望ましく、また好ましくは４．０mm以上、より好ましくは５．０mm以上、さらに好ましくは６．０mm以上が望ましい。

また、図４ないし図５に示されるように、第１及び第２の軸状部材３ａ、３ｂは、いずれも前記孔部４から前記隙間ｉに向かってはみ出すはみ出し部７を有する。とりわけ、第２の軸状部材３ｂのはみ出し部７は、片持ち状態で保持することにより、自由振動を行わせることが望ましい。つまり、第２の軸状部材３ｂのはみ出し部７は、静的な状態及び打球時のいずれの状態においてもフェース部２ａの裏面とは接触しないように設けられるのが望ましい。これにより、打球時、はみ出し部７が自由振動し、いわゆる”ダンパー効果”によって前記振動減衰効果をさらに高め得る。

前記はみ出し部の軸方向の長さＬは、好ましくは２．０mm以上、より好ましくは２．５mm以上、さらに好ましくは３．０mm以上が望ましい。前記長さＬが２．０mm未満の場合、振動減衰効果が十分に期待できないおそれがある。他方、前記長さＬは、好ましくは１０．０mm以下、より好ましくは９．０mm以下、さらに好ましくは８．０mm以下が望ましい。前記長さＬが１０．０mmを超える場合、はみ出し部７の長さが第２の軸状部材３ｂの全長に対して相対的に大きくなり、ひいては打撃時の衝撃によってヘッド本体２から外れ又は折損するおそれがある。

また、はみ出し部７は、ネジ軸部３Ｂで形成されても良いが、例えば図６（Ｃ）に示されるように、例えばネジ軸部３Ｂの先端部に径の小さい小径軸部８ａと、その先端に設けられた径の大きい大径部８ｂとを含む振動子８を設けることもできる。このような振動子８は、より一層前記ダンパー効果を高めうる。

なお、図７に示されるように、はみ出し部７の先端部をフェース部２ａの裏面に接触っせ、該フェース部２ａの振動を直接吸収するようにも構成できる。また、第１の軸状部材３ａについては、振動減衰には実質的に関与しないので、前記はみ出し部７を設けて無くても良いのは言うまでもない。

軸状部材３と孔部４との確実な固着を実現するために、孔部４において、ネジ孔部４Ｂの軸方向の長さｍは、好ましくは３．０mm以上、より好ましくは３．５mm以上、さらに好ましくは４．０mm以上が望ましい。前記長さｍが３．０mm未満の場合、接合強度が低下して軸状部材３がヘッド本体２から外れやすくなる傾向がある。他方、軸状部材３には長さの制約があるので、前記長さｍが大きすぎると、上述の自由振動をなすはみ出し部７の形成が困難になる。このような観点より、前記長さｍは、好ましくは１５．０mm以下、より好ましくは１４．０mm以下、さらに好ましくは１３．０mm以下が望ましい。

軸状部材３のネジ軸部３Ｂ及び孔部４のネジ孔部４Ｂにおいて、ネジ山の高さは、０．２０mm以上、より好ましくは０．２５mm以上、さらに好ましくは０．３０mm以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは１．５０mm以下、より好ましくは１．３０mm以下、さらに好ましくは１．１０mm以下が望ましい。前記ネジ山の高さが０．２０mm未満の場合、十分な接合強度が得られず、打球時の衝撃等によってヘッド本体２から外れるおそれがあり、逆にネジ山の高さが１．５０mmを超える場合、タップ加工のバラツキ等によって接着が困難になる可能性がある。なおネジ山の高さは、ネジ軸部３Ｂにあっては｛（外径−谷の径）／２｝であり、軸孔部４Ｂにあっては｛（谷の径−内径）／２｝である。

図８及び図９には、本発明の他の実施形態が示される。図９は、図８のＣ−Ｃ位置に相当する基準状態での断面図である。図８は、図３と同じ状態である。この実施形態では、軸状部材３は、ソール壁部２ｂ及び背壁部２ｃと装着される。例えば、トウ側の孔部４ｔ及びヒール側の孔部４ｈはソール壁部２ｂに設けられるとともに、間の孔部４ｃは背壁部２ｃに設けられる。ただし、軸状部材３の装着位置は任意に決定できる。

好ましい実施形態として、間の孔部４ｃには第１の軸状部材３ａが装着されるとともに、トウ側の孔部４ｔ及び／又はヒール側の孔部４ｈには第２の軸状部材３ｂが装着される。一般に、ソール壁部２ｂは、打球時に地面と接触する機会があるので、より大きな衝撃が発生しやすい。従って、そのような部分に第２の軸状部材３ｂを装着することにより、打球時の振動が効果的に緩和される。

第２の軸状部材３ｂは、ソール壁部２ｂの外表面側から隙間ｉに向かって差し込まれかつ螺着されることにより、その頭部３Ａは、各孔部４ｈ、４ｔの主孔部４Ａからはみ出すことなくかつソール壁部２ｂの外表面とほぼ面一となるように収容される。従って、ソール壁部２ｂが地面と接触した場合でも、第２の軸状部材３ｂの頭部３Ａが地面と干渉してスイングを妨げるおそれはない。他方、第２の軸状部材３ｂのネジ軸部３Ｂは、孔部４ｔ、４ｈから隙間ｉの中にはみ出すはみ出し部７を含む。

ただし、上記実施形態においても、第１の軸状部材３ａ及び第２の軸状部材３ｂの装着位置は、該ヘッド１を使用するゴルファーに応じて適宜好みの位置に選択され得るのは言うまでもない。

本発明のクラブヘッドは、図１０（Ａ）、（Ｂ）に示されるように、ウッド型ゴルフクラブヘッド１０として実施できる。なお図１１（Ａ）はヘッド１０の底面図、同図（Ｂ）はそのＤ−Ｄ断面図である。

該クラブヘッド１０は、フェース面Ｆを有するフェース部２ａと、フェース面Ｆの上縁に連なりかつヘッド上面をなすクラウン部２ｅと、フェース面Ｆの下縁に連なりヘッド底面をなすソール壁部２ｂと、該該ソール壁部２ｂの後端側で前記フェース部２ａと離間して上にのびることにより該フェース部との間に隙間ｉを形成する背壁部２ｃを有するサイド部２ｆと、ホーゼル部２ｄとを具える。なお、前記隙間ｉは、実質的に閉じられた中空部として形成されている。

前記クラブヘッド１０は、その前記背壁部２ｃに、複数個、この例では３つの孔部４、即ち前記トウ側の孔部４ｔ、ヒール側の孔部４ｈ及び間の孔部４ｃが設けられる。そして、孔部４には、ヘッド外面側から隙間ｉ側に向けて少なくとも一つの第１の軸状部材３ａと、少なくとも一つの第２の軸状部材３ｂとが装着される。各軸状部材３ａ、３ｂの軸方向は、前記サイド部１４の外表面とほぼ垂直に装着される。なおこの実施形態においても、孔部４と軸状部材３とはネジ締結によって固着される。

以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく種々の形態に変形して実施しうるのは言うまでもない。例えば、クラブヘッドには、パター型を含む。また、軸状部材（及び孔部）の数は、４個以上であっても良い。

本発明の効果を確認するために、表１の仕様に基づいてロフト角２４度の５番アイアンのクラブヘッドを試作した。ヘッド本体には、いずれも比重７．８のステンレスが用いられた。そして、重心位置等の計測、実打テスト及び耐久テストが行われた。また、比較のために、次の比較例についても同様にテストが行われた。

＜比較例１＞
実施例１の２つの第２の軸状部材の代わりに、マグネシウム合金（非弾性部材）で作られた２つの軸状部材が用いられた。なお、この軸状部材は、内部を中空構造として、重心位置及び全重量が実施例１の第２の軸状部材と同じとなるように調整された。

＜比較例２＞
第１及び第２の軸状部材を有しないヘッドとした。従って、孔部も設けられていない。

測定方法及びテスト方法は、次の通りである。

＜スイートスポット高さ＞
図１１（Ａ）に示されるように、前記基準状態において、クラブヘッドの重心Ｇからフェース面に垂直に引いた法線が該フェース面Ｆと交わるスイートスポットＳの水平面ＨＰからの高さである。

＜実打テスト＞
先ず、各クラブヘッドにＦＲＰ製の同一のシャフトを装着し５番アイアンのゴルフクラブが試作された。そして、ハンディキャップ５〜１５のゴルファー１０名により、各供試クラブを用いて天然芝上のボールをそれぞれ１０球ずつ打撃され、打球のキャリー、全飛距離、打ち出し角、バックスピン量、方向のバラツキ及び打球感についての評価が行われた。方向のバラツキは、目標飛球線方向に対する左右のずれ量が１０球について測定され、その平均値が示されている（左右のいずれにずれた場合でも＋値として平均をとった。）。

また打球感は、以下の基準で評価された。それ以外の試験項目は平均値が示されている。
○：良いと感じたゴルファーが８名以上
△：良いと感じたゴルファーが５名以上７名未満
×：良いと感じたゴルファーが５名未満

＜耐久テスト＞
各供試クラブがスイングロボットに取り付け、ヘッドスピード３８ｍ／ｓでゴルフボール５０００球の打撃が行われた。打撃完了後、軸状部材の外れ等の有無が肉眼で観察された。
テストの結果等を表１に示す。

テストの結果、実施例のヘッドは、小さいスイートスポット高さ、深い重心深度、小さな重心距離を有し、飛距離及び方向性に優れることが確認できた。また、良好な打球感を有することも確認できた。

本発明の実施形態を示すアイアン型のクラブヘッドの分解斜視図である。 その正面図である。 その背面図である。 図２のＡ−Ａ位置に相当する基準状態の断面図である。 図３のＢ−Ｂ位置に相当する基準状態の断面図である。 （Ａ）〜（Ｃ）は第２の軸状部材の実施形態を示す断面図である。 本発明の他の実施形態を示す図３のＢ−Ｂ位置に相当する基準状態の断面図である。 本発明の他の実施形態を示すクラブヘッドの背面図である。 そのＣ−Ｃ位置に相当する基準状態の断面図である。 本発明の実施形態を示すウッド型のクラブヘッドの分解斜視図である。 （Ａ）はアイアン型のクラブヘッドの基準状態の側面図、（Ｂ）はその正面図である。

符号の説明

１、１０ ゴルフクラブヘッド
２ ヘッド本体
２ａ フェース部
２ｂ ソール壁部
２ｃ 背壁部
３ 軸状部材
３ａ 第１の軸状部材
３ｂ 第２の軸状部材
３Ａ 頭部
３Ｂ ネジ軸部
４ 孔部
４Ａ 主孔部
４Ｂ ネジ孔部
４ｔ トウ側の孔部
４ｃ 間の孔部
４ｈ ヒール側の孔部
ｉ 隙間

Claims (7)

1. 少なくとも２つの孔部が設けられたヘッド本体と、
   互いの位置交換が可能に前記孔部に脱着自在に装着された少なくとも２つの軸状部材とを含み、かつ
   前記軸状部材は、前記ヘッド本体よりも比重が大きい材料からなる第１の軸状部材と、前記第１の軸状部材とは比重が異なりかつ前記ヘッド本体の振動を吸収する弾性材料を含む第２の軸状部材とを含むことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
2. ヘッドを規定のライ角及びロフト角で水平面に置いた基準状態において、前記各軸状部材の重心の前記水平面からの高さは１５．０mm以下である請求項１記載のゴルフクラブヘッド。
3. 前記軸状部材は、外周面にネジ溝が設けられたネジ軸部とを含むとともに、前記孔部は、前記ネジ軸部と螺合するネジ孔部とを含む請求項１又は２記載のゴルフクラブヘッド。
4. 前記ヘッド本体は、ボールを打球するフェース部と、その下部に連なってバックフェース側にのびるソール壁部と、該ソール壁部の後端側から前記フェース部と離間して上にのびることにより該フェース部との間に隙間を形成する背壁部とを含み、
   かつ前記孔部が前記背壁部及び／又は前記ソール壁部に設けられる請求項１乃至３のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
5. 前記孔部は、前記背壁部及び／又は前記ソール壁部を貫通する貫通孔からなるとともに、少なくとも前記第２の軸状部材は、前記孔部から前記隙間に向かってはみ出すはみ出し部を有する請求項４記載のゴルフクラブヘッド。
6. 前記孔部は、最もトウ側に設けられたトウ側の孔部、最もヒール側に設けられたヒール側の孔部及びそれらの間に設けられた少なくとも一つの間の孔部を含み、かつ
   前記間の孔部には前記第１の軸状部材が装着されるとともに、最もトウ側の孔部及び最もヒール側の孔部に前記第２の軸状部材が装着される請求項４又は５に記載のゴルフクラブヘッド。
7. 前記第１の軸状部材の比重が５．０〜２２．０であり、かつ前記第２の軸状部材の比重が０．５〜２．２である請求項１乃至６のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。

Images