JP3764211B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイアン型のゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、アイアン型のゴルフクラブヘッドに於て、主にスウィートエリアの拡大を意図して、ヘッドの背面部に凹部を設けた構造(いわゆる「キャビティバック構造」)のものが多くなっている。その構造にはヘッドの性能を改善する多くの利点があることは言うまでもないが、その一方で、いくつかの欠点もある。
【0003】
その欠点の一つが、ヘッドの外観上の問題である。ヘッド本体は通常、研磨工程を経ることによって表面が平滑化されて美しく仕上げることができるが、凹部については研磨が困難なため、表面の平滑化に限界があり、綺麗に仕上げることができなかった。また、ヘッド作製の工程中では、キズや巣などの不良がヘッドに発生することが避けられないが、凹部にそれが発生した場合、研磨できないために修復が困難であった。また、他の欠点としては、凹部によりフェース面を成す打撃部の肉厚が薄くなり、打球感が頼りなくなったり、あるいは打球時の衝撃が手に伝わり易くなってしまうことがあげられる。
【0004】
従来、上述のような欠点に対応するために、凹部の一部に突起部やリブを設けたり、ヘッド本体よりも比重の小さい金属を嵌め込む等の加工が施されたゴルフクラブヘッドが公知であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、凹部の一部に突起を設けたものでは、外観(デザイン性)を損ねたり、キャビティバック構造による周辺重量配分効果が損なわれてしまうといった問題があった。また、異種金属を嵌め込んだものでは、工程的に手間がかかり、コスト高となってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題を解決して、キャビティバック構造であるにもかかわらず、外観上美しく仕上げることができると共に、打球感を改善でき、かつ、周辺重量配分効果を十分に発揮できるアイアン型のゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係るゴルフクラブヘッドは、背面に凹部を有するアイアン型のゴルフクラブヘッドに於て、上記凹部の周囲面の一部乃至全周に、アンダーカット溝を形成し、有機材料を、そのアンダーカット溝に入れ込んで係合させるように、上記凹部の底面に直接に固着し、かつ、該凹部の内面と上記有機材料との密着面積を10cm2 以上とし、さらに、該有機材料のヤング率を2〜 5000MPa に設定したものである。また、有機材料が、加硫ゴム、熱硬化性樹脂、又は、熱可塑性樹脂であるも望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳説する。
【0009】
図1と図2は本発明に係るゴルフクラブヘッドに関連性が深い比較例を示し、先ず、この比較例から説明する。このゴルフクラブヘッド1は、背面に凹部2を有するいわゆるキャビティバック構造のアイアン型のゴルフクラブヘッドであり、ヘッド本体5の凹部2の底面2aとフェース面3との間の打撃部肉厚がその周囲部の肉厚よりも小さく(薄く)設定されている。
【0010】
しかして、凹部2に有機材料4を付設する。即ち、このゴルフクラブヘッド1は、金属製のヘッド本体5と、そのヘッド本体5の背面の凹部2に固着される有機材料4と、から成る。ここで、有機材料4とは、主成分が高分子有機化合物から成る材料を言うものとする。
【0011】
有機材料4は、背面から見て、ヘッド本体5の凹部2よりも小さくかつ凹部2と形状が相違する小板片状の部材であり、ヘッド本体5の凹部2の底面2aに接着剤又は両面テープにて固着される。その凹部2の内面と有機材料4との密着面積を10cm2 以上とする。
【0012】
また、有機材料4は、加硫ゴムから成り、さらに詳しくは、ブタジエンゴム製である。さらに、有機材料4のヤング率を1〜 10000MPa に設定する。好ましくは、有機材料4のヤング率を2〜5000MPa に設定する。
【0013】
上述のように構成したことにより、製造時に美しく仕上げることが困難な凹部2の内面を、美しい仕上げが可能な有機材料4にて隠すことができる。従って、ヘッド1が外観上美しくなる。
【0014】
また、凹部2の内面と有機材料4との密着面積を10cm2 以上とし、かつ、有機材料4のヤング率を1〜 10000MPa に設定したことにより、打撃部肉厚が薄いキャビティバック構造であるにもかかわらず、打球感を良好に保つことができると共に、打球時の衝撃が手に伝わり難くなって手が痺れるのを防止できる。
【0015】
なお、凹部2の内面と有機材料4との密着面積を10cm2 未満とすると打球感の頼りなさ、打球時の手の痺れ等の不具合が生じてしまう。また、有機材料4とヘッド本体5との接触面積が、凹部2の総面積を越えると、かえって外観を損ねてしまうと共に、有機材料4が剥離する虞があるので不適である。
【0016】
また、有機材料4のヤング率が1MPa 未満であると、強度的に有機材料4が破損し易く、かつ、打球感の改善作用が過小となる。また、有機材料4のヤング率が 10000MPa を越えると、打球時の衝撃が手に伝わり易くなって手が痺れてしまう。
【0017】
なお、有機材料4の材質としては、加硫ゴム以外にも、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂とするも好ましい。また、加硫ゴムの場合、ブタジエンゴム以外にも、天然ゴムやSBR等を使用するも望ましく、それら以外の加硫ゴムでもよい。また、熱硬化性樹脂の場合、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等を使用するも好ましく、それら以外のものでもよい。また、熱可塑性樹脂の場合、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、及び、ポリ塩化ビニル等とするも好ましく、それら以外のものでもよい。
【0018】
次に、図3と図4は、他の比較例を示し、有機材料4は、背面から見て、ヘッド本体5の凹部2よりも小さくかつ凹部2と相似形の小板片状の部材である。また、有機材料4は、熱可塑性樹脂から成り、さらに詳しくは、TPS(ポリスチレン系熱可塑性エラストマー)又はABS樹脂製である。他の構成は図1及び図2のものと同様である。このように、有機材料4を凹部2と相似形としたことにより、ヘッド1の外観が一層美しくなる。
【0019】
次に、図5と図6は、本発明に係るゴルフクラブヘッドの実施の一形態を示し、基本的な構成は上述の比較例と同様であるので重複説明を省略する。図5と図6に於て、凹部2の周囲面2bの全周に、アンダーカット溝6が形成され、有機材料4がそのアンダーカット溝6に入り込んで係合している。そして、有機材料4は、背面から見て、ヘッド本体5の凹部2と同一の形状かつ同一の大きさである。このため、外観がきわめて美しくなる。また、有機材料4は、エポキシ樹脂から成る。
【0020】
このヘッド1を製造するには、凹部2の周囲面2bの全周にアンダーカット溝6を有するヘッド本体5を形成し、その凹部2に溶融したエポキシ樹脂を流し込んで固化させる。これにより、有機材料4が凹部2のアンダーカット溝6に入り込んで係合するので、接着剤や両面テープを使用することなく有機材料4をヘッド本体5の凹部2に固着できると共に、有機材料4が不意に脱落しなくなる。
【0021】
なお、凹部2の周囲面2bの一部に、アンダーカット溝6を形成し、有機材料4をそのアンダーカット溝6に入り込んで係合させるも好ましい。その場合、例えば、所定長さのアンダーカット溝6を凹部2の周囲面2bに所定ピッチ毎に複数設ければよい。
【0022】
また、図7と図8は、さらに別の比較例を示し、背面から見て横長楕円形状のエポキシ樹脂製の有機材料4を、ヘッド本体5の凹部2の底面2aに接着剤又は両面テープにて固着したものであり、有機材料4の断面形状は低い山型とされている。他の構成は、図1と図2のものと同様である。
【0023】
【実施例】
次に、本発明に係るゴルフクラブヘッドを実際に作製し、そのヘッドに同一のシャフトを取付けて実施例としてのゴルフクラブを作製した。そして、その実施例と従来例及び比較例のゴルフクラブについて、テスター15人による実打テストを行った。その結果を次の表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上記表1に於て、全クラブのシャフト及びグリップを同一とし、かつ、ヘッド本体の材質をステンレス(SUS630)とした。また、従来例1のヘッドを除くヘッドについて、打撃部肉厚を 3.5mmとした。なお、実施例2に於て、有機材料としてのTPSは、旭化成工業株式会社製の商品名「タフプレン」を使用した。また、実施例3に於て、有機材料としてのABS樹脂は、三菱レイヨン株式会社製の商品名「ダイヤペット」を使用した。また、実施例4,5の有機材料としてのエポキシ樹脂は、日本チバガイギー株式会社製の商品名「アラルダイド」を使用した。
【0026】
また、実施例1のヘッドは図1と図2に、実施例2,3のヘッドは図3と図4に、実施例4のヘッドは図5と図6に、実施例5のヘッドは図7と図8に、各々対応する。
【0027】
また、従来例1のヘッドは図9と図10に対応し、このヘッドは、ヘッド本体aの背面cに凹部(キャビティ部)を有していない、俗に「フラットバック」と呼ばれるヘッドである。従来例2のヘッドは図11と図12に対応し、ヘッド本体aの背面cに凹部dを有し、その凹部dに他の部材は取付けられていない。従来例3のヘッドは図13と図14に対応し、ヘッド本体aの背面cの凹部dに、ヤング率が107000MPa と高いチタンeを取付けたものである。比較例のヘッドは図15と図16に対応し、ヘッド本体aの背面cの凹部dに、エポキシ樹脂fを密着面積が 6.2cm2 と小さい値となるように取付けたものである。
【0028】
また、打球感評価と振動吸収効果は、各テスターが1,2,3,4,5の5段階の点数評価したものの平均値であり、数値が大きいほど優れていることを示す。しかして、表1から明らかなように、実施例1〜4のゴルフクラブ(ヘッド)によれば、打球感評価と振動吸収効果の両方が高い値───即ち打球感評価が 3.8以上振動吸収効果が 4.4以上───を示しており、打球感及び振動吸収効果に優れていることが分かった。
【0029】
また、実施例5のゴルフクラブ(ヘッド)は、振動吸収効果が 3.9と比較的高いが、打球感評価は 2.8とやや低い値となった。これは、有機材料としてのエポキシ樹脂の体積及び密着面積が、実施例1〜4に比して小であることによると考えられる(図1〜図8参照)。しかし、実施例5は、エポキシ樹脂の体積及び密着面積が実施例5よりも小である比較例のクラブに比して、振動吸収効果と打球感評価が優れている。
【0030】
なお、従来例1は、フラットバックのヘッドであり打撃部肉厚が比較的厚いため打球感評価は 4.5と比較的高いが、振動吸収効果が 1.3と著しく低い。また、従来例2は、ノーマルなキャビティバック構造のヘッドであり打球感評価が 2.1、振動吸収効果が 1.1と両方とも低く、従来のキャビティバック構造のヘッドの欠点が如実にあらわれている。従来例3は、凹部に高ヤング率のチタンを取付けてあるので打球感評価が 4.7と比較的高いが、振動吸収効果が 1.8と著しく低い。また、比較例は、打球感評価が 2.5、振動吸収効果が 2.8であり両方とも低い値である。
【0031】
上記のように、実施例1〜5は、従来例1〜3及び比較例に比して、打球感と振動吸収効果に優れていることから、本発明に係るゴルフクラブヘッドによれば、キャビティバック構造であるにもかかわらず、良好な打球感が得られ、かつ、打球時に振動が手に伝わらず手の痺れ等を防止できると言うことができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成されているので、次に記載する効果を奏する。
【0033】
請求項1記載のゴルフクラブヘッドによれば、背面に凹部2を有する(キャビティバック構造の)ヘッドであるにもかかわらず、周辺重量配分効果を失うことなく、打球感を良好とすることができ、かつ、打球時の振動を手に伝わりにくくすることができる。また、ヘッドの外観不良を改善することができる。
【0034】
また、有機材料4のヤング率を2〜 5000 MPaに設定したので、振動吸収効果が一層優れたものとなり、打球時に手が痺れるのを防止できる。
【0035】
また、製造の際に接着剤や両面テープが不要となる。さらに、有機材料4がヘッド本体5に強固に一体化できる。また、有機材料4とヘッド本体5との密着面積を広くすることができる。
【0036】
請求項2記載のゴルフクラブヘッドによれば、請求項1記載のものと同様の効果を奏すると共に、有機材料4が、腐食や劣化に強く、かつ、打球時の衝撃に十分に耐える強度を有するので、ゴルフクラブヘッド用の材料として最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の比較例を示す背面図である。
【図2】 図1のA−A線断面図である。
【図3】 他の比較例を示す背面図である。
【図4】 図3のB−B線断面図である。
【図5】 本発明の実施の一形態を示す背面図である。
【図6】 図5のC−C線断面図である。
【図7】 さらに別の比較例を示す背面図である。
【図8】 図7のD−D線断面図である。
【図9】 従来例の背面図である。
【図10】 図9のE−E線断面図である。
【図11】 他の従来例の背面図である。
【図12】 図11のF−F線断面図である。
【図13】 別の従来例の背面図である。
【図14】 図13のG−G線断面図である。
【図15】 比較例の背面図である。
【図16】 図15のH−H線断面図である。
【符号の説明】
2 凹部
2a 底面
2b 周囲面
4 有機材料
6 アンダーカット溝
Claims (2)
- 背面に凹部2を有するアイアン型のゴルフクラブヘッドに於て、上記凹部2の周囲面2bの一部乃至全周に、アンダーカット溝6を形成し、有機材料4を、そのアンダーカット溝6に入れ込んで係合させるように、上記凹部2の底面2aに直接に固着し、かつ、該凹部2の内面と上記有機材料4との密着面積を10cm2 以上とし、さらに、該有機材料4のヤング率を2〜 5000 MP a に設定したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
- 有機材料4が、加硫ゴム、熱硬化性樹脂、又は、熱可塑性樹脂である請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
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