JP4494927B2 - ゴルフクラブヘッドとその製造方法 - Google Patents
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同様に、図16の従来例も、弾性体21の抜止め手段が何ら施されていないこともあって、長期に亘る打球時の衝撃で弾性体21がスリット19から離脱する虞があり、また、均一幅のスリット19内に充填された構造上、前記衝撃吸収材13と同様、弾性体21の材料の特性のみの衝撃吸収しかできない不具合が指摘されていた。
尚、本明細書に於て、「振動を吸収」とは、振動を抑え、一部緩和することも含む。
而も、斯様に振動吸収体の肉厚をフェース部の撓み方向へ変化させてヘッド本体と接触する表面積を大きくしたことで、振動吸収体による振動吸収性が更に向上することとなる。
また、振動吸収体は、開口部側に幅狭部が形成され、底部側に幅広部が形成された溝部に装着されているため、長期に亘る打球時の衝撃で溝部から離脱する虞もない。
更に、振動吸収体によって打球時のフェース部の撓みを規制することがないため、打球されたボールの十分な飛距離を確保することができる利点を有する。
そして、請求項3に係る製造方法によれば、液状樹脂をノズルで溝部内に注入後、硬化させることで振動吸収体が形成できるため、ゴルフクラブヘッドを容易に製造することができる。この場合、液状樹脂の粘度が少ないと隙間なく充填し易く、適度な粘度を有すると安定して充填でき作業性がよい。
図1乃至図5は請求項1に係るゴルフクラブヘッドの第一実施形態を示し、図1に於て、25はホーゼル部27やソール部29,フェース部31等がステンレスや軟鉄,タングステン合金等で一体に鋳造されたアイアンのヘッド本体で、図2及び図3に示すように打球時の慣性モーメントを大きくするため、ヘッド本体25のバック部33側には、ヘッド本体25の周縁部35を残してキャビティ37が設けられており、斯かる構成によりヘッド本体25の重量が周縁部35に分散されて、打球の方向性が安定するようになっている。
そして、打球時の振動を吸収してフィーリングの向上を図るため、本実施形態は、前記キャビティ37のフェース面側内周の全周に亘って溝部51を設け、当該溝部51に振動吸収体53を装着したことを特徴とする。
而して、図5に示すように凹部55は、ヘッド本体25のソール部29側に於て、フェース部材43と平行に貫通孔39の開口周辺部に凹状に設けられた平坦部57と、当該平坦部57の外周側に突設された断面三角形状の環状の突条59の傾斜部61とで形成され、既述したように斯かる凹部55とフェース部材43とで溝部51が区画形成されている。そして、凹部55は、ソール部29から左右のトゥ,ヒール側へ向かって平坦部57が順次減少し、トゥ,ヒール側からヘッド本体25のトップ部63に亘って、図2の如く突条59の傾斜部61による凹部55とフェース部材43とで溝部51が区画形成されている。
また、ヘッド本体25のトップ部63側に於ては、突条59の突出端とフェース部材43との間が溝部51の開口部51aとなり、傾斜部61によって底部51b側がフェース部31の外周方向へ順次幅広とされた構造となっている。そして、溝部51の全周に亘って、突条59の突出端とフェース部材43との間が溝部51の幅狭部とされており、溝部51の開口部51a側に当該幅狭部が位置し、底部51b側に幅広部が形成された構造となっている。
振動吸収体53は、フェース部材43を嵌着凹部41に嵌着した後、図2及び図5の如くポリウレタン等のエストラマ樹脂からなる環状の成形体を、傾斜部61とフェース部材43とで区画される溝部51の領域に圧入したもので、振動吸収体53は傾斜部61(溝部51の形状)に沿って溝部51の底部51bに向け、即ち、フェース部材43の撓み方向へ順次幅広(t1<t2)となっている。
更にまた、常温で流動性を有する母材樹脂に揮発性溶剤を混合し、揮発性溶剤の揮発で流動性を消失させる方法を用いて溝部51内に振動吸収体を設けてもよく、母材樹脂としてアクリル系樹脂やポリウレタン系樹脂等が挙げられ、揮発性溶剤として酢酸エチルやトルエン,水,メチレンクロライト等が挙げられる。
本実施形態に係るゴルフクラブヘッド49はこのように構成されているから、このゴルフクラブヘッド49を装着したクラブでボールを打球すると、振動吸収体53が打球時の振動を吸収するが、振動吸収体53は、フェース部材43の撓み方向に肉厚が変化(t1<t2)しているため、打球時のフェース部材43の撓みにより、振動吸収体53は肉厚差による圧縮性の相違が生じる。
而も、前記幅狭部から溝部51の底部51bに向けて順次幅広となるように振動吸収体53の肉厚を変化させてヘッド本体25と接触する表面積を大きくしたことで、振動吸収体53による振動吸収性が図15,図16の従来例に比し更に向上する。
従って、本実施形態によれば、
[1] 振動吸収体53によって打球時のフェース部材43の撓みを規制せず、打球されたボールの十分な飛距離を確保することができ、
[2] 溝部51に装着する振動吸収体53の肉厚をフェース部材43の撓み方向に変化させたことで、打球時のフェース部材43の撓みで振動吸収体53に圧縮性の相違が生じ、この圧縮性の相違によって振動吸収性が向上するため、同材料で同程度の吸収性を生じさせる際に小型化でき、効率よく振動吸収できる利点を有する。
[4] 振動吸収体53は、溝部51の幅狭部から底部51bに向けて順次幅広となるように形成されているため、長期に亘る打球時の衝撃で振動吸収体53が溝部51から離脱することがない。
尚、図1乃至図5の実施形態と同一のものには同一符号を付してそれらの構造説明は省略する。
そして、振動吸収体53-1は、恰も突条67,69に噛合するように溝部51-1内に装着されて、肉薄部分より溝部51-1の底部51b-1に振動吸収体53-1の肉厚部分が位置するため、長期に亘る打球時の衝撃で振動吸収体53-1が溝部51-1から離脱することもない。
図7は請求項1の第三実施形態に係るゴルフクラブヘッドの要部拡大断面図を示し、図示するように本実施形態に係るゴルフクラブヘッド49-2は、図5の振動吸収体53に代え、フェース部材43を嵌着凹部41に嵌着して当該フェース部材43と凹部55とで溝部51を形成した後、請求項4の一実施形態によって、溝部51内にノズルでシリコンゴムまたはシリコンゲル等の室温硬化性または熱硬化性の液状樹脂を開口部51aまで注入し、これらを室温または加熱して硬化させて振動吸収体53-2を設けたものである。
而して、本実施形態によれば、図1の実施形態と同様、所期の目的を達成することができることは勿論、ヘッド本体25と接触する振動吸収体53-2の表面積が更に増加し、また、前記振動吸収体53に比し振動吸収体53-2の容量が大きくなるため、振動吸収体53-2による振動吸収効果が更に高まる利点を有する。
そして、凸部91の外側のフェース部75に平坦な受け部95が形成されて、当該受け部95に前記フランジ部89の先端が当接するようになっており、斯様にフランジ部89の先端を受け部95に当接させてフェース部材83をフェース部75に取り付けると、凸部91とフェース部材83との間に溝部97が形成されるようになっている。
振動吸収体103は、図6の振動吸収体53-1と同様、請求項3の一実施形態によってフェース部材83をフェース部75に取り付けた後、凸部91とフェース部材75とで形成された溝部97内に、ノズルでシリコンゴムまたはシリコンゲル等の室温硬化性または
熱硬化性の液状樹脂を注入し、これらを室温または加熱して硬化させることで形成されており、振動吸収体103は溝部97の形状に対応して、溝部97の開口部104が開口する同一幅部99に比し幅広部101の肉厚が大きく(t5<t6)なっている。
そして、その他の構成は図1の実施形態と同様であるので、同一のものには同一符号を付してそれらの説明は省略する。
本実施形態に係るゴルフクラブヘッド105はこのように構成されているから、当該ゴルフクラブヘッド105を装着したクラブでボールを打球すると、振動吸収体103が打球時の振動を吸収し、振動吸収体103は、フェース部材83の撓み方向に肉厚が変化(t5<t6)しているため、打球時のフェース部材83の撓みにより、振動吸収体103は肉厚差による圧縮性の相違が生じる。
而も、幅広部101が厚肉となるように振動吸収体103の肉厚を変化させてヘッド本体71と接触する表面積を大きくしたことで、振動吸収体103による振動吸収性が図15,図16の従来例に比し更に向上すると共に、打球時の衝撃で溝部97から離脱することもない。
図11乃至図14は請求項1及び請求項2に係るゴルフクラブヘッドの一実施形態を示し、以下、本実施形態を図面に基づいて説明するが、図1の実施形態と同一のものには同一符号を付してそれらの説明は省略する。
本実施形態に係るゴルフクラブヘッド109はこのように構成されており、当該ゴルフクラブヘッド109は、請求項3及び請求項4に係る発明方法の一実施形態によって以下の如く製造される。
この後、図13に示すように溝部109内に、その幅狭部より小径のノズル123でシリコンゴムやシリコンゲル等の室温硬化性または熱硬化性の液状樹脂を注入して、これらを室温または加熱して硬化させることで、図12に示すように平坦部117とフェース部材43とで区画される領域に振動吸収体111を設けるもので、振動吸収体111は幅狭部に比し、前記断面円弧状部121の形状に沿って溝部109の底部109bに向け、即ち、フェース部材43の撓み方向へ順次幅広(t7<t8)となっている。
更にまた、本実施形態に係る製造方法によれば、液状樹脂をノズル123で溝部109内に注入後、硬化させることで振動吸収体111が形成できるのでゴルフクラブヘッド107を容易に製造できると共に、凹部113に断面円弧状部121を設けたことで、液状樹脂注入時の樹脂回りが円滑となるため、液状樹脂を隙間なく充填することができ、この結果、振動吸収体111によって効率よく振動を吸収することができる利点を有する。
而して、トップ部に溝部を設けてこれに振動吸収体を装着すると、トップ部はヘッド本体の肉厚が薄いために振動し易いといった従来の不具合を解消できる。
また、この種のアイアンのクラブは、比較的ソール側で打球することが多いため、ソール部に溝部を設けてこれに振動吸収体を装着すれば、振動吸収体の機能を発揮させて打球時の振動吸収を効率よく図れる利点を有する。
31,75 フェース部
33 バック部33
37,87 キャビティ
39,81 貫通孔
43,83 フェース部材
49,49-1,49-2,105,107 ゴルフクラブヘッド
51,51-1,97,109 溝部
53,53-1,53-2,103,111 振動吸収体
55,55-1 凹部
59,67,69,119 突条
61 傾斜部
89 フランジ部
91 凸部
93 テーパ面
95 受け部
121 断面円弧状部
123 ノズル
Claims (4)
- 金属製のヘッド本体のバック部に、ヘッド本体の周縁部とボールを打球するフェース部とでキャビティを形成したゴルフクラブヘッドに於て、
上記キャビティのフェース面側内周に、フェース部中央側に位置する開口部側に幅狭部を有し、底部側にフェース部の撓み方向へ幅広な幅広部を有する溝部を形成し、
当該溝部の範囲内に、当該溝部内の形状に沿った形状からなる振動吸収体を溝部に沿って装着して、当該振動吸収体の肉厚をフェース部の撓み方向に変化させ、
打球時に、フェース部の撓みにより、前記振動吸収体に肉厚差による圧縮性の相違を生じさせることを特徴とするゴルフクラブヘッド。 - 幅広部は、溝部の開口部側から底部側へ連続する円弧状部であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
- 金属製のヘッド本体のバック部に、ヘッド本体の周縁部とボールを打球するフェース部とでキャビティを形成すると共に、当該キャビティのフェース面側内周に、フェース部中央側に位置する開口部側に幅狭部を有し、底部側にフェース部の撓み方向へ幅広な幅広部を有する溝部を形成し、
上記幅狭部より小径のノズルで溝部の範囲内に液状樹脂を注入し、これを硬化させて溝部内の形状に沿った形状からなる振動吸収体を溝部に沿って形成することにより、当該振動吸収体の肉厚をフェース部の撓み方向に変化させ、
打球時に、フェース部の撓みにより、前記振動吸収体に肉厚差による圧縮性の相違を生じさせることを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。 - 溝部を、その開口部側から底部側へ連続する円弧状に形成することを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
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