従来、プリント基板の検査は、専用治具によるチェッカー方式、準ユニバーサルチェッカー方式、フライングプローブ方式、あるいは画像処理による検査方式が代表的なものである。また、最近では、電磁センサー方式などの非接触検査方式あるいは静電容量式なども実用化されつつある。それぞれの検査方式には一長一短があり、さまざまな改善がなされているが、おおくの改善すべき技術課題が残っている。
上記専用冶具によるチェッカー方式の代表的なものは、測定箇所全てにプローブピンを立てる固有治具方式である。この方式は、基板全体の測定点全てに(数千本以上に及ぶ場合がる)接触できるようにプローブピンを立て、測定点すべてにおいて導通検査およびショート検査を行なうものである。この検査方式に用いる上記固有冶具においては、プローブピンを立てるに当たって寸法的制約が生じるため、検査対象のプリント基板が細密な基板である場合には、全ての測定点にプローブピンを立てることができない場合が生じる。仮に必要な測定点全てにプローブピンを立てることができたとしても、極めて精密に加工され組み立てられた治具になるため、冶具が非常に高価なものになるという問題がある。そのほか、異なった仕様のプリント基板の検査に切り換えるときの段取りに時間が掛かること、治具を収納するために大きなスペースが必要であることなどの問題もある。その反面、上記固有治具を用いたチェッカー方式によれば、測定時間は非常に短時間で済ませることができる利点がある。
前記準ユニバーサルチェッカー方式に関しては、異方性導電シートとグリッド変換基板を併用して、それぞれの被検査プリント基板に対応させたグリッド変換基板を専用治具として用いることにより、チェッカー本体そのものをユニバーサル化するという考えに近づけた装置も開発されている。基板ごとに固有の治具を必要とするものであるが、装置本体の接触測定部は、グリッド変換基板により、共通ピッチにグリッド変換された部分を用いるので、グリッド変換基板が異なっても、測定側装置本体側の接触機構(例えば、剣山タイププローブピンブロック機構あるいはそれに代わる接触子ブロック機構)は、共通とすることができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかし、この方式によれば、被検査プリント基板の構成の複雑化に伴って、グリッド変換基板の構成も複雑化し、これを構成する層の数が増え、グリッド変換基板が非常に高価なものとなる。これに加えて異方性導電シートも高価であるため、治具のコストが高くなるという問題がある。その反面、治具収納スペースの問題が軽減され、段取り時間および測定時間が短い、という長所がある。
前記フライングプローブ方式は、被測定基板上のどの位置にある測定点へも自由に動区ことができる2本一対のプローブピンタイプの接触子が、それぞれ測定点に対する接触と移動を繰り返しながら検査する方式である。この方式の最大のメリットは、専用の治具が不要であることである。しかしその反面、測定時間が大幅に長くなることである。この改善策として、複数のプローブ対を設置した装置もあるが、測定時間の短縮には原理的な限界がある。
前記画像処理方式によれば、昨今の技術進歩により、被検査基板表面のパターン形状は精度良く検査されるレベルに到達しつつある。しかし、スルーホール部の検査には適さない。検査スピードも速いのであるが、被検査基板表面の検査に限られる。よって、ほとんどのユーザーは、内層基板単体での検査に利用している。
最近では、ある電気的なセンサー(例えば、電磁センサー)を用いた非接触タイプの検査装置ないしは検査方法も登場している。また、静電容量式検査装置も存在している(例えば、特許文献3参照)。しかし、電磁センサーによる非接触タイプのものは、マイナーな存在として部分的に実用化されているが、静電容量式がメイン構想となった検査装置は実用レベルに至っておらず、フライングプローブ方式、あるいはグリッド変換基板を用いたユニバーサル方式、あるいは剣山タイププローブピン型の治具を用いた方式が主たるものである。
本出願人は、プローブスキャン方式によるプリント基板検査装置について先に特許出願した(特願2005−034505参照)。本発明は、この先願にかかる発明をさらに改良したものである。本発明は、検査装置の運用上、被測定プリント基板ごとに必要な治具の製作費用を、確実に低減するものである。より具体的には、検査に必要なグリッド変換基板の構成を、例えば2層両面基板にすることを可能にして、冶具のコストを低減するものである。先願にかかる発明も、グリッド変換基板の2層化することが不可能ではないが、それをさらに確実に、しかも測定工程を簡略化して、結果的には短時間で検査することができるように種々の工夫を施した。このグリッド変換基板2層板化の工夫は、プローブスキャン方式の検査装置以外の、準ユニバーサルチェッカー方式の検査機に活用されるグリッド変換ポイント一括接触測定手法にも、大いに有効な提案である。
前記特許文献2記載の発明は、本願発明に似ている部分がある。それは、グリッド変換ポイントをいかに効率的に取り扱うかという発想である。しかし、特許文献2記載の発明は、本願発明とは根本的に異なるものである。本願発明では、特許文献2記載の発明と異なる発想および測定アルゴリズムに基づいており、これを検査装置に反映させている。具体的な技術の相違については順次説明する。
特許文献1記載の発明は、測定基板の細密化傾向に対応するためになされたものであるが、対応できる仕様の基板が限定される難点がある。装置そのものも被検査基板の複雑化に伴って益々複雑化する傾向にあり、イニシャルコストが益々高額なものになっている。
特開平5−159821号公報
特開平5−341007号公報
特開2002−181870号公報
以上のように、従来のプリント基板検査装置によれば、(1)細密なプリント基板への対応には種々の問題が存在し、これらの問題点を解消する必要があること、(2)治具代が高いこと、(3)検査測定時間が長いこと、というような問題を有している。
本発明の目的は、前記先行特許出願にかかる発明を更に改良し、異なる機種ないしは異なる仕様のプリント基板についても、迅速に対応して検査することができ、多層基板のスルーホールの導通検査はもちろん、各種パターンの導通・短絡に関しても確実に検査することがでるプリント基板検査装置およびプリント基板検査装置用グリッド変換基板を提供することを目的とする。
本発明はまた、被測定基板の仕様ごとにそれに合わせた専用治具を用いるものの、治具代としてのイニシャルコストを低減することがでるプリント基板検査装置およびプリント基板検査装置用グリッド変換基板を提供することを目的とする。
本発明は、被検査プリント基板に重ねて配置され、被検査プリント基板の検査ポイントを格子状配列パターンに変換し、この格子状配列パターンに検査装置側のプローブピン類を接触させ、プローブピン間の電気的導通状態によってプリント基板の合否を判定するプリント基板検査装置用グリッド変換基板であって、被検査プリント基板の各電路が有する検査ポイントに対応する変換ポイントを格子状に有し、上記被検査プリント基板の各電路が有する検査ポイントのうちの少なくとも一つの検査ポイントに対応する変換ポイントは電気的に任意に一体に接続することを可能とした構想、つまり、グランド扱いポイント構想を導入したものであることを特徴とする。
本出願人による前記先行特許出願にかかる発明は、被測定基板に対応する測定点に直接あるいは間接的に接触することができるように、列をなして並べた複数個のプローブ電極をスキャンさせ、被測定プリント基板の各測定ポイントに接触させて検査するものである。プローブ電極のスキャン方向をX軸方向とすると、X軸方向に直交する方向であるY軸方向にプローブ電極が並んでいる。プローブ電極が被測定プリント基板に対してX軸方向にスキャンすることにより、各プローブ電極に相対するもう片方の閉電路形成用の平面電極(これを「グランド側電極」ともいう)を有している。グランド側としての上記平面電極も、プローブ電極の移動に追従して被測定基板の測定ポイントに対応した部分に接触しながらスキャンする。このプローブ電極とグランド側平面電極はペアーをなして機能するもので、このペアーの動きがこの装置の基本的な特徴である。電圧印加機能を有したプローブ電極と、グランド側平面電極を、被測定プリント基板のそれぞれの測定ポイントに対応した測定部に、間接的に接触させ、それに関わる各電路パターンの導通・ショート発見テストを行なう。
上記先行出願にかかる発明は、被測定基板の上下面に異方性導電ゴムとグリッド変換基板を介してサンドウィッチ状態にして検査するものである。本発明は、これにさらに改良を加え、検査に使用するグリッド変換基板の構造を簡略化すること、つまり多数の層からなる基板ではなく、2層構成の基板であっても検査することができるようにしたものである。
最近のプリント基板は益々高密度実装・細密化の方向にある。特にCSPタイプあるいはBGAタイプのICが実装されるプリント基板では、従来の検査方法によると、グリッド変換基板が多数の層からなる基板にせざるを得ない。また、グリッド変換ピッチが2.54mm(0.1インチ格子)と変換ピッチが粗い場合でも、これに対応することができるグリッド変換基板を作製することは困難な状況であるにもかかわらず、さらに細かい1.5mmピッチ以下に対応することが求められている。その理由は、実装される部品が益々小さくなり、加えて、実装密度もさらに高くなる方向、例えば、BGA−ICでは端子間ピッチ0.8mm以下のものも用いられるようになってきており、これに対応可能なグリッド変換基板の実現が難しい状況になっている。
従来の考え方によると、グリッド変換が要求される測定点は、被測定基板の測定に対応した電路の全てのパターンが備えるポイントを対象にするという考えであった。本発明は、必ずしも全ポイントをそれぞれ電気的に独立させたグリッド変換ポイントに対応させる必要はない、という発想に基づくもので、独立したグリッド変換ポイントの数を大幅に節約できる。導通テスト時には、各独立した電路にて、それぞれの電路の1点は、一時的にグランドに短絡しておいたとしても、導通テストはできるという発想である。以後、この考えによる処理ポイントを「グランド扱いポイント」と称する。このことにより、分岐した電路では、電路全体で1点のみがグランド扱いポイントになるが、単純な2点間電路では片方の測定ポイントをグリッド変換非対象ポイント扱いとする。この考えにより、グリッド変換対象ポイント数は激減させることができる。特に、BGA−ICのパターン部にとっては効果的で、グリッド変換非対象ポイントとして、グランド扱いとすることが可能になり、変換基板は極端に単純化したものとなる。何故なら、このBGAパターン部分が、グリッド変換基板を多数の層にせざるを得ない最大の原因であったからである。詳細については後述する。
上記のように、グランド扱いポイントという考えを導入した場合、導通テスト時は問題無いが、ショート発見テスト時においては、グランド扱いポイントをグランドに短絡した状態のままでは測定不能ということになる。そのため、ショート発見テスト時は、グランドに短絡したままの状態から、それを解除させる(すなわちグランドから浮かす)という制御をしなければならない。その方法は装置として実質的に実現可能であり、運用上問題ない方法として、三通りの手段を考えた。
本発明を実施するための具体例は、被測定プリント基板に対応したグリッド変換基板と、それに付帯する異方性導電ゴムを介して測定するものである。実際の測定は、グリッド変換基板上に導き出された測定ポイントに、プローブピンを適宜の方法によって接触させ、各電路を閉回路状態にして、実際に電圧を掛けた状態でテストする。プローブピンの接触方法は各種考えられる。例えば(1)プローブスキャン方式(2)剣山タイプのプローブピンブロック治具方式、(3)2段変換基板をプローブピンの代わりとさせアダプター兼コネクタータイプにしたアタッチメント方式(特許文献2参照)、等である。しかし、これらの方法による検査機には、一時的にグランド扱いにした測定点を任意に解除させるという機能は具備していない。本発明はその機能を付加した基板検査装置の提案およびそれに用いるグリッド変換基板について開示するものである。
グリッド変換ポイント部への電圧の掛け方は、先に特許出願した発明の発想と基本的には同じで、以下に説明するルールに基づいた方法によってなされる必要がある。
まず、プローブスキャン方式について述べる。プローブ電極がX軸方向に向かってスキャンしてグリッド変換基板上の変換ポイントに摺動接触する過程で、各プローブ電極単体にはパルス的電圧が印加されるように工夫がされている。パルス電圧の掛け方は、例えば、NO.1プローブから開始し、つぎにNO.2、その次にNO.3という順番にパルス的電圧を印加してゆく。最終的には基板上面側の最後のNO.n番目のプローブまで順次電圧を掛けて行く。スキャン方式の場合、被測定プリント基板のY軸方向に多くて200本のプローブ電極が整列・設置されているので、上記nは多くて200程度となる。次に裏面側についても同様に電圧を印加していく。各プローブ電極に印加する電圧は、ある時間的長さのパルス幅のもので、パルス状の電圧を印加した後は、直ちにそのプローブ電極をグランドに落とすように制御する。すなわち、パルス状電圧を印加し、直ちにグランドに落とす、という制御を、各プローブ電極に順番に行なう。そして、初めにNO.1プローブ電極に電圧を印加する前は、全プローブはフロート状態にしておき、このフロート状態から検査をスタートすることが重要な点である。各プローブがフロート状態で測定ポイントに接触していたとしても、回路パターンには何ら影響を受けないようにするためである。これはX方向の測定位置毎に繰り返されると良い。以上がスキャン方式による被測定プリント基板上のあるX位置での測定ルーチンであり、こうしてプローブ電極は次のX位置に順次移動しながら、この一連の移動・停止・測定動作を基板全体について行う。そして、プローブ電極が停止し測定し終わった後のスキャン後方のグリッド変換ポイントは、直ちに全てのポイントで平面グランド電極に拠って、グランドに短絡されるメカニズムとしている。X軸方向のスキャン動作は間歇的な動きであるが、停止測定している時間は極わずかな時間であるので、人間の目には連続的な動きのように見える。
また、グランド扱いポイント構想を反映させた新測定構想(後述の図7の符号7−5を付した機構部分)による測定の場合、ショート発見テストでは、片側のみのスキャンでショートの有無を発見できるが、どの回路同士がショートしているかまでは特定できない場合がある。ショートが存在する片方の電路は確定できるが、どの電路との間で短絡しているのか特定不能となる場合があるからである。しかし、ショート発見テストとして往復のスキャンをさせれば、一箇所程度のショートなら、どの回路同士で発生しているかは特定することができる。ただし、往復のスキャンをさせたとしても、ショート箇所が複数発生しているような場合には、やはりどの回路同士で発生しているかは、ネットリストと基板ガーバーデーターのパターン形状を分析・解析・確認しないと特定できない。詳細測定アルゴリズムは後述する。
よって、スキャン測定では、例えば、往路スキャンで導通テストを、復路スキャンではショート発見テストをすると良い。そしてショートが存在していることを発見した場合に、どの回路同士でショートしているかを確認するときには、もう一度異なる方向からの片道スキャンをさせれば良い。ただ、復路時の片側スキャンによるショート発見テストだけでよいということであれば、往路スキャンで導通テストを行ない、復路スキャンのときにショート発見テストをする。こうすることによって、図7の例における左側上下のスキャン方式グランド短絡アタッチメント7−6は省略することができる。
各プローブピン(測定子)がグリッド変換ポイントに接触したとき、電流が流れるか否かという測定データをもって電路の合否判定をする。その際重要なことは、プローブのX軸位置情報とプローブNO.とを関連付けてそのデータの合否判定をしなければならない。よってプローブのX位置情報はフィードバックされていなければならない。これはスキャン方式の測定に限定されることであるが、リニアスケールを用いるのも一つの方法である。
次に、グリッド変換基板の変換ポイントを一括接触させる方法における、接触部電圧制御方式について説明する。例えば、グリッド状に配列された数千本以上のプローブピンを有する剣山タイププローブ電極ブロック治具を用いてグリッド変換基板の変換ポイント全体に一括して接触させる場合について説明する。この治具は検査装置本体に属しているのが普通であり、通常、測定基板の大きさが異なった場合であっても、測定基板全体をカバーするように、汎用性のある大きなサイズになっている。この治具の各プローブへの電圧印加制御は、ここでも以下に述べるパルス的電圧印加制御方式を適用するとよい。NO.1プローブより順次電圧を印加し、その後直ちにグランドに短絡する制御方式とする。この場合も、パルス電圧が印加される前の各プローブはフロート状態とさせておく必要がある。次にNO.2プローブへ、その次にNO.3プローブへと順次制御して行く。最後はNO.nプローブで終了である。その後、被測定プリント基板裏面側に対応するプローブ側に、上記と同様の電圧印加制御を行ないながら検査することになる。この点、スキャン方式の測定とは多少異なる。基板上面のプローブへの電圧印加を全て制御した後、次に裏面側に移って同様に行なうのが望ましい。しかし、それとは別の測定ルールにしたがって制御しても良い。何故なら、スキャンタイプの場合には、プローブが逐次移動を繰り返すので、先ほど述べたように、X軸のある位置での上面側プローブNO.nへの制御が終了した後は、次には下面側へと電圧印加の制御を移す手順を示したが、この測定ルールを設けるほうが、測定データを処理する際好都合であると考えたからである。またこのルールだと、測定スキャン回数を最少にすることができると考えたのもその理由である。しかし、グリッド変換ポイント一括接触方式の場合、プローブが移動しないので、比較的簡単にデータ処理(ソフト対応)は可能となる。以下、そのルールに則った方法について説明を加える。そして、その測定結果の合否判定基準は、後述する測定結果判定アルゴリズムに基づくもので、流れるべき所で電流確認ができること、流れるべきでない所で電流が流れないことである。判定アルゴリズムについては各種パターン例につき後述する。
グリッド変換基板上で、各電路パターンの1点を一時的にグランド扱いとする考えについては、あとで三通りの方法につき詳述する。そのときの共通測定条件は次の(1)および(2)である。
(1)導通テスト時には、グランド扱いポイントはそのままグランド状態に短絡した状態で測定する。
(2)ショート発見テスト時には、そのグランドポイント扱いとした各ポイントを絶縁フロート状態とさせねばならない。
本発明は、上記二つの条件を充足する装置構造と制御方式、それに呼応した仕様のグリッド変換基板に関して工夫し改善したものである。グランド扱いポイントを任意にコントロールして、導通・ショート発見テストをする場合、グリッド変換ポイント一括接触方式では、測定そのものは秒単位以下であって測定時間はほとんど問題にしなくてよいが、スキャン方式では、測定時間が多少犠牲になる反面、装置本体は安価に対応できる。
グリッド変換ポイント一括接触方式の場合、2度の測定となるが、測定時間の増加はないに等しい。その2度の測定・テストの間に、グランド短絡機構を作動させ、短絡状態から解除させるための時間を必要とするが、電気的テスト時間は、極わずかな時間である。上記2度の測定とは、1回目は導通テストであり、2回目はショート発見テストである。ただし、3度のテストをしなければならない場合もある。何故なら、1回のショート発見テストでは、ショートの存在がある場合それを確認できるが、どの電路同士でのショートの発生なのかまでは判断できないからである。次にプローブへの電圧印加制御手順を変えて、2回のショート発見テストをすると、より一層正確な測定結果を得ることができる(ショートが存在する電路間をほぼ特定できる)。それを履行させる場合には、導通テストの分を含めると、トータル3回のテストとなる。しかし、各測定は秒単位以下の測定時間であるので、一括接触方式の場合は、測定時間は問題にならない。いずれにして、もグリッド変換基板は2層基板でほとんど対応できるというメリット、すなわち装置運用費用が低減されるという効果は大きい。
本発明の効果は、主に次の2点である。
(1)相当高密度に実装される基板でも、あるいはBGA−ICが多用される基板でも、グリッド変換基板はほとんどの場合、2層基板で対応が可能となる。その理由は、グリッド変換ポイントを最小限にすることができるからである。グランド扱いポイントについては、グリッド変換基板上でパターン引き回しを考慮することなく、身近な共通グランド部に一時的に導くことができる。BGA−ICの場合、ほとんどの部分はグランド扱いポイントとして処理できる。数百本に及ぶBGA−ICの場合でも、グリッド変換ポイント扱いにする箇所は、数点になる。
(2)検査装置本体の簡素化・小型化が可能である。グリッド変換基板の変換格子は、ほとんど2.54mmピッチで対応できる。従来の考え方によると、全ての測定ポイントはグリッド変換させるため、測定点の多い基板に対応するためには、変換ポイント数が、例えば、2万点以上の場合もある、というように膨大な数になる。従来は、これに対応するためにグリッド変換基板の格子ピッチを細かくしている。また、被測定基板とグリッド変換基板をセッティングさせたうえで、グリッド変換ポイントに接触子を的確に接触させるためには、相当の圧力で変換治具を抑える必要がある。本発明によれば、共通グランド部では大きな圧力を掛けることなくグランドに短絡することは容易である。もちろん、本発明でも、グリッド変換基板の格子ピッチを1.5mm程度にすることは可能である。被測定基板が細密な場合、2.54mmピッチの変換寸法では、グリッド変換ポイントが数量的に問題は無いとしても、パターンをわざわざ遠くまで引き回さねばならないとしたら、逆に引き回し辛いという別の問題点が生じることになる。それ相応の変換ピッチ仕様のグリッド変換基板が存在することは意味のあることである。
以下に、本発明にかかるプリント基板検査装置およびプリント基板検査装置用グリッド変換基板の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1において、符号1は被測定プリント基板、2はグリッド変換基板、3は板状の異方性導電ゴムを示す。図1は、測定時の上記各構成部材の位置関係を示す。被測定プリント基板1の上方および下方にはグリッド変換基板2,2と、これと対をなす異方性導電ゴム3,3が配置されている。被測定プリント基板1は、上下両面からグリッド変換基板2,2で挟み込まれ、上下のグリッド変換基板2,2の上面および下面には異方性導電ゴム3,3が重ねられている。被測定プリント基板1に対して、グリッド変換基板2,2、異方性導電ゴム3,3が位置決めされ、これらの部材相互間の接触が安定に保たれるように、適宜の押圧力が加えられ、検査が行われる。被測定基板1は上下面同時に検査される。上側グリッド変換基板2の上面Aおよび下側グリッド変換基板2の下面Bには、グリッド状(格子状)に変換されたポイントがドット形状でパターン化されて配列されている。上記A面、B面に、プローブ類が接触し、測定がなされる。後述するグランド扱いポイントも、グリッド変換ポイントを邪魔しない状態で、グリッド変換格子点とは別の箇所に、上記A面、B面に導き出され、パターン化されている。この「グランド扱いポイント」という発想が本発明の骨子である。
グリッド変換ポイントに電極子を接触させる方法について説明する。図2はスキャンタイプの概略を示している。これは、本発明の発明者が発明したもので、現在特許出願中(特願2005−034505)の明細書および図面に記載されているものである。当然ながら、この特許出願にかかる発明には、グランド扱いポイントという概念・構想は反映されていない。符号2−1はスキャン可能な複数個のプローブピンを示す。プローブピン2−1は、スキャン方向をX方向とするとこれに垂直なY軸方向に一列状に、例えば200本程度配列されている。符号2−2は平面グランド電極を示している。プローブピン2−1は被検査プリント基板1の上下両面側に配置されている。平面グランド電極2−2は左右・上下に合計4個配置されている。プローブピン2−1と平面グランド電極2−2は対をなしていて、左から右に向かってスキャンするときは、上下のプロ―ピン2−1と左側上下の平面グランド電極2−2がグリッド変換基板2に沿って移動する。右側の平面グランド電極2−2は、プローブピン2−1が右から左に向かってスキャンするときにプローブピン2−1と対をなして移動する。それぞれのスキャンに関係しない平面グランド電極2−2はそれぞれの原点位置で待機する。平面グランド電極2−2の果たす役割は、グリッド変換基板2のグリッド変換ポイントをプローブピン2−1が通過した後、グリッド変換ポイントを、グランドに短絡させるためのものである。往復のスキャン終了時点で、全ての電路の導通とショート発見テストが行なわれる。
図3は、前記グリッド変換基板2のA面およびB面にプローブピンを一括接触させて検査する装置および方法であって、スキャンタイプではない一括接触タイプの例を示す。図3に示す例は、スプリングの弾力によってプローブピン3−2を押圧する剣山タイプのプローブピンブロック治具3−1を使用する例である。剣山タイププローブピンブロック3−1は被検査プリント基板1の上下面側にあり、上下に配置されているグリッド変換基板2のA面およびB面に現れているグリッド変換ポイントに各プローブピン3−2が一括接触する。各剣山タイププローブピンブロック3−1は、例えば、数千本あるいはそれ以上のプローブピン3−2を有する。
以上、グリッド変換基板のグリッド変換ポイントに、直接あるいは間接的に、プローブピンあるいはそれに代わる方法をふくめて(異方性導電ゴム製のアダプタータイプも存在する)、その変換ポイント部分を接触させ、測定・検査する方法の代表例を説明した。本発明は、これら従来の構成に新たに創意工夫を加え、例えばグリッド変換基板を、殆どの場合、2層構成にしても対応できるようにして、グリッド変換基板の製作費を安価にすることができるプリント基板検査装置およびプリント基板検査装置用グリッド変換基板を提供するものである。
本発明の根本的な技術思想である「グランド扱いポイント」について説明する。図4は被検査プリント基板における回路パターンの例を示す。説明を簡略化するために、二つの電路についてのみ表記している。電路Aは単純な2つのポイント間のパターンであり、電路Bは二つの分岐があるパターンである。各測定(検査)ポイントの位置関係は以下の説明には関係ない。従来の考えでは、各電路A,Bの全てのポイントa,b,c,d,eをグリッド変換ポイント扱いにしなければならない。しかし、本発明の発想では、電路Aの一つのポイントaと電路Bの一つのポイントcはグリッド変換の対象とせず、グランド扱いポイントとする。よって、グリッド変換しなければならないポイントは、残りのb,d,eの3つのポイントだけとなる。a,cポイントはグランド扱いにするので、a,cポイントはグリッド変換基板上で回路パターンを引き回す必要がなく、近接した範囲でグランドに落とせばよい。各電路A,Bでは各一つのポイントのみをグランド扱いポイントとさせることができるのであるが、どの測定ポイントをその扱いにするかは、被測定プリント基板の各電路パターンを注視して、つまり、パターンの込み具合、変換ポイント化のためのパターン引き回し難易度、融通性などを考慮し、一番都合の良い所を選ぶことができる。以下にその具体例について説明する。
この「グランド扱いポイント」という考えを適用するためには、検査装置側の構造もそれに対応したものである必要がある。図5、図6に示す例は、図3に示す一括接触方式例を原点して、グランド扱いポイントを任意にグランド短絡させることができるように、機能を追加した例である。図5は、その構造の一例を、図6はこの検査装置に用いるグリッド変換基板の変換面でのパターン例を示す。まず、図6に示すグリッド変換基板2について説明する。図6は、図5に示すグリッド変換基板2の平面図(図5においてZ矢視方向から見た図)で、グリッド変換ポイントと、グランド扱いポイントの位置関係を示す。その白丸で示すポイント6−1は、本出願人による前記先行出願にかかる発明におけるグリッド変換基板の構成と同様のグリッド変換ポイントで、一定間隔の格子状に配列されている。グリッド変換基板2にはまた、グリッド変換ポイント6−1のほかに、黒丸で示すポイント6−2を、グランド扱いポイントとして、一定間隔の格子状に追加して配置している。各グリッド変換ポイント6−1と各グランド扱いポイント6−2は、互いの中間位置に、換言すれば、格子状に配列されたグリッド変換ポイントの4点の重心位置に、更に新たにポイント新設するように配置されている。かかる新設配置ポイントは、単にグリッド変換ポイントを密にしただけのようにも考えることができるが、各グランド扱いポイント6−2は、1本の電気的配線処理によって電気的に一体に接続すればよいので、グリッド変換基板2の構成の簡略化することができる利点があり、このグリッド変換基板2を使用する検査装置も構成が簡単になる利点がある。
図5に示す実施例において、符号5−1はプローブピン支持ブロック、符号5−2はグリッド変換ボード2のグリッド変換ポイントに接触することができるプローブピン、符号5−3はグリッド変換ボード2のグランド扱いポイントに接触することができるグランド短絡ピン、符号5−4はグランド一括短絡アタッチメントをそれぞれ示す。上記プローブピン5−2は、1本1本がワイヤによって検査部に導かれ、測定すなわち電気テストがなされる。各ラグンド短絡ピン5−3の図において上端は、他方の各プローブピン5−2の上端よりも上方に突出している。グランド一括短絡アタッチメント5−4は上下移動が可能で、これを下降させて上記各グランド短絡ピン5−3の上端に接触させることにより、各グランド短絡ピン5−3をグランド一括短絡アタッチメント5−4により一括して電気的に接続させることができる。つまり、グランド一括短絡アタッチメント5−4は上記グランド短絡5−3から任意に離間することができる構造となっている。以上説明した構成と同様の構成が、被検査プリント基板1の下面側にも上下反転した形で配置されるが、図5では図示が省略されている。
各プローブピン5−2および各グランド短絡ピン5−3の図5において下端は、グリッド変換基板2の変換ポイント上面に接触させることができる。各プローブピン5−2および各グランド短絡ピン5−3をグリッド変換基板2に確実に接触させることができるように、グリッド変換基板3とプローブピン5−1およびグランド短絡ピン5−3との間に、異方性導電ゴム3を介在させてもよい。(ここでの異方性導電ゴム3は被測定プリント基板とグリッド変換基板2との間に介在させる目的のものとは別物である。)あるいは、各プローブピン5−2および各グランド短絡ピン5−3をスプリング作動式のピンとしてもよい。すなわち、各プローブピン5−2および各グランド短絡ピン5−3を固定ブロック5−1に固定(埋め込み)し、固定ブロック5−1をグリッド変換基板2に向かって移動させたとき、各プローブピン5−2および各グランド短絡ピン5−3が、スプリング反力を生じることによる押圧力でグリッド変換基板2に当接するようにする。と同時に、この押圧力でもって、異方性導電ゴム3も、被測定基板1に当接する事になる。
上記各グランド短絡ピン5−3は、図5に示すグリッド変換基板2の前記グランド扱いポイント6−2に接触し、このグランド扱いポイント6−2は全て一括してグランドに落とされる(短絡される)ようになっている。このようにして、被検査プリント基板1の各電路の少なくとも一つの検査ポイントは、電気的データ処理上は1点のみの測定ポイント扱いで処理することができる。ただし、グランド扱いポイント6−2は、アタッチメント5−4に接触したときに初めてグランド状態になるのであって、それ以前は、それぞれ絶縁された独立のポイントである。そして、グランド扱いにする測定ポイントについては、最も近くにあるグランド扱いポイント6−2にパターン引き回しによって接続する。ショートテスト時には、アタッチメント5−4は測定に関係しない状態すなわち各グランド短絡ピン5−3とから離間した原点に待機させておく。
以上説明したプリント基板検査装置およびプリント基板検査装置用グリッド変換基板によれば、電気的なハード構成の簡略化、グリッド変換基板の簡略化を図ることができる。ただし、グランドに短絡するグランド短絡ピン5−3を、ブロック治具5−1に、例えば数千本以上も植え込まねばならず、この点を改善できればさらに効果的である。
次に、図5と異なる実施例として、図7に示す例について説明する。この図でも被測定プリント基板の上面検査部についてのみの描写し、下半分の描写は省略している。図7において、符号7−1はスプリング作動式プローブピンを保持する剣山タイプのプローブピン支持ブロック(絶縁体)を示す。このプローブピン支持ブロック7−1は検査装置側に常設される。符号7−2はプローブピン、符号7−3は上記プローブピン支持ブロック7−1に貼り付けられた一体構造のグランド短絡導電体、符号7−4はグランド遮蔽板を示している。被検査プリント基板1には、異方性導電ゴム3、グリッド変換基板2がこの順に重ねられている。グランド短絡導電体7−3は、グリッド変換基板2の各グランド扱いポイントに低接触力で接触し、各グランド扱いポイントをグランドに短絡することができるようにするためのもので、低抵抗の柔らかい材質のものが好ましい。ただし、グランド短絡導電体7−3は、グリッド変換基板2の各グリッド変換ポイントに対応した部分は、丸孔にて中抜きされており、その中抜きの丸孔部分ではグランドに短絡されることはない。つまり、各グリッド変換ポイントに対応した部分は絶縁・独立した状態が保たれる。
図7に示すグランド短絡導電体7−3の平面図(Z矢視から見たもの)を図8に示す。丸孔を除く部分は導電体である。中抜き孔のピッチは、グリッド変換基板2のグランド扱いポイントのピッチと同じである。グランド短絡導電体7−3がプローブピン7−2と接触して、プローブピンの絶縁が損なわれないように、中抜き孔の径はプローブピン7−2の外径より多少大きくなっている。ただし、中抜き孔が大きすぎると、どの部分にパターニングされているかわからないグランド扱いポイントを、確実にグランドに短絡することができないこともありえるので、大きすぎない程度の大きさにする。グランド遮蔽板7−4も、外観上は図8に示すグランド短絡導電体7−3と同じであるが、例えば、グランド遮蔽板7−4は液晶ポリマーシートなどの絶縁材からなるものも考えられる。導通テストでは、グランド遮蔽板7―4は図7のように原点に待機させ、測定には使用しない。ショート発見テストにおいては、グランド遮蔽板7−4はグリッド変換基板2全体を覆うように位置決めされる。プローブピン7−2は、グリッド変換基板2のグリッド変換ポイントに対応するもので、この実施例では、前記実施例におけるグリッド変換基板のグランド扱いポイントに接触するもの(グランド短絡ピン5−3に相当)は有していない。各プローブピン7−2は、グランド短絡導電体7−3に形成された前記丸孔、さらにはグランド遮蔽板7−4に形成された丸孔を通して、グランド短絡導電体7−3の中抜孔の縁に接触することなく、グリッド変換基板2のグリッド変換ポイントにダイレクトに接触する。その際、プローブピン7−2はグランド短絡導電体7−3には接触してはならない。図8のハッチング部に対応する全てのエリアのグリッド変換基板部は、グランド扱いポイント部として扱って良い部分であり、よって、無限に近い数量のグランド扱いポイント処理が可能となる。
導通テスト時も、ショート発見テスト時も、被測定プリント基板1は、上下にグリッド変換基板2が圧接した状態で行なわれ、被測定プリント基板1に対して上下のグリッド変換基板2が安定に接触した状態が保たれるように、グランド短絡導電体7−3は、非常に柔らかい材質を選定し、グリッド変換基板2の変換面に容易に接触できるようにする。よって、グランド遮蔽板7−4が存在しないときには、各グランド扱いポイントは常時グランドに短絡可能な状態である。グランド遮蔽板7−4が介在しない状態でのテスト、すなわち導通テスト時には、グランド扱いポイントは、グランド短絡導電体7−3のどの部分を通じてパターニングされていてもよい。ただし、グランド遮断板7−4が介在した時にはそれぞれ絶縁状態でなければならない。つまりグリッド変換基板2上ではそれぞれ独立した絶縁ポイントとする必要がある。
プローブピン7−2はプローブピン支持ブロック7−1の介在のもとにグランド短絡導電体7−3と一体の治具として組み立てられているが、プローブピン7−2は全てグランド短絡導電体7−3から絶縁されていなければならない。しかも、プ各ローブピン7−2の相互間はできるだけ接近していることが好ましい。グランド短絡導電体7−3はグリッド変換ポイントに対応した位置に孔を形成し、しかも、各プローブピン7−2に接触しない状態で組み付ける。そこで、例えば、各プローブピン7−2の外周を絶縁皮膜でコーティングしてグランド短絡導電体7−3との絶縁を保つようにするのも一案である。プローブピンを絶縁コーティングする部分は、グランド短絡導電体7−3に接触させない目的であるので、部分的なものであっても構わない。
上記グランド短絡導電体7−3をグリッド変換ポイント面に接触させ、各プローブピン7−2とグランド短絡導電体7−3との間に電圧を印加し、導通状態を検査する。これによってわかるのは、導通すべき各プローブピン7−2とグランド短絡導電体7−3との間が正しく導通している場合には、全てのグリッド変換ポイント部では、正常時には、電流発生が認められるのである。ショートテストする場合は、前述のように、グランド遮蔽板7−4をグリッド変換基板2とグランド短絡導電体7−3の間に介在させ、グリッド変換基板2のグランド扱いポイントをグランド短絡導電体7−3から離間させる。上記グランド扱いポイントはグランドからフロート状態となるので、この状態において全グリッド変換ポイントのプローブピン7−2同士での導通をテストする。各独立した全電路間でショートが存在していない、つまり正常な時には、導通してはならないプローブピン7−2間に導通があれば、そのプローブピン間に短絡が生じていることになり、その被測定プリント基板1は不合格と判定する。さらなる詳細測定アルゴリズムについては後述する。
図7に示す実施例によれば、グリッド変換基板2のグリッド変換ポイントに対応する箇所以外は、グリッド変換基板2のほぼ全体を、グランド短絡導電体7−3によってグランド扱いにすることができる(図8のハッチンング部分)。したがって、グランド扱いをさせる測定ポイントは、数限りなく存在していても良いということになる。つまり、図1に示すグリッド変換基板2のA面あるいはB面に存在するグランド扱いポイントに対しては、被測定プリント基板1の測定ポイント位置と形状をそのまま直接、グリッド変換基板2のグランド扱いポイントにすればよい。但しプローブピン7−2に関わるパターニング対象部分(図8の白丸部分)は、単純にグランド扱いとすることが出来ない為、少し配慮が必要である。この説明は詳細後述する。特に、BGA―ICのパターン処理時に大きな効果を生む。BGA−ICのパターン部の各測定点は、ほとんどグランド扱いポイントにして良い。BGA−ICのパターン部分でも、例外的に、グランド扱いにしてはならない箇所もあるので、それを確認する必要がある。その例外的に扱うべき所は、Vcc部あるいはグランド接続部(被測定基板そのものの設計上のグランド接続部)である。これらの箇所はBGAパターン部に数点ずつ存在している場合があり、それを一括してグランドポイント扱いにすることはできないので、その場合の各点は、1点ずつグリッド変換ポイント扱いにする必要がある。その他のI/O部分全てはほとんどグランド扱いポイントとして良い。従来のグリッド変換基板が多層化する要因は、上記BGA−ICパターン部分であった。図7に示す本発明の実施例によれば、グリッド変換基板の構成を単純化して、例えば、殆どの場合、2層にすることも可能で、大きな効果を得ることができる。
BGA−IC部のパターンにおいて、グランド変換ポイント扱いにしても良い部分は、グランド短絡導電体7−3に接触する部分、すなわち、グランドに短絡する部分であるから、被測定プリント基板1上の測定ポイントパターン原形そのままを、グリッド変換ポイントの変換側(図1のA,B面)に導き出せば良い。ただ、ある特殊な点では、プローブピン7−2そのものが接触するような位置関係になることもありえる。その場合には、導電体7−3の代わりにプローブピン7−2によって上記特殊な点をグランドに短絡するようにすれば良い。しかしながら、さらに配慮が必要なポイントがある。つまり、一括してグランドに落とすための上記グランド短絡導電体7−3、あるいはプローブピン7−2のどちらにも、安定した接触ができなくなってしまう位置関係のポイントが存在する可能性がある。この場合も、グランド扱いポイントの例外的パターンニングとして捉え、これに対応する構成にすることが好ましい。この構成について次に説明する。
図9は、図7に示すグランド短絡導電体7−3の中抜き孔(A孔)部分を拡大して示したものである。被測定基板1のBGA−IC部のパターン部分を、そのままグランド扱いポイントとしてグリッド変換面に直接同形状パターンとして導き出したとすると、上記ポイントにプローブピンが不安定な状態で接触するか、接触できないことがありえる。その例を説明する。図9において、円形の孔Aはプローブピンがグランド短絡導電体7−3に接触しないようにするための中抜き孔である。プローブピンのスリーブ外径は1mm程度であり、孔Aの径をプローブピンのスリーブ外径に近い寸法にしたとする。孔Aの中心のハッチングを施した円形の部分aは、径0.3mm程度の大きさで、プローブピンの可動子が接触する部分である。よって、図9において、孔A内の符号bで示す二重丸の部分のような位置関係で、孔A内にグランド扱いポイントが存在するとすれば、このポイントとこれに接触すべきプローブピンとの接触関係は不安定(グランド短絡導電体7−3でもプローブピン7−2からでも完全なグランド短絡が得られない場合がある)になることもある。そこで、孔Aの部分については、グリッド変換基板1のA面上でのパターン引き回しに配慮をするとよい。例えば、符号cで示すように、孔Aの範囲外にポイントを形成して上記ポイントbと電気的に一体に接続する。あるいは符号bで示すポイントから一体に延びたパターンを形成してこのパターンにグランド短絡導電体7−3が接触するようにしてもよい。このようにすれば、グランド扱いポイントがグランド短絡導電体7−3によって安定してグランドに短絡される。0.4mmピッチのBGA−ICが多用されるような場合、このようなケースが生じることがありえる。ショート発見テストをするに当たり、図7に示すグランド遮蔽板7−4を介在させた場合には、各グランド扱いポイントはそれぞれ独立した絶縁状態が保たれるようにパターンニングされる必要がある。
図10は、BGA−ICの実装パターン部分を表している。このパターンの中で、c点とそれに繋がっているc´点、あるいはd点とそれに繋がっているd´点は、一概にグランド扱いポイントにしては不具合が生じる部分である。仮に、c、c´点が元々被測定基板1のグランドパターンであるとすると、このポイントは被測定基板1上のどこか複数の箇所で、グランドそのものに繋がっているからである。また、d,d´点がICのVccポイントとすると、やはりこれらの点は、被測定基板ではお互いに結線されているので、お互いにつながっていることを確認するためにも、グランド扱いポイントとすることはできないからである。よって正規のグリッド変換ポイントとしての扱いにしなければならない。その他の白抜きの円で示したポイントは、グランド扱いが可能な部分である。この部分はピッチ(例えばピッチ0.4mm)が細かいので、独立したグリッド変換ポイントに対応させるのは大変である。この部分をグランド扱いポイント対象として、グリッド変換基板2の変換側面へ直接導き出せば、扱いは簡単になる。
図7の実施例におけるグランド遮蔽板7−4の形態は、図8に示す形態イメージ図としても適用可能である。グリッド変換ポイントに対応した部分が孔Aで中抜きされており、その孔を通してプローブピンがグリッド変換ポイントに接触することができるようにしてある。(グランド遮蔽板としての8図に示したハッチング部は、絶縁物としての材質部そのものであるが、図7の符合7−3の場合は、ハッチング部は導電体である。)よって、グランド扱いポイントの部分には遮蔽板が介在することになるため、グランド扱いポイントはフロート状態になり、グリッド変換ポイント間のショート発見テストを行なうことができる。グランド遮蔽板7−4は、板厚ができるだけ薄く、かつ、屈曲しにくい、所謂腰のあるものであることが望ましい。例えば、液晶ポリマーシートはそれに適した材料の一つである。厚みはなるべく薄いほうが良い。何故なら、ショート発見テスト時には、プローブピン7−2が、遮蔽板7−4が介在する厚みを無視して、グリッド変換基板2の測定ポイントに接触しなければならないからである。よって、プローブピン7−2はある程度のギャップを吸収できる接触ストロークを保有しているものが好ましい。例えば、プローブピン支持ブロック7−1によって、プローブピンをグリッド変換基板2に向かって突出する向きに付勢して支持した、スプリング作動型のプローブピンにするとよい。
ショート発見テストをする際に、グランド扱いポイントをグランドに短絡させないようにするための手段として、グランド遮蔽板7−4を介在させる案に代わる第3の案として、次のような案もある。検査装置の概略機構は図7に示すものとほぼ同じ構成でよいが、遮蔽板7−4は用いない。グリッド変換基板2の変換側面、つまりA面あるいはB面と、導電体7−3とを接触させ、また接触を解除することができればよい。図7に示す剣山タイプのプローブピン支持ブロック7−1が、グリッド変換基板2の変換ポイントに接触するときには、検査装置の上から下降(あるいは下から上昇)して来るが、下降ストロークを2段ストローク構造にするようにする。そして、1段目のストロークのときは、プローブピン7−2そのものは、グリッド変換ポイントに接触することができるが、導電体7−3とグリッド変換基板2のグリッド変換ポイント面とは、空間的間隙が保たれるようにする。このとき、グリッド変換基板2のグランド扱いポイントはフロート状態である。プローブピン支持ブロック7−1が2段目のストロークでさらに下降(上昇)すると、このとき初めて、グリッド変換面と、グランド短絡導電体7−3とが接触する。このとき、プローブピン7−2はグリッド変換ポイントに接触した状態が保たれるが、プローブピン7−2はスプリング作動型であることから、下降距離が多くなった分のストロークをスプリングの付勢によって吸収することができる。
以上述べてきた図5あるいは図7に示す実施例以外に、スキャン方式による検査手法も存在する。ただし、図5に示す実施例の構造では、一括グランド短絡アタッチメント5−4、あるいはそれに付随した機構部が不適切な位置関係として存在する事になるため、グリッド変換基板2の変換面に接触するプローブピン5−2部分をスキャンすることは難しい。図7に示す実施例でも、プローブピンに結線されるワイヤがじゃまになり、その付近ではスキャンすることは難しい。しかし、図5に示す実施例における変換ポイント接触プローブピン5−2に結線されるワイヤ、あるいは図7のプローブピン7−2に結線されるワイヤを、プローブピン5−2、7−2から少し離れた位置に引き出してスキャンできる構造にすれば、プローブスキャン構想を実現することができる。例えば、図7に示すスキャン機構7−5を設けるとことにより、スキャン方式を実現できる。
図7に示すスキャン機構7−5部分はプローブピン7−2に結線されている結線ワイヤをダイレクトにテスター部に繋ぎ込むのではなく、結線バッファー部分を設けるようにし、その部分に於いてスキャンができる構造とした例である。この例ではN本のプローブがスキャンする構造とした例である。N本のプローブが同時にスキャン開始する方法でも、あるいはA軸のスキャンが完了した後、次のスキャン順番としてB軸がスキャンするような順番方式でも良い。スキャン機構部への結線手順・ルールはプローブピン7−2を電圧制御する方式に則したものである必要がある。またこのスキャン方式を採用する場合にも、グランド扱いポイント構想を反映させる訳であるからして、当然グランド遮蔽板7−4、あるいは、それと同じ目的の機能構造のものが必要となる。又符合7−6はプローブがスキャンする場合に、その後ろをプローブに追従する形で、スキャンポイントを順次グランドに短絡させる目的のグランド短絡アタッチメントである。このものの目的はショートテスト時にのみ役目を負うもので、導通テスト時には原点待機している。ショート発見テスト時は、スキャンプローブが電圧印加状態になって通過した後を、即そのポイントをグランド短絡させる事により、全電路に関して、異電路間同士の絶縁を確認する為の役目を負うものである。ショートが全く存在しない時には、異電路間では一切電流は流れない。
次に、テストアルゴリズムについて述べる。装置実施例として図7の機構にて説明する。図11において、電路Aは2つのポイントa−b間をつなぐ単純な電路である。a点をグリッド扱いポイント、b点をグリッド変換ポイントとする。電路Bは分岐のある電路であり、電路Cはスルーホール(S)を通して基板の表裏にパターンが形成されているパターンである。電路B,Cにおいて、c,h点を選定してこれをグランド扱いポイントとし、その他の点は全てグリッド変換ポイントであるとする。図11では、グランド扱いとしたa、c、h点を二重丸で示した。グランド扱いポイントのX方向の位置関係は測定判定結果には関わってこないので、無視する。その他のグリッド変換ポイントのX方向の位置関係については、左側からi、g、b、d、j、e、fの順番に少しずつ離れた位置的関係にあるとする。被検査プリント基板1の裏面側に存在するグリッド変換ポイントも、表裏関係なくX方向の位置を判断する。また同じX方向位置のポイントは、プローブに電圧を印加するタイミングの早い方を優先して、若い番号の位付けとする。このことを前提に測定結果判定アルゴリズムを展開する。(測定の際の測定位置関係は、グリッド変換後の変換基板上にての位置関係が、判断基準となる。)
まず、導通テストから説明する。グリッド変換ポイントに接触して測定に関わってくるプローブピンの接触手法は、スキャン方式であれ、一括接触方式であれ、グリッド変換ポイント扱いにした部分には順次パルス電圧が印加されるタイミングがあるので、全て電路は、グランド扱いポイントとの間での閉回路が形成されることになる。そのとき、グリッド変換基板2によるグリッド変換ポイントでは、電流の発生が確認できなければならない。電流確認ができなければ、断線が生じていることになる。このとき、グランド遮蔽板7−4はグリッド変換基板2に関わらないかたちで、検査装置から離れた位置(原点)に待機させておくものとする。又2段ストローク機構により、グランド扱いポイントのグランド短絡をコントロールする方式では、全ストローク距離に圧接した状態でテストされる。つまり、グリッド変換基板2のグランド扱いポイントはグランドに短絡している。このことは、一括接触方式でも、スキャン方式でも同じである。
次に、同じく図7の機構を想定してショート発見テストについて説明する。この時には、グランド扱いポイントとしてのa、c、h点はグランド遮蔽板7−4を介在させる事により、測定に関わらないフロート状態になっている。(別方式の場合にもこの状態にさせる。)グリッド変換ポイントに対しての接触測定方式は、スキャンタイプの場合も、あるいは一括接触方式の場合でも、グリッド変換ポイントには、先に述べたパルス電圧印加と直ちにグランドに短絡する制御を行なう。一括接触方式では、この制御は問題ないが、スキャン方式の場合は、グリッド変換ポイント部をプローブスキャンが通過したあとの全変換ポイントは、電気制御によりグランド化を維持させたままには出来ない。よって、メカ的な機構により、プローブに追従する形で、グランドに短絡・維持する機構が必要となる(スキャンプローブに追従するグランド短絡機構7−6)。A電路の場合、電路間においてショートが存在していなければ、b点には電流発生が認められるタイミングはない。分岐した電路例であるB電路では、左上端方向からプローブにパルス電圧を掛けて行く場合、ある時間が経たタイミング以降では、d点がグランドに短絡しているため、e,f点では電流発生が確認される。これが正常時の測定結果である。e,f点は同一電路なので当然電流が発生する。次に、右上端から電圧を印加する。この場合は、e、d点に電流発生が認められる。やはりこれも正常時の測定結果である。しかしA電路とB電路の間でどこかにショートが存在していたとすると、プローブへの電圧印加制御が左右どちら側からの場合に、A電路のb点に電流が発生するタイミングが生じる。図11の場合は、b点は、B電路のd、e、f点より左側に位置しているので、右上端方向からの電圧印加制御方式のときに、電流発生が認められる。同時にプローブへの左上端からの電圧印加制御時にd点でも電流発生が認められる。本来ショートが存在していないときの現象である。この二つの現象から、この二つ線間のショートの存在を発見することができる。
次に、図11を用いて、B電路とC電路との間でショートが存在している場合について説明する。論理的には上述したA,B電路間のショートが存在するときの説明と一緒であるが、同様の手順で説明する。プローブへの左上端からの電圧制御時には、B電路のd点で電流発生が認められる。ショートが存在する証拠である。つまりショートが存在することにより、g−d電路が存在することになるからである(g点がグランド側、d点が電圧印加側)。C電路のg、i点に電流が発生するタイミングは一概に説明できない。なぜなら、グリッド変換ポイントに対してのプローブ接触方式により、スキャン方式と一括接触方式に相違が出るのである。スキャン方式の場合のプローブへの電圧印加制御は、あるX方向の位置で基板上面から始め、次に基板下面に移り、X位置が移動するたびに同じ事を繰り返す方法を提案してきたが、一括接触方式の場合は、グリッド変換基板の上面(図1のA表示面)全域につき電圧印加制御した後、B面へ電圧印加制御を移す方式であった。つまり、電圧印加制御方式より、それぞれのポイントに対して、電圧が印加されるタイミングが異なる結果である。
C電路の測定結果について考察すると、一括接触方式の場合で、左上端部からの電圧制御時とし、且つ変換A面の次にB面の順番で電圧制御すると、g点では電流発生は認められない。i、j点では電流が発生する。これは正常時の測定結果と同じである。次に右上端からの電圧印加制御時には、g点で電流発生が認められる。これはショートが存在する証拠で、g点とB電路のd、e、f点と電路が繋がっていることである。その理由は、C電路自体が備えるh、i、jのどの点もグランドに短絡していない筈のときの測定結果からである。その後、i、j点にも電流発生が認められるが、これは正常時と同じ結果である。次にスキャン方式の場合のC電路について、測定結果を考察する。左から右方向にスキャンさせる場合、i点では電流発生は無い。g、j点では電流が発生する。次に右から左方向のスキャン時には、j点で電流が発生する。これはショートが存在している証である。j点とB電路のe点あるいはf点との間のショートによる電路形成が存在しているからである。g、i点の電流発生は正常時と同じである。スキャン時の電路Bの測定結果は、グリッド変換ポイント一括接触方式の時と同じである。
図12は、二つの電路間でショートが存在し、かつ片方の電路には断線が生じている特殊な場合の例である。断線が生じている点をe点、ショートしている点をf点とする。図12では、スルーホールによって電路が被検査プリント基板1の裏面側に及んでいないので、スキャン方式であれ、一括接触方式であれ、測定結果は、接触方式に無関係であるが、ここでは一括接触方式とする。a点とc点をグランド扱いポイントとすると、導通テストでは、b点では電流発生が認められないので、断線を発見できる。d点では正常時のように電流発生を確認できる。しかし、ショートテストでは、e点で断線が存在するために、b点あるいはdで、電流が流れない。これは正常時の結果と同じになり、ショート発見はできない。この場合、b点、d点のX方向の位置に関係なく、電圧印加制御方向が左上端からの場合も、右上端からの場合も同じ結果である。次に、b点とd点をグランド扱いポイントとすると、a点よりc点がX方向の位置的に左にあるので、導通テスト時で、しかも、左上端よりの電圧印加制御時に、a点に電流が流れる。ショートが存在する証となる(導通発見テストでショートが発見できる)。また、右上端よりの電圧印加制御時には、今度は、c点にて電流が流れる。やはりショートが存在する証である。ショート発見テストでは、電圧印加制御方向によるが、a点でも、c点でも電流が流れるタイミングがある。本来生じてはならない現象で、ショートが存在する証である。この場合、e点での断線は発見できない。e点の断線とf点の発生位置関係が逆になった場合は、測定結果は又別のものになる。
少し複雑にした電路に関して同じように考察する。図13に示す電路の例において、A電路はa、b、c、dの4点が図の様に分岐した一つの電路とする。もう一つのB電路は、2点e−f間の単純な電路とする。グランド扱いする点はa、eとし、その他のグリッド変換ポイントとしての各点のX方向の位置関係は、左からb、c、d、fの順番になっているとする。また、この二つの電路間同士で、g点ではショートが、h点では断線があるとする。この図13の場合、導通テストでは、d点にて電流が流れないことによって、h点の断線を判断することができる。b、c、f点では、正常な回路の測定結果と同じく、電流が流れる。
次に、ショート発見テストにおいては、左上端からの電圧印加制御時は、電流が流れる点は、c、f点である。d点では本来理論的には電流が流れることを確認できなければならないし、f点では電流が流れてはならない。ショートと断線が存在している結果がこのような測定結果をもたらしたことになる。次に同じくショート発見テストで、右上端からの電圧制御時の測定結果の考察をする。電流が流れることを確認できる点は、b、c点である。d、f点では流れない。これは左上端からの電圧制御時の測定の場合と異なった結果で、この右上端からの電圧制御時の測定結果は、全く正常時のパターニング結果となる。この電圧制御方向の違いによる測定結果はショートと断線が混在する結果である。A電路のb、c点をグランド扱いにする考察はa点の場合とほぼ同じである。
次に同じく図13にてd点とe点をグランド扱いにしたとし、導通確認テストをするものとすると、a、b、c、f点では電流が流れることを確認でき、全く正常な時の測定結果と同じになり、h点での断線は発見できない。しかし、左上端よりの電圧制御手順によるショート発見テスト時には、本来電流発生が生じてはならないf点で、また、右上端からの電圧制御時には、やはり電流発生が認められてはならないc点でも、理論的に異なる測定が生じることになる。これはg点でのショートの存在が起因しているからである。f点のグランド扱いは、e点の場合と同じであるから考察は省略する。このように、断線とショートが重なって存在する場合は、グランド扱いするポイントと、欠陥が発生している場所の位置関係により、得られる結果は異なる場合がある。
実際に各測定ポイントをグリッド変換する際、どの測定ポイントをグランド扱いにし、その他をグリッド変換ポイントにすべきであるかという検討点が生じるかもしれない。この問題はごく限られた場合、すなわち、二つの電路間に断線とショートが存在する場合にのみ生じるのであって、どの部分をグランド扱いポイントに設定したとしても、断線またはショートのどちらかの欠陥は必ず発見できるので、不良品を合格扱いにしてしまうとことはない。検査で不合格と判断された場合に、若し簡単に欠陥箇所をリペアーできたとし、これを再びテストをすれば、そのときまた別の不具合があればこれを発見することができるので、不良品を出荷してしまうという心配は皆無となる。よって、グランド扱いポイントとする箇所は、被測定プリント基板のパターン上でそうすることが良いと判断できるところを、グランド扱いポイントとすれば良い。
ここで測定アルゴリズムのまとめをする。まず始めに導通テストについて述べる。グリッド変換したポイント全ての箇所で、電流が流れることを確認できなければならない。断線が生じているときには、電流が流れることを確認することができない。これはスキャン方式でも、一括接触方式でも同じである。スキャン方式の場合は、片道スキャンで確認できる。一括接触方式においても、測定ポイントに対しての電圧印加制御は一回で完了できる。制御方向は、左上端方向からでも、右上端方向からでも、どちらからでも良い。
次にショート発見テストについて述べる。この場合、少し複雑な判定理論を展開する必要がある。グリッド変換ポイント一括接触方式について解説する。まずは、グランド扱いポイントとする部分を除外して、各電路のグリッド変換後のパターン位置を認識する必要がある。そして左上端からの電圧印加制御時には、各電路を単独に見て、最左端・最上端ポイントに注視する。このポイントに電流が流れることを確認した場合には、その電路は他の電路との間でショートが存在していることになる。また右上端からの電圧印加制御時には、最右端・最上端のポイントにて、電流が流れた場合は、やはり他の電路との間でショートが存在している証となる。ショートが存在している箇所の特定(相互の電路確認)には、往復の電圧印加制御による測定結果を、整理・分析する必要がある。ただし、複数の箇所で生じている場合は、完全に特定できない可能性はある。また特殊な例として、各電路間でショートと断線が混在しているような場合、必ずしも両方の不良内容を特定することができない場合もある。回路間でのショート発生場所・発生状況により異なった判断結果となる場合がある。ただし、必ずどちらかの不良は発見できるので、不良品を良品と判断してしまう結果にはならない。被測定プリント基板の上面、あるいは下面に独立してパターンニングされている電路については、以上のアルゴリズムによって判定すると良い。スルーホールを介して被検査プリント基板の上下面に及んでいる電路の場合は、基板上面に位置しているパターンポイントのどれかが、最左端・最上端あるいは最右端・最上端ポイントであるのかを見極めれば良い。基板上面のポイントが一点のみで、しかも、グランド扱いポイントとした場合は、基板裏面側のパターンポイントを注視して、最左端・最上端あるいは最右端・最上端ポイントとして判断すれば良い。スキャン方式の場合は、最左端・最右端等のポイントとしての認識・判断は、測定ポイントへの電圧印加制御順番を比較して、パルス電圧が印加されるタイミングが早い方が、それに当たると判断すれば良い。この考えは、一括接触式であれ、スキャン方式であれ、共通した考えである。
測定結果を合否判定する場合、それぞれのテスト条件時において、グリッド変換ポイントにおける電流の発生の有無を、電流センサーにより取り出し、理論的に予測されるデータと比較をして、その相違を確認すれば良い。データ処理の仕方は、アナログ的な比較、例えば波形の比較よって行い、あるいはデジタル的に、例えば、1または0の数列的な処理が考えられる。