JP2007162130A - 暗中で使用される金属用の防食被膜、暗中での金属の防食方法および複合被膜 - Google Patents

暗中で使用される金属用の防食被膜、暗中での金属の防食方法および複合被膜 Download PDF

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Abstract

【課題】暗中において、犠牲アノード金属の犠牲溶出による防食効果の低下を抑制し、長期間にわたって犠牲防食効果を発揮できるような防食被膜を提供する。
【解決手段】犠牲アノード金属および半導電性酸化物微粒子を含む原料から形成されたことを特徴とする、暗中で使用される金属1用の防食被膜2を提供する。この防食被膜2は、塗布法、メッキ法によって形成できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光が照射されないような暗中で使用される金属用の防食被膜、暗中での金属の防食方法および複合被膜に関するものである。
金属、特に炭素鋼は、非常に優れた構造材料であるが、錆による劣化という短所をもつ。この炭素鋼の防食方法には大きく分けて、物理的防食方法と電気化学的方法の二種類の方法が挙げられる。物理的防食方法は、鋼材表面を化学的に不活性な皮膜で覆うことによって、腐食の要因となる外界の酸素や水を遮断するものである。代表的なものとしては、クロムメッキ、リン酸塩処理、化学的不動態化処理、耐候性鋼などが挙げられる。また、化学的処理ではないが鋼材表面にエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の有機系塗料で被覆形成した保護塗膜も酸素、水や塩化物イオンを遮断する作用があり、有機系塗膜による鋼材の腐食抑制対策の一つである。
しかし、これらの物理的防食方法では、さまざまな要因で防食皮膜に傷や剥がれが発生することにより、下地鋼材にまで水や酸素が浸入してしまうと、そこを起点とした激しい腐食が発生するという欠点がある。
一方、電気化学的防食方法は、鋼材表面にメッキ金属を被覆することでメッキ金属がアノードとして機能し、下地鋼材を電気化学的に防食するというものであり、一般的にカソード防食と呼ばれている。代表的なものとしては、工場内で行うスズメッキや亜鉛メッキ等が挙げられる。また、現場では、カソード防食工法の代表である金属亜鉛粉末を含んだジンクリッチペイント塗装が主流である。
亜鉛メッキの電気化学的防食方法の防食機構について述べる。固定化された亜鉛のイオン化傾向は鋼材のイオン化傾向よりも大きい。亜鉛メッキ鋼と電解液とが接触した場合に、先に亜鉛が溶解するとともに、電子が鋼材に注入され、鋼材の浸漬電位が急激に「卑の方向」へ移行することで、鋼材のカソード防食が成り立っている。犠牲防食作用が生じている時の鋼材の浸漬電位を飽和塩化銀電極で表すと、−730mV(vs.Ag/AgCl)以下を保持していることになる。ジンクリッチ塗料は例えば特許文献1に記載されている。
特開平7−133442
また、光触媒である酸化チタンを利用した光カソード防食が開示されている(特許文献2、3、4、5)
特開2001−247985 特開2001−262379 特開2002−69677 特開2002−273238
しかしながら、電気化学的防食方法では、物理的防食方法のような傷などによる皮膜の剥がれから、下地鋼材が溶出して腐食が起こらないかわりに、亜鉛が犠牲溶出してしまう。このため、亜鉛量が減少してくると、防食効果も次第に弱まる。特に、塩化物イオンが多く存在する海岸沿いの環境では、その防食寿命が著しく短くなるという欠点があった。
このため、本発明者は、特許文献6において、犠牲アノード金属および光触媒を含有する金属用の防食塗料を開示した。
特開2006−143815
しかし、光のほとんど射さない屋内の機械設備や、地下構築物の表面の電気化学的防食方法については、やはり亜鉛の犠牲溶出によって防食効果が早期に失われるという問題があり、解決が要望されていた。
本発明の課題は、暗中において、犠牲アノード金属の犠牲溶出による防食効果の低下を抑制し、長期間にわたって犠牲防食効果を発揮できるような防食被膜を提供することである。
本発明は、犠牲アノード金属および半導電性酸化物微粒子を含む原料から形成されたことを特徴とする、暗中で使用される金属用の防食被膜に係るものである。
また、本発明は、前記防食被膜を金属上に形成し、この金属を暗中で使用することを特徴とする、暗中での金属の防食方法に係るものである。
また、本発明は、前記防食被膜、およびこの防食被膜上に形成されている表面被膜を備えていることを特徴とする、複合被膜に係るものである。
また、本発明は、犠牲アノード金属および半導電性酸化物微粒子を含む原料を金属上に適用することによって、防食被膜を形成することを特徴とする、暗中で使用される金属用の防食被膜の製造方法に係るものである。
本発明によれば、金属上の被膜に、犠牲アノード金属および半導電性酸化物微粒子を含有させることによって、暗中において、犠牲アノード金属単独の場合と比べて、所望の防錆機能を長期間に渡って発揮し、鋼材の腐食を抑制することができる。半導電性酸化物微粒子は、多くが光照射下においては光触媒機能を有するものである。しかし本発明は、光を照射しない暗中において、半導電性酸化物微粒子が犠牲アノード金属の被膜からの犠牲溶出を遅らせ、防食期間を著しく延長するという、驚くべき作用効果の発見に基づいてる。この作用効果のメカニズムはいまだ詳細には判明しておらず、パイオニア的な発明であるといえる。
本発明において「暗中」とは、光が実質的に照射されないような環境下で防食被膜を適用することを意味している。具体的には全く光の届かない鋼構造物の内部(タンク内部や鋼管内部など)の他に、1日の日射量が年間平均して0.5MJ/m2以下(建物の北面や構造物の入組んだ内部または下側など)の直接的な日照の無い環境を意味する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る複合被膜4を金属1上に形成した状態を模式的に示す図である。金属体1上に、本発明の防食塗膜2および上側被膜3が順次形成されている。また、図1(b)に示すように、複合被膜4上に更に表面被膜13を形成することができる。表面被膜13は二層以上に分けることもできる。
ここで、防食被膜2の形成方法は特に限定されず、以下の方法が好ましい。
(1) 犠牲アノード金属および半導電性酸化物微粒子を含有する防食塗料の塗布によって形成された防食塗膜。
(2) 犠牲アノード金属と犠牲アノード金属化合物との少なくとも一方および半導電性酸化物微粒子を含有するめっき液によって形成された防食めっき被膜。
防食塗膜について述べる。
金属1の塗布面に錆が発生している場合には、錆の程度によって、サンドブラスト、サンダーケレン等により除錆を行う。次いで、金属1上に、半導電性酸化物微粒子および犠牲アノード金属を含む塗料をローラー、刷毛、スプレー方式によって塗布して防食塗膜2が形成される。なお、好ましくは、塗料を乾燥した後、乾燥塗膜が多孔質になる無機系塗料をローラー、刷毛、スプレー方式によって塗布して上側被膜3が形成される。
本発明の防食塗料は、犠牲アノード金属と半導電性酸化物微粒子を含有する塗料である。この塗料のバインダーは限定されないが、耐熱性を重視する場合は、無機系バインダーが好ましい。また、一般の鋼材の防食を目的とする場合には、有機系バインダー、無機系バインダー、有機系−無機系ハイブリッド系バインダーを使用できる。有機系塗料を使用すると、防食塗膜2のアンカー効果を発揮させるためのサンドブラスト処理が不要となるので、この点では有機系バインダーが望ましい。
バインダーの種類は特に限定されないが、特に好ましくは以下を例示できる。
(無機系バインダー)
無機系バインダーとしては水溶性珪酸塩、変性水溶液珪酸塩あるいはコロイダルシリカの熱処理物が挙げられる。
水溶性珪酸塩としては、一般式MO・xSiO・yHOで表され、Mはナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属、式中のx及びyは整数を示し、具体的な化合物としては例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等の珪酸アルカリ金属塩の一種または二種以上が挙げられる。また、水溶性珪酸塩をバインダーとして用いた防食塗膜2の安定性の耐水性を向上させるために、ホウ素や燐酸化合物を添加することができる。
変性水溶性珪酸塩としては、前記水溶性珪酸塩をアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、ジルコニウム、バナジウムから選ばれる金属の酸化物、水酸化物、弗化物、珪弗化物の1種またはは2種以上で変性させたもの、或いは珪弗化ナトリウム、トリ珪弗化亜鉛酸カリウム、フルオロアルミニウム錯塩、フルオロ亜鉛錯塩等で変性させたもの(特開昭53−18636号参照)等が挙げられる。
金属酸化物ゾルの熱処理物であるコロイダルシリカを利用する場合には、利用可能な他の金属酸化物ゾルとしては、ケイ素、アルミニウム、鉄、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ニオブ、タンタル、タングステン、スズ、亜鉛、セリウムなどの金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物は、一種類を単独で使用でき、あるいは複数種類の金属酸化物の混合ゾルを用いても良い。複数の金属成分を含む複合酸化物のゾルも利用できる。金属酸化物ゾルの分散媒は限定されないが、水が好ましい。
これらの無機系バインダー(水溶性珪酸塩、変性水溶液珪酸塩、コロイダルシリカ)の分散媒は、水溶性アルコールと水との混合溶媒であっても良い。成分としては、炭素数1〜3のアルコール(メタノール、エタノール、変性アルコール、1‐プロパノール、2‐プロパノール)を例示できる。このアルコールは単独で使用でき、あるいは複数種類を混合して使用できる。更に、他の成分としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素数は1〜3)を含んでいてよい。これはアルコールよりも沸点が高いため、レベリング性の向上や蒸発速度の調整を行うことが可能となる。また、アルキル基の炭素数を1〜3とすることによって、膜の金属1への濡れ性を低下させることなく、防食塗膜2を得ることができる。
またこれらの無機系バインダー(水溶性珪酸塩、変性水溶液珪酸塩、コロイダルシリカ)は、他の水溶性溶剤を含んでいてよい。他の水溶性溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、アセトン、ジメチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル・アセテートなどのエステル類、アセト二トリル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
こうした無機系バインダーは、必要により、界面活性剤、増粘剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、キレート剤、消泡剤などを含有してよい。
(有機系バインダー)
エポキシ系樹脂、エポキシエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アルキッド樹脂が挙げられる。
(有機−無機ハイドリッド系バインダー)
有機−無機ハイブリッド系バインダーとは有機成分と無機成分を含有する樹脂を意味する。
有機−無機ハイブリッド系バインダーとしては、前記水溶性珪酸塩、アルキルシリケート、アルコキシシリケート、カップリング剤などが挙げられる。
水溶性珪酸塩としては、前記したように一般式MO・xSiO・yHOで表され、式中のx及びyは整数を示し、MがN(COH)、N(CHOH)、N(COH)、C(NHNHを示し、具体的な化合物としては例えば、珪酸トリエタノールアミン、珪酸テトラメタノールアンモニウム、珪酸テトラエタノールアンモニウムなどが挙げられる。
また無機系バインダー(水溶性珪酸塩、変性水溶性珪酸塩、コロイダルシリカ)の耐候性を向上するために、これらの無機系バインダーに耐候性樹脂のエマルジョン成分を含有することが出来る。耐候性樹脂のエマルジョンは、表面に有機物を有する基材と強固に密着し、耐候性を有するものであれば特に制限はない。具体例として、アクリルエマルジョン、アクリルシリコーンエマルジョン(シリコーンアクリルエマルジョン)、フッ素樹脂エマルジョンなどが挙げられる。
併せて、沸点が100℃以上である常温で液体の有機化合物を含有させることで、塗膜形成時に常温でエマルジョン状態から不定形高分子の状態に変化させるので、塗膜の結着性が向上する。
沸点が100℃以上である常温で液体の有機化合物は、大部分の水分が気化した後も塗膜中に残存し、エマルジョンの融合を促進させる機能をもつものであり、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、などのエチレン系グリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、などのプロピレン系グリコールエーテル類、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、n−ペンシルプロピオネ−ト、フタル酸ジブチルなどのエステル類などが挙げられる。特にエステル類の一種である2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートは、エマルジョンへの浸透能力が高いこと、最低造膜温度の低下効果が高いことから、その使用は好ましい。
アルキルシリケートとしては、一般式;SiR又はSiXRで表され、式中のR、Rはアルキル基を示し、Xはアルコキシ基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的な化合物として、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラプロピルシリケート、テトラブチルシリケート等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、一般式;Si(OR)又はSiX(OR)、SiR(OR)で表され、式中のRはアルキル基を示し、Xはビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的な化合物として、例えば、テトラメチルキシシリケート、テトラエトキシシリケート、テトラプロポキシシリケート、テトラブトキシシリケート等が挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートや、テトラオクチルビス(ジドデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタン系カップリング剤 、アルミニウム系カップリング剤 、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。
本発明の乾燥防食被膜中における各成分の重量比率は限定されないが、好ましくは以下のとおりである。
犠牲アノード金属とバインダーの合計重量を100重量部とするとき、
犠牲アノード金属: 50〜90重量部(特に好ましくは60〜90重量部)
バインダー: 10〜50重量部(特に好ましくは10〜40重量部)
半導電性酸化物微粒子: 3.5〜15重量部(特に好ましくは5.3〜8.9重量部)
半導電性酸化物微粒子: 2〜15重量%(特に好ましくは3〜8重量%):塗料全量100重量%に対して
また、本発明の塗料(溶媒を含む全量)の金属塗布面への塗布量は限定されないが、金属塗布面1mに対して100〜750gであり、より好ましくは150〜450gである。
(2) 防食めっき被膜は、以下のようなめっき液から通常のめっき方法によって形成できる。
後述する半導電性酸化物微粒子(好ましくは光触媒粒子)を、以下に示す犠牲アノード金属または犠牲アノード金属化合物、および添加剤からなるめっき液に含有させることができる。
これによって作製される複合メッキ被膜は、金属材料上に形成された犠牲アノード金属からなるメッキ被膜、およびこのメッキ被膜内に分散され、固定化されている光触媒粒子を備えており、この光触媒粒子が、光触媒材料からなる粒子本体と、この粒子本体に担持されている半導電性材料を備えている。
図3は、複合メッキ層24を金属材料21上に形成した状態を模式的に示す図である。複合メッキ被膜24は、犠牲アノード金属からなるめっき層23と、めっき層中に分散され、固定化されている複合光触媒粒子22とからなる。
金属材料は、メッキ前処理によって表面の油脂、錆などを取り除かれる。メッキ前処理の方法としては通常のメッキ前処理に準じた方法であるアルカリ処理、酸処理、電解脱脂、水洗、湯洗、フラックス処理などが使用される。
複合メッキ被膜中における各成分の重合比率は限定されないが、好ましくは以下のとおりである。
犠牲アノード金属と半導電性材料が担持された光触媒粒子の合計重量を100重合部とするとき、
犠牲アノード金属:85.0〜99.9重合部
半導電性材料が担持された光触媒粒子:0.1〜15.0重合部
複合めっき被膜の形成法としては、電気メッキ(電解メッキ)、化学メッキ(無電解メッキ)、溶融メッキ、浸透メッキなどが挙げられる。
めっきに用いる犠牲アノード金属の種類は特に限定されないが、Zn/亜鉛、Mg/マグネシウム、Al/アルミニウムの一種の金属あるいはそれらの合金、およびMg-Al-Zn合金、または少量のIn/インジウムやSn/スズをドープさせたAl-Zn合金、さらには少量のCd/カドミウム、Hg/水銀、In/インジウムをドープさせたZn-Al合金を例示できる。特に以下のめっきを例示できる。
Zn系めっき (Zn−Alめっき(ドーパントはIn,Cd,Hg)、Zn−Feめっき、Zn−Alめっき、Zn−Crめっき、Zn−Al−Mgめっき、Zn−Al−Mg−Siめっき
Al系めっき(Al:50質量%以上)、Alめっき、Al−Znめっき: (ドーパント、In、Sn)
具体的には、以下の方法が好ましい。
(1) 光触媒材料からなる粒子本体と、この粒子本体に担持されている半導電性材料を備えている光触媒粒子を、犠牲アノード金属の溶融メッキ浴に添加する。このメッキ浴に金属材料を浸漬することによって、犠牲アノード金属からなるメッキ被膜、およびこのメッキ被膜内に分散され、固定化されている光触媒粒子とを備える複合メッキ被膜を金属材料上に形成する。
(2) 光触媒材料からなる粒子本体と、この粒子本体に担持されている半導電性材料を備えている光触媒粒子を、犠牲アノード金属塩の水溶液に含有させる。この水溶液に金属材料を浸漬し、水溶液に電流を流すことによって、犠牲アノード金属からなるメッキ被膜、およびこのメッキ被4膜内に分散され、固定化されている光触媒粒子とを備える複合メッキ被膜を金属材料上に形成する。
(3) 光触媒材料からなる粒子本体と、この粒子本体に担持されている半導電性材料を備えている光触媒粒子、犠牲アノード金属塩の水溶液に含有させる。この水溶液に金属材料を浸漬し、還元剤で犠牲アノード金属塩を還元することによって、犠牲アノード金属からなるメッキ被膜、およびこのメッキ被膜内に分散され、固定化されている光触媒粒子とを備える複合メッキ被膜を金属材料上に形成する。
亜鉛めっき液においては、アルカリ性めっき液の添加物として、ジンケート系亜鉛めっき液に四級化アミンポリマーと四級化イミダゾール誘導体を添加するほか(艶消し亜鉛めっきを得る方法:特公昭63-9594)、光沢剤としての芳香族アルデヒド(特公昭56-2156) やヒドロキシアリル化合物(特公平3-63542)も添加できる。また非シアン化として塩化亜鉛めっき液ポリオキシアルキル化ナフトール、テトラヒドロナフタリンスルホン酸を添加した非シアン液(特公昭60-15715) 、塩化亜鉛、スルファミン酸亜鉛のいずれかの亜鉛を含みポリオキシエチレン、アルキルエーテルなどを添加剤とする光沢性に優れた非シアンめっき液(特公昭61-41998)、非シアン液にメタンスルホン酸、ブチルニコチネートを光沢剤として添加した光沢亜鉛めっき液(特公昭57-47276)などが使用できる。
光沢剤に関しては、アルカノールスルホン酸、アルカンスルホン酸に光沢剤としてイソキノリンジエチルサルフエート、ポリグリシドオールを添加できる(特公昭57-27944)。特に亜鉛めっき液の種類を限定しない光沢剤として、芳香族スルホン酸、および芳香族カルボニール化合物、ポリアルキンイミン(特公昭61-32399) 、ポリオキシアルキレンアルキルチオールまたはポリオキシアルキレンジチオール(特公昭62-23077)が、ポリアミド重合体とチオ尿素(特公昭58-26435)が、更にポリオキシアルキレンナフトールおよびポリエチレンイミン(特公昭58-19755)などが添加できる。
延性、光沢の両特性に優れる添加剤として、少なくとも2個の窒素原子を含む5〜6員環の異節環とエピハロヒドリン化合との縮重合体(特公昭60-25514)、ベンジリデンアセトン、グリセリン、ソルートール、マニトールなどの多価アルコール(特公昭58-41357)などが添加される。さらに、芳香族ジカルボン酸、芳香族アルデヒド、フェニルチオ尿素などを添加した均一電着性に優れた酸性亜鉛めっき液(特公昭63-9026)が、β−アミノプロピオン酸およびアミノプロピオン酸の誘導体を添加した延性、光沢に優れた酸性亜鉛めっき液(特公昭60-45713)が、エトキシ化αナフトール硫酸エステル、エトキシ化αナフトールを添加した光沢性酸性亜鉛めっき液(特公平1-28839)などが使用できる。
高速亜鉛めっきとしては、アミノカルボン酸、ポリエーテル系非イオン活性剤を添加した高電流密度めっきが可能な亜鉛めっき液(特公昭63-9592、63-9593)、ポリアミド光沢剤の提案(特公昭63-62595) 、ポリアクリルアミドを添加した高速光沢亜鉛めっき液 (特公平1-36559) 、光沢剤としてポリヒドロキシ化合物(特公平5-49759)、アミノ酸、例えばグリシン、ヒドロキシプロリン、プロリンを光沢剤として添加した硫酸亜鉛めっき液(特公平3-10717)が、硫酸亜鉛を含む溶液にアミノカルボン酸を添加した光沢亜鉛めっき液(特公平3-19311、3-19312)、アニオン性硫酸化ポリオキシアルキレン界面活性剤(特公平1-41717、3-46553) 、ヒドロキシスチレン系重合体(特公平3-19319) 、ポリアルキレンアミンと有機第4アンモニウムハロゲン化物(特公昭56-28997)など数多くの添加剤が添加できる。
スズめっきについては、硫酸錫、またはフェノールスルホン酸錫液に特定量のアルカリ金属イオン、Al、Mn、Crイオンを加えた有機接着剤との耐水密着性に優れたスズめっき液(特公昭60-2396)や、スルファミン酸錫液にオキシカルボン酸、例えば酒石酸、乳酸、りんご酸を添加しためっき液(特公昭59-37755)などが使用できる。
ホイスカーと称するスズの針状結晶が発生し難いスズめっきとして、塩化第一錫、硫酸第一錫を主成分とし苛性ソーダやリン酸で液pHを中性としためっき液にハイドロキシエタンのリン酸エステルを添加(特公昭59-15993)できる。
スズめっきの光沢改善方法として、スズ、または半田めっき液に、1〜5%のSbイオンを添加して光沢の劣化を防止する方法(特公昭59-41514)、および銅や銅合金にスズめっきする際、通常の酸性スズめっき液に、エトキシルナフトール、および誘導体を添加してリフロー処理後の光沢を改善する方法(特公平2-53519)に対して使用できる。
第1スズイオン(Sn2+)は酸化して第2スズイオン(Sn4+)となり水酸化物となって沈澱する。この対策として、スズめっき液に酸化防止剤としてジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシキノリンを用いる方法(特許2572792)、ジヒドロキシ芳香族化合物のスルホネートを添加する方法(特許2667323)、また、硫酸第1錫を主成分とするアルミの電解着色液にヒドロキシルアンモニウム塩を添加してスズの酸化を防止してスズめっき液を安定化することで電解液の着色機能を長期間保持する方法(特公平6-96793)などに使用できる。
排水処理負荷が小さいスズめっき液の添加剤として、フェノールスルホン酸に代えて、アルカンスルホン酸、およびアルカノールスルホン酸を使用できる。アルカノールスルホン酸、アルカンスルホン酸と第1錫イオンとを含むスズめっき液の光沢改善を目的に、非イオン界面活性剤を添加しためっき液(特公平3-17912)が、アルカノールスルホン酸、アルカンスルホン酸と第1錫イオンとを含むスズめっき液に特定構造(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩)の界面活性剤を添加しためっき液(特公平3-4631)が、特定のアルキルフェノール、アルキルβ−ナフトールなどを添加した高速めっき液(特公昭62-14639)が、脂肪酸または芳香族スルホカルボン酸のアルカリ金属塩を添加しためっき液(特公平1-16318)が、エチレンオキサイド・ナフトール(特公平3-43356)が、さらにはアルカノールスルホン酸にアルキレンオキサイド化合物を添加した液(特公平7-30478)などが使用できる。
その他のスズめっき液に関しては、ピロリン酸第1錫を主成分としたスズめっき液に多価フエノールと界面活性剤を添加した光沢スズめっき液(特公昭58-18996) 、アルカノールアミンを添加した耐食性に優れためっき液(特公昭62-19519)、第1錫塩(例 塩化第1錫)とグルコン酸類と界面活性剤を含むめっき液(特公昭59-10997) 、光沢剤として芳香族アルデヒドとエピハロヒドリンとの環式反応生成物を添加したスズめっき液(特公昭58-15553)などが使用できる。
スズめっきの高速化を目的としたスズめっき液として、塩化第1錫と塩酸を主成分とするめっき液に、アルキルピリジニウムと不飽和カルボニル化合物を添加した高速めっき液(特公平1-20240) 、硫酸第1錫と硫酸を主成分としホルマリン他を含むスズめっき液に、ニコチン酸を添加した高速スズめっき液(特公平1-60556)が使用できる。
好適な実施形態においては、図4(a)に示すように、複合メッキ被膜皮膜24の表面に、クロメート処理による上側被膜27を形成し,積層被膜29を得る。これによって、被膜の装飾性を向上させ、さらに複合メッキ被膜24中の犠牲アノード金属23の溶解および鋼材の腐食を更に低減できる。このような上側被膜27としては、有色クロメート、光沢クロメート(ユニクロ)、黒色クロメート、緑色クロメート、3価クロメートを例示できる。
また、図4(b)に示すように、複合メッキ被膜24の表面に、防食樹脂塗膜28(乾燥塗膜)を形成することによって、複合メッキ被膜24中の犠牲アノード金属23の溶解および鋼材の腐食を更に低減できる。
また、図4(c)に示すように、複合メッキ被膜24上に、クロメート被膜27、防食樹脂塗膜28を順次積層し、積層被膜31を形成できる。
複合メッキ被膜24上には、直接に、あるいはクロメート被膜や防食樹脂塗膜を介して、光隠蔽型または光透過型の無機系または有機系塗料を適用できる。これらが乾燥、硬化することで形成された防食塗膜28によって、複合メッキ24中の犠牲アノード金属23の溶解および鋼材の腐食を抑えることができる。このような塗料としては、後述する隠蔽型の塗料を例示できる。
半導電性酸化物微粒子は、半導電性を有する酸化物の粒子であれば特に限定されない。半導電性とは、体積抵抗率が10−6から10Ω・cmの材質を言う。また、粒子の平均粒径は特に限定されないが10μm以下が好ましく、5μm以下が特に好ましい。
半導電性酸化物微粒子の種類は特に限定されないが、ガリウムリン(GaP)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ケイ素(Si)、硫化カドニウム(CdS)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、セレン化カドミウム(CdSe)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化チタン(TiO2:アナタ−ゼ型、ルチル型、ブルッカイト型)、酸化二オブ(Nb2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化タングステン(WO3)、酸化スズ(SnO2)等のn型半導体となる材料、及びこれらのn型半導体となる材料にアンチモン(Sb)や窒素(N)などをドープした材料が挙げられる。
半導電性酸化物粒子の結晶形態も特に限定されず、球状や針状タイプなど多種多様な形状なものを使用できる。防食性能の向上を図るためには、針状結晶であることが特に好ましい。
半導電性酸化物粒子上には、別の体積抵抗率の相対的に低い半導電性材料を担持することが好ましい。こうした担持される半導電性材料は、以下を例示できる。
酸化インジウム(In2O3)、ITO(スズ/Snドープ酸化インジウム/In2O3)、FTO(フッ素/Fドープ酸化スズ/SnO2)、ATO(アンチモン/Sbドープ酸化スズ/SnO2)、AZO(アルミニウム/Alドープ酸化亜鉛/ZnO)、GZO(ガリウム/Gaドープ酸化亜鉛/ZnO)、IZO(インジウム/Inドープ酸化亜鉛/ZnO)。半導電性酸化物粒子の粉体の体積抵抗率が1×10−2〜1×10Ω・cmであることが好ましい。
半導電性材料を担持する理由としては、一般的な半導電性粒子、特に光触媒は、紫外線照射下においてその表面に非常に酸化力の強い、活性酸素種を発生し、この活性酸素種が光触媒からの励起電子を消費してしまうことがある。また下地金属や犠牲アノード金属に対しては非常に強い酸化力が腐食の要因となる。
半導電性材料を担持した場合、光触媒表面での活性酸素種の発生を抑制する。もしくは発生した活性酸素種が犠牲アノード金属や下地金属に対してほとんど接触していないため、活性酸素種による腐食は防止される。さらに光触媒により励起された電子が半導電性材料を介して犠牲アノード金属や下地金属に直接注入されることで、金属を安定な状態にすることができる。
半導電性材料が担持された場合には、半導電性酸化物粒子の全体の体積抵抗率は、1×10−2〜1×10Ω・cmが特に好ましい。
半導電性材料の担持形態は、特に限定されず、以下を例示できる。
(1) 半導電性材料の粒子が、半導電性酸化物粒子の表面に付着し、担持されている。
(2) 半導電性酸化物粒子の表面に、半導電性材料のコーティングが形成されている。
こうした粒子としては、針状導電性酸化チタン(以下、「RATO」と記す)が最も好ましい。「RATO」は、図2に示す形の石原産業(株)の製品(FT-3000)17 であり、ルチル型酸化チタン粒子16の周囲をアンチモンがドープされた酸化スズ(以下ATOと記す)15
で覆うように構成されている。この「RATO」中のルチル型酸化チタンの重量割合はおよそ92%である。また、その形状は直径が0.27μm、長さが5.15μmの針状結晶である。
この「RATO」の特徴としては、紫外線照射時におけるルチル型酸化チタンの酸化力(有機物分解作用)が少ないこと、またATOで覆われているために、バインダーが有機系であっても直接接触することがないために有機系のバインダーを分解させないことが挙げられる。一方、還元力としては、例えばステンレス鋼の浸漬電位を-300〜-400mV(vs.Ag/AgCl)まで卑の方向へ移行させるほどの光励起電子が発生することが知られている。
犠牲アノード金属の種類は特に限定されないが、Zn/亜鉛、Mg/マグネシウム、Al/アルミニウム等の一種の金属、およびMg-Al-Zn合金、または少量のIn/インジウムやSn/スズをドープさせたAl-Zn合金、さらには少量のCd/カドミウム、Hg/水銀、In/インジウムをドープさせたZn-Al合金を例示できる。
乾燥塗膜が多孔質になる無機系の上側被膜3の材質は限定されず、水性シリケート塗料、前記コロイダルシリカを例示できる。
乾燥塗膜が多孔質になる無機系の上側被膜3を本発明の防食被膜2上に形成することによって、防食被膜中の犠牲アノード金属の溶解を抑えることができる。
この上塗り塗料(溶媒を含む全量)の塗布量は、金属塗布面1mに対して、150〜300gであることが好ましく、150〜200gであることが更に好ましい。
あるいは、防食被膜上に直接、あるいは前記無機系多孔質膜上に、隠蔽型の無機または有機系塗料を適用できる。このような隠蔽型の塗料としては以下を例示できる。
(1) 油性塗料(油性ペイント、油性エナメル)
(2) ニトロセルロースラッカー(ラッカーエナメル、ハイソリッドラッカー、ホットラッカー、特殊ラッカー、下地塗料)
(3) 合成樹脂塗料(フタル酸樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、塩化ゴム塗料、水系塗料、けい素樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料)
(4) 特殊用途塗料(1.さび止め塗料:一般さび止めペイント、鉛丹さび止めペイント、亜酸化鉛さび止めペイント、塩基性クロム酸鉛さび止めペイント、シアナミド鉛さび止めペイント、亜鉛末さび止めペイント、ジンククロメートさび止めペイント、鉛丹ジンククロメートさび止めペイント、鉛酸カルシウムさび止めペイント 2.船底塗料 3.その他:防カビ塗料、耐熱塗料、防火塗料、熱反射塗料、示温塗料、蛍光塗料、耐薬品塗料、電気絶縁塗料、光反射塗料、発光塗料、ストリッパブル塗料、トラフィック塗料、防音塗料)
(5) 特殊性能塗料(粉体塗料、電着塗料、ビニルゾル塗料、非水ディスパーション塗料)
(6) 特殊概観塗料(メタリック塗料、多彩模様塗料、砂壁状吹付材、複層模様吹付材、マスチック塗材)
(7) 下地塗料(プライマー、パテ、サーフェサー、プライマーサーフェサー、エッチングプライマー)
金属1の材質は限定はされないが、以下の金属に対して特に有効性が高い。
純鉄、電解鉄、炭素鋼、リムド鋼、キルド鋼、セミキルド鋼、合金鋼、超合金、キャップド鋼、耐候性鋼、溶融アルミニウムメッキ鋼、クロムメッキ鋼、溶融亜鉛メッキ鋼、電気亜鉛メッキ鋼、亜鉛−アルミニウム合金メッキ鋼、鉛−スズメッキ鋼(ターンメッキ鋼)、スズメッキ鋼、珪素鋼、ティンフリースチール等
本発明の用途は特に限定されず、以下を例示できる。
(1) 化学プラント等の屋内施設において、塔槽類、熱交換器、加熱炉、回転機、計装機類、電気設備等の表面塗膜やこれらの機器設備類を連結するための配管表面の塗膜または1日の日射量が年間平均して0.5MJ/m2以下の屋外プラント施設における密集した上記機器類の表面塗膜。
(2) 地下構築物の表面。例えば地中埋設配管類の内外面の表面塗膜やコンクリート構造物内鉄筋の表面塗膜
(3) 穀物・重油・石炭・LNG・LPG等を受け入れ時で使用され、1日の日射量が年間平均して0.5MJ/m2以下の鉄筋コンクリート桟橋裏面スラブ表面または鋼製桟橋の裏面表面の塗膜
(4) 同様に1日の日射量が年間平均して0.5MJ/m2以下の橋梁(鋼橋、コンクリート橋、複合橋)および鉄道高架橋裏面の表面塗膜
(5) 海中構造物の表面。例えば海上設備の海中支持柱、配管類等の内外面の表面塗膜や沿岸部の鋼矢板等
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
マトリックスがエポキシ樹脂での有機系ジンクリッチペイント(ゼッタールEP-2HB:大日本塗料(株)社製)にRATOを5%混入した塗料を、サンドブラスト処理した平板鋼(70×150×1.6 mm)に刷毛塗りによって塗布(440g/m2)して防食被膜2を形成した。次に防食被膜2上に水性シリケート(SSA-1000:日板研究所(株)社製)を塗布(150g/m2)して上側被膜3を形成した。
次に上側被膜3上にフッソ樹脂系塗料(Vフロン♯200上塗クリヤー:大日本塗料(株)社製)を塗布(100g/m2)し、表面被膜13を形成し、23℃で7日間の養生を行った。養生後、試料の下半分にJIS K5600-7-1-6.5(スクラッチの付け方)によって、被膜に対角線状の交差する2本の傷をつけた。
(比較例1)
マトリックスがエポキシ樹脂での有機系ジンクリッチペイント(ゼッタールEP-2HB:大日本塗料(株)社製)を、サンドブラスト処理した平板鋼(70×150×1.6 mm)に刷毛塗りによって塗布(440g/m2)して防食被膜2を形成した。次に防食被膜2上に水性シリケート(SSA-1000:日板研究所(株)社製)を塗布(150g/m2)して上側被膜3を形成した。次に上側被膜3上にフッソ樹脂系塗料(Vフロン♯200上塗クリヤー:大日本塗料(株)社製)を塗布(100g/m2)し、表面被膜13を形成し、23℃で7日間の養生を行った。養生後、試料の下半分にJIS K5600-7-1-6.5(スクラッチの付け方)によって、被膜に対角線状の交差する2本の傷をつけた。
(実施例2)
マトリックスがエポキシ樹脂での有機系ジンクリッチペイント(ゼッタールEP-2HB:大日本塗料(株)社製)にRATOを5%混入した塗料を、サンドブラスト処理した平板鋼(70×150×1.6 mm)に刷毛塗りによって塗布(440g/m2)して防食被膜2を形成した。次に防食被膜2上に水性シリケート(SSA-1000:日板研究所(株)社製)を塗布(150g/m2)して上側被膜3を形成した。
次に防食被膜3上にエポキシ樹脂系塗料(VトップH中塗:大日本塗料(株)社製)を塗布(120g/m2)し、被膜を形成した。次にこの被膜上にウレタン樹脂系塗料(VトップH上塗:大日本塗料(株)社製)を塗布(120g/m2)し、表面被膜13を形成し、23℃で7日間の養生を行った。養生後、試料の下半分にJIS K5600-7-1-6.5(スクラッチの付け方)によって、被膜に対角線状の交差する2本の傷をつけた。
(比較例2)
マトリックスがエポキシ樹脂での有機系ジンクリッチペイント(ゼッタールEP-2HB:大日本塗料(株)社製)を、サンドブラスト処理した平板鋼(70×150×1.6 mm)に刷毛塗りによって塗布(440g/m2)して防食被膜2を形成した。次に防食被膜2上に水性シリケート(SSA-1000:日板研究所(株)社製)を塗布(150g/m2)して上側被膜3を形成した。
次に上側被膜3上にエポキシ樹脂系塗料(VトップH中塗:大日本塗料(株)社製)を塗布(120g/m2)し、被膜を形成した。次にこの被膜上にウレタン樹脂系塗料(VトップH上塗:大日本塗料(株)社製)を塗布(120g/m2)し、表面被膜13を形成し、23℃で7日間の養生を行った。養生後、試料の下半分にJIS K5600-7-1-6.5(スクラッチの付け方)によって、被膜に対角線状の交差する2本の傷をつけた。
以上4種類の試料は、複合サイクル試験機(CYP-90UV:スガ試験機社製)によりJIS K5621−7.12に準じて評価した
(複合サイクル試験機の複合サイクル条件)。具体的には、30±2℃で塩水噴霧試験(0.5時間)を行い、30±2℃(湿度95±3%)で湿潤試験(1.5時間)を行い、50±2℃で熱風乾燥試験(2.0時間:紫外線照射:1mW/cm)を行い、30±2℃で温風乾燥試験(2.0時間:紫外線照射:1mW/cm)を行った。このサイクルを600回繰り返した。
複合サイクル試験によって、実施例1および比較例1の試料の表面腐食状態を評価した結果、図6に示すような結果が得られ、防食効果が認められた。
また、実施例2および比較例2の試料の表面腐食状態を評価した結果、図7に示すような結果が得られ、防食効果が認められた。
(実施例3:電位測定実験)
マトリックスがエポキシ樹脂での有機系ジンクリッチペイントにRATOを5%混入した塗料を、ビーカー6の3wt%NaClの試料溶液7に浸漬した時に被覆率(塗装面積/浸漬する試験体全表面積との比)が50%となるように、刷毛塗りによって丸鋼(φ10×110mm)に塗布して防錆層を形成させ、23℃で7日間の養生を行ったものを本発明例の試験体5とした。
自然電位の測定結果を図8に示す。自然電位の測定は、図5に示すように、塩橋8で電気回路を構成し、飽和塩化カリウム溶液9に飽和塩化銀電極10(Ag/AgCl、以下省略する)を比較電極とし、ポテンショスタット11を通して行い、記録計12のチャート上に記録した。防錆性能の評価は自然電位が鉄の腐食電位(-640mV)に移行する過程で防食電位 (-730mV)以上の貴の電位、すなわち腐食領域に入るまでの時間を比較することで行った。
また、RATOの有効性を確認するために、RATOを含有していない有機系ジンクリッチペイントを使用した比較例の試験体5との比較試験を行った。
そして、本発明例の試験体の電位を暗中で測定した結果、図8に示すような結果(グラフb)が得られた。
また、比較例の試験体の電位を暗中で測定した結果、図8に示すような結果(グラフc)が得られた。
有機系ジンクリッチペイントの場合(比較例)には、暗状態においては(グラフc)、速やかに自然電位が上昇し、腐食電位を上回る。
本発明例の場合には(グラフb)、針状導電性酸化チタン(本例ではRATO)を使用しているが、暗中なので光カソード防食作用はないはずである。しかし、理由は不明であるが、かなり長時間にわたって電位が腐食電位を下回っており、防食効果が認められた。
(実施例4)
実施例3と同様の試験を行った。ただし、金属として、炭素鋼の代わりにクロムメッキ処理された炭素鋼を使用した。この結果、本発明例では同様の結果が得られた。
(a)は、金属1上に防食被膜2および上側被膜3が形成されている状態を示す模式図であり、(b)は、金属1上に防食被膜2、上側被膜3および表面被膜13が形成されている状態を示す模式図である。 好適な半導電性酸化物微粒子の形態を示す模式図である。 複合メッキ被膜24を金属材料21上に形成した状態を模式的に示す図である。 (a)は、金属材料21上に複合メッキ被膜24およびクロメート被膜27の積層被膜29を形成した状態を示す模式図であり、(b)は、金属材料21上に複合メッキ被膜24および防食樹脂塗膜28の積層被膜30が形成されている状態を模式的に示す図であり、(c)は、金属材料21上に複合メッキ被膜24、クロメート被膜27および防食樹脂塗膜28の積層被膜31が形成されている状態を模式的に示す図である。 防錆作用の測定装置を示す模式図である。 複合サイクル試験によって、実施例1および比較例1の試料の表面腐食状態を評価した結果を示すグラフである。 実施例2および比較例2の試料の表面腐食状態を評価した結果を示すグラフである。 各実施例および比較例の電位の変化を示すグラフである。
符号の説明
1 金属
2 防食被膜
3 上側被膜
4 複合被膜
5 試験体
6 ビーカー
7 試料溶液(3重量%NaCl溶液)
8 塩橋
9 飽和塩化カリウム溶液
10 参照電極(飽和塩化銀電極)
11 ポテンショスタット
12 記録計
13 表面被膜
21 金属材料
22 半導電性材料が担持された光触媒粒子
23 犠牲アノード金属からなるメッキ被膜
24 複合メッキ被膜
27 クロメート被膜
28 防食樹脂塗膜
29、30、31 積層被膜

Claims (8)

  1. 犠牲アノード金属および半導電性酸化物微粒子を含む原料から形成されたことを特徴とする、暗中で使用される金属用の防食被膜。
  2. 前記犠牲アノード金属および前記半導電性酸化物微粒子を含有する防食塗料の塗布によって形成された防食塗膜であることを特徴とする、請求項1記載の金属用の防食被膜。
  3. 前記犠牲アノード金属と犠牲アノード金属化合物との少なくとも一方および前記半導電性酸化物微粒子を含有するめっき液によって形成された防食めっき被膜であることを特徴とする、請求項1記載の金属用の防食被膜。
  4. 請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の防食被膜を金属上に形成し、この金属を暗中で使用することを特徴とする、暗中での金属の防食方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の防食被膜、およびこの防食被膜上に形成されている上側被膜を備えていることを特徴とする、複合被膜。
  6. 前記上側被膜が無機系多孔質膜であることを特徴とする、請求項5記載の複合被膜。
  7. 前記上側被膜が遮光性被膜であることを特徴とする、請求項5記載の複合被膜。
  8. 請求項5〜7のいずれか一つの請求項に記載の複合被膜を金属上に形成し、この金属を暗中で使用することを特徴とする、暗中での金属の防食方法。
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