JP2007162045A - 摺動材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、摺動材の摺動面全体に微細周期構造の形成及び表面改質を行うことで優れたトライボロジー特性を有する摺動材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】摺動材の基材1の摺動面に成膜されたDLC膜2に、低フルーエンスのパルスレーザ(フェムト秒レーザ等)を照射することで、照射領域をガラス状炭素に改質された改質領域3とするとともに微細周期構造4を形成する。こうして表面加工された領域を被覆するように潤滑層5を形成することで、摩擦係数等のトライボロジー特性が大幅に改善された摺動材を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、軸受、ピストンといった機械部品の摺動面に用いられる摺動材及びその製造方法に関する。
上述した摺動面を備えた機械部品では、摺動面におけるトライボロジー特性に着目して様々な改良が行われてきている。特に、低摩擦性、耐摩耗性、潤滑性、熱的安定性といった観点から摺動面の加工又は改質がなされている。例えば、特許文献1では、金属部材の表面に微粒子分散体を形成し、形成された微粒子分散体に高密度エネルギービームを照射して溶融し、溶融された層を急冷することにより改質層を形成した点が記載されている。また、特許文献2では、基材上に形成されたAl−Si溶射被膜に点状、線状などのパターンでレーザを照射して被膜の部分改質を行い、摺動時の選択的摩耗によりレーザ照射部分が凹み、油溜りとなるようにした点が記載されている。また、特許文献3では、摺動面に油溝形成用のマスキング材を取り付けてDLC被膜を形成し、その後マスキング材を除去することでDLC被膜に微小な深さの油溝を形成した点が記載されている。また、特許文献4では、二硫化モリブデンを主成分とする投射用材料を自動車エンジンのピストン表面に高速で投射することでピストン表面の摩擦係数を有効に低下させる点が記載されている。
本発明者らは、これまで超短パルスレーザを用いた硬質薄膜の加工及び改質技術について研究を行ってきており、例えば、固体材料表面に低フルーエンスのフェムト秒レーザを照射することで照射したレーザの波長より小さいサイズの微細構造を加工する微細加工方法を提案している(特許文献5参照)。また、基材表面に成膜された硬質カーボン膜に、低フルーエンスのフェムト秒レーザを照射することで照射した部分にガラス状炭素を形成する炭素薄膜の加工方法を提案している(特許文献6参照)。こうした知見に基づいて、特許文献7では、金属摺動面の摩擦抵抗を低減することが提案されている。
また、非特許文献1では、DLC薄膜に対してレーザ加工を行った後二硫化モリブデンを被覆した場合における薄膜表面の摩擦現象に関して報告がなされている。
なお、上述の硬質カーボンは、一般には、ダイヤモンド状炭素(Diamond Like Carbon;DLCと略称される)とも称され、その他にも硬質非晶質炭素、無定型炭素、硬質無定型炭素、iカーボン等の別称があるが、明確に定義はされていない。いずれにしてもダイヤモンド及びグラファイトが混ざり合った中間的な構造を備えており、ダイヤモンドと同様に、高硬度で、耐摩耗性及び熱伝導性に優れ、切削工具や研磨用工具等の保護層として用いられている。本明細書において、「硬質カーボン膜」は、上記の硬質カーボンを膜状に成膜したものを意味する。また、上述のガラス状炭素は、グラッシーカーボン(Glassy Carbon)とも称されているが、グラファイトの基本構造である六角網面の結晶子が無配向に組織されているもので、約3000℃の高温に加熱処理してもグラファイト構造に変化することがないといった特性を備えている。そのため、ガラス状炭素は、難黒鉛化性炭素とも称されており、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、潤滑性、離型性、ガス不透過性に優れており、導電性も有している。
特開2000−273653号公報 特開2001−279421号公報 特開2003−247691号公報 特開2002−339083号公報 特開2003−211400号公報 特開2005−133129号公報 特開2005−360011号公報 A. A. Voevodin et al. ,"Investigation into three-dimensional laser processing of tribological coatings",Surface and Coatings Technology, 107(1998), p.12-p.19
本発明者らは、上述したように、超短パルスレーザを用いた基材表面のナノレベルの微細周期構造の形成及び表面改質に関してその現象を解明すべく研究を進めてきたが、基材表面の微小な領域における現象を対象とするものであり、様々な用途に対応するためにはより大きな表面積において微細周期構造の形成及び表面改質を行うことが求められる。
そこで、本発明は、摺動材の摺動面全体に微細周期構造の形成及び表面改質を行うことで優れたトライボロジー特性を有する摺動材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る摺動材は、摺動面に形成されるとともにその表面にガラス状炭素が生成された硬質カーボン膜と、前記硬質カーボン膜の表面に超短パルスレーザを照射して形成された微細周期構造と、前記微細周期構造を被覆するように形成された固体潤滑剤を含む潤滑層とを備えていることを特徴とする。さらに、前記微細周期構造は、前記超短パルスレーザの波長よりも小さいサイズに形成されていることを特徴とする。さらに、前記潤滑層は、固体潤滑剤として二硫化モリブデンを含むことを特徴とする。
本発明に係る摺動材の製造方法は、摺動面に硬質カーボン膜を成膜する成膜工程と、成膜された前記硬質カーボン膜の表面に超短パルスレーザで隣接照射領域が一部重なり合うように順次照射してガラス状炭素を生成するとともに微細周期構造を形成する照射工程と、形成された前記微細周期構造を被覆するように固体潤滑剤を含む潤滑層を形成する層形成工程とを備えていることを特徴とする。さらに、前記照射工程では、前記超短パルスレーザを低フルーエンスで照射することを特徴とする。さらに、前記層形成工程では、二硫化モリブデンをスパッタリングして形成することを特徴とする。
本発明に係る摺動材は、上記のような構成を有することで、硬質カーボン膜の表面にガラス状炭素が生成された表面改質が行われているので、熱膨張性が低く耐摩耗性の優れた摺動表面とすることができ、特に鋼やアルミニウム等の金属の凝着を抑止することができる。また、硬質カーボン膜表面に微細周期構造を形成することで、その表面を被覆する潤滑層が微細周期構造に噛み合うように形成されて油溜めと同様の効果を発揮し、潤滑層をより安定した状態で摺動面に保持することが可能となる。
また、固体潤滑剤を用いることで、潤滑油や離型剤等の使用が困難な製品や作業環境に好適な摺動材を提供することができる。特に、化学的な安定性の高い硬質カーボン膜とともに固体潤滑剤を組み合せることで、医療、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、宇宙といった技術分野において用いられる摺動材として好ましく、こうした分野以外でもマイクロマシンといった微小な機構から自動車部品等の機械部品まで幅広い分野に適用可能である。
そして、微細周期構造を超短パルスレーザの波長よりも小さいサイズに形成することで、摺動面全体にナノレベルの微細周期構造を形成でき、摺動面全体に対してより均一な潤滑性を付与することができる。
本発明に係る摺動材の製造方法は、成膜された硬質カーボン膜の表面に超短パルスレーザで隣接照射領域が一部重なり合うように順次照射することで、硬質カーボン膜表面全体にほぼ均一にガラス状炭素が生成されるとともにほぼ均一な微細周期構造が形成されるようになる。例えば、超短パルスレーザの照射領域がほぼ円形となる場合、その上下左右の隣接照射領域と重なり合うように設定して任意の領域に複数回同じ照射動作が行われるようにすることで、硬質カーボン膜表面全体にほぼ均一なガラス状炭素の生成及び微細周期構造の形成を行うことが可能となる。
ここで、「パルスレーザ」とは、出力光強度が時間的に変化して一定の持続時間だけ発振するレーザのことである。そして、「フルーエンス」(fluence)とは、レーザの1パルス当りの出力エネルギーを照射断面積で割って求めたエネルギー密度(J/cm)である。一般に、「低フルーエンス」とは相対的にこの値が小さいことを言うが、ここでは、レーザを材料表面に照射することで材料表面が蒸散する現象が生じるエネルギー密度の最小値(アブレーション閾値)近傍のフルーエンスを指している。この範囲ではレーザの照射による熱影響がほとんどない。アブレーション閾値及び低フルーエンスの範囲は材料によって異なる。低フルーエンスの範囲は主にその材料の融点の違いにより異なり、通常アブレーション閾値の5倍程度を上限とする範囲で、材料によっては10倍程度の範囲まで熱影響がほとんど生じない場合もある。低フルーエンスの一例として、銅のレーザ加工では、アブレーション閾値が0.14J/cmで、0.46J/cmまでレーザ照射による熱の影響がほとんど生じないという実験結果が発表されており、この場合低フルーエンスの上限はアブレーション閾値の3倍程度となっている。
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
図1は、本発明に係る実施形態に関する断面を示す模式図である。摺動材の基材1の摺動面には、所定の厚さのDLC膜2が成膜されており、DLC膜2の表面にはガラス状炭素からなる改質領域3が生成されている。なお、図では、理解を容易にするために改質領域3が層状に描かれてDLC膜2との間の境界を明記しているが、実際にはガラス状炭素が表面に生成されているものの内部においてはこのように明確に分かれているわけではない。
そして、改質領域3が生成されたDLC膜2の表面には微細周期構造4が形成されている。微細周期構造4としては、図2の走査電子顕微鏡(SEM)で観察した表面形状を示す写真のように、細長い溝部が周期的に形成された微細構造(図2(a))及び粒状の突起部が周期的に形成された微細構造(図2(b))が挙げられる。
また、微細周期構造4の表面には、全体を被覆するように潤滑層5が所定の厚さで形成されている。潤滑層5は、主として固体潤滑剤からなっており、固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、グラファイト、二硫化タングステン、六方晶窒化ホウ素、金、銀、鉛、錫、亜鉛、インジウム、四弗化エチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、弗化カルシウム、弗化バリウム等が挙げられる。好ましくは、二硫化モリブデン、グラファイトがよい。また、これらの固体潤滑剤を複数組み合せて用いることもできる。
摺動材の基材1としては、金属、セラミック又は樹脂といった従来より摺動材として用いられているもので、DLCが成膜できるものであればよく、特に限定されない。また、形状についても特に限定されず、様々な摺動材が適用可能である。
DLC膜2は、スパッタリング法に代表されるPVD法やCVD法といった従来より用いられている気相合成法で成膜することができる。図3は、DLC膜を成膜するための装置の一例として、非平衡マグネトロンスパッタリング装置を示している。DLC膜が形成される基板10にはバイアス電源が接続されており、炭素からなるターゲット11にはスパッタ電源が接続されている。そして、基板10及びターゲット11の間には、放電用ガスとして導入されたアルゴン(Ar)のプラズマが形成される。ターゲット11の背面には外側磁極12と内側磁極13が設けられており、外側磁極12を内側磁極13よりも強磁場にすることで、点線の矢印で示すように磁力線を発生させアルゴンプラズマをより高密度の状態にしてDLC膜の成膜効率を向上させている。
基板10とターゲット11との間に所定電圧を印加すると、アルゴンプラズマ中のアルゴンイオンがターゲット11に衝突し、その衝撃によりターゲット11から炭素原子が飛び出し基板10の表面に被着してDLC膜が成膜されるようになる。
図4は、成膜されたDLC膜2の表面に改質領域3を生成するとともに微細周期構造4を形成するための加工装置の一例を示している。DLC膜2の表面に照射する超短パルスレーザとしてフェムト秒レーザを用いる。なお、フェムト秒レーザ以外のパルスレーザを使用することもできる。すなわち、DLC膜が熱的、機械的な影響により変質しない範囲で局所的に高密度のエネルギーを加えることが可能であればガラス状炭素を形成することができると考えられることから、DLC膜の状態(層厚、基材の材料等の外部環境)によっては、例えばピコ秒レーザやナノ秒レーザといったパルスレーザを使用することが適切な場合があると考えられる。
フェムト秒レーザシステム20から発振されたレーザパルスは、シャッタ21を通過してレーザ制御ユニット22に入射される。レーザ制御ユニット22では、レーザパルスの波長を変換するとともに偏光制御を行う。偏光制御では、直線偏光(縦方向・横方向)及び円偏光を必要に応じて行う。直線偏光にすると、図2(a)に例示されるような細長い溝部が周期的に形成された微細構造となり(矢印が偏光方向を示す)、円偏光にすると、図2(b)に例示されるような粒状突起部が周期的に形成された微細構造となる。
レーザ制御ユニット22から出射されたレーザパルスは、反射ミラー23、24及び25により反射されて凹面反射鏡(放物鏡)26に入射して集光されるようになる。そして、集光されたレーザパルスは、3軸ステージ30の試料台に設置された基板Tの表面に照射される。
3軸ステージ30は、試料台を取り付けたZ軸ステージ31及びZ軸ステージ31を取り付けたXY軸ステージ32を備えており、制御装置33からの制御信号に基づいてXY軸ステージ32及びZ軸ステージ31を移動させて基板T表面の照射位置を移動させるようにする。
この例では、基板Tを移動させてレーザパルスを照射するようにしているが、レーザパルスの発振及び光学系を含む装置側を移動させるようにしてもよく、また両方を移動させて基板T表面の照射位置を位置決めするようにしてもよい。
図5は、基板T表面の照射動作を示す説明図である。この例では、主走査方向をZ軸にとり、副走査方向をX軸にとっている。照射位置を1つの円で示しており、円内が照射領域となっている。主走査方向に照射する場合には、Z軸方向に所定の速度でZ軸ステージ31を移動させて行う。その際に主走査方向Z1に照射領域が重なり合いながら帯状に基板T表面が照射されるようにする。そして、改質領域3の生成及び微細周期構造4の形成が同時に行われるよう移動速度を調整する。
主走査方向Z1について照射した後、XY軸ステージ32により基板TをX軸方向にずらす。その際に主走査方向Z1の照射領域と重なり合うように副走査方向に位置決めする。この例では照射領域を示す円の半径分だけ副走査方向にずらすようにしており、そのため、次の主走査方向Z2の照射領域と主走査方向Z1の照射領域が重なり合うように位置決めされる。そして、主走査方向Z2に主走査方向Z1と同様に所定の速度で照射位置を移動させながら照射動作が行われる。以後、副走査方向にずらしながら主走査方向に照射動作を繰り返すことで、基板T表面には満遍なく複数回の照射動作が行われるようになる。
レーザパルスを照射した照射領域の中心部と周辺部では、改質領域3の生成及び微細周期構造4の形成に差が生じることから、適宜照射領域の重なり合う部分を調整してほぼ均一になるように設定する。
潤滑層5は、均一な膜状に形成するためには、スパッタリングやイオンプレーティングといったPVD法又は熱CVDやプラズマCVD法といったCVD法により形成するとよい。こうした気相合成法を用いることで、微細周期構造4に固体潤滑剤が入り込むようになり、DLC膜2に噛み合うように潤滑層5が形成される。
基板として、チタンからなる基板(厚さ2mm)を用い、図3に示す非平衡マグネトロンスパッタリング装置によりDLC膜を1.4μm成膜した。DLC膜を成膜した基板に図4に示す加工装置により表面加工を行った。フェムト秒レーザシステムとして、フェムトレーザ社製Femtopower Compact PROを用い、波長800nm、パルス幅100fs、パルスエネルギー最大800μJ、周波数1kHzのレーザパルスを直線偏光制御し、焦点距離f=500mmの放物鏡で集光し、数10〜数100mWのレーザ出力で大気中の基板表面に垂直に照射した。レーザパルスのスポット径は240μmであった。レーザパルスのフルーエンスをアブレーション閾値近傍の0.15J/cm2に設定し、毎秒1000パルスでレーザパルスを照射しながらステージ移動速度を調整することで照射動作を調整した。そして、副走査方向のずらし量を120μmに設定した。照射範囲は、15mm×15mmとした。
照射範囲をSEMで観察したところ、照射範囲全域においてほぼ均一に図2(a)に示すような細長い溝部が周期的に形成された微細構造が観察された。溝部と溝部との間の間隔はほぼ100nmであった。
また、照射範囲をラマン分光測定装置により測定したところ、グラファイト構造に近い1590cm-1付近のピークの他に不完全な結晶構造を示すといわれる1355cm-1付近のピークが観測され、ガラス状炭素特有のラマンスペクトルのピーク特性が測定されてガラス状炭素の存在を確認することができた。以上のことから、微細周期構造の形成とともにガラス状炭素への表面改質が生成されたことがわかる。
次に、表面加工されたDLC膜の表面を被覆するように潤滑層を形成した。固体潤滑剤として二硫化モリブデンを使用し、公知のマグネトロンスパッタリング装置を用いて真空蒸着により0.5μmの層厚の潤滑層を形成した。
以上のように表面処理が施された基板について摩擦係数の測定を行った。測定には、
(A)レーザパルスの表面加工及び潤滑層が形成された複合基板
(B)レーザパルスの表面加工のみ施した基板
(C)表面処理が施されていない基板
(D)表面加工を行わずに潤滑層が形成された基板
の4種類の基板を用いた。測定装置として、ボールオンディスク型摩擦摩耗試験機(株式会社レスカ製FPR−2000)を用い、潤滑層が形成されていない基板B及び基板Cの場合には負荷ウェイトを10Nとし、潤滑層が形成された基板A及び基板Dの場合には負荷ウェイトを2Nとした。また、試料ボールは、軸受鋼ボール(SUJ2、HV600)を用い、線速度は3cm/sで一定とした。
まず、基板B及び基板Cについて摩擦係数を測定したところ、基板Bの摩擦係数(μ)は、レーザ照射出力が150mWの場合0.16で、200mWの場合0.13であった。基板Cの摩擦係数は、0.20であった。したがって、レーザパルスによる表面加工を施すことで摩擦係数が2割から4割低減することがわかった。こうした摩擦係数の減少は、レーザパルスの照射によりDLC膜表面にガラス状炭素からなる改質領域が生成されたことが主な要因として考えられる。すなわち、ガラス状炭素はDLCに比べて軟質であることから、凝着性の高いSUJ2に対してDLCよりも良好な摩擦摩耗条件が得られたものと考えられる。
次に、基板A及び基板Dについて摩擦係数を測定したところ、基板Aの摩擦係数は、レーザ照射出力が150mWの場合0.07で、基板Dの摩擦係数は、0.14であった。したがって、表面加工を施して潤滑層を形成することで摩擦係数を半減することがわかった。こうした摩擦係数の大幅な減少は、潤滑層に用いた二硫化モリブデンが微細周期構造に入り込み潤滑層を保持する作用を果たしていることが主な要因と考えられる。二硫化モリブデンは層状の結晶構造を有するため、摺動面に層状に形成されて摺動面に沿った方向の力が加わると剥れやすくなるが、微細周期構造に噛み合うように形成されることで剥がれにくくなるものと考えられる。さらに、潤滑層が一部剥がれたとしてもガラス状炭素が露出することで、摩擦摩耗条件の悪化が抑止されることも考えられる。
次に、微細周期構造のレーザ波長及び偏光に対する依存性について実験を行った。上述した実施例と同様の基板材料及び加工装置を用いて、レーザ波長800nm及び267nmについてそれそれ直線偏光及び円偏光に制御し、基板表面のDLC膜に対して15mm×15mmの範囲を照射した。
照射範囲をSEMで観察したところ、直線偏光の場合には図2(a)と同様の細長い溝部が多数周期的に形成された微細構造が全域で観察され、円偏光の場合には図2(b)と同様の粒状突起部が多数周期的に形成された微細構造が全域で観察された。
そして、直線偏光の場合に形成された微細周期構造のサイズを計測すると、レーザ波長800nmでは、溝部と溝部の平均間隔は100nmで、レーザ波長との比は、0.13であった。また、レーザ波長267nmでは、溝部と溝部の平均間隔は30nmで、レーザ波長との比は、0.11であった。円偏光の場合に形成された微細周期構造のサイズを計測すると、レーザ波長800nmでは、粒状突起部の平均粒径は80nmでレーザ波長との比は、0.10であった。また、レーザ波長267nmでは、溝部と溝部の平均間隔は25nmで、レーザ波長との比は、0.09であった。したがって、DLC膜に超短パルスレーザを照射することで、照射するレーザ波長の1/10〜3/20のサイズのナノレベルの微細周期構造が形成されることがわかった。
本発明に係る摺動材では、摺動面全体に成膜された硬質カーボン膜(DLC膜)の表面加工を行ってガラス状炭素に改質するとともに微細周期構造を形成し、その表面に固体潤滑剤からなる潤滑層を積層しているので、表面加工を施さない場合に比べて摩擦係数等のトライボロジー特性を大幅に改善することが可能となった。
そして、化学的な安定性の高い硬質カーボン膜と固体潤滑剤とを組み合せることで、医療、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、宇宙といった技術分野において用いられる摺動材として特に好ましく、こうした分野以外でもマイクロマシンといった微小な機構から自動車部品等の機械部品まで幅広い分野に適用可能である。
本発明に係る実施形態に関する断面を示す模式図である。 DLC膜の照射面をSEMにより観察した結果を示す写真である。 DLC膜を成膜する装置に関する概略構成図である。 DLC膜の表面加工を行うシステムに関する概略構成図である。 DLC膜のレーザ照射位置に関する説明図である。
符号の説明
1 基材
2 DLC膜
3 改質領域
4 微細周期構造
5 潤滑層

Claims (6)

  1. 摺動面に形成されるとともにその表面にガラス状炭素が生成された硬質カーボン膜と、前記硬質カーボン膜の表面に超短パルスレーザを照射して形成された微細周期構造と、前記微細周期構造を被覆するように形成された固体潤滑剤を含む潤滑層とを備えていることを特徴とする摺動材。
  2. 前記微細周期構造は、前記超短パルスレーザの波長よりも小さいサイズに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の摺動材。
  3. 前記潤滑層は、固体潤滑剤として二硫化モリブデンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動材。
  4. 摺動面に硬質カーボン膜を成膜する成膜工程と、成膜された前記硬質カーボン膜の表面に超短パルスレーザで隣接照射領域が一部重なり合うように順次照射してガラス状炭素を生成するとともに微細周期構造を形成する照射工程と、形成された前記微細周期構造を被覆するように固体潤滑剤を含む潤滑層を形成する層形成工程とを備えていることを特徴とする摺動材の製造方法。
  5. 前記照射工程では、前記超短パルスレーザを低フルーエンスで照射することを特徴とする請求項4に記載の摺動材の製造方法。
  6. 前記層形成工程では、二硫化モリブデンをスパッタリングして形成することを特徴とする請求項4又は5に記載の摺動材の製造方法。
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