JP2005133129A - 炭素薄膜構造並びに炭素薄膜の加工方法及び製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明では、硬質カーボン膜にガラス状炭素を形成することで両者の長所を併せ持つ炭素薄膜構造並びに炭素薄膜の加工方法及び製造方法を提供するものである。
【解決手段】基材表面に成膜された硬質カーボン膜に、低フルーエンスのパルスレーザー(フェムト秒レーザー等)を照射することで、照射部分にガラス状炭素を形成することができる。したがって、硬質カーボン膜の基材表面への付着力を備え、表面にはガラス状炭素の特性である耐摩耗性、耐熱性、耐食性、導電性及びガス不透過性を備えた炭素薄膜構造を構成することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、硬質カーボン膜にガラス状炭素が形成されている炭素薄膜構造及びそれを備えた加工物並びにパルスレーザーを用いた炭素薄膜の加工方法及び製造方法に関する。
近年炭素材料に関する研究開発が急速に発展してきている。炭素材料は、炭素原子の結合様式(sp混成軌道、sp混成軌道及びsp混成軌道)の種類によりさまざまな炭素同素体が生成される。sp混成軌道を備えたものとしてはダイヤモンドが代表例であり、sp混成軌道を備えたものとしてはグラファイト(黒鉛)が代表例として挙げられる。炭素材料は、実際にはこうした結合様式をベースにした結晶子の大きさやその配向様式、配向の程度によって多様性を持っている。
炭素材料の中で注目されているものの1つとして、硬質カーボンが挙げられる。硬質カーボンは、一般には、ダイヤモンド状炭素(Diamond Like Carbon;DLCと略称される)とも称されている。その他にも硬質非晶質炭素、無定型炭素、硬質無定型炭素、iカーボン等の別称があるが、明確に定義はされていない。いずれにしてもダイヤモンド及びグラファイトが混ざり合った中間的な構造を備えており、ダイヤモンドと同様に、高硬度で、耐摩耗性及び熱伝導性に優れ、切削工具や研磨用工具等の保護層として用いられている。硬質カーボンは、気相合成法により成膜することが行われており、イオンビーム法、スパッタリング法又はプラズマCVD法等により作製される。なお、本明細書において、「硬質カーボン膜」は、上記の硬質カーボンを膜状に成膜したものを意味する。
炭素材料の中で注目されている別の材料として、ガラス状炭素が挙げられる。ガラス状炭素は、グラッシーカーボン(Glassy Carbon)とも称されているが、グラファイトの基本構造である六角網面の結晶子が無配向に組織されており、約3000℃の高温に加熱処理してもグラファイト構造に変化することがない。したがって、ガラス状炭素は、難黒鉛化性炭素とも称されており、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、潤滑性、離型性、ガス不透過性に優れており、導電性も有している。ガラス状炭素は、フェノール樹脂等の熱硬化樹脂を成形して、1000〜1500℃の高温に加熱処理して炭素化及び黒鉛化してバルク状に作製される。
ガラス状炭素の製造方法としては、例えば、特許文献1では、シリカガラス部材の表面をガラス状カーボンで被覆した点が記載されている。また、特許文献2では、熱硬化性樹脂を中子を用いてパイプ状に成形し、焼成してガラス状炭素製パイプを製造する点が記載されている。また、特許文献3では、チタン金属表面に緻密で強固なチタン酸化物の被膜を形成し、被膜の表面を炭化水素系ガスを含有する雰囲気中でプラズマ熱処理してガラス状カーボン被膜を形成する点が記載されている。
特開平9−86964号公報 特開平11−322428号公報 特開平11−43770号公報
しかしながら、ガラス状炭素は、炭素化する際に体積が大きく収縮するので、クラックが発生しやすく、精密な加工を行うことが困難である。膜状に形成する場合も収縮することは避けられず、また特許文献1のようにガラス表面を化学的処理法により粗くしたり、特許文献3のようにチタン酸化被膜を形成しておくといった前処理が必要となる。一方、硬質カーボン膜は、気相合成法により薄膜を生成することは容易であるが、導電性がほとんどなく、また耐熱性及び耐酸化性に劣るといわれている。
そこで、本発明では、硬質カーボン膜からガラス状炭素を形成すること、あるいは硬質カーボン膜中にガラス状炭素を形成することで両者の長所を併せ持つ炭素薄膜構造並びに炭素薄膜の加工方法及び製造方法を提供するものである。
本発明に係る炭素薄膜構造は、基材表面に成膜された硬質カーボン膜の少なくとも一部の領域にガラス状炭素が形成されていることを特徴とする。さらに、前記ガラス状炭素は、前記硬質カーボン膜の表面に層状に形成されていることを特徴とする。さらに、前記硬質カーボン膜の基材表面側に導電性を有する領域が形成されていることを特徴とする。
本発明に係る電極構造は、上記の炭素薄膜構造を備えたことを特徴とする。
本発明に係る記録媒体は、上記の炭素薄膜構造を備えたことを特徴とする。
本発明に係る被加工物は、上記の炭素薄膜構造を備えたことを特徴とする。
本発明に係る炭素薄膜の加工方法は、基材表面に成膜された硬質カーボン膜の表面にパルスレーザーを照射してガラス状炭素を形成することを特徴とする。さらに、前記パルスレーザーは、低フルーエンスで照射されるレーザーであることを特徴とする。
本発明に係る炭素薄膜の製造方法は、基材表面に硬質カーボン膜を成膜する工程と、成膜された硬質カーボン膜の表面にパルスレーザーを照射してガラス状炭素を形成する工程とを備えたことを特徴とする。さらに、前記パルスレーザーは、低フルーエンスで照射されるレーザーであることを特徴とする。さらに、前記硬質カーボン膜を成膜する工程において基材表面側に導電物質により導電性を有する領域が生成されることを特徴とする。
本発明に係る炭素薄膜構造は、上記のような構成を有することで、硬質カーボン膜の少なくとも一部の領域にガラス状炭素が形成されているので、硬質カーボン膜及びガラス状炭素の長所を併せ持つ炭素薄膜構造とすることができる。すなわち、硬質カーボンは成膜が容易で、基材表面への密着性を高めることができ、そして、ガラス状炭素を形成することで、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、潤滑性、離型性、ガス不透過性及び導電性といった特性を与えることができる。
硬質カーボン膜がベースとなるため、ガラス状炭素を膜状に形成する場合の収縮といった問題を避けることができ、精密加工や微細加工を行う場合にも被加工物表面に精密にガラス状炭素を形成することができる。特に、ガラス状炭素を硬質カーボン膜の表面に層状に形成して表面を覆うようにすれば、耐食性やガス不透過性を与えることができるため、半導体素子の製造装置等の不純物を極端に排除しなければならない装置の治具に本発明に係る炭素薄膜構造は好適である。また、ガラス状炭素により表面が覆われていることで、基材からの金属等の不純物の溶出を防止することができることから、生体内で使用される金属部品等にも本発明に係る炭素薄膜構造は好適である。
また、ガラス状炭素は導電性を有することから、硬質カーボン膜の表面の必要箇所にガラス状炭素を形成すれば、基材表面との間で電気的に導通して電極構造として用いることができる。そして、上述したように、ガラス状炭素は金属等の溶出を防止できるため、電極として通電した場合にも不純物が出ることがない。したがって、半導体装置の電極や生体内で用いる電極等の不純物を極端に嫌う電極構造に好適である。また、必要に応じて硬質カーボン膜の基材表面側に導電性を有する領域を形成しておけば、この領域とガラス状炭素が重なり合うことで、確実に導通状態を確保することができるようになる。したがって、基材表面に凹凸がある場合にも硬質カーボン膜の導電性を有する領域で覆うことでガラス状炭素との電気的な接続を確実にすることが可能となる。また、このような特性を、各種の電子デバイス中での絶縁膜中の伝導路形成のために利用することができる。
さらに、ガラス状炭素の導電性を利用して、必要箇所にメッキを行うこともできる。すなわち、硬質カーボン膜を基材表面に形成した後メッキを行う部分のみガラス状炭素を形成してメッキを行えば、精密にメッキを行うことができ、また微細な構造にもメッキをすることが可能となる。
また、硬質カーボン膜とガラス状炭素とは、上述したように導電性の有無で電気的特性が異なり、またレーザーラマン強度比においても光学的特性が明確に異なることから、こうした特性の違いを利用して記録媒体として用いることもできる。すなわち、記録情報に対応して硬質カーボン膜にスポット状にガラス状炭素を形成しておき、電磁気的に又は光学的にガラス状炭素の形成の有無を検知すれば、記録情報の書き込みを高密度で行うことができるとともに高速で記録情報を読み取ることも可能となる。
本発明に係る炭素薄膜の加工方法は、基材表面に成膜された硬質カーボン膜の表面にパルスレーザーを照射してガラス状炭素を形成することで、硬質カーボン膜の表面の必要箇所にガラス状炭素を形成することができる。そして、パルスレーザーとして、低フルーエンスで照射されるレーザーを用いることで硬質カーボン膜の表面を破壊することなく照射部分に所定の深さまで層状にガラス状炭素を形成することができる。
本発明に係る炭素薄膜の製造方法は、基材表面に硬質カーボン膜を成膜する工程と、成膜された硬質カーボン膜の表面にパルスレーザーを照射してガラス状炭素を形成する工程とを備えたことで、様々な基材表面に効率よく炭素薄膜を製造することができ、また、硬質カーボン膜を成膜する際に基材表面側に導電物質により導電性を有する領域を容易に形成することができる。
ここで、「パルスレーザー」とは、出力光強度が時間的に変化して一定の持続時間だけ発振するレーザーのことである。そして、「フルーエンス」(fluence)とは、レーザーの1パルス当りの出力エネルギーを照射断面積で割って求めたエネルギー密度(J/cm)である。一般に、「低フルーエンス」とは相対的にこの値が小さいことを言うが、ここでは、レーザーを材料表面に照射することで材料表面が蒸散する現象が生じるエネルギー密度の最小値(アブレーション閾値)近傍のフルーエンスを指している。この範囲ではレーザーの照射による熱影響がほとんどない。アブレーション閾値及び低フルーエンスの範囲は材料によって異なる。低フルーエンスの範囲は主にその材料の融点の違いにより異なり、通常アブレーション閾値の5倍程度を上限とする範囲で、材料によっては10倍程度の範囲まで熱影響がほとんど生じない場合もある。低フルーエンスの一例として、銅のレーザー加工では、アブレーション閾値が0.14J/cmで、0.46J/cmまでレーザー照射による熱の影響がほとんど生じないという実験結果が発表されており、この場合低フルーエンスの上限はアブレーション閾値の3倍程度となっている。
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
図1は、パルスレーザーとして、特に材料への熱影響の少ない超短パルスレーザーを用いた加工装置の構成図を示している。1はフェムト秒レーザー発振器であり、モード同期チタン・サファイアレーザーを用い、パルス幅が25fs(フェムト秒)、出力パルスエネルギー5nJ(ナノジュール)、波長800nmのレーザーパルスを発振する。このレーザーパルスは、パルス伸長器2でパルス幅が伸長されて増幅器3でパルスエネルギーが増幅される。増幅されたレーザーパルスは、必要に応じて光減衰器4で強度が減衰された後パルス圧縮器5でパルス幅が圧縮されて、パルス幅40fs、最大パルスエネルギー40mJ、繰り返し周波数10Hz、波長800nmの高強度なフェムト秒レーザーとなる。こうして得られたフェムト秒レーザーは、波長板6により偏光制御され、フィルター7及びレンズ8を通過して、試料台10に載置した固体材料からなる試料9の表面に照射される。波長板6は、直線偏光(縦方向、横方向)、円偏光など必要に応じ選択・制御される。直線偏光の偏光方向を制御する場合はλ/2板を配置して光軸に垂直な面内で同波長板6を回転すればよい。また、円偏光及び楕円偏光の場合には、λ/4板を配置すればよく、同波長板を光軸に垂直な面内で回転することによって、円偏光及び任意の楕円偏光を生成できる。フルーエンスの調整は、光減衰器4及びフィルター7により行われるが、光減衰器4のみでも構わない。
なお、パルス圧縮器5から出力されたレーザーパルスを波長変換器に通過させることにより、出力波長を異なる波長域へ変換することもできる。波長変換の一例として、パルス圧縮器5から出力されたレーザー(波長800nm)をBBO(β−ホウ酸バリウム)結晶板(厚さ0.2mm)、方解石の結晶板(厚さ2mm)、波長板及びBBO結晶板(厚さ0.3mm)を通過させることにより波長267nmのレーザーを得ることもできる。
上記の加工装置では、チタン・サファイアレーザーを用いているが、超短パルスレーザーを発振することが可能なものであれば採用することができ、特にレーザーの種類には限定されない。
図1に記載の加工装置を用いて炭素薄膜の加工を行った。基材としてステンレス鋼(SUS304)からなる板状体を使用し、その表面に予め硬質カーボン膜(DLC膜)を1.5μmの層厚で成膜したものを用いた。フェムト秒レーザーとして、波長800nmでパルス幅40fsのレーザーを直線偏光(横(p)偏光)させDLC膜の表面に照射した。レーザーの照射表面のスポット径は約200μmで、パルス照射を繰り返し行う場合の周波数は10Hzとした。
加工方法としては、フルーエンス及び照射パルス数を以下のような条件で設定して行った。
(条件)(フルーエンス) (照射パルス数)
J/cm
条件A 0.13 100
条件B 0.15 100
条件C 0.17 10
条件D 0.41 10
図2は、条件AからDでDLC膜の表面を照射した後その照射面をラマン分光測定装置(株式会社日製エレクトロニクス製顕微ラマン分光分析装置、Arレーザースポット径1μm)で測定した結果を示している。図2(a)は条件Aの場合、図2(b)は条件Bの場合、図2(c)は条件Cの場合、図2(d)は条件Dの場合を示しており、比較のため照射していないDLC膜を測定した結果を図2(e)に示す。各グラフは、縦軸にラマンスペクトルの強度をとり、横軸にはその波数をとっている。
一般に、グラファイトをラマン分光測定装置で測定すると、その結晶構造である六角網面内の格子振動が反映されて1580cm-1付近に強いピークが観測されることが知られている。そして、ガラス状炭素については、グラファイト構造に近い1590cm-1付近のピークの他に不完全な結晶構造を示すといわれる1355cm-1付近のピークが観測され、一般に1355cm-1の方がピーク強度が大きくなることが知られている。したがって、このようなラマンスペクトルのピーク特性によりガラス状炭素の存在を確認することが可能となる。
図2の測定結果をみると、いずれも1590cm-1及び1355cm-1付近に2つのピークが観測されており、フルーエンスが小さいほど1355cm-1のピークが強く観測されている。一方、DLC膜については、こうしたピークは全く観測されていない。したがって、フェムト秒レーザーの照射によりDLC膜表面にガラス状炭素が形成され、低フルーエンス時に典型的なスペクトルを示すことがわかる。
図3は、条件AからDでDLC膜の表面を照射した後の照射面を横切るように原子間力顕微鏡(AFM)により測定した結果を示している。この測定結果からみると、フルーエンスが低いほど照射面の破壊は小さくなっており、条件Aの場合には照射面はほとんど破壊されていない。また、いずれの場合でも照射面周辺にクラック等は発生しておらず、ガラス状炭素の生成に基づく収縮は見られなかった。
以上のことから、DLC膜に低フルーエンスでフェムト秒レーザーを照射することでガラス状炭素が形成されることがわかる。そして、フルーエンスとしては0.15J/cm以下とすると、DLC膜の照射面での破壊が少なくなり特に好ましい。また、DLC膜の照射面では、条件Aの場合、照射するレーザーの照射中心から半径約50μmの範囲にガラス状炭素が形成されており、非常に微細な構造においてもガラス状炭素を形成する加工を行うことが可能である。
また、DLC膜表面にパルスレーザーを照射してガラス状炭素が形成される範囲は、照射されるレーザーの波長、フルーエンス、パルス数及びパルス強度といったレーザーパラメータにより制御可能と考えられることから、これらのパラメータを適宜調整してガラス状炭素の形成範囲の広がりや深さを調整することができると考えられる。
上記の例では、加工装置にフェムト秒レーザーを使用しているが、これ以外のパルスレーザーを使用することもできる。すなわち、DLC膜が熱的、機械的な影響により変質しない範囲で局所的に高密度のエネルギーを加えることが可能であればガラス状炭素を形成することができると考えられることから、DLC膜の状態(層厚、基材の材料等の外部環境)によっては、例えばピコ秒レーザーやナノ秒レーザーといったパルスレーザーを使用することが適切な場合があると考えられる。
また、パルスレーザーの照射中心を約50μmずつずらして照射していけば、DLC膜表面に層状にガラス状炭素を形成することが可能となる。さらに、DLC膜表面全体を照射してガラス状炭素で覆われるようにすれば、基材側はDLC膜により密着性を高め、外表面側はガラス状炭素により耐食性、耐熱性、ガス不透過性といった特性を持たせた炭素薄膜構造とすることができる。
また、ガラス状炭素をDLC膜の層厚以上の深さまで形成すれば基材表面とガラス状炭素が接する状態となり、ガラス状炭素が有する導電性により基材表面から通電することが可能となる。したがって、ガラス状炭素部分を電極として用いることができ、また通電可能なことからガラス状炭素部分にメッキを施すことも容易に行うことができる。そして、こうした電極構造及びメッキ構造を微細な構造の中で形成することが可能となる。
図4は、DLC膜を成膜するための装置の一例として、非平衡マグネトロンスパッタリング装置を示しており、図4(a)は、この装置の構成を原理的に示している。DLC膜が形成される基板20にはバイアス電源が接続されており、炭素からなるターゲット21にはスパッタ電源が接続されている。そして、基板20及びターゲット21の間には、放電用ガスとして導入されたアルゴンのプラズマが形成される。ターゲット21の背面には外側磁極22と内側磁極23が設けられており、外側磁極22を内側磁極23よりも強磁場にすることで、点線の矢印で示すように磁力線を発生させアルゴンプラズマをより高密度の状態にしてDLC膜の成膜効率を向上させている。
図4(b)は、実際の装置構成を示す概略図である。円筒形の密閉容器30内には、その内壁面に沿って、所定間隔で4つのスパッタ源31が配置されている。各スパッタ源31にはターゲットとして炭素材料が設置されており、そのうちの1つは炭素材料の代わりに金属材料が設置されている。スパッタ源31の間には補助磁極33が配置されており、スパッタ源31の磁極との間で点線で示すような磁力線32を発生させる。そして、アルゴンプラズマ源34で生成されたプラズマ35は磁力線32により容器30の中心部に高密度の状態で保持されるようになる。容器30の中心部には基板37を載置したワークテーブル36が配置されており、ワークテーブル36は容器30の中心に配置された回転軸により回転可能となっている。
ワークテーブル36上の基板37と各スパッタ源31との間に所定電圧を印加すると、アルゴンプラズマ35中のアルゴンイオンがターゲットに衝突し、その衝撃によりターゲットの材料の原子が飛び出し基板37の表面に被着して成膜されるようになる。各スパッタ源31のうち1つを金属材料のターゲットに代えておくことで、基板上には炭素原子とともに金属原子がドープされるようになり、金属原子がドープされた領域は導電性を有するようになる。したがって、基板にDLC膜の成膜を開始して所定時間は、金属材料をターゲットとして設置したスパッタ源31に電圧が印加される状態としておき、金属原子を基板表面にドープさせていく。その後、金属材料をターゲットとして設置したスパッタ源31に電圧を印加せず炭素原子のみを被着させるようにする。このようにしてDLC膜を成膜することで、基板側だけ金属原子が含まれて導電性を持たせることができる。
株式会社神戸製鋼所製の非平衡マグネトロンスパッタリング装置を使用し、ターゲットとして3枚の炭素板及び1枚のクロム(Cr)からなる金属板を用いてステンレスからなる基板表面にDLC膜を成膜した。バイアス電圧として100Vの電圧を印加し、アルゴンプラズマの原料としてアルゴン(Ar)ガスにメタンガス(5%)を混合したものを用いた。上述のように成膜開始から金属板に電圧を印加しその後金属板への電圧印加を停止して成膜を行い、約1.5μmの膜厚のDLC膜を作製した。このDLC膜に上述したようにパルスレーザーを照射してガラス状炭素を形成することで、ガラス状炭素の深さが浅い場合でもDLC膜の基材表面側に導電性を有する領域が形成されているため、確実にガラス状炭素との間に電気的な導通状態を実現することができる。
以上のように、DLC膜の成膜工程において膜厚調整や導電性等の特性付与を行い、パルスレーザーの照射工程でレーザーの波長、フルーエンス、照射パルス数及びパルス強度を適宜調整して、様々な炭素薄膜を製造することが可能となる。
なお、DLC膜の成膜は、上述した方法以外でも可能で、スパッタリング法に代表されるPVD法以外にもCVD法でも行うことができ、気相合成法全般について用いることができる。そして、基材としては、DLC膜が成膜可能なものであれば、材料及びその形状は特に限定されない。
本発明に係る炭素薄膜構造では、硬質カーボン膜の表面全体に層状にガラス状炭素を形成すれば、被加工物表面に密着性の高い硬質カーボン膜を付着させ、そして、ガラス状炭素で被加工物表面を覆うことができ、被加工物に耐摩耗性、耐熱性、耐食性及びガス不透過性といった特性を付与することができる。したがって、半導体製造装置や生体内に用いる医療器具といった化学的な汚染が非常に厳しく制限される部品に好適である。
また、ガラス状炭素は導電性を有することから、パルスレーザーの照射部分のみ導電性を持たせて基材表面と導通した状態にし、電極構造とすることも可能である。したがって、半導体装置の微細な電極構造や生体内に用いる医療器具の電極構造としても好適である。また、こうした導電性を利用してガラス状炭素部分にメッキを施すことも容易に行うことができる。
また、硬質カーボン膜とガラス状炭素との特性の相違を生かして記録媒体として用いることもできる。すなわち、両者は上述したように導電性といった電気的特性や図3において説明したようにラマンスペクトルのピーク特性といった光学的特性が大きく異なるため、記録情報に応じて硬質カーボン膜の表面にパルスレーザーによりスポット状にガラス状炭素を形成しておき、上述の電気的特性及び光学的特性に基づいてガラス状炭素の有無を検知することが可能となる。ガラス状炭素は微小な領域に形成可能なため記録密度の高密度化が可能で、読取も高速で行うことができる。
本発明に係る加工方法を実施するための加工装置の構成図である。 DLC膜の照射面をラマン分光測定装置により測定した結果を示すグラフである。 DLC膜の照射面をAFMより測定した結果をプロファイルした図である。 DLC膜を成膜する装置の概略構成図である。
符号の説明
1 フェムト秒レーザー発振器
2 パルス伸長器
3 増幅器
4 光減衰器
5 パルス圧縮器
6 波長板
7 フィルター
8 レンズ
9 試料
10 試料台

Claims (11)

  1. 基材表面に成膜された硬質カーボン膜の少なくとも一部の領域にガラス状炭素が形成されていることを特徴とする炭素薄膜構造。
  2. 前記ガラス状炭素は、前記硬質カーボン膜の表面に層状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素薄膜構造。
  3. 前記硬質カーボン膜の基材表面側に導電性を有する領域が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素薄膜構造。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の炭素薄膜構造を備えた電極構造。
  5. 請求項1から3のいずれかに記載の炭素薄膜構造を備えた記録媒体。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載の炭素薄膜構造を備えた被加工物。
  7. 基材表面に成膜された硬質カーボン膜の表面にパルスレーザーを照射してガラス状炭素を形成することを特徴とする炭素薄膜の加工方法。
  8. 前記パルスレーザーは、低フルーエンスで照射されるレーザーであることを特徴とする請求項7に記載の炭素薄膜の加工方法。
  9. 基材表面に硬質カーボン膜を成膜する工程と、成膜された硬質カーボン膜の表面にパルスレーザーを照射してガラス状炭素を形成する工程とを備えたことを特徴とする炭素薄膜の製造方法。
  10. 前記パルスレーザーは、低フルーエンスで照射されるレーザーであることを特徴とする請求項9に記載の炭素薄膜の製造方法。
  11. 前記硬質カーボン膜を成膜する工程において基材表面側に導電物質により導電性を有する領域が生成されることを特徴とする請求項9又は10に記載の炭素薄膜の製造方法。
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