JP2017210636A - コーティング膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材に対するコーティング剤の被覆率を向上させ、基材の表面に微細形状を広範囲に均質的に制御し形成することが容易であるコーティング膜形成方法を提供する。【解決手段】少なくとも酸素分子及び水分子が存在する環境下において、無機材料を含む基材表面に、アブレーションが生じる照射強度で、照射部分をオーバーラップするように走査しながらレーザを照射し、基材の表面にアブレーションを生じさせて、アブレーションが生じた基材の表面とコーティング剤とを化学結合により結合させてコーティング膜を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、コーティング膜形成方法に関するものである。
基材の保護、性質の向上、機能追加等を目的として、材料表面に種々のコーティング膜が形成されることがある。例えば、表面エネルギーが小さいフッ素は撥液性が高いため、材料表面へフッ素コーティングが施されることがある。通常、材料表面の活性が低いとコーティングの被覆率が低下するため、コーティングの前処理として、脱脂洗浄後、プラズマ照射やUVオゾン洗浄が行われている。また、表面積倍率を増加させるために、コーティング後の表面に凹凸が現れるよう、前もってブラスト処理が行われる場合もある。
しかしながら、プラズマ照射では、加工対象物を真空容器内に設置して処理するため、装置が大がかりになるという問題がある。また、UVオゾン洗浄は、処理中に発生するオゾンが人体に有毒であるため、排気装置を備えなければならない。さらに、凹凸を形成するためのブラスト処理は、微細なブラスト材が基材表面に残るという問題がある。
そこで、加工対象物を大気中で処理でき、また、人体に有毒な気体も使用しない方法として、特許文献1のものが提案されている。特許文献1には、加工対象物を大気中で処理できる方法が提案されている。この特許文献1の方法は、基材表面にレーザを照射して金属を溶融させ、金属表面に金属水酸化物を形成する。これにより、樹脂や塗料等のコーティング剤と、基材表面とが化学結合を形成することで、コーティング剤と基材との接着性が向上する。それと同時に、基材表面を溶融させることで、凹凸形状が形成される。
特開2008−214751号公報
特許文献1に記載の方法は、レーザ照射により基材を溶融させる加工法であるから、図10(a)に示すように、基材表面の汚染物Dは十分に除去されず、表面に留まっている可能性がある。この状態でコーティング膜Cを形成すると、図10(b)に示すように、汚染物D上にコーティング膜Cが形成される。この場合、汚染物Dがコーティング剤と基材Wとの結合を阻害し、コーティング剤が基材に密着しないおそれがある。
また、特許文献1のものは、凹凸形状の大きさは、集光点の大きさの影響を受けるため、短波長レーザを使用したり短焦点レンズで集光したりするなどして集光点を小さくしなければならず、数ミクロンあるいはサブミクロンの微細な形状を制御して均質的に広範囲に形成することが難しいという問題がある。
そこで、本発明は、基材に対するコーティング剤の被覆率を向上させ、基材の表面に微細形状を広範囲に均質的に制御し形成することが容易であるコーティング膜形成方法を提供する。
本発明のコーティング膜形成方法は、少なくとも酸素分子及び水分子が存在する環境下において、無機材料を含む基材表面に、アブレーションが生じる照射強度で、照射部分をオーバーラップするように走査しながらレーザを照射し、基材の表面にアブレーションを生じさせて、アブレーションが生じた基材の表面とコーティング剤とを化学結合により結合させてコーティング膜を形成するものである。
本発明のコーティング膜形成方法によれば、アブレーションが生じる照射強度でレーザを照射し、レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面とコーティング剤とを化学結合させてコーティング膜を形成する。これにより、基材表面が高温となって蒸散(アブレーション)され、基材とともに基材表面の有機汚染物も吹き飛んで、基材表面がクリーニングされる。基材表面の有機汚染物は、コーティング剤と基板表面との結合を阻害するものであり、基材表面に有機汚染物が存在すると、コーティング剤は基材に直接結合できない。このため、アブレーションが生じることにより有機汚染物を除去することができ、基材表面のうち、コーティング剤において基材表面との化学結合を起こす官能基と基材との接触率が向上する部分の密度を向上させることができる。
前記構成において、アブレーションが生じた基材の表面とコーティング剤との化学結合は、酸―塩基反応またはシランカップリング反応としてもよい。
前記構成において、レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面における酸化物の構成比率が、レーザ未照射部分より高いものであるのが好ましい。
前記構成において、前記基材がステンレスであり、レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面におけるFeに対するCrの構成比率が、レーザ未照射部分よりも高いものとしてもよい。
前記構成において、レーザ照射部分にレーザ波長の5倍よりも小さな周期間隔をもつ表面微細周期構造が形成されていてもよい。
前記構成において、レーザ照射部分に、前記表面微細周期構造が連続して均質的に形成されていてもよい。
前記表面微細周期構造は、アブレーションが生じる照射強度でレーザを照射し、その照射部分をオーバーラップさせながら基材表面と相対的に走査させ、自己組織的に形成することができる。
前記構成において、前記コーティング膜にフッ素が含有されているものであってもよい。また、前記コーティング膜は、単分子膜であってもよい。
本発明では、基材表面のうち、コーティング剤において基材表面との化学結合を起こす官能基と基材との接触率が向上する部分の密度を向上させることができるため、コーティング剤の被覆率を向上させることができる。
アブレーションが生じる照射強度でレーザを照射し、レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面に、酸―塩基反応またはシランカップリング反応によってコーティング膜を形成することで、基材表面の有機汚染物が除去され、酸―塩基反応またはシランカップリング反応を起こす官能基と基材との接触率向上により、コーティング膜の被覆率を向上させることができる。
レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面における酸化物の構成比率が、レーザ未照射部分より高いことで、基材の表面の水酸基が増加し、酸―塩基反応またはシランカップリング反応、またはその他の反応による吸着活性が高くなり、コーティング膜の被覆率を向上させることができる。
基材がステンレスであり、レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面におけるFeに対するCrの構成比率が、レーザ未照射部分よりも高いことで、基材の表面に不動態被膜となるCrと結合した水酸基が増加し、酸―塩基反応またはシランカップリング反応、またはその他の反応による吸着活性が高くなり、コーティング膜の被覆率を向上させることができる。
レーザ照射部分にレーザ波長の5倍よりも小さな周期間隔をもつ表面微細周期構造が形成されていることで、基材の表面積倍率を増加させることにより、見かけの面積に対する酸―塩基反応またはシランカップリング反応、またはその他の反応による吸着密度を向上させることができる。また、コーティング膜の表面積倍率を増加することができるため、コーティング剤が機能性を有する場合には、その効果を高めることができる。さらには、表面微細周期構造の形成により表面微細周期構造が有する機能(例えば、摩擦特性の制御、流体の制御、耐摩耗性の向上、微小物体の付着の抑制、光の反射低減、放熱性向上、ぬれ性の制御、皮膜密着性の向上、細胞の配向制御、金型としての機能等)を追加することができる。
前記表面微細周期構造は、アブレーションが生じる照射強度でレーザを照射し、その照射部分をオーバーラップさせながら基材表面と相対的に走査させ、自己組織的に形成することができるため、表面微細周期構造形成部分は、もれなくレーザ照射されている。そのため、均質的な表面微細周期構造を広範囲に形成可能であるため、表面微細周期構造を形成した部分の機能の位置によるばらつきが小さい。
また、照射レーザは加工面に垂直に入射しなくともよい。
コーティング膜にフッ素が含有されていることで、強固に化学吸着した撥液性を有するコーティング膜を高い被覆率で形成することができる。
本発明の実施例において使用するレーザ表面加工装置の簡略図である。 本発明の実施形態を示すレーザ照射の簡略図である。 レーザ照射により基板表面に表面微細周期構造が形成された状態を示す簡略図である。 基板表面にコーティング膜を形成した状態を示す簡略図である。 本発明の実施形態を示すレーザ照射時の材料の表面状態を示す簡略図である。 本発明の実施例で用いたSUS304基板表面の電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例で用いたSUS304基板表面に形成された表面微細周期構造の断面状態を示す図である。 フッ素コーティングを施したUVオゾン基板及びレーザ加工基板の水の接触角を示すグラフ図及び測定画像図である。 本発明の実施例において得られた、UVオゾン基板、レーザ加工基板、及び、未加工基板の表面のX線光電子分光分析を示すグラフである。 従来のコーティング膜形成方法の問題点を示す図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明に係るコーティング膜形成方法において、基材の材料は、主として無機材料であれば自由に選択することができる。例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、鉛(Pb)、錫(Sn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)などを主成分とする材料、さらにはこれらの材料の2種以上を含む化合物が使用される。また、窒化ガリウムや炭化珪素など、基材に窒素や炭素を含んでもよい。リンや硫黄を含むこともできる。本実施形態では、本発明の一実施形態であり、基材の材料としてステンレス鋼材(SUS304)を用いる場合について説明する。
照射するレーザとしては、例えばフェムト秒レーザを使用する。なお、フェムト秒レーザは、そのパルスの半値全幅がフェムト秒(「フェムト」は「10のマイナス15乗」の意)台であるレーザのことを示す。また、照射するレーザとしては、ピコ秒レーザであってもよい。「ピコ」は「10のマイナス12乗」の意である。
少なくとも酸素分子及び水分子が存在する環境下(本実施形態では大気中)において、このステンレス鋼材からなる被覆対象物(基材)Wに、例えば図1に示すフェムト秒レーザ表面加工装置を用いて、被覆対象物Wの表面がアブレーション(蒸散)が生じる照射強度で、図2に示すようにレーザLを集光照射する。アブレーションが生じる照射強度とは、具体的には、波長200nm〜3000nm、パルス幅10fs〜1ns、照射エネルギー0.01J/cm2〜100J/cm2、より好ましくは0.05J/cm2〜50J/cm2である。これにより、被覆対象物表面のレーザ照射された領域は高温となり飛散微粒子として蒸散する。
このように、アブレーションが生じる照射強度でレーザを照射し、レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査すると、前記したように基材表面が高温となって蒸散が起こり、図3に示すように、加工領域に照射レーザ波長の5倍よりも小さな周期間隔と、照射レーザ波長の半分程度あるいはそれ以下の凹凸深さを持った表面微細周期構造10が均質的に連続して形成される。この表面と、フッ素が含有されたコーティング剤とを化学結合させることによって、図4に示すように、フッ素含有の撥液性膜(コーティング膜C)を形成する。なお、コーティング膜Cの膜厚は、本実施形態では単分子膜であり、最大20nmであるのが好ましい。
大気中でレーザ照射しているため、レーザの照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面における酸化物の構成比率は、レーザ未照射部分よりも高くなっている。すなわち、レーザの照射部分は、図5に示すように、表面が酸化し、表面には基材由来の酸化物(図中―Oで示す)が形成されるとともに、大気中の水分と反応して、表面には基材由来の水酸化物(図中―OHで示す)(以下、水酸基ということもある)が形成された状態となっている。このため、レーザ照射部分は、酸化物と強固に結合する(酸―塩基反応)コーティング剤(例えば、デュラサーフDS-5935SH:ハーベス社製)や、水酸化物と強固に結合する(シランカップリング反応又は脱水縮合)コーティング剤(例えば、デュラサーフDS-5210TH:ハーベス社製)によってコーティング膜を形成することが好適となる。このように、レーザの照射部分は、基材の表面の水酸基が増加し、酸―塩基反応またはシランカップリング反応、またはその他の反応による吸着活性が高くなり、コーティング膜の被覆率を向上させることができる。
なお、前記コーティング剤は、あくまで例示であって、「少なくとも酸素分子及び水分子が存在する環境下において、無機材料を含む基材表面に、アブレーションが生じる照射強度で、照射部分をオーバーラップするように走査しながらレーザを照射し、基材の表面にアブレーションを生じさせて、アブレーションが生じた基材の表面とコーティング剤とを化学結合により結合させてコーティング膜を形成する」ことができるものであればよく、レーザ照射した基材表面に強固に結合するものであれば、前記例示のものに限るものではない。
また、図5に示すように、基材表面の蒸散によって、基材とともに基材表面の有機汚染物Dが吹き飛んで、基材表面がクリーニングされる。基材表面の有機汚染物Dは、コーティング剤と基板表面との結合を阻害するものであり、基材表面に有機汚染物が存在すると、コーティング剤は基材に直接結合できない。このため、アブレーションが生じることにより有機汚染物Dを除去することができ、基材表面のうち、コーティング剤において基材表面との化学結合を起こす官能基と基材との接触率が向上する部分の密度を向上させることができるため、コーティング剤の被覆率を向上させることができる。
前記したように、加工領域は、表面微細周期構造10が形成されることにより、未加工の基材表面よりも表面積倍率を増加させることにより、コーティング剤との結合可能部分(図3において微細線で示す)を増加させて密着性を向上させることができる。すなわち、見かけの面積に対する酸―塩基反応またはシランカップリング反応、またはその他の反応による吸着密度を向上させることができる。また、コーティング膜の表面積倍率を増加することができるため、コーティング剤が機能性を有する場合には、その効果を高めることができる。さらには、表面微細周期構造10の形成により表面微細周期構造10が有する機能(例えば、摩擦特性の制御、流体の制御、耐摩耗性の向上、微小物体の付着の抑制、光の反射低減、放熱性向上、ぬれ性の制御、皮膜密着性の向上、細胞の配向制御、金型としての機能等)を追加することができる。例えば、同じ材質の撥液性表面でも、凹凸を有する(表面積倍率の大きい)ほうが、液滴の接触角が大きくなるため、撥液性膜が凹凸形状であると、撥液性が強調されたものとなる。
前記表面微細周期構造は、アブレーションが生じる照射強度でレーザを照射し、その照射部分をオーバーラップさせながら基材表面と相対的に走査させ、自己組織的に形成することができるため、表面微細周期構造形成部分は、もれなくレーザ照射されている。そのため、均質的な表面微細周期構造を広範囲に形成可能であるため,表面微細周期構造を形成した部分の機能の位置によるばらつきが小さい。
また、本実施形態では基材がステンレス鋼材である。従って、レーザの照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面におけるFeに対するCrの構成比率が、レーザ未照射部分よりも高くなることで、基材の表面に不動態被膜となるCrと結合した水酸基が増加し、酸―塩基反応またはシランカップリング反応、またはその他の反応による吸着活性が高くなり、コーティング膜の被覆率を向上させることができる。
以下に、本発明の実施例を説明する。この実施例は、超短パルスレーザであるフェムト秒レーザ照射によるSUS304平滑基板への表面微細周期構造形成がフッ素含有単分子膜コーティングの被覆率に及ぼす影響について検証した。
フェムト秒レーザ(中心波長800nm、パルス幅120fs)を、基材表面がアブレーションを生じる照射強度で照射し、その照射部分をオーバーラップさせながら基材表面との相対的な走査照射により、基材表面に自己組織的に表面微細周期構造を形成したSUS304基板(以下、レーザ加工基板という)の表面の走査電子顕微鏡(SEM)像を図6(a)、図6(b)に示す。図6(a)の中央部を拡大して撮影したものが図6(b)である。これら図6(a)、図(b)から、表面微細周期構造が基材表面に広範囲に均質に形成されていることがわかる。このレーザ加工基板にフッ素コーティングを施し、表面微細周期構造を原子間力顕微鏡(AFM)で計測した結果、図7に示すように、周期は約690nm、凹凸の深さは約160nmであった。また、表面積倍率は1.47であった。なお、フッ素コーティングはディップコータを用いて行った。コーティング剤には、基材表面の水酸基と結合するシランカップリング剤を吸着基とする、平滑面接触角114°(カタログ値)のものを用いた。一方、対照基板として、30min間のUVオゾン洗浄を施したもの(以下、UVオゾン基板という)、及び未処理のもの(以下、未加工基板という)を用意した。
フッ素コーティングを施した基板に対する、純水(2μl)の接触角をθ/2法にて測定した。測定した接触角θLから、Cassieの式cosθL=rf{Acosθ1+(1−A)cosθ2}を用いてフッ素コーティングの被覆率を算出した。なお、Aはフッ素コーティングの被覆率、θ1はフッ素コーティングの平滑面における水の接触角(114°)、θ2は未加工基板の水の接触角(53.9°)、rfは表面積倍率である。
いずれもフッ素コーティングを施した、UVオゾン基板及びレーザ加工基板の水の接触角を、測定画像とともに図8に示す。コーティングしたUVオゾン基板の水の接触角は74.9°であり、カタログ値(114°)と比較して非常に小さな値となった。UVオゾン基板の表面積倍率を1として前記Cassieの式から算出した結果、コーティングの被覆率は33.0%となった。これは、30min間のUVオゾン洗浄を行ったにもかかわらずフッ素コーティングが基板表面を十分に覆っていないことを示している。
一方、コーティングしたレーザ加工基板の水の接触角は133°であった。AFM測定によって得られた表面積倍率1.47と、前記Cassieの式から予測される水の接触角は、フッ素コーティングの被覆率を100%と仮定した場合に127°となり、実測値と近い値となった。このことは、フェムト秒レーザ照射により、表面微細周期構造の表面のフッ素コーティング被覆率が100%に近く、UVオゾン基板と比較してフッ素コーティングの被覆率が顕著に増加していることを示している。また、フッ素コーティング膜表面が表面微細周期構造を反映して微細周期構造となっているため、平滑なフッ素コーティング膜表面と比較して、撥液性が強調されている。
フッ素コーティングの被覆率に大きな差が生じた要因として、UVオゾン洗浄後とレーザ照射後のそれぞれの基板の表面洗浄度あるいは表面組成の違いが影響したと考えられる。そこで、UVオゾン基板(a)、レーザ加工基板(b)、および、未加工基板(c)の表面状態をX線光電子分光分析装置(XPS)により調査した。その結果を図9に示す。
まず、未加工基板(c)と比較して、UVオゾン基板(a)、レーザ加工基板(b)ともに炭素のピークが同等に小さくなっている。これは、UVオゾン洗浄、レーザ照射ともに、基板表面の有機汚染物が減少しているためと考えられる。このことは、レーザ照射には形状付与とともに、UVオゾン洗浄と同程度の有機汚染物除去効果があることを表している。
一方、Feに着目すると、UVオゾン基板(a)と比較して、レーザ加工基板(b)のほうが鉄酸化物のピークが高くなっている。これは、大気中でのレーザ照射により鉄酸化物の生成が促進されたためと考えられる。同じくCrに関しても、UVオゾン基板(a)と比較して、レーザ加工基板(b)のほうが酸化物のピーク高さが増大している。また、鉄酸化物と比較してより大きな増加率となっている。ステンレス基板を高温熱処理すると、表面に近い領域の組成比が変化し、Cr濃度が上昇することが知られている(J.Jpn.Soc.Colour Mater.(SHIKIZAI),70,12(1997)763)。レーザ照射では、金属表面が蒸散する温度にまで到達するため、表面の高温化でCr濃度が増加したと考えられる。
酸素については、UVオゾン基板(a)には主として531eVを中心とするピークが見られる。これらは、水酸基の存在も示唆できるが、物理吸着水や炭酸塩等の残存したものであると考えられる。一方、レーザ加工基板(b)は、FeやCrの酸化物の増加を反映して、酸素が金属酸化物として存在していると見られるピークが530eV付近に表れている。金属酸化物の最表面の酸素は水酸基として存在するといわれており(地球科学,45,(2011)147)、なかでも、Crは水酸基との結合を含む不動態膜を形成することが知られている。レーザ照射により、基板表面の金属酸化物の割合、とりわけCr酸化物濃度が上昇していることから、結果的に最表面の水酸基が増加し、シランカップリング剤との結合が増えたことがフッ素コーティングの高い被覆率につながったと考えられる。
以上のことから、本実施例において、フェムト秒レーザ照射により、基板表面の洗浄や改質効果が得られ、フッ素コーティングの被覆率向上に有効な表面処理方法であるのと同時に、表面微細周期構造形成による形状付与によって、コーティング剤の機能性を高めるのに有効な表面処理方法であることがわかった。また、均質的な表面微細周期構造を広範囲に形成可能なため,表面微細周期構造を形成した部分の機能の位置によるばらつきが小さい表面処理方法であることがわかった。
他の実施形態について
上記実施例では、本発明の一実施形態である、基板の材料をステンレスとし、その表面にフッ素を含有するコーティング膜を形成する方法について説明したが、本発明はこれに限らず、以下に説明する種々の形態を含むものである。
上記実施例では、基板の材料にステンレスを用いたが、基板は他の材料でもよい。また、基板全体が主として無機材料から形成されている必要はなく、例えば樹脂などの表面の一部分が、主として無機材料からなる加工対象基材であればよい。基板の形状は問わず、例えば板状であっても、棒状、筒状、球状であっても、また、それらの複合物であってもよい。また、基板の表面は平滑面であっても粗面であってもよい。
コーティング剤の材料は、フッ素を含むものでなくてもよく、その種類は限られない。コーティング膜は、同種又は異種のコーティング剤を積層させたり、複数種のコーティング剤を混合したものにて形成したりすることもできる。また、コーティング剤のコーティング方法は、ハケによる塗布、ディップ法、スピンコート法や気相化学堆積法等、種々の方法を採用することができる。コーティング膜は単分子膜に限られず、膜厚も種々設定することが可能である。また、基材表面との吸着基はシランカップリング剤に限らず、酸―塩基反応により吸着する吸着基をもつものとすることもできる。また、その他の反応により吸着する吸着基をもつものでもよい。
照射するレーザは、フェムト秒レーザに限らず、レーザ照射によって照射領域が蒸散するに十分な高温状態に達することで被覆対象物表面から基材表面を蒸散させることが可能なレーザであればよく、例えば、ピコ秒レーザといった短パルスレーザでもよい。すなわち、レーザとしては、そのパルス幅は1ns未満とし、100ps以下であればなお良く、さらには、10ps以下の超短パルスレーザであれば好適である。レーザ波長やレーザパルスの繰返し周波数は問わず、種々変更できる。
また、レーザを走査照射する際、レーザの照射部分をオーバーラップさせながら基板に対して相対的に走査されれば、レーザの照射部分、基材のどちらを移動させてもよいし、その両方を移動させてもよい。また、照射レーザは加工面に垂直に入射しなくともよい。
レーザの照射により基材表面に表面微細周期構造が自己組織的に形成される場合は、その形状は畝状に整列していてもよく、畝が蛇行していても、畝が途切れてドット状となっていてもよく、周期的に凹凸が均質的に連続していればよい。また、凹凸の高さは照射レーザ波長以下であり、周期間隔は照射レーザ波長の5倍よりも小さければよい。
10 表面微細周期構造
W 基材
L レーザ
C コーティング膜
D 有機汚染物

Claims (8)

  1. 少なくとも酸素分子及び水分子が存在する環境下において、無機材料を含む基材表面に、アブレーションが生じる照射強度で、照射部分をオーバーラップするように走査しながらレーザを照射し、基材の表面にアブレーションを生じさせて、アブレーションが生じた基材の表面とコーティング剤とを化学結合により結合させてコーティング膜を形成することを特徴とするコーティング膜形成方法。
  2. アブレーションが生じた基材の表面とコーティング剤との化学結合が、酸―塩基反応またはシランカップリング反応であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング膜形成方法。
  3. レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面における酸化物の構成比率が、レーザ未照射部分より高いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコーティング膜形成方法。
  4. 前記基材がステンレスであり、レーザ照射部分をオーバーラップさせながら走査した基材の表面におけるFeに対するCrの構成比率が、レーザ未照射部分よりも高いことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のコーティング膜形成方法。
  5. レーザ照射部分にレーザ波長の5倍よりも小さな周期間隔をもつ表面微細周期構造が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のコーティング膜形成方法。
  6. レーザ照射部分に、前記表面微細周期構造が連続して均質的に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のコーティング膜形成方法。
  7. 前記コーティング膜にフッ素が含有されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のコーティング膜形成方法。
  8. 前記コーティング膜は、単分子膜であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のコーティング膜形成方法。
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