JP2007154433A - 化粧建築板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な発色性を得ることができると共に、製造効率を高く得ることができる化粧建築板を提供する。
【解決手段】化粧建築板に関する。基材1の表面に、水性塗料で形成される受理層2、水性インクで形成されるインクジェット層3をこの順に積層する。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット印刷により所望の模様が施された化粧建築板及びその製造方法に関するものである。
従来、インクジェット印刷により所望の模様が施された化粧建築板としては、種々のものが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。図3に示すものはその一例であり、この化粧建築板は、次のようにして形成されている。すなわち、セメント板等の基材1の表面に受理層2を形成した後、この受理層2の表面にインクジェット印刷することによってインクジェット層3を形成すると、図3に示すような化粧建築板を得ることができるものである。
特開2004−60241号公報
しかしながら、図3に示すような従来の化粧建築板にあっては、溶剤系塗料で受理層2が形成されているため、この受理層2の表面に水性インクでインクジェット層3を形成しようとすると、この水性インクが弾かれ、発色性が悪くなるという問題があった。また、このような問題を解消するには、溶剤系塗料で形成される受理層2を十分に乾燥させておく必要があるが、そうすると、化粧建築板の製造効率が低下してしまうという新たな問題が生じる。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、良好な発色性を得ることができると共に、製造効率を高く得ることができる化粧建築板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る化粧建築板は、基材1の表面に、水性塗料で形成される受理層2、水性インクで形成されるインクジェット層3をこの順に積層して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項2に係る化粧建築板の製造方法は、基材1の表面に水性塗料で受理層2を形成し、受理層2に4〜20重量%の揮発分が残存している状態で、受理層2の表面に水性インクをインクジェット印刷することによってインクジェット層3を形成することを特徴とするものである。
本発明の請求項1に係る化粧建築板によれば、水性塗料で形成される受理層の表面に、水性インクでインクジェット層を形成することによって、溶剤系塗料で受理層を形成する場合に比べて、良好な発色性を得ることができると共に、製造効率を高く得ることができるものである。
本発明の請求項2に係る化粧建築板の製造方法によれば、水性塗料で形成される受理層の表面に、水性インクでインクジェット層を形成することによって、溶剤系塗料で受理層を形成する場合に比べて、良好な発色性を得ることができると共に、製造効率を高く得ることができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る化粧建築板は、図1に示すように、基材1の表面に、水性塗料で形成される受理層2、水性インクで形成されるインクジェット層3をこの順に積層することによって形成されている。
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の外装材は、瓦や外壁材等の用途に使用されるものである。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製されるものであり、水硬性膠着材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等から選ばれたものの一種あるいは複数種を用いることができる。また、無機充填剤としては、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を、繊維質材料としては、パルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。成形は押出成形や注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により行うことができ、成形の後、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って、外装材として使用される窯業系基材を作製することができる。このように作製される窯業系基材の外装材の表面には、溶剤系、水溶性あるいはエマルション系のシーラーにより目止めを行い、基材1表面への吸い込みのばらつきを調整するようにしてもよい。使用されるシーラーとしては、特に限定されるものではないが、アクリル系やラテックス系のものを使用することができる。このシーラーの上には意匠性や耐久性の向上のために、アクリル系やラテックス系の有機塗膜を形成するようにしてもよい。その他、基材1としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板を用いることができる。
そして化粧建築板を製造するにあたっては、上記のような基材1の表面にまず、必須ではないが、一般的にはシーラー(図示省略)を塗った後に受理層2を形成する。受理層2は、この上に形成されるインクジェット層3のインクを定着させるために必要な層であり、水性塗料で形成する。このように、水性塗料で受理層2を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。
上記水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることができる。水性塗料には、体質顔料と吸湿性樹脂のうちの少なくとも一方を配合しておくのが好ましい。これにより、インクの定着性を向上させることができると共に、発色性も向上させることができるものである。ここで、体質顔料としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、多孔質シリカ、珪藻土等を用いることができ、吸湿性樹脂としては、酢酸ビニル、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール等のインキ吸収性ポリマー等を用いることができる。また、水性塗料には、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の顔料を着色剤として配合することもできる。また、受理層2を水性塗料で形成するにあたっては、基材1の表面に水性塗料を塗布量30〜200g/m・wetで塗布するのが好ましい。なお、水性塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
そして、受理層2の表面に水性インクをインクジェット印刷することによってインクジェット層3を形成する。そうすると、図1に示すような化粧建築板を得ることができる。ここで、インクジェット印刷するためのインクジェット装置としては、例えば、図2に示すようなものを用いることができる。このインクジェット装置は、噴射ノズル7を設けた塗装ノズルヘッド8、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7に水性インクを供給する塗料供給タンク9、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7からの水性インクの噴射を制御する塗装制御システム10などを設けたインクジェット式塗装機11と、基材1を搬送する搬送コンベア12とを備えて形成されるものである。
塗装ノズルヘッド8は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の水性インクを噴出する4種類の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから形成してあり、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。塗料供給タンク9も同様に4種類のものからなるものであり、イエローの水性インクを供給する塗料供給タンク9yは塗装ノズルヘッド8yに、シアンの水性インクを供給する塗料供給タンク9cは塗装ノズルヘッド8cに、マゼンタの水性インクを供給する塗料供給タンク9mは塗装ノズルヘッド8mに、ブラックの水性インクを供給する塗料供給タンク9kは塗装ノズルヘッド8kに、それぞれ接続してある。また、各塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kは基材1の搬送方向に沿って配列してある。
塗装制御システム10は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、塗装データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。塗装データ作成部は、原画をスキャナ等して得た色柄パターンのデータを入力して保存するものであり、塗装制御部は、塗装を行う基材1に応じた色柄パターンのデータを塗装データ作成部から取り出し、この色柄のパターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また、噴射ノズル制御部は、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの各噴射ノズル7に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル7を制御するものである。各噴射ノズル7は例えばピエゾ制御方式により噴射を行ったり噴射を停止したりするようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル7を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各水性インクの噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行うことができるものである。
搬送コンベア12は、インクジェット式塗装機11の下側に配置されるものであり、ベルトコンベアで形成することができる。
そして、上記のように形成されるインクジェット装置でインクジェット印刷するにあたっては、まず、受理層2を形成した基材1を搬送コンベア12上に導入する。導入された基材1はそのまま送られてインクジェット式塗装機11の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの下を順に通過する。このように、基材1を搬送コンベア12で送りながら、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから水性インクを噴射させて塗着させることによって、受理層2の表面にインクジェット層3を形成することができるものである。このように塗装された基材1はさらに送られ、次工程に搬出されるものである。
ここで、本発明においては、受理層2に4〜20重量%の揮発分が残存している状態で、受理層2の表面に水性インクをインクジェット印刷するものである。従来は、溶剤系塗料で受理層2を形成していたので、良好な発色性を得るためには、この受理層2を十分に乾燥させ、水性インクの弾きの原因となる溶剤を飛ばしておく必要があった。これに対し、本発明では、受理層2もインクジェット層3も共に水性であるため、受理層2に対する水性インクの馴染みが良くなり、良好な発色性を得ることができるものである。しかも、受理層2を十分に乾燥させておかなくても、この表面にインクジェット層3を形成することができるので、化粧建築板の製造効率を高く得ることができるものである。しかし、受理層2に残存している揮発分が4重量%未満である場合には、水性インクの吸収性が悪く、水性インクを弾いてしまうおそれがあり、逆に、受理層2に残存している揮発分が20重量%を超える場合には、過度に湿潤しており、水性インクが滲んでしまうおそれがあり、揮発分が少な過ぎても多過ぎてもいずれの場合も発色性が悪くなるおそれがある。なお、揮発分とは、多量の水と、水に可溶な少量の溶剤とを意味する。
上記のようにして形成される化粧建築板にあっては、水性塗料で形成される受理層2の表面に、水性インクでインクジェット層3を形成することによって、溶剤系塗料で受理層2を形成する場合に比べて、良好な発色性を得ることができるものである。また、従来は、受理層2が完全に乾いた状態で、この表面に水性インクをインクジェット印刷するようにしていたので、この場合には、水性インクが受理層2の表面で跳ね返され、この水性インクでノズルアレイ8が汚染されるおそれがあった。しかし、本発明では、受理層2に15重量%以上の揮発分が残存している状態で、インクジェット印刷するようにしているので、未乾燥状態の受理層2で水性インクを捕捉して、水性インクの跳ね返りを抑制することができ、その結果、水性インクによるノズルアレイ8の汚染を防止することができるものである。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1〜4の化粧建築板は、図1に示すように、基材1の表面に、水性塗料で形成される受理層2、水性インクで形成されるインクジェット層3をこの順に積層することによって製造した。
一方、比較例1の化粧建築板は、図3に示すように、基材1の表面に、溶剤系塗料で形成される受理層2、水性インクで形成されるインクジェット層3をこの順に積層することによって製造した。
ここで、基材1としては、セメント基板を用いた。
また、実施例1〜4の受理層2は、アクリル系エマルションをベースにした水性塗料であるアクリル樹脂塗料を用いて形成した。なお、この塗料の樹脂成分は、主成分樹脂であるアクリルエマルション樹脂70重量部と、吸湿性樹脂である吸湿性アクリル樹脂30重量部とで構成されている。
また、比較例1の受理層2は、溶剤系塗料であるアクリルシリコン系塗料(大日本塗料(株)製「Vシリコン」)を用いて形成した。
また、インクジェット層3は、図2に示すようなインクジェット装置を用い、受理層2の表面に水性インクをインクジェット印刷することによって形成した。
ここで、水性インクとしては、水性顔料分散体を50重量%、ジエチレングリコールを10重量%、グリセリンを20重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを10重量%、水を10重量%含有するものを用いた。上記水性顔料分散体としては、顔料と水溶性樹脂(アクリル酸共重合体)と水とを、顔料/水溶性樹脂/水=10/4/86となるように混合したものを用いた。なお、上記顔料としては、シアン(フタロシアニンブルー)、マゼンタ(弁柄)、イエロー(黄色酸化鉄)、ブラック(カーボンブラック)を用い、各色の顔料ごとに水性インクを調製した。
また、インクジェット印刷は、受理層2に揮発分が下記[表1]に示す量残存している状態で行った。なお、残存揮発分は、まず受理層2の表面に剥離紙を貼ってこれを剥がし、剥がした直後の受理層2の重量及び絶乾後(105℃、24時間後)の受理層2の重量を測定し、両者の差を求め、この差に基づいて計算することによって求めた。
そして、実施例1〜4及び比較例1について、発色性を評価する試験を行った。
<発色性>
図2に示すインクジェット装置を用い、印刷濃度25%、50%、75%、100%のグラデーションパターンを各色(CMYK)について印刷し、乾燥させたサンプルについて、肉眼及び20倍の拡大鏡で観察することによって、発色性を評価した。評価基準は以下の通りであり、その結果を下記[表1]に示す。
「◎」:インク本来の色が均一に印刷されているもの。
「○」:色は均一であるが、若干のくすみが見られるもの。
「△」:色に若干のムラ、かつ若干のくすみがあり、インク本来の色が印刷されていないもの。
「×」:色にムラ、かつくすみがひどく、インク本来の色が印刷されていないもの。
Figure 2007154433
上記[表1]にみられるように、実施例1〜4はいずれも、比較例1に比べて、発色性が優れていることが確認される。
また、受理層2に4〜20重量%の揮発分が残存している状態でインクジェット印刷するようにした実施例1、2は、実施例3、4に比べて、さらに発色性が優れていることが確認される。
本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。 インクジェット装置の一例を示す概略正面図である。 従来技術の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 基材
2 受理層
3 インクジェット層

Claims (2)

  1. 基材の表面に、水性塗料で形成される受理層、水性インクで形成されるインクジェット層をこの順に積層して成ることを特徴とする化粧建築板。
  2. 基材の表面に水性塗料で受理層を形成し、受理層に4〜20重量%の揮発分が残存している状態で、受理層の表面に水性インクをインクジェット印刷することによってインクジェット層を形成することを特徴とする化粧建築板の製造方法。
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