JP4568214B2 - 化粧建築板 - Google Patents

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本発明は、インクジェット印刷により所望の模様が施された化粧建築板に関するものである。
従来、インクジェット印刷により所望の模様が施された化粧建築板としては、種々のものが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。図6に示すものはその一例であり、この化粧建築板は、次のようにして形成されている。すなわち、セメント板等の基材1の表面にアクリル系等塗料を塗布することによって受理層2を形成した後、この受理層2の表面に水性インクをインクジェット印刷することによってインクジェット層3を形成すると、図6に示すような化粧建築板を得ることができるものである。
特開2004−60241号公報
しかしながら、図6に示すような従来の化粧建築板にあっては、インクジェット印刷する場合に受理層2が水性インクを弾くことがあり、必ずしも鮮明な発色を得ることができないという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、水性インクを弾くことなく、鮮明な発色を得ることができる化粧建築板を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る化粧建築板は、基材1の表面に、顔料を顔料重量濃度(PWC)で50〜70%含有し、かつ吸湿性樹脂を配合して形成される受理層2、水性インクで形成されるインクジェット層3をこの順に積層して成ることを特徴とするものである。
また請求項の発明は、受理層2の厚みが20〜180μmであることを特徴とするものである。
また請求項の発明は、水性インクの受理層2への侵入深さが0.2〜5μmであることを特徴とするものである。
本発明の請求項1に係る化粧建築板によれば、受理層に顔料が顔料重量濃度(PWC)で50〜70%含有されているので、水性インクを弾くことなく、鮮明な発色を得ることができるものであり、また、受理層に含有されている顔料によって、基材の色の影響を少なくすることができ、所望の色相でインクジェット印刷することができるものであり、さらに、化粧建築板に施す予定の模様と同一又は近似の色相となるように顔料を組み合わせて用いるようにすれば、水性インクの使用量を減らすことができるものである。
また請求項の発明によれば、下地である基材を隠蔽し、また基材を保護することができると共に、水性インクの吸収性が良くなるものである。
また請求項の発明によれば、水性インクの滲みを防止して、フルカラー印刷による鮮明な絵柄を得ることができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る化粧建築板は、図1に示すように、基材1の表面に、顔料を顔料重量濃度(PWC)で50〜70%含有する受理層2、水性インクで形成されるインクジェット層3をこの順に積層することによって形成されている。
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の外装材は、瓦や外壁材等の用途に使用されるものである。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製されるものであり、水硬性膠着材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等から選ばれたものの一種あるいは複数種を用いることができる。また、無機充填剤としては、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を、繊維質材料としては、パルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。成形は押出成形や注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により行うことができ、成形の後、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って、外装材として使用される窯業系基材を作製することができる。このように作製される窯業系基材の外装材の表面には、溶剤系、水溶性あるいはエマルション系のシーラーにより目止めを行い、基材1表面への吸い込みのばらつきを調整するようにしてもよい。使用されるシーラーとしては、特に限定されるものではないが、アクリル系やラテックス系のものを使用することができる。このシーラーの上には意匠性や耐久性の向上のために、アクリル系やラテックス系の有機塗膜を形成するようにしてもよい。その他、基材1としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板を用いることができる。
そして化粧建築板を製造するにあたっては、上記のような基材1の表面にまず、必須ではないが、一般的にはシーラー(図示省略)を塗った後に受理層2を形成する。受理層2は、この上に形成されるインクジェット層3のインクを定着させるために必要な層であり、有機溶剤で希釈した塗料で形成することもできるが、水性塗料で形成するのが好ましい。このように、水性塗料で受理層2を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。ただし、いずれの塗料を用いる場合であっても、後述する顔料を配合しておくものである。
上記水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることができる。水性塗料には、少なくとも吸湿性樹脂を配合しておくものであり、さらに体質顔料を配合しておくのが好ましい。これにより、インクの定着性を向上させることができる上に、後で水性塗料でクリアー層4を形成する際に滲みを防止することができると共に、発色性も向上させることができるものである。ここで、体質顔料としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、多孔質シリカ、珪藻土等を用いることができ、吸湿性樹脂としては、酢酸ビニル、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール等のインキ吸収性ポリマー等を用いることができる。また、受理層2を水性塗料で形成するにあたっては、基材1の表面に水性塗料を塗布量30〜200g/m・wetで塗布するのが好ましい。なお、水性塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
また、本発明において顔料は、上述した体質顔料のほか、着色顔料も意味する。着色顔料としては、酸化チタン、弁柄、オーカー、炭酸カルシウム、複合金属酸化物等の無機顔料や、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー、群青等の有機顔料を用いることができる。顔料は1種のみを用いたり、2種以上を組み合わせて用いたりすることができる。化粧建築板の耐候性を向上させることができることから、顔料の中でも無機顔料を用いるのが好ましい。顔料の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径で0.01〜4μm程度が好ましい。また、顔料の分散は通常の方法で行うことができ、また、その際に分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤等を使用することが可能である。
そして、本発明においては、受理層2は、顔料を顔料重量濃度(PWC)で50〜70%含有しているものである。通常の塗料は顔料重量濃度(PWC)が40%程度であるが、本発明のように顔料重量濃度(PWC)を通常よりも高く設定することによって、受理層2の表面が粗くなり、この受理層2に水性インクが吸収されやすくなり、定着性を高めることができるものである。また、本発明では通常よりも顔料重量濃度(PWC)が高いので、粘度が上昇してチクソ性となり垂れにくく、つまり、厚く付けやすくなり、また、乾燥性が良くなると共に、隠蔽性も向上するものである。しかし、受理層2の顔料重量濃度(PWC)が50%未満であると、上記のような効果を得ることができない上に、粘度が低下してニュートン性となり垂れやすくなり、乾燥性が悪くなると共に、隠蔽性も低下してしまうものである。逆に、受理層2の顔料重量濃度(PWC)が70%を超えると、水性インクを吸収しすぎる状態となり、インクの発色性が悪化するものである。
また、受理層2の厚みは20〜180μmである。下地である基材1を隠蔽し、また基材1を保護することができると共に、水性インクの吸収性が良くなるものである。しかし、受理層2の厚みが20μmより薄いと、基材1の隠蔽性が悪化し、また基材1を十分に保護することができないおそれがあり、逆に、受理層2の厚みが180μmより厚いと、乾燥性が悪く、タレが生じたり、クラックが生じたりするおそれがある。
次に、受理層2の表面に水性インクをインクジェット印刷することによってインクジェット層3を形成する。ここで、インクジェット印刷するためのインクジェット装置としては、例えば、図5に示すようなものを用いることができる。このインクジェット装置は、噴射ノズル7を設けた塗装ノズルヘッド8、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7に水性インクを供給する塗料供給タンク9、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7からの水性インクの噴射を制御する塗装制御システム10などを設けたインクジェット式塗装機11と、基材1を搬送する搬送コンベア12とを備えて形成されるものである。
塗装ノズルヘッド8は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の水性インクを噴出する4種類の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから形成してあり、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。塗料供給タンク9も同様に4種類のものからなるものであり、イエローの水性インクを供給する塗料供給タンク9yは塗装ノズルヘッド8yに、シアンの水性インクを供給する塗料供給タンク9cは塗装ノズルヘッド8cに、マゼンタの水性インクを供給する塗料供給タンク9mは塗装ノズルヘッド8mに、ブラックの水性インクを供給する塗料供給タンク9kは塗装ノズルヘッド8kに、それぞれ接続してある。また、各塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kは基材1の搬送方向に沿って配列してある。
塗装制御システム10は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、塗装データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。塗装データ作成部は、原画をスキャナ等して得た色柄パターンのデータを入力して保存するものであり、塗装制御部は、塗装を行う基材1に応じた色柄パターンのデータを塗装データ作成部から取り出し、この色柄のパターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また、噴射ノズル制御部は、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの各噴射ノズル7に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル7を制御するものである。各噴射ノズル7は例えばピエゾ制御方式により噴射を行ったり噴射を停止したりするようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル7を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各水性インクの噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行うことができるものである。
搬送コンベア12は、インクジェット式塗装機11の下側に配置されるものであり、ベルトコンベアで形成することができる。
そして、上記のように形成されるインクジェット装置でインクジェット印刷するにあたっては、まず、受理層2を形成した基材1を搬送コンベア12上に導入する。導入された基材1はそのまま送られてインクジェット式塗装機11の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの下を順に通過する。このように、基材1を搬送コンベア12で送りながら、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから水性インクを噴射させて塗着させることによって、受理層2の表面にインクジェット層3を形成することができるものである。このように塗装された基材1はさらに送られ、次工程に搬出されるものである。
上記のようにして形成される化粧建築板にあっては、受理層2に顔料が顔料重量濃度(PWC)で50〜70%含有されているので、水性インクを弾くことなく、鮮明な発色を得ることができるものである。また、受理層2に含有されている顔料によって、基材1の色の影響を少なくすることができ、所望の色相でインクジェット印刷することができるものである。さらに、化粧建築板に施す予定の模様と同一又は近似の色相となるように顔料を組み合わせて用いるようにすれば、水性インクの使用量を減らすことができるものである。
ここで、水性インクの受理層2への侵入深さ(浸透深さ)は0.2〜5μmである。これにより、水性インクの滲みを防止して、フルカラー印刷による鮮明な絵柄を得ることができるものである。しかし、水性インクの受理層2への侵入深さが0.2μm未満である場合は、水性インクが弾かれやすい場合であって、発色性が悪くなるおそれがあり、逆に、水性インクの受理層2への侵入深さが5μmを超える場合は、水性インクを多量に使用している場合であるが、その割には発色性が悪くなるおそれがある。なお、侵入深さの調整は、受理層2の顔料重量濃度(PWC)を調整したり、受理層2の表面粗さを調整したりすることによって行うことができ、また、侵入深さの測定は、1000倍程度の倍率でマイクロスコープ又はSEMにより断面観察することによって行うことができる。
インクジェット層3を形成した後、図2に示すように、このインクジェット層3の表面にクリアー層4を形成することができる。クリアー層4は、この下に形成されたインクジェット層3を保護する層であり、有機溶剤で希釈した塗料で形成することもできるが、水性塗料で形成するのが好ましい。このように、水性塗料でクリアー層4を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。
上記水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いるのが好ましい。これにより、後述する無機質塗料層5をクリアー層4に強く付着させることができるものである。水性塗料には、アクリルビーズ、マイカ等の骨材を配合しておくのが好ましい。これにより、意匠性を向上させることができる。また、クリアー層4を水性塗料で形成するにあたっては、インクジェット層3の表面に水性塗料を塗布量20〜200g/m・wetで塗布するのが好ましい。そして、焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、100〜200℃、30秒以上の条件で行うのが好ましい。十分に焼付け乾燥を行わないと、温度湿度等環境条件によって、化粧建築板の耐久性が低下しやすくなる場合がある。なお、水性塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
その後、図3に示すように、クリアー層4の表面に無機質塗料層5を形成することができる。無機質塗料層5は、化粧建築板の耐候性等の耐久性を向上させる層であり、SiO骨格で構成された塗膜で、紫外線吸収剤、場合によっては、艶消し剤が配合された塗膜からなるものである。例えば、特許第3242442号公報や特許第3193832号公報に記載されたコーティング用組成物や、特開平9−249822号公報に記載された無機コーティング剤で形成することができる。
無機質塗料の具体例として、特許第3242442号公報に記載されたコーティング用組成物を以下に挙げる。すなわち、
(A)一般式(I)
SiX4−n…(I)
(式中、Rは同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基およびアミド基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。)で表わされる加水分解性オルガノシランを有機溶媒または水に分散されたコロイダルシリカ中で、X1モルに対し水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなる、オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液、
(B)平均組成式(II)
Si(OH)(4−a−b)/2…(II)
(式中、Rは同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である。)で表わされ、成分中のRにフェニル基を全R基に対して1〜30モル%含有するポリオルガノシロキサン、および、
(C)(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進する触媒を必須成分とし、(A)成分においてシリカを固形分として5〜95重量%含有し、加水分解性オルガノシランの少なくとも50モル%がn=1のオルガノシランで、(A)成分1〜99重量部に対して(B)成分99〜1重量部が配合されているコーティング用組成物である。
そして、無機質塗料層5を形成するにあたっては、クリアー層4を形成した基材1をあらかじめ40℃以上に加温しておき、この状態でスプレーガンを用いて無機質塗料を塗布することによって行うことができる。このとき、乾燥条件は、100〜200℃、1〜5分間であることが好ましい。十分に焼付け乾燥を行わないと、温度湿度条件によっては、無機質塗料層5の耐久性能が発揮されないおそれがあると共に、後述する光触媒塗料層6の性能を十分に引き出すことができないおそれがある。また、無機質塗料層5を形成するにあたっては、クリアー層4の表面に無機質塗料を塗布量4〜40g/m・dryで塗布するのが好ましい。塗布量が4g/m・dryより少ないと、耐候性等の耐久性を十分に得ることができないおそれがあり、逆に、塗布量が40g/m・dryより多いと、硬化収縮が大きくなり、クラック等が発生するおそれがある。
さらに、本発明においては、図4に示すように無機質塗料層5の表面に光触媒塗料層6を形成するのが好ましい。光触媒塗料層6は、超親水性を有しており、化粧建築板の防汚性を向上させるために必要な層であり、SiO骨格で構成された塗膜で、光触媒、場合によっては、艶消し剤が配合された塗膜からなるものである。例えば、特許第2776259号公報に記載された抗菌性無機塗料や、松下電工(株)製「フレッセラPS1000」で形成することができる。
光触媒塗料層6を形成するにあたっては、無機質塗料層5を形成した基材1をあらかじめ40℃以上に加温しておき、この状態でスプレーガンを用いて光触媒塗料層形成用塗料を塗布することによって行うことができる。このように、基材1をあらかじめ加温しておくことで、光触媒塗料層6を形成した後の乾燥工程でのエネルギーを小さく抑えることができるものである。また、光触媒塗料層6を形成するにあたっては、無機質塗料層5の表面に光触媒塗料層形成用塗料を塗布量0.5〜5g/m・dryで塗布するのが好ましい。塗布量が0.5g/m・dryより少ないと、防汚性を十分に得ることができないおそれがあり、逆に、塗布量が5g/m・dryより多いと、化粧建築板が乳白色となり、意匠性が低下するおそれがある。
上記のようにして形成される図3や図4に示す化粧建築板にあっては、クリアー層4の表面に無機質塗料層5が形成されているので、図6に示す従来のものに比べて、耐候性等の耐久性を高く得ることができるものである。また、図4に示す化粧建築板にあっては、化粧建築板の表面に付着した有機物などの汚れは、光触媒塗料層6の光触媒作用によって分解されると共に、光触媒塗料層6が超親水性を発現することにより、分解した汚れを雨水等によって容易に除去することができるので、化粧建築板の防汚性を高く得ることができるものである。そして、本発明においては、顔料を含有する受理層2によって、インクジェット層3のインクを定着させて鮮明な模様を得ることができるので、特に、クリアー層4、無機質塗料層5、光触媒塗料層6を形成した場合には、フルカラー印刷による鮮明な模様を長期間維持することができるものである。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1〜及び比較例1〜6の化粧建築板は、図2に示すように、基材1の表面に、顔料を含有する受理層2、インクジェット層3、クリアー層4をこの順に積層することによって製造した。
ここで、基材1としては、セメント基板を用いた。
また、受理層2は、アクリル系エマルション(AcEm)をベースにしたアクリル樹脂塗料を用いて形成した。この塗料は、顔料成分Aと樹脂成分Bとからなり、その詳細を下記[表1]に示す。なお、PWC(%)=A/(A+B)×100である。
Figure 0004568214
また、インクジェット層3は、図5に示すようなインクジェット装置を用い、受理層2の表面に水性インクをインクジェット印刷することによって形成した。
ここで、水性インクとしては、水性顔料分散体を50重量%、ジエチレングリコールを10重量%、グリセリンを20重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを10重量%、水を10重量%含有するものを用いた。上記水性顔料分散体としては、顔料と水溶性樹脂(アクリル酸共重合体)と水とを、顔料/水溶性樹脂/水=10/4/86となるように混合したものを用いた。なお、上記顔料としては、シアン(フタロシアニンブルー)、マゼンタ(弁柄)、イエロー(黄色酸化鉄)、ブラック(カーボンブラック)を用い、各色の顔料ごとに水性インクを調製した。
また、クリアー層4は、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料(AcEm系)を用いて形成した。
そして、実施例1〜及び比較例1〜6について、発色性、受理層の乾燥性、基材の隠蔽性を評価する試験を行った。
<発色性>
図5に示すインクジェット装置を用い、印刷濃度25%、50%、75%、100%のグラデーションパターンを各色(CMYK)について印刷し、クリアー層4を形成して乾燥させたサンプルについて、肉眼及び20倍の拡大鏡で観察することによって、発色性を評価した。評価基準は以下の通りであり、その結果を下記[表2]に示す。
「◎」:インク本来の色が均一に印刷されているもの。
「○」:色は均一であるが、若干のくすみが見られるもの。
「△」:色に若干のムラ、かつ若干のくすみがあり、インク本来の色が印刷されていないもの。
「×」:色にムラ、かつくすみがひどく、インク本来の色が印刷されていないもの。
<受理層の乾燥性>
基材1に受理層2を形成し、130℃で2分間乾燥させ、室温まで冷却した後に指触により、受理層の乾燥性を評価した。
「○」:湿りによる抵抗がなく、十分乾燥しているもの。
「△」:湿りによる抵抗が少しあるもの。
「×」:湿っており、指に受理層が付着するもの。
<基材の隠蔽性>
基材1に受理層2を形成し、これを乾燥させた後に目視により、基材の隠蔽性を評価した。
「○」:基材のセメント色が全く見えないもの(十分に隠蔽されている)。
「△」:基材のセメント色がうっすら見える程度に隠蔽されているもの。
「×」:基材のセメント色が見えるもの(ほとんど隠蔽されていないもの)。
Figure 0004568214
上記[表2]にみられるように、受理層2の顔料重量濃度(PWC)が50〜70%である実施例1〜はいずれも、比較例1、2に比べて、発色性が優れていることが確認される。
また、受理層の厚みが20〜180μmである実施例1〜3はいずれも、比較例3、4に比べて、受理層の乾燥性及び基材の隠蔽性に優れていることが確認される。
また、水性インクの受理層への侵入深さが0.2〜5μmである実施例1〜はいずれも、比較例5、6に比べて、発色性が優れていることが確認される。
本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。 本発明の実施の形態の他の一例を示す断面図である。 本発明の実施の形態のさらに他の一例を示す断面図である。 本発明の実施の形態のさらに他の一例を示す断面図である。 インクジェット装置の一例を示す概略正面図である。 従来技術の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 基材
2 受理層
3 インクジェット層

Claims (1)

  1. 基材の表面に、顔料を顔料重量濃度(PWC)で50〜70%含有し、かつ吸湿性樹脂を配合して形成される受理層、水性インクで形成されるインクジェット層をこの順に積層すると共に、上記受理層の厚みが20〜180μmであり、上記水性インクの受理層への侵入深さが0.2〜5μmであることを特徴とする化粧建築板。
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