JP2007152264A - バラスト水処理装置及び処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】船舶のバラストタンクに注水する海水および/またはバラストタンクから排出する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置6と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留槽7と、該滞留槽7の下流側に設けられて滞留槽7にて所定時間滞留した海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給装置8と、を備えた。
【選択図】 図1
Description
ところで、環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶によりバラスト水の注排水が行われると、バラスト水に含まれる微生物の差異により沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
そこで、船舶のバラスト水管理に関する国際会議において2004年2月に船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約が採択され、バラスト水の処理が義務付けられることとなった。
そして、特許文献1に記載の方法においては、バラスト水を排出する際に瀑気装置によりバラスト水に空気を吹き込んで残留塩素を無害化するようにしている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、バラスト水に塩素系殺菌剤を混入して有害藻類のシストを死滅させた後、残留塩素がバラスト水中の有機物と反応して有害なトリハロメタンが生成する。ところが、特許文献1においてはこのトリハロメタンに関しては何らの考慮もされていない。このトリハロメタンは瀑気装置によりバラスト水に空気を吹き込んでも、極一部は気相に移行するものの大部分は残留して無害化されないため、バラスト水とともに排出され環境に悪影響を与えるという問題がある。
他方、塩素殺菌剤によって細菌類とともに50μm以上のプランクトンも死滅させるためには、有効塩素をある程度の時間海水中に残留させなければならない。
すなわち、海水に塩素殺菌剤を供給後、プランクトンと細菌類を死滅させるのに十分な時間で、かつトリハロメタン生成を抑制できるような時間、有効塩素を残留させた海水を滞留させて、その後、残留塩素を還元処理するために塩素還元剤を供給して、残留塩素を還元し失効させてトリハロメタンの生成を抑制する。
滞留とは、塩素還元剤を供給する前に塩素殺菌剤による殺菌時間を確保するために海水を全く流れない状態にすること、および低速で流すことをいう。
なお、塩素殺菌剤としては次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素ガスが用いられ、いずれも海水中で次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンの形態で有効塩素として存在する。
また、塩素還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムあるいは過酸化水素水が用いられる。
活性炭処理装置としては、槽内で穏やかに活性炭を流動させるようにしたものまたは活性炭を充填したものを用いることができる。また活性炭に代えて残留塩素の還元分解とともにトリハロメタンの吸着もできる処理材を用いてもよい。
また、活性炭処理装置に代えてトリハロメタンを吸着する吸着材を備えた吸着槽を設けるとともに、滞留槽にて所定時間滞留した海水に塩素還元剤を供給するようにしてもよい。塩素還元剤により残留塩素を還元し失効させ、吸着槽内の吸着材により生成したトリハロメタンを吸着する。吸着材として樹脂系吸着材を用いることができる。
IMOのバラスト水処理装置の認可試験基準では、処理前に50μm以上のプランクトン数が105個体/m3以上である原水を処理後10個体/m3以下にすることが求められている。
そこで、この基準を満たすために必要な海水中の残留塩素濃度と、プランクトンと残留塩素の接触時間との関係を求めた。図5は、海水中の残留塩素濃度と、プランクトンと残留塩素の接触時間との関係を両対数グラフで表したものである。
塩素殺菌剤の調達、貯蔵や供給の方法を考慮すると、残留塩素濃度が5〜100mg/lとなるように塩素殺菌剤を供給することが好ましいため、50μm以上のプランクトンを処理基準にまで死滅させるのに必要な接触時間は0.5〜20分となる。接触時間を0.5〜20分とすることが可能になるように、塩素殺菌剤を供給してから塩素還元剤を供給するまでの時間または塩素殺菌剤を供給してから活性炭処理するまでの時間、すなわち滞留時間を0.5〜20分とする滞留が可能である滞留槽を備えることにより、50μm以上のプランクトンを処理基準にまで死滅させることができる。
図6に示されるように、残留塩素濃度が5〜20mg/lの範囲であれば、滞留時間を20分以下にすれば、生成されるトリハロメタン濃度は日本の飲料水基準である0.1mg/lの1/2以下である。また、残留塩素濃度が50〜100mg/lの場合であっても、滞留時間を20分以下にすれば日本の飲料水基準である0.1mg/l以下である。
このように滞留時間を0.5〜20分の範囲とする滞留槽で、滞留時間を制御して塩素殺菌剤により殺菌することによって、プランクトンと細菌類を十分に死滅させ、かつ、トリハロメタン生成を抑制することができる。
なお、ろ過装置としては、目開きが10〜200μmのものを用いるのが好ましく、特に目開き50μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆流洗浄頻度とを最適に設定できるので、特に好ましい。
なお、活性炭処理時間が0.5分より短いと、トリハロメタンを十分に吸着することができず、活性炭処理時間が20分より長いと、活性炭処理装置が過大なものとなり船舶に搭載するのに問題となり、またバラスト水をバラストタンクに給水する時間が長くなり問題となる。
なお、塩素殺菌剤を供給して海水中の有効塩素量の重量濃度が5mg/lより小さいと有効塩素が水中の還元性物質、有機物と反応して残留せず、細菌類やプランクトンを死滅できないし、100mg/lより大きいとトリハロメタン生成量が増大し、また腐食の問題や塩素殺菌剤の費用や塩素殺菌剤貯留槽が大きくなり高コストとなる等の問題があり、不具合が生じる。
供給する酸としては塩酸または硫酸を用いる。
以下、図面を用いて、本発明に係るバラスト水処理装置について、最良の形態の一例を具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係るバラスト水の処理装置を示す図である。本実施の形態に係るバラスト水処理装置は、図1に示すように、海水を船内に取り込むための海水取水ライン1、海水取水ライン1によって取水された海水中の粗大物を除去する粗ろ過装置2、海水を取り込むため、あるいは後述のバラストタンク10のバラスト水を後述のろ過装置4に送水するためのポンプ3、粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するろ過装置4、ろ過装置4でろ過された海水に細菌類を死滅させる塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置6、ろ過装置4でろ過されたろ過水に塩素殺菌剤供給装置6から供給された塩素殺菌剤を拡散させる拡散器5、塩素殺菌剤を添加された海水を所定時間滞留させる滞留槽7、滞留槽7から導出された海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給装置8、塩素還元剤を添加された処理水を後述のバラストタンク10に送水する処理水送水ライン9、処理水送水ライン9から送水される処理水または未処理水を貯留するバラストタンク10、を備えている。
以下、各装置をさらに詳細に説明する。
粗ろ過装置2は、船側部に設けられたシーチェスト(海水吸入口)から取水され、ポンプ3によって海水取水ライン1を通して取水される海水中に含まれる大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物を除去するためのものである。
粗ろ過装置としては10mm程度の孔を設けた筒型ストレーナ(こし器)、水流中の粗大物を比重差により分離するハイドロサイクロン、回転スクリーンにより粗大物を捕捉し掻揚げ回収する装置等を用いることができる。
ろ過装置4は粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するものであり、目開き10〜200μmのものを用いる。
目開きを10〜200μmにしたのは動物性プランクトン、植物性プランクトンの捕捉率を一定のレベルに保ちつつ、逆流洗浄頻度を少なくして寄港地でのバラスト水処理時間を短縮するためである。逆に言えば、目開きが200μmより大きいと動物プランクトン、植物プランクトンの捕捉率が著しく低くなるし、目開きが10μmより小さいと逆流洗浄頻度が多くなり寄港地でのバラスト水処理時間が長くなるので好ましくない。特に目開き50μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆流洗浄頻度とを最適に設定できるので、好ましい。
また、ろ過装置4は、ろ過面積1m2あたり1日200m3以上のろ過速度が得られることが望ましい。ただし、ろ過モジュールの集積によって、より小型化が可能な場合には特に限定しない。
ノッチワイヤフィルタとは、ノッチ(突起)を設けたワイヤを枠体に巻きつけてノッチによりワイヤ同士の間隔を保持してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントをケーシング内に保持し、送水と逆洗浄のためのバルブと配管を設けたものである。このノッチワイヤフィルタの具体例としては、神奈川機器工業製ノッチワイヤフィルタがある。
このノッチワイヤフィルタをろ過エレメントとして複数備え、逆洗手段を備えたものが特開2001−170416に開示されている。ろ過エレメント集合基板や、それぞれのろ過エレメントに小型超音波振動子を取り付け、逆洗時に超音波振動を付加することにより、逆洗浄効果を増大させ、逆洗浄の間隔を延ばしてろ過効率を高めることができる。
ウェッジワイヤフィルタとは、断面が三角形のワイヤを枠体に巻きつけてワイヤ同士の間隔を調整してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントをケーシング内に保持し、送水と逆洗浄のためのバルブと配管を設けたものである。このウェッジワイヤフィルタの具体一例としては、東洋スクリーン工業製ウェッジワイヤフィルタがある。
なお、積層ディスク型ろ過器においては、逆洗時にはディスクの圧締を解除して、間隙を大きくしてろ過残渣を除去する。この積層ディスク型ろ過器の具体例としては、Arkal Filtration Systems製のSpin Klin Filter Systemsがる。
塩素殺菌剤供給装置6はろ過装置によってろ過されて拡散器5に供給される海水に細菌類を死滅させる塩素殺菌剤を供給するものである。供給する塩素殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素ガスが使用できる。
その理由は、塩素殺菌剤を供給して海水中の有効塩素量の重量濃度が5mg/lより小さいと有効塩素が水中の還元性物質、有機物と反応して残留せず、細菌類やプランクトンを死滅できないし、100mg/lより大きいとトリハロメタン生成量が増大し、また腐食の問題や塩素殺菌剤の費用や塩素殺菌剤貯留槽が大きくなり高コストとなる等の問題があり、不具合が生じるからである。
塩素殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給する場合には、塩素殺菌剤をキャビテーションが発生するベンチュリ管のど部に達するまでに流路内である程度拡散させておき、キャビテーションにより塩素殺菌剤の拡散、混合を進めて、さらに塩素殺菌剤の細菌類への浸透を促進して塩素殺菌剤の殺滅効果を促進できる。
なお、塩素殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給するためには、ベンチュリ管よりも上流側の流路内に塩素殺菌剤の注入口を設けておけばよい。
また、塩素殺菌剤をベンチュリ管ののど部に供給する場合には、ベンチュリ管のエジェクタ作用により自吸されるので塩素殺菌剤の供給ポンプが不要となる。
塩素殺菌剤をろ過装置4によりろ過された海水中に拡散させる拡散器として、ベンチュリ管を用いることが好ましい。
ベンチュリ管は塩素殺菌剤を海水中に拡散させると共に、ろ過装置4を通過したプランクトンに対してベンチュリ管により発生するキャビテーションにより損傷を与えるか殺滅するものである。
ベンチュリ管は、管路断面積が徐々に小さくなる絞り部、最小断面積部であるのど部、徐々に管路断面積が広がる広がり部(ディフューザ部)からなる。のど部での流速の急上昇に伴う静圧の急激な低下によりキャビテーション気泡が発生し、広がり部での流速の低下に伴う急激な圧力上昇により成長したキャビテーション気泡が急激に崩壊するようなキャビテーションが発生する。
また、海水中の水生生物はキャビテーション気泡が崩壊することによる衝撃圧、せん断力、高温、酸化力の強いOHラジカルの作用などにより、損傷を与えるか破壊され殺滅される。このベンチュリ管のキャビテーションによれば、特に、比較的固い殻を有する原虫類、動物プランクトンの外殻を破壊し、塩素殺菌剤の浸透を促進して確実に死滅させることができる。
この理由は、海水を取水してバラストタンクに通水する配管の途中にバラスト水処理装置を設置した場合、配管内の海水の流速がベンチュリ管入り口では通常2〜3m/sであるが、ベンチュリ管のど部の流速が10m/secより小さいと、のど部での流速の上昇比率が十分でなくこれに伴う静圧の急激な低下が十分でないため、大気圧下においてもキャビテーションが発生せず、またベンチュリ管のど部の流速が40m/sより大きいとキャビテーション現象が過剰に発生しベンチュリ管通過に伴う圧力損失が過大となり送水のために消費されるエネルギーが過大となるため、ポンプ動力が過大となり高コストとなるからである。
この理由は、損失水頭が5mより小さいとキャビテーションを発生させる事が出来ず、40mより大きいと船舶に備えられているバラスト水ポンプとして用いられている大流量ポンプでは対応できなくなり不具合が生じるからである。
滞留槽7は、塩素殺菌剤から発生する塩素を、プランクトンや細菌類にこれらが死滅するのに十分な時間で、かつ、トリハロメタンの生成を抑制するようにできるだけ短時間接触させるために、塩素殺菌剤を添加され拡散された海水を滞留するものである。塩素還元剤を供給して残留塩素を失効させるまで所定時間滞留するように、滞留槽7の寸法や形状を定め所定の速度で流すようにする。
例えば、槽内に複数の仕切りを設けることによって長流路を形成して槽内での滞留時間を確保するようにしてもよい。
あるいは、滞留槽7は単なる貯留槽から構成し、海水を貯留後所定時間が経過すると排出ゲートを開ける若しくは排水ポンプを稼動させて排出するようなものでもよい。
塩素還元剤供給装置8は、塩素殺菌剤を添加され滞留槽7で所定時間滞留した海水に塩素還元剤を供給して海水中に残存する有効塩素を還元して失効させ、トリハロメタンの発生を抑制するものである。塩素還元剤を供給するためには、滞留槽7から海水を排出する流路内に塩素還元剤の注入口を設けておけばよい。
供給する塩素還元剤としては価格や取扱いの容易さなどの点から、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムを用いることが望ましい。また、塩素還元剤として過酸化水素水を用いてもよい。
ポンプ3を稼動することによって、海水取水ライン1から海水が船内に取りこまれる。その際、まず粗ろ過装置2によって海水中に存在する大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物が除去される。
粗大物が除去された海水はろ過装置4に供給され、ろ過装置4の目開きに応じた大きさの動物性プランクトン、植物性プランクトン等が除去される。
粗ろ過装置2及びろ過装置4で捕捉された水生生物等は、粗ろ過装置2及びろ過装置4のフィルタ等を逆洗することにより洗い流されて海に戻される。ろ過装置4で捕捉された水生生物等を海に戻しても同一の海域なので生態系に悪影響はない。つまり、この例ではバラスト水を積み込む際に処理をしているので、粗ろ過装置2及びろ過装置4の逆洗水をそのまま放流できるのである。
ベンチュリ管において、上述したメカニズムによりキャビテーションが発生して、塩素殺菌剤の海水中への拡散が促進され細菌類の殺滅効果を増進する。さらに、キャビテーションにより海水中の水生生物に衝撃圧、せん断力、高温、酸化力の強いOHラジカルが作用し、水生生物に損傷を与えるか破壊して殺滅する。
また、キャビテーションにより外殻に損傷を負いながら死滅しないプランクトンの体内に塩素殺菌剤を浸透させることができ塩素殺菌剤の殺滅効果を促進できると共に、塩素殺菌剤耐性の強い種類に対しても、塩素殺菌剤単独処理と比較して少ない塩素殺菌剤添加量で殺滅することが可能である。
また、海水をバラストタンクに積み込む際とバラストタンクから排出する際との両方でバラスト水中の水生生物の殺滅処理を行うようにしてもよい。その場合にはバラスト水の排出時の処理は軽度でよい。
図2は本発明の実施の形態2の説明図であり、実施の形態1と同一部分には同一の符号が付してある。
本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、滞留槽7の下流側に活性炭処理槽11を配置して、滞留槽7で塩素殺菌剤が拡散された海水を所定時間滞留させプランクトンと細菌類を死滅させた後に、海水を活性炭処理槽11に導入するようにした点である。このような配置にすれば、活性炭処理槽11で活性炭により海水中の残留塩素が還元分解されトリハロメタンの生成が抑制でき、さらに滞留槽7内で生成したトリハロメタンを吸着除去できる。活性炭処理槽11で活性炭処理された海水はバラストタンクに貯留される。
活性炭処理槽11としては、槽内で穏やかに活性炭を流動させるように形状、寸法を設定し導入する海水流量を調整したもの、または活性炭を充填したものを用いることができる。粒状の活性炭を用いれば活性炭処理槽11内を通水する流れによって穏やかに流動させることが容易に行え、交換も簡単に行える。
活性炭処理槽11内での活性炭処理時間は、残留塩素を十分に還元分解でき、生成したトリハロメタンを吸着除去できるように、海水に供給する塩素殺菌剤量によって0.5〜20分の範囲で調整して設定される。
もっとも、塩素還元剤供給装置8を用いないで活性炭処理槽11を単独で用いるようにしてもよい。
また、活性炭処理槽に代えてトリハロメタンを吸着する吸着材を備えた吸着槽を設けるとともに、滞留槽にて所定時間滞留した海水に塩素還元剤を供給するようにしてもよい。塩素還元剤により残留塩素を還元し失効させ、吸着槽で吸着材により生成したトリハロメタンを吸着する。吸着材として樹脂系吸着材を用いることができる。
本変形例が実施の形態2と異なる点は、滞留槽7と活性炭処理槽11をバラストタンク10の一部を改造したものとする点である。バラストタンク10の一部を滞留槽7と活性炭処理槽11として用いることにより、滞留槽7と活性炭処理槽11を新たに設ける必要がなく、既存船舶への適用が容易であり、設備費を低減できる。
そこで、塩素殺菌剤の供給量を水質に適合した量に調整するには、塩素殺菌剤を供給した海水の酸化還元電位を測定して、酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して800mV以上とするように調整する。酸化還元電位を800mV以上とすることにより、海水中に残留する塩素濃度を細菌類の死滅に十分な濃度にすることができる。
このように、海水またはろ過水中の還元性物質の量に応じて塩素殺菌剤供給量を調整することにより水生生物を確実に死滅させることができると共に過剰な塩素殺菌剤供給を防止できる。
これにより、次亜塩素酸ナトリウムの分解を防止でき、次亜塩素酸ナトリウムの消費量を抑制してバラスト水の処理費用を抑制することができる。
温度上昇防止手段の具体例として、例えば次亜塩素酸ナトリウム溶液の貯留槽を断熱して航行中に貯留槽内の次亜塩素酸ナトリウムの温度が上昇するのを防止する貯留槽断熱装置がある。
なお、次亜塩素酸ナトリウム溶液を予め冷却しておき、貯留槽断熱装置を備えた貯留槽に貯留するようにすれば、次亜塩素酸ナトリウムの温度管理を確実にでき、次亜塩素酸ナトリウムの分解をより確実に防止できる。
また、温度上昇防止手段の他の例として、貯留槽に設けられて貯留槽内の次亜塩素酸ナトリウム溶液を冷却する冷却熱交換器が挙げられる。冷却熱交換器には冷媒として冷却水を用いることもできるが、冷媒として海水を用いるようにすれば、冷却のための運転費を抑制できる。
塩素殺菌剤が供給される海水に酸を供給して海水のpHを5〜7にすると、塩素殺菌剤を供給した海水中の遊離残留塩素の形態が次亜塩素酸(HOCl)がほとんどとなり、殺菌効力が高いため好ましい。海水のpHが5より低いと遊離残留塩素の形態は次亜塩素酸とCl2となり、pHが7より高いと遊離残留塩素の形態は次亜塩素酸と次亜塩素酸イオン(OCl-)となり、いずれも殺菌効力が他にくらべて100倍高い次亜塩素酸の割合が低くなり、殺菌効力が低下する。また、海水のpHを5〜7にすると、トリハロメタンの生成を抑制する効果もある。
なお、供給する酸としては塩酸または硫酸を用いる。
処理前の海水原水中にはプランクトンが5×105個/m3生息しているが、上記の処理後には4個/m3に減少しIMOバラスト水基準を満たす処理が行えた。また、トリハロメタン濃度は滞留槽出口の海水中では0.03mg/l程度と低濃度であり、活性炭処理槽11出口の海水中では0.002mg/Lと極めて低濃度となり、環境への影響が問題ないことを確認できた。
Claims (16)
- 船舶のバラストタンクに注水する海水および/またはバラストタンクから排出する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留槽と、該滞留槽の下流側に設けられて滞留槽にて所定時間滞留した海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給装置と、を備えたことを特徴とするバラスト水処理装置。
- 船舶のバラストタンクに注水する海水および/またはバラストタンクから排出する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留槽と、該滞留槽の下流側に設けられて滞留槽にて所定時間滞留した海水の供給を受けて活性炭処理する活性炭処理装置と、を備えたことを特徴とするバラスト水処理装置。
- 活性炭処理装置は、バラストタンク内に活性炭を備えることによって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバラスト水処理装置。
- 滞留槽は、塩素殺菌剤を供給してから塩素還元剤を供給するまでの時間を0.5〜20分とする滞留が可能であることを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理装置。
- 滞留槽は、塩素殺菌剤を供給してから活性炭処理するまでの時間を0.5〜20分とする滞留が可能であることを特徴とする請求項2または3に記載のバラスト水処理装置。
- 滞留槽は、バラストタンク内に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバラスト水処理装置。
- 塩素殺菌剤供給装置の上流側に海水をろ過して水生生物を捕捉するろ過装置を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のバラスト水処理装置。
- 船舶のバラストタンクに注水する海水および/またはバラストタンクから排出する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給工程と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留工程と、所定時間滞留された海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給工程と、を備えたことを特徴とするバラスト水処理方法。
- 船舶のバラストタンクに注水する海水および/またはバラストタンクから排出する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給工程と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留工程と、所定時間滞留された海水を活性炭処理する活性炭処理工程と、を備えたことを特徴とするバラスト水処理方法。
- 活性炭処理工程は、活性炭処理時間を0.5〜20分とすることを特徴とする請求項9に記載のバラスト水処理方法。
- 滞留工程は、塩素殺菌剤を供給してから塩素還元剤を供給するまでの時間を0.5〜20分とする滞留を行なうことを特徴とする請求項8に記載のバラスト水処理方法。
- 滞留工程は、塩素殺菌剤を供給してから活性炭処理するまでの時間を0.5〜20分とする滞留を行なうことを特徴とする請求項9または10に記載のバラスト水処理方法。
- 塩素殺菌剤供給工程の前に海水をろ過して水生生物を捕捉するろ過工程を備えたことを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載のバラスト水処理方法。
- 海水中の有効塩素量の重量濃度を5〜100mg/lとするように塩素殺菌剤を供給することを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載のバラスト水処理方法。
- 塩素殺菌剤供給工程の前に酸供給工程を備えたことを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載のバラスト水処理方法。
- 塩素殺菌剤が供給される海水のpHを5〜7にすることを特徴とする請求項15に記載のバラスト水処理方法。
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