JP4915313B2 - バラスト水処理装置 - Google Patents
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Description
ところで、環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶によってバラスト水の注排水が行われると、荷積み港と荷下し港におけるバラスト水に含まれる微生物の差異により沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
そこで、船舶のバラスト水管理に関する国際会議において2004年2月に船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約が採択され、バラスト水の処理が義務付けられることとなった。
しかしながら、塩素還元剤を過剰に供給すると塩素還元剤がバラスト水中の溶存酸素とも反応して溶存酸素量が低下する事態が発生する懸念があり、このような溶存酸素量が低下した海水を海へ排水すると周辺環境に悪影響を及ぼす危険がある。
前記バラストタンクからバラスト水を前記塩素還元剤供給装置に送り海に排水するバラスト水供給ライン及びバラスト水送水ポンプと、
塩素還元剤が供給されたバラスト水の溶存酸素濃度を計測する溶存酸素濃度計と、塩素還元剤が供給されたバラスト水に空気を供給する空気供給手段と、前記溶存酸素濃度計により計測された溶存酸素濃度が所定値未満である場合に塩素還元剤が供給されたバラスト水に空気を供給するように前記空気供給手段を制御する空気供給制御手段とを備え、
前記塩素還元剤供給装置は塩素還元剤をバラスト水に供給する注入口を前記バラスト水供給ラインのバラスト水送水ポンプの上流側に設けてなり、前記バラスト水送水ポンプは吸込み側に空気を吸い込む機構を有し、該バラスト水送水ポンプを前記空気供給手段として用いることを特徴とするものである。
また、バラスト水送水ポンプを空気供給手段としても用いるので、別にバラスト水に空気を供給する曝気装置を設ける必要がなく、バラスト水処理装置全体をコンパクトに構成できる。
ベンチュリ管装置を塩素殺菌剤拡散手段、生物、殺滅手段及び空気供給手段として兼用するため、バラスト水処理装置全体をコンパクトに構成できる。
以下、図面を用いて、本発明に係るバラスト水処理装置について、最良の形態の一例を具体的に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係るバラスト水処理装置の構成を示す図である。図1に示すバラスト水処理装置は、海水を取水し、取水した海水に生物殺滅処理を施してバラストタンクに送水する機能と、バラストタンクの海水を海に排水する際に無害化処理をする機能の両方の機能を備えている。
以下、各装置をさらに詳細に説明する。
粗ろ過装置2は、ポンプ3によって、船側部に設けられたシーチェスト(海水吸入口)から海水取水ライン1を通して取水される海水中に含まれる大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物を除去するためのものである。
粗ろ過装置2としては10mm程度の孔を設けた筒型ストレーナ(こし器)、水流中の粗大物を比重差により分離するハイドロサイクロン、回転スクリーンにより粗大物を捕捉し掻揚げ回収する装置等を用いることができる。
ろ過装置4は粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するものであり、目開き10〜200μmのものを用いる。
目開きを10〜200μmにしたのは動物性プランクトン、植物性プランクトンの捕捉率を一定のレベルに保ちつつ、逆流洗浄頻度を少なくして寄港地でのバラスト水処理時間を短縮するためである。逆に言えば、目開きが200μmより大きいと動物プランクトン、植物プランクトンの捕捉率が著しく低くなるし、目開きが10μmより小さいと逆流洗浄頻度が多くなり寄港地でのバラスト水処理時間が長くなるので好ましくない。特に目開き35μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆流洗浄頻度とを最適に設定できるので、好ましい。
また、ろ過装置4は、ろ過面積1m2あたり1日200m3以上のろ過速度が得られることが望ましい。ただし、ろ過モジュールの集積によって、より小型化が可能な場合には特に限定しない。
ノッチワイヤフィルタとは、ノッチ(突起)を設けたワイヤを枠体に巻きつけて形成した筒型のエレメントを、ケーシング内に保持し、このケーシングに送水及び逆洗浄のためのバルブ及び配管を設けたものである。筒型のエレメントは、ノッチによってワイヤ同士の間隔を、ろ過通路寸法である10〜200μmに保持している。
このノッチワイヤフィルタの具体例としては、神奈川機器工業製ノッチワイヤフィルタがある。
このウェッジワイヤフィルタの具体一例としては、東洋スクリーン工業製ウェッジワイヤフィルタがある。
なお、積層ディスク型ろ過器においては、逆洗時にはディスクの圧締を解除して、間隙を大きくしてろ過残渣を除去する。
この積層ディスク型ろ過器の具体例としては、Arkal Filtration Systems製のSpin Klin Filter Systemsがる。
なお、ろ過装置4としては、上記の2種類のろ過装置の他、例えば密閉型砂ろ過器、ろ布ろ過器、金属繊維ろ過器など他の種々のろ過装置を用いることができる。
塩素殺菌剤供給装置5は、ろ過装置4によってろ過された海水に細菌類を死滅させる塩素殺菌剤を供給するものである。供給する塩素殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、二酸化塩素、またはこれらの2種以上の混合物が使用できるが、これ以外の塩素殺菌剤を使用することも可能である。
その理由は、有効塩素量の重量濃度が1mg/lより小さいと次亜塩素酸が水中の還元性物質、有機物と反応して残留しないし、100mg/lより大きいと腐食の問題や次亜塩素酸ナトリウムの貯留槽が大きくなり高コストとなる等の問題があり、不具合が生じるからである。
塩素殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給する場合には、塩素殺菌剤をベンチュリ管のど部に達するまでに管内である程度拡散させておき、次いでベンチュリ管のど部で発生するキャビテーションにより塩素殺菌剤の拡散、混合を進めることができ、塩素殺菌剤の細菌類への浸透を促進して塩素殺菌剤の殺滅効果を促進できる。
なお、殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給するためには、ベンチュリ管よりも上流側の直管路に殺菌剤の注入口を設けておけばよい。また、殺菌剤をベンチュリ管ののど部に供給する場合には、ベンチュリ管のエジェクタ作用により自吸されるので供給ポンプが不要となる。
塩素殺菌剤をろ過装置4によりろ過された海水中に拡散させる拡散器6として、ベンチュリ管を備えたベンチュリ管装置を用いることが好ましい。以下の説明では拡散器6としてベンチュリ管装置6を例に挙げて説明する。
ベンチュリ管は塩素殺菌剤を海水中に拡散させると共に、ろ過装置4を通過したプランクトンに対してベンチュリ管により発生するキャビテーションにより損傷を与えるか殺滅するものである。
ベンチュリ管は、管路断面積が徐々に小さくなる絞り部、最小断面積部であるのど部、徐々に管路断面積が広がる広がり部(ディフューザ部)からなる。のど部での流速の急上昇に伴う静圧の急激な低下によりキャビテーション気泡が発生し、広がり部での流速の低下に伴う急激な圧力上昇により成長したキャビテーション気泡が急激に崩壊する。海水中の水生生物はキャビテーション気泡が崩壊することによる衝撃圧、せん断力、高温、酸化力の強いOHラジカルの作用などにより、損傷を受けるか破壊されて死滅する。
このベンチュリ管のキャビテーションによれば、特に、比較的固い殻を有する原虫類、動物プランクトンの外殻を破壊し、死滅させることができる。
なお、拡散器6として、ベンチュリ管装置以外に海水流路内に攪拌流れを生じさせるスタティックミキサや攪拌翼を回転させる撹拌器を用いてもよい。
塩素還元剤供給装置10は、塩素殺菌剤を添加されて塩素が残留する海水に塩素還元剤を供給して海水中に残存する塩素を還元することで、無害化するものである。
この実施形態では、塩素還元剤供給装置10は第1バラスト水供給ライン9に設けられ、バラスト水の排出時にバラストタンク8に貯留された塩素が残留しているバラスト水に、塩素還元剤を供給して残留塩素を還元処理して海中に排出するようにしている。
塩素還元剤供給装置10は、図示しない塩素還元剤供給量制御装置によって制御され、適正な量の塩素還元剤が所定の箇所に供給される。
空気供給装置12は、塩素還元剤により酸素が消費され溶存酸素濃度が低下した海水中の溶存酸素量を回復させるため、塩素還元剤が供給された海水に空気を供給するための装置である。
空気供給装置12は、図2に示すようにベンチュリ管装置6のベンチュリ管ののど部に接続された空気供給管25と、空気供給管25に空気を送るブロワ27(または空気ポンプ)と、空気供給管25に設けられて送られる空気量を調整する空気量調整弁29と、を備えて構成される。
空気供給制御装置31は、塩素還元剤が供給された海水中の溶存酸素濃度を計測する溶存酸素濃度計33と、溶存酸素濃度計33により計測された溶存酸素濃度の計測結果に基づいて機器を制御する制御手段35とを備えている。制御手段35は、溶存酸素濃度の計測結果に基づいて、ブロワ27の出力および/または供給量調整用の空気量調整弁29の開度の調整制御を行う。
また、ベンチュリ管のディフューザ部ではキャビテーションが発生して海水の流れに大規模な乱れが発生するので、注入気泡が微細化されて気液の接触面積が大幅に増加する。これらの作用のため、海水への空気の溶け込みが非常に効率良く行われ、管路を流れている間に海水中の溶存酸素量を周辺環境に悪影響を及ぼさないレベルにまで容易にかつ迅速に回復できる。
まず、海から海水を取水しバラストタンク9に供給してバラスト水を積込む際に行う海水中の生物殺滅処理について説明する。(図1参照)
バラスト水の積込み時には、ポンプ3を稼動して海水取入ライン1から海水を船内に取り入れ、粗ろ過装置2により粗大物を除去し、ろ過装置4によりろ過装置4の目開きに応じた大きさのプランクトン等を除去する。ろ過装置4でろ過された海水には塩素殺菌剤供給装置5で塩素殺菌剤が供給され、塩素殺菌剤が添加された海水はベンチュリ管装置6に導入される。ベンチュリ管装置6において、キャビテーションを発生させ水生生物に損傷を与えると共に、塩素殺菌剤の海水中への拡散が促進され殺菌効果が増大される。
ベンチュリ管装置6で処理された海水は、処理水送水ライン7を介してバラストタンク8に送られ貯留される。バラストタンク8内に貯留される海水には、塩素殺菌剤供給装置5で供給された塩素殺菌剤が、適切な濃度で残存することが好ましい。これにより、細菌類やプランクトンの再成長を抑制することができる。
次に、バラストタンク9から塩素が残留している海水を海に排出する際に行う残留塩素分解処理と溶存酸素回復処理について説明する。
バラスト水の排出時には、ポンプ3を稼動してバラストタンク8から第1バラスト水供給ライン9を介してバラスト水を導入し、第1バラスト水供給ライン9のポンプ3より上流側に注入口を設けられた塩素還元剤供給装置10から塩素還元剤を供給し、これによって、ポンプ3による攪拌作用により塩素還元剤を海水中に十分拡散させて配管内で残留塩素を分解する。
残留塩素の還元分解処理の終ったバラスト水は、第2バラスト水供給ライン11を介して、ろ過装置4と塩素殺菌剤供給装置5をバイパスしてベンチュリ管装置6に送られる。
空気が供給され溶存酸素濃度が回復されたバラスト水は、バラスト水排水ライン13を通じて海に排水する。
なお、空気供給量は、ベンチュリ管装置6の上流側において溶存酸素濃度を計測し、この溶存酸素濃度が周辺環境に悪影響を与えない程度となるように調整する。
また、バラスト水への空気供給混合をベンチュリ管装置6によって行うようにしたので、曝気装置を別に設ける必要が無くバラスト水処理装置全体をコンパクトにでき設置場所を小さくすることができる。
Claims (1)
- 船舶にバラスト水として取水される海水及び/またはバラストタンクから排水される海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置と、塩素殺菌剤が供給されたバラスト水を海に排水する際に、該バラスト水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給装置とを備えたバラスト水処理装置であって、
前記バラストタンクからバラスト水を前記塩素還元剤供給装置に送り海に排水するバラスト水供給ライン及びバラスト水送水ポンプと、
塩素還元剤が供給されたバラスト水の溶存酸素濃度を計測する溶存酸素濃度計と、塩素還元剤が供給されたバラスト水に空気を供給する空気供給手段と、前記溶存酸素濃度計により計測された溶存酸素濃度が所定値未満である場合に塩素還元剤が供給されたバラスト水に空気を供給するように前記空気供給手段を制御する空気供給制御手段とを備え、
前記塩素還元剤供給装置は塩素還元剤をバラスト水に供給する注入口を前記バラスト水供給ラインのバラスト水送水ポンプの上流側に設けてなり、前記バラスト水送水ポンプは吸込み側に空気を吸い込む機構を有し、該バラスト水送水ポンプを前記空気供給手段として用いることを特徴とするバラスト水処理装置。
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