JP2009297610A - バラスト水処理装置およびバラスト水処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】船舶のバラストタンクに注水する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置5と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留槽7と、滞留槽7の下流側に設けられて滞留槽7にて所定時間滞留した海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給装置8とを備えたバラスト水処理装置であって、滞留槽7から抜出した海水の残留塩素濃度を1.5〜3.5mg/lに低減するために必要な塩素還元剤理論量を演算し、演算された塩素還元剤理論量に対して1.0〜1.5倍となる塩素還元剤を供給するようにしたものである。
【選択図】 図1
Description
ところで、環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶によってバラスト水の注排水が行われると、荷積み港と荷下し港におけるバラスト水に含まれる微生物の差異により沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
そこで、船舶のバラスト水管理に関する国際会議において2004年2月に船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約が採択され、バラスト水の処理が義務付けられることとなった。
そして、特許文献1に記載の方法においては、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させ殺菌した後に、海水に残存する残留塩素を還元する塩素還元剤を供給して、残留塩素を失効させ、残留塩素と海水中の有機物との反応により有害なトリハロメタンが生成することを抑制するようにしている。
しかしながら、塩素殺菌剤により殺菌を行っても、休眠細胞や胞芽細胞が殺滅されずに残存していることがあるため、残留塩素が残存しない海水をバラストタンクで貯留している間に再成長してプランクトンや細菌数が基準以上に増加することがあるという問題がある。
前記塩素還元剤供給装置は、前記滞留槽にて所定時間滞留した海水の残留塩素濃度を計測する残留塩素濃度計と、計測された残留塩素濃度に基づいて前記滞留槽から抜出した海水の残留塩素濃度を1.5〜3.5mg/lに低減するために必要な塩素還元剤理論量を演算し、該演算された塩素還元剤理論量に対して1.0〜1.5倍となる塩素還元剤供給量を演算する演算手段と、該演算手段によって演算された塩素還元剤供給量を供給するように塩素還元剤の供給量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
なお、塩素殺菌剤としては次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素ガスが用いられ、いずれも海水中で次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンの形態で有効塩素として存在する。
また、塩素還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムあるいは過酸化水素水が用いられる。
しかしながら、バラストタンクに給水する海水の残留塩素を全くなくしてしまうと、芽胞形成中の細菌やプランクトンの卵が殺滅されずに残存している場合には、バラストタンク内においてプランクトンと細菌類が再成長することがあるため、これを抑制するためにバラストタンクに給水する海水中に残留塩素を適切な濃度で残存させることが好ましい。
もっとも、バラストタンクに貯留中の海水においてトリハロメタンの生成を抑制し、バラストタンクの内面塗装の耐久性への影響や機器の腐食発生を防止する観点からは、バラストタンクで貯留している間には残留塩素濃度はできるだけ低いことが好ましい。
このように、バラストタンクに貯留する海水には、プランクトンと細菌類の再成長を抑制できる程度で、かつトリハロメタンの生成を抑制し、バラストタンクの内面塗装の耐久性への影響や機器の腐食発生を防止できる程度の残留塩素濃度で残留塩素が残存することが望まれる。
他方、残留塩素濃度が1.5mg/l程度より小さければ、バラストタンクの内面塗装の耐久性への影響や機器の腐食発生の問題は生じないことも確認した。
これらのことから、バラストタンクに貯留中の海水の残留塩素濃度を1.0〜1.5mg/lに保てば、プランクトンと細菌類が再成長することを抑制でき、かつ、バラストタンクの内面塗装の耐久性への影響や機器の腐食発生の問題は生じないとの知見を得た。
図3はバラストタンクに貯留している海水の残留塩素濃度の経時変化を示す図であり、縦軸が残留塩素濃度(mg/l)で横軸が経過時間(日)を示している。
図3に示すように、バラストタンクに貯留している海水の残留塩素濃度は時間の経過とともに次第に低下している。
バラストタンクに海水を貯留する日数は船舶の運航状況によるが、通常5〜20日程度であることから、この期間においてバラストタンクに貯留している海水の残留塩素濃度を上述の1.0〜1.5mg/lに保つことが必要である。
図3に示す経時変化から、5〜20日経過した時に海水中の残留塩素濃度が1.0〜1.5mg/l残存するようにするためには、バラストタンクに注水する時には残留塩素濃度が1.5〜3.5mg/l程度残存する必要があることを見出した。
塩素濃度1mg/lあたりの還元に必要な塩素還元剤理論濃度(mg/l)は、(塩素還元剤分子量/塩素原子量)で求めることができる。例えば、塩素還元剤が亜硫酸ナトリウムの場合、亜硫酸ナトリウムの分子量は63であり、塩素の原子量は35.5であるので、塩素濃度1mg/lのものを還元するのに必要な亜硫酸ナトリウムの濃度は、(63/35.5=)1.77mg/lとなる。
また、例えば塩素還元剤が重亜硫酸ナトリウムの場合、重亜硫酸ナトリウムの分子量は52であるので、塩素濃度1mg/lのものを還元するのに必要な重亜硫酸ナトリウムの濃度は、(52/35.5=)1.46mg/lとなる。
したがって、塩素殺菌剤を供給して所定時間滞留させた時の海水中の残留塩素濃度がXmg/lのとき、残留塩素濃度を目標残留塩素濃度Xsmg/lにまで低減させる還元反応に必要な塩素還元剤濃度の理論値すなわち塩素還元剤理論濃度は、例えば塩素還元剤が亜硫酸ナトリウムの場合、1.77(X-Xs)mg/lとなる。
海水を容器に入れ、これに種々の濃度で次亜塩素酸ナトリウムを添加し、残留塩素濃度を残留塩素濃度計により計測し、残留塩素濃度が3〜20mg/lのサンプル海水No.1〜10を作成した。サンプル海水の溶存酸素濃度を溶存酸素濃度計により計測したところ、溶存酸素濃度は、7.0〜8.0mg/lであった。サンプル海水に塩素還元剤として亜硫酸ナトリウムを、当量比を0.9〜1.8の範囲で変えて供給して、反応後の残留塩素濃度を計測した。反応後の残留塩素濃度が目標残留塩素濃度として定めた2mg/lとなる塩素還元剤供給濃度を求め、その塩素還元剤供給濃度と、残留塩素濃度を2mg/lとするための塩素還元剤理論濃度との比(当量比)を求め、表2に示す。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
T=10^((Log49-LogC)/0.65) (1)
T:滞留時間の下限値(分)
C: 塩素殺菌剤を供給した海水中の残留塩素濃度(mg/l)
そこで、この基準を満たすために必要な海水中の残留塩素濃度と、プランクトン、細菌類と残留塩素の接触時間との関係を求めた。図4は、海水中の残留塩素濃度と、基準を満たすために必要なプランクトン、細菌類と残留塩素の接触時間の下限値との関係を片対数グラフで表したものであり、縦軸が接触時間(分)を示し、横軸が残留塩素濃度(mg/l)を示している。接触時間の下限値(分)Tと塩素殺菌剤を供給した海水中の残留塩素濃度(mg/l)Cとの関係は(1)式で示される。
T=10^((Log49-LogC)/0.65) (1)
なお、ろ過装置としては、目開きが10〜200μmのものを用いるのが好ましく、特に目開き50μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆流洗浄頻度とを最適に設定できるので、特に好ましい。
T=10^((Log49-LogC)/0.65) (1)
T:滞留時間の下限値(分)
C: 塩素殺菌剤を供給した海水中の塩素濃度(mg/l)
以下、図面を用いて、本発明に係るバラスト水処理装置について、最良の形態の一例を具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係るバラスト水の処理装置を示す図である。本実施の形態に係るバラスト水処理装置は、図1に示すように、海水を船内に取り込むための海水取水ライン1、海水取水ライン1によって取水された海水中の粗大物を除去する粗ろ過装置2、海水を取り込むため、あるいは後述のバラストタンク10のバラスト水を後述のろ過装置4に送水するためのポンプ3、粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するろ過装置4、ろ過装置4でろ過された海水に細菌類を死滅させる塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置5、ろ過装置4でろ過されたろ過水に塩素殺菌剤供給装置5から供給された塩素殺菌剤を拡散させる拡散器6、塩素殺菌剤が添加された海水を所定時間滞留させる滞留槽7、滞留槽7から導出された海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給装置8、塩素還元剤を添加された処理水を後述のバラストタンク10に送水する処理水送水ライン9、処理水送水ライン9から送水される処理水を貯留するバラストタンク10を備えている。
以下、各装置をさらに詳細に説明する。
粗ろ過装置2は、船側部に設けられたシーチェスト(海水吸入口)から取水され、ポンプ3によって海水取水ライン1を通して取水される海水中に含まれる大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物を除去するためのものである。
粗ろ過装置としては10mm程度の孔を設けた筒型ストレーナ(こし器)、水流中の粗大物を比重差により分離するハイドロサイクロン、回転スクリーンにより粗大物を捕捉し掻揚げ回収する装置等を用いることができる。
ろ過装置4は粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するものであり、目開き10〜200μmのものを用いる。
目開きを10〜200μmにしたのは動物性プランクトン、植物性プランクトンの捕捉率を一定のレベルに保ちつつ、逆流洗浄頻度を少なくして寄港地でのバラスト水処理時間を短縮するためである。逆に言えば、目開きが200μmより大きいと動物プランクトン、植物プランクトンの捕捉率が著しく低くなるし、目開きが10μmより小さいと逆流洗浄頻度が多くなり寄港地でのバラスト水処理時間が長くなるので好ましくない。特に目開き50μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆流洗浄頻度とを最適に設定できるので、好ましい。
また、ろ過装置4は、ろ過面積1m2あたり1日200m3以上のろ過速度が得られることが望ましい。ただし、ろ過モジュールの集積によって、より小型化が可能な場合には特に限定しない。
ノッチワイヤフィルタとは、ノッチ(突起)を設けたワイヤを枠体に巻きつけてノッチによりワイヤ同士の間隔を保持してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントをケーシング内に保持し、送水と逆洗浄のためのバルブと配管を設けたものである。このノッチワイヤフィルタの具体例としては、神奈川機器工業製ノッチワイヤフィルタがある。
このノッチワイヤフィルタをろ過エレメントとして複数備え、逆洗手段を備えたものが特開2001−170416に開示されている。ろ過エレメント集合基板や、それぞれのろ過エレメントに小型超音波振動子を取り付け、逆洗時に超音波振動を付加することにより、逆洗浄効果を増大させ、逆洗浄の間隔を延ばしてろ過効率を高めることができる。
ウェッジワイヤフィルタとは、断面が三角形のワイヤを枠体に巻きつけてワイヤ同士の間隔を調整してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントをケーシング内に保持し、送水と逆洗浄のためのバルブと配管を設けたものである。このウェッジワイヤフィルタの具体一例としては、東洋スクリーン工業製ウェッジワイヤフィルタがある。
なお、積層ディスク型ろ過器においては、逆洗時にはディスクの圧締を解除して、間隙を大きくしてろ過残渣を除去する。この積層ディスク型ろ過器の具体例としては、Arkal Filtration Systems製のSpin Klin Filter Systemsがる。
塩素殺菌剤供給装置5は、ろ過装置4によってろ過された海水に細菌類を死滅させる塩素殺菌剤を供給するものである。供給する塩素殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、またはこれらの2種以上の混合物が使用できるが、これ以外の塩素殺菌剤を使用することも可能である。
塩素殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給する場合には、塩素殺菌剤をベンチュリ管のど部に達するまでに管内である程度拡散させておき、次いでベンチュリ管のど部で発生するキャビテーションにより塩素殺菌剤の拡散、混合を進めることができ、塩素殺菌剤の細菌類への浸透を促進して塩素殺菌剤の殺滅効果を促進できる。
なお、殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給するためには、ベンチュリ管よりも上流側の直管路に殺菌剤の注入口を設けておけばよい。また、殺菌剤をベンチュリ管ののど部に供給する場合には、ベンチュリ管のエジェクタ作用により自吸されるので供給ポンプが不要となる。
塩素殺菌剤をろ過装置4によりろ過された海水中に拡散させる拡散器6として、ベンチュリ管を用いることが好ましい。
ベンチュリ管は塩素殺菌剤を海水中に拡散させると共に、ろ過装置4を通過したプランクトンに対してベンチュリ管により発生するキャビテーションにより損傷を与えるか殺滅するものである。
ベンチュリ管は、管路断面積が徐々に小さくなる絞り部、最小断面積部であるのど部、徐々に管路断面積が広がる広がり部(ディフューザ部)からなる。のど部での流速の急上昇に伴う静圧の急激な低下によりキャビテーション気泡が発生し、広がり部での流速の低下に伴う急激な圧力上昇により成長したキャビテーション気泡が急激に崩壊する。海水中の水生生物はキャビテーション気泡が崩壊することによる衝撃圧、せん断力、高温、酸化力の強いOHラジカルの作用などにより、損傷を受けるか破壊されて死滅する。
このベンチュリ管のキャビテーションによれば、特に、比較的固い殻を有する原虫類、動物プランクトンの外殻を破壊し、死滅させることができる。
拡散器として、ベンチュリ管以外に海水流路内に攪拌流れを生じさせるスタティックミキサや攪拌翼を回転させる撹拌器を用いてもよい。
滞留槽7は、塩素殺菌剤から発生する塩素を、プランクトンや細菌類にこれらが死滅するのに十分な時間接触させるために、塩素殺菌剤を添加され拡散された海水を滞留させるものである。
この接触時間とは、接触時間の下限値(分)Tと塩素殺菌剤を供給した海水中の残留塩素濃度(mg/l)Cとの関係を示した次の(1)式における接触時間の下限値以上の時間である。
T=10^((Log49-LogC)/0.65) (1)
このような滞留槽7は、その寸法や形状を上記の滞留時間との関係で所定のものに設計し、所定の速度で流すようにすればよい。例えば、槽内に複数の仕切りを設けることによって長流路を形成して槽内での滞留時間を確保するようにしたものでよい。
あるいは、滞留槽7は単なる貯留槽から構成し、海水を貯留後所定時間が経過すると排出ゲートを開ける若しくは排水ポンプを稼動させて排出するようなものでもよい。
なお、トリハロメタンの生成を抑制するという観点からは、滞留時間は、上述の接触時間の下限値以上で出来るだけ短い時間が好ましく、この点も考慮して滞留槽を構成するのが望ましい。
塩素還元剤供給装置8は、塩素殺菌剤を添加され滞留槽7から導出された塩素が残留する海水に塩素還元剤を供給して海水中に残存する塩素を還元し、残留塩素濃度を目標残留塩素濃度にまで低減するものである。目標残留塩素濃度にまで低減することで、トリハロメタンの発生量を小さくするように抑制するとともに、バラストタンクに貯留中にプランクトン
や細菌類が再成長することを抑制することができる。この実施形態では、塩素還元剤供給装置8は、滞留槽7から導出された海水をバラストタンク10に送水する処理水供給ライン9に設けられている。
処理水供給ライン9に設けられた注入口19から、滞留槽7から導出された海水に塩素還元剤を供給して、塩素還元剤を処理水中に拡散することができる。
塩素還元剤供給装置8は、図2に示す塩素還元剤供給量制御装置25によって制御され、適正な量の塩素還元剤が所定の箇所に供給される。
塩素還元剤供給量制御装置25は、滞留槽7にて所定時間滞留して抜出された海水中の残留塩素濃度を計測する第1残留塩素濃度計27と、各種のデータを記憶する記憶手段29と、塩素還元剤供給量を演算する演算手段31と、演算手段31の演算結果に基づいて機器を制御する制御手段33と、処理水送水ラインの注入口19の下流側に設けられて塩素還元剤が供給された海水中の残留塩素濃度を計測する第2残留塩素濃度計35とを備えている。
記憶手段29には、塩素還元剤供給量(Y:mg/l)と残留塩素濃度(X1:mg/l)、バラストタンクに注水する時の目標残留塩素濃度(Xs:mg/l)との関係として予め定められた関係式(Y=a・c(X1-Xs))が記憶されている。
a;残留塩素濃度1mg/lあたりの還元に必要な理論塩素還元剤濃度(mg/l)と残留塩素濃度との比であり、塩素還元剤が亜硫酸ナトリウムの場合1.77、重亜硫酸ナトリウムの場合1.46である。
c;当量比1.0〜1.5
もっとも、当量比として1.0〜1.5倍の範囲のどの値を選択するかについては、海域ごとの海水に合わせて適宜経験や採取した海水を用いた実験等に基づいて選択してもよいし、運転当初は最大値を選択してフィードバック制御によって徐々に小さくして最適値を求めるようにしてもよいし、あるいは運転当初は最小値を選択してフィードバック制御によって徐々に大きくして最適値を求めるようにしてもよい。
また、バラストタンクに注水する時の目標残留塩素濃度(Xs:mg/l)として、1.5〜3.5mg/lとすることが前述した検討結果により適切である。
また、供給すべき塩素還元剤供給量を、残留塩素濃度平均値および記憶手段29に記憶された関係式に基づいて演算する。具体的な塩素還元剤供給量の演算方法は後述する。
制御手段33は、演算手段31の演算結果に基づいて、供給ポンプ21の出力および/または供給量調整用のバルブ23の開度の調整制御を行う。
バラスト水の積込み時には、ポンプ3を稼動して海水取入ライン1から海水を船内に取り入れ、粗ろ過装置2により粗大物を除去し、ろ過装置4によりろ過装置4の目開きに応じた大きさのプランクトン等を除去する。ろ過装置4でろ過された海水には塩素殺菌剤供給装置5で塩素殺菌剤が供給され、塩素殺菌剤が添加された海水は拡散器6(ベンチュリ管)に導入される。拡散器6(ベンチュリ管)において、キャビテーションを発生させ水生生物に損傷を与えると共に、塩素殺菌剤の海水中への拡散が促進され殺菌効果が増大される。
T=10^((Log49-LogC)/0.65) (1)
T:接触時間の下限値(分)
C:海水中の残留塩素濃度(mg/l)
なお、残留塩素により発生するトリハロメタンができるだけ少なくなるようにするため、滞留時間は、上記の接触時間の下限値以上であってこれに近い値にするのが好ましい。
塩素還元剤の供給量は、塩素還元剤供給量制御装置25によって制御され、適正な量の塩素還元剤が所定の箇所に供給される。
以下、塩素還元剤の供給量の制御方法を説明する。
記憶手段29には、塩素還元剤供給量(Y:mg/l)と残留塩素濃度(X1:mg/l)、バラストタンクに注水する時の目標残留塩素濃度(Xs:mg/l)との関係として予め定められた関係式(Y=a・c(X1-Xs))が記憶されている。
a; 残留塩素濃度1mg/lあたりの還元に必要な理論塩素還元剤濃度(mg/l)と残留塩素濃度との比であり、塩素還元剤が亜硫酸ナトリウムの場合1.77、重亜硫酸ナトリウムの場合1.46である。
c;当量比1.0〜1.5
演算手段31は、第1残留塩素濃度計27の計測結果を入力して、所定時間における残留塩素濃度平均値X1aveを求める。残留塩素濃度平均値X1aveが求まると、記憶手段29に記憶されている関係式Y=a・c(X1-Xs)に基づいて、塩素還元剤供給量Yを求める。このとき、例えばcの値として、最小値の1.0を選択する。
制御手段33は、演算手段31の演算結果に基づいて、供給ポンプ21の出力および/または供給量調整用バルブ23の開度の調整制御を行い、塩素還元剤の供給量を制御する。
この場合における関係式のcの値としては、第2残留塩素濃度計35の計測結果に基づいて、例えば本例のように残留塩素濃度X2が目標残留塩素濃度Xsよりも大きい場合には、1.0〜1.5倍当量比の中から先に選択した1.0よりも大きな値を選択するようにする。
制御手段33は、演算手段31の演算結果に基づいて、再び供給ポンプ21の出力および/または供給量調整用バルブ23の開度の調整制御を行う。
また、塩素還元剤を適正な供給量で生物死滅処理された海水に供給して残留塩素濃度を適正な濃度に制御するようにしたので、トリハロメタンの生成を抑制して周辺環境に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ、かつバラストタンクに貯留中の生物類の再成長を抑制することができる。
また、ブロモホルム濃度は滞留処理後の海水中では0.06mg/lであり、バラストタンクに14日間貯留した後には0.31mg/lであり、バラストタンクに14日間貯留中にブロモホルムが濃度0.25mg/l生成していたことを示している。滞留処理後の海水に塩素還元剤を供給しない場合には14日間貯留した後にはブロモホルム濃度が0.61mg/lにまで増加しており、塩素還元剤を供給することによりブロモホルム生成量を1/2程度に低く抑制できることを確認した。
Claims (6)
- 船舶のバラストタンクに注水する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留槽と、該滞留槽の下流側に設けられて滞留槽にて所定時間滞留した海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給装置とを備えたバラスト水処理装置であって、
前記塩素還元剤供給装置は、前記滞留槽にて所定時間滞留した海水の残留塩素濃度を計測する残留塩素濃度計と、計測された残留塩素濃度に基づいて前記滞留槽から抜出した海水の残留塩素濃度を1.5〜3.5mg/lに低減するために必要な塩素還元剤理論量を演算し、該演算された塩素還元剤理論量に対して1.0〜1.5倍となる塩素還元剤供給量を演算する演算手段と、該演算手段によって演算された塩素還元剤供給量を供給するように塩素還元剤の供給量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするバラスト水処理装置。 - 滞留槽は、塩素殺菌剤を供給してから塩素還元剤を供給するまでの時間を(1)式から算定する滞留時間の下限値以上とする滞留が可能であることを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理装置。
T=10^((Log49-LogC)/0.65) (1)
T:滞留時間の下限値(分)
C: 塩素殺菌剤を供給した海水中の残留塩素濃度(mg/l)
(塩素殺菌剤を供給して設定する(初期)塩素濃度の意味) - 滞留槽は、バラストタンク内に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバラスト水処理装置。
- 船舶のバラストタンクに注水する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給工程と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留工程と、所定時間滞留された海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給工程とを備え、
前記塩素還元剤供給工程において、前記滞留槽にて所定時間滞留した海水の残留塩素濃度を計測し、計測された残留塩素濃度に基づいて前記滞留槽から抜出した海水の残留塩素濃度を1.5〜3.5mg/lに低減するために必要な塩素還元剤理論量を演算し、該演算された塩素還元剤理論量に対して1.0〜1.5倍となる塩素還元剤供給量を演算し、該演算された塩素還元剤供給量を供給するように塩素還元剤の供給量を制御することを特徴とするバラスト水処理方法。 - 船舶のバラストタンクに注水する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給工程と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留工程と、所定時間滞留された海水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給工程とを備え、
該塩素還元剤供給工程において、海水中の残留塩素濃度を1.5〜3.5mg/lとするように塩素還元剤を供給することを特徴とするバラスト水処理方法。 - 滞留工程は、塩素殺菌剤を供給してから塩素還元剤を供給するまでの時間を(1)式から算定する滞留時間の下限値以上とする滞留を行なうことを特徴とする請求項4〜5のいずれか一項に記載のバラスト水処理方法。
T=10^((Log49-LogC)/0.65) (1)
T:滞留時間の下限値(分)
C: 塩素殺菌剤を供給した海水中の残留塩素濃度(mg/l)
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