JP2004033800A - 残留塩素濃度の管理方法、超純水の製造方法および注入塩素濃度の管理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価で信頼性が高く、残留塩素濃度のみならず、還元剤の注入量も正確に測定し得る残留塩素濃度の管理方法、超純水の製造方法および、さらに加えて逆浸透膜装置の性能をも判定可能な超純水の製造装置、ならびに安価で信頼性が高く、残留塩素濃度を正確に測定し得る注入塩素濃度の管理方法を提供すること。
【解決手段】例えば、逆浸透膜装置への供給水となる微量の塩素を含む供給水が流れる配管1に、薬液タンク4中の還元剤を注入して流水中の塩素を還元し、その酸化還元電位を酸化還元電位計で測定して、その測定値又はその変化から還元剤の注入状況を判定する。
逆浸透膜装置の透過水の酸化還元電位を測定して、供給水の酸化還元電位と逆浸透膜装置の透過水の酸化還元電位から、還元剤の注入状況を判定することもできる。
【選択図】 図1
【解決手段】例えば、逆浸透膜装置への供給水となる微量の塩素を含む供給水が流れる配管1に、薬液タンク4中の還元剤を注入して流水中の塩素を還元し、その酸化還元電位を酸化還元電位計で測定して、その測定値又はその変化から還元剤の注入状況を判定する。
逆浸透膜装置の透過水の酸化還元電位を測定して、供給水の酸化還元電位と逆浸透膜装置の透過水の酸化還元電位から、還元剤の注入状況を判定することもできる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素を含有する水中へ還元剤を注入する塩素除去方法における残留塩素濃度の監視方法、逆浸透膜装置を用いる超純水の製造方法および水中へ塩素を注入する殺菌方法における注入塩素濃度の管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、超純水装置の前段には、薬品を使用せずに脱塩のできる逆浸透膜装置が多く用いられるようになってきている。
【0003】
逆浸透膜装置に用いる逆浸透膜としては、主に、酢酸セルロース膜、ポリエーテル系、架橋アラミドなどの複合膜系の膜が一般に用いられているが、これらの複合膜系の逆浸透膜には、脱塩率が高い反面、酸化剤に対して耐性がないという問題がある。
【0004】
逆浸透膜装置に供給される供給水に含まれる酸化剤としては、回収水由来のものが混在するなど特別な場合を除いて、原水中に微量含有される塩素剤由来の残留塩素が典型的なものである。すなわち、超純水装置の原水には、市水や井水が用いられるが、市水には塩素が添加されており、井水にも原水タンクなどにおける微生物の繁殖を抑える目的で塩素剤が添加される場合がある。これらの市水や井水に添加された塩素剤による残留塩素は次亜塩素酸として原水中に微量存在している。原水中の次亜塩素酸は逆浸透膜を侵すため、逆浸透膜装置の前段で適当な手段で除去した上で逆浸透膜装置に供給する必要がある。
【0005】
残留塩素の除去方法としては、活性炭を通過させて活性炭の触媒反応により残留塩素を除去する方法や還元剤を注入して残留塩素を還元する方法等が知られているが、活性炭装置は超純水装置のコスト高を招く上に活性炭の寿命の判定が難しいため、重亜硫酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を注入して残留塩素を除去することが一般的に行われている。これらの還元剤は反応時間が短く、水中の塩素剤と瞬時に反応して残留塩素を不活性な塩素イオンに還元する。
【0006】
逆浸透膜装置の供給水への還元剤の注入は、薬液タンクに収容した還元剤の水溶液を、配管中を流れる残留塩素を含む原水中に薬注ポンプで注入することによって行われている。
【0007】
薬注ポンプは簡単に安価に設置できて便利である反面、長期間使用しているうちに故障したり、注入ラインに取り付けてあるチャッキ弁にゴミや薬品の凝集物が詰まって注入不良を起こす可能性があるという問題がある。また、薬液の希釈濃度や使用薬液の間違い、薬液タンクへの薬品の補充忘れなどの人為的なミスによる注入ミスが発生する恐れもある。
【0008】
このような薬注ポンプの故障や注入不良が起こると、残留塩素が除去されないままの供給水が複合膜式の逆浸透膜装置に供給されてしまい、逆浸透膜が損傷し数日後には極端な脱塩率の低下を招いてしまい、ついには、高価な複合膜逆浸透膜装置を交換しなければならないという問題があった。
【0009】
また、超純水装置は、半導体向上や液晶向上に不可欠な装置であるから、超純水装置が故障して超純水の供給が停止すると最悪の場合には、生産ラインが停止して莫大な損害が発生するという問題がある。
【0010】
したがって、薬注ポンプの動作には、高い信頼性が要求されており、薬注ポンプが正常に動作しているか否かを浄治監視する必要がある。
【0011】
薬注ポンプが正常に働いていれば、残留塩素は薬注ポンプの下流には存在しないから、薬注ポンプの動作を監視するために、薬注ポンプの下流に塩素濃度計を設置して残留塩素の有無を検出することにより薬注ポンプの動作を監視することが考えられる。
【0012】
しかし、塩素濃度計は、もともとプールなどで、残留塩素がある一定濃度存在するか否かを監視するためのものであって塩素濃度がゼロの状態を監視するものではないから、超低濃度の残存塩素を検出する目的に使用する場合には不都合なことが多い。すなわち、塩素濃度計のゼロ点はすぐにずれてしまうため、超低濃度の残存塩素を測定するためには、頻繁にゼロ点校正を実施する必要がある。また、塩素濃度計は、pHや妨害物質の影響を大きく受けるため、それらの変動が大きいとゼロ点を狂わしてしまい、正確な塩素濃度の測定ができなくなってしまうという問題もある。さらに、一般に用いられている塩素濃度計は、薬品を補充する必要があるため、不慣れな作業者が操作すると人為的なミスが発生するという問題もあった。また、残留塩素濃度計は、比較的高価であり、測定時間も長くかかるためオンラインで水質管理するモニターとしては不適当であるという問題もあった。またさらに、塩素濃度計では、還元剤の量を測定することができないから、還元剤の大過剰の注入を検出することができず、このような場合には、逆浸透膜装置の透過水の水質が低下してしまうという問題もあった。
【0013】
したがって、超純水装置においては、薬注ポンプによる還元剤の注入が適切に行われているか否かを正確、確実に、しかも高い信頼性で判定できる装置が求められていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の超純水装置においては、薬注ポンプによる還元剤の注入が適切に行われているか否かを正確、確実に、しかも高い信頼性で判定できる装置が求められていた。
【0015】
本発明は、かかる従来の課題を解決すべくなされたもので、安価で信頼性が高く、残留塩素濃度のみならず、還元剤の注入量も正確に測定し得る残留塩素濃度の管理方法、超純水の製造方法および、さらに加えて逆浸透膜装置の性能をも判定可能な超純水の製造装置、ならびに安価で信頼性が高く、残留塩素濃度を正確に測定し得る注入塩素濃度の管理方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の残留塩素濃度の管理方法は、塩素を含む流水中に還元剤を注入して流水中の塩素を還元する還元工程と、還元剤の注入された前記流水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から還元剤の注入状況を判定する判定工程とを有することを特徴としている。
【0017】
この方法は、例えば第1図に示すような装置を用いて行われる。
すなわち、配管1内には、ポンプ2により、塩素を含む水が矢印方向に流れている。ポンプ2の上流側にはチャッキ弁3が配設され、薬液タンク4から還元剤を配管1内に注入する薬注ポンプ5の注入配管6が接続されている。ポンプ2の下流側には酸化還元電位計7が配設され、配管1内の流水の酸化還元電位を測定するようになっている。
【0018】
また、請求項2の超純水の製造方法は、塩素を含む供給水中に還元剤を注入して供給水中の塩素を還元する還元工程と、還元剤の注入された供給水を逆浸透膜装置で処理する工程とを有する超純水の製造方法において、前記還元工程で塩素が還元された供給水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から還元剤の注入状況を判定する判定工程とを有することを特徴としている。
【0019】
この方法は、例えば第2図に示すような装置を用いて行われる。
すなわち、配管1内には、ポンプ2により、塩素を含む水が矢印方向に流れている。ポンプ2の上流側にはチャッキ弁3が配設され、薬液タンク4から還元剤を配管1内に注入する薬注ポンプ5の注入配管6が接続されている。ポンプ2の下流側には酸化還元電位計7が配設され、配管1内の流水の酸化還元電位を測定するようになっている。そして、酸化還元電位計7の下流において配管1は逆浸透膜装置8の供給水取り入れ口に接続され、残留塩素ゼロの供給水が逆浸透膜装置8に供給される。
【0020】
さらに、請求項3の超純水の製造方法は、塩素を含む供給水中に還元剤を注入して供給水中の塩素を還元する還元工程と、還元剤の注入された供給水を逆浸透膜装置で処理する工程とを有する超純水の製造方法において、前記還元工程で塩素が還元された供給水の酸化還元電位を測定する第1の酸化還元電位測定工程と、前記逆浸透膜装置の透過水の酸化還元電位を測定する第2の酸化還元電位測定工程と、前記第1および第2の酸化還元電位測定工程における測定値から、還元剤の注入状況を判定する判定工程とを有することを特徴としている。
【0021】
この方法は、例えば第3図に示すような装置を用いて行われる。
すなわち、配管1内には、ポンプ2により、塩素を含む水が矢印方向に流れている。ポンプ2の上流側にはチャッキ弁3が配設され、薬液タンク4から還元剤を配管1内に注入する薬注ポンプ5の注入配管6が接続されている。ポンプ2の上流側には第1の酸化還元電位計7が配設され、配管1内の流水の酸化還元電位を測定するようになっている。そして、第1の酸化還元電位計7の下流において配管1は逆浸透膜装置8の供給水取り入れ口に接続され、残留塩素ゼロの供給水が逆浸透膜装置8に供給される。逆浸透膜装置8の透過水排出管9には第2の酸化還元電位計10が接続され、透過水の酸化還元電位を測定するようにされており、第1の酸化還元電位計7および第2の酸化還元電位計10の測定結果は演算子11により演算されて、供給水と透過水の評価が行われる。
【0022】
また、さらに、本発明の注入塩素濃度の管理方法は、流水中に塩素を注入する塩素注入工程と、塩素の注入された前記流水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から塩素の注入状況を判定する判定工程とを有することを特徴としている。
【0023】
本発明における「酸化還元電位」は、金属類の固有の電極電位を示すものとして表されていたもので、「酸化剤と還元剤の活量が任意である場合における平衡電位」が、その実質的意義である。酸化還元電位は、様々な要因により支配され、例えば、溶存酸素や溶存水素によってもも大きく影響を受ける。
すなわち、酸化還元電位は、特定の物質を定量する指標ではないが、還元剤や塩素剤が、注入されなくなったり、注入不良が生じたときには、迅速、確実に、かつ明確に変化する指標であるので、厳密な残留塩素濃度のモニタリングと比較して、きわめて適切な指標であるといえる。
【0024】
本発明における酸化還元電位の測定は、酸化還元電位計を用いて行うことができる。酸化還元電位計は、水中に存在する酸化還元電位系の電位を白金などの貴金属を電極とし、基準電極と組み合わせて測定するもので、一般に市販されているものを使用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
請求項1の発明において用いられる、還元剤としては、重亜硫酸ナトリウム (NaHSO3 )や亜硫酸ナトリウム(Na2 SO3 )などの反応時間が短く、水中の塩素剤と瞬時に反応する還元剤が好適している。一般に、残留塩素は、pHによって、HOClまたはOCl− の状態で水中に存在し、pHが7では、HOClが70%以上、pH8ではHOClが20%程度の割合となっている。
【0026】
重亜硫酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウムは、次の反応により、残留塩素を不活性な塩素イオンに還元する。
HOCl + NaHSO3 → NaCl + H2 SO4
HOCl + Na2 SO3 → 2NaCl + H2 SO4
【0027】
例えば、塩素材が注入されている水道水の酸化還元電位は、約+500〜700mVの値を示すが、これらの値は注入する塩素濃度の違いによって違ってくる。一般に、水質が汚染されている水のほうが、塩素濃度を高く設定するため、、酸化還元電位値は大きくなる傾向がある。日本の50か所以上で水道水をサンプリングした結果では、最も酸化還元電位が低かったのは、北海道旭川市の312mVで、最も高かったのは、千葉県某地の773mVである。還元剤の注入は、例えば、酸化還元電位が+250〜200mV以下となるように設定される。
【0028】
注入する還元剤は、当量で反応するために必要な量の1.5〜3倍程度の注入量としておけば、注入が正常である限り、残留塩素濃度が残存することはない。
【0029】
残留塩素を塩素濃度計で直接測定しようすれば、低濃度のため非常に難しい測定となるのに対して、酸化還元電位の測定は、電気化学的な測定であるため、測定結果は正確であり、しかも仮に還元剤が過剰になって残留塩素濃度がゼロとなったとしても酸化還元電位の測定値が低くなるだけであるので、ゼロ点校正をきちんと行なってさえいれば、残留塩素の存在を見逃すことはなく、残留塩素が低い領域でも高い精度を維持することが可能である。
【0030】
配管内の流水中への還元剤の注入は、公知の薬注ポンプを用いて行なうことができる。
【0031】
起動時の残留塩素濃度をゼロにするためには、三方弁を使用して、薬注ポンプの起動時の水は排出し、還元剤の濃度が規定値に達した後に、三方弁を切り換えて残留塩素濃度ゼロの水を取水するようにする。
【0032】
請求項2の発明では、請求項1の発明の装置で処理した残留塩素濃度ゼロの水が逆浸透膜装置に供給される。この発明では、供給水中への還元剤の注入が酸化還元電位の測定により確認されているので逆浸透膜装置の残留塩素による損傷を確実に防ぐことできる。
【0033】
逆浸透膜装置は間欠運転する場合が多く、この場合には、起動とともに送水のためのポンプと還元剤の薬注ポンプが作動するが、これらの作動タイミンクなどによっては、逆浸透膜装置の通水初期に若干の残留塩素が消失せずに逆浸透膜装置へと通水されることがあるが、本発明においては、酸化還元電位の測定によって経時変化の情報が得られるので、例えば三方弁などの設置により、酸化還元電位が規定値に達したのを確認したのち逆浸透膜装置へと通水することができる。この場合、例えば三方弁を使用して、薬注ポンプの起動時の水は排出し、還元剤の濃度が規定値に達した後に三方弁を切り換えて残留塩素濃度ゼロの水を逆浸透膜装置に供給するようにする。また、三方弁を使用しなくても、シーケンスによつて、起動時は、まず、還元剤が注入された後に送水ポンプを作動させ、停止時には、ポンプを停止させたのち還元剤の注入を停止することにより、還元剤が注入されない状態を防ぐことができる。また、還元剤の注入不良時に備えて、スタンバイの薬注ラインを併設するようにしてもよい。さらに、酸化還元電位計と還元剤を注入する薬注ポンプを連動させることにより、還元剤の注入量を制御して残留塩素濃度を確実に消失させるとともに還元剤が注入過剰となることを防ぐこともできる。この場合は、ポンプを複数台設置するか、あるいは、流量を遠隔で可変できる薬注ポンプを設置してもよい。酸化還元電位計により、注入不良が確認された揚合には、自動操作によって、速やかにポンプを停止するか、あるいは配管に三方弁を用いて逆浸透膜装置への送水を止めるような手段を講ずるようにしてもよい。通常、薬注ポンプの注入不良は、大部分がエアの溜まりなどの些細なことが原因であるので、すぐにそれに対処すれば迅速に連転を再開することができる。
【0034】
請求項3の発明では、逆浸透膜装置の透過水側にも、酸化還元電位計が設置される。このように、逆浸透膜装置の透過水側にも酸化還元電位計を設置して、測定された酸化還元電位を供給水側に設置した酸化還元電位計で測定された酸化還元電位と比較することによって、塩素ゼロの状態を確認することができ、頻繁に校正をする必要がなくなるとともに、還元剤の注入不良による逆浸透膜装置膜の損傷を確実に防ぐことできる。
【0035】
逆浸透膜装置の透過水では、脱塩の結果、注入された余剰還元剤は限りなくゼロの値まで除去され、塩素剤が仮にリークしていたとしても逆浸透膜装置によって限りなくゼロの値まで除去される。このため、塩素剤や還元剤の影響は、透過水の酸化還元電位にはほとんど現れない。一方、溶存酸素などのガス成分は、逆浸透膜装置ではまったく除去できないため、これらの条件は、供給側と透過側で変わらない。つまり、この透過水の酸化還元電位の値を塩素の除去されたブランクの値とすることで、還元剤による塩素の除去と還元剤の注入過剰を判定することができる。
【0036】
すなわち、供給水側と透過水側の酸化還元電位の差を「Δ酸化還元電位」とすると、次式で表されるが、
Δ酸化還元電位=透過水の酸化還元電位−供給水の酸化還元電位
このΔ酸化還元電位の値がプラスであれば、完全に塩素は消去されていることになり、この値が大きすぎると還元剤の注入が過剰であるということになる。また、この値がマイナスであれば、還元剤の注入量が足りていないことになる。
【0037】
Δ酸化還元電位は、基本的には、+30〜100mVの範囲で制御することが望ましい。
【0038】
ただし、この差はわずかとなるケースが多いので、測定誤差による装置停止を防ぐために±10程度は、無視してもよい。
【0039】
また溶存酸素は、還元剤により除去されるが、その反応速度は残留塩素と還元剤との反応に比べて遅いため、注入された還元剤のほとんどは、残留塩素との反応に使用されることとなる。しかし、溶存酸素が還元剤によりまったく除去されないわけではないので、厳密には、残留塩素がゼロになった場合、取り除かれた溶存酸素の影響で、残留塩素だけがなくなった場合の酸化還元電位よりも低い値を示すことなる。このために、透過水の酸化還元電位よりも供給側の酸化還元電位を小さく設定することが、管理方法として適している。
【0040】
つまり、逆浸透膜装置の脱塩率は100%ではないので、若干の過剰還元剤もリークすることになるが、この値よりも供給側を低く設定することを目的としているので問題はない。
【0041】
また、透過側の酸化還元電位の測定は、供給側とは別個の酸化還元電位計を設定してもよいし、あるいは、測定ラインを分岐することで、酸化還元電位計は一台としてもよい。また、透過側の酸化還元電位は、常時測定しなくても、間欠的に値を確認ずる程度でもよい。
【0042】
また、透過側の酸化還元電位を測定する代わりに、濃縮側の酸化還元電位を測定しても同様の結果を得ることができる。濃縮側に酸化還元電位計を設置した場合には、濃縮水が排水される場合の排水管理を行なうことが可能になる。
【0043】
還元剤の注入量は、残留塩素を完全に消失するに必要な量に対して1.5〜3倍程度の注入量を設定するため、還元剤注入後は、還元剤がやや過剰となる。
【0044】
逆浸透膜装置では、これら余剰還元剤も濃縮されるため、逆浸透膜装置の濃縮水においては余剰還元剤量も大きくなっている。このため、薬液の注入が正常に行われていれば、逆浸透膜装置供給水に対し逆浸透膜装置濃縮水の酸化還元電位は低い値をとる。
【0045】
したがって、この場合のΔ酸化還元電位は、次のようになる。
Δ酸化還元電位=供給水酸化還元電位一濃縮水酸化還元電位
【0046】
この値が常にプラスの値を示せばよく、この値がマイナスを示せば、注人する還元剤の量が足りないことを示している。また、プラスの値が大きすぎるときば、注入する還元剤の量が過剰すぎることを示している。ただし、この差はわずかとなるケースが多いので、測定誤差による装置停止を防ぐために±10程度は、無視してもよい。逆浸透膜装置の運転条件などにもよるが、基本的には、−10〜+50mV程度で制御すればよい。
【0047】
なお、残留塩素がゼロの状態を比較する他の方法としては、供給水を活性炭や触媒樹脂などに通し透過液の酸化還元電位を測定し、その値を残留塩素ゼロ水としてもよい。活性炭や金属を担持した触媒樹脂では、その触媒作用によって、残留塩素が分解される。使用する活性炭としては、やしがら活性炭よりも石炭ベースの活性炭のほうがよく、触媒作用が強いのでより望ましい。
【0048】
また、市水ではなく、井水や工業用水を原水としている揚合も、原水タンクなどの微生物増殖防止などを目的としで塩素が注入されている場合がある。この場合は、注入する前の酸化還元電位の測定値でもって塩素濃度のゼロ点と代用することもできる。また、塩素注入後に、塩素が注入されていることを確認する目的で、酸化還元電位を測定してもよい。
【0049】
請求項4の発明は、流水中に殺菌等の目的で塩素を注入する場合に、注入水の酸化還元電位を測定することによって、塩素の注入状況を判定するもので、原理的には請求項1の発明と同様である。
【0050】
【実施例1】
次の条件で、図1に示した装置を用いて酸化還元電位を測定した。
原水:神奈川県厚木市市水
還元剤:重亜硫酸ナトリウム水溶液(3%水溶液)
還元剤の注入量:3.5g/m3
供給水量:2m/h
原水中の塩素濃度:約0.7ppm
酸化還元電位計:アプリクス(Applics)社製、EL−9001 (商品名)
酸化還元電位の測定値は表1の通りであった。
【0051】
なお、注入不良は、薬液タンクを一旦空にして薬液注入ラインにエアを吸引させ、すぐに薬液タンクに還元剤を補充して満タン状態として一時的な注入不良状態としたものである。
【0052】
【表1】
【0053】
【実施例2】
次の条件で、図3に示した装置を用いて酸化還元電位を測定した。
原水、還元剤、還元剤の注入量、供給水量、原水中の塩素濃度および注入不良の条件は実施態様1と同じであり、逆浸透膜装置は、東レSU720(8インチ)を使用した。
【0054】
酸化還元電位の測定値は表2の通りであった。
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
以上の実施例からも明らかなように、本発明によれば、残留塩素濃度を酸化還元電位を用いて測定するため、正確、確実に、しかも高い信頼性で塩素濃度を測定することができ、そうちの信頼性を高めることができる。
【0057】
したがって、本発明によれば、従来の紫外線酸化装置を用いたIPAの処理方法と比べて容量の小さい紫外線酸化装置でIPAを処理することができ、また分解生成物の除去を脱気装置を用いて行うため、メンテナンスコストも安くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成図。
【図2】本発明の他の実施例の構成図。
【図3】本発明のさらに他の実施例の構成図。
【符号の説明】
1……塩素を含む水が流れる配管
2……ポンプ
3……チャッキ弁
4……薬液タンク
5……薬注ポンプ
6……注入配管
7……第1の酸化還元電位計
8……逆浸透膜装置
9……透過水排出管
10……第2の酸化還元電位計
11……演算子
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素を含有する水中へ還元剤を注入する塩素除去方法における残留塩素濃度の監視方法、逆浸透膜装置を用いる超純水の製造方法および水中へ塩素を注入する殺菌方法における注入塩素濃度の管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、超純水装置の前段には、薬品を使用せずに脱塩のできる逆浸透膜装置が多く用いられるようになってきている。
【0003】
逆浸透膜装置に用いる逆浸透膜としては、主に、酢酸セルロース膜、ポリエーテル系、架橋アラミドなどの複合膜系の膜が一般に用いられているが、これらの複合膜系の逆浸透膜には、脱塩率が高い反面、酸化剤に対して耐性がないという問題がある。
【0004】
逆浸透膜装置に供給される供給水に含まれる酸化剤としては、回収水由来のものが混在するなど特別な場合を除いて、原水中に微量含有される塩素剤由来の残留塩素が典型的なものである。すなわち、超純水装置の原水には、市水や井水が用いられるが、市水には塩素が添加されており、井水にも原水タンクなどにおける微生物の繁殖を抑える目的で塩素剤が添加される場合がある。これらの市水や井水に添加された塩素剤による残留塩素は次亜塩素酸として原水中に微量存在している。原水中の次亜塩素酸は逆浸透膜を侵すため、逆浸透膜装置の前段で適当な手段で除去した上で逆浸透膜装置に供給する必要がある。
【0005】
残留塩素の除去方法としては、活性炭を通過させて活性炭の触媒反応により残留塩素を除去する方法や還元剤を注入して残留塩素を還元する方法等が知られているが、活性炭装置は超純水装置のコスト高を招く上に活性炭の寿命の判定が難しいため、重亜硫酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を注入して残留塩素を除去することが一般的に行われている。これらの還元剤は反応時間が短く、水中の塩素剤と瞬時に反応して残留塩素を不活性な塩素イオンに還元する。
【0006】
逆浸透膜装置の供給水への還元剤の注入は、薬液タンクに収容した還元剤の水溶液を、配管中を流れる残留塩素を含む原水中に薬注ポンプで注入することによって行われている。
【0007】
薬注ポンプは簡単に安価に設置できて便利である反面、長期間使用しているうちに故障したり、注入ラインに取り付けてあるチャッキ弁にゴミや薬品の凝集物が詰まって注入不良を起こす可能性があるという問題がある。また、薬液の希釈濃度や使用薬液の間違い、薬液タンクへの薬品の補充忘れなどの人為的なミスによる注入ミスが発生する恐れもある。
【0008】
このような薬注ポンプの故障や注入不良が起こると、残留塩素が除去されないままの供給水が複合膜式の逆浸透膜装置に供給されてしまい、逆浸透膜が損傷し数日後には極端な脱塩率の低下を招いてしまい、ついには、高価な複合膜逆浸透膜装置を交換しなければならないという問題があった。
【0009】
また、超純水装置は、半導体向上や液晶向上に不可欠な装置であるから、超純水装置が故障して超純水の供給が停止すると最悪の場合には、生産ラインが停止して莫大な損害が発生するという問題がある。
【0010】
したがって、薬注ポンプの動作には、高い信頼性が要求されており、薬注ポンプが正常に動作しているか否かを浄治監視する必要がある。
【0011】
薬注ポンプが正常に働いていれば、残留塩素は薬注ポンプの下流には存在しないから、薬注ポンプの動作を監視するために、薬注ポンプの下流に塩素濃度計を設置して残留塩素の有無を検出することにより薬注ポンプの動作を監視することが考えられる。
【0012】
しかし、塩素濃度計は、もともとプールなどで、残留塩素がある一定濃度存在するか否かを監視するためのものであって塩素濃度がゼロの状態を監視するものではないから、超低濃度の残存塩素を検出する目的に使用する場合には不都合なことが多い。すなわち、塩素濃度計のゼロ点はすぐにずれてしまうため、超低濃度の残存塩素を測定するためには、頻繁にゼロ点校正を実施する必要がある。また、塩素濃度計は、pHや妨害物質の影響を大きく受けるため、それらの変動が大きいとゼロ点を狂わしてしまい、正確な塩素濃度の測定ができなくなってしまうという問題もある。さらに、一般に用いられている塩素濃度計は、薬品を補充する必要があるため、不慣れな作業者が操作すると人為的なミスが発生するという問題もあった。また、残留塩素濃度計は、比較的高価であり、測定時間も長くかかるためオンラインで水質管理するモニターとしては不適当であるという問題もあった。またさらに、塩素濃度計では、還元剤の量を測定することができないから、還元剤の大過剰の注入を検出することができず、このような場合には、逆浸透膜装置の透過水の水質が低下してしまうという問題もあった。
【0013】
したがって、超純水装置においては、薬注ポンプによる還元剤の注入が適切に行われているか否かを正確、確実に、しかも高い信頼性で判定できる装置が求められていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の超純水装置においては、薬注ポンプによる還元剤の注入が適切に行われているか否かを正確、確実に、しかも高い信頼性で判定できる装置が求められていた。
【0015】
本発明は、かかる従来の課題を解決すべくなされたもので、安価で信頼性が高く、残留塩素濃度のみならず、還元剤の注入量も正確に測定し得る残留塩素濃度の管理方法、超純水の製造方法および、さらに加えて逆浸透膜装置の性能をも判定可能な超純水の製造装置、ならびに安価で信頼性が高く、残留塩素濃度を正確に測定し得る注入塩素濃度の管理方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の残留塩素濃度の管理方法は、塩素を含む流水中に還元剤を注入して流水中の塩素を還元する還元工程と、還元剤の注入された前記流水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から還元剤の注入状況を判定する判定工程とを有することを特徴としている。
【0017】
この方法は、例えば第1図に示すような装置を用いて行われる。
すなわち、配管1内には、ポンプ2により、塩素を含む水が矢印方向に流れている。ポンプ2の上流側にはチャッキ弁3が配設され、薬液タンク4から還元剤を配管1内に注入する薬注ポンプ5の注入配管6が接続されている。ポンプ2の下流側には酸化還元電位計7が配設され、配管1内の流水の酸化還元電位を測定するようになっている。
【0018】
また、請求項2の超純水の製造方法は、塩素を含む供給水中に還元剤を注入して供給水中の塩素を還元する還元工程と、還元剤の注入された供給水を逆浸透膜装置で処理する工程とを有する超純水の製造方法において、前記還元工程で塩素が還元された供給水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から還元剤の注入状況を判定する判定工程とを有することを特徴としている。
【0019】
この方法は、例えば第2図に示すような装置を用いて行われる。
すなわち、配管1内には、ポンプ2により、塩素を含む水が矢印方向に流れている。ポンプ2の上流側にはチャッキ弁3が配設され、薬液タンク4から還元剤を配管1内に注入する薬注ポンプ5の注入配管6が接続されている。ポンプ2の下流側には酸化還元電位計7が配設され、配管1内の流水の酸化還元電位を測定するようになっている。そして、酸化還元電位計7の下流において配管1は逆浸透膜装置8の供給水取り入れ口に接続され、残留塩素ゼロの供給水が逆浸透膜装置8に供給される。
【0020】
さらに、請求項3の超純水の製造方法は、塩素を含む供給水中に還元剤を注入して供給水中の塩素を還元する還元工程と、還元剤の注入された供給水を逆浸透膜装置で処理する工程とを有する超純水の製造方法において、前記還元工程で塩素が還元された供給水の酸化還元電位を測定する第1の酸化還元電位測定工程と、前記逆浸透膜装置の透過水の酸化還元電位を測定する第2の酸化還元電位測定工程と、前記第1および第2の酸化還元電位測定工程における測定値から、還元剤の注入状況を判定する判定工程とを有することを特徴としている。
【0021】
この方法は、例えば第3図に示すような装置を用いて行われる。
すなわち、配管1内には、ポンプ2により、塩素を含む水が矢印方向に流れている。ポンプ2の上流側にはチャッキ弁3が配設され、薬液タンク4から還元剤を配管1内に注入する薬注ポンプ5の注入配管6が接続されている。ポンプ2の上流側には第1の酸化還元電位計7が配設され、配管1内の流水の酸化還元電位を測定するようになっている。そして、第1の酸化還元電位計7の下流において配管1は逆浸透膜装置8の供給水取り入れ口に接続され、残留塩素ゼロの供給水が逆浸透膜装置8に供給される。逆浸透膜装置8の透過水排出管9には第2の酸化還元電位計10が接続され、透過水の酸化還元電位を測定するようにされており、第1の酸化還元電位計7および第2の酸化還元電位計10の測定結果は演算子11により演算されて、供給水と透過水の評価が行われる。
【0022】
また、さらに、本発明の注入塩素濃度の管理方法は、流水中に塩素を注入する塩素注入工程と、塩素の注入された前記流水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から塩素の注入状況を判定する判定工程とを有することを特徴としている。
【0023】
本発明における「酸化還元電位」は、金属類の固有の電極電位を示すものとして表されていたもので、「酸化剤と還元剤の活量が任意である場合における平衡電位」が、その実質的意義である。酸化還元電位は、様々な要因により支配され、例えば、溶存酸素や溶存水素によってもも大きく影響を受ける。
すなわち、酸化還元電位は、特定の物質を定量する指標ではないが、還元剤や塩素剤が、注入されなくなったり、注入不良が生じたときには、迅速、確実に、かつ明確に変化する指標であるので、厳密な残留塩素濃度のモニタリングと比較して、きわめて適切な指標であるといえる。
【0024】
本発明における酸化還元電位の測定は、酸化還元電位計を用いて行うことができる。酸化還元電位計は、水中に存在する酸化還元電位系の電位を白金などの貴金属を電極とし、基準電極と組み合わせて測定するもので、一般に市販されているものを使用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
請求項1の発明において用いられる、還元剤としては、重亜硫酸ナトリウム (NaHSO3 )や亜硫酸ナトリウム(Na2 SO3 )などの反応時間が短く、水中の塩素剤と瞬時に反応する還元剤が好適している。一般に、残留塩素は、pHによって、HOClまたはOCl− の状態で水中に存在し、pHが7では、HOClが70%以上、pH8ではHOClが20%程度の割合となっている。
【0026】
重亜硫酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウムは、次の反応により、残留塩素を不活性な塩素イオンに還元する。
HOCl + NaHSO3 → NaCl + H2 SO4
HOCl + Na2 SO3 → 2NaCl + H2 SO4
【0027】
例えば、塩素材が注入されている水道水の酸化還元電位は、約+500〜700mVの値を示すが、これらの値は注入する塩素濃度の違いによって違ってくる。一般に、水質が汚染されている水のほうが、塩素濃度を高く設定するため、、酸化還元電位値は大きくなる傾向がある。日本の50か所以上で水道水をサンプリングした結果では、最も酸化還元電位が低かったのは、北海道旭川市の312mVで、最も高かったのは、千葉県某地の773mVである。還元剤の注入は、例えば、酸化還元電位が+250〜200mV以下となるように設定される。
【0028】
注入する還元剤は、当量で反応するために必要な量の1.5〜3倍程度の注入量としておけば、注入が正常である限り、残留塩素濃度が残存することはない。
【0029】
残留塩素を塩素濃度計で直接測定しようすれば、低濃度のため非常に難しい測定となるのに対して、酸化還元電位の測定は、電気化学的な測定であるため、測定結果は正確であり、しかも仮に還元剤が過剰になって残留塩素濃度がゼロとなったとしても酸化還元電位の測定値が低くなるだけであるので、ゼロ点校正をきちんと行なってさえいれば、残留塩素の存在を見逃すことはなく、残留塩素が低い領域でも高い精度を維持することが可能である。
【0030】
配管内の流水中への還元剤の注入は、公知の薬注ポンプを用いて行なうことができる。
【0031】
起動時の残留塩素濃度をゼロにするためには、三方弁を使用して、薬注ポンプの起動時の水は排出し、還元剤の濃度が規定値に達した後に、三方弁を切り換えて残留塩素濃度ゼロの水を取水するようにする。
【0032】
請求項2の発明では、請求項1の発明の装置で処理した残留塩素濃度ゼロの水が逆浸透膜装置に供給される。この発明では、供給水中への還元剤の注入が酸化還元電位の測定により確認されているので逆浸透膜装置の残留塩素による損傷を確実に防ぐことできる。
【0033】
逆浸透膜装置は間欠運転する場合が多く、この場合には、起動とともに送水のためのポンプと還元剤の薬注ポンプが作動するが、これらの作動タイミンクなどによっては、逆浸透膜装置の通水初期に若干の残留塩素が消失せずに逆浸透膜装置へと通水されることがあるが、本発明においては、酸化還元電位の測定によって経時変化の情報が得られるので、例えば三方弁などの設置により、酸化還元電位が規定値に達したのを確認したのち逆浸透膜装置へと通水することができる。この場合、例えば三方弁を使用して、薬注ポンプの起動時の水は排出し、還元剤の濃度が規定値に達した後に三方弁を切り換えて残留塩素濃度ゼロの水を逆浸透膜装置に供給するようにする。また、三方弁を使用しなくても、シーケンスによつて、起動時は、まず、還元剤が注入された後に送水ポンプを作動させ、停止時には、ポンプを停止させたのち還元剤の注入を停止することにより、還元剤が注入されない状態を防ぐことができる。また、還元剤の注入不良時に備えて、スタンバイの薬注ラインを併設するようにしてもよい。さらに、酸化還元電位計と還元剤を注入する薬注ポンプを連動させることにより、還元剤の注入量を制御して残留塩素濃度を確実に消失させるとともに還元剤が注入過剰となることを防ぐこともできる。この場合は、ポンプを複数台設置するか、あるいは、流量を遠隔で可変できる薬注ポンプを設置してもよい。酸化還元電位計により、注入不良が確認された揚合には、自動操作によって、速やかにポンプを停止するか、あるいは配管に三方弁を用いて逆浸透膜装置への送水を止めるような手段を講ずるようにしてもよい。通常、薬注ポンプの注入不良は、大部分がエアの溜まりなどの些細なことが原因であるので、すぐにそれに対処すれば迅速に連転を再開することができる。
【0034】
請求項3の発明では、逆浸透膜装置の透過水側にも、酸化還元電位計が設置される。このように、逆浸透膜装置の透過水側にも酸化還元電位計を設置して、測定された酸化還元電位を供給水側に設置した酸化還元電位計で測定された酸化還元電位と比較することによって、塩素ゼロの状態を確認することができ、頻繁に校正をする必要がなくなるとともに、還元剤の注入不良による逆浸透膜装置膜の損傷を確実に防ぐことできる。
【0035】
逆浸透膜装置の透過水では、脱塩の結果、注入された余剰還元剤は限りなくゼロの値まで除去され、塩素剤が仮にリークしていたとしても逆浸透膜装置によって限りなくゼロの値まで除去される。このため、塩素剤や還元剤の影響は、透過水の酸化還元電位にはほとんど現れない。一方、溶存酸素などのガス成分は、逆浸透膜装置ではまったく除去できないため、これらの条件は、供給側と透過側で変わらない。つまり、この透過水の酸化還元電位の値を塩素の除去されたブランクの値とすることで、還元剤による塩素の除去と還元剤の注入過剰を判定することができる。
【0036】
すなわち、供給水側と透過水側の酸化還元電位の差を「Δ酸化還元電位」とすると、次式で表されるが、
Δ酸化還元電位=透過水の酸化還元電位−供給水の酸化還元電位
このΔ酸化還元電位の値がプラスであれば、完全に塩素は消去されていることになり、この値が大きすぎると還元剤の注入が過剰であるということになる。また、この値がマイナスであれば、還元剤の注入量が足りていないことになる。
【0037】
Δ酸化還元電位は、基本的には、+30〜100mVの範囲で制御することが望ましい。
【0038】
ただし、この差はわずかとなるケースが多いので、測定誤差による装置停止を防ぐために±10程度は、無視してもよい。
【0039】
また溶存酸素は、還元剤により除去されるが、その反応速度は残留塩素と還元剤との反応に比べて遅いため、注入された還元剤のほとんどは、残留塩素との反応に使用されることとなる。しかし、溶存酸素が還元剤によりまったく除去されないわけではないので、厳密には、残留塩素がゼロになった場合、取り除かれた溶存酸素の影響で、残留塩素だけがなくなった場合の酸化還元電位よりも低い値を示すことなる。このために、透過水の酸化還元電位よりも供給側の酸化還元電位を小さく設定することが、管理方法として適している。
【0040】
つまり、逆浸透膜装置の脱塩率は100%ではないので、若干の過剰還元剤もリークすることになるが、この値よりも供給側を低く設定することを目的としているので問題はない。
【0041】
また、透過側の酸化還元電位の測定は、供給側とは別個の酸化還元電位計を設定してもよいし、あるいは、測定ラインを分岐することで、酸化還元電位計は一台としてもよい。また、透過側の酸化還元電位は、常時測定しなくても、間欠的に値を確認ずる程度でもよい。
【0042】
また、透過側の酸化還元電位を測定する代わりに、濃縮側の酸化還元電位を測定しても同様の結果を得ることができる。濃縮側に酸化還元電位計を設置した場合には、濃縮水が排水される場合の排水管理を行なうことが可能になる。
【0043】
還元剤の注入量は、残留塩素を完全に消失するに必要な量に対して1.5〜3倍程度の注入量を設定するため、還元剤注入後は、還元剤がやや過剰となる。
【0044】
逆浸透膜装置では、これら余剰還元剤も濃縮されるため、逆浸透膜装置の濃縮水においては余剰還元剤量も大きくなっている。このため、薬液の注入が正常に行われていれば、逆浸透膜装置供給水に対し逆浸透膜装置濃縮水の酸化還元電位は低い値をとる。
【0045】
したがって、この場合のΔ酸化還元電位は、次のようになる。
Δ酸化還元電位=供給水酸化還元電位一濃縮水酸化還元電位
【0046】
この値が常にプラスの値を示せばよく、この値がマイナスを示せば、注人する還元剤の量が足りないことを示している。また、プラスの値が大きすぎるときば、注入する還元剤の量が過剰すぎることを示している。ただし、この差はわずかとなるケースが多いので、測定誤差による装置停止を防ぐために±10程度は、無視してもよい。逆浸透膜装置の運転条件などにもよるが、基本的には、−10〜+50mV程度で制御すればよい。
【0047】
なお、残留塩素がゼロの状態を比較する他の方法としては、供給水を活性炭や触媒樹脂などに通し透過液の酸化還元電位を測定し、その値を残留塩素ゼロ水としてもよい。活性炭や金属を担持した触媒樹脂では、その触媒作用によって、残留塩素が分解される。使用する活性炭としては、やしがら活性炭よりも石炭ベースの活性炭のほうがよく、触媒作用が強いのでより望ましい。
【0048】
また、市水ではなく、井水や工業用水を原水としている揚合も、原水タンクなどの微生物増殖防止などを目的としで塩素が注入されている場合がある。この場合は、注入する前の酸化還元電位の測定値でもって塩素濃度のゼロ点と代用することもできる。また、塩素注入後に、塩素が注入されていることを確認する目的で、酸化還元電位を測定してもよい。
【0049】
請求項4の発明は、流水中に殺菌等の目的で塩素を注入する場合に、注入水の酸化還元電位を測定することによって、塩素の注入状況を判定するもので、原理的には請求項1の発明と同様である。
【0050】
【実施例1】
次の条件で、図1に示した装置を用いて酸化還元電位を測定した。
原水:神奈川県厚木市市水
還元剤:重亜硫酸ナトリウム水溶液(3%水溶液)
還元剤の注入量:3.5g/m3
供給水量:2m/h
原水中の塩素濃度:約0.7ppm
酸化還元電位計:アプリクス(Applics)社製、EL−9001 (商品名)
酸化還元電位の測定値は表1の通りであった。
【0051】
なお、注入不良は、薬液タンクを一旦空にして薬液注入ラインにエアを吸引させ、すぐに薬液タンクに還元剤を補充して満タン状態として一時的な注入不良状態としたものである。
【0052】
【表1】
【0053】
【実施例2】
次の条件で、図3に示した装置を用いて酸化還元電位を測定した。
原水、還元剤、還元剤の注入量、供給水量、原水中の塩素濃度および注入不良の条件は実施態様1と同じであり、逆浸透膜装置は、東レSU720(8インチ)を使用した。
【0054】
酸化還元電位の測定値は表2の通りであった。
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
以上の実施例からも明らかなように、本発明によれば、残留塩素濃度を酸化還元電位を用いて測定するため、正確、確実に、しかも高い信頼性で塩素濃度を測定することができ、そうちの信頼性を高めることができる。
【0057】
したがって、本発明によれば、従来の紫外線酸化装置を用いたIPAの処理方法と比べて容量の小さい紫外線酸化装置でIPAを処理することができ、また分解生成物の除去を脱気装置を用いて行うため、メンテナンスコストも安くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成図。
【図2】本発明の他の実施例の構成図。
【図3】本発明のさらに他の実施例の構成図。
【符号の説明】
1……塩素を含む水が流れる配管
2……ポンプ
3……チャッキ弁
4……薬液タンク
5……薬注ポンプ
6……注入配管
7……第1の酸化還元電位計
8……逆浸透膜装置
9……透過水排出管
10……第2の酸化還元電位計
11……演算子
Claims (4)
- 塩素を含む流水中に還元剤を注入して流水中の塩素を還元する還元工程と、
還元剤の注入された前記流水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、
測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から還元剤の注入状況を判定する判定工程と
を有することを特徴とする残留塩素濃度の管理方法。 - 塩素を含む供給水中に還元剤を注入して供給水中の塩素を還元する還元工程と、還元剤の注入された供給水を逆浸透膜装置で処理する工程とを有する超純水の製造方法において、
前記還元工程で塩素が還元された供給水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、
測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から還元剤の注入状況を判定する判定工程と
を有することを特徴とする超純水の製造方法。 - 塩素を含む供給水中に還元剤を注入して供給水中の塩素を還元する還元工程と、還元剤の注入された供給水を逆浸透膜装置で処理する工程とを有する超純水の製造方法において、
前記還元工程で塩素が還元された供給水の酸化還元電位を測定する第1の酸化還元電位測定工程と、
前記逆浸透膜装置の透過水の酸化還元電位を測定する第2の酸化還元電位測定工程と、
前記第1および第2の酸化還元電位測定工程における測定値から、前記還元剤の注入状況を判定する判定工程と
を有することを特徴とする超純水の製造方法。 - 流水中に塩素を注入する塩素注入工程と、
塩素の注入された前記流水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定工程と、
測定された酸化還元電位の測定値又はその変化から塩素の注入状況を判定する判定工程と
を有することを特徴とする注入塩素濃度の管理方法。
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